説明

塗装用マスキング治具

【課題】マスキング作業をし易くし、塗り斑を無くし、作業爾後の清掃をし易くし、しかも有害溶剤の使用量を大幅に減らすことができる塗装用マスキング冶具を提供する。
【解決手段】電鋳法によって成形したニッケルあるいは銅のマスク1上に把手付き鉄製押さえ板2を重ね置いて塗装する品物3上に置き、当該品物の底面側の昇降する位置決め具4にセットし、当該セット位置を保って永久磁石6ないし電磁石の磁力を利用してマスクを挟んで保持することを特徴とする冶具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用マスキングにおいて、マスクを保持するために磁石の磁力を利用する治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗装用マスキングは、電鋳法で成型したニッケルあるいは銅の板状マスクの周囲をスイングする矩形の外枠に半田付けした4本のブリッジ端で半田付けして固定していた。
【0003】
このマスク保持治具は、矩形の外枠のサイズが大きく、噴霧塗装作業の邪魔になり、また、当該外枠とマスクを固定している4本のブリッジの横棒が塗料噴霧の妨げとなって影になる部位が塗り残しとなっていた。
【0004】
塗り残しを無くすためにスプレィガンの位置を変えて再噴霧すると、既に塗装済みの部位が二度塗りになり、結果として塗り斑となり、均一な塗装品質に難があった。
【0005】
また、マスクを洗浄するにも矩形の外枠や4本のブリッジが邪魔になり、作業し難いばかりでなく付着した塗料の剥離・清掃に多量の洗浄溶剤あるいは発生蒸気をまき散らすこともあって作業環境を汚染し作業者の健康を損ねる害があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べた従来の塗装用マスキングに対し、場所を取らず、マスキング噴霧塗装作業をし易くし、塗り斑を無くし、マスクに付着した塗料の剥離・清掃も容易にでき、しかも少量の清掃用溶剤で済み、溶剤の蒸気による作業環境汚染をしない治具が望まれた。
【0007】
本発明は、このような従来の治具の作業上の欠点を無くすものであり、マスキング作業をし易くし、塗り斑を無くし、作業爾後の清掃をし易くし、しかも有害溶剤の使用量を大幅に減らすることを目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、電鋳法によって成型したニッケルあるいは銅のマスク上に把手付き鉄製押さえ板を重ね置いて塗装する品物上に置き、当該品物の底面側のエアーシリンダーによって昇降する位置決め具にセットし、当該セット位置を保って永久磁石ないし電磁石の磁力を利用してマスクを堅固に保持する形態・構造にする。
【0009】
また、当該品物の底面側にセットする位置決め具は、永久磁石ないし電磁石と干渉することなく昇降できるエアーシリンダーによって固定し、かつ両側面部に蝶番で固定した磁力解放に供する磁力解放シューを取り付け、マスキング塗装作業時には当該シューを下側に垂らして下降させ、適宜古新聞あるいは覆い布を被せて位置決め具に噴霧塗料が付着することを無くする。
マスキング塗装作業終了後には当該磁力解放シューを位置決め具の上面側に反転させた位置にして上昇させ、永久磁石ないし電磁石の磁力で保持している塗装済み品物を定めた高さまで持ち上げて磁石の磁力を解放し、容易に塗装済み品物を搬出することができる。
【発明の効果】
【0010】
上述したように本発明の塗装用マスキング治具は、塗装する品物とほぼ同サイズのコンパクトな位置決め具で塗装する品物を受け、それと同時に当該位置決め具と干渉しないで、塗装する品物を把手付き鉄製押さえ板および永久磁石ないし電磁石の磁力で挟んで保持し、次の工程では位置決め具に固定してあるエアーシリンダーを下降させることで塗装する品物をスタンドアローンさせて噴霧塗装の邪魔にならないようにする。
【0011】
そのために、従来の大がかりな矩形の外枠では問題となっていた場所塞ぎ、作業のし難さ、塗装斑の発生の欠点を解消できる。また、作業爾後のマスクの清掃もマスクとマスクの上に重ねて置いた把握手付き鉄製押さえ板をコンパクトな洗浄トレイの溶剤に浸して付着塗料を除去できるので作業環境を汚染しないで澄む。また清掃用溶剤の使用量も少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0013】
図1においては、1は電鋳法によって成型したニッケルあるいは銅のマスクであり、その上面に把手付き鉄製押さえ板2を重ね置いて塗装する品物3の上に置く。当該マスク1、把手付き鉄製押さえ板2を載せた当該塗装する品物3は、位置決め具4のガイド15に沿わせてセットし、同時に位置決め具4の上面と同一面にある磁石6に引着保持させる。磁石6は磁石保持ブラケットで固定してある。
【0014】
蝶番を中心軸として天地方向に回転可動な磁力解放シュー5を両袖に装着した位置決め具4の底側には、エアーシリンダー7を取り付けてあり、天地方向に昇降する。
【0015】
図2はエアーシリンダー7を縮小させて位置決め具4を下降させた状態を示している。この状態にしてから噴霧塗装をするが、位置決め具4が十分な下降位置にあれば、図4に示したスプレィガン13の噴霧塗装の飛沫付着を防げる。また、適宜古新聞あるいは覆い布を被せることで完全に飛沫付着を防げる。
【0016】
図3は、噴霧塗装終了後に位置決め具4両袖の磁力解放シュー5を天側に反転させてからエアーシリンダー7を伸長させた状態を示している。また、磁石6で保持していた塗装する品物3を元の位置から定めた高さまで持ち上げて磁石6の磁力から解放した状態をも示している。従って、磁石6の磁力から解放された噴霧塗装済みの塗装する品物3は容易に取り外して搬出できる。
【0017】
図4は、従来の塗装用マスキング治具を示している。マスク1は、外枠9に半田付けされたブリッジ10で半田付け保持されているが、マスク1より遙かにサイズが大きい外枠9が噴霧塗装作業の邪魔になって作業性を損ね、ブリッジ10はスプレィガン13の塗料噴霧を遮って塗り残しになり、塗り残しを無くすためにスプレィガン13の位置を移動させて再噴霧すると塗装済み部位が二度塗りになって塗り斑を生じさせる。
【0018】
また、従来の塗装用マスキング治具は、大きな外枠9およびブリッジ10に付着した塗料の剥離・清掃が容易ではなく、相当量の洗浄溶剤を使用することになり、当該溶剤の発生蒸気による環境汚染、それに溶剤の蒸気を吸引した作業者の健康を損ねる害もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 本発明の全体見取図
【図2】 エアーシリンダー収縮・位置決め具下降の見取図
【図3】 磁力解放シュー反転・エアーシリンダー伸長・位置決め具上昇の見取図
【図4】 従来の塗装用マスキング治具の見取図
【符号の説明】
【0020】
1 マスク
2 把手付き鉄製押さえ板
3 塗装する品物
4 位置決め具
5 磁力解放シュー
6 磁石
7 エアーシリンダー
8 磁石保持ブラケット
9 外枠
10 ブリッジ
11 受け台
12 塗り残し
13 スプレィガン
14 塗装する部分
15 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装用マスキングにおいて、電鋳法によって成型したニッケルあるいは銅のマスク上に把手付き鉄製押さえ板を重ね置いて塗装する品物上に置き、当該品物の底面側の昇降する位置決め具にセットし、当該セット位置を保って永久磁石ないし電磁石の磁力を利用してマスクを挟んで保持する治具。
【請求項2】
当該品物の底面側にセットする位置決め具は、永久磁石ないし電磁石と干渉することなく昇降できるエアーシリンダーによって固定し、かつ両側面部に蝶番で固定した磁力解放に供するシューを取り付け、マスキング塗装作業時には当該シューを下側に垂らして下降し、マスキング塗装作業終了後には当該シューを位置決め具の上面部に反転させた位置にして上昇させて保持している磁石の磁力を解放することができる請求項1の治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−42387(P2010−42387A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227598(P2008−227598)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(595005101)有限会社尾科製作所 (1)
【Fターム(参考)】