説明

塗装装置およびその洗浄方法

【課題】 水性二液型塗料などで、塗料液と硬化剤液とを混合するまでの供給経路を迅速に洗浄することができる塗装装置およびその洗浄方法を提供する。
【解決手段】 カートリッジ台13で水性塗料液を貯留する塗料カートリッジ12を洗浄器30に置き換えることで、水性塗料液を混合部15まで供給する経路の洗浄を迅速に行うことができる。硬化剤液を混合部15に供給する経路は、洗浄液容器34からの洗浄液を、混合部からシリンジポンプ19を介するように逆流させて、洗浄を迅速に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化剤と混合して硬化させる塗料液、たとえば水性塗料液を用いる塗装装置およびその洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば図20に示すような塗装装置1が硬化剤と混合して硬化させる水性塗料に対して用いられている。水性塗料は、たとえばウレタン樹脂系であり、塗料容器2に貯留される。水性塗料の液は、循環ポンプ3および供給ポンプ4を経て混合部5に供給される。循環ポンプ3は連続運転され、水性塗料の液は、塗料容器2→循環ポンプ3→供給ポンプ4→混合部5→塗料容器2という回路で循環する。供給ポンプ4は、塗料を混合部5からホース6を経てガン7に供給し、ガン7から対象物に塗料を噴霧する際に運転される。塗料容器2に貯留される水性塗料は主剤液であり、混合部5で硬化剤液と混合されてから、ガン7で噴霧される。硬化剤液は、硬化剤容器8からシリンジポンプ9を経て混合部5に供給される。混合部5では、水性塗料の液量に対して所定の割合で硬化剤が配合される(水性塗料に対して硬化剤の液量は少ない。)。配合比を保つために、硬化剤液はシリンジポンプ9で計量しながら混合部5に供給される。
【0003】
水性塗料の回路と硬化剤の供給経路とは、それぞれ異なる洗浄液で洗浄される。水性塗料の回路は、水性の洗浄液、たとえば洗浄水を用いて洗浄する。洗浄時は、塗料容器2を洗浄水容器に置き換えて、循環ポンプ3を運転して洗浄する。硬化剤の供給経路は、洗浄液として溶剤を使用し、硬化剤容器8を洗浄液容器に置き換えて、シリンジポンプ9を運転して洗浄する。
【0004】
水性二液型塗料は、主剤液と硬化剤液とを混合した後で反応して硬化しやすくなる。混合後の硬化を防ぐために、混合部に洗浄液流路をつなぐ塗装装置が開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。混合液を圧縮エアで排出した後、主剤液用の洗浄液で洗浄し、硬化剤液での洗浄は、圧縮エアの供給と交互に行う二液混合制御装置の洗浄方法も開示されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0005】
なお、塗料をカートリッジから供給し、カートリッジを接続する部分に、シンナーおよびエアを供給して、洗浄を行う少量塗料給送システムおよび多種少量塗料供給装置も開示されている(たとえば、特許文献3および特許文献4参照。)。さらに、カートリッジ内を洗浄可能なカートリッジ式塗装システムも開示されている(たとえば、特許文献5参照。)。また、カートリッジタンクユニットの継手を洗浄する洗浄装置を有する塗料供給装置も開示されている(たとえば、特許文献6参照。)。
【0006】
【特許文献1】特許第3514288号公報
【特許文献2】特開2005−40680号公報
【特許文献3】特開平11−590号公報
【特許文献4】特開2000−61371号公報
【特許文献5】特開2002−11396号公報
【特許文献6】特開2002−79149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図20に示すような塗装装置1では、前述のように、洗浄時は、塗料容器2を洗浄水容器に置き換えて、循環ポンプ3を運転して洗浄する。しかしながら洗浄性が悪く、洗浄に時間がかかってしまう。また、塗料カスの残留などによる不良が発生することもあるので、その除去に、さらに工数がかかってしまう。また、硬化剤容器8も洗浄液容器に置き換えて、シリンジポンプ9を運転して洗浄している。しかしながら、シリンジポンプ9は容量が小さく、洗浄に時間がかかってしまう。
【0008】
特許文献1,2に開示されているような技術では、図20の混合部5に相当する部分からガン7に相当する部分に至る経路が洗浄の対象となるので、塗料容器2から混合部5までの経路や硬化剤容器8から混合部5までの経路の洗浄は対象外となっている。
【0009】
特許文献3〜6は、主剤液と硬化剤液とを混合して用いる塗料についての技術ではなく、主剤液と硬化剤液とを混合するまでの供給経路を迅速に洗浄する技術は開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、水性二液型塗料などで、主剤液である塗料液と硬化剤液とを混合するまでの供給経路を迅速に洗浄することができる塗装装置およびその洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(1)は、塗料液を貯留するカートリッジを受容可能であり、塗料液用洗浄剤を供給するための洗浄器を該カートリッジと置き換えて受容可能であるカートリッジ受容手段と、
塗料液と硬化剤液とを混合し、混合された塗料液を塗装ガンに供給する混合手段と、
カートリッジ受容手段に受容される液を混合手段に供給する供給ポンプと、
カートリッジ受容手段に洗浄器が受容されている状態で、混合手段への硬化剤液の供給を遮断し、洗浄器に供給される塗料液用洗浄液を、供給ポンプおよび混合手段を介して塗装ガンへ導くように制御する制御手段とを含むことを特徴とする塗装装置である。
【0012】
本発明(1)に従えば、塗装装置は、カートリッジ受容手段と、混合手段と、供給ポンプと、制御手段とを含む。カートリッジ受容手段には、塗料液を貯留するカートリッジを受容可能であるとともに、塗料液用洗浄液が供給される洗浄器をカートリッジに置き換えて受容可能である。カートリッジを洗浄器に置き換えると、制御手段は洗浄器に供給される塗料液用洗浄液を供給ポンプおよび混合手段を介して塗装ガンへ導くように制御するので、カートリッジ受容手段から混合手段までの塗料液の供給経路を含めて、塗料液用洗浄液で洗浄することができる。カートリッジ受容手段に対し、塗料液を貯留するカートリッジを洗浄器に置き換えることで、塗料液を混合手段まで供給する経路の洗浄を迅速に行うことができる。
【0013】
また本発明(2)は、前記硬化剤液を貯留する硬化剤容器と、
硬化剤容器から硬化剤液を、前記混合手段に供給する硬化剤供給手段と、
混合手段に接続され、硬化剤液を洗浄する硬化剤用洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを含み、
前記制御手段は、
塗装時および前記塗料液用洗浄液による洗浄時に、混合手段から洗浄液供給手段を遮断しておき、
硬化剤液の洗浄時に、混合手段から供給ポンプを遮断する状態で、洗浄液供給手段から供給される硬化剤用洗浄液を、混合手段から硬化剤供給手段を介して硬化剤容器に至るように逆流させる制御を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明(2)に従えば、硬化剤供給手段は、たとえばシリンジポンプなどで実現され、硬化剤容器に貯留される硬化剤液を計量しながら混合手段に供給するので、精度は高くても容量は小さくなってしまう。制御手段は、硬化剤液の洗浄時に、混合手段から供給ポンプを遮断する状態で、洗浄液供給手段から供給される硬化剤用洗浄液を、混合手段から硬化剤供給手段を介して硬化剤容器に至るように逆流させるので、硬化剤供給手段がシリンジポンプなどの供給流量が小さいポンプで実現されていても、逆流する硬化剤用洗浄液の流量を、硬化剤液を供給する流量よりも多くすることができ、洗浄を迅速に行うことができる。
【0015】
さらに本発明(3)は、塗料液を混合手段で硬化剤液と混合して、混合された塗料液を塗装ガンから噴射して塗装を行う塗装装置を洗浄する方法であって、
洗浄時には、塗料液を貯留するカートリッジを塗料液用洗浄液が供給される洗浄器に置き換えて、塗料液が供給ポンプから混合手段を経て塗装ガンに至る経路を洗浄するとともに、混合手段に洗浄液供給手段を接続して、洗浄液供給手段から供給される硬化剤用洗浄液を、硬化剤液の混合手段への供給経路を逆流させて、硬化剤液の供給経路を洗浄することを特徴とする塗装装置の洗浄方法である。
【0016】
本発明(3)に従えば、カートリッジを洗浄器に置き換えて、洗浄器に供給される塗料液用洗浄液で供給ポンプおよび混合手段を介して塗装ガンに至る塗料液の経路を、迅速に洗浄することができる。硬化剤液を混合手段に供給する経路は、硬化剤用洗浄液を、混合手段から硬化剤供給手段を介するように逆流させるので、硬化剤供給手段がシリンジポンプなどで実現されて順方向の容量が小さくても、硬化剤用洗浄液の流量を硬化剤液を供給する流量よりも多くすることができ、洗浄を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明(1)によれば、カートリッジを洗浄器に置き換えて、洗浄器に供給される塗料液用洗浄液を供給ポンプおよび混合手段を介して塗装ガンへ導くように制御し、塗料液を混合手段まで供給する経路の洗浄を迅速に行うことができる。
【0018】
また本発明(2)によれば、硬化剤供給手段は、シリンジポンプなどで実現され、硬化剤容器に貯留される硬化剤液を、たとえば塗料液に比較して少量となるように混合手段に供給するので、精度は高くても容量は小さくなっている。洗浄液供給手段から供給される硬化剤用洗浄液を、混合手段から硬化剤供給手段を介して硬化剤容器に至るように逆流させるので、逆流する硬化剤用洗浄液の流量を、硬化剤液を供給する流量よりも多くすることができ、洗浄を迅速に行うことができる。
【0019】
さらに本発明(3)によれば、カートリッジ受容手段で塗料液を貯留するカートリッジを洗浄器に置き換えることで、塗料液を混合手段まで供給する経路の洗浄を迅速に行うことができる。硬化剤液を混合手段に供給する経路は、硬化剤用洗浄液を、混合手段から硬化剤供給手段を介するように逆流させて、洗浄を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の一形態としての塗装装置11の概略的な構成を示す。塗装装置11は、たとえばウレタン樹脂系の水性塗料で塗装を行うために用いられる。水性塗料は、主剤液として塗料カートリッジ12に貯留される。ここで、カートリッジとは取り外し可能なユニットを意味する。塗料カートリッジ12は、カートリッジ台13に着脱可能である(つまり、カートリッジ台13は、塗料カートリッジ12を受容可能である。)。塗装する色を切り換える場合は、塗料カートリッジ12を交換する。カートリッジ台13に装着される塗料カートリッジ12内の水性塗料の液は、供給ポンプ14を経て混合部15に供給される。すなわち、水性塗料の液は、塗料カートリッジ12→供給ポンプ14→1混合部15経路で混合部15に供給される。塗装される塗料は、混合部15からホース16を経てガン17に供給され、ガン17から対象物に噴霧される。塗料カートリッジ12に貯留される水性塗料は主剤液であり、混合部15で硬化剤液と混合されてから、ガン17で噴霧される。硬化剤液は、硬化剤容器18から水性塗料の液量に対して所定の割合となるように、シリンジポンプ19で計量しながら混合部15に供給される。
【0021】
混合部15には、水性塗料を受け入れる塗料バルブ20、硬化剤を受け入れる硬化剤バルブ21、希釈水を受け入れる希釈水バルブ22、および洗浄液を受け入れる洗浄液バルブ23が設けられる。カートリッジ台13には、供給ポンプ14が付属し、供給ポンプ14の入側と出側とに、塗料バルブ24,25がそれぞれ設けられる。硬化剤容器18とシリンジポンプ19との間には硬化剤バルブ26が設けられる。混合部15の希釈水バルブ22は、ポンプ27および希釈水バルブ28を経て希釈水容器29に接続される。水性塗料、硬化剤および希釈水の配合比は、たとえば100:10:10程度である。特に硬化剤の配合比は重要であり、多すぎると混合部15からホース16を経てガン17に至る経路の途中で硬化してしまうおそれがある。また、硬化剤が少なすぎると、塗装後の塗膜の硬化に時間がかかってしまう。このため、シリンジポンプ19で正確に計量するようにしている。
【0022】
水性塗料の供給経路は、水性の洗浄液、たとえば水を用いて洗浄する。洗浄時は、塗料カートリッジ12をカートリッジ台13から除去し、洗浄器30をカートリッジ台13に装着する。洗浄器30には、洗浄水容器31から洗浄水を供給する。洗浄水容器31は、圧縮空気源32からの圧縮空気で加圧し洗浄水を高圧供給することもできる。
【0023】
混合部15の洗浄液バルブ23には、合流部33が接続される。合流部33には、洗浄液容器34、洗浄水容器35および圧縮空気源36が洗浄液バルブ37、洗浄水バルブ39および圧縮空気バルブ38を介してそれぞれ接続されている。圧縮空気源36は、洗浄液容器34および洗浄水容器35を圧縮空気で加圧し、各液を高圧供給することもできる。塗装装置11のポンプおよびバルブは、たとえばマイコン等により構成されたコントローラ40によって制御される。
【0024】
図2は、水性塗料の供給経路の基本的な洗浄手順を概略的に示す。塗装が終了すると、ステップa1で、カートリッジ台13から塗装に使用した塗料カートリッジ12を取り外す。ステップa2では、カートリッジ台13に洗浄器30を取り付ける。ステップa3では、供給ポンプ14を運転して、カートリッジ台13から混合部15を経てガン17までの経路に、洗浄水容器31から洗浄器30に供給される洗浄水を送り込んで洗浄する。水性塗料が経路から除去されると、ステップa4で洗浄は完了する。
【0025】
図3は、水性塗料の供給経路の洗浄を、コントローラの制御で自動的に行う手順の例を示す。この処理は、塗料経路自動洗浄スタートの指示がコントローラに対してなされると、開始される。図2のステップa1からステップa2のような塗料カートリッジ12から洗浄器30への置き換えは、たとえば事前に作業者が手作業で行っておく。また、特許文献3に開示されているような機構を利用して、自動的に行うこともできる。ステップb1では、圧縮空気源32からの高圧エアーで、洗浄水容器31を加圧し、洗浄器30には加圧した洗浄水を供給し、加圧された洗浄水は、供給ポンプ14の運転によりカートリッジ台13から混合部15を経てガン17までの経路に送り込まれる。ステップb2では、洗浄水容器31から洗浄器30への洗浄水供給を停止する。ステップb3では、ステップb1と同様な加圧洗浄水供給を行う。ステップb4では、ステップb2と同様に洗浄水供給を停止する。ステップb5では、ステップb3と同様に加圧洗浄水供給を行う。ステップb1からステップb5では、加圧洗浄水の供給と洗浄水供給停止とを合計で3回繰り返しているけれども、繰り返しの回数nや時間、洗浄水の流量は、洗浄の必要に応じて決定することができる。ステップb6で合計nクールの洗浄が終了か否かを判断し、終了でなければステップb1に戻り、合計nクールが終了すると、ステップb7で洗浄水供給を停止し、洗浄を完了する。
【0026】
図4は、図3に示す手順で、カートリッジ台13に対して、塗料カートリッジ12と洗浄器30とを置き換えて洗浄水による洗浄を行う状態の例を示す。(a)は、塗装時に、カートリッジ台13に塗料カートリッジ12を装着し、塗料カートリッジ12内の水性塗料をカートリッジ台13から供給している状態の例を示す。(b)は、カートリッジ台13の塗料カートリッジ12を洗浄器30に置き換え、洗浄水容器31を圧縮空気源32からの高圧エアーで加圧して、加圧された洗浄水を洗浄水容器31から洗浄器30に供給して洗浄している状態を示す。(c)は、塗料経路を洗浄する際の洗浄水の供給状態を示す。
【0027】
塗料カートリッジ12から洗浄器30への置き換えは、ワンタッチで可能である。色替え時などに、塗料カートリッジ12から洗浄器30へ交換して洗浄し、さらに他の色の塗料カートリッジ12に交換する場合でもワンタッチで置き換え可能であるので、時間短縮を図ることができる。また、加圧された洗浄水を用いて洗浄するので、低コストかつ短時間での洗浄が可能になる。さらに図3のステップb1からステップb5に示すように、加圧洗浄水の供給と供給停止とを繰り返すことによって、水性塗料の供給経路に振動が与えられ、塗料が溜まりやすい箇所の洗浄が可能となる。
【0028】
図5は、硬化剤の供給経路の基本的な自動洗浄の手順を概略的に示す。硬化剤の洗浄に用いる洗浄液は、溶剤を用いる。この処理は、硬化剤経路自動洗浄スタートの指示がコントローラ40に与えられると、開始される。ステップc1では、図1に示す混合部15の塗料バルブ20および希釈水バルブ22が閉じるように制御される。ステップc2では、混合部15の硬化剤バルブ21および洗浄液バルブ23が開くように制御される。ステップc3では、シリンジポンプ19と硬化剤容器18との間の硬化剤バルブ26が開くように制御される。ステップc4では、合流部33の洗浄液バルブ37を開き、洗浄液容器34の洗浄液を圧縮空気源36からの高圧エアーで加圧して、混合部15に供給開始させる。洗浄が終了する(たとえば、洗浄液の供給を所定時間行った後)と、各バルブを閉じて洗浄液の供給を停止し、洗浄を完了する。
【0029】
図6は、硬化剤の供給経路の自動洗浄について、他の手順の例を概略的に示す。この処理は、硬化剤経路自動洗浄スタートの指示がコントローラに対してなされると、開始される。ステップd1では、圧縮空気源36からの高圧エアーで、洗浄液容器34を加圧し、合流部33から混合部15には加圧した洗浄液を供給する。ステップd2では、洗浄液容器34から合流部33への洗浄液供給を停止する。ステップd3では、ステップd1と同様な加圧洗浄液供給を行う。ステップd4では、ステップd2と同様に洗浄液供給を停止する。ステップd5では、ステップd3と同様に加圧洗浄液供給を行う。ステップd1からステップd5では、加圧洗浄液の供給と洗浄液供給停止とを合計で3回繰り返しているけれども、繰り返しの回数nや時間、洗浄液の流量は、洗浄の必要に応じて決定することができる。ステップd6で合計nクールの洗浄が終了か否かを判断し、終了でなければステップd1に戻り、合計nクールが終了すると、ステップd7で洗浄液供給を停止し、また各バルブを閉じて、処理を完了する。
【0030】
図7は、図5や図6に示す手順で、混合部15側から硬化剤容器18側に洗浄液を逆流させ、硬化剤の供給経路を洗浄する構成を概略的に示す。(a)は、洗浄剤が合流部33から混合部15を経て、シリンジポンプ19を逆流し、硬化剤容器18に至る経路を示す。(b)は、(a)で示す経路に設けられるバルブの位置を示す。
【0031】
図1に示す合流部33、洗浄液容器34、洗浄水容器35および圧縮空気源36は、混合部15からホース16を経て、ガン17に至る経路の洗浄用に設けられている。この構成を、バルブの切換で、混合剤の供給経路の洗浄にも利用することができる。しかも、硬化剤の供給経路にはシリンジポンプ19が存在して、順方向には供給流量が制限されるけれども、洗浄液を逆流させることによって、流量の増大による洗浄性の向上を図ることができる。
【0032】
図8は、図5、図6および図7に示すような硬化剤の供給経路の洗浄で、洗浄状態を確認するための構成を示す。硬化剤の洗浄液としては溶剤を用いるので、洗浄水に比較して高コストとなり、精度良く洗浄完了を検知する必要がある。このために、硬化剤容器18に洗浄液を逆流させる経路に、流量計41を設け、たとえばコントローラ40で流量を監視する。硬化剤液は粘度が高く、流速は遅い。粘度の低い洗浄剤で硬化剤を除去すれば、硬化剤の供給経路での洗浄剤の流速は速くなる。流量計41を設けて流量の変化を監視すれば、洗浄状態を確認することができる。
【0033】
図9は、図8に示すような構成で、流量計41よって流速を監視し、硬化剤供給経路の洗浄状態を確認するための概略的な手順を示す。この手順では、硬化剤の供給経路の洗浄時に、洗浄液と硬化剤液との粘度差による流速の違い(硬化剤と洗浄液とでは粘度が異なるので、粘度の低い洗浄液の方が流速が速くなる)を流量計41で監視する。経路内の流体が洗浄液に変わったことを検知すれば、自動的に洗浄を終了することができる。
【0034】
硬化剤経路洗浄スタートの指示がコントローラ40になされると、硬化剤容器18に洗浄液を逆流させて、硬化剤供給経路の洗浄の処理が開始される。すなわち、洗浄液を逆流させることにより、硬化剤容器18から混合部15までの経路に残留している硬化剤が硬化剤容器18側に排出される。洗浄の処理が開始されると、ステップe1において、流量計41により、経路内を逆流する洗浄剤の流量の計測が開始される。硬化剤は粘度が高いため、流量は少なく、流速は遅い。洗浄が進むと、粘度が高い硬化剤に粘度が低い洗浄液が混じるようになるため、流量が増加していき、流速も速くなる。そこで、ステップe2において、流量が増加したか否かを判断し、流量が増加したと判断されると、ステップe3において、タイマをスタートさせ、計時を開始する。ステップe4において、一定時間、すなわち硬化剤を排出させるに必要な時間が経過したと判断されると、洗浄を終了する。ステップe2において、流量が増加していないと判断されると、流量が増加するまで計測を続ける。ステップe4において、一定時間が経過していないと判断されると、そのまま洗浄を続ける。
【0035】
なお、本実施例では、流量計41(流速を検出する手段)として、流量を測定することにより流速の情報に変換するものを例に挙げて説明したがあ、直接流速を測定するようなセンサを用いても良く、流量を測定しその結果を他の外部手段により流速に換算するようにしてもよい。
【0036】
図10は、図1のホース16内の流体の色を判断して洗浄状態を確認する構成を示す。塗料がホース16内に残っている場合は光を透過せず、ホース16内部が洗浄されると光を透過するので、ホース16に透過率を検知するセンサ42を取り付けることによって、たとえばコントローラ40により洗浄状態の確認が可能となる。ホース16内の洗浄には、図1の混合部15に洗浄液バルブ23を介して接続される合流部33側から供給される洗浄液および洗浄水を用いる。ホース16は透明な樹脂材料などを用いてその全体が透明であるように形成されているか、検知センサ42が透過率を検知する部分が透明であるように形成されている。
【0037】
図11は、図10に示すような構成で、自動で洗浄を行い、センサ42でホース16内流体の透過率を判断し、洗浄液を切り換える概略的な手順を示す。作業者がコントローラ40に対し、自動洗浄を選択する操作を行うと、圧縮空気源36からの高圧エアーで洗浄水容器35内の洗浄水を加圧した加圧水で混合部15からホース16を経てガン17に至る経路を洗浄する処理が開始される。洗浄の処理が開始されると、ステップf1において透過センサ42により、経路内を流れる塗料の計測が開始される。洗浄初期においては、経路内は塗料のみが流れていると考えられ、塗料は光を透過し難いため、透過率が低い。洗浄が進むと、透過率の高い洗浄液が混合している比率が高くなるため、透過率が高くなる。経路内の流体の透明度が増すと透過率が高くなる。ステップf2において、透過率が所定値より大きい(すなわち、所望の透明度に達した)と判断されると、ステップf3において、タイマをスタートさせ、計時を開始する。ステップf4において、一定時間、即ち、経路内の塗料の洗浄が完了するに必要な時間が経過したと判断されると、洗浄を終了する。ステップf2において、透過率が所定値以下であると判断されると、透過率が高くなるまで計測を続ける。ステップf4において、一定時間が経過していないと判断されると、そのまま洗浄を続ける。
【0038】
図12は、混合部15以降の塗料を、設定時間が経過すれば、自動で洗浄する構成を示す。混合部15以降の経路については、硬化剤と塗料とが混合されているために、硬化が促進されており、時間経過で塗料が固まり、経路が詰まる危険性がある。このため、時間を設定し、設定時間が経過すれば、混合部15からガン17までの経路を自動で洗浄する。時間を適切に設定することによって、塗料硬化前に洗浄を行い、経路の詰まりを未然に防止することができる。
【0039】
図13は、図12の構成で、図1のコントローラ40の実行する、自動的な洗浄を行うための処理を示す。この処理は、塗装動作中に実行される。ステップg1において、塗装が終了したと判断されると、ステップg2において、タイマをスタートさせ、計時を開始する。タイマには、塗装が終了してから自動洗浄を開始するまでの時間(塗装が終了してから塗料が効果するまでの時間未満)が設定されている。ステップg3において、塗装が再開されていないかを判断し、塗装を再開されていない場合には、ステップg4において、所定時間以上経過したか判断し、所定時間以上経過している場合には、ステップg5においてタイマカウントアップを開始するとともにステップg6において自動洗浄を開始する。ステップg7において、タイマカウントが所定値を超えていると判断されると、自動洗浄を終了し、次の工程に進む。ステップg3において、塗装が再開されたと判断された場合には、タイマをリセットし、ステップg1に戻る。ステップg7において、タイマカウントが所定値以下であると判断された場合には、洗浄を続ける。
【0040】
このような自動洗浄を行うことにより、塗料が硬化する前に、経路から除去することができ、タイマの設定時間を過ぎる前(すなわち、塗料が硬化する前)に塗装を再開すれば洗浄を行わないことになるため、余分な洗浄を避けることができる。
【0041】
図14は、図13の処理に従う自動洗浄のタイムチャートの例を示す。時刻t1で塗装を開始すると、タイマはリセットされる。時刻t2で塗装を終了すると、タイマをスタートさせる。自動洗浄を開始するまでの時間が経過しない時刻t3に塗装が再開されると、タイマはリセットされる。時刻t4に塗装が終了すると、タイマがスタートする。時刻t5で、自動洗浄を開始するまでの時間が経過すると、タイマはリセットされ、タイマカウントアップを開始して、時刻t6まで洗浄を行う。
【0042】
図15は、図12のような混合部15以降の塗料を設定時間の経過で自動洗浄する場合に、洗浄水をバルブ39,23の動作により間欠で供給する構成を示す。混合部15以降の経路に洗浄水を間欠で供給することにより、経路内に振動を与え、経路の洗浄の効率を上げることができる。
【0043】
図16は、図15に示すような洗浄水の間欠的な供給を行う概略的な手順を示す。ステップh1では、作業者が自動洗浄スタートの指示を図1のコントローラ40に対して行う。ステップh2では、圧縮空気源36からの高圧エアーで洗浄水容器35を加圧し、加圧洗浄水を混合部15からガン17に至る経路に供給する。ステップh3では、洗浄水供給を停止する。ステップh4で、ステップh2と同様に、加圧洗浄水供給を行う。ステップh5で、ステップh3と同様に、洗浄水供給停止を行う。ステップh6では、ステップh4と同様に、加圧洗浄水供給を行う。ステップf2からステップh6では、加圧洗浄水供給と洗浄水供給停止とを、合計で3回繰り返しているけれども、この回数は適宜設定することができる。ステップh7で洗浄が完了し、ステップh8で洗浄水供給を停止する。このような洗浄水の間欠的な供給では、供給開始時と供給停止時とに生じる衝撃で、洗浄性の向上を図ることもできる。
【0044】
図17は、図1の混合部15の構成の例を示す。混合部15には、塗料バルブ20、硬化剤バルブ21および希釈水バルブ22などが設けられ、水性塗料、硬化剤および希釈水がそれぞれ供給される。これらのバルブは、基本的に同等の構成を有している。すなわち、塗料バルブ20について示すように、シリンダ50内で軸線上に、弁体シャフト51が軸線方向に変位可能に配置されている。弁体シャフト51の先端は、混合部15の混合通路を開閉する。弁体シャフト51の中間部には、エアー導入部52を介して、高圧エアーが導入可能である。弁体シャフト51の基端は、ばね53で先端側に付勢されている。ばね53とエアー導入部52との中間にはピストン54が設けられ、エアー導入部52から高圧エアーが導入されれば、弁体シャフト52をばね53の付勢に抗して基端側に変位させ、先端が混合通路を開くようになる。開いた状態の混合通路には、継手部55が設けられ、図1のカートリッジ台13に接続する供給管56を着脱することができる。
【0045】
図18は、図17に示す塗料バルブ20の継手部55に関連する構成を部分的に示す。継手部54には大径部57が存在するので、供給管56から供給される水性塗料の流れによどみが生じやすくなる。
【0046】
図19は、図18の大径部56などで発生しやすいよどみをなくす構成を示す。(a)は、従来から、継手部54で用いられている構成を示す。塗料を送るホースなどの供給管55や継手内径に対し、極端に拡がる大径部56では、塗料の流れによどみが生じ、塗料カス等が溜まりやすい。(b)に示すように、供給管55の内径に応じた内径のみを有し、大径部57の内径に応じた外径を有するカラー58を挿入することによって、塗料カスなどの溜まりを排除することができる。
【0047】
なお、以上の説明では水性塗料としてウレタン樹脂系を用いているけれども、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系など、他の材料にも、本発明を同様に適用することができる。また、水性塗料に限らず、主剤液と硬化剤とを混合して使用する塗料にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の一形態としての塗装装置11の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】図1の塗装装置11での水性塗料の供給経路の基本的な洗浄手順を概略的に示すフローチャートである。
【図3】図1の塗装装置11での水性塗料の供給経路を、コントローラ40の制御で自動的に行う手順の例を示すフローチャートである。
【図4】図3に示す手順で、カートリッジ台13に対して、塗料カートリッジ12と洗浄器30とを置き換えて洗浄水による洗浄を行う状態を示す図である。
【図5】図1の塗装装置11で、硬化剤の供給経路の基本的な自動洗浄の手順を概略的に示すフローチャートである。
【図6】図1の塗装装置11で、硬化剤の供給経路の自動洗浄について、他の手順の例を概略的に示すフローチャートである。
【図7】図5や図6に示す手順で、混合部15側から硬化剤容器18側に洗浄液を逆流させ、硬化剤の供給経路を洗浄する構成を概略的に示す図である。
【図8】図5、図6および図7に示すよう硬化剤の供給経路の洗浄で、洗浄状態を確認するための構成を示す図である。
【図9】図8に示すような構成で、流量計41よって流速を監視し、硬化剤供給経路の洗浄状態を確認するための概略的な手順を示すフローチャートである。
【図10】図1のホース16内の流体の色を判断して洗浄状態を確認する構成を示す図である。
【図11】図10に示すような構成で、自動で洗浄を行い、センサ42でホース16内流体の色を判断し、洗浄液を切り換える概略的な手順を示すフローチャートである。
【図12】図1の塗装装置11で、混合部15以降の塗料を、設定時間が経過すれば、自動で洗浄する構成を示す図である。
【図13】図12の構成で、図1のコントローラ40の制御で、自動的な洗浄を行う概略的な手順を示すフローチャートである。
【図14】図13の処理に従う自動洗浄のタイムチャートの例を示す。
【図15】図12のような混合部15以降の塗料を設定時間の経過で自動洗浄する場合に、洗浄水を間欠で供給する構成を示す図である。
【図16】図15に示すような洗浄水の間欠的な供給を行う概略的な手順を示すフローチャートである。
【図17】図1の混合部15の構成の例を示す断面図である。
【図18】図17に示す塗料バルブ20の継手部54に関連する構成を部分的に示す簡略化した断面図である。
【図19】図18の大径部56などで発生しやすいよどみをなくす構成を示す図である。
【図20】従来からの塗装装置1の概略的な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0049】
11 塗装装置
12 塗料カートリッジ
13 カートリッジ台
14 供給ポンプ
15 混合部
16,55 ホース
17 ガン
18 硬化剤容器
19 シリンジポンプ
20、24,25 塗料バルブ
21,26 硬化剤バルブ
22,28 希釈水バルブ
23 洗浄液バルブ
30 洗浄器
31,35 洗浄水容器
32,36 圧縮空気源
34 洗浄液容器
40 コントローラ
41 流量計
42 センサ
55 継手部
56 供給管
57 大径部
58 カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料液を貯留するカートリッジを受容可能であり、塗料液用洗浄剤を供給するための洗浄器を該カートリッジと置き換えて受容可能であるカートリッジ受容手段と、
塗料液と硬化剤液とを混合し、混合された塗料液を塗装ガンに供給する混合手段と、
カートリッジ受容手段に受容される液を混合手段に供給する供給ポンプと、
カートリッジ受容手段に洗浄器が受容されている状態で、混合手段への硬化剤液の供給を遮断し、洗浄器に供給される塗料液用洗浄液を、供給ポンプおよび混合手段を介して塗装ガンへ導くように制御する制御手段とを含むことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記硬化剤液を貯留する硬化剤容器と、
硬化剤容器から硬化剤液を、前記混合手段に供給する硬化剤供給手段と、
混合手段に接続され、硬化剤液を洗浄する硬化剤用洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを含み、
前記制御手段は、
塗装時および前記塗料液用洗浄液による洗浄時に、混合手段から洗浄液供給手段を遮断しておき、
硬化剤液の洗浄時に、混合手段から供給ポンプを遮断する状態で、洗浄液供給手段から供給される硬化剤用洗浄液を、混合手段から硬化剤供給手段を介して硬化剤容器に至るように逆流させる制御を行うことを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
塗料液を混合手段で硬化剤液と混合して、混合された塗料液を塗装ガンから噴射して塗装を行う塗装装置を洗浄する方法であって、
洗浄時には、塗料液を貯留するカートリッジを塗料液用洗浄液が供給される洗浄器に置き換えて、塗料液が供給ポンプから混合手段を経て塗装ガンに至る経路を洗浄するとともに、混合手段に洗浄液供給手段を接続して、洗浄液供給手段から供給される硬化剤用洗浄液を、硬化剤液の混合手段への供給経路を逆流させて、硬化剤液の供給経路を洗浄することを特徴とする塗装装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−144289(P2007−144289A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341133(P2005−341133)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】