説明

塗装用版ロール及び建築用板材

【課題】自然な風合いのある塗装模様を形成することができると共に、塗装効率を向上することができる塗装用版ロールを提供する。
【解決手段】塗装用版ロール1は、少なくとも外周側の最外層がアスカーゴム硬度計C型によるゴム硬度が50度未満の材質で形成され、外周面に塗装模様の形成のための塗装用凸部2が形成され、前記塗装用凸部2の外周側の表面が平滑に形成されている。この塗装用版ロール1を用いて基材に対する塗装が行われると、塗装用凸部2から適度な量の塗料が基材に転写されて塗装が行われると共に、基材の表面に不陸が生じていても、塗装用版ロール1が基材の不陸に追随して塗装が行われる。また、塗装用凸部2には微細な凹凸が形成されていないので、このような微細な凹凸の摩滅や微細な凹凸における塗料の目詰りが生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用板材等に塗装模様を形成するための塗装用版ロール、及びこの塗装用版ロールによる塗装が施された建築用板材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窯業系基材等の基材の表面にフレキソ塗装法等による塗装模様が形成された建築用板材が、建物の壁材等として使用されている。
【0003】
このような基材の塗装に使用される塗装用版ロールとしては、外面に塗装模様の形成のための複数の塗装用凸部が形成されたものが使用されており、この塗装用凸部から塗料を基材の表面に転写することで、塗装模様を形成するようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
この種の塗装用版ロールとしては、外層材がゴム材で形成され、心材がスポンジ材で形成されたものがある。このような塗装用版ロールの外周面には複数の塗装用凸部が形成され、この塗装用凸部の表面に付着した塗料を基材の表面に転写することで塗装が施される。
【0005】
このような塗装用版ロールで塗装を行う際、基材の表面に不陸があると、この不陸の部分に不自然な塗装抜けが生じてしまうおそれがある。そこで、塗装用版ロールの塗装用凸部の表面には、網点状の複数の微細な凹凸が形成されている。これにより塗装用凸部の表面における塗料の保持量を増大させ、塗装不良が生じないようにしている。
【0006】
しかし、このように塗装用凸部における塗料の保持量を増大させると、基材の表面に不陸があっても形成される塗料が一様に塗布されてしまい、基材の不陸による自然な風合いのある外観が失われてしまうという問題がある。また、塗装用凸部に微細な凹凸を刻設すると塗装用版ロールの製造に手間がかかり、製造コストの増大を招いてしまうという問題がある。また、塗装を繰り返すと微細な凹凸が摩滅し、塗装用凸部における塗料の保持量が減少してしまうという問題や、微細な凹凸に塗料による目詰りが生じ、基材に網目模様が転写されてしまうという問題もある。微細な凹凸が摩滅した場合には塗装用版ロールを交換しなければならず、また目詰りが生じるとその原因である塗料を除去しなければならず、いずれの場合も塗装工程を停止しなければならなくなって塗装効率の低下を招いてしまう。
【特許文献1】特開平8−218591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、自然な風合いのある塗装模様を形成することができると共に、塗装効率を向上することができる塗装用版ロール、及びこの塗装用版ロールによる塗装が施された建築用板材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る塗装用版ロール1は、少なくとも外周側の最外層がアスカーゴム硬度計C型によるゴム硬度が50度未満の材質で形成され、外周面に塗装模様3の形成のための塗装用凸部2が形成され、前記塗装用凸部2の外周側の表面が平滑に形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記ゴム硬度は、アスカーゴム硬度計C型により、JIS S6050に準拠して計測される値である。
【0010】
この塗装用版ロール1を用いて基材5に対する塗装が行われると、塗装用凸部2から適度な量の塗料16が基材5に転写されて塗装が行われると共に、基材5の表面に不陸が生じていても、塗装用版ロール1が基材5の不陸に追随して塗装が行われる。このため、基材5の不陸の凹み部分で塗膜15が薄くなったり、或いは凹みが深い部分や傾斜8が大きい部分では塗膜15が徐々に薄くなってやがて塗装が施されない部分が生じるなどといった自然なかすれが生じ、変化に富んだ自然な仕上がりの塗装が施される。更に塗装用凸部2には微細な凹凸が形成されていないので、このような微細な凹凸の摩滅や微細な凹凸における塗料16の目詰りが生じることがない。
【0011】
本発明に係る建築用板材4は、基材5に上記塗装用版ロール1の塗装用凸部2から転写された塗装模様3が形成されてなる建築用板材4であって、前記基材5が複数の凸部6が形成された面を有し、前記凸部6の表面にこの凸部6の突出寸法よりも小さい突出寸法を有する複数の微細凸部7が形成され、前記塗装用版ロール1による塗装模様3が、前記凸部6の表面に形成されていると共に、一つの塗装用凸部2にて形成される塗装模様3が、複数の凸部6の表面間に亘って形成されていることを特徴とする。
【0012】
この建築用板材4では、基材5の凸部6による凹凸模様と塗装模様3とが重なった複雑な外観が現出し、意匠性が向上する。また、凸部6の表面の塗装時に塗装用版ロール1が微細凸部7の形状に追随し、隣り合う微細凸部7間の凹部12では塗装模様3を構成する塗膜15が薄くなったり、或いは深い凹部や凹部の内面の傾斜8が大きい部分では塗膜15が徐々に薄くなってやがて塗膜15が形成されない部分が生じるなどして、自然なかすれが現出し、微細凸部7の形状や分布に応じて変化に富んだ自然な仕上がりの塗装模様3が形成される。
【0013】
この建築用板材4には、建築物に設置された状態で凸部6の上方に臨む端縁の少なくとも一部に、凸部6の下方向に臨む端縁よりも緩やかな傾斜8が形成されていることが好ましい。
【0014】
この場合、凸部6の上端縁に形成される塗装模様3を構成する塗膜15は、傾斜8を下るほど薄くなって自然なかすれが現出し、変化のある自然な外観が現出することで、凸部6の上端縁で塗装模様3が途切れるような不自然な印象が緩和される。また、建築用板材4が上下に突き合わされる際に、建築用板材4同士の継ぎ目17の下方において、前記塗装模様3の自然な外観が現れ、建築用板材4同士の継ぎ目17が目立たなくなる。また、建築用板材4に向けて斜め上方から太陽光等の光18が照射されると、継ぎ目17の上方にある凸部6の影が継ぎ目17の下方にある凸部6の上端縁の傾斜8に上下に長く現れ、継ぎ目17が目立たなくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塗装用版ロールによって基材の不陸に応じた自然なかすれのある塗装模様が形成され、基材の不陸を生かした自然な風合いのある塗装模様が形成される。また、塗装用凸部には微細な凹凸が形成されていないので、微細な凹凸の目詰りによる網目状の模様が形成されることはなく、また目詰りした塗料を除去したり、微細な凹凸が摩滅した場合に塗装用版ロールを交換したりする必要がなくなって、塗装効率が高くなる。
【0016】
また、この塗装用版ロールによる塗装が施された建築用板材は、基材の凸部と塗装模様とが重なった意匠性の高い外観を有し、しかも微細凸部の形状に応じた自然なかすれのある塗装模様が形成されて、自然な風合いのある塗装模様が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0018】
まず塗装用版ロール1について説明する。図1に示す塗装用版ロール1は、心材9と、この心材9の外周面全体を覆うように重ねて設けられた外層材10とから構成されている。
【0019】
外層材10は、アスカーゴム硬度計C型によるゴム硬度が50度未満の適宜の材質で形成され、例えばEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等のゴム材で形成される。この外層材10のゴム硬度は、好ましくは30度以上、50度未満の範囲であり、例えばそのゴム硬度を40度とすることができる。外層材10の厚みは例えば5〜10mmの範囲とすることができる。
【0020】
外層材10のゴム硬度が30度未満では、不陸における凹部の形状によっては外層材10が前記凹部に深く入り込んでしまって自然なかすれを表現し難くなるおそれがある。またこのゴム硬度が50度以上では塗装される箇所と塗装されない箇所の境界が明確になりすぎて自然な風合いが得られなくなってしまう。
【0021】
心材9は、外層材10よりもゴム硬度が低い材質で形成され、例えばIIR(ブチルゴム)等のゴム材やスポンジ材で形成される。心材9のゴム硬度は10度以上〜30度未満の範囲が好ましく、例えばそのゴム硬度を20度とすることができる。
【0022】
心材9のゴム硬度が上記範囲を外れると、外層材10の基材5表面への追従が不安定になるおそれがある。
【0023】
外層材10の外周面には、複数の塗装用凸部2が形成される。塗装用凸部2の突出寸法は例えば0.3〜3mmの範囲とすることができる。
【0024】
このような塗装用版ロール1を用い、適宜の基材5に対してフレキソ塗装法等により塗装を行うことができる。すなわち例えば図2に示すように、塗装用版ロール1を塗装対象の基材5及びアニロックスロール17と接触させ、基材5を搬送しながら塗装用版ロール1を回転させると共にこの塗装用版ロール1にアニロックスロール17から塗料16を供給する。これにより、アニロックスロール17から塗装用版ロール1の塗装用凸部2に塗料16が付着し、この塗料16が基材5の表面に転写されて、塗装が施される。この塗装に使用される塗料の種類は制限されないが、例えば無機質板に対して塗装模様3を形成するためにはアクリルエマルジョン塗料等が使用されることが好ましい。
【0025】
このように基材5の塗装が行われると、塗装用版ロール1は外周側の最外層がゴム硬度が50度未満の外層材10で形成されているため適度な柔軟性を有し、このため基材5の表面に不陸が生じていても、塗装用版ロール1が基材5の不陸に追随して塗装が行われる。このため、基材5の不陸の凹み部分で塗膜15が薄くなったり、或いは凹みが深い部分や傾斜8が大きい部分では塗膜15が徐々に薄くなってやがて塗装が施されない部分が生じるなどといった自然なかすれが生じ、変化に富んだ自然な仕上がりの塗装が施される。このため、塗装後の基材5には、この基材5の不陸を生かした自然な外観が現出する。
【0026】
また、上記塗装用版ロール1の塗装用凸部2の表面は平滑に形成される。このため、塗装用凸部2の表面に付着する塗料16の付着量が過剰になることが防止され、適度な量の塗料16が塗装用凸部2から基材5へ転写されて、塗装後の基材5の自然な外観が維持される。これに対して、塗装用凸部2の表面に網点状の複数の微細な凹凸が形成されると、塗装用凸部2への塗料16の付着量が多くなることから、基材5の不陸の有無にかかわらず一様な塗装が施されてしまい、基材5の不陸を生かした自然な外観が現出しなくなる。また、このように塗装用凸部2の表面が平滑であると、前記微細な凹凸の摩耗や、微細な凹凸における塗料16の目詰りを考慮する必要がなくなり、塗装用版ロール1を交換したり目詰りの除去をするために塗装工程を停止する必要がなくなる。このため塗装効率が向上する。
【0027】
次に、基材5に上記塗装用版ロール1の塗装用凸部2から転写された塗装模様3が形成されてなる建築用板材4について、図3〜5を参照して説明する。この建築用板材4は、例えば外壁材等として利用される。
【0028】
基材5の材質は特に制限されないが、例えばフレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、繊維セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板が使用される。
【0029】
この基材5の一面には、複数の凸部6が形成されている。各凸部6は正面視矩形状に形成されている。また隣り合う凸部6間には目地状の凹部11が形成されている。凸部6の突出寸法(目地状の凹部11の深さ寸法)は、例えば2〜8mmの範囲とすることができる。
【0030】
この凸部6の表面には、全面に亘って、複数の微細凸部7が形成されている。この微細凸部7の突出寸法(隣り合う微細凸部7間の凹部12の深さ寸法)は、凸部6の突出寸法よりも小さければ良いが、例えば1〜7mmの範囲とすることができる。
【0031】
また、この基材5の一端縁(上端縁)には嵌合凸部13が突設されていると共に、他端縁(下端縁)には嵌合凹部14が凹設されている(図5参照)。二つの基材5の一端と他端とを上下に突き合わせると、一方の基材5の嵌合凸部13と他方の基材5の嵌合凹部14とが凹凸嵌合して接続される。この隣り合う基材5の間には、一方の基材5における凸部6と他方の基材5における凸部6との間に目地状の凹部11が形成される。
【0032】
また、基材5の各凸部6には、建築用板材4が外壁材等として建物に設置された場合に上方に臨む端縁(上端縁)に、この凸部6の下方向に臨む端縁(下端縁)よりも緩やかな傾斜8が少なくとも一部に形成されている。この凸部6の傾斜8の傾斜角度は適宜設定されるが、例えば30〜45°の範囲とすることができる。また、この傾斜8の下端は図5(a)に示すように曲線を描くように形成されている。このため凸部6の上端縁における傾斜8の傾斜角度及び傾斜8の長さが部分的に異なるように形成されている。尚、このような傾斜8は凸部6の上端縁の全体に亘って設けられていても良いが、この上端縁の一部にのみ設けられていても良い。一方、凸部6の側端縁及び下端縁の傾斜角度は45〜90°の範囲であることが好ましい。
【0033】
この基材5の凸部6が形成されている面に対して、図2に示すように上記塗装用版ロール1による塗装が施される。これにより基材5の凸部6の表面に塗装模様3が形成され、凸部6間の目地状の凹部11には塗装は施されなくなる。この塗装時には、図3に示すように、一つの塗装用凸部2にて形成される塗装模様3が、複数の凸部6の表面間に亘って形成されるようにする。そのためには基材5における凸部6のレイアウトに応じて塗装用版ロール1における塗装用凸部2の位置が適宜設定される。
【0034】
また、この塗装用版ロール1による塗装の後、基材5の凸部6が形成されている面の全面に亘ってクリア塗装を施すことで、クリア塗膜を形成しても良い(図示省略)。
【0035】
このようにして基材5に塗装が施されると、基材5の凸部6による凹凸模様と塗装模様3とが重なった複雑な外観が現出し、建築用板材4の意匠性が向上する。
【0036】
また、凸部6の表面の塗装時には塗装用版ロール1は微細凸部7の形状に追随することができるため、図4に示すように隣り合う微細凸部7間の凹部12では塗装模様3を構成する塗膜15が薄くなったり、或いは凹部12が深い部分や凹部12の内面の傾斜が大きい部分では塗膜15が徐々に薄くなってやがて塗膜15が形成されない部分が生じるなどして、自然なかすれが現出し、微細凸部7の形状や分布に応じて変化に富んだ自然な仕上がりの塗装模様3が形成される。
【0037】
また、凸部6の上端縁には緩やかな傾斜8が形成されているため、この凸部6の上端縁に形成される塗装模様3を構成する塗膜15は、傾斜8を下るほど薄くなって自然なかすれが現出し、変化のある自然な外観が現出する。このような塗装模様3による外観が凸部6の上端縁に現れることによって、凸部6の上端縁で塗装模様3が途切れるような不自然な印象が緩和される。特に本実施形態のように凸部6の上端縁における傾斜8の傾斜角度及び傾斜8の長さが部分的に異なるように形成されていると、凸部6の上端縁において塗装模様3のかすれ方や、傾斜8における塗装模様3が形成される領域に変化が生じ、更に自然な外観が現出する。
【0038】
また、図5に示すように建築用板材4が上下に突き合わされる際には、建築用板材4同士の継ぎ目17の下方において、上記のような凸部6の傾斜8による塗装模様3の自然な外観が現れるため、建築用板材4同士の継ぎ目17が目立たなくなり、この継ぎ目17による外観の不自然さが緩和される。また、この建築用板材4に向けて斜め上方から太陽光等の光18が照射されると、継ぎ目17の上方にある凸部6の影が継ぎ目17の下方にある凸部6の上端縁の傾斜8に上下に長く現れることで、継ぎ目17が目立たなくなる。特に本実施形態のように凸部6の上端縁における傾斜8の傾斜角度及び傾斜8の長さが部分的に異なるように形成されていると、前記凸部6の影の長さに部分的な変化が生じることで、この影の変化に看者の注目が集まり、継ぎ目17が更に目立たなくなる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳述する。
【0040】
基材5として14mm×467mm×3030mmの寸法を有するセメント系無機質板を用いた。この基材5の一面には、正面視50mm×100mm、突出寸法6mmの複数の凸部6を形成した。隣合う凸部6間には幅5mmの隙間をあけて目地状の凹部11を形成した。また凸部6の表面には、全面に亘り、突出寸法が2〜5mmの範囲の微細凸部7を形成した。またこの凸部6の上端縁の全体に亘り、傾斜角度が30〜45°の範囲で変化する傾斜8を形成した。またこの基材5の上端縁には嵌合凸部13を、下端縁には嵌合凹部14をそれぞれ形成した。
【0041】
この基材5の凸部6が形成されている面に、下記の実施例及び比較例のようにして塗装を施すことで、建築用板材4を得た。尚、下記に示すゴム硬度は、アスカーゴム硬度計C型による値である。
【0042】
(実施例1)
塗装用版ロール1として、直径295mm、材質IIR(ゴム硬度20度)の心材9の外周面に、厚み5mm、材質EPDM(ゴム硬度40度)の外層材10が設けられたものを使用した。この塗装用版ロール1の外層材10の外周面には、突出寸法3mmの雲形状の複数の塗装用凸部2を形成した。この塗装用凸部2の表面は平滑に形成した。
【0043】
この塗装用版ロール1を用い、基材5に対してフレキソ塗装法による塗装を行った。塗料16としては、アクリルエマルジョン塗料を用いた。このとき、一つの塗装用凸部2から転写された塗料16による塗装模様3が、複数の凸部6間に亘って形成されるようにした。
【0044】
(実施例2)
外層材10の材質をEPDM(ゴム硬度35度)に変更した以外は実施例1と同様にして塗装を行った。
【0045】
(実施例3)
外層材10の材質をEPDM(ゴム硬度45度)に変更した以外は実施例1と同様にして塗装を行った。
【0046】
(比較例1)
外層材10の材質をEPDM(ゴム硬度50度)に変更した以外は実施例1と同様にして塗装を行った。
【0047】
(比較例2)
塗装用凸部2の表面の全面に亘って深さ0.3mm、幅0.42mmの格子状の溝(60lpi)を形成することで網点状の凹凸を形成した以外は、比較例1と同様にして塗装を行った。
【0048】
(評価)
各実施例及び比較例で得られた建築用板材4の外観を観察したところ、各実施例では凸部6における微細凸部7によって塗装模様3に自然なかすれが生じていた。また、凸部6の上端縁では塗装模様3に自然なかすれが生じ、且つそのかすれ方が部分的に異なることで、変化のある外観が現出した。
【0049】
また、これらの実施例のうち、外層材10のゴム硬度を35〜45度の範囲とした実施例1〜3では、塗装模様3のかすれ方が自然であり、建築用板材4の全体的な外観が自然なものとなった。更に、これらの実施例のうち、外層材10のゴム硬度を35〜40度の範囲とした実施例1及び2では、塗装模様3のかすれ方が特に自然であり、建築用板材4の全体的な外観が非常に自然なものとなった。
【0050】
一方、比較例1では塗装模様3中に塗装が施されていない微小な領域が明確に現れると共にこの領域が塗装模様3中に多数分布し、不自然な外観が現出した。また、比較例2では一様な塗装模様3が形成され、凸部6における微細凸部7に起因するかすれはみられなかった。更にこの比較例1及び比較例2では、凸部6の上端縁で塗装模様3が突然途切れてしまっていた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る塗装用版ロールの一例を示す斜視図である。
【図2】同上の塗装用版ロールを使用した機材の塗装工程の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る建築用板材の一例を示す正面図である。
【図4】同上の一部の概略断面図である。
【図5】同上の建築用板材同士の突き合わせ部分を示すものであり、(a)は一部の正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図、(d)は(a)のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 塗装用版ロール
2 塗装用凸部
3 塗装模様
4 塗装建築板
5 基材
6 凸部
7 微細凸部
8 傾斜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外周側の最外層がアスカーゴム硬度計C型によるゴム硬度が50度未満の材質で形成され、外周面に塗装模様の形成のための塗装用凸部が形成され、前記塗装用凸部の外周側の表面が平滑に形成されていることを特徴とする塗装用版ロール。
【請求項2】
基材に請求項1に記載の塗装用版ロールの塗装用凸部から転写された塗装模様が形成されてなる建築用板材であって、
前記基材が複数の凸部が形成された面を有し、前記凸部の表面にこの凸部の突出寸法よりも小さい突出寸法を有する複数の微細凸部が形成され、
前記塗装用版ロールによる塗装模様が、前記凸部の表面に形成されていると共に、一つの塗装用凸部にて形成される塗装模様が、複数の凸部の表面間に亘って形成されていることを特徴とする建築用板材。
【請求項3】
建築物に設置された状態で凸部の上方に臨む端縁の少なくとも一部に、凸部の下方向に臨む端縁よりも緩やかな傾斜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の建築用板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−46594(P2010−46594A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212138(P2008−212138)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】