説明

塗装方法

【課題】メタリック塗装とソリッド塗装との塗装ラインの共用を図り、かつ、省スペース化、省コスト化および省エネルギー化を図る場合にも、優れた品質で効率よく塗装することができる塗装方法を提供すること。
【解決手段】自動車ボディを構成する部材1を、水性塗料により塗装する塗装方法であって、メタリック塗装をするときは、部材1を、第1塗装ブース2では中塗り塗装し、第1予備加熱ブース3では第1予備加熱し、第2塗装ブース4ではベース塗装し、第2予備加熱ブース5では第2予備加熱し、第3塗装ブース6ではクリア塗装し、焼付ブース7では焼き付け、一方、ソリッド塗装をするときは、部材1を、第1塗装ブース2では第1ソリッド塗装し、第1予備加熱ブース3では第1予備加熱し、第2塗装ブース4では第2ソリッド塗装し、第2予備加熱ブース5では第2予備加熱し、第3塗装ブース6では通過させ、焼付ブース7では焼き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装方法、詳しくは、自動車ボディを構成する部材の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディを構成する金属や樹脂からなるパネルなどの部材の塗装方法として、まず、電着塗装により下塗りし、次いで、中塗りした後、仕上げに上塗りすることが、広く知られている。また、上塗り工程では、まず、着色塗料(ベース塗料)でベース塗装し、その後、クリア塗料でクリア塗装すること(メタリック塗装)が普及している。
【0003】
このような塗装方法において、近年、環境負荷を低減する観点から、中塗りおよび上塗りするための塗料として、従来から用いられている有機溶剤系の塗料から、水系の塗料(水性塗料)へ移行することが、進められている。
【0004】
そして、このような水性塗料による中塗りおよび上塗りでは、水性塗料で中塗りした後、ウエット状態のまま着色水性塗料でカラーベース塗装し、さらに、ウエット状態のままクリア塗装した後に、焼き付ける、3コート1ベーク方式の塗装方法が、生産効率の向上を図れる観点より、検討されている。
【0005】
この3コート1ベーク方式では、例えば、各塗装工程において、塗料をウエット状態(ウエットオンウエット)で重ねて塗工することから、中塗層とベース層と間、あるいは、ベース層とクリア層との間での混層を防止し、また、焼付工程での残留水分の突沸を防止すべく、中塗工程とベース塗装工程との間、および、ベース塗装工程とクリア塗装工程との間で、それぞれ予備加熱(プレヒート)することが提案されている。
【0006】
例えば、自動車ボディを構成する部材を水性塗料で中塗りする中塗工程と、中塗りされた部材を予備加熱する第1予備加熱工程と、中塗りが予備加熱された部材を水性塗料でベース塗装するベース塗装工程と、ベース塗装された部材を予備加熱する第2予備加熱工程と、ベース塗装が予備加熱された部材をクリア塗装するクリア塗装工程と、クリア塗装された部材を焼き付ける焼付工程とを備え、第1予備加熱工程および第2予備加熱工程の少なくともいずれかの工程は、所定温度で部材を予備加熱する上流側予備加熱工程と、上流側予備加熱工程よりも高い温度で部材を予備加熱する下流側予備加熱工程とを備えている塗装方法が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
このような塗装方法では、通常、各塗装工程が実施される塗装ブースに、複数の塗装ロボットが設けられており、各塗装ロボットは、部材の水平方向や垂直方向など、単一方向から塗料を噴射するなどして、部材を塗装している。
【0008】
一方、安価な塗装方法として、上記の中塗りを省略したソリッド塗装(1コート1ベーク方式によるトップコート塗装)も、普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−61799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ソリッド塗装する場合には、上記のメタリック塗装における塗装ライン(塗装ブース)を共用し、生産コストの低減を図ることが、望まれる。
【0011】
そのような方法として、上記の中塗工程およびクリア塗装工程が実施されるブースにおいて、部材を回送させるとともに、ベース塗装工程が実施されるブースにおいて、ソリッド塗装する塗装方法が、検討される。
【0012】
しかし、ソリッド塗装は、メタリック塗装のベース塗装に比べて、厚く塗装する必要があることから、塗装ラインのベース塗装工程の長さを、ソリッド塗装に合わせて設計するため、メタリック塗装のベース塗装に必要な長さよりも、塗装ラインが長くなり、多くの設備スペース、設備コストおよびエネルギーを必要とするという不具合がある。
【0013】
この点、省スペース化を図るため、塗装ラインを短縮し、通常のライン長さより短い塗装ラインにおいて、ベース塗装およびソリッド塗装することも検討されるが、そのような場合には、短いラインにおいて一括の工程で厚く塗装されるため、ソリッド塗装において、仕上がりの品質が低下する場合がある。
【0014】
本発明の目的は、メタリック塗装とソリッド塗装との塗装ラインの共用を図り、かつ、省スペース化、省コスト化および省エネルギー化を図る場合にも、優れた品質で効率よく塗装することができる塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の塗装方法は、第1塗装ブース、第1予備加熱ブース、第2塗装ブース、第2予備加熱ブース、第3塗装ブースおよび焼付ブースを順次通過する塗装ラインを用いて、自動車ボディを構成する部材を、水性塗料により塗装する塗装方法であって、メタリック塗装をするときは、前記第1塗装ブースでは、前記部材を中塗り塗装し、前記第1予備加熱ブースでは、中塗りされた前記部材を第1予備加熱し、前記第2塗装ブースでは、第1予備加熱された前記部材をベース塗装し、前記第2予備加熱ブースでは、ベース塗装された前記部材を第2予備加熱し、前記第3塗装ブースでは、第2予備加熱された前記部材をクリア塗装し、前記焼付ブースでは、クリア塗装された前記部材を焼き付け、ソリッド塗装をするときは、前記第1塗装ブースでは、前記部材を第1ソリッド塗装し、前記第1予備加熱ブースでは、第1ソリッド塗装された前記部材を第1予備加熱し、前記第2塗装ブースでは、第1予備加熱された前記部材を第2ソリッド塗装し、前記第2予備加熱ブースでは、第2ソリッド塗装された前記部材を第2予備加熱し、前記第3塗装ブースでは、第2予備加熱された前記部材を通過させ、前記焼付ブースでは、第2予備加熱された前記部材を焼き付けることを特徴としている。
【0016】
このような塗装方法では、メタリック塗装をするときは、部材に中塗り塗装、第1予備加熱、ベース塗装、第2予備加熱、クリア塗装、および、焼き付けを順次実施する一方、ソリッド塗装をするときには、そのソリッド塗装が、メタリック塗装において中塗り塗装が実施される第1塗装ブース、および、ベース塗装が実施される第2塗装ブースにおいて、分割して実施される。
【0017】
そのため、メタリック塗装とソリッド塗装との塗装ラインの共用を図り、かつ、省スペース化、省コスト化および省エネルギー化を図る場合にも、優れた品質で効率よく塗装することができる。
【0018】
また、本発明の塗装方法では、前記第2塗装ブースには、複数の塗装ロボットが設けられ、前記第2塗装ブースにおける、前記塗装ラインの上流側の前記塗装ロボットの塗装軌跡間隔が、前記塗装ラインの下流側の前記塗装ロボットの塗装軌跡間隔よりも、大きいことが好適である。
【0019】
このような塗装方法では、塗装ラインの上流側の塗装ロボットでは、部材を大きい塗装軌跡間隔で塗装し、下流側の塗装ロボットで、部材を、上流側の塗装ロボットより小さい塗装軌跡間隔で塗装することにより、優れた品質を確保できるため、工数の削減およびライン長さの短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の塗装方法によれば、メタリック塗装とソリッド塗装との塗装ラインの共用を図り、かつ、省スペース化、省コスト化および省エネルギー化を図る場合にも、優れた品質で効率よく塗装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の塗装方法における一実施形態を示す工程図であって、(a)は、メタリック塗装する場合の工程図を示し、(b)は、ソリッド塗装する場合の工程図を示す。
【図2】部材に形成される塗膜の一例を示す断面図であって、(a)は、メタリック塗装した場合の塗膜の層構成を示し、(b)は、塗装した場合の塗膜の層構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の塗装方法の一実施形態を示す工程図であって、(a)は、メタリック塗装する場合の工程図を示し、(b)は、ソリッド塗装する場合の工程図を示している。図2は、自動車ボディを構成する部材上に形成される塗膜の層構成を示す断面図であって、(a)は、メタリック塗装した場合の塗膜の層構成を示し、(b)は、ソリッド塗装した場合の塗膜の層構成を示している。
【0023】
図1に示す塗装方法は、自動車ボディを構成する部材1を、水性塗料により塗装する塗装方法であって、この塗装方法には、上流側Uから下流側Dに向かって、第1塗装ブース2、第1予備加熱ブース3、第2塗装ブース4、第2予備加熱ブース5、第3塗装ブース6および焼付ブース7を備える塗装ラインが用いられる。
【0024】
この塗装ラインは、いわゆる分割ブース型であって、3コート1ベーク方式対応型の塗装ラインである。
【0025】
そして、上記3コート1ベーク方式対応型の塗装ラインに適用される、自動車ボディを構成する部材1としては、例えば、車体本体、ドアパネル、ドアパネルが組み付けられた車体本体などが挙げられ、このような部材が、上記塗装ラインにおいて、例えば、メタリック塗装、ソリッド塗装などにより塗装される。
【0026】
より具体的には、例えば、部材1がメタリック塗装される場合には、塗装ラインは、図1(a)に示されるように、第1塗装ブース2が、部材1を中塗り塗装するための中塗り塗装ブース12として、第1予備加熱ブース3が、中塗りされた部材1を乾燥するための中塗り乾燥ブース13として、第2塗装ブース4が、中塗り乾燥ブース13で乾燥された部材1をベース塗装するためのベース塗装ブース14として、第2予備加熱ブース5が、ベース塗装された部材1を乾燥するためのベース乾燥ブース15として、第3塗装ブース6が、ベース乾燥ブース15で乾燥された部材1をクリア塗装するためのクリア塗装ブース16として、焼付ブース7が、クリア塗装された部材1を焼き付けるためのメタリック焼付ブース17として、それぞれ用いられる。
【0027】
なお、部材1への下塗り塗装には、特に限定されないが、例えば、電着塗装などが用いられる。下塗工程は、上記塗装ラインの中塗り塗装ブース12よりも上流側Uに配置した下塗りブース(図示せず)にて下塗りする。これにより、下塗層18(図2参照)が形成される。
【0028】
そして、この塗装方法において、上塗り塗装としてメタリック塗装を採用する場合、すなわち、水性塗料によるベース塗装と、クリア塗装とをする場合には、まず、中塗り塗装ブース12において、部材1を中塗り塗装する(中塗工程)。
【0029】
中塗工程では、上記下塗りブースよりも下流側Dで、かつ、ベース塗装ブース14よりも上流側Uに配置した中塗り塗装ブース12において、水性塗料を用いて、部材1を中塗りする。
【0030】
中塗りに用いられる水性塗料は、特に制限されないが、水溶性または水分散性の樹脂成分、硬化剤および顔料を含有する中塗水性塗料が用いられる。
【0031】
樹脂成分としては、親水性基(例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合など)と、硬化剤と反応する官能基(例えば、水酸基)を有する、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの公知の水性樹脂が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂またはポリエステル樹脂が用いられる。
【0032】
このような樹脂成分は、親水性基の種類により、例えば、塩基性化合物または酸で中和して、水溶化または水分散化するか、あるいは、ポリオキシエチレン結合するものなどでは、そのまま水溶化または水分散化させる。
【0033】
硬化剤としては、特に制限されず、例えば、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。メラミン樹脂としては、より具体的には、親水性メラミンが挙げられ、また、ブロックポリイソシアネートとしては、より具体的には、ポリイソシアネートのイソシアネート基を、例えば、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタンなどのブロック剤でブロックしたものが挙げられる。
【0034】
硬化剤の配合割合は、通常、樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下、好ましくは、20〜50質量部である。
【0035】
また、顔料としては、特に制限されず、通常の着色顔料やメタリック顔料が挙げられる。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性硫酸鉛、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、クロム酸ストロンチウム、シアナミド鉛、モノアゾイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾ、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、透明べんがら(赤)、鉛丹、モノアゾレッド、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩基性クロム酸鉛、酸化クロム、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどが挙げられる。また、メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム粉、フレーク状酸化アルミウム、パールマイカ、フレーク状マイカなどが挙げられる。これら顔料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0036】
顔料の配合割合は、通常、樹脂成分100質量部に対して、120質量部以下、好ましくは、20〜100質量部である。
【0037】
また、中塗水性塗料には、架橋反応を促進させるために、好ましくは、ブロック剤の解離触媒や酸触媒を含有させる。ブロック剤の解離触媒としては、特に制限されず、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。酸触媒としては、例えば、リン酸系、スルホン酸系の酸触媒が挙げられる。
【0038】
触媒の配合割合は、通常、樹脂成分100質量部に対して、0.005〜5質量部、好ましくは、0.01〜3質量部である。
【0039】
また、中塗水性塗料には、必要に応じて、光干渉性顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、反応促進剤(例えば有機スズ化合物など)、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤など、公知の添加剤を適宜配合することもできる。
【0040】
そして、中塗水性塗料は、上記の各成分を水とともに公知の方法によって配合して、樹脂成分を水溶化または水分散化することにより、例えば、その固形分濃度が20〜60質量%、好ましくは、35〜60質量%となるように調製される。
【0041】
中塗り塗装ブース12では、例えば、まず、その上流側Uで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、1対2人)の作業者9により、部材1の内側面が中塗り塗装され、次いで、下流側Dで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、2対4つ)の塗装ロボット10により、部材1の外側面が中塗り塗装される。
【0042】
外側面の塗装として、より具体的には、中塗り塗装ブース12には、塗装ロボット10が、部材1を塗装ラインの流れ方向に直交する方向から挟むように、対として、例えば、2対(4つ)設けられている。
【0043】
そして、この方法では、まず、上流側Uの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その垂直方向から、例えば、フェンダー、フロントドア、リアドアの順に中塗り塗装する。次いで、下流側Dの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その水平方向から、例えば、フード、ルーフ、バックドアの順に中塗り塗装する。
【0044】
中塗り塗装の塗装方法は、特に限定されないが、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが挙げられる。好ましくは、ベル塗装法が挙げられ、その塗装条件は、これに限定されないが、例えば、ベル回転速度20000〜30000min−1、シェービングエア圧力0.5〜1.5kg/cm、ガン距離20〜30m、吐出量150〜350mLである。
【0045】
中塗工程において、中塗水性塗料の塗装膜厚は、焼付け後の中塗層19(図2参照)の膜厚として、例えば、10〜100μm、好ましくは、13〜35μmである。
【0046】
なお、中塗り塗装ブース12内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
【0047】
次いで、この方法では、中塗りされた部材1を、中塗り乾燥ブース13で予備加熱(第1予備加熱)し、中塗層19を乾燥させる(第1乾燥工程)。
【0048】
中塗り乾燥ブース13は、これに限定されないが、例えば、塗装ラインの上流側U(中塗り塗装ブース12側)に配置されて、部材1を温風により加熱するホットエアゾーンと、このホットエアゾーンよりも下流側D(ベース塗装ブース14側)に配置されて、部材1を冷風により冷却するクーリングゾーンと、を備えるものが挙げられる。また、上記ホットエアゾーンは、加熱条件の異なる2以上のホットエアゾーンを有するものであってもよい。
【0049】
第1予備加熱の条件は、特に限定されないが、例えば、熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、65℃〜90℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。
【0050】
なお、ホットエアゾーン内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
【0051】
また、上記クーリングゾーンでの冷却の条件は、特に限定されないが、例えば、冷風の吹き出し温度が、15〜23℃であり、冷風の吹き出し速度が、10m/s以下であり、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、冷却時間が、0.5〜1.3分である。また、このような冷却では、部材の温度を、好ましくは、45℃以下、さらに好ましくは、40℃以下に冷却する。
【0052】
そして、このような中塗り乾燥ブース13での予備加熱(乾燥)により、部材1の内側面および外側面に塗装された中塗水性塗料は、ウエット状態の塗膜、すなわち、中塗層19(図2参照)を形成する。
【0053】
次いで、この方法では、中塗りおよび乾燥された部材1を、ベース塗装ブース14において、水性塗料によりベース塗装する(ベース塗装工程)。
【0054】
ベース塗装に用いられる水性塗料(ベース水性塗料、以下同様。)は、特に限定されないが、例えば、水溶性または水分散性の樹脂成分、硬化剤および顔料を含有するベース水性塗料が挙げられる。
【0055】
ベース水性塗料として、より具体的には、例えば、カルボキシル基や水酸基などを有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂成分と、ブロックポリイソシアネート、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤と、顔料と、その他の添加剤とを、水に溶解または分散させて調製したものが挙げられる。
【0056】
顔料として、例えば、アルミニウム粉、フレーク状酸化アルミウム、パールマイカ、フレーク状マイカなどのメタリック顔料を用いる場合には、メタリック調またはパール調の塗膜を形成することができる。ベース水性塗料における顔料の配合量は、ベース塗装により形成される塗膜が透明性を有し、その塗膜を介して中塗層19の色彩を目視で認識できる程度の配合量とされる。
【0057】
ベース水性塗料は、これに限定されないが、その固形分濃度が、例えば、20〜50質量%、好ましくは、25〜45質量%となるように調製される。
【0058】
ベース塗装ブース14では、例えば、まず、その上流側Uで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、2対4人)の作業者9により、部材1の内側面がベース塗装され、次いで、下流側Dで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、3対6つ)の塗装ロボット10により、部材1の外側面がベース塗装される。
【0059】
外側面の塗装として、より具体的には、ベース塗装ブース14には、塗装ロボット10が、部材1を塗装ラインの流れ方向に直交する方向から挟むように、対として、例えば、3対(6つ)設けられている。
【0060】
そして、この方法において、好ましくは、少なくとも1つ、より好ましくは、1対(2つ)、さらに好ましくは、最も上流側Uの1対(2つ)の塗装ロボット10は、部材1を、水平方向および垂直方向の両方向からベース塗装するために、設けられている。
【0061】
すなわち、この方法では、まず、最も上流側Uの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その水平方向および垂直方向の両方向からベース塗装から、例えば、フード、フェンダ、ルーフ前半分、フロントドア、ルーフ後半分、リアドア、バックドアの順にベース塗装する。次いで、その下流側Dの1対(2つ)の塗装ロボット10(最も上流側Uの塗装ロボット10と、最も下流側Dの塗装ロボット10との間に配置される塗装ロボット10)により、部材1を、その垂直方向から、例えば、フェンダ、フロントドア、リアドアの順にベース塗装する。その後、最も下流側Dの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その水平方向から、例えば、フード、ルーフ、バックドアの順にベース塗装する。
【0062】
また、ベース塗装ブース14における、塗装ラインの上流側Uの(具体的には、最も上流側Uの1対(2つ)の)塗装ロボット10の塗装軌跡間隔は、塗装ラインの下流側Dの(具体的には、上記最も上流側Uの1対(2つ)を除く)塗装ロボット10の塗装軌跡間隔よりも、大きく設定される。
【0063】
このような塗装方法では、塗装ラインの上流側Uの塗装ロボット10では、部材1を大きい塗装軌跡間隔で(粗く)塗装し、下流側Dの塗装ロボット10で、部材1を、上流側Uの塗装ロボット10より小さい塗装軌跡間隔で(細かく)塗装することにより、優れた品質を確保できるため、工数の削減およびライン長さの短縮化を図ることができる。
【0064】
具体的には、上流側Uの塗装ロボット10の塗装軌跡間隔は、下流側Dの塗装ロボット10の塗装軌跡間隔の、例えば、2倍である。
【0065】
ベース塗装の塗装方法は、特に限定されないが、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが挙げられる。好ましくは、ベル塗装法が挙げられ、その塗装条件は、これに限定されないが、例えば、ベル回転速度25000〜35000min−1、シェービングエア圧力1.0〜2.0kg/cm、ガン距離20〜30cm、吐出量150〜350mLである。
【0066】
ベース塗装工程において、ベース水性塗料の塗装膜厚は、これに限定されないが、焼付け後のベース層20(図2参照)の膜厚として、例えば、10〜100μm、好ましくは、10〜25μmである。
【0067】
なお、ベース塗装ブース14内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
【0068】
次いで、この方法では、ベース塗装された部材1を、ベース乾燥ブース15で予備加熱(第2予備加熱)し、ベース層20を乾燥させる(第2乾燥工程)。
【0069】
ベース乾燥ブース15は、これに限定されないが、例えば、塗装ラインの上流側U(ベース塗装ブース14側)に配置されて、部材1を温風により加熱するホットエアゾーンと、このホットエアゾーンよりも下流側D(クリア塗装ブース16側)に配置されて、部材1を冷風により冷却するクーリングゾーンと、を備えるものが挙げられる。また、上記ホットエアゾーンは、加熱条件の異なる2以上のホットエアゾーンを有するものであってもよい。
【0070】
第2予備加熱の条件は、特に限定されないが、例えば、上記ホットエアゾーンでの熱風の吹き出し温度が、45〜100℃、好ましくは、65〜90℃であり、熱風の吹き出し速度が、0.3〜10.0m/sであり、熱風の被塗面(部材の表面)での風速が、1〜3m/sであり、熱風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、予備加熱時間が、0.5〜1.5分である。
【0071】
なお、ホットエアゾーン内の温湿度は、例えば、温度20〜30℃、水蒸発可能量10〜25g/kgに管理する。
【0072】
また、上記クーリングゾーンでの冷却の条件は、特に限定されないが、例えば、冷風の吹き出し温度が、15〜23℃であり、冷風の吹き出し速度が、10m/s以下であり、冷風の吹き出し口から被塗面までの距離が、20〜50cmであり、冷却時間が、0.5〜1.3分である。また、このような冷却では、部材1の温度を、好ましくは、45℃以下、さらに好ましくは、40℃以下に冷却する。
【0073】
そして、このようなベース乾燥ブース15での予備加熱(乾燥)により、部材1の内側面および外側面に塗装されたベース水性塗料は、ウエット状態の塗膜、すなわち、ベース層20(図2参照)を形成する。
【0074】
次いで、この方法では、ベース塗装および乾燥された部材1を、クリア塗装ブース16において、クリア塗装する(クリア塗装工程)。
【0075】
クリア塗装に用いられる塗料は、特に限定されず、公知のクリア塗料が挙げられる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂成分と、ブロックポリイソシアネート、メラミン樹脂、尿素樹脂などの架橋剤と、その他の添加剤とを、有機溶剤または水に溶解または分散させて調製したものが挙げられる。
【0076】
また、クリア塗料には、必要に応じて、透明性を阻害しない範囲において、ベース顔料やメタリック顔料を含有させることができ、さらに、体質顔料、紫外線吸収剤などを適宜含有させることができる。
【0077】
クリア塗料は、これに限定されないが、その固形分濃度が、例えば、30〜70質量%、好ましくは、40〜60質量%となるように調製される。
【0078】
クリア塗装ブース16では、例えば、まず、その上流側Uで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、1対2人)の作業者9により、部材1の内側面がクリア塗装され、次いで、下流側Dで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、2対4つ)の塗装ロボット10により、部材1の外側面がクリア塗装される。
【0079】
外側面の塗装として、より具体的には、クリア塗装ブース16には、塗装ロボット10が、部材1を塗装ラインの流れ方向に直交する方向から挟むように、対として、例えば、2対(4つ)設けられている。
【0080】
そして、この方法では、まず、上流側Uの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その垂直方向から、例えば、フェンダ、フロントドア、リアドアの順にクリア塗装する。次いで、下流側Dの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その水平方向から、例えば、フード、ルーフ、バックドアの順にクリア塗装する。
【0081】
クリア塗装の塗装方法は、特に限定されないが、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが用いられる。好ましくは、ベル塗装法が挙げられ、その塗装条件は、これに限定されないが、例えば、ベル回転速度20000〜35000min−1、シェービングエア圧力0.5〜2.0kg/cm、ガン距離20〜30cm、吐出量150〜400mLである。
【0082】
クリア塗装工程において、クリア塗料の塗装膜厚は、これに限定されないが、焼付け後のクリア層21(図2参照)の膜厚として、例えば、10〜60μm、好ましくは、25〜50μmである。
【0083】
次いで、この方法では、クリア塗装された部材1の、ベース層20およびクリア層21を、メタリック焼付ブース17において、焼き付ける(焼付工程)。
【0084】
焼き付けの方法は、特に限定されないが、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などの焼き付け方法が挙げられる。
【0085】
焼き付け温度は、これに限定されないが、例えば、80〜170℃、好ましくは、120〜160℃であり、焼き付け時間は、20〜40分程度である。
【0086】
こうして、図2(a)に示すように、下塗層18の上に、中塗層19、ベース層20およびクリア層21をこの順で積層した塗膜が形成される。
【0087】
一方、上記3コート1ベーク方式対応型の塗装ラインを用いる塗装方法において、メタリック塗装に代えて、ソリッド塗装(1コート1ベーク方式によるトップコート塗装)を採用する場合には、ソリッド塗装を、2回に分割して実施する。詳しくは、部材1を、中塗り塗装ブース12での中塗り塗装に代えて、水性塗料により第1ソリッド塗装し、ベース塗装ブース14でのベース塗装に代えて、水性塗料により第2ソリッド塗装する。
【0088】
より具体的には、部材1がソリッド塗装される場合には、塗装ラインは、図1(b)に示されるように、第1塗装ブース2が、部材1を第1ソリッド塗装するための第1ソリッド塗装ブース22として、第1予備加熱ブース3が、第1ソリッド塗装された部材1を乾燥するための第1ソリッド乾燥ブース23として、第2塗装ブース4が、第1ソリッド乾燥ブース23で乾燥された部材1を第2ソリッド塗装するための第2ソリッド塗装ブース24として、第2予備加熱ブース5が、第2ソリッド塗装された部材1を乾燥するための第2ソリッド乾燥ブース25として、焼付ブース7が、第2ソリッド乾燥ブース25で乾燥された部材1を焼き付けるためのメタリック焼付ブース17として、それぞれ用いられる。また、第3塗装ブース6では、部材1は、塗装されることなく通過する。
【0089】
なお、部材1への下塗り塗装には、上記メタリック塗装と同様に、特に限定されないが、例えば、電着塗装などが用いられる。下塗工程は、上記塗装ラインの第1塗装ブース12よりも上流側Uに配置した下塗りブース(図示せず)にて下塗りする。これにより、上記のメタリック塗装と同様、下塗層28(図2参照)が形成される。
【0090】
そして、この塗装方法(上記3コート1ベーク方式対応型の塗装ラインを用いる塗装方法)において、上塗り塗装としてソリッド塗装を採用する場合、すなわち、水性塗料によるソリッド塗装をする場合には、まず、第1ソリッド塗装ブース22において、部材1を第1ソリッド塗装する(第1ソリッド塗装工程)。
【0091】
第1ソリッド塗装に用いられる水性塗料(ソリッド水性塗料、以下同様。)は、特に限定されないが、例えば、水溶性または水分散性の樹脂成分、硬化剤および顔料を含有するソリッド水性塗料が挙げられる。
【0092】
樹脂成分としては、親水性基(例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合など)と、硬化剤と反応する官能基(例えば、水酸基)を有する、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの公知の水性樹脂が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂またはポリエステル樹脂が用いられる。
【0093】
このような樹脂成分は、親水性基の種類により、例えば、塩基性化合物または酸で中和して、水溶化または水分散化するか、あるいは、ポリオキシエチレン結合するものなどでは、そのまま水溶化または水分散化させる。
【0094】
硬化剤としては、特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、ブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。メラミン樹脂としては、より具体的には、親水性メラミンが挙げられ、また、ブロックポリイソシアネートとしては、より具体的には、ポリイソシアネートのイソシアネート基を、例えば、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタンなどのブロック剤でブロックしたものが挙げられる。
【0095】
硬化剤の配合割合は、通常、樹脂成分100質量部に対して、60質量部以下、好ましくは、20〜50質量部である。
【0096】
また、顔料としては、特に限定されず、通常の着色顔料が挙げられる。着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性硫酸鉛、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、クロム酸ストロンチウム、シアナミド鉛、モノアゾイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾ、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、イソインドリンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、透明べんがら(赤)、鉛丹、モノアゾレッド、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩基性クロム酸鉛、酸化クロム、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどが挙げられる。これら顔料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0097】
顔料の配合割合は、通常、樹脂成分100質量部に対して、120質量部以下、好ましくは、20〜100質量部である。
【0098】
また、ソリッド水性塗料には、架橋反応を促進させるために、好ましくは、ブロック剤の解離触媒や酸触媒を含有させる。ブロック剤の解離触媒としては、特に限定されず、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物が挙げられる。酸触媒としては、例えば、リン酸系、スルホン酸系の酸触媒が挙げられる。
【0099】
触媒の配合割合は、通常、樹脂成分100質量部に対して、0.005〜5質量部、好ましくは、0.01〜3質量部である。
【0100】
また、ソリッド水性塗料には、必要に応じて、光干渉性顔料、体質顔料、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、反応促進剤(例えば有機スズ化合物など)、消泡剤、増粘剤、防錆剤、紫外線吸収剤、表面調整剤など、公知の添加剤を適宜配合することもできる。
【0101】
ソリッド水性塗料は、上記の各成分を水とともに公知の方法によって配合して、樹脂成分を水溶化または水分散化することにより、例えば、その固形分濃度が20〜70質量%、好ましくは、35〜60質量%となるように調製される。
【0102】
第1ソリッド塗装ブース22では、上記中塗り塗装ブース12と同様、例えば、まず、その上流側Uで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、1対2人)の作業者9により、部材1の内側面が第1ソリッド塗装され、次いで、下流側Dで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、2対4つ)の塗装ロボット10により、部材1の外側面が第1ソリッド塗装される。
【0103】
外側面の塗装として、より具体的には、第1ソリッド塗装ブース22には、塗装ロボット10が、部材1を塗装ラインの流れ方向に直交する方向から挟むように、対として、例えば、2対(4つ)設けられている。
【0104】
そして、この方法では、まず、上流側Uの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その垂直方向から、例えば、フェンダ、フロントドア、リアドアの順に第1ソリッド塗装する。次いで、下流側Dの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その水平方向から、例えば、フード、ルーフ、バックドアの順に第1ソリッド塗装する。
【0105】
第1ソリッド塗装の塗装方法は、特に限定されないが、上記中塗り塗装ブース12と同様、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが挙げられる。より具体的には、例えば、ベル塗装法が挙げられ、その塗装条件は、これに限定されないが、例えば、ベル回転速度20000〜30000min−1、シェービングエア圧力0.5〜1.5kg/cm、ガン距離20〜30m、吐出量150〜350mLである。
【0106】
第1ソリッド塗装工程において、ソリッド水性塗料の塗装膜厚は、これに限定されないが、焼付け後の第1ソリッド層29(図2参照)の膜厚として、例えば、5〜50μm、好ましくは、10〜20μmである。
【0107】
なお、第1ソリッド塗装ブース22内の温度は、例えば、20〜30℃に管理する。
【0108】
次いで、この方法では、第1ソリッド塗装された部材1を、第1ソリッド乾燥ブース23で予備加熱(第1予備加熱)し、第1ソリッド層29を乾燥させる(第1乾燥工程)。
【0109】
第1予備加熱の条件は、特に限定されないが、例えば、上述のメタリック塗装における中塗層19の第1予備加熱および乾燥と同様に、設定する。
【0110】
そして、このような第1ソリッド乾燥ブース23での予備加熱(乾燥)により、部材1の内側面および外側面に塗装されたソリッド水性塗料は、ウエット状態の塗膜、すなわち、第1ソリッド層29(図2参照)を形成する。
【0111】
次いで、この方法では、第1ソリッド塗装および乾燥された部材1を、第2ソリッド塗装ブース24において、水性塗料により第2ソリッド塗装する(第2ソリッド塗装工程)。
【0112】
第2ソリッド塗装に用いられる水性塗料としては、例えば、上記したソリッド水性塗料が挙げられる。
【0113】
第2ソリッド塗装ブース24では、上記ベース塗装ブース14と同様、例えば、まず、その上流側Uで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、2対4人)の作業者9により、部材1の内側面が第2ソリッド塗装され、次いで、下流側Dで、部材1を挟んで対向配置される単数または複数対(例えば、3対6つ)の塗装ロボット10により、部材1の外側面が第2ソリッド塗装される。
【0114】
外側面の塗装として、より具体的には、第2ソリッド塗装ブース24には、塗装ロボット10が、部材1を塗装ラインの流れ方向に直交する方向から挟むように、対として、例えば、3対(6つ)設けられている。
【0115】
そして、この方法において、好ましくは、少なくとも1つ、より好ましくは、1対(2つ)、さらに好ましくは、最も上流側Uの1対(2つ)の塗装ロボット10は、部材1を、水平方向および垂直方向の両方向から第2ソリッド塗装するために、設けられている。
【0116】
すなわち、この方法では、まず、最も上流側Uの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その水平方向および垂直方向の両方向からベース塗装から、例えば、フード、フェンダ、ルーフ前半分、フロントドア、ルーフ後半分、リアドア、バックドアの順に第2ソリッド塗装する。次いで、その下流側Dの1対(2つ)の塗装ロボット10(最も上流側Uの塗装ロボット10と、最も下流側Dの塗装ロボット10との間に配置される塗装ロボット10)により、部材1を、その垂直方向から、例えば、フェンダ、フロントドア、リアドアの順に第2ソリッド塗装する。その後、最も下流側Dの1対(2つ)の塗装ロボット10により、部材1を、その水平方向から、例えば、フード、ルーフ、バックドアの順に第2ソリッド塗装する。
【0117】
また、第2ソリッド塗装ブース24における、塗装ラインの上流側Uの(具体的には、最も上流側Uの1対(2つ)の)塗装ロボット10の塗装軌跡間隔は、塗装ラインの下流側Dの(具体的には、上記最も上流側Uの1対(2つ)を除く)塗装ロボット10の塗装軌跡間隔よりも、大きく設定される。
【0118】
このような塗装方法では、塗装ラインの上流側Uの塗装ロボット10では、部材1を大きい塗装軌跡間隔で(粗く)塗装し、下流側Dの塗装ロボット10で、部材1を、上流側Uの塗装ロボット10より小さい塗装軌跡間隔で(細かく)塗装することにより、優れた品質を確保できるため、工数の削減およびライン長さの短縮化を図ることができる。
【0119】
具体的には、上流側Uの塗装ロボット10の塗装軌跡間隔は、下流側Dの塗装ロボット10の塗装軌跡間隔の、例えば、2倍である。
【0120】
なお、ソリッド塗装では、上流側Uの塗装ロボット10の稼動を停止し、第1ソリッド塗装の後、第2ソリッド塗装の下流側Dの塗装ロボット10のみで第2ソリッド塗装することもできる。
【0121】
第2ソリッド塗装の塗装方法は、特に限定されないが、上記ベース塗装ブース14と同様、例えば、エアスプレー法、エアレススプレー法、静電塗装法などが挙げられる。好ましくは、ベル塗装法が挙げられ、その塗装条件は、これに限定されないが、例えば、ベル回転速度25000〜35000min−1、シェービングエア圧力1.0〜2.0kg/cm、ガン距離20〜30cm、吐出量150〜350mLである。
【0122】
第2ソリッド塗装工程において、ソリッド水性塗料の塗装膜厚は、これに限定されないが、焼付け後の第2ソリッド層30(図2参照)の膜厚として、例えば、10〜50μm、好ましくは、10〜20μmである。
【0123】
また、第1ソリッド層29および第2ソリッド層30(以下、ソリッド層31として総称する)の膜厚の合計が、上記のベース層20より厚く、例えば、20〜100μm、好ましくは、25〜40μmである。
【0124】
次いで、この方法では、第2ソリッド塗装された部材1を、第2ソリッド乾燥ブース25で予備加熱(第2予備加熱)し、第2ソリッド層30を乾燥させる(第2乾燥工程)。
【0125】
第2予備加熱の条件は、特に限定されないが、例えば、上述のメタリック塗装におけるベース層20の第2予備加熱および乾燥と同様に、設定する。
【0126】
そして、このような第2ソリッド乾燥ブース25での予備加熱(乾燥)により、部材1の内側面および外側面に塗装されたソリッド水性塗料は、ウエット状態の塗膜、すなわち、第2ソリッド層30(図2参照)を形成する。
【0127】
次いで、この方法では、第2ソリッド塗装および乾燥された部材1に、第3塗装ブース6(メタリック塗装においてクリア塗装するための第3塗装ブース6)を、単に通過させる。すなわち、3塗装ブース6での工程を、空工程とする。
【0128】
その後、第2ソリッド塗装および乾燥された部材1の、ソリッド層31を、ソリッド焼付ブース27において、焼き付ける(焼付工程)。
【0129】
焼き付けの方法は、特に限定されないが、上記メタリック焼付ブース17と同様、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などの焼き付け方法が挙げられる。
【0130】
焼き付け温度は、これに限定されないが、例えば、80〜170℃、好ましくは、120〜160℃であり、焼き付け時間は、20〜40分程度である。
【0131】
こうして、図2(b)に示すように、下塗層28の上に、ソリッド層31(第1ソリッド層29および第2ソリッド層30)を積層した塗膜が形成される。
【0132】
そして、このような塗装方法では、メタリック塗装をするときは、部材1に中塗り塗装、第1予備加熱、ベース塗装、第2予備加熱、クリア塗装、および、焼き付けを順次実施する一方、ソリッド塗装をするときには、そのソリッド塗装が、メタリック塗装において中塗り塗装が実施される第1塗装ブース2(中塗り塗装ブース12)、および、ベース塗装が実施される第2塗装ブース4(ベース塗装ブース14)において、分割して実施される。
【0133】
そのため、メタリック塗装とソリッド塗装との塗装ラインの共用を図り、かつ、省スペース化、省コスト化および省エネルギー化を図る場合にも、優れた品質で効率よく塗装する。
【0134】
なお、図示しないが、上記塗装ラインは、任意的に、各塗装ブース前、とりわけ、第1塗装ブース2前に、部材表面から埃などを取り除くための除塵ブース(図示せず)を備えることができ、また、各塗装ブース内において、例えば、塗装状態を補正するための補正装置(図示せず)を備えることができる。
【0135】
また、本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0136】
1 部材
2 第1塗装ブース
3 第1予備加熱ブース
4 第2塗装ブース
5 第2予備加熱ブース
6 第3塗装ブース
7 焼付ブース
12 中塗り塗装ブース
13 中塗り乾燥ブース
14 ベース塗装ブース
15 ベース乾燥ブース
16 クリア塗装ブース
17 メタリック焼付ブース
22 第1ソリッド塗装ブース
23 第1ソリッド乾燥ブース
24 第2ソリッド塗装ブース
25 第2ソリッド乾燥ブース
27 ソリッド焼付ブース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1塗装ブース、第1予備加熱ブース、第2塗装ブース、第2予備加熱ブース、第3塗装ブースおよび焼付ブースを順次通過する塗装ラインを用いて、自動車ボディを構成する部材を、水性塗料により塗装する塗装方法であって、
メタリック塗装をするときは、
前記第1塗装ブースでは、前記部材を中塗り塗装し、
前記第1予備加熱ブースでは、中塗りされた前記部材を第1予備加熱し、
前記第2塗装ブースでは、第1予備加熱された前記部材をベース塗装し、
前記第2予備加熱ブースでは、ベース塗装された前記部材を第2予備加熱し、
前記第3塗装ブースでは、第2予備加熱された前記部材をクリア塗装し、
前記焼付ブースでは、クリア塗装された前記部材を焼き付け、
ソリッド塗装をするときは、
前記第1塗装ブースでは、前記部材を第1ソリッド塗装し、
前記第1予備加熱ブースでは、第1ソリッド塗装された前記部材を第1予備加熱し、
前記第2塗装ブースでは、第1予備加熱された前記部材を第2ソリッド塗装し、
前記第2予備加熱ブースでは、第2ソリッド塗装された前記部材を第2予備加熱し、
前記第3塗装ブースでは、第2予備加熱された前記部材を通過させ、
前記焼付ブースでは、第2予備加熱された前記部材を焼き付ける
ことを特徴とする、塗装方法。
【請求項2】
前記第2塗装ブースには、複数の塗装ロボットが設けられ、
前記第2塗装ブースにおける、前記塗装ラインの上流側の前記塗装ロボットの塗装軌跡間隔が、前記塗装ラインの下流側の前記塗装ロボットの塗装軌跡間隔よりも、大きいことを特徴とする、請求項1に記載の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−96136(P2012−96136A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243940(P2010−243940)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】