説明

塗装機の洗浄廃液回収装置

【課題】洗浄廃液を効率よく回収すると共に周辺装置・塗装対象物等への洗浄廃液の付着を防止し、併せて装置の小型化を図ることができる塗装機の洗浄廃液回収装置を提供すること。
【解決手段】洗浄廃液回収装置1は、塗装機4の洗浄廃液Lを回収する回収部2を有する。回収部2の天井部201には、ミスト状の洗浄廃液Lを導入する導入開口部21が設けられ、底部203には、洗浄廃液Lを溜めておく貯留部22と回収部2内のエアAを吸引して排出する排気手段24を備えた排気開口部23とが設けられている。回収部2の内部には、頂点部31から下方に向かって広がるように形成され、洗浄廃液Lを接触させる接触面32を有する傘状接触体3が設けられている。傘状接触体3の外端301は、排気開口部23の開口端231よりも外側に配置されており、傘状接触体3の下端302と排気開口部23の開口端231の上端232との間には、間隙293が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装機の洗浄廃液を回収する塗装機の洗浄廃液回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装機の塗装作業において、塗料の色替え時には、塗装機への前色の塗料の供給を遮断し、塗装機にシンナー等の洗浄液とエアとを交互に導入する。そして、塗装機に残留している前色の塗料を洗い流し、塗料の供給経路内を洗浄する。その後、塗装機に次色の塗料を供給し、次の塗装を行う。
また、近年、地球環境の問題から、VOC(揮発性有機化合物)排出量を低減するために、洗浄後の塗装機から吐出されたシンナー等の有機溶剤を含む洗浄廃液を回収することが行われている。
【0003】
洗浄廃液の回収は、例えば、特許文献1に示すような塗装機の洗浄廃液回収装置を用いて行われている。
この洗浄液回収装置は、塗装機から吐出されたミスト状の洗浄廃液を上蓋の開口部から導入し、さらに回収箱内のピラミッド型の反射板に接触させ、液体状となった洗浄廃液を回収箱の底部に設けた排出口から回収するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−80132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の洗浄廃液回収装置には、次のような問題があった。
すなわち、ミスト状の洗浄廃液が回収箱内に吐出されると、回収箱の内圧が上昇する。これに対して、回収箱の側方にエア抜き孔を設けて横方向に排気する構造としているが、このような構造では、回収箱内の減圧を十分に行うことができなかった。そのため、回収箱内に吐出されたミスト状の洗浄廃液が回収箱の内圧に反発して上蓋の開口部から外部へと放出され、洗浄廃液の回収が不十分となっていた。また、ミスト状の洗浄廃液が外部へと放出されることにより、周辺装置・塗装対象物等に洗浄廃液が付着することがあった。
また、横方向に排気する構造としていることにより、装置の横方向の体格が大きくなり、設置スペースの確保が問題となっていた。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、洗浄廃液を効率よく回収すると共に周辺装置・塗装対象物等への洗浄廃液の付着を防止し、併せて装置の小型化を図ることができる塗装機の洗浄廃液回収装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塗装機の洗浄廃液を回収する箱状の回収部を有する塗装機の洗浄廃液回収装置であって、
上記回収部の天井部には、上記塗装機の吐出口から吐出されたミスト状の上記洗浄廃液を導入する導入開口部が設けられ、
上記回収部の底部には、該回収部内において回収した上記洗浄廃液を溜めておく貯留部と、該貯留部の内側において上記回収部内のエアを吸引して排出する排気手段を備えた排気開口部とが設けられ、
上記回収部の内部には、上記導入開口部を通過する鉛直線上に存在する頂点部から下方に向かって広がるように形成され、上記導入開口部から導入されたミスト状の上記洗浄廃液を接触させる接触面を有する傘状接触体が設けられ、
該傘状接触体の外端は、上記排気開口部の開口端よりも外側に配置されており、上記傘状接触体の下端と上記排気開口部の上記開口端の上端との間には、間隙が設けてあることを特徴とする塗装機の洗浄廃液回収装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗浄廃液回収装置において、上記回収部の上記導入開口部の下方には、上記洗浄廃液を接触させる上記接触面を有する上記傘状接触体が設けられている。そのため、上記塗装機の吐出口から吐出され、上記導入開口部から上記回収部内に導入されたミスト状の上記洗浄廃液は、上記傘状接触体の上記接触面、さらには上記回収部の内壁面に接触することにより、液体状となって上記回収部の底部の上記貯留部に流れ落ち、回収される。このように、ミスト状の上記洗浄廃液を積極的に接触させて液体状とすることにより、該洗浄廃液を効率よく回収することができる。
【0009】
また、上記回収部の底部には、上記排気手段を備えた上記排気開口部が設けられている。そのため、上記回収部内を常に負圧状態にしておくことができ、ミスト状の上記洗浄廃液が上記回収部内に導入されても、該回収部の内圧の上昇を防ぐことができる。これにより、上記回収部内に一旦導入された上記洗浄廃液が上記回収部の内圧によって上記導入開口部から外部へと放出されたり、該導入開口部付近でミスト状の上記洗浄廃液の一部が跳ね返されたりすることを抑制することができ、周辺装置・塗装対象物等への上記洗浄廃液の付着を防止することができる。
また、下方に排気する構造としていることにより、装置の横方向の体格を小さくすることができる。これにより、装置の小型化を図ることができ、設置スペースの確保が容易となる。
【0010】
また、上記傘状接触体の外端は、上記排気開口部の上記開口端よりも外側に配置されており、上記傘状接触体の下端と上記排気開口部の上記開口端の上端との間には、間隙が設けてある。すなわち、上記傘状接触体は、上記排気開口部の上方において該排気開口部を覆うように配置されている。そのため、上記回収部内のエアは、上記導入開口部から上記傘状接触体の外側を通り、上記傘状接触体の下端の下側から該傘状接触体の内側へと回り込み、さらに該傘状接触体の下端と上記排気開口部の上記開口端の上端との間の間隙を通って上記排気開口部へと流れる。
【0011】
これにより、上記回収部内における上記導入開口部から上記排気開口部までのエア流路が上述したような非直線的な構造となり、ミスト状の上記洗浄廃液が上記回収部内において接触する機会を増やすことができる。よって、ミスト状の上記洗浄廃液が回収されずにそのままエアと共に上記排気開口部から排出されることを抑制することができ、上記洗浄廃液の回収効率を高めることができる。
【0012】
このように、本発明によれば、洗浄廃液を効率よく回収すると共に周辺装置・塗装対象物等への洗浄廃液の付着を防止し、併せて装置の小型化を図ることができる塗装機の洗浄廃液回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、洗浄廃液回収装置の全体構造を示す説明図。
【図2】実施例1における、傘状接触体を示す斜視図。
【図3】実施例1における、傘状接触体を示す側面図。
【図4】実施例1における、排気開口部に排気ファンを設けた構成を示す説明図。
【図5】実施例2における、塗装ブースの室内排気手段が洗浄廃液回収装置の排気手段を兼ねている構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、上記回収部の底部には、上記排気手段を備えた上記排気開口部が設けられている。該排気開口部は、上記回収部の底部に1箇所設けてもよいし、複数箇所設けてもよい。上記排気開口部を1箇所に設ける構成とすれば、装置の小型化をより一層図ることができる。
【0015】
また、上記傘状接触体は、上記導入開口部の下方にある頂点部から下方に向かって広がるように形成された上記接触面を有し、傘状に構成されている。上記傘状接触体の内部は、中空となっている構成とすることもできるし、その少なくとも一部が中実となっている構成とすることもできる。
【0016】
また、上記傘状接触体の上記頂点部は、上記回収部の上記導入開口部の中心と鉛直方向において同軸上にあることが好ましい。
この場合には、上記導入開口部から上記回収部内に導入されたミスト状の上記洗浄廃液を上記傘状接触体の上記接触面に接触させ易くなる。
【0017】
また、さらに、上記塗装機の吐出口から上記洗浄廃液を吐出する際には、上記塗装機の吐出口を上記傘状接触体の上記頂点部及び上記回収部の上記導入開口部の中心と鉛直方向において同軸上に配置し、該塗装機の吐出口から上記洗浄廃液を上記回収部の上記導入開口部に向けて吐出することが好ましい。
この場合には、上記塗装機の吐出口から吐出されたミスト状の上記洗浄廃液を上記導入開口部から上記回収部内に導入させ易く、また上記傘状接触体の上記接触面に接触させ易くなる。また、吐出されたミスト状の上記洗浄廃液が上記傘状接触体の上記頂点部を中心に上記接触面に接触するため、上記洗浄廃液が上記傘状接触体の外端に向かって流れ易くなる。これにより、上記洗浄廃液の接触性を高め、かつ跳ね返りを抑制することができる。
【0018】
また、上記傘状接触体の下端は、上記排気開口部の上記開口端よりも外側に配置されていることが好ましい。
この場合には、上記傘状接触体の上記接触面に接触して液体状となった上記洗浄廃液をより確実に上記回収部の底部の上記貯留部に導くことができる。これにより、上記洗浄廃液の回収効率をさらに高めることができる。
【0019】
また、上記傘状接触体の外端が上記排気開口部の上記開口端よりも外側にあっても、上記傘状接触体の下端が上記排気開口部の上記開口端よりも内側にあれば、場合によっては、液体状となった上記洗浄廃液が上記傘状接触体の下端から上記排気開口部に流れ落ち、回収できなくなることもあり得る。このようなことを、上述したように上記傘状接触体の下端を上記排気開口部の上記開口端よりも外側に配置することで防止することができる。
【0020】
また、上記傘状接触体の下端は、上記排気開口部の上記開口端の上端よりも下方に配置されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記回収部内におけるエア流路をさらに複雑な構造とすることができ、ミスト状の上記洗浄廃液が上記回収部内において接触する機会をより一層増やすことができる。これにより、上記洗浄廃液の回収効率をさらに高めることができる。また、上記傘状接触体の下端を上記排気開口部の上記開口端の上端よりも下方に配置することにより、両者の間の上記間隙を通過するエアは、上方に向かって流れることになる。つまり、エア流路において、エアが上方に向かって流れる部分が形成されることになる。これにより、上記洗浄廃液がエアの流れでそのエアと共に上記排気開口部から排出されることを防ぐことができる。
【0021】
また、上記傘状接触体の上記接触面は、上記頂点部から下方に向かって傾斜角度が段階的に大きくなるように複数段に形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記接触面の傾斜角度が一定の場合に比べて、上記接触面の面積を大きくすることができる。そのため、上記回収部内に導入されたミスト状の上記洗浄廃液を上記傘状接触体の上記接触面により一層接触させることができる。これにより、上記洗浄廃液の回収効率をさらに高めることができる。また、ミスト状の上記洗浄廃液が上記傘状接触体の上記接触面に沿って流れ易くなる。そのため、上記洗浄廃液の接触性を高め、かつ跳ね返りを抑制することができる。
【0022】
また、上記洗浄廃液回収装置は、室内のエアを吸引して排気する室内排気手段を備えた塗装ブース内に設置されており、上記室内排気手段は、上記回収部内のエアを吸引して排出する上記排気手段を兼ねていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、新たな設備、動力等を用いることなく、既存の設備、動力等で上記回収部内の排気・減圧を行うことができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる塗装機の洗浄廃液回収装置について、図を用いて説明する。
本例の洗浄廃液回収装置1は、図1〜図3に示すごとく、塗装機4の洗浄廃液Lを回収する箱状の回収部2を有する。回収部2の天井部201には、塗装機4の吐出口41から吐出されたミスト状の洗浄廃液Lを導入する導入開口部21が設けられ、回収部2の底部203には、回収部2内において回収した洗浄廃液Lを溜めておく貯留部22と、貯留部22の内側において回収部2内のエアAを吸引して排出する排気手段24を備えた排気開口部23とが設けられている。
【0024】
回収部2の内部には、導入開口部21を通過する鉛直線上に存在する頂点部31から下方に向かって広がるように形成され、導入開口部21から導入されたミスト状の洗浄廃液Lを接触させる接触面32を有する傘状接触体3が設けられている。
傘状接触体3の外端301は、排気開口部23の開口端231よりも外側に配置されており、傘状接触体3の下端302と排気開口部23の開口端231の上端232との間には、間隙293が設けてある。
以下、これを詳説する。
【0025】
本例の洗浄廃液回収装置1は、図1に示すごとく、塗装機4の洗浄廃液Lを回収する箱状の回収部2を有する。
回収部2における天井部201の中央部には、塗装機4の吐出口41から吐出されたミスト状の洗浄廃液Lを導入する導入開口部21が設けられている。導入開口部21の周囲には、天井部201から下方に立設された円筒状の立設部25が設けられている。
また、回収部2の側面部202は、円筒状の小径側面部202aと大径側面部202bとを組み合わせて構成されている。小径側面部202a及び大径側面部202bと後述する傘状接触体3との間には、間隙291が設けてある。
【0026】
また、回収部2における底部203の外周部には、回収部2内において回収した洗浄廃液Lを溜めておく貯留部22が設けられている。貯留部22には、洗浄廃液Lを排出する排出管221が設けられている。排出管221は、洗浄廃液Lを回収する回収タンク(図示略)に接続されている。
【0027】
また、回収部2における底部203の中央部(貯留部22の内側)には、排気開口部23が設けられている。排気開口部23と貯留部22とは、回収部2の底部203から上方に立設された円筒状の仕切部26によって仕切られている。また、排気開口部23には、排気手段24が備えられている。本例では、排気手段24としての吸引ダクト241が設けられている。吸引ダクト241は、排気ファン(図示略)を用いて回収部2内のエアAを吸引して排出することができるよう構成されている。
【0028】
また、回収部2の内部には、傘状接触体3が配置されている。傘状接触体3は、導入開口部21を通過する鉛直線上に存在する頂点部31から下方に向かって広がるように形成された接触面32を有する。ここで、頂点部31は、導入開口部21の中心Bと鉛直方向において同軸上(X軸上)にある。また、接触面32は、頂点部31から下方に向かって傾斜角度が段階的に大きくなるように複数段に形成されている。
【0029】
具体的には、図2、図3に示すごとく、傘状接触体3は、下方が開口してなる円錐状の第1接触体3aと、下方が開口してなる円錐台状の第2接触体3bと、円筒状の第3接触体3cとにより構成されている。第2接触体3bと第3接触体3cとは、一体的に構成されている。
また、接触面32は、第1接触体3aの外側面である第1接触面321と、第2接触体3bの外側面である第2接触面322と、第3接触体3cの外側面である第3接触面323とにより構成されている。傾斜角度は、第1接触面321、第2接触面322、第3接触面323の順に大きくなっている。なお、第3接触面323は、鉛直方向に形成されている。
【0030】
また、図3に示すごとく、第1接触体3aの第1接触面321と第2接触体3bの第2接触面322とが成す第1角部331、第2接触体3bの第2接触面322と第3接触体3cの第3接触面323とが成す第2角部332及び傘状接触体3の下端302は、傘状接触体3の頂点部31と鉛直方向において同軸上(X軸上)にあって第2角部332よりも下方にある点Cを中心とする球面51に内接するように配置されている。
【0031】
また、図1に示すごとく、傘状接触体3の外端301(本例では、第3接触体3cの第3接触面323に当たる)は、排気開口部23の開口端231よりも外側に配置されている。
また、傘状接触体3の下端302は、排気開口部23の開口端231よりも外側に配置されていると共に、排気開口部23の開口端231の上端232よりも下方に配置されている。
また、傘状接触体3の下端302と回収部2の底部203及び排気開口部23の開口端231の上端232との間には、それぞれ間隙292、293が設けてある。
【0032】
次に、本例の洗浄廃液回収装置1を用いた洗浄廃液Lの回収作業について、図1を用いて説明する。
塗装機4における塗料の色替え時には、塗装機4にシンナー等の洗浄液を供給し、塗装機4内に残留している塗料を洗い流し、塗料の供給経路内を洗浄する。次いで、塗装機4にエアを供給し、塗装機4の吐出口41から塗料と洗浄液とを含む洗浄廃液Lを吐出する。これを複数回繰り返し、塗装機4の洗浄を行う。
【0033】
そして、塗装機4の吐出口41から洗浄廃液Lを吐出する際には、まず、塗装機4を回収部2の導入開口部21の上方に配置する。このとき、塗装機4の吐出口41と回収部2の導入開口部21の中心Bとが鉛直方向において同軸上(X軸上)となるようにする。
また、回収部2は、内部のエアAが排気手段24によって排気開口部23から吸引されている状態とする。これにより、回収部2内を常に負圧状態にしておく。このとき、回収部2内のエアAは、導入開口部21から傘状接触体3の外側(間隙291)を通り、傘状接触体3の下端302の下側(間隙292)を通って傘状接触体3の内側へと回り込み、さらに傘状接触体3の下端302と排気開口部23の開口端231の上端232との間の間隙293を通って排気開口部23へと流れる。
【0034】
次いで、塗装機4の吐出口41から洗浄廃液Lを吐出する。これにより、ミスト状の洗浄廃液Lは、導入開口部21から回収部2内に導入される。
回収部2内に導入されたミスト状の洗浄廃液Lは、傘状接触体3の接触面32に接触し、液体状となって接触面32を伝い、傘状接触体3の下端302から貯留部22に流れ落ちる。
また、傘状接触体3の接触面32に接触しなかったミスト状の洗浄廃液Lは、回収部2の内壁面200(側面部202の内壁面等)に接触し、液体状となってその内壁面200を伝い、貯留部22に流れ落ちる。
【0035】
また、エアAの流れに乗って傘状接触体3の内側へ回り込んだミスト状の洗浄廃液Lは、傘状接触体3の内側面34(第2接触体3b及び第3接触体3cの内側面)等に接触し、液体状となって傘状接触体3の内側面34等を伝い、傘状接触体3の下端302から貯留部22に流れ落ちる。また、回収部2の底部203の仕切部26の外周面261に接触し、液体状となってその外周面261を伝い、貯留部22に流れ落ちる。
貯留部22に溜まった洗浄廃液Lは、排出管221を介して回収タンク(図示略)に送られる。これにより、洗浄廃液Lを回収する。
【0036】
次に、本例の洗浄廃液回収装置1における作用効果について説明する。
本例の洗浄廃液回収装置1において、回収部2の導入開口部21の下方には、洗浄廃液Lを接触させる接触面32を有する傘状接触体3が設けられている。そのため、塗装機4の吐出口41から吐出され、導入開口部21から回収部2内に導入されたミスト状の洗浄廃液Lは、傘状接触体3の接触面32、さらには回収部2の内壁面200に接触することにより、液体状となって回収部2の底部203の貯留部22に流れ落ち、回収される。このように、ミスト状の洗浄廃液Lを積極的に接触させて液体状とすることにより、洗浄廃液Lを効率よく回収することができる。
【0037】
また、回収部2の底部203には、排気手段24を備えた排気開口部23が設けられている。そのため、回収部2内を常に負圧状態にしておくことができ、ミスト状の洗浄廃液Lが回収部2内に導入されても、回収部2の内圧の上昇を防ぐことができる。これにより、回収部2内に一旦導入された洗浄廃液Lが回収部2の内圧によって導入開口部21から外部へと放出されたり、導入開口部21付近でミスト状の洗浄廃液Lの一部が跳ね返されたりすることを抑制することができ、周辺装置・塗装対象物等への洗浄廃液Lの付着を防止することができる。
【0038】
また、下方に排気する構造としていることにより、従来のような横方向に排気する構造に比べて、装置の横方向の体格を小さくすることができる。これにより、装置の小型化を図ることができ、設置スペースの確保が容易となる。本例では、排気開口部23を回収部2の底部203に1箇所設ける構成としているため、装置の小型化をより一層図ることができる。
【0039】
また、傘状接触体3の外端301は、排気開口部23の開口端231よりも外側に配置されており、傘状接触体3の下端302と排気開口部23の開口端231の上端232との間には、間隙293が設けてある。すなわち、傘状接触体3は、排気開口部23の上方において排気開口部23を覆うように配置されている。そのため、回収部2内のエアAは、導入開口部21から傘状接触体3の外側(間隙291)を通り、傘状接触体3の下端302の下側(間隙292)を通って傘状接触体3の内側へと回り込み、さらに傘状接触体3の下端302と排気開口部23の開口端231の上端232との間の間隙293を通って排気開口部23へと流れる。
【0040】
これにより、回収部2内における導入開口部21から排気開口部23までのエア流路が上述したような非直線的な構造となり、ミスト状の洗浄廃液Lが回収部2内において接触する機会を増やすことができる。よって、ミスト状の洗浄廃液Lが回収されずにそのままエアAと共に排気開口部23から排出されることを抑制することができ、洗浄廃液Lの回収効率を高めることができる。
【0041】
また、本例では、傘状接触体3の頂点部31は、回収部2の導入開口部21の中心Bと鉛直方向において同軸上(X軸上)にある。そのため、導入開口部21から回収部2内に導入されたミスト状の洗浄廃液Lを傘状接触体3の接触面32に接触させ易くなる。
【0042】
また、さらに、塗装機4の吐出口41から洗浄廃液Lを吐出する際には、塗装機4の吐出口41を傘状接触体3の頂点部31及び回収部2の導入開口部21の中心Bと鉛直方向において同軸上(X軸上)に配置し、塗装機4の吐出口41から洗浄廃液Lを回収部2の導入開口部21に向けて吐出する。そのため、塗装機4の吐出口41から吐出した洗浄廃液Lを導入開口部21から回収部2内に導入させ易く、また傘状接触体3の接触面32に接触させ易くなる。また、吐出されたミスト状の洗浄廃液Lが傘状接触体3の頂点部31を中心に接触面32に接触するため、洗浄廃液Lが傘状接触体3の外端301に向かって流れ易くなる。これにより、洗浄廃液Lの接触性を高め、かつ跳ね返りを抑制することができる。
【0043】
また、傘状接触体3の下端302は、排気開口部23の開口端231よりも外側に配置されている。そのため、傘状接触体3の接触面32に接触して液体状となった洗浄廃液Lをより確実に回収部2の底部203の貯留部22に導くことができる。これにより、洗浄廃液Lの回収率をさらに高めることができる。
【0044】
また、傘状接触体3の下端302は、排気開口部23の開口端231の上端232よりも下方に配置されている。そのため、回収部2内におけるエア流路をさらに複雑な構造とすることができ、ミスト状の洗浄廃液Lが回収部2内において接触する機会をより一層増やすことができる。これにより、洗浄廃液Lの回収効率をさらに高めることができる。また、傘状接触体3の下端302を排気開口部23の開口端231の上端232よりも下方に配置することにより、両者の間の間隙293を通過するエアAは、上方に向かって流れることになる。つまり、エア流路において、エアAが上方に向かって流れる部分が形成されることになる。これにより、洗浄廃液LがエアAの流れでそのエアAと共に排気開口部23から排出されることを防ぐことができる。
【0045】
また、傘状接触体3の接触面32は、頂点部31から下方に向かって傾斜角度が段階的に大きくなるように複数段に形成されている。そのため、接触面32の傾斜角度が一定の場合に比べて、接触面32の面積を大きくすることができる。これにより、回収部2内に導入されたミスト状の洗浄廃液Lを傘状接触体3の接触面32により一層接触させることができ、洗浄廃液Lの回収効率をさらに高めることができる。また、ミスト状の洗浄廃液Lが傘状接触体3の接触面32に沿って流れ易くなる。そのため、洗浄廃液Lの接触性を高め、かつ跳ね返りを抑制することができる。
【0046】
また、さらに、本例では、図3に示すごとく、傘状接触体3の接触面32における第1角部331、第2角部332及び傘状接触体3の下端302は、球面51に内接するように配置されている。そのため、塗装機4の吐出口41から吐出されたミスト状の洗浄廃液Lが傘状接触体3の接触面32に沿ってより一層流れ易くなる。これにより、洗浄廃液Lの接触性をさらに高め、かつ跳ね返りをさらに抑制することができる。
【0047】
このように、本例によれば、洗浄廃液Lを効率よく回収すると共に周辺装置・塗装対象物等への洗浄廃液Lの付着を防止し、併せて装置の小型化を図ることができる塗装機4の洗浄液回収装置1を提供することができる。
【0048】
なお、本例では、図1に示すごとく、排気開口部23に排気手段24としての吸引ダクト241を設け、排気ファン(図示略)を用いて回収部2内のエアAを吸引して排出することができるよう構成したが、例えば、図4に示すごとく、排気開口部23に直接排気ファン242を設け、回収部2内のエアAを吸引して排出することができるよう構成することもできる。
【0049】
(実施例2)
本例は、塗装機の洗浄廃液回収装置の排気手段の構成を変更した例である。
本例の洗浄廃液回収装置1は、図5に示すごとく、塗装部5の塗装ブース53内に配置されている。
塗装部5は、後述する給気ダクト63を介して給気されたエアAを導入して圧力を調整する動圧室51及び静圧室52と、塗装機4を用いて被塗装物7に塗装を行う塗装ブース53と、塗装ブース53において塗装されなかった塗料を収集する塗料収集室54と、塗料収集室54において収集した塗料を回収する塗料回収室55とを有する。
【0050】
塗装部5の動圧室51には、給気ファン62を備えた給気ダクト63が接続されている。また、給気ダクト63には、外気(エアA)を導入して空調を行う空調機61が接続されている。そして、空調機61において空調されたエアAは、給気ファン62によって給気ダクト63から塗装部5の動圧室51に給気され、さらに静圧室52を通り、塗装ブース53に送られる。
また、塗装部5の塗料回収室55には、排気ファン65を備えた排気ダクト64が接続されている。そして、塗装ブース53内のエアAは、排気ファン65によって塗料収集室54、塗料回収室55を順に通って排気ダクト64に送られ、外部へと排出される。
【0051】
また、塗装部5において、塗料収集室54は、塗装ブース53において塗装されず、スノコ531を通り抜けた塗料を塗料収集用の水541に混合させ、この塗料混合液542を吸込口543から吸い込んだ後、ミスト状にして塗料回収室55に送ることができるよう構成されている。
塗料回収室55は、塗料収集室54から送られてきたミスト状の塗料混合液542を邪魔板(エリミネーター)551によって塗料TとエアAとに分離し、塗料Tを塗料回収部552に回収し、エアAを排気ダクト64に送ることができるよう構成されている。また、塗料回収部552に回収された塗料Tは、塗料回収タンク66に送られる。
塗料回収タンク66は、循環ポンプ67を用いて回収された塗料Tから塗料収集用の水541を塗料収集室54に送ることができるよう構成されている。
【0052】
そして、洗浄廃液回収装置1の回収部2は、塗装ブース53内のスノコ531上に設置されている。また、回収部2の排気開口部23(図1参照)の下方に設けられた吸引ダクト241は、塗料収集室54を通り、排気ダクト64に連結されている。これにより、排気ファン65による排気ダクト64の吸引力を利用し、回収部2内のエアAを吸引ダクト241を介して吸引することができる。すなわち、回収部2内のエアAは、排気手段24としての吸引ダクト241、排気ダクト64及び排気ファン65によって吸引され、外部に排出される。
【0053】
次に、本例の洗浄廃液回収装置1における作用効果を説明する。
本例の洗浄廃液回収装置1は、室内(塗装ブース53内)のエアAを吸引して排出する室内排気手段(排気ダクト64、排気ファン65)を備えた塗装ブース53内に設置されている。そして、室内排気手段(排気ダクト64、排気ファン65)は、回収部2内のエアAを吸引して排出する排気手段24を兼ねている。そのため、新たな設備、動力等を用いることなく、既存の設備、動力等を用いて回収部2内の排気・減圧を行うことができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0054】
なお、本例では、図5に示すごとく、洗浄廃液回収装置1の回収部2の下方に設けられた吸引ダクト241を排気ダクト64に連結する構成としたが、例えば、吸引ダクト241を回収部2から吸込口543の近傍まで鉛直下方に延ばして配設する構成とすることもできる。この場合には、負圧にした塗料回収室55の吸引力を利用し、回収部2内のエアAを吸引ダクト241を介して吸込口543から塗料回収室55へと吸引することができる。
【0055】
また、吸引ダクト241を設けずに、洗浄廃液回収装置1の回収部2自体を吸込口543近傍、具体的には、塗装ブース53のスノコ531の下方であって吸込口543の真上に配置する構成とすることもできる。この場合には、負圧にした塗料回収室55の吸引力を利用し、回収部2内のエアAをそのまま吸込口543から塗料回収室55へと吸引することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 洗浄廃液回収装置
2 回収部
201 天井部
203 底部
21 導入開口部
22 貯留部
23 排気開口部
231 開口端
232 上端(開口端の上端)
24 排気手段
293 間隙
3 傘状接触体
301 外端(傘状接触体の外端)
302 下端(傘状接触体の下端)
31 頂点部
32 接触面
4 塗装機
41 吐出口
A エア
L 洗浄廃液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装機の洗浄廃液を回収する箱状の回収部を有する塗装機の洗浄廃液回収装置であって、
上記回収部の天井部には、上記塗装機の吐出口から吐出されたミスト状の上記洗浄廃液を導入する導入開口部が設けられ、
上記回収部の底部には、該回収部内において回収した上記洗浄廃液を溜めておく貯留部と、該貯留部の内側において上記回収部内のエアを吸引して排出する排気手段を備えた排気開口部とが設けられ、
上記回収部の内部には、上記導入開口部を通過する鉛直線上に存在する頂点部から下方に向かって広がるように形成され、上記導入開口部から導入されたミスト状の上記洗浄廃液を接触させる接触面を有する傘状接触体が設けられ、
該傘状接触体の外端は、上記排気開口部の開口端よりも外側に配置されており、上記傘状接触体の下端と上記排気開口部の上記開口端の上端との間には、間隙が設けてあることを特徴とする塗装機の洗浄廃液回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装機の洗浄廃液回収装置において、上記傘状接触体の下端は、上記排気開口部の上記開口端の上端よりも下方に配置されていることを特徴とする塗装機の洗浄廃液回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗装機の洗浄廃液回収装置において、上記傘状接触体の上記接触面は、上記頂点部から下方に向かって傾斜角度が段階的に大きくなるように複数段に形成されていることを特徴とする塗装機の洗浄廃液回収装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装機の洗浄廃液回収装置において、上記洗浄廃液回収装置は、室内のエアを吸引して排出する室内排気手段を備えた塗装ブース内に設置されており、上記室内排気手段は、上記回収部内のエアを吸引して排出する上記排気手段を兼ねていることを特徴とする塗装機の洗浄廃液回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−125784(P2011−125784A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286250(P2009−286250)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】