説明

塗装用防護シート

【課題】塗装対象物の塗装時における塗料の飛散を防止する塗装用防護シートを提供する。
【解決手段】塗装用防護シート10は、不織布シート10cと、不織布シート10cの両面に重ねられているメッシュシート10aおよび10bにより構成されている。塗装用防護シート10は、塗装対象物の周りに並べて配設される。隣接して配設される塗装用防護シート10は、紐等の連結部材を用いて穴12の箇所で連結される。不織布シート10cは、塗料吸収性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用防護シートに関し、特に、塗装対象物の塗装時に、塗装対象物の周囲に塗料が飛散するのを防止することができる塗装用防護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔(例えば、送電鉄塔や通信鉄塔)の表面の錆を取り除き、防錆塗料を塗布する防錆塗装は、鉄塔の重要な保守作業の一つである。一方、鉄塔を塗装する際には、塗料が周囲に飛散しないように対策を講じる必要がある。塗料飛散防止方法としては、鉄塔の周りに塗装用防護シート(「塗装用養生シート」ともいう)を配設する方法が知られている。従来、塗装用防護シートとして、メッシュシートが用いられている。ここで、塗装用防護シートの目が細かいと、風圧による影響(空気抵抗)が大きくなり、塗装用防護シートを鉄塔の周りに配設する作業の効率(施工性)が悪くなるとともに、強風時に鉄塔に過大な荷重が印加されるおそれがある。このため、塗装用防護シートの目の大きさを小さくするには限界がある。例えば、目開き(目の間隔)が1mm程度の塗装用防護シートが用いられている。なお、メッシュシートの仕様は、メッシュ(1cm当たりの目の数)で表すこともできる。
このように、塗装用防護シートの目の大きさに制限があるため、塗料の飛散防止効果をより高める技術の開発が要望されている。そこで、従来、ポリオレフリン系樹脂により形成するとともに、エレクトレット化したメッシュシートを塗装用防護シートとして用いることが提案されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−117699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレクトレット化したポリオレフリン系樹脂によりメッシュ状に形成された塗装用防護シートは、製造コストが高い。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、安価に塗料の飛散防止効果を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の塗装用防護シートは、塗装対象物の表面を塗装する際に、塗装対象物の周りに配設され、塗料が塗装対象物の周囲に飛散するのを防止するために用いられる。本発明の塗装用防護シートは、好適には、送電鉄塔や通信鉄塔等の鉄塔の塗装用防護シートとして用いられるが、鉄塔以外の種々の建造物の塗装用防護シートとして用いることもできる。
本発明の塗装用防護シートは、塗料吸収シートと、塗料吸収シートに重ねられた、複数の網目(メッシュ)を有するメッシュシートにより構成されている。メッシュシートは、好適には、塗料吸収シートの、少なくとも塗装対象物側に重ねられる。塗料吸収シートとメッシュシートは、重ねた状態で一体化される。例えば、接着剤を用いてまたは熱融着等によって接合され、あるいは、糸を用いて縫い付けられる。あるいは、メッシュシートによって形成される収納空間内に塗料吸収シートが取り出し可能に収容される。
メッシュシートは、雨や熱等に強い材料、例えば、ポリエステル系の素材を編み込んで形成される。また、メッシュシートとしては、塗料が通過し難く、風による影響(空気抵抗)が小さく、メッシュシートを介して鉄塔に過大な荷重が印加されないメッシュシートが用いられる。例えば、目開き(目の間隔)が0.5mm〜5mm、好適には、1mm〜3mmのメッシュシートが用いられる。
塗料吸収シートとしては、使用される塗料を吸収する塗料吸収性を有しているシートが用いられ、好適には、塗料吸収性と通気性を有しているシートが用いられる。塗料吸収シートの塗料吸収性は、使用される塗料の特性に応じて設定される。例えば、油性塗料が用いられる場合には、親油性を有する材料により形成され、油性塗料を吸収する塗料吸収シートが用いられる。また、水性塗料が用いられる場合には、親水性を有する材料により形成され、水性塗料を吸収する塗料吸収シートが用いられる。塗料吸収シートは、種々の材料により形成することができる。例えば、不織布シートにより構成することができる。
本発明では、メッシュシートの目を細かくすることなく、安価に、塗料の飛散防止効果を高めることができる。
本発明の他の形態では、塗料吸収シートが不織布シートにより構成されている。
本形態では、塗料吸収シートとして不織布シートを用いているため、軽量で、所望の特性を有する塗装用防護シートを安価に製造することができる。
本発明の異なる他の形態では、メッシュシートは、第1のメッシュシートと第2のメッシュシートを有している。そして、第1のメッシュシートは、塗料吸収シートの一方の面側に重ねられ、第2のメッシュシートは、塗料吸収シートの他方の面側に重ねられている。すなわち、塗料吸収シートの両面にメッシュシートが重ねられている。第1のメッシュシートと第2のメッシュシートとしては、別々のメッシュシートを用いてもよい。あるいは、1枚のメッシュシートを折返し部で折り返し、折返し部を挟んで一方側を第1のメッシュシート、他方側を第2のメッシュシートとして用いることもできる。第1および第2のメッシュシートと塗料吸収シートは、適宜の方法を用いて一体化される。
本形態では、塗料吸収シートの両面に重ねられている第1および第2のメッシュシートによって強度を確保することができるため、強度を有する塗料吸収シートを用いる必要がなく、より安価に製造することができる。
本発明のさらに異なる他の形態では、メッシュシートによって、開口部を有する収容空間が形成されている。そして、塗料吸収シートは、収容空間内に、開口部から取り出し可能に収容されている。開口部としては、常時開口している開口部を用いてもよいし、開閉可能な開口部(例えば、開口部に対応する箇所を着脱自在な接続部で接続する)を用いることもできる。開口部は、少なくとも1箇所設けられていればよい。「塗料吸収シートが、開口部から取り出し可能に収容空間内に収容されている」という記載は、塗料吸収シートが、メッシュシートと接着あるいは接合されることなく収容空間内に収容される構成を表している。収容空間は、別々の第1のメッシュシートと第2のメッシュシートによって形成してもよいし、1枚のメッシュシートを折り畳んで形成してもよい。なお、全周あるいは折り畳み部を除く外周を開閉可能に構成してもよい(例えば、着脱自在な接続部で接続する)。
本形態では、塗料吸収シートを交換することができるため、1回〜数回使用可能な塗料吸収性および強度を有する塗料吸収シートを用いることができ、より安価に製造することができる。
本発明のさらに異なる他の形態では、他の塗装用防護シートと連結される連結部と、連結部を覆う連結部カバー部材を有している。連結部としては、例えば、周縁部に形成された孔あるいは周縁部に形成された孔に設けられたハトメの孔を用いることができる。また、連結部材としては、例えば、隣接する塗装用防護シートの孔あるいはハトメ孔間を結ぶ紐を用いることができる。また、連結部カバー部材としては、例えば、ベロを用いることができる。
本形態では、塗装用防護シートの連結部が連結部カバー部材で覆われているため、連結部間の隙間から塗料が飛散するのを防止することができる。
本発明のさらに異なる他の形態では、塗料吸収シートは、親油性を有しているとともに撥水性を有している。本形態は、油性塗料を使用する場合に好適である。
本形態では、水を吸収し難い塗料吸収シートを用いているため、水の吸収による影響(例えば、重くなる、油性塗料の吸収性能が低下する)を低減することができ、使用期間を長くすることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塗装用防護シートは、塗装対象物の塗装時における塗料の飛散防止効果を安価に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の塗装用防護シートが送電鉄塔に配設される状態を示す図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII―III線矢視図である。
【図4】第1の実施の形態の塗装用防護シートの斜視図である。
【図5】図4のV−V線矢視図である。
【図6】第2の実施の形態の塗装用防護シートの斜視図である。
【図7】図6のVII−VII線矢視図である。
【図8】第3の実施の形態の塗装用防護シートの斜視図である。
【図9】第3の実施の形態の塗装用防護シートを連結した状態を、図8のIX−IX線方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は、送電鉄塔に好適に用いることができる塗装用防護シートについて説明する。勿論、各実施の形態の塗装用防護シートは、送電鉄塔以外の鉄塔、さらには、鉄塔以外の種々の建造物にも用いることができる。
図1には、送電鉄塔の塗装時に、本実施の形態の塗装用防護シートを送電鉄塔の回りに配設する方法の一例が示されている。なお、図2は、図1のII−II線矢視図であり、図3は、図1のIII−III線矢視図である。
図1に示されている送電鉄塔は、下部塔体部と上部塔体部を有している。下部塔体部は、主柱材、斜材、水平材、補助材等により構成され、平面断面(水平方向の断面)が四角形を有している。また、上部塔体部は、主柱材、斜材、腕金等により構成され、平面断面が四角形を有している。腕金には送電用の架渉線が吊持されている。
図1では、下部塔体部の回りに塗装用防護シートが配設されている。また、上部塔体部の対向する腕金のうち一方の腕金の回りに塗装用防護シートが配設されている。勿論、塗装用防護シートの配設方法は、図1に示した配設方法に限定されず、塗料が送電鉄塔の周囲に飛散するのを防止することができる種々の配設方法を用いることができる。
【0009】
第1の実施の形態の塗装用防護シート10が図4、図5に示されている。なお、図5は、図4のV−V線矢視図である。
本実施の形態の塗装用防護シート10は、メッシュシート10a、10bと、不織布シート10cにより構成され、平面形状が四角形(略四角形を含む)を有している。メッシュシート10a、10bは、不織布シート10cの両面に重ねられている(不織布シート10は、メッシュシート10a、10bの間に配置されている)。すなわち、本実施の形態の塗装用防護シート10は、3層構造を有している。
メッシュシート10a、10bは、複数の網目(メッシュ)を有し、雨や熱等に強い材料、例えば、ポリエステル系の素材を編み込んで形成される。また、メッシュシート10a、10bとしては、塗料が通過し難いとともに、風による影響(空気抵抗)が小さく、メッシュシートを介して送電鉄塔に過大な荷重が印加されないメッシュシートが用いられる。特に、メッシュシートを介して送電鉄塔に印加される荷重を考慮してメッシュシート10a、10bの目の大きさが選択される。例えば、目開き(目の間隔)が0.5mm〜5mmの範囲内、好適には、1mm〜3mmの範囲内のメッシュシートが用いられる。このような目の大きさのメッシュシートを用いた場合、強風時に、塗料がメッシュシートを通過し、または、メッシュシートに付着している塗料が再飛散するおそれがある。
不織布シート10cは、送電鉄塔と対向する側に配置されているメッシュシート10aあるいは10bを通過した塗料、または、メッシュシート10aあるいは10bから再飛散した塗料を吸収する塗料吸収性を有している。不織布シート10cの塗料吸収性は、使用される塗料の特性に応じて設定される。例えば、油性塗料が用いられる場合には、親油性を有する材料により、油性塗料を吸収する塗料吸収特性を有するように形成される。また、水性塗料が用いられる場合には、親水性を有する材料により、水性塗料を吸収する塗料吸収特性を有するように形成される。また、不織布シート10cは、通気性を有している。好適には、高い通気性を有し(空気抵抗が小さい)、不織布シート10cを含んでいる塗装用防護シート10を介して送電鉄塔に印加される風圧荷重を軽減することができる不織布シート10cが用いられる。
メッシュシート10a、10bの一方が本発明の「第1のメッシュシート」に対応し、他方が本発明の「第2のメッシュシート」に対応する。また、不織布シート10cが本発明の「塗料吸収シート」に対応する。
【0010】
メッシュシート10a、10bと不織布シート10cは、重ねられた状態で一体化される。例えば、図4および図5に示されているように、外周縁に沿った接続部11によってメッシュシート10a、10bと不織布シート10を接続する。接続部11は、例えば、ミシン糸で縫いつけることによって、あるいは、接合することによって形成される。接合方法としては、接着剤を用いた接合方法、加熱することによって熱融着させる接合方法等を用いることができる。なお、メッシュシート10a、10bと不織布シート10c全面をミシン糸で縫いつけてもよいし、全面を接着剤で接合してもよいし、全面を熱融着させてもよいが、この場合、通気性が低下するおそれがある。
また、塗装用防護シート10には、左右方向あるいは上下方向に隣接する塗装用防護シート10を連結するための連結部12が外周に沿って設けられている。本実施の形態では、メッシュシート10a、10bおよび不織布シート10cを貫通する孔を形成し、形成した孔にハトメを取り付けている。そして、ハトメの孔を連結部12として用いている。隣接する塗装用防護シート10を連結する方法としては、例えば、図9に示されているように、対向する連結部12を紐110で結ぶ方法が用いられる。連結部12が本発明の「連結部」に対応し、紐110が本発明の「連結部材」に対応する。
なお、連結部12としては、ファスナー等の開閉可能な部材や、面ファスナー等の着脱可能な部材を用いることもできる。この場合には、連結部12が、本発明の「連結部」および「連結部材」に対応する(連結部12が、本発明の「連結部」および「連結部材」を含んでいる)。
【0011】
なお、図4では、不織布シート10cと別々に形成された(2枚の)メッシュシート10a、10bを用いて3層構造を構成したが、不織布シート10cと1枚のメッシュシート用いて3層構造を構成することもできる。すなわち、1枚のメッシュシートを折り返し部の箇所で折り返し、折り返した1枚のメッシュシートの間に不織布シート10cを配置することによって3層構造を構成する。この場合、折り返し部を挟んで一方側が本発明の「第1のメッシュシート」に対応し、他方側が本発明の「第2のメッシュシート」に対応する。
【0012】
本実施の形態の塗装用防護シート10は、メッシュシート10a、10bによって所望の強度を確保することができるため、不織布シート10c(塗料吸収シート)としては、塗料吸収性および通気性を有していればよく、強度を必要としない。このため、メッシュシートのみを用いた場合の塗料飛散防止効果より高い塗料飛散防止効果を有する、安価で、軽量な塗装用防護シートを得ることができる。
【0013】
不織布シートは塗料吸収性を有し、強度を要しないため、メッシュシートより寿命が短い。このため、不織布シートを交換可能に構成するのが好ましい。不織布シートを交換可能に構成した第2の実施の形態の塗装用防護シート20が図6、図7に示されている。なお、図7は、図6のVII−VII線矢視図である。
本実施の形態の塗装用防護シート20は、メッシュシート20a、20bと、不織布シート20cにより構成され、平面形状が四角形(略四角形を含む)を有している。メッシュシート20a、20bとしては、第1の実施の形態のメッシュシート10a、10bと同様のメッシュシートを用いることができる。また、不織布シート20cとしては、第1の実施の形態の不織布シート10cと同様の不織布シートを用いることができる。
【0014】
本実施の形態の塗装用防護シート20は、不織布シート20cを、開口部23aを有する収容空間23内に収容している。
すなわち、メッシュシート20aと20bは、重ねられた状態で、外周に沿った接続部21によって接続されている。ここで、接続部21は、開口部23aに対応する箇所には形成されていない。これにより、メッシュシート20aと20bによって、開口部23aを有する収容空間23が形成されている。
不織布シート20cは、開口部23aを介して収用空間23内に収容される。本実施の形態では、不織布シート20cとメッシュシート20aあるいは20bと接続されていないため、収容空間23に収容されている不織布シート20cは、開口部23aを介して収用空間23から取り出すことができる。
また、塗装用防護シート20には、左右方向あるいは上下方向に隣接する塗装用防護シート20を連結するための連結部22a、22bが外周に沿って設けられている。連結部22a、22bとしては、第1の実施の形態の連結部12と同様の連結部を用いることができる。本実施の形態では、連結部22aは、重ねられているメッシュシート20aと20bを貫通している。一方、開口部23aに対応する箇所に設けられている連結部22bは、開口部23aを介して不織布シート20cを収容空間23内に収容し、あるいは、収容空間から取り出すため、メッシュシート20aのみあるいは20bのみを貫通している。なお、連結部22bは、メッシュシート20aあるいは20bの一方にのみ設けてもよい。
【0015】
図6に示されている塗装用防護シート20では、別々の(2枚の)メッシュシート20aと20bによって収容空間23を形成したが、1枚のメッシュシートを用いて収容空間23を形成することもできる。例えば、1枚のメッシュシートを折り曲げ部の箇所で折り曲げる。そして、折り曲げ部の両側の部分を、外周に沿った接続部によって接続し、開口部を有する収容空間を形成する。
また、常時開口している開口部23aを用いたが、開閉可能な開口部を用いることもできる。例えば、メッシュシート20aと20bを、開口部に対応する箇所で、着脱自在な接続部によって接続する。さらには、全周あるいは折り畳み部を除く外周を、着脱自在な接続部で接続することもできる。着脱自在な接続部としては、ファスナーや面ファスナー等を用いることができる。
【0016】
本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を有している。
さらに、本実施の形態では、不織布シート(塗料吸収シート)を交換することができる。これにより、1回〜数回使用可能な塗料吸収性および強度を有する不織布シート(塗料吸収シート)を用いることができ、より安価な塗装用防護シートを得ることができる。
【0017】
孔等の連結部を紐等の連結部材によって連結する場合、風によって連結部間に隙間が発生し、この連結部間の隙間から塗料が飛散するおそれがある。連結部を覆う連結部カバー部材を設けた第3の実施の形態の塗装用防護シート30が図8、図9に示されている。なお、図9は、連結されている塗装用防護シート30を、図8のIX−IX線方向から見た図である。
本実施の形態の塗装用防護シート30は、メッシュシート30a、30bと、不織布シート30cにより構成され、平面形状が四角形(略四角形を含む)を有している。メッシュシート30a、30bとしては、第1の実施の形態のメッシュシート10a、10bと同様のメッシュシートを用いることができる。また、不織布シート30cとしては、第1の実施の形態の不織布シート10cと同様の不織布シートを用いることができる。メッシュシート30a、30bと不織布シート30cは、外周に沿った接続部31によって接続されている。接続部31としては、第1の実施の形態の接続部11と同様の接続部を用いることができる。
また、塗装用防護シート30には、左右方向あるいは上下方向に隣接する塗装用防護シート30を連結するための連結部32が外周に沿って設けられている。連結部32としては、第1の実施の形態の連結部12と同様の連結部を用いることができる。また、連結部32を連結する連結部材としては、第1の実施の形態の連結部材と同様の連結部材を用いることができる。
【0018】
さらに、本実施の形態の塗装用防護シート30は、メッシュシート30a、30bと不織布シート30cにより構成される本体部に連結部カバー部材40、50、60、70が設けられている。連結部カバー部材40、50、60、70は、連結部32を覆うことができる形状に形成されている。連結部カバー部材40、50、60、70は、本体部の、送電鉄塔(塗装対象物)と対向する側(図8では、メッシュシート30c側)に設けるのが好ましい。これにより、隣接する塗装用防護シート30の連結カバー部材40、50、60、70を連結する作業を、送電鉄塔の内部で行うことができる。本実施の形態では、連結部カバー部材40、50、60、70としてべロが用いられている。ここで、塗装用防護シート30が左右方向に並べて配設された時に左右方向に配置される連結部カバー部材40と50が対となり、塗装用防護シート30が上下方向に並べて配設された時に上下方向に配置される連結部カバー部材60と70が対となる。
なお、本実施の形態では、連結部カバー部材40、50、60、70は、本体部と同様に、メッシュシートと不織布シートにより3層構造に構成されている。勿論、塗装用防護シート30によって塗料の飛散を防止することができれば、連結部カバー部材40、50、60、70の構成は、これに限定されない。
【0019】
連結部カバー部材40は、接続部41によって、少なくとも一方のメッシュシート30cに接続(固定)されている(図8では、メッシュシート30a、30cと不織布シート30cに固定されている)固定部40Bと、固定部40Bから左右方向に沿って外周側(図8では左方向)に延びている可動部40Aを有している。そして、可動部40Aには、連結部42が設けられている。
連結部カバー部材50は、接続部51によって、少なくともメッシュシート30cに接続(固定)されている固定部50Bと、固定部50Bから左右方向に沿って外周側(図8では右方向)に延びている可動部50Aを有している。そして、可動部50Aには、連結部52が設けられている。連結部42および52としては、第1の実施の形態の連結部12と同様の連結部を用いることができる。
連結部カバー部材60は、接続部61によって、少なくともメッシュシート30cに接続(固定)されている固定部60Bと、固定部60Bから上下方向に沿って外周側(図8では上方向)に延びている可動部60Aを有している。そして、可動部60Aには、連結部62が設けられている。
連結部カバー部材70は、接続部71によって、少なくともメッシュシート30cに接続(固定)されている固定部70Bと、固定部70Bから上下方向に沿って外周側(図8では下方向)に延びている可動部70Aを有している。そして、可動部70Aには、連結部72が設けられている。連結部62および72としては、第1の実施の形態の連結部12と同様の連結部を用いることができる。
なお、連結部カバー部材40、50、60、70の連結部42、52、62、72の連結位置が、塗装用防護シート30の連結部32の連結位置と重ならないように構成されている。本実施の形態では、対となる連結部カバー部材の可動部の長さ(対向する方向の長さ)が異なるように構成されている。図8では、対となる連結部カバー部材40の可動部40Aの左右方向の長さが短く、連結部カバー部材50の可動部50Aの左右方向の長さが長く設定されている。また、連結部カバー部材60の可動部60Aの上下方向の長さが短く、連結部カバー部材70の可動部70Aの上下方向の長さが長く設定されている。
【0020】
本実施の形態の塗装用防護シート30を水平方向に並べて配設し、連結した状態を、図8のIX−IX線方向から見た図が図9に示されている。なお、図9には図示していないが、下側(連結部カバー部材側)に送電鉄塔が配置されている。
左側に配設されている塗装用防護シート30の右側に周方向に沿って設けられている連結部32と、右側に配設されている塗装用防護シート30の左側に周方向に沿って設けられている連結部32が、連結部材である紐110によって連結されている。また、左側に配設されている塗装用防護シート30の右側の連結部カバー部材50の可動部50Aに設けられている連結部52と、右側に配設されている塗装用防護シート30の左側の連結部カバー部材40の可動部40Aに設けられている連結部42が、連結部材である紐120によって連結されている。この時、右側に配設されている塗装用防護シート30の左側の連結部カバー部材40の可動部40Aと左側に配設されている塗装用防護シート30の右側の連結部カバー部材50の可動部50Aによって、左側に配設されている塗装用防護シート30の連結部32と右側に配設されていると塗装用防護シート30の連結部32が覆われる。また、連結部カバー部材40の可動部40Aに設けられている連結部42と連結部カバー部材50の可動部50Aに設けられている連結部52との連結箇所は、塗装用防護シート30の連結部32の連結箇所と重ならないようにずれている(連結部32の連結箇所より左右方向の一方側にずれている)。
なお、塗装用防護シート30を垂直方向に並べて配設する場合も、同様に、上側に配設されている塗装用防護シート30の下側の連結部カバー部材70の可動部70Aと下側に配設されている塗装用防護シート30の上側の連結部カバー部材60の可動部60Aによって、上側に配設されている塗装用防護シート30の連結部32と下側に配設されていると塗装用防護シート30の連結部32が覆われる。そして、連結部カバー部材70の可動部70Aに設けられている連結部72と連結部カバー部材60の可動部60Aに設けられている連結部62との連結箇所は、塗装用防護シート30の連結部32の連結箇所と重ならないようにずれている(連結部32の連結箇所より上下方向の一方側にずれている)。
【0021】
図8では、不織布シート30cと別々に形成された(2枚の)メッシュシート30a、30bを用いて3層構造を構成したが、不織布シート30cと1枚のメッシュシート用いて3層構造を構成することもできる。すなわち、1枚のメッシュシートを折り返し部の箇所で折り返し、折り返した1枚のメッシュシートの間に不織布シート30cを配置することによって3層構造を構成する。
【0022】
本実施の形態は、第1の実施の形態と同様の効果を有している。
さらに、本実施の形態では、連結部カバー部材によって、隣接する塗装用防護シートの連結部を覆っているため、風によって連結部間に隙間が形成された場合でも、この隙間を介して塗料が飛散するのを防止することができる。
【0023】
なお、第3の実施の形態は、第2の実施の形態のように、別々のメッシュシートあるいは1枚のメッシュシートによって開口部を有する収容空間を形成し、不織布シートを収容空間内に、開口部を介して取り出し可能に構成することもできる。
この場合には、第2の実施の形態と同様の効果を有する。
【0024】
本発明の塗装用防護シートは、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
塗装用防護シートの平面形状は、四角形(略四角形を含む)に限定されず、塗装用防護シートで覆う箇所の形状に対応した種々の形状に形成することができる。例えば、平面形状を台形(略台形を含む)や三角形(略三角形を含む)に形成することもできる。塗装用防護シートの平面形状を、塗装用防止シートで覆う箇所の形状に適合した形状に形成することにより、塗装用防護シートを塗装対象物の周りに配設する作業が容易となる。
実施の形態では、塗料吸収性および通気性を有する塗料吸収シートとして不織布シートを用いたが、塗料吸収シートとしては、不織布シート以外の種々のシートを用いることができる。
実施の形態では、塗料吸収シート(例えば、不織布シート)の両面にメッシュシートを重ねた(メッシュシートの間に塗料吸収シートを配置した)が、メッシュシートは、少なくとも塗料吸収シートの一方側の面、好適には、塗料吸収シートの両面のうち塗装対象物と対向する側の面に重ねられていればよい。
塗装用防護シートの連結部を覆う連結部カバー部材の形状や配設箇所等は、種々変更可能である。また、連結部カバー部材は省略することもできる。
また、塗装用防護シートや連結部カバー部材を連結する方法としては、孔と紐によって連結する方法、ファスナー等の開閉可能な部材を用いて連結する方法、面ファスナー等の着脱可能な部材を用いて連結する方法を含む種々の方法を用いることができる。
各実施の形態で説明した構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した構成を組み合わせて用いることもできる。
本発明の塗装用防護シートは、送電鉄塔や通信鉄塔等の鉄塔に限定されず、種々の構造物の塗装用防護シートとして用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
10、20、30 塗装用防護シート
10a、10b、20a、20b、30a、30b メッシュシート
10c、20c、30c 不織布シート
11、21、31、41、51、61、71 接合部
12、22a、22b、32、42、52、62、72 孔(連結部)
40、50、60、70 ベロ(連結部カバー部材)
110、120 紐(連結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象物の塗装時に、前記塗装対象物の周りに配設される塗装用防護シートであって、
塗料吸収シートと、前記塗料吸収シートに重ねられているメッシュシートを備え、前記塗料吸収シートは、塗料吸収性を有していることを特徴とする塗装用防護シート。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装用防護シートであって、
前記塗料吸収シートは、不織布シートにより構成されていることを特徴とする塗装用防護シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塗装用防護シートであって、
前記メッシュシートは、第1のメッシュシートと第2のメッシュシートを有しており、前記第1のメッシュシートは、前記塗料吸収シートの一方の面側に重ねられ、前記第2のメッシュシートは、前記塗料吸収シートの他方の面側に重ねられていることを特徴とする塗装用防護シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の塗装用防護シートであって、
前記メッシュシートによって、開口部を有する収容空間が形成されており、
前記塗料吸収シートは、前記収容空間内に、前記開口部から取り出し可能に収容されていることを特徴とする塗装用防護シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の塗装用防護シートであって、
他の塗装用防護シートと連結される連結部と、前記連結部を覆う連結部カバー部材を有していることを特徴とする塗装用防護シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の塗装用防護シートであって、
前記塗料吸収シートは、親油性を有しているとともに撥水性を有していることを特徴とする塗装用防護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−95423(P2012−95423A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239866(P2010−239866)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000212739)株式会社シーテック (21)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】