説明

塗装用ブースの点検扉

【課題】 塗料ミストを噴霧気流と共に吸引し捕集処理する塗装ブースの処理室内を清掃点検する際に開閉する点検扉のコスト削減、取り扱いの利便性を向上させる。
【解決手段】 塗装ブースの処理室壁面の一部に設けた開口部を閉鎖する扉であって、開口部の上部近傍に扉の係止部を設け、点検扉は開口を塞ぐ大きさと、前記係止部に引っ掛けた時に点検扉が開口を塞ぐ位置に置かれる係止片を備え、これによって、塗装ブース運転による処理室内の負圧により、開口部に点検扉を密着させる。開口部と扉の接触部は内部負圧を維持するに必要な気密保持の構造が施される。前記開口部周囲と点検扉との接触部は、気密保持手段としてパッキン材が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装において使用され、塗料ミストを気流と共に吸引し捕集処理する塗装ブースの処理室内を清掃点検する際に開閉する点検扉の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプレー塗装の分野において、噴霧された塗料ミストを吸引処理する塗装用ブースは、塗装環境を清浄に維持し、外部への塗料ミスト排出を防止する意味から必要不可欠な装置として、広く使用されている。多くの場合塗装ブースは、ミストを捕集する処理装置を備えた処理室が設けられ、排気ファンによって塗装室で噴霧された塗料ミストを気流と共に処理室内に吸引し、塗料ミストを捕集処理した後、清浄空気を排出するように構成されている。
【0003】
塗料ミストの捕集処理には、いくつかの方法があるが、いずれにしても処理室内に入り込んだ塗料ミストによって徐々に汚染され定期的に清掃をする必要がある。また処理装置についても定期的な点検を実施し、捕集処理装置が必要な機能を維持できるようにしたり、故障時には修理する必要がある。このため処理室内の点検、清掃、修理等ができるように、処理室を構成する壁面の一部に点検用の扉が設けられている。
【0004】
点検用の扉は、処理室内に不要な気流が流入して排気ファンの性能低下を引き起こさないように、塗装ブースの運転時、処理室内と外部とを確実に遮断する用に構成されている。このため、点検扉を閉めた場合には、図7に示されるようなボルト・ナット等の締結ねじ部材21で締め付けて固定したり、ロックハンドルやハンドルフック等の締付具22により固定している。
【0005】
点検の頻度は一概に決められるものではないが、頻度が多ければ開閉もしくは取り外しが容易なようにハンドル式を採用することが望ましく、この場合は設備コストが問題となる。また頻度が少ない場合は、簡単なボルト締め等で対応することもできるが取り外し時の面倒や多くの場合処理室内で水を使用することによる錆の発生でボルトが破損するなどの問題がある。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、塗装ブースの点検扉を、設備コストを抑えた構造とし、取り扱い時に於いても容易に開閉もしくは取り外しができ、作業者の負担を軽減することができるようにすることである。

【課題を解決するための手段】
【0007】
塗料ミストを気流と共に吸引し処理室内で捕集処理する塗装ブースの、前記処理室を構成する壁面の一部に設けた開口部に取り付ける開閉扉は、壁面の開口部を遮蔽する大きさを有し、前記開口部近傍に設けられた係止部に係合する係合片を備え、開口部の係止部に係合したとき前記開口部の周囲と開閉扉が接触する状態に置かれ、その接触部は塗装ブースを運転した時に処理室の内部負圧によって吸着維持するに必要な気密保持の構造を持たせるものである。
【0008】
前記開口部周囲と点検扉との接触部には、気密保持手段としてパッキン材が設けられて、容易に気密を保持できる。また係止部と係合片は、係止穴とこれに係合するフック部材による簡単な構成により必要な機能を低コストで実現できる。


【発明の効果】
【0009】
点検扉によって閉鎖する開口部は、その近くの設けた係止部に、点検扉に設けた係合部を掛けて開口部を塞ぐ状態で置かれる。したがって点検扉の開閉もしくは取り外し・取り付けは極めて容易に行うことができる。また塗装ブースの運転時には、処理室内が排気ファンの吸引による内部負圧により点検扉が開口部に押圧され処理室内とは確実に遮断されて、処理室への不要な吸込みが防止される。
【0010】
開口部周囲と点検扉との接触部に気密保持手段としてのパッキン材を設けることによって確実に気密を保持し、排気ファンの性能を損ねることが無く、その分押圧力も強くなる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態は、以下図面によって説明する。図1は一般的な水洗式の塗装用ブースの概略構成図を示している。塗装室1は、被塗装物を置き噴霧塗装が行われる場所で、ここで噴霧され被塗装物に付着しなかった塗料のミストが後方の処理室2内に吸引される。処理室2は前面水流板3によって前記塗装室とは区分され、下方に吸込み口4、上部には排気ファン5が設けられている。
【0012】
図の例の場合、排気ファン5の運転により塗装室1に噴霧され被塗装物に塗着しなかった噴霧粒子が気流となって吸込まれ処理室2内を通過する間に、この気流にのった噴霧粒子はまず前面水流板3に衝突して水流と共に下部の水槽6内に落とし込まれる。さらに吸込み口4を通過した気流中の噴霧粒子は水洗ノズル7からのシャワーにより捕集され、同じく水槽6内に落とし込まれる。
【0013】
水洗によってわずかに取りきれなかった微細な塗料ミストや湿気を含んだ気流は、エリミネータ8、遮蔽板9等でこれらの塗料ミストや含まれた水分が取り除かれて排気ファン5を経て排気される構成となっている。このため処理室2内のエリミネータ8等は、長期の使用により塗料が付着し、あるいは錆や腐食が発生しやすい状況にあり、定期的な清掃が必要となる。
【0014】
また水洗ノズル7は通常水槽6内に取り込まれた塗料のミストによるスラッジを除去した水がポンプによって循環使用されるため、細かい塗料スラッジの一部やごみ等が取りきれず、やはり詰まりが起こる等の弊害を取り除くために定期的な点検と清掃が必要となっている。したがってそのための点検扉10、を予め設けておき、作業がしやすいようになっている。
【0015】
図2は点検扉10を開口部11に取り付ける様子を示し、図3は点検扉10を、壁面12に明けた開口部11に引っ掛けた状態の断面を示している。点検扉10は壁面12の開口部11を十分に塞ぐだけの大きさの板状で、取り付け取り外しに際して保持する取っ手13が固定されている。取っ手13の裏側には鉤形のフック14が固定されている。開口部11の上部に、前記フック14の位置に係止部の穴15が設けられ、この穴に係合片のフック14が掛けられて点検扉10が開口部11を塞ぐ位置に取り付くように構成されている。
【0016】
この状態で塗装ブースを運転すると、前記排気ファンによる吸込み圧力によって処理室2内が負圧になり、外部の大気圧によって点検扉10が壁面12の開口部11に押し付けられ、確実に遮断される。当然運転を停止すれば押圧は解除され、点検扉10は係止用の穴に引っ掛けただけの状態となり、容易に外すことができる。したがって特別な操作を必要とせず、運転時は確実な閉鎖がなされ、点検時は点検扉10を簡単に取り外しできる状態が得られる。
【0017】
この場合前記点検扉10の大きさは係止部の穴15も含めて塞ぐ大きさに形成される。またこれら開口部11の周囲と点検扉10との接触部は気密性を保持するよう密着とする。密着させる手段は限定するものではないが、互いの平面度を高めて密着させたり接触部に柔軟性の高い材質を用いて密着をさせたりするほか、図4に示すように接触部にパッキン16を介入させて壁面12と点検扉10との密着性を高めることでも良い。
【0018】
上記点検扉10の大きさと開口部周囲の気密性は、処理室2内との遮断が必要であり、前述のように係止用の穴15があればこれも塞ぐ構成となるが、図5のように壁面12側にフック17を設け、点検扉10側に係止穴15を設けた場合は、開口部11の気密性のみを考慮すればよくなる。
【0019】
また別の例として図6に示すように、係止部を壁面12に形成した折り曲げ部18に、点検扉10側に形成した折り曲げ部19をひっかけるようにすることも可能で、この場合も開口部11のみが扉で閉じられれば良いことになる。
【0020】
さらに図6の場合には点検扉10の下部に開口部11に入り込ませる支え板20が固定され、この支え板が開口部11の内側に差し込まれ、点検扉10の下端との間に壁面12の一部が入り込むようになっている。これによって点検扉10は差し込んだ位置にとどまり、点検扉を設けた壁面が逆傾斜になっていても、上部の折り曲げ部18と折り曲げ部19で形成された係止部で支えられた状態でぶら下がり、下方が壁面と離れて不安定な状態になることも無くなる。もちろん支え板20の構成は、壁面12の外側に点検扉10の下端が入り込む溝を形成するように取り付けた構成としても良い。
【0021】
このようにいずれの状態においても、点検扉10は係止部に係合片を引っ掛けるだけで、簡単に開口部を塞ぐ位置に置くことができ、塗装室が運転を始めれば、処理室2内の負圧により外部から押される状態で、確実に開口部11を遮断し、塗装室の塗料ミスト処理装置の機能及び性能を損なうことが無い。
このように、本発明によれば、点検扉の取り外し、取り付けが非常に簡単にすばやくできるようになって作業者の負担を軽減し 従来に比較し簡単な構造にすることができ、設備コストを抑えることができる。


【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が使用される塗装ブースの構成を説明する概要説明図。
【図2】本発明の点検扉の実施例を取り付け、取り外す場合の説明図。
【図3】本発明の点検扉の実施例を塗装ブースに取り付けた部分を示す断面図。
【図4】本発明の別の実施例を示す点検扉の断面図。
【図5】図4の実施例にパッキンを設けた場合の点検扉の断面図。
【図6】本発明の別の実施例を示す点検扉の断面図。
【図7】従来の点検扉の取り付け例を示す説明図。
【符号の説明】
【0023】
1、塗装室
2、処理室
3、前面水流板
4、吸込み口
5、排気ファン
6、水槽
7、水洗ノズル
8、エリミネータ
9、遮蔽板
10、点検扉
11、開口部
12、壁面
13、取っ手
14、フック
15、穴
16、パッキン
17、フック
18、19、折り曲げ部
20、支え板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料ミストを気流と共に吸引し処理室内で捕集処理する塗装ブースの、前記処理室を構成する壁面の一部に設けた開口部に取り付ける開閉扉において、該開閉扉は壁面の開口部を遮蔽する大きさを有し、前記開口部近傍に設けられた係止部に係合する係合部を備え、係合したとき前記開口部の周囲が開閉扉と接触する状態に置かれ、且つ接触部は処理室の内部負圧を維持するに必要な気密保持の構造を有している塗装用ブースの点検扉。
【請求項2】
前記開口部周囲と点検扉との接触部は、気密保持手段としてパッキン材が設けられた請求項1の塗装用ブースの点検扉。
【請求項3】
係止部と係合部が、係止穴とこれに係合するフック部材からなる請求項1の塗装用ブースの点検扉。













【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−136740(P2009−136740A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314364(P2007−314364)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】