説明

塗装用ノズル

【課題】塗料の塗着効率および塗装品質を向上でき、かつ、迅速に塗装できる塗装用ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル本体1に、塗料を噴出する塗料噴出口11と、塗料噴出口11を囲む環状で且つ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口と、霧化エア噴出口よりも径方向外側に設けてあり、霧化塗料A4を所定のパターン形状に噴霧させるパターンエアA3を噴出するパターンエア噴出口とを備え、パターンエアA3が被塗布物Bに到達する前に、パターンエアA3に補助気体A5を所定の角度で交錯させつつ噴出してパターンエアA3と補助気体A5とを混合させる補助気体噴出部20を備える塗装用ノズルX。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル本体に、塗料を噴出する塗料噴出口と、当該塗料噴出口を囲む環状で且つ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口と、当該霧化エア噴出口よりも径方向外側に設けてあり、霧化した塗料を所定のパターン形状に噴霧させるパターンエアを噴出するパターンエア噴出口とを備えた塗装用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような塗装用ノズルは、例えば、塗装用エアスプレイガンの先端部に取り付けて使用される。当該塗装用ノズルでは、ノズル本体の軸芯方向に沿って噴射された液体の塗料に対して霧化エアを衝突及び混合させて塗料を霧化し、さらに、パターンエアによって霧化した塗料の断面を所定パターン(例えば楕円形)に変形し、所定パターンの霧化した塗料を被塗布物に吹き付けている。
【0003】
例えば特許文献1には、塗面に塗着した塗料の粒子方向を整えるため、塗料の塗布直後に、塗面に塗着した塗料に対して押付け用気体を吹付ける塗装方法が記載してある。この方法は、押付け用気体による押付け効果により、塗料粒子の方向を整えて良好な塗装仕上りを得ると共に、当該気体の押付けにより塗着効率を向上させようとするものである。
【0004】
【特許文献1】特開平9‐47694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば被塗布物の表面に凹凸部分が存在する場合、当該凹凸部分に塗着した塗料の乾燥程度は、被塗布物の平面部分に塗着した塗料の乾燥程度と異なる場合がある。
特許文献1に記載の装置では、塗料の塗布直後に、塗面に塗着した塗料に対して押付け用気体を吹付けるため、未乾燥の塗料の塗膜表面を乱す虞がある。この場合、塗料が液垂れすると塗装ムラが生じる、或いは、塗装領域以外の領域に塗料が液垂れする等、所望の塗装状態が得られない虞がある。
【0006】
また、例えば被塗布物に対して複層膜塗装する場合においては、複数回の塗装処理を行い、それぞれの塗装処理の間に乾燥工程を行う必要があったため、塗装工程が煩雑なものとなっていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、塗料の塗着効率および塗装品質を向上でき、かつ、迅速に塗装できる塗装用ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る塗装用ノズルの第一特徴構成は、ノズル本体に、塗料を噴出する塗料噴出口と、当該塗料噴出口を囲む環状で且つ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口と、当該霧化エア噴出口よりも径方向外側に設けてあり、霧化した塗料を所定のパターン形状に噴霧させるパターンエアを噴出するパターンエア噴出口とを備え、前記パターンエアが被塗布物に到達する前に、前記パターンエアに補助気体を所定の角度で交錯させつつ噴出して前記パターンエアと前記補助気体とを混合させる補助気体噴出部を備えた点にある。
【0009】
本構成のごとく、パターンエアが被塗布物に到達する前にパターンエアおよび補助気体を混合することで、パターンエアに含まれる霧化した塗料(霧化塗料)の乾燥程度を、補助気体によって調節することができる。例えば霧化塗料の乾燥程度を速めると、塗料を粘度が高い状態で被塗布物に塗着させることができるため、塗着した塗料は被塗布物から液垂れし難くなる。従って、塗着効率および塗装品質を向上させることができる。
【0010】
また、例えば被塗布物に対して複層膜塗装する場合においては、複数回の塗装処理を行い、それぞれの塗装処理の間に乾燥工程を行う必要がある。しかし、本構成の塗装用ノズルでは、霧化塗料の乾燥を促進して乾燥工程を省略することができるため、全体の塗装工程を単純化し、かつ短時間で行うことができる。
【0011】
本発明に係る塗装用ノズルの第二特徴構成は、前記補助気体の温度を調節する温度調節手段を備えた点にある。
【0012】
本構成のごとく、温度調整手段によって補助気体の温度を調整することで、補助気体と混合状態にあるパターンエアに含まれる霧化塗料の乾燥程度をより正確に制御することができる。
よって、本構成では、噴霧する塗料の特性に応じて、あるいは、塗装時の環境温度等に応じて、霧化塗料の温度を最適に設定することができる。
【0013】
本発明に係る塗装用ノズルの第三特徴構成は、前記補助気体の噴出方向を、前記ノズル本体の軸芯と平行に設定した点にある。
【0014】
通常、パターンエアは、ノズル本体から離間する程、周囲に拡散する。このため被塗布物に対するノズル本体の距離をある一定値に設定することで、被塗布物に対して所定の面積に霧化塗料を噴霧することができる。つまり、被塗布物とノズル本体との距離は極力正確に設定すべきといえる。
本構成では、補助気体の噴出方向をノズル本体の軸芯と平行に設定してあるから、パターンエアの広がり程度を抑えることができる。この結果、被塗布物とノズル本体との距離設定に際して余裕が生じ、塗装作業を容易にしながらも良好な塗装の仕上がり品質を確保することができる。
【0015】
本発明に係る塗装用ノズルの第四特徴構成は、前記補助気体を、アルゴン・二酸化炭素・水蒸気のうちの何れか一つとした点にある。
【0016】
本構成によれば、上記四種類の補助気体は空気よりも高比重或いは熱容量が大きい。よって、パターンエアおよび補助気体が混合した際にパターンエアの温度調節が行い易くなり、霧化塗料の温度をより最適に設定し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の塗装用ノズルは、塗料を霧化させた霧化塗料を、被塗布物である車体等の表面に設定された塗装領域に塗着させて被塗布物を塗装するものである。当該塗装用ノズルは、塗装用エアスプレイガンの先端部に取り付けられる。
【0018】
図1〜4に示したように、当該塗装用ノズルXは、ノズル本体1に、塗料噴霧部10および補助気体噴出部20を設けてある。
塗料噴霧部10は、塗料A1を噴出する塗料噴出口11と、塗料噴出口11を囲む環状で且つ霧化エアA2を噴出する霧化エア噴出口13と、霧化エア噴出口13よりも径方向外側に設けてあり、霧化した塗料(霧化塗料)A4を所定のパターン形状に噴霧させるパターンエアA3を噴出するパターンエア噴出口14とを備える。
補助気体噴出部20は、パターンエアA3が被塗布物Bに到達する前に、パターンエアA3に補助気体A5を所定の角度で交錯させつつ噴出してパターンエアA3と補助気体A5とを混合させるように構成してある。
【0019】
(塗料噴霧部)
塗料噴霧部10に備えた塗料噴出口11は、塗料通路12を介して高圧の塗料A1を収容する塗装粒子源18と接続する。
当該塗料通路12には、塗料A1の噴出圧力を調整するレギュレータ等の圧力調整手段19と、塗料A1の温度を調整する温度調整器T1と、塗料噴出口11からの塗料A1の噴出量および噴出の有無を調整するバルブV1とが備えてある。
【0020】
塗料通路12は、ノズル本体1の先端部付近では、その中央部にノズル本体1の軸芯Z方向に延びるように設けてある。塗料通路12は、先端側ほど流路面積が小さくなるように構成してあり、その先端部の開口を塗料噴出口11としてある。塗料噴出口11は軸芯Z上に円形状に設けてあり、当該軸芯Zの方向に沿って塗料A1を噴出する。
【0021】
塗料通路12の径方向外側に、塗料通路12の外周部を囲む状態で霧化エア通路16を設けてあり、霧化エア通路16の先端部の開口を霧化エア噴出口13としている。霧化エア通路16は、軸芯Zの方向に沿って直線的に先端側に延びたのち、当該軸芯Zに向って傾斜するように構成してある。
塗料通路12の先端部と霧化エア通路16の先端部とを軸芯Zの方向に同じ位置に設けてあり、塗料噴出口11と霧化エア噴出口13とを軸芯Zの方向に同じ位置に設けている。霧化エア噴出口13は、塗料噴出口11を囲む円環状に設けてあり、軸芯Zの方向に対して斜めに霧化エアA2を噴出する。
【0022】
霧化エア通路16の径方向外側に、霧化エア通路16の外周部を囲む状態でパターンエア通路17を設け、パターンエア通路17の先端部の開口をパターンエア噴出口14としている。パターンエア通路17は、霧化エア通路16と同様に、軸芯Zの方向に沿って直線的に先端側に延びたのち、当該軸芯Zに向って傾斜するように構成してある。
パターンエア通路17の先端部を霧化エア通路16の先端部よりも軸芯Zの方向の先端側に設けてあり、パターンエア噴出口14を霧化エア噴出口13よりも軸芯Zの先端側に設けている。パターンエア噴出口14は、例えば周方向にパターンエアA3の流量が異なる状態で霧化エア噴出口13を囲む環状に設けている。
【0023】
パターンエア噴出口14は、霧化エアA2の流量よりもパターンエアA3の流量の方が多くなるようにしている。例えば、パターンエア通路17の通路面積を霧化エア通路16の通路面積よりも大きくしつつ、パターンエア噴出口14の開口面積を霧化エア噴出口13の開口面積よりも大きくすることにより、霧化塗料A4をパターンエアA3にて積極的に案内することができる。
【0024】
ノズル本体1の軸芯Zの方向が被塗布物Bの塗装面を向くように配置した状態で、塗装用エアスプレイガン(図外)の引き金を引くと、塗料噴出口11から液体の塗料A1が噴出し、かつ、霧化エア噴出口13から圧縮空気である霧化エアA2が噴出するとともに、パターンエア噴出口14からパターンエアA3が噴出する。
液体の塗料A1に対して霧化エアA2を衝突及び混合させて塗料A1を霧化する。霧化塗料A4は、パターンエアA3によって包囲されつつ略円錐状のパターンに変形され、軸芯Zの方向に沿って被塗布物Bの側に拡散する。これにより、所定パターンの霧化塗料A4が塗装領域Pに吹き付けられる。
【0025】
(補助気体噴出部)
補助気体噴出部20は、パターンエアA3が被塗布物Bに到達する前に、パターンエアA3に補助気体A5を所定の角度で交錯させつつ噴出してパターンエアA3と補助気体A5とを混合させる。
このとき、補助気体噴出部20は、塗装領域Pの外周と重なる領域(補助気体噴き付け領域Q)に補助気体A5を噴出する。
本実施形態では、図1に示すごとく二つの補助気体噴出部20を塗料噴霧部10の両側に設け、補助気体A5の噴出方向Z’がノズル本体の軸芯Zの側を向くように構成し、補助気体噴き付け領域Qが塗装領域Pの少なくとも一部の外周と重なる場合について説明する。
【0026】
補助気体噴出部20は、補助気体A5を噴出する補助気体噴出口21を備え、当該補助気体噴出口21は、補助気体通路22を介して高圧の補助気体A5を収容する補助気体源23と接続する。
【0027】
また、補助気体通路22には、補助気体A5の噴出圧力を調整するレギュレータ等の圧力調整手段24と、補助気体A5の温度を調整する温度調整器T2と、補助気体噴出口21からの補助気体A5の噴出量および噴出の有無を調整するバルブV2とが備えてある。
【0028】
本発明の塗装用ノズルXは、パターンエアA3が被塗布物Bに到達する前にパターンエアA3および補助気体A5を混合する。このような混合状態では、パターンエアA3に含まれる霧化塗料A4の乾燥程度を、補助気体A5によって調節することができる。例えば霧化塗料A4の乾燥程度を速めると、塗料を粘度が高い状態で被塗布物Bに塗着させることができるため、塗着した塗料A1は被塗布物Bから液垂れし難くなる。特にメタリック塗料を塗布する場合には、液垂れを防止することで光輝材の配列を乱すことがないため、仕上げ概観のムラが抑えられて美しい塗装面を得ることができる。
このように本発明の塗装用ノズルXは、塗着効率および塗装品質を向上させることができる。
【0029】
また、例えば複層膜塗装する場合においては、複数回の塗装処理を行い、それぞれの塗装処理の間に乾燥工程を行う必要がある。しかし、本発明の塗装用ノズルXでは、霧化塗料A4の乾燥程度を促進して乾燥工程を省略することができるため、全体の塗装工程を単純化し、かつ短時間で行うことができる。
【0030】
さらに、本発明の塗装用ノズルXでは、塗装領域Pの周縁に補助気体A5によるガスカーテンが形成される。本構成では、パターンエアA3に補助気体A5を所定の角度で交錯させるため、塗装領域Pに到達する前の霧化塗料A4の噴霧方向をガスカーテンの内側に変更して、ガスカーテンの外側に拡散し難くすることができる。
【0031】
温度調整器T2によって補助気体A5の温度を調整すると、補助気体A5と混合状態にあるパターンエアA3に含まれる霧化塗料A4の乾燥程度をより正確に制御することができる。よって、噴霧する塗料の特性に応じて、あるいは、塗装環境温度等に応じて、霧化塗料A4の温度を最適に設定することができる。
【0032】
例えば補助気体A5を温度調整器T2によって加温すれば、霧化塗料A4に含まれる溶媒の蒸発を促進することができる。このとき、塗料が被塗布物Bに塗着した際の不揮発成分(NV)の含有率が上昇して塗料の粘度が増す。このように、霧化塗料A4の乾燥程度を良好に制御して、塗料A1の液垂れを防止できるため、塗着効率および塗装品質がより向上する。
【0033】
(塗料)
塗料A1は、塗料噴出口11から噴出した後、霧化エアA2と衝突及び混合して霧化するものであれば何れのものも使用できる。塗料A1は、塗料粒子を、溶媒としての水あるいは各種有機溶媒に溶解させた水性塗料又は油性塗料が例示される。塗料A1の色・主要構成成分などについては限定されるものではない。
【0034】
(補助気体)
補助気体A5は、パターンエアA3が被塗布物Bに到達する前にパターンエアA3および補助気体A5が混合したとき、パターンエアA3に含まれる霧化塗料A4の乾燥を促進させるような気体を使用する。特に、空気より密度の高いアルゴン・二酸化炭素・水蒸気等の何れかの気体を補助気体A5として使用するのが好ましい。表1に、補助気体A5であるアルゴン・二酸化炭素・水蒸気(20℃、1気圧)の密度を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
通常、パターンエアA3は空気を利用している。これに対し、空気より密度の高い補助気体A5は、空気よりも高比重或いは熱容量が大きい。よって、パターンエアA3および補助気体A5が混合した際にパターンエアA3の温度調節が行い易くなり、霧化塗料A4の温度をより最適に設定し易くなる。
【0037】
また、塗装領域Pの周縁には補助気体A5によるガスカーテンが形成されるが、高密度の補助気体A5を使用することにより、密度の高いガスカーテンを形成できるため、霧化塗料A4は補助気体A5がガスカーテンの外側に拡散し難くなる。
【0038】
その他、塗装用ノズルXは、塗料粒子の塗布条件に従い、被塗布物Bに沿って所定の移動方向に移動させる移動手段(図外)として、往復動機構、X−Yテーブル、ロボット等の移動装置等を備えることが可能である。
【実施例】
【0039】
塗料A1として水性溶媒を使用し、噴出条件を種々変更して被塗布物Bを塗装し、塗料A1の塗着効率や塗装面の外観の変化等を調べた。
【0040】
当該噴出条件として、補助気体A5の種類・噴出圧力(MPa)・噴出温度(℃)を変更して実験を行った(実施例1〜8)。尚、比較として、補助気体A5なし、および、補助気体A5として窒素を使用した場合にも、噴出圧力(MPa)・噴出温度(℃)を種々変更した実験を行った(比較例1,2)。
結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
実施例1〜8において、高密度の補助気体A5であるアルゴン・二酸化炭素・水蒸気を使用することで、30%以上の塗着効率が得られた。
【0043】
実施例1〜8において、噴出圧力は、補助気体A5を使用した比較例2の場合の圧力(0.3MPa)より低圧(0.1MPa)で行えるものと認められた。
【0044】
実施例1,4において、噴出温度を比較例1,2と同じ温度である25℃としたところ、外観にムラが生じた。このとき、不揮発成分(NV)の塗着率は、比較例1,2と同じ(25%)であった。
【0045】
実施例2,3,5〜8において、噴出温度を50〜150℃としたところ、NV塗着率は35〜60%であった。これは、実施例1,4のNV塗着率(25%)より向上している。
また、実施例2,3,5〜8では厚膜化上限値においても、比較例および実施例1,4で得られた値(15μm)より高い値(25〜40μm)が得られ、さらにムラの無いメタリック感が得られた。
【0046】
以上より、本発明の塗装用ノズルXにおいて、高密度の補助気体A5であるアルゴン・二酸化炭素・水蒸気を使用すると、低圧で補助気体A5の噴出を行った場合であっても、塗着効率を向上させることができる。
特に、補助気体A5の噴出温度を50〜150℃、好ましくは50〜75℃に設定することで、NV塗着率および厚膜化上限値が向上し、ムラの無い塗装が行えるものと認められた。
【0047】
〔別実施の形態1〕
上述の実施形態では、補助気体A5の噴出方向が、ノズル本体の軸芯Zの側を向くようにした場合について説明した。しかし、このような態様に限られるものではない。例えば、補助気体A5の噴出方向を、ノズル本体1の軸芯Zと平行に設定することができる(図5)。このとき、補助気体A5の噴出方向の中心Z’がノズル本体1の軸芯Zと平行となる。
【0048】
通常、パターンエアA3は、ノズル本体1から離間する程、周囲に拡散する。このため被塗布物Bに対するノズル本体1の距離をある一定値に設定することで、被塗布物Bに対して所定の面積に霧化塗料A4を噴霧することができる。つまり、被塗布物Bとノズル本体1との距離は極力正確に設定すべきといえる。この点、本構成の塗装用ノズルXでは、補助気体A5の噴出方向をノズル本体1の軸芯Zと平行に設定してあるから、パターンエアA3の広がり程度を抑えることができる。この結果、被塗布物Bとノズル本体1との距離設定に際して余裕が生じ、塗装作業を容易にしながらも良好な塗装の仕上がり品質を確保することができる。
【0049】
補助気体噴出部20は、補助気体噴出口21の噴出角度を塗装条件によって調整可能に構成するとよい。
【0050】
〔別実施の形態2〕
上述の実施形態では、補助気体A5の噴出方向Z’がノズル本体の軸芯Zの側を向くように構成し、補助気体噴出部20は、補助気体噴き付け領域Qが塗装領域Pの少なくとも一部の外周と重なるように補助気体A5を噴出する場合について説明した。しかし、これに限られるものではなく、補助気体噴出部20は、塗装領域Pの全周と重なる領域(補助気体噴き付け領域Q)に補助気体A5を噴出できるように塗装用ノズルXに取り付けてもよい(図6,7)。
このとき、塗料噴霧部10を囲繞するように環状に形成した補助気体噴出部20から塗装領域Pを包囲するように補助気体A5を噴出する。
【0051】
本構成では、補助気体噴き付け領域Qが塗装領域Pの全周と重なるため、乾燥が促進された霧化塗料A4を被塗布物Bの広い範囲に亘って塗着させることができるため、塗装効率が向上する。
また、塗装領域Pの全周においてパターンエアA3および補助気体A5が重なるように噴出されるため、塗装領域Pの全周に補助気体A5によるガスカーテンが形成される。そのため、霧化塗料A4がガスカーテンの外方へ飛散するのを防止するシールド効果を、塗装領域Pの全周に亘って確実にすることができる。これにより、霧化塗料A4の流れが被塗布物Bの表面付近で乱れて周辺に飛散するのを確実に防止できる。
【0052】
〔別実施の形態3〕
上述の実施形態では、補助気体A5として空気より密度の高い気体を使用する場合について説明した。しかし、補助気体A5はこれらに限られない。例えば、パターンエアA3が被塗布物Bに到達する前にパターンエアA3および補助気体A5が混合したとき、パターンエアA3に含まれる霧化塗料A4の乾燥を促進させるような状態の気体を補助気体A5として使用することが可能である。例えば、加熱した空気・窒素等を使用できる。
【0053】
さらに、補助気体A5を空気・窒素等とし、補助気体A5の噴出速度を補助気体噴出速度調整手段(図外)によって調整した後、パターンエアA3と所定の角度で交錯させるように構成することが可能である。
【0054】
このように補助気体A5の噴出速度を調整すると、補助気体A5と混合状態にあるパターンエアA3に含まれる霧化塗料A4の乾燥程度をより正確に設定することができる。よって、噴霧する塗料の特性に応じて霧化塗料A4の速度を最適に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の塗装ノズルの概略図
【図2】本発明の塗装ノズルの側面視概略図
【図3】本発明の塗装ノズルの要部側面視概略図
【図4】本発明の塗装ノズルの要部前面視概略図
【図5】別実施形態1の塗装ノズルの側面視概略図
【図6】別実施形態2の塗装ノズルの概略図
【図7】別実施形態2の塗装ノズルの要部概略図
【符号の説明】
【0056】
X 塗装用ノズル
A1 塗料
A2 霧化エア
A3 パターンエア
A4 霧化塗料
A5 補助気体
B 被塗布物
T2 温度調節手段
Z 軸芯
Z’ 噴出方向
1 ノズル本体
11 塗料噴出口
13 霧化エア噴出口
14 パターンエア噴出口
20 補助気体噴出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に、塗料を噴出する塗料噴出口と、
当該塗料噴出口を囲む環状で且つ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口と、
当該霧化エア噴出口よりも径方向外側に設けてあり、霧化した塗料を所定のパターン形状に噴霧させるパターンエアを噴出するパターンエア噴出口とを備え、
前記パターンエアが被塗布物に到達する前に、前記パターンエアに補助気体を所定の角度で交錯させつつ噴出して前記パターンエアと前記補助気体とを混合させる補助気体噴出部を備えた塗装用ノズル。
【請求項2】
前記補助気体の温度を調節する温度調節手段を備えた請求項1に記載の塗装用ノズル。
【請求項3】
前記補助気体の噴出方向を、前記ノズル本体の軸芯と平行に設定してある請求項1または2に記載の塗装用ノズル。
【請求項4】
前記補助気体が、アルゴン・二酸化炭素・水蒸気のうちの何れか一つである請求項1から3の何れか一項に記載の塗装用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−220071(P2009−220071A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69807(P2008−69807)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】