説明

塗装板

【課題】部分的に塗装がなされないことによって筋状に下地塗膜が現れても、目立つことを防ぐことができる塗装板を提供する。
【解決手段】長手方向に沿う両側の端縁に接続用の実部1が設けられた矩形の基板2の表面に、ほぼ全面に亘って塗装が施された塗装板に関する。塗装面には、長手方向に沿う端縁とほぼ平行に、連続的あるいは断続的に細線模様3が複数本形成されている。基板2の塗装面に部分的に塗装がなされないことで、塗装面に筋状に下地が現れても、また基板2の端面aに塗装がなされないことで、塗装板Aを接続する端縁に沿って筋状に下地が現れても、これらの筋状に現れる下地は塗装面に形成した細線模様3に紛れて、目立たなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面にインクジェットなどで塗装を施すことによって形成される塗装板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外装板などとして形成される塗装板は、セメント系等の基板の表面に塗装を施すことによって作製されている。そして近時、インクジェットプリンターを塗装機として用い、搬送コンベアで基板を搬送してこのインクジェット式の塗装機の塗装ノズルヘッドの下方を通過させながら、ノズルヘッドからインクを噴射させることによって、基板の表面を塗装することが行なわれている(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
このようなインクジェット塗装機においては、ノズルヘッドに多数設けた噴射ノズルからインクを液滴として噴射させ、このインクの液滴を基板の表面に付着させることによって、基板の表面を塗装することができるものである。ここで噴射ノズルはノズルヘッドに多数設けられているが、小さな孔として形成されているので、噴射ノズルにはインク詰まりが発生し易い。
【0004】
そしてこのようにノズルヘッドに設けた噴射ノズルの一部に詰まりが発生すると、この詰まった噴射ノズルからはインクが噴射されないので、基板の表面には部分的に塗装がされない部分が生じる。またインクジェット塗装は、基板を搬送コンベアで搬送しながら、ノズルヘッドの噴射ノズルからインクを基板に噴射して行なうために、一部の噴射ノズルに詰まりが発生していると、塗装がされない部分は基板の搬送方向に沿った直線の筋状に生じるものであり、塗装面の下地が筋状に露出することになる。従って、インクジェット塗装においては、噴射ノズルの一部に詰まりが発生すると、塗装板の塗装面に下地の色が筋状に表れることになり、これが目だって塗装不良となり易いものであった。
【0005】
一方、外装板などとして使用される塗装板Aにおいて、基板2の上下や左右の両側の端縁に実部1が設けてあり、家屋の外壁に塗装板Aを施工する際に、図9に示すように、壁下地10に設けた取付金具11に塗装板Aの一方の端縁の実部1と他方の端縁の実部1を係合することによって、壁下地10に塗装板Aを固定した状態で、隣り合う塗装板Aを実部1同士の嵌合で接続するようにしてある。
【0006】
そしてこのように基板2の実部1を設けた端面aは基板2の表面に対して垂直な面に形成されているが、インクジェット塗装機で塗装をする場合、ノズルヘッドの噴射ノズルからインクの液滴は直進して飛翔するため、基板2の表面にはインクの液滴が付着して塗装が正常に行なわれるが、基板2の表面と垂直な端面aはインクの液滴の飛翔方向と平行な面であって、インクの液滴が付着し難く、この端面aには塗装がなされず、下地が露出することが多い。
【0007】
しかし、塗装板Aを上記のように施工する際に、基板2の厚み寸法の誤差や、取付金具11に実部1を係合する際の浮き上がりや、壁下地10の不陸などで、接続する塗装板Aの表面が面一に揃わず、図9(a)のように上側の塗装板Aが飛び出したり、図9(b)のように下側の塗装板Aが飛び出したりして、接続部に段差が発生することがある。そしてこのように塗装板Aの接続部に段差が発生すると、この段差に、インクジェット塗装がなされず下地が露出している基板2の端面aの一部が表れることになり、下地の色が塗装板Aの接続端縁に沿って筋状に現れ、塗装板Aを張って形成される壁の美観を損なうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−246224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、部分的に塗装がなされないことによって筋状に下地が現れても、目立つことを防ぐことができる塗装板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る塗装板は、長手方向に沿う両側の端縁に接続用の実部1が設けられた矩形の基板2の表面に、ほぼ全面に亘って塗装が施された塗装板であって、塗装面には、長手方向に沿う端縁とほぼ平行に、連続的あるいは断続的に細線模様3が複数本形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
このように基板2の塗装面に長手方向に沿う端縁とほぼ平行に細線模様3を形成することによって、基板2の塗装面に部分的に塗装がなされないことで、塗装面に筋状に下地が現れても、また基板2の端面aに塗装がなされないことで、塗装板Aの接続端部に沿って生じる段差で筋状に下地が現れても、これらの筋状に現れる下地は塗装面に形成した細線模様3に紛れることになり、目立つことを防ぐことができるものである。
【0012】
また本発明は、基板2を長手方向に搬送しながら、搬送方向と交差する方向で基板2を横切るように配置された多数の噴射ノズル4を備えたインクジェット塗装機5を用いて、噴射ノズル4からのインクの噴出によって基板2の表面に塗装が施されたものであることを特徴とするものである。
【0013】
このようにインクジェット塗装機5で塗装する場合、一部の噴射ノズル4の詰まりで塗装面に筋状に下地が現れるおそれがあり、また基板2の端面に塗装がなされず、塗装板Aの接続端部に沿って筋状に下地が現れるおそれがあるが、これらの筋状に現れる下地は、基板2の塗装面に形成した細線模様3に紛れて、目立たなくなるものである。
【0014】
また本発明は、基板2の表面に施された下地塗膜6の上に塗装が施された塗装板Aにおいて、細線模様3は下地塗膜6とほぼ同色に塗装して形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
このように細線模様3を下地塗膜6とほぼ同色に塗装して形成することによって、基板2の塗装面に部分的に塗装がなされないことで、塗装面に筋状に下地塗膜6の色が現れても、また基板2の端面に塗装がなされないことで、塗装板Aを接続する端縁に沿って筋状に下地塗膜6の色が現れても、下地塗装6の色と同色に形成した細線模様3と紛れることになり、目立つことを防ぐことができるものである。
【0016】
また本発明は、基板2の表面に施された下地塗膜6の上に塗装が施された塗装板Aにおいて、部分的に塗装しないで下地塗膜6を露出させることによって、細線模様3が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
このように下地塗膜6を露出させて細線模様3を形成することによって、基板2の塗装面に部分的に塗装がなされないことで、塗装面に筋状に下地塗膜6の色が現れても、また基板2の端面に塗装がなされないことで、塗装板Aの接続端部に沿って筋状に下地塗膜6の色が現れても、下地塗膜6を露出させて形成される細線模様3と紛れることになり、目立つことを防ぐことができるものである。しかもこのように部分的に塗装しないようにすることによって、インクの塗装量を少なくすることができるものである。
【0018】
また本発明において、細線模様3は、80dpi以上の解像度で形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
このように、細線模様3を80dpi以上の解像度の太さで細線模様3を形成することによって、細線模様3が目立ち過ぎることを防ぐことができ、細線模様3の形成で却って塗装板の外観を損ねるようなことがなくなるものである。
【0020】
また本発明において、細線模様3は、0.1〜1.0mmの太さで形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
このように細線模様3を0.1mm以上の太さで形成することによって、筋状に現れる下地が細線模様3で目立つことを防ぐ効果を高く得ることができるものであり、また細線模様3を1.0mm以下の太さで形成することによって、細線模様3が目立ち過ぎることを防ぐことができ、細線模様3の形成で却って塗装板の外観を損ねるようなことがなくなるものである。
【0022】
また本発明は、表面に長手方向と平行な複数本の凹溝9が形成された基板2を用い、上記細線模様3は少なくとも凹溝9に形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
このように目地となる凹溝9に細線模様3を形成することによって、基板2の接続端部間に形成される目地内に段差があって筋状に下地が現れても、凹溝9に形成した細線模様3と紛れて、目立つことを防ぐことができるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板2の塗装面に部分的に塗装がなされないことによって、塗装面に筋状に下地塗膜6が現れても、また基板2の端面に塗装がなされないことによって、塗装板Aの接続端部に沿って筋状に下地塗膜6が現れても、これらの下地塗膜6の筋は塗装面に形成した細線模様3と紛れるものであり、下地塗膜6の筋が目立って外観を損ねることを防ぐことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は一部の正面図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図2】インクジェット装置を示すものであり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
【図3】80dpiでインクジェット塗装をした塗装板の一部の写真をプリントした図であり、(a)は全面塗装したもの、(b)は一部の噴射ノズルからインクを噴射しないで細線模様を形成したものを示す。
【図4】127dpiでインクジェット塗装をした塗装板の一部の写真をプリントした図であり、(a)は全面塗装したもの、(b)は一部の噴射ノズルからインクを噴射しないで細線模様を形成したものを示す。
【図5】一部の噴射ノズルからインクを噴射しないで細線模様を形成した塗装板の一部の写真をプリントした図であり、(a)は60dpiでインクジェット塗装したもの、(b)は80dpiでインクジェット塗装したものを示す。
【図6】一部の噴射ノズルからインクを噴射しないで細線模様を形成した塗装板の一部の写真をプリントした図であり、(a)は127dpiでインクジェット塗装したもの、(b)は254dpiでインクジェット塗装したものを示す。
【図7】本発明の他の実施の形態の一例を示す一部の斜視図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態の一例を示す正面図である。
【図9】塗装板の接続状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
基板2としては、窯業系や金属系のように無機質のものであっても、樹脂系や木質系のように有機質のものであっても、いずれでも使用することができる。窯業系の基板2は外壁材や内装材等の用途に使用されるものである。基板2は横長あるいは縦長の矩形に形成されるものであり、長手方向に沿う上下両端面の端縁にはそれぞれ全長に渡って実部1が設けてある。基板2の上端面には屋内側端縁において実部1を突設し、基板2の下端面には屋外側端縁において突部1を突設するようにしてある。実部1は基板2の短手方向に沿う両端縁に設けてあってもよい。
【0028】
基板2の表面には、溶剤系、水溶性あるいはエマルション系のシーラーにより目止めを行なった後に、受理層が下地塗膜6として形成してある。インクジェット塗装を行なう場合、受理層はインクを定着させるために必要な層であり、水性塗料で形成することができる。このように水性塗料で受理層を形成することによって、環境負荷を低減することができるものである。この水性塗料としては、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料や、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料を用いることができる。水性塗料には、体質顔料と吸湿性樹脂のうちの少なくとも一方が配合されるものであり、これによりインクの定着性を向上させることができると共に、発色性も向上させることができるものである。ここで体質顔料としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、多孔質シリカ、珪藻土等を用いることができ、吸湿性樹脂としては、酢酸ビニル、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール等のインク吸収性ポリマー等を用いることができる。下地塗膜6として受理層を形成するにあたっては、基板2の表面にスプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等を用いて水性塗料を塗布量30〜200g/m(wet)で塗布することによって、行なうことができる。
【0029】
次に、基板2の表面に塗装を行なうにあたって、インクジェット方式で塗装を行なう方法について説明する。インクジェット塗装するためのインクジェット塗装装置は、図2に概略構成を示すように、噴射ノズル4を設けたノズルヘッド7、ノズルヘッド7の噴射ノズル4にインクを供給するインク供給タンク12、ノズルヘッド7の噴射ノズル4からのインクの噴射を制御する塗装制御システム13などを設けたインクジェット塗装機5と、基板2を搬送する搬送コンベア14とを備えて形成されるものである。搬送コンベア14はインクジェット塗装機5の下側に配置されるものであり、インクジェット塗装機5に基板2を導入する前方位置から、インクジェット塗装機5の直下位置及びインクジェット塗装機5から基板2を導出する後方位置にかけて配置してある。
【0030】
ノズルヘッド7はインクジェット塗装機5の下端に設けられているものであり、基板2の送り方向と垂直な方向に長いラインヘッドとして形成してあって、搬送コンベア14を横切るように配置してある。ノズルヘッド7の下面にはその長手方向に沿って配列して多数の噴射ノズル4が設けてある。本実施の形態では、ノズルヘッド7はイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のインクを噴射する4種類のノズルヘッド7y,7c,7m,7kから形成してあり、フルカラー印刷による塗装を行なうことができるようにしてある。インク供給タンク12も同様に4種類のものからなるものであり、イエローのインクを供給するインク供給タンク12yはノズルヘッド7yに、シアンのインクを供給するインク供給タンク12cはノズルヘッド7cに、マゼンタのインクを供給するインク供給タンク12mはノズルヘッド7mに、ブラックのインクを供給するインク供給タンク12kはノズルヘッド7kにそれぞれ接続してある。そして各ノズルヘッド7y,7c,7m,7kは基板2の搬送方向に沿って配列してある。
【0031】
塗装制御システム13は、各種のCPU、ROM、RAM等から構成されるものであり、塗装データ作成部、塗装制御部、噴射ノズル制御部等を備えて形成してある。塗装データ作成部は、原画をスキャナ等して得た色柄パターンの画像データを入力して保存するものであり、塗装制御部は、塗装を行なう基板3に応じた色柄パターンの画像データを塗装データ作成部から取り出し、この色柄パターンの画像データに基づいて、噴射ノズル制御部に制御信号を出力するものである。また噴射ノズル制御部はノズルヘッド7y,7c,7m,7kの各噴射ノズル4に接続してあり、噴射ノズル制御部から入力される制御信号に基づいて各噴射ノズル4を制御するものである。各噴射ノズル4は例えばピエゾ制御方式や、光熱変換素子にレーザーを照射して制御する方式などにより、噴射を制御されるようになっており、噴射ノズル制御部で各噴射ノズル4を制御することによって、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各インクの噴射と停止を個別に制御して、色柄パターンに対応したフルカラー印刷による塗装を行なうことができるものである。
【0032】
上記のように形成されるインクジェット塗装装置で基板2の表面にインクジェット塗装を行なうにあたっては、基板2の塗装を施す表面を上にして搬送コンベア14上に導入し、基板2をその長手方向に搬送コンベア14で送って、インクジェット塗装機5のノズルヘッド7y,7c,7m,7kの下を順に通過させる。そして基板2をこのように搬送コンベア14で送りながら、ノズルヘッド7y,7c,7m,7kの各噴射ノズル4からインクの液滴を噴射させて基板2の表面に塗着させることによって、基板2の表面に塗装を施すことができるものである。図1(b)に基板2に設けた受理層からなる下地塗膜6の表面にインク8を塗着させて塗装を施した状態を示す。
【0033】
ここで上記のように、ノズルヘッド7は基板2の搬送方向と垂直な方向に長いラインヘッドとして形成してあり、ノズルヘッド7の下面には基板2を幅方向に横切るように多数の噴射ノズル4が配列して設けてある。そして、ノズルヘッド7の多数の各噴射ノズル4からインクの液滴を噴射することによって、ノズルヘッド7を固定したまま、基板2をその長手方向に搬送してノズルヘッド7の直下を通過させることによって、基板2の表面の全面に塗装を施すことができるものである。
【0034】
そして本発明では、このように基板2の表面に塗装を施す際に、塗装した面に細線模様3を形成するようにしてある。この細線模様3は図1(a)に示すように、基板2の長手方向に沿う端縁とほぼ平行に形成されるものであり、基板2の長手方向の全長に亘って連続した細線として形成するようにしても、断続的な不連続の細線、例えば点線や破線などとして形成するようにしてもいずれでもよく、さらにこれらを混在させるようにしてもよい。また細線模様3は、均一な太さで形成してもよく、ばらついた太さの細線模様3が混在するように、不均一な太さで形成してもよい。この細線模様3は基板2の塗装面において幅方向にほぼ均等の配置で複数本形成するようにするのが望ましい。
【0035】
上記のように基板2の表面にインクジェット塗装をする際に、このような細線模様3を形成するには、ノズルヘッド7の噴射ノズル4のうち、所定の一部の噴射ノズル4からインクを噴射しないように、塗装制御システム13のノズル制御部でノズルヘッド7を制御することによって、行なうことができる。すなわち、所定の一部の噴射ノズル4からインクを噴射しない状態で、上記のように基板2を搬送してノズルヘッド7の直下を通過させるようにして、インクジェット塗装を行なうと、インクを噴射しないように制御した噴射ノズル4に対応する位置において基板2の表面には塗装がされないものであり、しかも基板2の搬送によって塗装がされない部分が基板2の長手方向に沿って筋状に形成されるものである。そしてこのように基板2の長手方向に沿って筋状に塗装されない部分では下地塗膜6が露出し、この筋状に露出する下地塗膜6によって細線模様3が形成されるものである。
【0036】
ここで図3は解像度80dpiで、図4は解像度127dpiで、それぞれインクジェット塗装した塗装面の写真を示すものである。そして図3(a)及び図4(a)は、ノズルヘッド7の各噴射ノズル4から通常通りにインクを噴射させて基板2の表面の全面に塗装を施したものを示す。また図3(b)及び図4(b)は、ノズルヘッド7の所定の一部の噴射ノズル4からインクを噴射しない状態で基板2の表面に塗装を施したものを示す。図3(b)及び図4(b)に示すように、ノズルヘッド7の一部の噴射ノズル4からインクを噴射しない状態で塗装を施すことによって、基板2の表面に下地塗膜6の露出で細線模様3を形成することができるものである。
【0037】
また、図5(a)は解像度60dpiで細線模様3を形成し、図5(b)は解像度80dpiで細線模様3を形成するようにしたものであり、図6(a)は解像度127dpiで細線模様3を形成し、図6(b)は解像度254dpiで細線模様3を形成するようにしたものである。解像度60dpiでは、インクの液滴のサイズが約0.4mmであり、約0.4mm幅の太さの線で細線模様3が形成されることになり、図5(a)のように細線模様3が目立ってくる。一方、解像度80dpiでは、インクの液滴のサイズが約0.3mmであり、約0.3mm幅の太さの線で細線模様3が形成され、また解像度127dpiでは、インクの液滴のサイズが約0.2mmであり、約0.2mm幅の太さの線で細線模様3が形成されることになり、図5(b)や図6(a)のように細線模様3の目立ちが抑制される。このため、細線模様3は80dpi以上の解像度で、また幅0.3mm以下の太さで、細い線として形成するのが好ましい。また、解像度254dpiでは、インクの液滴のサイズが約0.1mmであり、約0.1mm幅の太さの線で細線模様3が形成されることになり、図6(b)のように細線模様3があまり目立たなくなって、細線模様3を設ける意義がなくなる。このため細線模様3は、254dpi以下の解像度で、また0.1mm以上の太さの線となるように形成するのが好ましい。
【0038】
そして上記のように、基板2の塗装面に、基板2の長手方向に沿う端縁と平行に細線模様3を設けて形成した塗装板Aにあって、インクジェット塗装を行なう際にノズルヘッド7の噴射ノズル4の一部に詰まりが発生すると、既述のように基板2の長手方向に沿って塗装されない塗装不良が生じて、この部分に下地塗膜6が筋状に露出することになるが、この噴射ノズル4の詰まりで発生する下地塗膜6の筋状の露出は、塗装面に形成した細線模様3と同じような態様であり、細線模様3に紛れて塗装不良として目立つことがなくなるものである。特に、細線模様3は下地塗膜6の色が露出して形成されているものであるのに対して、噴射ノズル4の詰まりで発生する塗装不良も下地塗膜6の色が筋状に露出するものであるので、細線模様3と塗装不良で生じる下地塗膜6の筋状の露出との見分けは付かないものであり、塗装不良が目立つことをより効果的に防ぐことができるものである。
【0039】
また既述のように、基板2の実部1を設けた端面aは基板2の表面に対して垂直な面に形成されており、インクジェット塗装ではこの端面aに塗装がなされずに下地塗膜6が露出していることが多い。そして、塗装板Aを壁面に施工する際に、既述の図9(a)(b)ように隣り合う塗装板Aの接続端部に段差が生じて、隣り合う塗装板Aの接続端部間に下地塗膜6が露出している基板2の端面aの一部(屋外側端縁)が表れると、下地塗膜6の色が筋状に現れることになるが、塗装板A間に下地塗膜6の色が筋状に現れるこの外観不良も、上記と同様に、塗装板Aの塗装面に形成した細線模様3と同じような態様であるので、細線模様3に紛れて外観不良として目立つことがなくなるものである。
【0040】
ここで、隣り合う塗装板Aの接続端部の段差の寸法αは最大1.0mm程度である。そして、最大寸法α=1.0mmの段差の際に基板2の端面aの下地塗膜6が筋状に現れることを目立たなくするためには、塗装板Aに形成される細線模様3の太さは1mm程度であることが望ましい。従って、上記のように細線模様3の太さは0.1〜0.3mmであることが好ましいが、基板2の端面aの下地塗膜6が筋状に現れることを目立たなくするためには、細線模様3の太さは最大1.0mmであることが望ましいものであり、本発明において細線模様3の太さは0.1〜1.0mmの範囲が望ましく、0.1〜0.3mmの範囲がより好ましい。細線模様3の太さが1.0mmを超えると、細線模様3が目立ち過ぎることになり、細線模様3で却って塗装板Aの外観を損ねる恐れがある。
【0041】
上記の実施の形態では、インクジェット塗装で塗装を行なうにあたって、一部の噴射ノズル4からインクを噴射しないように制御することによって、塗装されない筋状の部分に下地塗膜6を露出させて細線模様3を形成するようにしたが、一部の噴射ノズル4からインクを噴射しない代わりに、この一部の噴射ノズル4から、下地塗膜6と同じ色のインクを噴射するようにしてもよい。このように、基板2にインクジェット塗装を行なう際に、一部の噴射ノズル4から下地塗膜6と同じ色のインクを噴射するようにすれば、ノズルヘッド7の直下を長手方向に搬送される基板2の塗装面に、長手方向に沿って細線模様3を形成することができるものであり、またこの細線模様3は下地塗膜6と同じ色で形成されるものである。
【0042】
このように基板2の塗装面に細線模様3を下地塗膜6と同じ色で形成することによって、上記のように下地塗膜6の色を露出させて細線模様3を形成した場合と同様な効果を得ることができるものである。すなわち、ノズルヘッド7の噴射ノズル4の一部に詰まりが発生して、下地塗膜6の色が筋状に露出する塗装不良が生じても、塗装不良で発生する下地塗膜6の色の筋状の露出は、塗装面に下地塗膜6の色で形成した細線模様3と同じような態様であり、細線模様3に紛れて塗装不良として目立つことがなくなるものである。また隣り合う塗装板Aの接続端部間に基板2の端面aの一部が表れて、下地塗膜6の色が筋状に外観不良として現れても、塗装板Aの塗装面に形成した細線模様3と同じような態様であるので、細線模様3に紛れて外観不良として目立つことがなくなるものである。
【0043】
図7は本発明の他の実施の形態を示すものであり、基板2に長手方向と平行に、つまり実部1を設けた端縁と平行に、基板2の長手方向全長に亘る凹溝9が設けてある。この凹溝9は基板2の表面に等間隔あるいは不等間隔で複数本設けられるものであるが、少なくとも、実部1が屋内側端縁に設けられる基板2の上端に沿って凹溝9を設けるようにしてあり、この上端に設けられる凹溝9は屋外側と上方とに開口するものである。
【0044】
この基板2を用いて上記と同様に塗装することによって、塗装板Aを得ることができる。そしてこの実施の形態では、細線模様3は凹溝9に形成するようにしてある。細線模様3は凹溝9の溝底面や、両側の傾斜する側面に形成することができるものである。勿論、細線模様3は凹溝9以外の基板2の表面にも形成してもよい。
【0045】
上記のように形成される塗装板Aにあって、基材2の表面に設けた凹溝9で目地が形成されるものである。また実部1同士で係合させて塗装板Aを図7のように上下に接合すると、下側の塗装板Aに設けた凹溝9と上側の塗装板Aの下端面との間に目地が形成されるものである。そして、上下に隣り合う塗装板Aの接続端部に段差がある場合、この段差αは上下の塗装板A間で目地を形成する凹溝9内で生じることになり、段差αによって生じる基板2の端面aの下地塗膜6の筋状の露出は、凹溝9内に現れることになる。このとき、凹溝9内には上記のように細線模様3が形成してあるので、凹溝9内に現れる下地塗膜6の筋状の露出は筋状模様3に紛れることになり、下地塗膜6の筋状の露出が外観不良として目立つことを防ぐことができるものである。
【0046】
図8は本発明のさらに他の実施の形態を示すものであり、基材2の表面に塗装を施すにあたって、疎密変化を有する雲状の模様を形成するようにしてある。インクジェット方式で塗装を行なう場合、インクのドットの集合体として模様を形成することになるが、ドットの密な部分と、ドットの疎な部分をランダムに配置すると共に、ドットの疎密を連続的に変化させることによって、図8のような雲状の模様を塗装することができるものである。そして基板2の表面に、このようなドットの疎密変化によって形成した雲状の模様を塗装する際に、上記した細線模様3を形成するものである。
【0047】
このように基板2の塗装面の全面に雲状の模様を塗装して形成した塗装板Aにあって、ノズルヘッド7の噴射ノズル4の詰まりで下地塗膜6の色が筋状に露出したり、隣り合う塗装板Aの接続端部間に基板2の端面aの下地塗膜6の色が筋状に現れたりしても、この下地塗膜6の色の筋は、雲状模様のドットの疎密変化に紛れて目立ち難くなるものであり、下地塗膜6の筋状の露出が外観不良として目立つことをより効果的に防ぐことができるものである。
【0048】
尚、上記の実施の形態では、基板2にインクジェット塗装を行なう場合について説明したが、これのみに限定されるものではなく、ロール塗装などで基板2を塗装する場合にも、同様に適用されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 実部
2 基板
3 細線模様
4 噴射ノズル
5 インクジェット塗装機
6 下地塗膜
7 ノズルヘッド
9 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿う両側の端縁に接続用の実部が設けられた矩形の基板の表面に、ほぼ全面に亘って塗装が施された塗装板であって、塗装面には、長手方向に沿う端縁とほぼ平行に、連続的あるいは断続的に細線模様が複数本形成されていることを特徴とする塗装板。
【請求項2】
基板を長手方向に搬送しながら、搬送方向と交差する方向で基板を横切るように配置された多数の噴射ノズルを備えたインクジェット塗装機を用いて、噴射ノズルからのインクの噴出によって基板の表面に塗装が施されたものであることを特徴とする請求項1に記載の塗装板。
【請求項3】
基板の表面に施された下地塗膜の上に塗装が施された塗装板であって、細線模様は下地塗膜とほぼ同色に塗装して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装板。
【請求項4】
基板の表面に施された下地塗膜の上に塗装が施された塗装板であって、部分的に塗装しないで下地塗膜を露出させることによって、細線模様が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装板。
【請求項5】
細線模様は、80dpi以上の解像度で形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の塗装板。
【請求項6】
細線模様は、0.1〜1.0mmの太さで形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗装板。
【請求項7】
表面に長手方向と平行な複数本の凹溝が形成された基板を用い、上記細線模様は少なくとも凹溝に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の塗装板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−89490(P2010−89490A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191109(P2009−191109)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】