説明

塗装不良検査方法

【課題】凹凸面を有しこの凹凸面に塗膜が形成された基材に対して光を照射すると共に前記塗膜からの反射光を検出し、この反射光の強度に基づいて塗装不良を検出するにあたり、塗装不良の有無を正確且つ容易に判定することができる塗装不良検査方法を提供する。
【解決手段】平坦面を有しこの平坦面に前記塗膜と同一組成の判定用塗膜が形成された判定用基材4に光を照射すると共に塗膜からの反射光を検出する。光の入射方向に対する前記判定用基材4の角度θが所定の角度以上の場合の反射光の最大強度を除外強度とする。基材の塗膜からの反射光の強度に基づいて塗装不良を検出する際に、前記除外強度以下の強度の反射光の検出結果を除外する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜が形成された基材の塗装不良を検出するための塗装不良検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗膜が形成された基材1の塗装不良を検出するためには、基材1に光を照射すると共に反射光を検出し、この検出結果に基づいて塗装不良の有無を判定することがおこなわれている。例えば表面に有機塗膜が形成された基材1の表面に紫外線吸収剤を含有する無機質塗膜を形成した場合や、更にこの無機質塗膜に重ねて光触媒を含有する無機質塗膜を形成する場合には、透明な無機質塗膜の塗装不良の有無を目視により判定することが困難であるが、基材1に紫外線を照射すると共にその反射光を検出すれば、塗装不良の有無を高い確実性をもって判定することができる(特許文献1参照)。
【0003】
図3,4に、塗装不良検査方法の一例を示す。塗装が施された基材1が連続的に搬送される搬路の上方に、光源2及び検出器3が配設されている。光源2は例えばブラックライト等の適宜の紫外線ランプで構成され、検出器3は例えばCCD紫外線カメラ等で構成される。この検出器3は基材1の搬送方向と直交する方向に並ぶ複数の視野(分割測定エリア5)から反射される反射光の強度を検出する。各分割測定エリア5ごとの測定結果は複数の画素に分割され、検出器3は各分割測定エリア5ごとに各画素における反射光の強度を検出結果として出力する。そして、基材1を搬送しながら検出器3で反射光の検出を順次おこなうことで、基材1の全面に亘って反射光の検出をおこなうようにする。
【0004】
上記検出器3による検出結果に基づいて、塗装不良の有無が判定される。このとき、例えば各分割測定エリア5ごとに、複数の画素における反射光の強度の平均値を導出する。そして、分割測定エリア5における反射光の強度の平均値が所定の閾値を超える場合、基材1上の前記分割測定エリア5と対応する位置に塗装不良が発生していると判定される。
【0005】
しかし、基材1の塗装が施される面に凹凸が形成されている場合、すなわち例えば図6(a)に示すように基材1の上面に目地模様6、平坦な領域7、細かい凹凸模様が形成されている領域8、粗い凹凸模様が形成されている領域9が形成されている場合には、この凹凸によって光が散乱し、反射光の強度が低下してしまう。そうすると、例えば、基材1上の凹凸が形成されている領域と凹凸が形成されていない領域とでは反射光の強度が異なってしまい、また凹凸の程度が異なる領域間でも反射光の強度が異なってしまう。このような場合の反射光の検出結果の平均値の例を図6(b)に示す。図6(b)の縦軸は平均値の値(輝度)を示し、横軸は基材1上の位置を示す。この基材1上の位置は、図6(a)における符号イで示される基材1上のライン上の位置と対応している。
【0006】
図6(b)に示されるように、基材1に凹凸が形成されている場合には、塗装不良が発生していない場合であっても、反射光の検出結果はバラツキが大きくなって安定せず、一定の閾値を基準にして塗装不良を検出することが困難になってしまう。
【0007】
このような問題を解決するためには、例えば基材1上の凹凸の程度が異なる各領域ごとにそれぞれ異なる閾値を設定することも考えられる。
【0008】
しかしながら、この場合は基材1上の反射光の検出位置が変わるたびに閾値を変更しなければならず、煩雑な処理が必要になってしまい、また基材1の種類を変えるごとに閾値を設定し直さなければならないという問題もある。また、このように基材1上の各領域ごとに閾値を設定すると、例えば複数の基材1について塗装不良検査を順次おこなう際に基材1の搬送方向にずれが生じるなどして、基材1に位置ずれが生じる場合には、正確な塗装不良検査ができなくなってしまうという問題もある。
【0009】
更に、上記のような反射光に基づく塗装不良検査は、基材1上の塗膜とその下地との間の光反射性の相違を利用するものであるが、基材1に凹凸が形成されることで反射光中に散乱光成分が多くなると、塗膜とその下地との間の光反射性の差が小さくなってしまい、正確な塗装不良検査が難しくなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−25155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、凹凸面を有しこの凹凸面に塗膜が形成された基材1に対して光を照射すると共に前記塗膜からの反射光を検出し、この反射光の強度に基づいて塗装不良を検出するにあたり、塗装不良の有無を正確且つ容易に判定することができる塗装不良検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る塗装不良検査方法では、凹凸面を有しこの凹凸面に塗膜が形成された基材1に対して光を照射すると共に前記塗膜からの反射光を検出し、この反射光の強度に基づいて塗装不良を検出する。本発明では、前記基材1に代えて、平坦面を有しこの平坦面に前記塗膜と同一組成の判定用塗膜が形成された判定用基材4に光を照射すると共に塗膜からの反射光を検出し、光の入射方向に対する前記判定用基材4の角度θが所定の角度以上の場合の反射光の最大強度を除外強度とする。そして、基材1の塗膜からの反射光の強度に基づいて塗装不良を検出する際に、前記除外強度以下の強度の反射光の検出結果を除外する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗装不良検査時に除外強度以下の強度の反射光の検出結果を除外することで、反射光の検出結果における基材1の凹凸の影響を低減することができ、基材1における凹凸の位置や程度を考慮することなく塗装不良を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の一例における、判定用基材からの反射光の強度を測定する工程を示す概略図である。
【図2】判定用基材の角度と判定用基材からの反射光の強度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態の一例における、基材からの反射光の強度を測定する工程を示す概略図である。
【図4】同上の斜視図である。
【図5】(a)は基材の一例を示す平面図、(b)は本発明の実施の形態の一例において導出される基材からの反射光の強度の検出結果の平均値を示すグラフである。
【図6】(a)は基材の一例を示す平面図、(b)は従来技術において導出される基材からの反射光の強度の検出結果の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
塗装の対象である基材1としては適宜のものを用いることができるが、好適な例として、セメント系の無機質板等の下地材の表面に有機塗膜を形成したものが挙げられる。有機塗膜を形成するための有機塗料は特に制限されないが、例えばアクリルエマルション系塗料を挙げることができる。この有機塗料は無色透明のクリア塗料であるほか、適宜の顔料や染料等を配合した着色塗料であっても良い。顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料を挙げることができ、これらの群から選ばれる一種を用いるほか、二種以上を併用することもできる。
【0017】
下地材に有機塗膜を形成するにあたっては、例えば下地材に対して有機塗料をスプレー等にて塗布した後、有機塗料の組成に応じた適宜の条件、例えば100〜150℃で30秒以上加熱乾燥することにより成膜して、有機塗膜を形成することができる。有機塗膜の厚みは特に制限されないが、5〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0018】
この基材1の上面(塗装が施される面)に凹凸が形成されている。図5(a)に示す例では、基材1の上面に目地模様6が形成され、且つこの目地模様6で分割された領域に、平坦な領域7、細かい凹凸模様が形成されている領域8及び粗い凹凸模様が形成されている領域9が形成されている。
【0019】
この基材1に形成する紫外線吸収性のクリア塗膜としては、紫外線吸収剤を含有する無機塗膜を挙げることができる。このクリア塗膜は、有機塗膜の表面に紫外線吸収剤を含有する無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、例えば基材1の表面保護や耐候性の向上のために設けられる。
【0020】
無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えばオルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液に、ポリオルガノシロキサンや、アルキルチタン酸塩等の縮合反応触媒を加え、或いは更にシリカを加えたケイ素アルコキシド系塗料等を用いることができる。
【0021】
具体的には、例えば下記式〔1〕で表わされる加水分解性オルガノシランを有機溶媒または水に分散されたコロイダルシリカ中で、X1モルに対し水0.001〜0.5モルを使用する条件下で部分加水分解してなる、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液(A成分)と、下記式〔2〕で表わされ、この式〔2〕中のR2にフェニル基を全R2基に対して1〜30モル%含有するポリオルガノシロキサン(B成分)と、このA成分とB成分との縮合反応を促進する触媒とを必須成分とし、A成分においてシリカを固形分として5〜95重量%含有し、加水分解性オルガノシランの少なくとも50モル%がn=1のオルガノシランで、A成分1〜99重量部に対してB成分99〜1重量部が配合されている無機質塗料を用いることができる。
【0022】
R1nSiX4−n…〔1〕
(式中、R1は同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、Xはアルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基およびアミド基からなる群より選ばれる加水分解性基を示す。)
R2aSi(OH)bO(4−a−b)/2…〔2〕
(式中、R2は同一または異種の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ハロゲン置換炭化水素基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基およびγ−メルカプトプロピル基からなる群より選ばれる、炭素数1〜8の1価炭化水素基を示し、aおよびbはそれぞれ0.2≦a≦2、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数である。)
また、この無機質塗料に含有される紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム等を挙げることができる。この紫外線吸収剤は、好ましくは無機質塗料中の固形分(クリア塗膜を形成する成分)に対して0.1〜20重量%の範囲で含有させる。
【0023】
このような無機質塗料を基材1に静電塗装等して塗布した後、例えば60〜120℃で焼き付け乾燥等することにより成膜することにより、クリア塗膜を形成することができる。このクリア塗膜の厚みは特に制限されないが、通常は1〜10μmの範囲の薄膜に形成される。
【0024】
また、この紫外線吸収性のクリア塗膜に積層して形成される、このクリア塗膜より紫外線吸収性が低い外層クリア塗膜としては、光触媒を含有する無機塗膜を挙げることができる。この外層クリア塗膜は、クリア塗膜の表面に光触媒を含有する無機質塗料を塗布成膜することで形成することができ、例えば基材1の防汚性を向上する目的で形成される。
【0025】
光触媒を含有する無機質塗料としては適宜のものを用いることができるが、例えば上記クリア塗膜を形成するために使用されるケイ素アルコキシド系塗料に酸化チタン等の光触媒を加えたもの等を用いることができる。
【0026】
このような無機質塗料を基材1にスプレー塗装等して塗布した後、例えば60〜120℃で焼き付け乾燥等することにより成膜して、外層クリア塗膜を形成することができる。この外層クリア塗膜の厚みは特に制限されないが、例えば0.2〜1.0μmの範囲に形成される。
【0027】
このようにして上面上に塗膜が形成された基材1について、塗膜の塗装不良検査を行う。図3,4は、塗装不良検査を行うための装置構成の一例を示す。この検査装置は、上面上に塗膜が形成された基材1を搬送するベルトコンベア等の搬送装置10、紫外線光を照射する光源2、反射光を計測する検出器3にて構成されている。
【0028】
光源2はブラックライト等の適宜の紫外線ランプにて構成することができる。この光源2は搬送装置10における基材1の搬送路の上方に、基材1の搬送方向に間隔をあけて二つ設けられている。各光源2は、搬送路上の基材1の一側端から他側端に亘って紫外線を照射するように形成されている。
【0029】
検出器3は紫外線を受光してその強度を計測する機能を有し、例えばCCD紫外線カメラ等で構成することができる。この検出器3は、搬送装置10における基材1の搬送路の上方において、二つの光源2の間の位置の直上に配置される。この検出器3は、二つの光源2の間の領域において基材1の搬送方向と直交する方向に並ぶ複数の視野(分割測定エリア5)からそれぞれ反射される反射光の強度を検出する。この場合、各分割測定エリア5に対応する複数の検出器3を設けてもよく、また一つの検出器3で基材1の搬送方向と直交する方向に走査することにより各分割測定エリア5からの反射光の強度を検出するようにしてもよい。検出器3による各分割測定エリア5ごとの測定結果は複数の画素に分割され、検出器3は各分割測定エリア5ごとに各画素における反射光の強度を検出結果として出力する。そして、基材1を搬送しながら検出器3で各分割測定エリア5からの反射光の検出を順次おこなうことで、基材1の全面に亘って反射光の検出をおこなうことができる。
【0030】
検出器3による検出結果はパーソナルコンピュータ等で構成される適宜の演算処理装置11で処理されて、塗装不良の有無が判定される。このとき演算処理装置11は各分割測定エリア5ごとにその分割測定エリア5内の複数の画素における反射光の検出結果の平均値を導出し、この平均値が所定の閾値を超えている場合には塗装不良が発生していると判定する。また、この塗装不良の発生が判定された反射光の検出時において分割測定エリア5と重なっていた基材1上の領域を、基材1の塗装不良発生位置と特定することができる。
【0031】
このようにして塗装不良検査をおこなうにあたり、演算処理装置11は、分割測定エリア5内の各画素における反射光の検出結果の平均値を導出する際に、所定の除外強度以下の強度の反射光の検出結果を除外した上で、検出結果の平均値を導出する。
【0032】
除外強度は、塗装不良検査の前に予め決定しておく。以下、基材1として下地材上に有機塗膜が形成されたものを用い、この基材1に紫外線吸収性の無機質塗膜と、紫外線吸収性が低い無機質塗膜とを順次形成すると共に各無機質膜について塗装不良検査をおこなう場合について、除外強度の決定方法の一例を説明する。
【0033】
除外強度の決定にあたっては、平坦面を有する判定用基材4を使用する。判定用基材4としては、平坦面を有する以外は上記基材1と同一の、下地材上に有機塗膜が形成されたものを用いる。
【0034】
この判定用基材4に無機質塗膜を形成することなく、図1に示すように塗装不良検査時と同じ条件で光を照射すると共に反射光の強度を測定する。このとき、光の照射方向に対する判定用基材4の角度θ(平坦面の角度)を、塗装不良検査時における光の照射方向に対する基材1の角度(塗装が施された面の角度)と同じ状態として反射光の強度を測定し、更に前記判定用基材4の角度θを変化させた場合の反射光の強度も測定する。これにより、判定用基材4の角度θと、反射光の強度との関係を導出する。
【0035】
また、この判定用基材4の平坦面上に紫外線吸収性の無機質塗膜を形成した場合、及び紫外線吸収性が低い無機質塗膜を形成した場合について、上記と同様にして塗装不良検査時と同じ条件で光を照射すると共に反射光の強度を測定し、判定用基材4の角度θと、反射光の強度との関係を導出する。
【0036】
図2は、光源2として紫外線ランプを使用した場合の、判定用基材4の角度θと、反射光の強度との関係の一例を示すグラフである。このグラフの横軸は光の照射方向に対する判定用基材4の角度θを示し、この角度θは、塗装不良検査時における光の照射方向に対する基材1の角度を基準(0°)としている。また縦軸は、紫外線吸収性が低い無機質塗膜を有する判定用基材4についての、反射光の輝度を基準(100%)とした、反射光の相対輝度を示す。グラフ中のaは無機質塗膜が形成されない場合の反射光の強度を、bは紫外線吸収性の無機質塗膜が形成された場合の反射光の強度を、cは紫外線吸収性が低い無機質塗膜が形成された場合の反射光の強度を、それぞれ示す。
【0037】
図2に示すように、紫外線吸収性の無機質塗膜が形成された場合は紫外線反射性が低くなるため、反射光の強度bは、無機質塗膜が形成されない場合の反射光の強度a及び紫外線吸収性が低い無機質塗膜が形成された場合の反射光の強度cと較べると、低下している。塗装不良検査時には、このような反射光の強度の相違を利用して塗装不良の有無を判断する。すなわち、紫外線吸収性の無機質塗膜が形成された基材1の塗装不良検査時には、下地となる基材1からの反射光の強度は紫外線吸収性の無機質塗膜からの反射光の強度よりも高くなるため、反射光の強度が高い場合に塗装不良が発生していると判断することができる。また紫外線吸収性の無機質塗膜に重ねて、更に紫外線吸収性の低い無機質塗膜が形成された基材1の塗装不良検査時には、下地となる基材1からの反射光の強度は塗膜からの反射光の強度よりも高くなるため、反射光の強度が低い場合に塗装不良が発生していると判断することができる。
【0038】
また、判定用基材4の角度θが大きくなると、それに従って検出器3に入光する各反射光の強度は低くなる。これは、基材1の凹凸部分において基材1表面の角度θが大きい部分では検出器3に入光する反射光の強度が低くなることを示している。
【0039】
除外強度は、判定用基材4の角度θが所定の角度以上となる場合の反射光の最大強度とする。反射光の強度は判定用基材4の角度θが大きくなるに従って減少するため、除外強度は判定用基材4の角度θが前記所定角度にある場合の反射光の強度となる。前記所定角度は適宜設定されるが、塗装不良検査時における光の照射方向に対する基材1の角度を基準(0°)として、40°〜60°の範囲であることが好ましい。
【0040】
また、判定用基材4の角度θが大きくなると、それに従って各反射光間の強度の差が小さくなる。これは、基材1の凹凸部分において基材1表面の角度が大きい部分では、塗装不良検査の対象である塗膜からの反射光の強度とその下地からの反射光の強度との差が小さくなり、反射光の強度差に基づいて塗装不良を判定することが困難になることを示している。そこで、除外強度は、前記のような塗膜と下地との間の反射光の強度差が小さくなる領域が除外されるように設定することが好ましい。このとき、例えば、塗膜と下地との間の反射光の強度差が、塗膜からの反射光の強度に対して所定割合よりも小さくなる領域が除外されるように除外強度を設定することが好ましい。前記所定割合は適宜設定されるが、例えば20%以下の範囲で設定されることが好ましく、特に5〜20%の範囲で設定されることが好ましい。
【0041】
例えば基材1上に紫外線吸収性の無機質塗膜を形成した場合の紫外線吸収性の無機質塗膜の塗装不良検査における除外強度は、判定用基材4の角度θが40°〜60°の範囲にある場合の、紫外線吸収性の無機質塗膜からの反射光の強度bが設定される。またこの除外強度は、反射光の強度bよりも所定割合(例えば10%)だけ高い強度と、無機質塗膜が形成されていない判定用基材4からの反射光の強度aとが重なるような判定用基材4の角度又はこれよりも小さい角度における反射光の強度bが設定される。
【0042】
また、基材1上に更に紫外線吸収性の低い無機質塗膜を形成した場合の紫外線吸収性の低い無機質塗膜の塗装不良検査における除外強度は、判定用基材4の角度θが40°〜60°の範囲にある場合の、紫外線吸収性の低い無機質塗膜からの反射光の強度cが設定される。またこの除外強度は、反射光の強度cよりも所定割合(例えば10%)だけ低い強度と、紫外線吸収性の無機質塗膜からの反射光の強度bとが重なるような判定用基材4の角度又はこれよりも小さい角度における反射光の強度cが設定される。
【0043】
以上のようにして除外強度を設定し、演算処理装置11において、分割測定エリア5内の複数の画素における反射光の検出結果から前記除外強度以下の検出結果を予め除外した上で、残りの検出結果の平均値を導出すると、基材1の凹凸に起因する前記平均値のバラツキが抑制される。このようにして導出される検出結果の平均値の例を図5(b)に示す。図5(b)の縦軸は平均値の値(輝度)を示し、横軸は基材1上の位置を示す。この基材1上の位置は、図5(a)における基材1上の符号イで示されるライン上の位置と対応している。
【0044】
このため、上記検出結果の平均値に基づいて塗装不良の有無を判定する場合には、本実施形態のように基材1の上面に目地模様6、平坦な領域7、細かい凹凸模様が形成されている領域8、粗い凹凸模様が形成されている領域9が形成されるなどして、基材1に凹凸が形成されていたり、凹凸の程度が異なる領域が存在したりしていても、常に一定の閾値を基準にし、この閾値を前記平均値が越えているか否かに基づいて塗装不良の有無を判定することができるようになる。
【0045】
前記閾値は、塗装不良の有無を高い確実性をもって判定することができるように適宜設定されるものであり、基材1の上面の平坦な領域7における塗膜からの反射光(特に傾斜が0°〜20°の範囲の平坦な領域の反射光)を検出する際に塗装不良の検出が可能であり、且つ除外強度以下の検出結果を予め除外することによる効果が望めるように適宜設定することが望ましい。例えば予め塗装不良が存在しないことが確認されている基材1について塗装不良検査時と同じ手法で反射光の検出結果の平均値を導出し、塗膜からの反射光の強度が下地からの反射光の強度よりも低い場合(本実施形態における紫外線吸収性の無機質塗膜の塗装不良検査の場合)は、前記平均値よりも5〜20%高い値を閾値とし、塗膜からの反射光の強度が下地からの反射光の強度よりも高い場合(本実施形態における紫外線吸収性の低い無機質塗膜の塗装不良検査の場合)は、前記平均値よりも5〜20%低い値を閾値とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基材
4 判定用基材
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸面を有しこの凹凸面に塗膜が形成された基材に対して光を照射すると共に前記塗膜からの反射光を検出し、この反射光の強度に基づいて塗装不良を検出する塗装不良検査方法であって、
前記基材に代えて、平坦面を有しこの平坦面に前記塗膜と同一組成の判定用塗膜が形成された判定用基材に光を照射すると共に塗膜からの反射光を検出し、光の入射方向に対する前記判定用基材の角度θが所定の角度以上の場合の反射光の最大強度を除外強度とし、
基材の塗膜からの反射光の強度に基づいて塗装不良を検出する際に、前記除外強度以下の強度の反射光の検出結果を除外することを特徴とする塗装不良検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7751(P2011−7751A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154093(P2009−154093)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】