説明

塗装装置および塗装金属板

【課題】 被塗装板に塗布される塗膜厚さに比較して径の大きい粗大粒状物を含有する塗料を、該粗大粒状物含有割合を変化させることなく被塗装板に塗布でき、その結果塗装板のアース性能を落とさずに塗布できるロールコーター方式の塗装装置を提供する。
【解決手段】 ニッケル粒子のような金属粒子を含む塗料を、アプリケーターロールから一方向に流れる被塗装板に転写して塗膜を形成する塗装装置であって、互いにナチュラル回転する2本のロールと、該2本のロール間に前記塗料をトップフィードして該塗料の送給量を定量化する塗料供給装置とを備え、2本のロールのうちいずれか一方のロールはロール表面の硬度が45〜55度、粗度がRaで1〜5μmであり、他方のロールは金属製で、粗度がRaで1μm未満であるロールを具備した塗装装置。得られる塗膜は平均厚さは1〜3μmで、塗膜厚の2倍を超える長径を有する金属粒子を含み、その導電性確率は95%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装装置に関し、さらに詳しくは塗膜厚さに比較して径の大きい粗大金属粒子を含有する塗料を、均一にしかも薄く塗布することができる塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、PC等の電子機器の筐体や、PCに内蔵されるCD−ROM等のドライブケース、計測機器の外装部材等は、稼動中に生じる静電気を除去するためのアースとしての機能を備えたものが使用されている。また、該筐体やドライブケース等、計測機器部材は軽量性、成形性が求められるところから、塗料を被覆(塗装)したアルミニウム板が多用されているが、樹脂のみで被覆すると導電性が低下するので、アース機能を発揮させるために樹脂中に金属粒子を添加混合した塗料を被覆したアルミニウム板を採用している。金属粒子を添加した場合には、部品の複数箇所でアースが取れるばかりでなく、部材と接触する面が導電性を示す確率も向上し、アース機能の確実性が確保される。ここで、かかる金属粒子としては、球状、鱗片状、鎖状、スパイク状のニッケル粒子を使用することが提案されている。
【0003】
前記塗料中の前記金属粒子のサイズは目的によって多様であるが、例えば、電導性を付与する場合は粒度分布範囲が1〜11μm、平均粒径が3〜7μmのニッケル粒子、前記ニッケル粒子が連結した鎖状ニッケル粒子または厚さが数ミクロンで長径が1〜110μmの扁平状ニッケル粒子等の種々の粒子が選択できる。
また、前記金属粒子は通常塗膜中に合計で25〜55wt%程度含有されており、特に該金属粒子がニッケル粒子であるような場合は、比重差の関係から沈降分離を防止するために、常時攪拌混合しながら使用するものとされている。
【0004】
ところで、被塗装板に金属粒子を含有する塗料を塗装する方法は、刷毛塗装、スプレイ塗装等が公知であるが、膜厚や均一性等の塗膜性能や生産効率的見地から、容器内の塗料を回転するロールで掬い、ロールに掬われた塗料を他のロールに転写し、必要によりロールからロールへの転写を繰り返した後、最後にアプリケーターロールから被塗装板に転写するロールコーター方式の塗装装置を用いる塗装方法が知られている。
例えば図3は、前記ロールコーター方式の塗装装置の代表的な装置を説明する模式図であって、図に示すロールコーター方式の塗装装置30において、1は塗料パン、2は塗料、4はピックアップロール、5はアプリケーターロール、7はバックアップロール、8は被塗装板である。ピックアップロール4はその一部が塗料パン1内の塗料2に浸漬されていて、他の一端でアプリケーターロール5によって所要の圧力で押さえ付けられるようにセットされている。
【0005】
即ち塗料2を被塗装板8に塗装するにあたって、塗料パン1内の塗料2に浸漬されているピックアップロール4を矢印33の方向に回転させると共に、アプリケーターロール5を矢印35の方向にナチュラル回転させる。一方、被塗装板8はアプリケーターロール5に対して矢印37の方向にリバース回転しているバックアップロール7に支持されながら矢印39の方向へ移動する。
前記のように各ロールを回転させて被塗装板8を移動させると、ピックアップロール4の表面に付着した塗料2は、ピックアップロール4とアプリケーターロール5の間隙を通過する時に、過剰な塗料は搾り落とされ(符号40)、通過した塗料の一部がアプリケーターロール5に転写される。転写されたアプリケーターロール5面上の前記塗料2がさらに被塗装板8に転写塗装される。
このようなロールコーター方式の塗装装置を使用すれば、必要量の塗料を転写させて塗装するので連続的に塗布できるばかりでなく、均一な塗膜が得られるとされている。
【0006】
金属粒子を含有する塗膜を形成するためのロールコーター方式の塗装装置としては、例えば、光輝性顔料を含む塗料を塗布する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
光輝性顔料を含む塗料を塗布する場合には、塗料やインキに配合された光輝性顔料が、時間の経過と共に変形したり微細化して、塗装した際の光輝性能が低下する難点がある。この光輝性低下を防止する手段として、塗料を掬うピックアップロールに線状の凹溝を刻設した彫刻ロールを使用し、該彫刻ロール面に供給された光輝性顔料を含む塗料の付着量をドクターブレードと組み合わせて調節するロールコート技術が提案されている。
【特許文献1】特開2002−192061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の方法は、インキチャンバーから線状の凹溝を刻設した彫刻ロール面に光輝性顔料を含有する塗料を供給し、ドクターブレードで前記塗料の供給された彫刻ロール面から前記塗料の一部を掻き落し、次いで版胴に転写塗装する技術であるから、光輝性顔料のサイズが大きい塗料のばあい、あるいは該塗料の塗膜厚が薄くなればなるほど前記ドクターブレードによってサイズの大きな顔料は除去されてしまうことになる。これを防ぐには彫刻ロールの凹溝を大きくすることになって塗膜面の斑発生の原因になり、粗大金属粒子を含有しかつ斑模様のない平滑な薄膜塗膜面を形成するのは難かしい。
一方、導電性を付与するためには塗膜樹脂部の厚さを薄くすることが望まれている。樹脂部の厚さを薄くするために、例えば前記図3で説明した塗装装置を用いる場合は、ピックアップロール4とアプリケーターロール5との間の押し付け圧を高くして間隙を狭くし、塗料の量を搾らなくてはならず、このようにロールとロールの間隙を狭くすると、ロール間隙より大きな粗大金属粒子はロール間隙を通過できなくなり、当初の粗大金属粒子含有割合を保てなくなるので、粗大粒子が不均一となってアース性能(導電性確率)が低下する。
そこで本発明の目的は、被塗装板に塗布される塗膜厚さに比較して径の大きい粗大金属粒子を含有する塗料を、該粗大金属粒子の含有割合を変化させることなく、薄くしかも均一に被塗装板に塗布することができる塗装装置を提供することである。また、その結果アース性能を落とさない導電塗装膜を具備した塗装金属板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の塗装装置の一つは、互いにナチュラル回転する少なくとも1対のロールと該1対のロール間に塗料をトップフィードする定量供給装置を具備し、該1対のロール間に塗料をトップフィードして一方のロールに必要量の塗料を転写した後、該一方のロールに含まれる塗料を被塗装板に転写して塗膜を形成する塗装装置であって、前記1対のロールのいずれか一方のロールは、そのロール表面の硬度が45〜55度、粗度がRaで1〜5μmであり、他方のロールは金属製で表面の粗度がRaで1μm未満である塗装装置とした。
また、本発明のもう一つの塗装装置は、互いにナチュラル回転する少なくとも1対のロールと該1対のロール間に塗料をトップフィードする定量供給装置を具備し、該1対のロール間に塗料をトップフィードして一方のロールに必要量の塗料を転写した後、該一方のロールに含まれる塗料を第3のロールに転写して、該第3のロールから塗料を被塗装板に転写して塗膜を形成する塗装装置であって、前記1対のロールのいずれか一方のロールは、そのロール表面の硬度が45〜55度、粗度がRaで1〜5μmであり、他方のロールは金属製で表面の粗度がRaで1μm未満である塗装装置とした。
本発明の塗装装置では、前記表面の硬度が45〜55度、粗度がRaで1〜5μmであるロールは、ウレタンゴム、ブチルゴム、EPDMゴム等のゴム製ロールとすることが好ましい。
【0009】
また、本発明の塗装板は上記のいずれかに記載された塗装装置を用いて金属粒子を含む塗料が塗布された金属板であって、塗膜の平均厚さが1〜3μmでかつ前記金属粒子の長径が塗膜の平均厚さの2倍を超える粒径を有する塗装金属板とした。
本発明の塗装板では、前記金属粒子の導電性確率が95%以上であることが好ましい。
また、前記金属粒子としてニッケル粒子を使用することができる。
さらに、前記金属板として純アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板を使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、粗大金属粒子を含有する塗料を塗膜厚が薄くても斑模様を発生させずに塗布でき、しかも塗装板のアース性能は良好であるから、電子機器等の筐体等に好適に使用できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の塗料は、樹脂中に塗膜厚よりも径の大きい粗大な金属粒子を含み、他には径の小さい粒子、あるいは扁平状の粒子、溶媒、潤滑材としてワックス、黒鉛等を含むものである。
導電性を付与するための金属粒子としては、ニッケル粒子を使用するのが好ましい。ニッケル粒子としては粒度分布範囲が1〜11μm、平均粒径が3〜7μmの球状粒子の他に、前記ニッケル粒子が連結した鎖状ニッケル粒子または厚さが数ミクロンで長径が1〜110μmの扁平状ニッケル粒子等の種々の粒子が選択できる。
また、前記金属粒子は通常乾燥後の塗膜中に合計で25〜55wt%程度含有されるのがよい。
塗膜厚さは限定されないが、実用的には薄い方がコスト的に有利であるので平均厚さが乾燥時厚さで1〜3μmである。従って、塗膜の平均厚さが1〜3μmとすれば粗大な粒子の径はその厚さよりも大きいものである。粗大な粒子の塗料に対する割合は、該粒子の添加特性を発揮されるために乾燥塗膜に対して25wt%以上であることが好ましい。
塗料が塗布される被塗装板は金属板であれば限定しないが、軽量性および成形性の観点から言えばアルミニウム板が好ましい。ここで、アルミニウム板とは純アルミニウム板とアルミニウム合金板を含むものである。
【0012】
本発明の塗装装置はロールコーター方式の塗装装置で、被塗装板に転写して形成された塗膜の厚さよりも径の大きい、好ましくは乾燥塗膜厚さの2倍以上の径を持つ金属粒子を含む塗料を、アプリケーターロールから一方向に流れる被塗装板に転写して塗膜を形成する塗装装置である。
【0013】
本発明の塗装装置を図面を使用して具体的に説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係わる塗装装置10を説明する模式図である。図1において1は塗料パン、2は塗料で粗大金属粒子を含有する、3は塗料2を上方から供給する定量供給装置、5はアプリケーターロールで粗面化した軟質ロールからなる。6は塗料供給量を調整する調整ロールである。7はバックアップロール、8は被塗装板、18は塗膜17が形成された後の塗装金属板である。アプリケーターロール5および調整ロール6は互いにナチュラル回転する関係にあって、該アプリケーターロール5および調整ロール6の間へ定量供給装置3からトップフィードされる塗料2の送給量を、該1対のロールの押圧力を図示していない手段で調整することによって、アプリケーターロール5に転写される塗料の量を調整し定量化する。押圧力の調整は公知の手段を使用することができる。
図1の塗装装置10では互いにナチュラル回転する関係にある2本のロール5,6のみで被塗装板に塗料を塗布するので、一方のアプリケーターロール5は表面を粗面化した軟質ロールを使用するのが好ましい。該アプリケーターロール5として使用する表面を粗面化した軟質ロールは、ロール表面の硬度を45〜55度、粗度を平均表面粗さRaで1〜5μmとするのが好ましい。なお、粗面化した軟質ロールの形成方法は、粗度がRaで1〜5μmになる回転砥石を用いてゴム製のロール表面を研磨すればよい。研磨技術は通常の手法でよい。
また、他方の調整ロール6は、塗料の送給量を調節するためのロールで、金属製とし、表面の粗度がRaで1μm未満とする。調整ロール6の表面はクロム等のメッキを施すと硬質な面が得られる。
ここで、ロール面の硬度はJIS K6301、粗度(平均表面粗さ)RaはJIS B0601−1994に示される算術平均(Ra)の定義および表示による。なお、カットオフ値もJISによった。
【0014】
前記1対のアプリケーターロール5および調整ロール6はナチュラル回転し、塗料2が調整ロール6およびアプリケーターロール5の間隙で狭窄されたときに、塗料中の粗大金属粒子が軟質のアプリケーターロール5の粗面凹部にさしかかると、他方の金属製の調整ロール6の表面で凹部に押し込まれるが、回転が進み間隙が広くなると軟質のアプリケーターロール5の反力で粗大金属粒子が再び押し出され、ロールの間隙に引っかかることなくロール後方に送り出されてくるので、塗料中に粗大金属粒子があっても塗料中の金属粒子の含有割合が変化することはなく、しかも斑模様が生じることもない。
【0015】
このように1対の調整ロール6およびアプリケーターロール5のうち、一方は表面を粗面化した軟質ロールとし、他方を表面が滑らかな金属製とすれば、塗装過程で塗料中に粗大金属粒子が含まれていても塗料中の金属粒子の含有割合が変化することはない。この場合1対のロールのうち、調整ロールを表面を粗面化した軟質ロールとし、アプリケーターロールを表面が滑らかな金属製としても本発明の効果が発揮される。すなわち、塗料を転写する場合に、粗面化した軟質面と滑らかな硬質面の組み合わせが維持されていれば塗料中の金属粒子の含有割合が変化することはない。
しかし、アプリケーターロール5が硬い被塗装板にすり傷を付けないように塗料を塗布するためにはアプリケーターロール5は表面を粗面化した軟質ロールを使用するのがより好ましい。
【0016】
一方の表面を粗面化した軟質ロールに対して、他方のロールの表面も硬度を低くして軟質とすると、金属粒子に対する押圧力が低くなって、粗大金属粒子が粗面化した軟質ロールの凹部にかかり難く、塗料中の粒子の含有割合を安定に維持することができない。従ってロールの一方は金属製とするのが良い。また金属製ロールの表面粗度Raを1μm未満として平滑にしないと、ロール面の凹部凸部同士の重なりによって塗料の送り量がムラになり易く、特に塗膜厚さが薄く例えば平均厚さで1〜3μmの場合は斑になって平滑塗膜が得られない。
【0017】
また、粗面化した軟質ロールの表面硬度が45度未満であると、軟質ロールの反力が小さく、ロール回転後粗大金属粒子を凹部より押出し難く、塗膜の粗大金属粒子の分布に均一性を欠き、導電性がやや低下するとともに、金属製ロールの押圧力に対して変形が大きく、1対のロール間隙が安定しないので塗料の送り量を定常化することができない。更にロール研磨時の研磨ムラが発生し易く、塗膜表面が斑になり易い。また粗面化した軟質ロールの硬度が55度を超えるとロール同士の硬度が高く、粗面化した軟質ロールの粗面化効果が発揮されずに、塗料中の粗大金属粒子の送り量を定常化することができない。
また、粗面化した軟質ロールの表面粗度がRaで1μm未満では、金属粒子が凹部にかかる割合が低くなり、粗面化した軟質ロールの粗面化効果が発揮できずに塗料中の粗大金属粒子の送り量を定常化することができない。粗面化した軟質ロールの表面粗度がRaで5μmを超えると、金属粒子の送り量が斑になり易く、特に塗膜厚さが薄く例えば平均厚さで1〜3μmの場合には斑になって平滑塗膜が得られない。
【0018】
粗面化した軟質ロールと金属製ロールとは、互いにナチュラル回転していないと塗料を搾ることができず定量供給することができない。図1において互いにナチュラル回転する関係にある1対のロールはそれぞれ矢印13,14の方向へ回転している。そして粗面化した軟質ロールに転写送給された塗料は、矢印15の方向へ回転しているバックアップロール7に支持されて送られる被塗装板8上に転写され、粗大金属粒子を含有する塗膜17が形成されて塗装金属板18とされる。
なお、図中9は循環ポンプであって、ロール5、6間に供給された塗料2は調整ロール6で搾られ、余剰の塗料2は図示されていないがロール5、6の端部よりオーバーフローし、塗料パン1で集めて再び定量供給装置3へ戻すためのものである。定量供給装置3は、例えば先端にほぼ必要量の塗料が滴下するのに適する断面積を有するオリフィスを形成したサージタンク等で構成する。塗料をロールの上方からトップフィードすることにより、粗大粒子の沈降分離を防ぐことがでる。本発明の塗装装置では、この定量供給装置3と前記いずれか一方のロールが粗面化された軟質ロールである一対のロールとを併用することにより、導電性確率の高いより薄い塗膜を形成できるようにしている。
【0019】
(第2の実施形態)
本発明においては塗料がトップフィードされる1対のロールと被塗装板の間に、さらにもう1本のロールを設けて塗料の転写を繰り返し、最終的に前記した被塗装板上に転写することもできる。転写を繰り返すと一層薄くて平滑な塗膜が得られる利点がある。
図2に本発明の第2の実施形態に係わる塗装装置20を模式図で示す。図2においては、図1と同じ作用をするものには同じ部品番号を付して説明する。
図2において、5は被塗装板に塗料を塗布するアプリケーターロール、6は塗料供給量を調整する調整ロールである。本実施形態においては前記アプリケーターロール5と調整ロール6の間に仲介ロール11を具備しているのを特徴としている。被塗装板8に塗布すべき塗料2は、調整ロール6と仲介ロール11の1対のロール間にトップフィードされる。トップフィードされた塗料2は調整ロール6に依って制御された所定量のみ仲介ロール11に供給される。仲介ロール11に供給された塗料は、さらに所定量のみアプリケーターロール5に転写され、アプリケーターロール5からさらにバックアップロール7によって支持された被塗装板8に転写されることにより、最終的に被塗装板8の表面に所望の塗膜17が形成される。
【0020】
図2において、例えば仲介ロール11を表面を粗面化した軟質ロールで形成した場合には、調整ロール6は表面が滑らかな金属製ロールで構成する。また、仲介ロール11を表面が滑らかな金属製ロールで形成した場合には、調整ロール6は表面を粗面化した軟質ロールで構成する。これらの場合、表面を粗面化した軟質ロールは、第1の実施形態の場合と同様に、ロール表面の硬度を45〜55度、粗度を平均表面粗さRaで1〜5μmとするのが好ましい。また、金属製ロールは、表面の粗度をRaで1μm未満とするのが好ましい。
なお、粗面化した軟質ロールの粗面化方法は、粗度がRaで1〜5μmになる回転砥石を用いてゴム製のロール表面を研磨すればよい。研磨技術は通常の手法でよい。
【0021】
図2において、調整ロール6と仲介ロール11はそれぞれ矢印23,25方向へナチュラル回転している。また、仲介ロール11とアプリケーターロール5はそれぞれ矢印25,27方向へナチュラル回転し、所定間隔が保たれている。仲介ロール11は、アプリケーターロール5へ塗料を転写する機能を有するものである。仲介ロール11を利用して塗料を転写することにより、被塗装板表面により薄い塗膜を形成することが可能となる。そして、仲介ロール11からアプリケーターロール5に転写された塗料2は、矢印29方向にリバース回転するバックアップロール7で送り込まれる被塗装板8に転写され、粗大金属粒子を均一に含有する塗膜17が形成された塗装金属板18となる。
【0022】
塗料定量供給装置3から仲介ロール11と調整ロール6との間にトップフィードされた粗大金属粒子を含有する塗料2は、図1で説明したのと同様に、仲介ロール11と調整ロール6との間で狭窄されて所定量に調節されて仲介ロール11に転写される。このとき前述したように塗料中の粗大金属粒子は、表面が粗面化された軟質ロールの粗面凹部にさしかかると、他方の金属製の調整ロール6で粗面凹部に押し込まれるが、回転が進み間隙が広くなると前記一方の粗面化した軟質ロールの反力で粒子が押し出され、ロールで引っかかることなくロール後方に送り出され、塗料中の粒子の含有割合を安定して維持することができる。また斑模様になることもない。
前記の如くトップフィードされ仲介ロール11と調整ロール6との間で狭窄されて所定量が転写された粗大金属粒子を含有する塗料は、仲介ロール11とナチュラル回転し該仲介ロール11に対し所定押圧力が負荷されているアプリケーターロール5に転写される。アプリケーターロール5に転写された粗大金属粒子を含有する塗料は、バックアップロール7で送り込まれる被塗装板8に転写され、粗大金属粒子を均一に含有する塗膜17が形成された塗装金属板18となる。
【0023】
本発明は図1および図2で模式的に開示した装置に限るものではなく、粗面化した軟質ロールと金属製の調整ロールとの間で狭窄させて粗大金属粒子を含有する塗料が所定量転写された後は、該塗料がアプリケーターロールに至るまでロールを設け転写を繰り返すことも可能であり、転写を繰り返せば塗膜面が平滑になる効果を有する。
【実施例1】
【0024】
図1に示すロールコーター方式の塗装装置を用いて塗装板の製造テストをした。
調整ロール6の径は300mm、アプリケーターロール5の径は300mmとし、ゴム製の粗面化ロールを使用した。ロールの周速は調整ロール6が10m/分、アプリケーターロール5が30m/分とした。
使用した金属板は、厚さ0.8mmのJIS5052アルミニウム合金板でH34熱処理材を用いた。アルミニウム合金板表面はアルカリ液で脱脂洗浄し、クロメート処理してクロミウム20mg/m となるように下地処理をした。
塗料となる樹脂はポリエステル系樹脂を用い、溶媒、ワックス、粒子の沈降助剤、消泡助剤、粘度調整剤等補助剤を適宜添加し、粘度をフォードカップ#4で30秒とした。添加粒子は下記のものを使用した。添加量は乾燥塗料に対して各10wt%で合計30wt%とした。
使用した金属粒子は、(a)球状ニッケル粒子:ほぼ真球で粒子がそれぞれ独立している粒子をいう。粒径範囲1〜11μm、平均粒径3〜7μm、(b)鎖状ニッケル粒子(鎖):粒子が連鎖している粒子群をいう。粒径範囲1〜50μm、平均粒径6〜20μm、(c)鱗片状ニッケル粒子(鱗):扁平な粒子をいう。長径の粒径範囲1〜110μm、平均粒径10〜30μmの3種類を使用した。
【0025】
塗膜は乾燥ベースで平均厚さで2μmとなるようにロール間隔を調節した。図1に示す塗装装置のアプリケーターロール5は粗面化した軟質ロールで、表面を表1に示す各種Ra値に粗面化したものを用いた。調整ロール6は鋼製としクロムメッキした。粗面化した軟質のアプリケーターロール5と調整ロール6の組み合わせを表1に示す。得られた塗膜の評価は、塗装後乾燥させて導電性確率を測定し、塗膜表面模様と膜厚精度を観察した。これらの結果を表1に示す。
【0026】
<導電性確率の測定方法>
得られた塗料被覆アルミニウム合金板について、四端子法により鋼製のプローブ(直径10mm)荷重100gで塗膜面のランダムの個所を100点押圧した時の電気抵抗値を測定し、10Ω以下であった個所数を%で示す。個所数が多ければ通電確率が高く、アースがとり易いことを示す。
【0027】
<塗膜表面模様の観察>
目視観察して、塗り面に斑模様が無く金属粒子が均一に分布しているものを「無」、塗膜面に斑模様が発生して金属粒子が不均一に分布しているものを「有」と判定した。
<塗膜平均厚さの測定>
塗装板(乾燥塗膜)の10cm角の重量から塗膜を除去した板のみの重量を差し引き、得られた乾燥塗膜重量を面積で除し、この単位面積当りの乾燥塗膜重量をさらに乾燥塗膜の比重で除した値で示す。塗膜は乾燥ベースで平均厚さで2μmとなるようにした。
【0028】
<膜厚精度の測定>
塗膜断面を顕微鏡観察して、金属粒子の分布状況を観察した。金属粒子が均一に分布しているものを「良」、一方 金属粒子が重なったり広い面積にわたって見あたらない場合を「不良」と判定した。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果から、粗面化した軟質ロールの硬度ならびに粗度、金属製調整ロールの粗度が本発明範囲に入っている本実施例1〜実施例6は、ロール間で粗大金属粒子が減少することなく供給されるので導電性確率が高く、表面斑模様の発生もなく、膜厚精度の良好なことが判る。
一方、粗面化した軟質ロールの硬度が低い比較例1は、塗料の送り量が定常化せず導電性確率が低く、塗膜表面に斑模様が発生し、膜厚精度も悪化することが判る。
また、調整ロールの粗度が高い比較例2は、塗料の送り量がまだらになって導電性確率も低く、表面に斑模様も発生し、膜厚精度も不良であることが判る。
また、粗面化した軟質ロールの粗度が高い比較例3は、表面に斑模様が発生し、膜厚精度も不良であることが判る。
また、粗面化した軟質ロールの硬度が高い比較例4は、粗大金属粒子の送り量を定常化できず、導電性確率が更に低く、膜厚精度も悪化することが判る。
また、粗面化した軟質ロールの粗度が低い比較例5は、ロール間で粗大金属粒子の供給が減少し導電性確率が低いことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の塗装装置は、ロール間で粗大金属粒子が減少することなく供給し塗装できるので、導電性確率が高く、表面斑模様の発生もなく、膜厚精度の良好な塗装板が得られ、特にアースの必要な筐体、ドライブケース、計測機器の部品等に使用できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の塗装装置を説明する模式図である。
【図2】本発明の他の塗装装置を説明する模式図である。
【図3】従来の塗装装置の一例を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 塗料パン
2 塗料
3 定量供給装置
4 ピックアップロール
5 アプリケーターロール
6 調整ロール
7 バックアップロール
8 被塗装板
9 循環ポンプ
10、20 ロールコーター方式の塗装装置
18 塗装金属板
30 ロールコーター方式の塗装装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにナチュラル回転する少なくとも1対のロールと該1対のロール間に塗料をトップフィードする定量供給装置を具備し、該1対のロール間に塗料をトップフィードして一方のロールに必要量の塗料を転写した後、該一方のロールに転写された塗料を被塗装板に転写して塗膜を形成する塗装装置であって、前記1対のロールのいずれか一方のロールは、そのロール表面の硬度が45〜55度、粗度がRaで1〜5μmであり、他方のロールは金属製で表面の粗度がRaで1μm未満であることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
互いにナチュラル回転する少なくとも1対のロールと該1対のロール間に塗料をトップフィードする定量供給装置を具備し、該1対のロール間に塗料をトップフィードして一方のロールに必要量の塗料を転写した後、該一方のロールに転写された塗料を第3のロールに転写して、該第3のロールから塗料を被塗装板に転写して塗膜を形成する塗装装置であって、前記1対のロールのいずれか一方のロールは、そのロール表面の硬度が45〜55度、粗度がRaで1〜5μmであり、他方のロールは金属製で表面の粗度がRaで1μm未満であることを特徴とする塗装装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塗装装置を用いて金属粒子を含む塗料が塗布された金属板であって、塗膜の平均厚さが1〜3μmでかつ前記金属粒子の長径が塗膜の平均厚さの2倍を超える粒径を有していることを特徴とする塗装金属板。
【請求項4】
前記金属粒子の導電性確率が95%以上であることを特徴とする請求項3に記載の塗装金属板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−205018(P2006−205018A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18965(P2005−18965)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】