説明

塗装下地処理後水洗水の処理方法及び塗装下地成処理液の処理方法

【課題】 濾過膜を用いて、膜厚が数十nmの塗装下地処理被膜を生成する塗装下地処理の後の水洗水から塗装下地処理成分粒子と浮遊固形物とを分離し、塗装下地処理成分粒子を再利用する方法を提供する。
【解決手段】 限外濾過膜を用いて塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離し、透過液を塗装下地処理液に再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装下地処理後水洗水の処理方法及び塗装下地処理液の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いて、塗装下地処理後水洗水を透過液と塗装下地処理成分粒子を含む濃縮液とに分離し、透過液を塗装下地処理後水洗水に再利用し、濃縮液を塗装下地処理液に再利用することを特徴とする塗装下地処理後水洗水の処理方法が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2002−370088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
塗装下地処理後水洗水中には、塗装下地処理成分粒子が含まれると共に、被処理物表面から除去された金属の化合物が浮遊固形物として含まれている。塗装下地処理被膜生成法の改良により、近年では従来に比べて遥かに薄膜の膜厚が数十nmの塗装下地処理被膜が生成されるようになった。塗装下地処理被膜の膜厚が数十nmまで薄くなると、金属化合物である浮遊固形物の粒径が塗装下地処理被膜の膜厚を上回り、逆浸透膜の濃縮液を塗装下地処理液に再利用すると、塗装下地処理液中の浮遊固形物濃度が上昇し、塗装下地処理被膜の膜厚よりも粒径の大きな浮遊固形物が被処理物に付着して、塗装下地処理被膜を損傷させる可能性を生ずる。他方、塗装下地処理液中の塗装下地処理成分粒子濃度を一定に維持すべく、塗装下地処理槽内の塗装下地処理液を処理槽外へ導いて透過液と塗装下地処理成分粒子を含む濃縮液とに膜分離し、濃縮液を塗装下地処理槽に戻す塗装下地処理液の処理も行われている。この場合も、塗装下地処理被膜の膜厚が数十nmまで薄くなると、塗装下地処理液中に含まれる金属化合物である浮遊固形物の粒径が塗装下地処理被膜の膜厚を上回り、膜分離後の濃縮液を塗装下地処理液に再利用すると、塗装下地処理液中の固形浮遊物濃度が上昇し、塗装下地処理被膜の膜厚よりも粒径の大きな浮遊固形物が被処理物に付着して、塗装下地処理被膜を損傷させる可能性を生ずる。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、濾過膜を用いて、膜厚が数十nmの塗装下地処理被膜を生成する塗装下地処理の後の水洗水から塗装下地処理成分粒子と浮遊固形物とを分離し、塗装下地処理成分粒子を再利用する方法を提供すると共に、濾過膜を用いて、膜厚が数十nmの塗装下地処理被膜を生成する塗装下地処理液から塗装下地処理成分粒子と浮遊固形物とを分離し、塗装下地処理成分粒子を再利用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明においては、限外濾過膜を用いて塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離し、透過液を塗装下地処理液に再利用することを特徴とする塗装下地処理後水洗水の処理方法を提供する。
塗装下地処理成分粒子の粒径は塗装下地処理被膜の膜厚を越えないので、膜厚が数十nmの塗装下地処理被膜を生成する塗装下地処理の後の水洗水には、粒径が数十nm以下の塗装下地処理成分粒子と、塗装下地処理成分粒子よりも大粒径の浮遊固形物とが含まれている。従って、細孔径が塗装下地処理被膜の膜厚以上且つ塗装下地処理後水洗水に含まれる浮遊固形物の粒径未満の限外濾過膜を用いて、塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離すると、濃縮液には浮遊固形物が含まれ、透過水には塗装下地処理成分粒子が含まれることになる。透過液には浮遊固形物は含まれていないので、透過水は塗装下地処理液に再利用可能である。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、塗装下地処理後水洗水に微細気泡を混入させ、限外濾過膜を用いて微細気泡が混入した塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離する。
塗装下地処理後水洗水に混入させた微細気泡に前記浮遊固形物を付着させて凝集させ粒径を増加させることにより、限外濾過膜の性能を向上させることができる。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、フィルタープレスを用いて濃縮液から固形物を分離する。
フィルタープレスを用いて濃縮液から効率良く固形物を分離することができる。
【0007】
本発明においては、限外濾過膜を用いて塗装下地処理液を濃縮液と透過液とに分離し、透過液を塗装下地処理液に再利用することを特徴とする塗装下地処理液の処理方法を提供する。
塗装下地処理成分粒子の粒径は塗装下地処理被膜の膜厚を越えないので、膜厚が数十nmの塗装下地処理液には、粒径が数十nm以下の塗装下地処理成分粒子と、塗装下地処理成分粒子よりも大粒径の浮遊固形物とが含まれている。従って、細孔径が塗装下地処理被膜の膜厚以上且つ塗装下地処理液に含まれる浮遊固形物の粒径未満の限外濾過膜を用いて、塗装下地処理液を濃縮液と透過液とに分離すると、濃縮液には浮遊固形物が含まれ、透過水には塗装下地処理成分粒子が含まれることになる。透過液には浮遊固形物は含まれていないので、透過水は塗装下地処理液に再利用可能である。
【発明の効果】
【0008】
細孔径が塗装下地処理被膜の膜厚以上且つ塗装下地処理後水洗水に含まれる浮遊固形物の粒径未満の限外濾過膜を用いて、塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離すると、濃縮液には浮遊固形物が含まれ、透過水には塗装下地処理成分粒子が含まれることになる。透過液には浮遊固形物は含まれていないので、透過水は塗装下地処理液に再利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例に係る塗装下地処理後水洗水の処理方法を説明する。
図1に示すように、限外濾過膜分離装置1を用いて塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離する。限外濾過膜分離装置1として、例えば特開平10−263371号公報に開示されている、公称孔径250nmの平膜を用いた濾過膜体からなる浸漬型濾過膜装置を使用することが可能である。
膜厚が数十nmの塗装下地処理被膜を生成する塗装下地処理の後の水洗水には限外濾過膜分離装置1が備える平膜を透過可能な数十nmの粒径の塗装下地処理成分粒子と、限外濾過膜分離装置1が備える平膜を透過不能の粒径の金属化合物粒子である浮遊固形物とが分散混入している。従って、限外濾過膜分離装置1の透過液には塗装下地処理成分粒子が含まれ、限外濾過膜分離装置1の濃縮液には浮遊固形物が含まれている。
塗装下地処理成分粒子が含まれる透過液は塗装下地処理槽2に戻され、塗装下地処理液に再利用される。他方浮遊固形物が含まれる濃縮液は、フィルタープレス3により効率良く脱水され、固形物は乾燥され産業用素材として再利用される。
【0010】
膜厚が60nmの塗装下地処理被膜を生成する塗装下地処理の処理槽から浴液を採取し、公称孔径250nmの限外濾過膜の平膜を用いた濾過膜体からなる浸漬型濾過膜装置を使用して、浴液を濾過した。結果を図2に示す。
図2から分かるように、塗装下地処理液を形成するA剤成分の構成粒子とB剤成分とは、A剤成分中のFeを除いて略全量が限外濾過膜を透過し、他方浴液に含まれる浮遊固形物(SS:サスペンデッドソリッド)は限外濾過膜により捕獲されている。従って、透過液は下地処理液として再利用可能である。
【0011】
図1に破線矢印で示すように、塗装下地処理後水洗水に、マイクロバブルを混入させても良い。マイクロバブル生成装置として、例えば特開2004−073953号公報に開示された気液攪拌混合装置を使用することができる。塗装下地処理後水洗水中に混入した粒径が10μm前後のマイクロバブルは、長時間に亙って当該水洗水中に留まることができる。水洗水中に分散混入したマイクロバブルに浮遊固形物が付着し凝集して粒径が増加する。凝集して粒径が増加した浮遊固形物が膜表面に付着し、当該粒子間の隙間をより小径の粒子が埋めると、膜表面の付着粒子層が濾材として機能し始め、濾過膜の公称孔径よりも更に小径の粒子も捕獲できるようになり、濾過膜の性能が向上する。この結果、透過液に浮遊固形物が混入する危険性が減少する。
【0012】
図1に一点鎖線矢印で示すように、塗装下地処理槽2から導出した塗装下地処理液を限外濾過膜分離装置1に導いて濃縮液と透過液とに分離し、塗装下地処理成分粒子が含まれる透過液を塗装下地処理槽2に戻し、浮遊固形物が含まれる濃縮液を、フィルタープレス3を用いて脱水し、固形物を乾燥して産業用素材として再利用しても良い。浮遊固形物を除去しつつ、塗装下地処理槽2内の塗装下地処理成分粒子濃度を所定値に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る塗装下地処理後水洗水の処理方法を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例に係る塗装下地処理後水洗水の処理方法の効果を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
1 限外濾過膜分離装置
2 塗装下地処理槽
3 フィルタープレス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限外濾過膜を用いて塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離し、透過液を塗装下地処理液に再利用することを特徴とする塗装下地処理後水洗水の処理方法。
【請求項2】
塗装下地処理後水洗水に微細気泡を混入させ、限外濾過膜を用いて微細気泡が混入した塗装下地処理後水洗水を濃縮液と透過液とに分離することを特徴とする請求項1に記載の塗装下地処理後水洗水の処理方法。
【請求項3】
フィルタープレスを用いて濃縮液から固形物を分離することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装下地処理後水洗水の処理方法。
【請求項4】
塗装下地処理槽から導出した塗装下地処理液を限外濾過膜を用いて濃縮液と透過液とに分離し、透過液を塗装下地処理液に再利用することを特徴とする塗装下地処理液の処理方法。
【請求項5】
塗装下地処理槽から導出した塗装下地処理液に微細気泡を混入させ、限外濾過膜を用いて微細気泡が混入した塗装下地処理液を濃縮液と透過液とに分離することを特徴とする請求項4に記載の塗装下地処理液の処理方法。
【請求項6】
フィルタープレスを用いて濃縮液から固形物を分離することを特徴とする請求項3又は4に記載の塗装下地処理液の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−55305(P2008−55305A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234590(P2006−234590)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(391022658)パーカーエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】