説明

塗装用エアーブラシ

【課題】 エアーブラシとエアーブラシとの中間的な吹き出し量を低圧式コンプレッサーにより実現する共に、エアーブラシと同様な微細な噴霧を行なうことのできる塗装用エアーブラシを提供する。
【解決手段】
エアーブラシ本体1の軸芯にニードル軸5を挿通し、このニードル軸5を、エアーブラシ本体1先端に対して着脱可能に螺嵌したヘッド部2中芯部に挿入すると共に、該ヘッド部2の中芯部に突設せしめたノズル体60に挿入し、且つ、ヘッド部2におけるノズル体60の周囲に円筒状の嵌合部20を周設し、該嵌合部20の外周面20aに平吹き用のノズルキャップ3の内周面3dを密接嵌合して同エアーキャップ3を回転摺動可能に装着し、この嵌合関係により、エアーキャップ3の中芯孔3aと上記ノズル先端部60との芯だしを行なうと共に、該エアーキャップ3の外周にリングナット4を嵌合して、ヘッド部2外周面24に螺合してノズルキャップ3を固定したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低圧式のコンプレッサーを使用して吹き付け塗装する塗装用エアーブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微細な噴霧により吹き付け塗装若しくは描画を行なう塗装器具としてエアーブラシが広く普及している。エアーブラシを使用する際には、圧搾空気の供給源として、かなり低圧な圧力のコンプレッサー、例えばリニア式コンプレッサー等が使用されている。これらの低圧式コンプレッサーは、使用圧力がエアーブラシに好適な0.05MPa〜0.1MPaと低圧であり、中でもリニア式のコンプレッサーは作動音が非常に小さく、静かな環境で仕事を行なうことができる。このようなことから、現状においてエアーブラシに使用する低圧用リニア式コンプレッサーの普及度は極めて高い。
【0003】
一方、一般的に広く使用されている噴霧量の多い塗装用エアーブラシは、小さなものでも常用で0.1MPa以上の圧力を使用しないと正常な噴霧を行なうことが出来ない。したがって、従来の塗装用エアーブラシはダイヤフラム式、若しくは圧力タンクを具備する比較的大型で高圧なコンプレッサーを用いる必要があった。
当然のことながら、高圧力のコンプレッサーを用いる塗装用スプレーガンは強い圧力で広範囲の塗装を行なうことができるが、エアーブラシのような微細な噴霧では到底無理である。
【0004】
これとは反対に、エアーブラシによる噴霧は、非常に微細な噴霧により描画や精密塗装を行なうことは可能である。しかし、広範囲、例えば30cm四方の塗装面を塗装することには不向きであり、ムラのある塗装となってしまう。
即ち、上記したような、エアーブラシとエアーブラシとの間の使用範囲をカバーできる機能を具備した塗装用エアーブラシは現在存在してないのが実状である。
【0005】
上記したようなエアーブラシによる噴霧はそのノズル構造と密接な関係にある。例えば、特開2003−10740号にて開示されるエアーブラシは平均的なエアーブラシであり、上記した低圧式コンプレッサーで微細な噴霧を行なうことができる。このエアーブラシのノズルは、ノズル本体の先端部にエアーキャップを螺嵌することによりノズルの先端部と同エアキャップの中芯孔との芯だしをしている。エアーブラシのノズル構造としては上記した構造のものが多く採用されている。
一方、塗布量の多い塗装用スプレーガンはエアーキャップとして平吹き式と丸吹き式とがあり、平吹き式のエアーギャップはノズルを挟む形で一対の空気噴出孔を開設した角部を突設してある。そしてノズルから出る主流を挟む形で両噴出孔からの吹き出しを当てることにより縦平状もしくは横平状の略楕円状をした吹き出しパターンを得る。
上記した如き塗装用スプレーガンはエアーキャップの内周面とノズルの外周に周設した嵌合部との嵌合によりノズル先端とエアーキャップの中芯孔との芯だしを行ない、同エアーキャップの外周にリングナットを前方から嵌合し、ノズル後部に周設した螺合部に螺嵌することによりエアーキャップを任意の回転角度(縦、横)にて固定していた。
【0006】
しかしながら、上記したエアーブラシは広い塗装面を効率的に塗装するために縦平吹き、及び横平吹きを使い分けながら作業を行なうのでリングナットの弛めと締め付けを繰り返すことが多く、上記ノズル外周の嵌合部とエアーキャップの内周面との嵌合部が擦り減ってノズルの芯だし精度が低下し、良好な噴霧が出来なくなることがある。
【0007】
【特許文献1】特開2003−10740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記したような従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、エアーブラシとエアーブラシとの中間的吹き出し量を低圧式コンプレッサーにより実現する共に、噴霧の状態もエアーブラシと同様、微細に維持しながら平吹きが可能な塗装用エアーブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために第一の発明は、エアーブラシ本体の軸芯部に沿ってニードル軸をスライド可能に挿通し、このニードル軸の先端部を、エアーブラシ本体の先端に着脱可能に螺合したヘッド部の中心部に後方から挿入すると共に、同ヘッド部先端の中心取り付けたノズル体の中心孔に挿入してノズルを構成し、更に上記ヘッド部におけるノズル体の周囲に略円筒状の嵌合部を周設し、該嵌合部に平吹き用エアーキャップの内周面を密接嵌合してキャップの中心孔と上記ノズル体先端部との芯だしを行ないこの嵌合関係により、該キャップの外周にリングナットを前側から嵌合し、ヘッド部の外周に螺合してエアーキャップを固定して成るものである。
【0010】
また、第二の発明では、上記第一発明の塗装用エアーブラシにおいて、平吹き用のエアーキャップを丸吹き用のエアーキャップと交換可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
第一の発明によれば、エアーブラシ本体に螺嵌したヘッド部の外周に形成した円筒形の嵌合部の外周面に対し、平吹き用エアーブラシのエアーキャップの内周面を密接嵌合することよりエアーキャップの中芯孔とノズル体先端との芯だしを極めて正確に行なうことができる。このように構成したノズルにあっては、0.05MPa〜0.1MPa即ち従来のエアーブラシと同様な使用圧力であってもエアーブラシ以上の量の塗料を噴霧し、且つエアーブラシと同様、微細な噴霧によりエアーブラシと同様の精密な吹き付け塗装が可能となる。また、エアーキャップを略90度づつ回動することにより縦平吹きと横平吹きとの使い分けできるので、比較的広い面積の塗装面をムラ無く塗装することができる。
【0012】
また、第一発明の塗装用エアーブラシは、ヘッド部をエアーブラシ本体の先端部にノズルを構成するヘッド部を着脱可能に螺嵌してヘッド部を部品として交換可能にしたものである。よって、リングナットを弛め、エアーキャップを略90度ずつ回動させて縦平吹きと横平吹きとを頻繁に使い分けする使用状況下において、上記したヘッド部外周の嵌合部とエアーキャップの内周面の嵌合部との接触により摩耗を生じたとしても、新たなヘッド部と交換することにより、ノズルの芯だし精度を新品同様に復活することができるので、長期にわたり精密な吹き付け塗装を行なうことができる。
【0013】
更に、第二の発明によれば、ノズルの平吹き用のエアーキャップと丸吹き用のエアーキャップとを換装して、色々な形状の被塗装物を能率的に吹き付け塗装することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を実施したエアーブラシAを示している。このエアーブラシAは、ペンシル型のエアーブラシ本体1の先端にノズル6を設けたヘッド部2を着脱可能に螺合してある。このヘッド部2にはエアーキャップ3を嵌装し、さらにリングナット4を螺合することにより、同エアーキャップ3をヘッド部2に対して固定してある。エアーブラシ本体1中間の下部には接続筒9を接続して一体化してある。この接続筒9の下部には給気バルブ11aを内装した給気口体を螺合接続してある。接続筒9の下端にはネジ部12aを螺刻した給気口12を形成してある。この給気口12には低圧コンプレッサー等の給気手段に連絡する給気ホースの端部を螺嵌接続し、圧力0.05MPa〜0.1MPaの圧搾空気が供給される。
【0015】
また、エアーブラシ本体1の接続筒9の前部には引き金7が設けられ、この引き金7を引くことにより、エアーブラシ本体1内に内装される摺動体8が後方へ摺動する。摺動体8の下面にはテーパ部8aが形成してあり、同摺動体8の後退と共に同テ−パ部8aにより接続筒9内の押し棒9a及び給気バルブ11aの弁体11a’が押動されて給気バルブ11aが開弁状態となる。一方、これと同時に摺動体8と一体化するニードル軸5が本体1の軸芯部に沿って後退する。針状に形成されるニードル軸5の先端はノズル体60内に挿入された状態から後退し、これにより塗料カップ80からニードル軸5に沿って送られる塗料がノズル6に供給される。
【0016】
上記した給気口12から供給された圧搾空気は給気バルブ11aが開かれると、給気カバー13内に形成される給気路14aを通過する。さらに給気路14a内の給気は、エアーブラシ本体1内の連絡路14b、ヘッド部2内に穿設される給気路14c、エアーキャップ2内のノズル空間14dを通過する。そして、給気はノズル6先端部が嵌挿されるの中芯孔3aを通過し、負圧により同ノズル6に供給される塗料を吸い出しながら微細に噴霧する。
【0017】
ところで、上記エアーブラシ本体1の先端部に装着されるヘッド部2は同エアーブラシ本体1の先端部に凹設した嵌合孔21に嵌合し螺合した状態で固定される。この状態でエアーブラシ本体1の軸芯部とヘッド部2の中芯同士は同芯した状態となる。ちなみに、通常のエアーブラシ等は、上記ヘッド部2が部品としてとして独立せず、エアーブラシ本体1と一体化した状態となっている。
ヘッド部2の後部は上記嵌合孔21の形状と一致するように外径が多段状に形成され、その一段目には気密保持用のOリング22を嵌装する。また、ヘッド部2の後部外周にはネジ部23を螺刻してあり、ヘッド部2をエアーブラシ本体1の嵌合孔21内に嵌装する際に同嵌合孔21の内周面に形成した雌ネジ部24部と合して締め付け可能に構成してある。上記ヘッド部2の中間部外周にはナットの対角部28を形成してレンチ等によりヘッド部2を挟み、締め付けたり弛めたりできるようにしてある。
【0018】
また、ヘッド部2の前端側にはノズル体60の管状部61を突出形成し、その先端口部に硬質な部材、例えばサンプラチナ等からなる先細状のノズル体60をねじ込んで一体化してある。このノズル体60の内芯部に穿設した芯孔63内にニードル軸5の先端を後方から挿入することによりニードル軸5先端の軸芯をノズル体60の中芯と一致せしめる。 ヘッド部2のノズル体60の周囲には適宜な間隙を介して筒状の嵌合部20を突出形成してある。この嵌合部20の外周面20aは後述するエアーキャップ3内周面を嵌合する合い面として精密に仕上げてある。
一方、上記嵌合部20に嵌装するエアーキャップ3は、所謂縦平吹き、及び横平吹きが可能な平吹き用のものである。エアーキャップ3の前面中芯部には中芯孔3aを穿設すると共に、この中芯孔3aを挟むようにキャップ角部3bを突出形成してある。両キャップ角部3bの内側の面には各々吹き出し孔3cを設け、ノズル体60先端からの延長線上を向くように構成してある。
【0019】
エアーキャップ3の開口部側の内周面内には上記ヘッド部2の嵌合部20の外周面20aに対して正確に嵌合する内嵌合部3d部を周設してある。そして、ヘッド部2の嵌合部20外周面20aとエアーキャップ3内周の内嵌合部3dとが嵌合した状態にあってはエアーキャップ3の開口側端面3fがヘッド部2の内嵌合部3d端面25とが突き当たった状態となる(図1)。このように、エアーキャップ3の装着状態においては、ノズル体60の先端と中芯孔3aとが正確に同芯し、ノズル体60先端部の周囲に圧搾空気が吹き出る間隙が正確に形成されるようになっている。
ヘッド部2にエアーキャップ3を嵌装した状態からリングナット4を前方から螺嵌して、ヘッド部2外周のネジ部24に螺合することにより、エアーキャップ3の開口部外周に周設した段差部3eとリングナット4の段差部4aが当接して締め付けられ、ヘッド部2に対してエアーキャップ3が取付け固定される。
【0020】
上記したように締め付けたリングナット4を幾分弛めると、嵌合部20外周面20aとエアーキャップ3内嵌合部3dとの嵌合関係によりエアーキャップ3がスムースに回動できるようになり、同エアーキャップ3の角部3bを縦平吹きの位置と横平吹きの位置に合わせて再度締め付けることにより、縦平吹き使用(仮想線)と横平吹き使用(実線)とに使い分けることができる(図3)。
尚、図2にて示すように、エアーキャップには丸吹き専用のものもあり、上記した平吹き用のエアーキャップ3と丸吹き用のエアーキャップ3’とを交換することにより、エアーブラシを丸ふき専用のものとして使用でき、エアーブラシと同様な精密な丸吹き塗装を行なうことができる。
【0021】
上記したように構成した塗装用エアーブラシAは、嵌合部20の外周面20aとエアーキャップ3内嵌合部3dの加工精度を高めて精密な嵌合を実現することにより、ノズル6先端部とエアーキャップ3の中芯孔3aとの芯だしを正確に行なっている。その結果、ノズル体60周りを通過する空気流が整流され、現状においてエアーブラシ用のコンプレッサーとして広く用いられている低圧コンプレッサー(0.05MPa〜0.1MPa)利用して噴霧量が多く且つエアーブラシと同等な精密な噴霧を実現することができる。
即ち、本発明の塗装用エアーブラシAは現在広く普及しているエアーブラシ用の低圧用コンプレッサーをそのまま利用することができる利点がある。
【0022】
図4にて示すのは、本願の平吹き用のエアーブラシと従来の平吹き用エアーブラシとの噴霧パターンを示したものであり、(a)が本願のエアーブラシ、(b)が通常のエアーブラシである。
この比較試験は、リニア式のコンプレッサーを使用し、0.1MPa(1.0kgf/cm2)の圧力により同じ水性塗料を吹き付けしたパターンであるが、本願のエアーブラシは低圧ながらもかなり幅の広いパターンで噴霧でき、しかも噴霧の粒子も微細で非常に綺麗である。これに対して従来の平吹き用のエアーブラシは低圧なために噴霧パターンの幅が狭く、さらにパターンが粗くなってしまう部分があり、両者の差異は一目瞭然である。
【0023】
ところで、縦平吹きと横平吹きとを頻繁に切り換えて使用し、これを長期にわたり続けた場合、上記嵌合部の摩耗によりノズル体60先端とエアーキャップ3との嵌合部が摩耗してノズル6の芯だし精度が低下することがある。このような場合にも、摩耗したノズル体60、若しくはエアーキャップ3,3’を交換することにより新品と同様、精密な芯だしを維持し、より長期にわたり精密な噴霧を可能に成すことができる。すなわち、ノズル体60周りの嵌合部の摩耗によりエアーブラシ本体自体が使用不能になるようなこともなく、コストパフォーマンスの向上にも寄与する。
【0024】
また、ノズル6先端部のノズル体60とニードル軸5の先端部とは精密な噴霧を維持するために特に重要な部分であるが、使用後の清掃作業時等にエアーキャップ3を取り外した状態で落としたりどこかにぶつけてしまうと、大抵の場合ノズル体60や管状部61が変形して使用不能な状態になることが多い。しかし、本発明の塗装用エアーブラシAは、このような場合でもエアーブラシ本体1に対して着脱可能に螺嵌装着したヘッド部2を交換することにより再び使用できるようになるので、修理の面でも大変優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を実施した塗装用エアーブラシを示す縦断側面図。
【図2】同塗装用エアーブラシのノズル部分を分解して示す拡大従断面図。
【図3】同エアーブラシのノズル周りを示す分解斜視図。
【図4】本願のエアーブラシと通常のエアーブラシとを用いて比較した噴霧パターンであり、(a)は本願エアーブラシの噴霧パターン、(b)は従来のエアーブラシの噴霧パターンである。
【符号の説明】
【0026】
A・・・塗装用エアーブラシ
1・・・エアーブラシ本体
2・・・ヘッド部
3・・・エアーキャップ
3a・・・中芯孔
3d・・・内嵌合部
4・・・リングナット
5・・・ニードル軸
6・・・ノズル
20・・・嵌合部
20a・・・外周面
61・・・管状部
60・・・ノズル体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーブラシ本体の軸芯部に沿ってニードル軸をスライド可能に挿通し、このニードル軸の先端部を、エアーブラシ本体の先端に着脱可能に螺合したヘッド部の中心部
に後方から挿入すると共に、同ヘッド部先端の中心取り付けたノズル体の中心孔に挿入してノズルを構成し、更に上記ヘッド部におけるノズル体の周囲に略円筒状の嵌合部を周設し、該嵌合部に平吹き用エアーキャップの内周面を密接嵌合してキャップの中心孔と上記ノズル体先端部との芯だしを行ないこの嵌合関係により、該キャップの外周にリングナットを前側から嵌合し、ヘッド部の外周に螺合してエアーキャップを固定して成る塗装用エアーブラシ。
【請求項2】
上記エアーキャップは、丸吹き用のエアーキャップと交換可能に構成した請求項1記載の塗装用エアーブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−15218(P2006−15218A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194468(P2004−194468)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(594193690)株式会社ビービーリッチ (7)
【Fターム(参考)】