塗装装置
【課題】本発明は、洗浄液がもつキャビテーション振動(運動エネルギー)の減衰を少なくして、洗浄液の使用量を少なくすることを可能にした塗装装置を提供することを課題とする。
【解決手段】塗装装置10は、ブロック体12に塗料が通る塗料管路11を設け、この塗料管路11の上流部に洗浄液とエアとをミキシングさせて噴射する洗浄液噴射バルブユニット14を接続し、塗料管路11の中間部11cに塗装色を切り替え所定の色の塗料を塗料管路11に供給する複数の塗料バルブユニット13を接続し、塗料管路11の下流部11bに塗料噴射装置18を接続するとともに、塗料管路11の断面は非円形断面に形成してなり、塗料管路11に残存する塗料を除去するものである。
【解決手段】塗装装置10は、ブロック体12に塗料が通る塗料管路11を設け、この塗料管路11の上流部に洗浄液とエアとをミキシングさせて噴射する洗浄液噴射バルブユニット14を接続し、塗料管路11の中間部11cに塗装色を切り替え所定の色の塗料を塗料管路11に供給する複数の塗料バルブユニット13を接続し、塗料管路11の下流部11bに塗料噴射装置18を接続するとともに、塗料管路11の断面は非円形断面に形成してなり、塗料管路11に残存する塗料を除去するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料管路に残存する塗料を除去する洗浄機構を有する塗装装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は従来の技術に係る洗浄機構を備えた塗装装置の構成図であり、被塗装物へ塗料を噴射する塗装装置100の上流には、塗料の色を切り替えて所定の塗料を塗料管路に供給する色切替装置101が連結され、この色切替装置101の上流には、洗浄液とエアとをミキシングさせて噴射する洗浄機構102が連結されている。
【0003】
塗料の色を切り替えるときには、洗浄機構102から色切替装置101に、洗浄液とエアとを交互に供給して、塗料管路内に残存する塗料を除去するようにした。
しかし、洗浄液の使用量が増えるという問題があり、改良の余地があった。
【0004】
対策として、洗浄液の使用量を減らす技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−170284号(図3)
【0005】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図12は従来の技術に係る塗料管路に設けた洗浄液吐出部及びエア吐出部の断面図である。ブロック体107には塗料管路106が設けられ、この塗料管路106の上流部には、塗料管路106の外周に沿って接線方向に伸長して洗浄液を吐出する洗浄液通路108が設けられ、この洗浄液通路108とは平行で逆向きとなるように塗料管路106の外周に沿って接線方向に伸長してエアを吐出するエア通路109が設けられている。
そして、塗料管路106に洗浄液とエアとを同時に吐出して、洗浄液とエアとで旋回流を形成し、塗料管路106の内壁に残存する塗料を除去する。
【0006】
図13は図12の作用図であり、塗料管路106の内壁106aに沿って流れる旋回流の流れは矢印sによって示されている。
塗料管路106の長さLが、塗料管路106の内径dに較べて十分に長い場合には、旋回流の運動エネルギーは、塗料管路106の途中で減衰する。塗料管路106の下流部では、上流部に較べて旋回流の運動エネルギーは大幅に低下する。運動エネルギーが低下すれば、旋回流による洗浄効果が十分に得られなくなる虞がある。つまり、特許文献1の技術では、塗料管路の内径に較べて塗料管路の長さが長い場合に課題が残る。
【0007】
この他、洗浄液の使用量を減らすための対策として、塗料管路にエアとミキシングさせた洗浄液を断続的に供給する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特開平6−71202号(図1)
【0008】
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図14は従来の技術の基本構成を説明する図であり、塗料管路111を有するブロック体112の上流には、塗料管路111とは別に洗浄液充填配管113が設けられ、この洗浄液充填配管113の中間部には複数のエア供給口を介して各々エアをオン・オフするバルブ114・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)が設けられ、これらのバルブ114・・・にはエア配管115・・・が連結されている。
【0009】
塗料管路111を洗浄するときには、洗浄液を充填しておいた洗浄液充填配管113に設けた複数のバルブ114・・・を順次開閉させ、エアの圧力で塗料管路111に洗浄液を断続的に供給することで残留塗料を除去する。
【0010】
しかし、特許文献2の洗浄機構では、洗浄液充填配管113、バルブ114・・・、エア配管115・・・及び制御系などの部品点数が増加し、構成が複雑化し費用が嵩む。加えて、装置スペースが嵩むなどの問題がある。
【0011】
ところで、塗料管路は、通常、円断面を有している。円断面を有する塗料管路では、塗料管路の中心は壁面から同じ距離にあり、壁面で反射した洗浄液の波同士が、円形断面の中心点に到達するまでに時間差は生じ難かった。このため、塗料管路の壁面で反射した洗浄液の波同士が、塗料管路の中心点で衝突し、互いに打ち消し合い、洗浄液の運動エネルギーの減衰につながっていた。洗浄液のキャビテーション振動(洗浄液の運動エネルギー)が減衰するので、洗浄液の洗浄能力が損なわれていた。
【0012】
そのため、洗浄液の使用量が増えるなどランニングコストが嵩んでいた。
洗浄液がもつ運動エネルギーの減衰を少なくして、洗浄液の使用量を少なくする技術が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、洗浄液がもつキャビテーション振動(運動エネルギー)の減衰を少なくして、洗浄液の使用量を少なくすることを可能にした塗装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、ブロック体に設けた塗料管路の断面形状を楕円形に形成し塗料管路を洗浄したところ、洗浄液の使用量を減らしながら、良好な洗浄結果を得ることができるという知見を得た。
【0015】
すなわち、請求項1に係る発明は、ブロック体に塗料が通る塗料管路を設け、この塗料管路の中間部に塗料を供給する複数のお互いに異なる塗装色に対応した塗料バルブユニットを接続し、塗料管路の下流部に塗料を被塗装物に噴射する塗料噴射装置を有する塗装装置において、塗料管路の上流部にキャビテーションを有する洗浄液を噴射する洗浄液噴射バルブユニットを設置し、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明では、洗浄液噴射ノズルは、塗料管路と一体的に且つ密着させて配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明では、塗料管路の断面は、楕円であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明では、塗料管路の断面は円形であり、洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の中心からオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射することを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの材質と、ブロック体の材質とは略同一の材質にすることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、モータにより駆動させることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、洗浄液の内部に気体を間欠的に噴射してキャビテーションを発生させることを特徴とする。
【0022】
請求項8に係る発明では、塗料管路の断面は、非円形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられているので、塗料管路にキャビテーションを有する洗浄液が円滑に供給される。加えて、キャビテーションを有する洗浄液によって、塗料管路に付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0024】
請求項2に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、ブロック体の塗料管路と一体的に且つ密着させて配置されている。このため、洗浄液噴射バルブユニットで発生した洗浄液のキャビテーション振動がブロック体に伝達され、このブロック体に設けた塗料管路を振動させる。洗浄液噴射バルブユニットによって塗料管路を振動させるとともに、この塗料管路に洗浄液を当てるようにしたので、塗料管路に残存した塗料を一層効果的に除去することができる。
【0025】
請求項3に係る発明では、塗料管路の断面は楕円形に形成されている。断面が楕円形であれば、壁面で反射した複数の波が、楕円形断面の中心点に到達するまでに時間差が生じる。時間差が生じれば、洗浄液の波が中心点に集中して衝突し合うことが少なくなり、洗浄液の運動エネルギーの減衰を抑えることができる。
【0026】
従来、円形断面では、塗料管路の中心は壁面から同じ距離にあり、壁面で反射した洗浄液の波同士が、円形断面の中心点に到達するまでに時間差はなかった。このため、塗料管路の壁面で反射した洗浄液の波同士が、塗料管路の中心点で衝突し、互いに打ち消し合い、洗浄液の運動エネルギーの減衰につながっていた。洗浄液の運動エネルギーが減衰すれば、洗浄液の洗浄能力が損なわれる虞があった。
【0027】
この点、本発明では、壁面で反射した洗浄液の波同士が、楕円形断面の中心点に到達するまでに時間差が出るので、楕円形断面の中心点で、洗浄液の運動エネルギーの減衰が起こり難くなる。このため、塗料管路の下流部において、洗浄液がもつ洗浄力が損なわれ難くなり、洗浄力を高く保つことができる。洗浄液の洗浄力が高く保たれれば、洗浄液の使用量が抑えられ、塗料管路に残存する塗料を効率良く除去することができる。
また、塗料管路の形状を変更するだけなので、装置費用の上昇を抑えることができる。
【0028】
請求項4に係る発明では、塗料管路の断面は円形であり、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の中心からオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射するようにしたので、塗料管路の軸回りに、洗浄液のうず流を発生させることができる。
この結果、泡状を呈するエアと洗浄液からなる混合体によって、塗料管路に付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0029】
請求項5に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの材質と、ブロック体の材質とは略同一の材質にするので、略同一の固有振動数を有する。このため、洗浄液噴射バルブユニットで発生した振動は、ブロック体で減衰され難くなり、ブロック体に設けた塗料管路に効率良く伝達されるので、塗料管路に残存した塗料をより効果的に除去することができる。
【0030】
請求項6に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、モータにより駆動させるので、洗浄に最適なバブリング比率をもつ洗浄液を塗料管路に供給することができる。すなわち、キャビテーション振動の最大値を維持させることができる。従って、塗料管路に付着した塗料の洗浄効果を最大にするようにモータの運動を調節することができる。これにより、洗浄液の消費量を抑えることができる。
【0031】
請求項7に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、洗浄液の内部に気体を間欠的に噴射してキャビテーションを発生させるものであり、このバブリングがキャビテーション振動を発生させ、このキャビテーション振動が塗料管路に伝達され、塗料管路が振動するので、高い洗浄効果が得られる。
【0032】
請求項8に係る発明では、塗料管路の断面は、非円形であるので、壁面で反射した複数の波が、楕円形断面の中心点に到達するまでに時間差が生じる。時間差が生じれば、洗浄液の波が中心点に集中して衝突し合うことが少なくなり、洗浄液の運動エネルギーの減衰を抑えることができる。このため、塗料管路の下流部において、洗浄液がもつ洗浄力が損なわれ難くなり、洗浄力を高く保つことができる。洗浄液の洗浄力が高く保たれれば、洗浄液の使用量が抑えられ、塗料管路に残存する塗料を効率良く除去することができる。
また、塗料管路の形状を変更するだけなので、装置費用の上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る塗装装置の断面図であり、塗装装置10は、内部に塗料管路11をもつブロック体12と、このブロック体12に取り付け所定色の塗料を供給又は停止する塗料バルブユニット13・・・と、ブロック体12に取り付け洗浄液とエアとをミキシングさせて噴射して塗料管路11を洗浄する洗浄液噴射バルブユニット14と、を備えている。
【0034】
塗料管路11の上流部11aには、洗浄液噴射バルブユニット14の噴射室15が接続され、塗料管路11の中間部11cには、塗料バルブユニット13・・・の塗料出口17・・・が接続され、塗料管路11の下流部11bには、被塗装物へ塗料を噴射する塗料噴射装置18が接続されている。
詳細には、塗料管路11の下流部11bには、出力継手21及び出力チューブ22を介して塗料噴射装置18が連結されている。
【0035】
複数の塗料バルブユニット13・・・は、所定の色の塗料を塗料管路11に供給するとともに塗装色を切り替える部材であり、ブロック体12の上面12u及び下面12sに複数個取り付けられている。
【0036】
塗料バルブユニット13・・・の塗料出口17・・・は、ブロック体12に開けた洗浄液噴射ノズルを介して塗料管路11に連通されている。また、塗料バルブユニット13・・・の塗料出口17・・・には、ニードル弁23・・・が配設され、各塗料の塗料管路11へのオン・オフは、これらニードル弁23・・・を上下させることにより行うようにした。
【0037】
洗浄機構10のブロック体12には、色を切り替えるときに、塗料管路11を洗浄する洗浄液噴射バルブユニット14が配設されている。
【0038】
洗浄液噴射バルブユニット14は、ブロック体12に一体的に結合されるように設けられている。シールを介してボルト結合することが望ましい。詳細には、洗浄液噴射バルブユニット14は、ブロック体12の塗料管路11の上流部11aに接続されている。なお、洗浄液噴射バルブユニット14の材質と、ブロック体12の材質とは同一の材質とした。
すなわち、洗浄液噴射ノズル40は、塗料管路11と一体的に且つ密着させて配置されている。
【0039】
洗浄機構10は、その左右端部が緩衝材25、25及び締結部材26、26を介して支持ステー27、27によって支持されている。つまり、洗浄機構10は緩衝材25、25によりマウントされている。緩衝材25は、例えば、ラバーブッシュである。このため、洗浄液噴射バルブユニット14で発生した洗浄液とエアの混合によるキャビテーション振動は、ブロック体12に効率良く伝達されるが、支持ステー27、27には伝達され難くなり、洗浄液噴射バルブユニット14のキャビテーション振動(運動エネルギー)は、塗料管路11の洗浄に無駄なく作用するものとなる。
洗浄液噴射バルブユニット14の詳細については次図で説明する。
【0040】
塗料噴射装置18に塗料を供給するときには、塗料バルブユニット13・・・の内の所定の塗料バルブユニットを開け、その他の塗料バルブユニットを閉じて、ブロック体12に形成した塗料管路11に、所定の色の塗料を供給する。
【0041】
塗料噴射装置18に供給する塗料の色を切り替えるときには、塗料バルブユニット13・・・を全て閉じた後、塗料管路11の上流部11aにエアを含む洗浄液を所定の圧力で供給し、塗料管路11に残存する塗料を除去するようにした。
【0042】
図2は本発明に係る塗装装置に備えられている洗浄液噴射バルブユニットの断面図であり、洗浄液噴射バルブユニット14は、洗浄液とエアとをミキシングさせた混合体が供給される噴射室15を有するノズルブロック31と、このノズルブロック31に差し込まれ噴射室15に洗浄液及びエアを供給又は遮断する噴射ニードル弁32と、この噴射ニードル弁32を上下方向に駆動するシリンダ部33と、を主要な構成要素とし、洗浄液の内部に間欠的にエアを噴射することにより、洗浄液と気体(エア)のバブリング(キャビテーション)を発生させるものである。
【0043】
ここで、バブリング(キャビテーション)とは、洗浄液とエアとが混合されて形成させた泡状を呈する混合体であって、この泡のキャビテーション振動によって、塗料管路の壁面に付着した塗料の除去効果を超音波洗浄機のように大幅に高めることができる。
また、洗浄液中にキャビテーションを発生させるのであれば、洗浄液とエアの混合に限定されず、プロペラのようなもので、洗浄液中にキャビテーションを発生させても良い。
【0044】
以下、洗浄液噴射バルブユニット14の詳細な構造を説明する。
洗浄液噴射バルブユニット14のノズルブロック31と塗料管路11につながっている噴射室15の間には、洗浄液とエアとを混合させた混合体を塗料管路11に供給する洗浄液噴射ノズル40が設けられている。
本実施例において、洗浄液噴射ノズル40は、ノズルブロック31に備えた噴射室15を介して塗料管路11につながっているが、噴射室15を介することなく直接塗料管路11につなぐことは差し支えない。
【0045】
ノズルブロック31に設けた噴射室15の上方には、この噴射室15に連通する空間34が設けられ、この空間34は、シートパッキン35を介して上方から吊り下げられた区画部材36によってエア室37と洗浄液室38とに区画され、エア室37にはエア供給管41が連結され、洗浄液室38にはエルボ継手42を介して洗浄液供給管43が連結されている。
【0046】
シリンダ部33は、シリンダ45と、このシリンダ45を摺動するピストン46と、このピストン46に取り付けられ上下に摺動するピストンロッド47と、シリンダ45のヘッド部を覆うヘッド部材48と、シリンダ部33の上端部に取り付けたカバー部材49と、このカバー部材49とピストン46間に介在させピストンロッド47が延びる方向に押圧するばね部材51とを備える。本実施例において、ピストンロッド47の先端部には、噴射ニードル弁32が一体に形成されている。このため、部品点数を抑えることができる。
【0047】
シリンダ45の下部には、シリンダ45にエアを供給するエア口52が設けられ、このエア口52にはエルボ管53を介して噴射ニードル弁32を上下方向に駆動するためのエアを供給するエア管54が連結されている。
ヘッド部材48には、噴射ニードル弁32の軸部56に嵌めるシール部材57と、これらのシール部材57にワッシャ58を介して嵌める調整バネ59と、この調整バネ59の上方からねじ込んだ押さえ部材61と、が取り付けられ、この押さえ部材61のねじ込み量を変化させることで、噴射ニードル弁32のストロークを調整可能にした。図中、60は連結ナット、62は空気抜き穴である。
【0048】
図3は図1の3−3線断面図であり、洗浄液噴射バルブユニット14の噴射軸63は、塗料管路11の軸11Jに垂直に配置するものである。加えて、洗浄液噴射ノズル40は、楕円の中心11Jからピッチfだけオフセットさせた位置に配置される。噴射軸63と塗料管路11の軸11Jとを垂直に配置するので、塗料管路11の軸11J回りに、洗浄液のうず流を発生させることができる。
【0049】
この場合に、塗料管路11の内壁の断面は楕円であるから、内壁の断面が円である場合に較べて、うず流の存続時間が長くなる。従って、塗料管路11の長さが塗料管路11の内径に較べて、あまり大きくない場合には、塗料管路の洗浄効果を高めることができる。
なお、塗料管路11の断面形状は、楕円にしたが、楕円形であれば、その形状は任意である。また、塗料管路11の断面形状が楕円であれば、楕円の中心11Jに向かって洗浄液を噴射しても、うず流を発生させることができる。
【0050】
図4は図1の4−4線断面図であり、ブロック体12には、断面楕円形の塗料管路11が形成されるとともに、締結部材26、26及び緩衝材25、25を介して支持ステー27に取り付けられている。この楕円形の塗料管路11は、ブロック体12の上流部と下流部の間に一様な大きさで設けられている。
【0051】
以上に述べた塗装装置の作用を次に述べる。
図5は本発明に係る塗装装置に備える塗料管路の原理図である。
(a)において、実施例が示されており、塗料管路11の断面は楕円形に形成した。断面が楕円形であれば、塗料管路11の中心11caは壁面11hから同じ距離にはないので、壁面11hで反射した洗浄液の泡同士が、楕円形断面の中心部で衝突したときに、互いに打ち消し合うことが少なくなる。
【0052】
(b)において、比較例が示されており、塗料管路11の断面は円形に形成されているので、塗料管路11の壁面11hで反射した洗浄液の波同士が、壁面から同じ距離に位置する円形断面の中心11cbで衝突し、互いに打ち消し合うことが多い。従って、塗料管路11の下流部(図1の符号11b)では、洗浄液のキャビテーション振動が減衰してしまう。
【0053】
(a)に戻って、本発明では、塗料管路11の中心11caで洗浄液の波同士の打ち消し合いが大幅に減るので、洗浄液のキャビテーション振動の減衰を抑えることができる。洗浄液がもつキャビテーション振動の減衰を少なくできるので、塗料管路11の全長にわたって洗浄液がもつ洗浄力が損なわれ難くなり、洗浄力を高く保つことができる。洗浄液の洗浄力が高く保たれるので、洗浄液の使用量を抑えながら、塗料管路11に残存する塗料を効率良く除去することができる。
【0054】
図6は本発明に係る塗装装置の作用説明図である。
(a)において、塗料管路11に洗浄液とエアとの混合物を供給する前の状態であり、塗料管路11の内壁には残存塗料が付着している。
【0055】
(b)において、洗浄液噴射バルブユニット14をオンにして、塗料管路11に洗浄液とエアとの混合物を供給する状態である。洗浄液噴射バルブユニット14から噴射室15に空気を含む洗浄液が噴射され塗料管路11を通過するとともに、洗浄液噴射バルブユニット14にブロック体12を一体的に設ける。
なお、洗浄液として、例えば、シンナー等の有機溶剤が好適である。
【0056】
洗浄液噴射バルブユニット14は、ブロック体12に一体的に設けるので、洗浄液噴射バルブユニット14で発生した洗浄液の運動エネルギーは、ブロック体12に効率良く伝達され、このブロック体12に設けた塗料管路11を振動させる。塗料管路11が振動するとともに、この塗料管路11に洗浄液を供給して、その壁面11hに当てるようにしたので、塗料が剥離されやすくなり、塗料管路11に残存した塗料を一層効果的に除去させることができる。
【0057】
また、本実施例において、洗浄液噴射バルブユニット14の材質と、ブロック体12の材質とは同一の材質にするので、同一の固有振動数を有する。このため、洗浄液噴射バルブユニット14で発生した振動がブロック体12で減衰することなく、この振動はブロック体12に設けた塗料管路11に効率良く伝達される。従って、塗料管路11に残存した塗料を一層効果的に除去することができる。
【0058】
図7は本発明に係る洗浄機構と比較例に係る洗浄機構の間の塗料管路洗浄効果を比較したグラフである。縦軸は光が洗浄液を透過する比率としての透過率(t)を示し、横軸は塗料管路の洗浄に用いる洗浄液の容積(cm3)を示す。
【0059】
ここで、透過率(t)とは、光が洗浄液を透過する割合を、透過後の光強度(I)と透過前の光強度(I0)との比率で表したものであり、t=(I/I0)×100(%)により求めることができる。
【0060】
図1を併せて参照し、洗浄液は、塗料管路11を洗浄するとともに、この塗料管路11の下流部11bに接続される出力継手21、出力チューブ22及び塗料噴射装置18を通過することで、これら要素の管路の内壁を洗浄するものである。本実験において、出力継手以降の要素は同一なものを使用した。
【0061】
例えば、塗料管路を通過する洗浄液の流量が少ないときには、塗料管路11を通過した洗浄液の透過率は低い値を示す。これは、塗料管路に塗料が多く付着しており、洗浄液に洗浄される塗料が多いことを意味する。塗料管路11を通過する洗浄液の流量が多くなるに伴い、透過率は高くなる。透過率は高くなることは、塗料管路内に残留する塗料の量が減り、塗料管路11の洗浄が進んできたことを示すものである。
【0062】
グラフにおいて、第1透過率曲線A1は、エアと洗浄液を交互に供給するときの透過率の推移を、第2透過率曲線はA2は、洗浄機構をブロック体とは分離させたときの透過率の推移を、第3透過率曲線A3は、本発明に係る実施例のときの透過率の推移を各々示すものである。
【0063】
ここで、洗浄完了時の判定基準を透過率73%に達したときにすると、第1透過率曲線A1によれば、必要な洗浄液の量は110cm3、第2透過率曲線A2によれば、必要な洗浄液の量は73cm3であり、第3透過率曲線A3によれば、必要な洗浄液の量は65cm3であった。
従って、本発明に係る洗浄機構10によれば、より少ない洗浄液で塗料管路の洗浄を行うことができる。つまり、洗浄液の洗浄力が高く保たれ、洗浄液の使用量が抑えられる。
【0064】
図8は図2の別実施例図であり、図2と異なる点として、洗浄液噴射バルブユニット14Bには、噴射軸63を上下駆動する駆動源としてリニアモータ66及びこのリニアモータ66に信号を伝達するドライバ67と、洗浄液供給管43Bの上流に接続され洗浄液の流量を調整する第1レギュレータ69と、エア供給管41Bの上流に接続されエアの流量を調整する第2レギュレータ72と、塗料管路11に設け塗料管路11内に噴射された泡を含む洗浄液の圧力を検出する圧力センサ73と、直線運動のリニアモータ66、第1レギュレータ69及び第2レギュレータ72を制御する制御装置74とが備えられている点にある。上記構成によって、洗浄液のよりきめ細かな噴射制御を行うことが可能になる。その他の点に大きく変わるところはない。
この実施例では、圧力センサにより、塗料管路内のキャビテーション振動が最大となるように、リニアモータによって、洗浄液とエアの混合比率を制御して、燃料管路に付着した塗料の洗浄効果が最大となるように調節できるという優れた効果を有する。これにより、洗浄液の使用コストを大幅に低減できる。
【0065】
図9は本発明に係る噴射室及び塗料管路の変形例を説明する図である。
(a)において、ノズルブロック31Bに設ける噴射室15Bの断面形状は、楕円をさらに変形させ変形円にしたものである。この噴射室15Bに連結される塗料管路の断面形状は、噴射室15Bと同一の断面形状に形成されている。
【0066】
(b)において、ノズルブロック31Cに設ける噴射室15Cの断面形状は、縦長の略矩形にしたものである。この噴射室15Cに連結される塗料管路の断面形状は、噴射室15Cと同一の断面形状に形成されている。なお、略矩形の各頂点は所定の半径(R)にて丸めるようにした。
(c)において、ノズルブロック31Dに設ける噴射室15Dの断面形状は、略6角形にしたものである。この噴射室15Dに連結される塗料管路の断面形状は、噴射室15Dと同一の断面形状に形成されている。なお、略6角形の各頂点は所定の半径(R)にて丸めるようにした。
【0067】
図10は塗料管路へ接続する洗浄液噴射ノズルの変形例を説明する図である。
(a)において、洗浄液噴射バルブユニット14Bと塗料管路11Bの間には、洗浄液とエアとを混合させた混合体を供給する洗浄液噴射ノズル40aが設けられ、この洗浄液噴射ノズル40aは、洗浄液噴射バルブユニット14Bから塗料管路11Bの外周接線方向に延びるとともに、塗料管路11Bに接続されている。図中、矢印は混合体の流れる方向を示す。つまり、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズル40aは、塗料管路11の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられている。
塗料管路11Bの断面は円形であり、洗浄液噴射ノズル40aは、塗料管路11Bの断面の中心Jaからオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射するので、塗料管路11Bの軸Ja回りに、洗浄液のうず流を発生させることができる。
この結果、泡状を呈するエアと洗浄液からなる混合体によって、塗料管路11Bに付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0068】
ノズルブロック31B及び洗浄液噴射ノズル40aは、塗料管路11Bの中心からオフセットした位置に配置するとともに、塗料管路11Bの外周接線方向に延びている。ここで、洗浄液噴射ノズル40aは、鉛直方向上下向きに配置されている。
【0069】
(b)において、ノズルブロック31Bを塗料管路11Bの中心上方に配置するとともに、塗料管路11Bの外周接線方向に延びている。ここで、ノズルブロック31Bから塗料管路11Bに延びている洗浄液噴射ノズル40bは、塗料管路11Bの中心上方から斜め下方に配置されている。
【0070】
洗浄液噴射ノズル40a、洗浄液噴射ノズル40bは、ともに塗料管路11Bの外周接線方向に延びているので、洗浄液とエアとを混合させた泡状を呈する混合体が塗料管路11Bの外周を含む壁面11Bhに沿うように供給される。このため、塗料管路11Bに混合体が円滑に供給されるとともに、泡状を呈する混合体によって、塗料管路11Bに付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0071】
なお、塗料管路11Cの断面は非円形であっても良い。塗料管路11Cの断面が非円形に形成されていれば、外周を含む壁面11Chで反射した複数の波が、非円形断面の中心点に到達するまでに時間差が生じる。時間差が生じれば、洗浄液の波が中心点に集中して衝突し合うことが少なくなり、洗浄液の運動エネルギーの減衰を抑えることができる。
【0072】
尚、本発明に係る塗装装置は、実施の形態では自動車の塗装工程に適用したが、機械装置、電機装置にも適用可能であり、一般の工業製品の塗装に適用することは差し支えない。
【0073】
また、請求項1では、洗浄液噴射バルブユニットは、ブロック体と分離して配設することは差し支えない。さらに、洗浄液噴射バルブユニットの噴射軸と塗料管路の軸とのなす角度は任意の角度で差し支えない。また、洗浄液にキャビテーションを発生させるものであれば、洗浄液をプロペラ等で撹拌する機構でも差し支えない。
この他、請求項2では、洗浄液噴射バルブユニットの材質と、ブロック体の材質とは異なる材質にすることは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、色切替機能をもつ自動車の塗装工程に利用すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る塗装装置の断面図である。
【図2】本発明に係る塗装装置に備えられている洗浄液噴射バルブユニットの断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係る塗装装置に備える塗料管路の原理図である。
【図6】本発明に係る塗装装置の作用説明図である。
【図7】本発明に係る洗浄機構と比較例に係る洗浄機構の間の塗料管路洗浄効果を比較したグラフである。
【図8】図2の別実施例図である。
【図9】本発明に係る噴射室及び塗料管路の変形例を説明する図である。
【図10】塗料管路へ接続する洗浄液噴射ノズルの変形例を説明する図である。
【図11】従来の技術に係る洗浄機構を備えた塗装装置の構成図である。
【図12】従来の技術に係る塗料管路に設けた洗浄液吐出部及びエア吐出部の断面図である。
【図13】図12の作用図である。
【図14】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
10…塗装装置、11、11B、11C…塗料管路、11a…塗料管路の上流部、11b…塗料管路の下流部、11J…塗料管路の軸、12、12B…ブロック体、13…塗料バルブユニット、14、14B…洗浄液噴射バルブユニット、18…塗料噴射装置、40、40a、40b…洗浄液噴射ノズル、63…洗浄液噴射バルブユニットの噴射軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料管路に残存する塗料を除去する洗浄機構を有する塗装装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は従来の技術に係る洗浄機構を備えた塗装装置の構成図であり、被塗装物へ塗料を噴射する塗装装置100の上流には、塗料の色を切り替えて所定の塗料を塗料管路に供給する色切替装置101が連結され、この色切替装置101の上流には、洗浄液とエアとをミキシングさせて噴射する洗浄機構102が連結されている。
【0003】
塗料の色を切り替えるときには、洗浄機構102から色切替装置101に、洗浄液とエアとを交互に供給して、塗料管路内に残存する塗料を除去するようにした。
しかし、洗浄液の使用量が増えるという問題があり、改良の余地があった。
【0004】
対策として、洗浄液の使用量を減らす技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−170284号(図3)
【0005】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図12は従来の技術に係る塗料管路に設けた洗浄液吐出部及びエア吐出部の断面図である。ブロック体107には塗料管路106が設けられ、この塗料管路106の上流部には、塗料管路106の外周に沿って接線方向に伸長して洗浄液を吐出する洗浄液通路108が設けられ、この洗浄液通路108とは平行で逆向きとなるように塗料管路106の外周に沿って接線方向に伸長してエアを吐出するエア通路109が設けられている。
そして、塗料管路106に洗浄液とエアとを同時に吐出して、洗浄液とエアとで旋回流を形成し、塗料管路106の内壁に残存する塗料を除去する。
【0006】
図13は図12の作用図であり、塗料管路106の内壁106aに沿って流れる旋回流の流れは矢印sによって示されている。
塗料管路106の長さLが、塗料管路106の内径dに較べて十分に長い場合には、旋回流の運動エネルギーは、塗料管路106の途中で減衰する。塗料管路106の下流部では、上流部に較べて旋回流の運動エネルギーは大幅に低下する。運動エネルギーが低下すれば、旋回流による洗浄効果が十分に得られなくなる虞がある。つまり、特許文献1の技術では、塗料管路の内径に較べて塗料管路の長さが長い場合に課題が残る。
【0007】
この他、洗浄液の使用量を減らすための対策として、塗料管路にエアとミキシングさせた洗浄液を断続的に供給する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特開平6−71202号(図1)
【0008】
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図14は従来の技術の基本構成を説明する図であり、塗料管路111を有するブロック体112の上流には、塗料管路111とは別に洗浄液充填配管113が設けられ、この洗浄液充填配管113の中間部には複数のエア供給口を介して各々エアをオン・オフするバルブ114・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)が設けられ、これらのバルブ114・・・にはエア配管115・・・が連結されている。
【0009】
塗料管路111を洗浄するときには、洗浄液を充填しておいた洗浄液充填配管113に設けた複数のバルブ114・・・を順次開閉させ、エアの圧力で塗料管路111に洗浄液を断続的に供給することで残留塗料を除去する。
【0010】
しかし、特許文献2の洗浄機構では、洗浄液充填配管113、バルブ114・・・、エア配管115・・・及び制御系などの部品点数が増加し、構成が複雑化し費用が嵩む。加えて、装置スペースが嵩むなどの問題がある。
【0011】
ところで、塗料管路は、通常、円断面を有している。円断面を有する塗料管路では、塗料管路の中心は壁面から同じ距離にあり、壁面で反射した洗浄液の波同士が、円形断面の中心点に到達するまでに時間差は生じ難かった。このため、塗料管路の壁面で反射した洗浄液の波同士が、塗料管路の中心点で衝突し、互いに打ち消し合い、洗浄液の運動エネルギーの減衰につながっていた。洗浄液のキャビテーション振動(洗浄液の運動エネルギー)が減衰するので、洗浄液の洗浄能力が損なわれていた。
【0012】
そのため、洗浄液の使用量が増えるなどランニングコストが嵩んでいた。
洗浄液がもつ運動エネルギーの減衰を少なくして、洗浄液の使用量を少なくする技術が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、洗浄液がもつキャビテーション振動(運動エネルギー)の減衰を少なくして、洗浄液の使用量を少なくすることを可能にした塗装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、ブロック体に設けた塗料管路の断面形状を楕円形に形成し塗料管路を洗浄したところ、洗浄液の使用量を減らしながら、良好な洗浄結果を得ることができるという知見を得た。
【0015】
すなわち、請求項1に係る発明は、ブロック体に塗料が通る塗料管路を設け、この塗料管路の中間部に塗料を供給する複数のお互いに異なる塗装色に対応した塗料バルブユニットを接続し、塗料管路の下流部に塗料を被塗装物に噴射する塗料噴射装置を有する塗装装置において、塗料管路の上流部にキャビテーションを有する洗浄液を噴射する洗浄液噴射バルブユニットを設置し、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明では、洗浄液噴射ノズルは、塗料管路と一体的に且つ密着させて配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明では、塗料管路の断面は、楕円であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明では、塗料管路の断面は円形であり、洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の中心からオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射することを特徴とする。
【0019】
請求項5に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの材質と、ブロック体の材質とは略同一の材質にすることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、モータにより駆動させることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、洗浄液の内部に気体を間欠的に噴射してキャビテーションを発生させることを特徴とする。
【0022】
請求項8に係る発明では、塗料管路の断面は、非円形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられているので、塗料管路にキャビテーションを有する洗浄液が円滑に供給される。加えて、キャビテーションを有する洗浄液によって、塗料管路に付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0024】
請求項2に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、ブロック体の塗料管路と一体的に且つ密着させて配置されている。このため、洗浄液噴射バルブユニットで発生した洗浄液のキャビテーション振動がブロック体に伝達され、このブロック体に設けた塗料管路を振動させる。洗浄液噴射バルブユニットによって塗料管路を振動させるとともに、この塗料管路に洗浄液を当てるようにしたので、塗料管路に残存した塗料を一層効果的に除去することができる。
【0025】
請求項3に係る発明では、塗料管路の断面は楕円形に形成されている。断面が楕円形であれば、壁面で反射した複数の波が、楕円形断面の中心点に到達するまでに時間差が生じる。時間差が生じれば、洗浄液の波が中心点に集中して衝突し合うことが少なくなり、洗浄液の運動エネルギーの減衰を抑えることができる。
【0026】
従来、円形断面では、塗料管路の中心は壁面から同じ距離にあり、壁面で反射した洗浄液の波同士が、円形断面の中心点に到達するまでに時間差はなかった。このため、塗料管路の壁面で反射した洗浄液の波同士が、塗料管路の中心点で衝突し、互いに打ち消し合い、洗浄液の運動エネルギーの減衰につながっていた。洗浄液の運動エネルギーが減衰すれば、洗浄液の洗浄能力が損なわれる虞があった。
【0027】
この点、本発明では、壁面で反射した洗浄液の波同士が、楕円形断面の中心点に到達するまでに時間差が出るので、楕円形断面の中心点で、洗浄液の運動エネルギーの減衰が起こり難くなる。このため、塗料管路の下流部において、洗浄液がもつ洗浄力が損なわれ難くなり、洗浄力を高く保つことができる。洗浄液の洗浄力が高く保たれれば、洗浄液の使用量が抑えられ、塗料管路に残存する塗料を効率良く除去することができる。
また、塗料管路の形状を変更するだけなので、装置費用の上昇を抑えることができる。
【0028】
請求項4に係る発明では、塗料管路の断面は円形であり、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、塗料管路の断面の中心からオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射するようにしたので、塗料管路の軸回りに、洗浄液のうず流を発生させることができる。
この結果、泡状を呈するエアと洗浄液からなる混合体によって、塗料管路に付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0029】
請求項5に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットの材質と、ブロック体の材質とは略同一の材質にするので、略同一の固有振動数を有する。このため、洗浄液噴射バルブユニットで発生した振動は、ブロック体で減衰され難くなり、ブロック体に設けた塗料管路に効率良く伝達されるので、塗料管路に残存した塗料をより効果的に除去することができる。
【0030】
請求項6に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、モータにより駆動させるので、洗浄に最適なバブリング比率をもつ洗浄液を塗料管路に供給することができる。すなわち、キャビテーション振動の最大値を維持させることができる。従って、塗料管路に付着した塗料の洗浄効果を最大にするようにモータの運動を調節することができる。これにより、洗浄液の消費量を抑えることができる。
【0031】
請求項7に係る発明では、洗浄液噴射バルブユニットは、洗浄液の内部に気体を間欠的に噴射してキャビテーションを発生させるものであり、このバブリングがキャビテーション振動を発生させ、このキャビテーション振動が塗料管路に伝達され、塗料管路が振動するので、高い洗浄効果が得られる。
【0032】
請求項8に係る発明では、塗料管路の断面は、非円形であるので、壁面で反射した複数の波が、楕円形断面の中心点に到達するまでに時間差が生じる。時間差が生じれば、洗浄液の波が中心点に集中して衝突し合うことが少なくなり、洗浄液の運動エネルギーの減衰を抑えることができる。このため、塗料管路の下流部において、洗浄液がもつ洗浄力が損なわれ難くなり、洗浄力を高く保つことができる。洗浄液の洗浄力が高く保たれれば、洗浄液の使用量が抑えられ、塗料管路に残存する塗料を効率良く除去することができる。
また、塗料管路の形状を変更するだけなので、装置費用の上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る塗装装置の断面図であり、塗装装置10は、内部に塗料管路11をもつブロック体12と、このブロック体12に取り付け所定色の塗料を供給又は停止する塗料バルブユニット13・・・と、ブロック体12に取り付け洗浄液とエアとをミキシングさせて噴射して塗料管路11を洗浄する洗浄液噴射バルブユニット14と、を備えている。
【0034】
塗料管路11の上流部11aには、洗浄液噴射バルブユニット14の噴射室15が接続され、塗料管路11の中間部11cには、塗料バルブユニット13・・・の塗料出口17・・・が接続され、塗料管路11の下流部11bには、被塗装物へ塗料を噴射する塗料噴射装置18が接続されている。
詳細には、塗料管路11の下流部11bには、出力継手21及び出力チューブ22を介して塗料噴射装置18が連結されている。
【0035】
複数の塗料バルブユニット13・・・は、所定の色の塗料を塗料管路11に供給するとともに塗装色を切り替える部材であり、ブロック体12の上面12u及び下面12sに複数個取り付けられている。
【0036】
塗料バルブユニット13・・・の塗料出口17・・・は、ブロック体12に開けた洗浄液噴射ノズルを介して塗料管路11に連通されている。また、塗料バルブユニット13・・・の塗料出口17・・・には、ニードル弁23・・・が配設され、各塗料の塗料管路11へのオン・オフは、これらニードル弁23・・・を上下させることにより行うようにした。
【0037】
洗浄機構10のブロック体12には、色を切り替えるときに、塗料管路11を洗浄する洗浄液噴射バルブユニット14が配設されている。
【0038】
洗浄液噴射バルブユニット14は、ブロック体12に一体的に結合されるように設けられている。シールを介してボルト結合することが望ましい。詳細には、洗浄液噴射バルブユニット14は、ブロック体12の塗料管路11の上流部11aに接続されている。なお、洗浄液噴射バルブユニット14の材質と、ブロック体12の材質とは同一の材質とした。
すなわち、洗浄液噴射ノズル40は、塗料管路11と一体的に且つ密着させて配置されている。
【0039】
洗浄機構10は、その左右端部が緩衝材25、25及び締結部材26、26を介して支持ステー27、27によって支持されている。つまり、洗浄機構10は緩衝材25、25によりマウントされている。緩衝材25は、例えば、ラバーブッシュである。このため、洗浄液噴射バルブユニット14で発生した洗浄液とエアの混合によるキャビテーション振動は、ブロック体12に効率良く伝達されるが、支持ステー27、27には伝達され難くなり、洗浄液噴射バルブユニット14のキャビテーション振動(運動エネルギー)は、塗料管路11の洗浄に無駄なく作用するものとなる。
洗浄液噴射バルブユニット14の詳細については次図で説明する。
【0040】
塗料噴射装置18に塗料を供給するときには、塗料バルブユニット13・・・の内の所定の塗料バルブユニットを開け、その他の塗料バルブユニットを閉じて、ブロック体12に形成した塗料管路11に、所定の色の塗料を供給する。
【0041】
塗料噴射装置18に供給する塗料の色を切り替えるときには、塗料バルブユニット13・・・を全て閉じた後、塗料管路11の上流部11aにエアを含む洗浄液を所定の圧力で供給し、塗料管路11に残存する塗料を除去するようにした。
【0042】
図2は本発明に係る塗装装置に備えられている洗浄液噴射バルブユニットの断面図であり、洗浄液噴射バルブユニット14は、洗浄液とエアとをミキシングさせた混合体が供給される噴射室15を有するノズルブロック31と、このノズルブロック31に差し込まれ噴射室15に洗浄液及びエアを供給又は遮断する噴射ニードル弁32と、この噴射ニードル弁32を上下方向に駆動するシリンダ部33と、を主要な構成要素とし、洗浄液の内部に間欠的にエアを噴射することにより、洗浄液と気体(エア)のバブリング(キャビテーション)を発生させるものである。
【0043】
ここで、バブリング(キャビテーション)とは、洗浄液とエアとが混合されて形成させた泡状を呈する混合体であって、この泡のキャビテーション振動によって、塗料管路の壁面に付着した塗料の除去効果を超音波洗浄機のように大幅に高めることができる。
また、洗浄液中にキャビテーションを発生させるのであれば、洗浄液とエアの混合に限定されず、プロペラのようなもので、洗浄液中にキャビテーションを発生させても良い。
【0044】
以下、洗浄液噴射バルブユニット14の詳細な構造を説明する。
洗浄液噴射バルブユニット14のノズルブロック31と塗料管路11につながっている噴射室15の間には、洗浄液とエアとを混合させた混合体を塗料管路11に供給する洗浄液噴射ノズル40が設けられている。
本実施例において、洗浄液噴射ノズル40は、ノズルブロック31に備えた噴射室15を介して塗料管路11につながっているが、噴射室15を介することなく直接塗料管路11につなぐことは差し支えない。
【0045】
ノズルブロック31に設けた噴射室15の上方には、この噴射室15に連通する空間34が設けられ、この空間34は、シートパッキン35を介して上方から吊り下げられた区画部材36によってエア室37と洗浄液室38とに区画され、エア室37にはエア供給管41が連結され、洗浄液室38にはエルボ継手42を介して洗浄液供給管43が連結されている。
【0046】
シリンダ部33は、シリンダ45と、このシリンダ45を摺動するピストン46と、このピストン46に取り付けられ上下に摺動するピストンロッド47と、シリンダ45のヘッド部を覆うヘッド部材48と、シリンダ部33の上端部に取り付けたカバー部材49と、このカバー部材49とピストン46間に介在させピストンロッド47が延びる方向に押圧するばね部材51とを備える。本実施例において、ピストンロッド47の先端部には、噴射ニードル弁32が一体に形成されている。このため、部品点数を抑えることができる。
【0047】
シリンダ45の下部には、シリンダ45にエアを供給するエア口52が設けられ、このエア口52にはエルボ管53を介して噴射ニードル弁32を上下方向に駆動するためのエアを供給するエア管54が連結されている。
ヘッド部材48には、噴射ニードル弁32の軸部56に嵌めるシール部材57と、これらのシール部材57にワッシャ58を介して嵌める調整バネ59と、この調整バネ59の上方からねじ込んだ押さえ部材61と、が取り付けられ、この押さえ部材61のねじ込み量を変化させることで、噴射ニードル弁32のストロークを調整可能にした。図中、60は連結ナット、62は空気抜き穴である。
【0048】
図3は図1の3−3線断面図であり、洗浄液噴射バルブユニット14の噴射軸63は、塗料管路11の軸11Jに垂直に配置するものである。加えて、洗浄液噴射ノズル40は、楕円の中心11Jからピッチfだけオフセットさせた位置に配置される。噴射軸63と塗料管路11の軸11Jとを垂直に配置するので、塗料管路11の軸11J回りに、洗浄液のうず流を発生させることができる。
【0049】
この場合に、塗料管路11の内壁の断面は楕円であるから、内壁の断面が円である場合に較べて、うず流の存続時間が長くなる。従って、塗料管路11の長さが塗料管路11の内径に較べて、あまり大きくない場合には、塗料管路の洗浄効果を高めることができる。
なお、塗料管路11の断面形状は、楕円にしたが、楕円形であれば、その形状は任意である。また、塗料管路11の断面形状が楕円であれば、楕円の中心11Jに向かって洗浄液を噴射しても、うず流を発生させることができる。
【0050】
図4は図1の4−4線断面図であり、ブロック体12には、断面楕円形の塗料管路11が形成されるとともに、締結部材26、26及び緩衝材25、25を介して支持ステー27に取り付けられている。この楕円形の塗料管路11は、ブロック体12の上流部と下流部の間に一様な大きさで設けられている。
【0051】
以上に述べた塗装装置の作用を次に述べる。
図5は本発明に係る塗装装置に備える塗料管路の原理図である。
(a)において、実施例が示されており、塗料管路11の断面は楕円形に形成した。断面が楕円形であれば、塗料管路11の中心11caは壁面11hから同じ距離にはないので、壁面11hで反射した洗浄液の泡同士が、楕円形断面の中心部で衝突したときに、互いに打ち消し合うことが少なくなる。
【0052】
(b)において、比較例が示されており、塗料管路11の断面は円形に形成されているので、塗料管路11の壁面11hで反射した洗浄液の波同士が、壁面から同じ距離に位置する円形断面の中心11cbで衝突し、互いに打ち消し合うことが多い。従って、塗料管路11の下流部(図1の符号11b)では、洗浄液のキャビテーション振動が減衰してしまう。
【0053】
(a)に戻って、本発明では、塗料管路11の中心11caで洗浄液の波同士の打ち消し合いが大幅に減るので、洗浄液のキャビテーション振動の減衰を抑えることができる。洗浄液がもつキャビテーション振動の減衰を少なくできるので、塗料管路11の全長にわたって洗浄液がもつ洗浄力が損なわれ難くなり、洗浄力を高く保つことができる。洗浄液の洗浄力が高く保たれるので、洗浄液の使用量を抑えながら、塗料管路11に残存する塗料を効率良く除去することができる。
【0054】
図6は本発明に係る塗装装置の作用説明図である。
(a)において、塗料管路11に洗浄液とエアとの混合物を供給する前の状態であり、塗料管路11の内壁には残存塗料が付着している。
【0055】
(b)において、洗浄液噴射バルブユニット14をオンにして、塗料管路11に洗浄液とエアとの混合物を供給する状態である。洗浄液噴射バルブユニット14から噴射室15に空気を含む洗浄液が噴射され塗料管路11を通過するとともに、洗浄液噴射バルブユニット14にブロック体12を一体的に設ける。
なお、洗浄液として、例えば、シンナー等の有機溶剤が好適である。
【0056】
洗浄液噴射バルブユニット14は、ブロック体12に一体的に設けるので、洗浄液噴射バルブユニット14で発生した洗浄液の運動エネルギーは、ブロック体12に効率良く伝達され、このブロック体12に設けた塗料管路11を振動させる。塗料管路11が振動するとともに、この塗料管路11に洗浄液を供給して、その壁面11hに当てるようにしたので、塗料が剥離されやすくなり、塗料管路11に残存した塗料を一層効果的に除去させることができる。
【0057】
また、本実施例において、洗浄液噴射バルブユニット14の材質と、ブロック体12の材質とは同一の材質にするので、同一の固有振動数を有する。このため、洗浄液噴射バルブユニット14で発生した振動がブロック体12で減衰することなく、この振動はブロック体12に設けた塗料管路11に効率良く伝達される。従って、塗料管路11に残存した塗料を一層効果的に除去することができる。
【0058】
図7は本発明に係る洗浄機構と比較例に係る洗浄機構の間の塗料管路洗浄効果を比較したグラフである。縦軸は光が洗浄液を透過する比率としての透過率(t)を示し、横軸は塗料管路の洗浄に用いる洗浄液の容積(cm3)を示す。
【0059】
ここで、透過率(t)とは、光が洗浄液を透過する割合を、透過後の光強度(I)と透過前の光強度(I0)との比率で表したものであり、t=(I/I0)×100(%)により求めることができる。
【0060】
図1を併せて参照し、洗浄液は、塗料管路11を洗浄するとともに、この塗料管路11の下流部11bに接続される出力継手21、出力チューブ22及び塗料噴射装置18を通過することで、これら要素の管路の内壁を洗浄するものである。本実験において、出力継手以降の要素は同一なものを使用した。
【0061】
例えば、塗料管路を通過する洗浄液の流量が少ないときには、塗料管路11を通過した洗浄液の透過率は低い値を示す。これは、塗料管路に塗料が多く付着しており、洗浄液に洗浄される塗料が多いことを意味する。塗料管路11を通過する洗浄液の流量が多くなるに伴い、透過率は高くなる。透過率は高くなることは、塗料管路内に残留する塗料の量が減り、塗料管路11の洗浄が進んできたことを示すものである。
【0062】
グラフにおいて、第1透過率曲線A1は、エアと洗浄液を交互に供給するときの透過率の推移を、第2透過率曲線はA2は、洗浄機構をブロック体とは分離させたときの透過率の推移を、第3透過率曲線A3は、本発明に係る実施例のときの透過率の推移を各々示すものである。
【0063】
ここで、洗浄完了時の判定基準を透過率73%に達したときにすると、第1透過率曲線A1によれば、必要な洗浄液の量は110cm3、第2透過率曲線A2によれば、必要な洗浄液の量は73cm3であり、第3透過率曲線A3によれば、必要な洗浄液の量は65cm3であった。
従って、本発明に係る洗浄機構10によれば、より少ない洗浄液で塗料管路の洗浄を行うことができる。つまり、洗浄液の洗浄力が高く保たれ、洗浄液の使用量が抑えられる。
【0064】
図8は図2の別実施例図であり、図2と異なる点として、洗浄液噴射バルブユニット14Bには、噴射軸63を上下駆動する駆動源としてリニアモータ66及びこのリニアモータ66に信号を伝達するドライバ67と、洗浄液供給管43Bの上流に接続され洗浄液の流量を調整する第1レギュレータ69と、エア供給管41Bの上流に接続されエアの流量を調整する第2レギュレータ72と、塗料管路11に設け塗料管路11内に噴射された泡を含む洗浄液の圧力を検出する圧力センサ73と、直線運動のリニアモータ66、第1レギュレータ69及び第2レギュレータ72を制御する制御装置74とが備えられている点にある。上記構成によって、洗浄液のよりきめ細かな噴射制御を行うことが可能になる。その他の点に大きく変わるところはない。
この実施例では、圧力センサにより、塗料管路内のキャビテーション振動が最大となるように、リニアモータによって、洗浄液とエアの混合比率を制御して、燃料管路に付着した塗料の洗浄効果が最大となるように調節できるという優れた効果を有する。これにより、洗浄液の使用コストを大幅に低減できる。
【0065】
図9は本発明に係る噴射室及び塗料管路の変形例を説明する図である。
(a)において、ノズルブロック31Bに設ける噴射室15Bの断面形状は、楕円をさらに変形させ変形円にしたものである。この噴射室15Bに連結される塗料管路の断面形状は、噴射室15Bと同一の断面形状に形成されている。
【0066】
(b)において、ノズルブロック31Cに設ける噴射室15Cの断面形状は、縦長の略矩形にしたものである。この噴射室15Cに連結される塗料管路の断面形状は、噴射室15Cと同一の断面形状に形成されている。なお、略矩形の各頂点は所定の半径(R)にて丸めるようにした。
(c)において、ノズルブロック31Dに設ける噴射室15Dの断面形状は、略6角形にしたものである。この噴射室15Dに連結される塗料管路の断面形状は、噴射室15Dと同一の断面形状に形成されている。なお、略6角形の各頂点は所定の半径(R)にて丸めるようにした。
【0067】
図10は塗料管路へ接続する洗浄液噴射ノズルの変形例を説明する図である。
(a)において、洗浄液噴射バルブユニット14Bと塗料管路11Bの間には、洗浄液とエアとを混合させた混合体を供給する洗浄液噴射ノズル40aが設けられ、この洗浄液噴射ノズル40aは、洗浄液噴射バルブユニット14Bから塗料管路11Bの外周接線方向に延びるとともに、塗料管路11Bに接続されている。図中、矢印は混合体の流れる方向を示す。つまり、洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズル40aは、塗料管路11の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられている。
塗料管路11Bの断面は円形であり、洗浄液噴射ノズル40aは、塗料管路11Bの断面の中心Jaからオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射するので、塗料管路11Bの軸Ja回りに、洗浄液のうず流を発生させることができる。
この結果、泡状を呈するエアと洗浄液からなる混合体によって、塗料管路11Bに付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0068】
ノズルブロック31B及び洗浄液噴射ノズル40aは、塗料管路11Bの中心からオフセットした位置に配置するとともに、塗料管路11Bの外周接線方向に延びている。ここで、洗浄液噴射ノズル40aは、鉛直方向上下向きに配置されている。
【0069】
(b)において、ノズルブロック31Bを塗料管路11Bの中心上方に配置するとともに、塗料管路11Bの外周接線方向に延びている。ここで、ノズルブロック31Bから塗料管路11Bに延びている洗浄液噴射ノズル40bは、塗料管路11Bの中心上方から斜め下方に配置されている。
【0070】
洗浄液噴射ノズル40a、洗浄液噴射ノズル40bは、ともに塗料管路11Bの外周接線方向に延びているので、洗浄液とエアとを混合させた泡状を呈する混合体が塗料管路11Bの外周を含む壁面11Bhに沿うように供給される。このため、塗料管路11Bに混合体が円滑に供給されるとともに、泡状を呈する混合体によって、塗料管路11Bに付着した塗料を効果的に除去することができる。
【0071】
なお、塗料管路11Cの断面は非円形であっても良い。塗料管路11Cの断面が非円形に形成されていれば、外周を含む壁面11Chで反射した複数の波が、非円形断面の中心点に到達するまでに時間差が生じる。時間差が生じれば、洗浄液の波が中心点に集中して衝突し合うことが少なくなり、洗浄液の運動エネルギーの減衰を抑えることができる。
【0072】
尚、本発明に係る塗装装置は、実施の形態では自動車の塗装工程に適用したが、機械装置、電機装置にも適用可能であり、一般の工業製品の塗装に適用することは差し支えない。
【0073】
また、請求項1では、洗浄液噴射バルブユニットは、ブロック体と分離して配設することは差し支えない。さらに、洗浄液噴射バルブユニットの噴射軸と塗料管路の軸とのなす角度は任意の角度で差し支えない。また、洗浄液にキャビテーションを発生させるものであれば、洗浄液をプロペラ等で撹拌する機構でも差し支えない。
この他、請求項2では、洗浄液噴射バルブユニットの材質と、ブロック体の材質とは異なる材質にすることは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、色切替機能をもつ自動車の塗装工程に利用すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る塗装装置の断面図である。
【図2】本発明に係る塗装装置に備えられている洗浄液噴射バルブユニットの断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】本発明に係る塗装装置に備える塗料管路の原理図である。
【図6】本発明に係る塗装装置の作用説明図である。
【図7】本発明に係る洗浄機構と比較例に係る洗浄機構の間の塗料管路洗浄効果を比較したグラフである。
【図8】図2の別実施例図である。
【図9】本発明に係る噴射室及び塗料管路の変形例を説明する図である。
【図10】塗料管路へ接続する洗浄液噴射ノズルの変形例を説明する図である。
【図11】従来の技術に係る洗浄機構を備えた塗装装置の構成図である。
【図12】従来の技術に係る塗料管路に設けた洗浄液吐出部及びエア吐出部の断面図である。
【図13】図12の作用図である。
【図14】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0076】
10…塗装装置、11、11B、11C…塗料管路、11a…塗料管路の上流部、11b…塗料管路の下流部、11J…塗料管路の軸、12、12B…ブロック体、13…塗料バルブユニット、14、14B…洗浄液噴射バルブユニット、18…塗料噴射装置、40、40a、40b…洗浄液噴射ノズル、63…洗浄液噴射バルブユニットの噴射軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック体に塗料が通る塗料管路を設け、この塗料管路の中間部に塗料を供給する複数のお互いに異なる塗装色に対応した塗料バルブユニットを接続し、前記塗料管路の下流部に塗料を被塗装物に噴射する塗料噴射装置を有する塗装装置において、
前記塗料管路の上流部にキャビテーションを有する洗浄液を噴射する洗浄液噴射バルブユニットを設置し、
前記洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、前記塗料管路の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記洗浄液噴射ノズルは、前記塗料管路と一体的に且つ密着させて配置されていることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記塗料管路の断面は、楕円であることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項4】
前記塗料管路の断面は円形であり、前記洗浄液噴射ノズルは、前記塗料管路の断面の中心からオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射することを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項5】
前記洗浄液噴射バルブユニットの材質と、前記ブロック体の材質とは略同一の材質にすることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項6】
前記洗浄液噴射バルブユニットは、モータにより駆動させることを特徴とする請求項1の塗装装置。
【請求項7】
前記洗浄液噴射バルブユニットは、洗浄液の内部に気体を間欠的に噴射してキャビテーションを発生させることを特徴とする請求項1の塗装装置。
【請求項8】
前記塗料管路の断面は、非円形であることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項1】
ブロック体に塗料が通る塗料管路を設け、この塗料管路の中間部に塗料を供給する複数のお互いに異なる塗装色に対応した塗料バルブユニットを接続し、前記塗料管路の下流部に塗料を被塗装物に噴射する塗料噴射装置を有する塗装装置において、
前記塗料管路の上流部にキャビテーションを有する洗浄液を噴射する洗浄液噴射バルブユニットを設置し、
前記洗浄液噴射バルブユニットの洗浄液噴射ノズルは、前記塗料管路の断面の内壁に洗浄液が沿う方向に向けられていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記洗浄液噴射ノズルは、前記塗料管路と一体的に且つ密着させて配置されていることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記塗料管路の断面は、楕円であることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項4】
前記塗料管路の断面は円形であり、前記洗浄液噴射ノズルは、前記塗料管路の断面の中心からオフセットされた方向に向けられて洗浄液を噴射することを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項5】
前記洗浄液噴射バルブユニットの材質と、前記ブロック体の材質とは略同一の材質にすることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項6】
前記洗浄液噴射バルブユニットは、モータにより駆動させることを特徴とする請求項1の塗装装置。
【請求項7】
前記洗浄液噴射バルブユニットは、洗浄液の内部に気体を間欠的に噴射してキャビテーションを発生させることを特徴とする請求項1の塗装装置。
【請求項8】
前記塗料管路の断面は、非円形であることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−39622(P2009−39622A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205754(P2007−205754)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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