説明

塗装装置

【課題】塗料の飛散を防止できるとともに、塗りムラや塗り残しを生じることなく短時間で確実に塗装対象部位の塗装を行なうことができる塗装装置を提供する。
【解決手段】本発明の塗装装置は、加圧塗料を供給する塗料供給部と、該塗料供給部から塗料を受けて噴射する噴射カバー10とを備える。噴射カバー10は、塗装対象部位を覆うための内側カバー体20と、内側カバー体20の外側に配置され、内側カバー体20との間に塗料の流通路22を形成する外側カバー体21と、流通路22に沿って点在して設けられ、流通路22を通じて流れる塗料を内側カバー体20の内側に形成される塗装空間S内に噴射するための複数の塗料噴射部40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に関し、特に、鉄橋等の建築構造物に取り付けられるリベットを固定するナットの表面を塗装するのに適した塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建設作業現場などでは、様々な構造部品に対して様々な形態で塗装が行なわれる。とりわけ、構造部品同士を締結するボルトやナットの表面を塗装する場合には、締結後に塗装が行なわれる。これは、ボルトやナットを予め塗装した後に締結すると、締結時に塗料が剥げてしまうからである。
【0003】
しかしながら、締結後に塗装を行なう場合には、幾つかの問題が生じる。例えば、塗料を噴射装置によって塗装対象部位へ向けて吹き付ける場合には、塗料が不必要な部位へ飛散する場合がある。そのため、状況によっては、作業者が刷毛等によって塗料を塗装対象部位に対して丁寧に塗ることも行なわれる。しかし、そのような手作業による塗装は煩雑であり、人件費がかかる。特に、刷毛を使用して塗装を行う場合、地面に近い幅狭な部位では、例えばナットなどの塗装対象部材の地面側の表面部位に塗料を付着させることは難しく、塗りムラや塗り残しが生じる可能性がある。
【0004】
そのため、噴射装置による塗装を可能にしつつ塗料の飛散を防止できるように、例えば特許文献1および特許文献2には、塗料飛散防止カバーを備えた塗装装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−243176号公報
【特許文献2】特開2009−202080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献に開示される塗装装置では、塗料の飛散を防止できても、塗料が所定の1つの噴射部分から噴射されて拡散されるだけであるため、全ての塗装対象部位に対して満遍なく均一に塗装を行なえるとは限らない。特に、鉄橋等の構造物に多用されているナットの表面部位に対し、短い時間で均一に塗料を付着させることが難しく、塗りムラや塗り残しが生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、塗料の飛散を防止できるとともに、塗りムラや塗り残しを生じることなく短時間で確実に塗装対象部位の塗装を行なうことができる塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る塗装装置は、加圧塗料を供給する塗料供給部と、前記塗料供給部から塗料を受けて噴射する噴射カバーとを備え、前記噴射カバーは、塗装対象部位を覆うための内側カバー体と、前記内側カバー体の外側に配置され、内側カバー体との間に塗料の流通路を形成する外側カバー体と、前記流通路に沿って点在して設けられ、前記流通路を通じて流れる塗料を前記内側カバー体の内側に形成される塗装空間内に噴射するための複数の塗料噴射部とを有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、噴射カバーを構成する外側カバー体と内側カバー体との間に、塗料を流通させるための流通路が設けられるとともに、この流通路に沿って点在して複数の塗料噴射部を設けるため、塗装対象物に対して最適な位置に塗料噴射部を配設することができ、これにより、内側カバー体によって形成される塗装空間内に満遍なく塗料を行渡らせることが可能となる。したがって、塗装空間内に位置される塗装対象部位に対して塗りムラや塗り残しを生じることなく短時間で確実に塗装を行なうことができる。また、上記構成では、内側カバー体によって塗装対象部位を覆うことができるため、塗料の飛散についても防止することがかできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗料の飛散を防止できるとともに、塗りムラや塗り残しを生じることなく短時間で確実に塗装対象部位の塗装を行なうことができる塗装装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗装装置の全体構成図である。
【図2】(a)は図1の塗装装置の噴射カバーを構成する外側カバー体の断面図、(b)は噴射カバーを構成する内側カバー体の断面図である。
【図3】内側カバー体と外側カバー体とが組み付けられて成る噴射カバー全体の断面図である。
【図4】噴射カバーの第1の変形例を示す断面図である。
【図5】(a)は噴射カバーの第2の変形例を示す縦断面図、(b)は(a)のA−A線に沿う横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1〜図3は本発明の一実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態の塗装装置1は、鉄橋等の建築構造物Sに取り付けられるリベットを固定するナット50の表面を塗装するのに特に適しており、加圧塗料を供給する塗料供給部30と、塗料供給部30から塗料を受けて噴射する噴射カバー10とを備えている。
【0013】
前記塗料供給部30は、噴射カバー10への加圧塗料の供給を制御する操作レバー3を具備する操作部2と、操作部2から噴射カバー10へと延びる供給チューブ5とを有している。前記供給チューブ5の内側流路と連通する操作部2の基端の口金6には、塗料を加圧状態で供給する例えば加圧ポンプ付きのリザーバ(図示せず)が図示しない接続チューブを介して着脱自在に接続される。また、供給チューブ5は、噴射カバー10の塗料注入ポート12に設けられた接続口金13に対して例えば着脱自在に接続される。
したがって、このような構成では、前記リザーバ側の加圧ポンプを駆動させて操作部2の操作レバー3を握り込むと、リザーバから供給チューブ5を介して噴射カバー10の注入ポート12へ塗料が供給され、また、操作レバー3の握り込み操作力を解除すると、噴射カバー10への塗料の供給が停止される。
【0014】
図3に詳しく示されるように、噴射カバー10は、塗装対象部位(図1の例では、ナット50)を覆うための円筒形状の内側カバー体20と、内側カバー体20の外側に同心的に配置され、内側カバー体20との間に塗料の流通路22を形成する円筒形状の外側カバー体21とから成る。この場合、外側カバー体21の内径は内側カバー体20の外径よりも大きく設定されており、これらの径の寸法差により流通路22の内径が規定される。また、図2に示されるように、内側カバー体20は、その開口部20aの外周縁部に、径方向外側に延びる断面L字型の環状接続部25を有しており、環状接続部25の内周面には雌ネジ29が形成され、この雌ネジ29は外側カバー体21の開口部21aの外周面に形成される雄ネジ27と螺合するようになっている。
【0015】
したがって、内側カバー体20上に外側カバー体21を被せるように外側カバー体21によって内側カバー体20を同心的に包囲して、ネジ27,29同士を螺合させると、図3に示されるように両カバー20,22同士が同心的に重合配置されて、外側カバー体21の内周面と内側カバー体20の外周面との間に流通路22が形成されるとともに、環状接続部25の底壁部25aによって流通路22が閉じられる。なお、この構成では、流通路22内を外部に対してシールするために、ネジ27,29同士の螺合接続部間にOリング等のシール部材を介挿することが好ましい。
【0016】
また、このように外側カバー体21と内側カバー体20とが着脱自在に取り付けられて成る噴射カバー10には、流通路22を通じて流れる塗料を内側カバー体20の内側に形成される塗装空間S内に噴射するための複数の塗料噴射部40が設けられている。この場合、これらの塗料噴射部40は、流通路22に沿って点在して設けられており、具体的に本実施形態では、内側カバー体20に形成される噴射口20bによって形成されている。これらの噴射口20bは、流通路22と塗装空間Sとを連通させるように内側カバー体20の周側面20cおよび上面20dに互いに所定の間隔を隔てて設けられる。
【0017】
なお、噴射口20bには、流通路22内を流れる塗料を霧状にして噴射させる噴霧ノズル(図示せず)が設けられており、塗料は、霧状になって、所定の範囲に広がるように飛散される。また、噴射口20bは、内側カバー体20で覆われるナットの表面に万遍なく塗料を飛散できるように、内側カバー体20の周側面に、所定間隔をおいて複数個所設置される(図に示す構成では、上下2段にして、円周方向に沿って所定間隔をおいて設置されている)。また、本実施形態では、ナットの側面のみならず、表面に塗料を飛散させるように、内側カバー体20の天板20dの略中央部にも噴射口20bが配設されている。
【0018】
以上のようにして構成される塗装装置1を用いて鉄橋等の建築構造物Sに取り付けられるリベットを固定するナット50の表面を塗装する場合には、まず、塗装対象となるナット50を内側カバー体20の塗装空間S内に取り込むように噴射カバー10の開口端面を構造物Sの表面に当て付ける(図1の矢印参照)。そして、その状態で、前述したリザーバ側の加圧ポンプを駆動させて操作部2の操作レバー3を握り込むと、リザーバから供給チューブ5を介して噴射カバー10の注入ポート12へ塗料が供給され、図3に矢印で示されるように、噴射カバー10の流通路22の全体にわたって塗料が流れて、全ての噴射部40(噴射口20b)から塗装空間S内に向けて塗料が均一に拡散噴射される。
【0019】
上記のように、本実施形態によれば、噴射カバー10を構成する外側カバー体21と内側カバー体20と間に、塗料を流通させるための流通路22が設けられるとともに、この流通路22に沿って点在して複数の塗料噴射部40(20b)が設けられているため、内側カバー体20によって形成される塗装空間S内に満遍なく塗料を行渡らせることが可能となる。したがって、図3に示すように、噴射口20bを設置することで、塗装空間S内に位置される塗装対象物(ナット50)に対して塗りムラや塗り残しを生じることなく短時間で確実に塗装を行なうことができる。また、本実施形態では、内側カバー体20によって塗装対象物(ナット50)が覆われるため、塗料の飛散を防止できる。また、本実施形態では、カバー体20,21同士を、ネジ27,29を介して簡単に着脱することができるため、噴射カバー10の洗浄等のメンテナンスが容易に行える。
【0020】
図4は噴射カバーの第1の変形例を示している。図示のように、本変形例の噴射カバー10Aは円錐形状を成しており、内側カバー体20Aと外側カバー体21Aとが着脱不能に一体に形成されている。また、内側カバー体20Aと外側カバー体21Aとの間に形成される塗料のための流通路22は、カバー体20A,21A同士を接続する接続端壁43によって閉じられている。また、本変形例においても、流通路22に沿って点在する噴射部40が内側カバー体20Aに設けられる噴射口20bによって形成されている(それ以外の構成は前述した実施形態と同じである)。
【0021】
したがって、本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、噴射部40から噴射される塗料を塗装対象部位へと集中的に方向付けることができるため、塗装対象部位を効率的に塗装することができる。
なお、内側カバー体20Aと外側カバー体21Aは、圧入するようにして、着脱可能に構成しても良い。
【0022】
図5は噴射カバーの第2の変形例を示している。図示のように、本変形例の噴射カバー10Bは、例えば六角ナットの形状に適合するように六角形の筒体を成しており、内側カバー体20Bと外側カバー体21Bとが着脱不能に一体形成されている。また、この場合も第1の変形例と同様に、内側カバー体20Bと外側カバー体21Bとの間に形成される塗料のための流通路22は、カバー体20B,21B同士を接続する接続端壁49によって閉じられている。
【0023】
本変形例では、流通路22に沿って点在して配設される噴射部40は、それぞれ、噴射カバー10Bに着脱自在に取り付けられる噴射ユニット70によって構成されている。具体的に、本変形例において、噴射ユニット70は、内側カバー体20Bの塗装空間S内へ向けられるノズル形状の噴射口70aと、流通路22と連通可能な流入口70bとを有しており、各カバー体20B,21Bに形成される取り付けネジ部72,75に対して螺合して取り付けられる。なお、それ以外の構成は前述した実施形態と同じである。
【0024】
したがって、本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、必要に応じて噴射ユニット70を交換できるため、メンテナンスが容易に行え、また、塗料の粘度に合った噴霧が行なえるようになる。
【0025】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。例えば、前述した噴射カバーの形状は、円筒形状や円錐形状などに限定されることなく、様々な形状をとることができる。また、カバー同士の着脱構造もネジに限定されず、圧入、クランプ、弾性的な係止など、様々な形態を採用することが可能である。さらに、噴射部の形態も任意であり、流通路22内に流れる塗料を内側カバー体の塗装空間内に噴射できればどのような形態であっても差し支えない。
【符号の説明】
【0026】
1 塗装装置
10 噴射カバー
20,20A,20B 内側カバー体
20b 噴射口
21,21A,21B 外側カバー体
22 流通路
30 塗料供給部
40 噴射部
70 噴射ユニット
S 塗装空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧塗料を供給する塗料供給部と、
前記塗料供給部から塗料を受けて噴射する噴射カバーと、
を備え、
前記噴射カバーは、
塗装対象部位を覆うための内側カバー体と、
前記内側カバー体の外側に配置され、内側カバー体との間に塗料の流通路を形成する外側カバー体と、
前記流通路に沿って点在して設けられ、前記流通路を通じて流れる塗料を前記内側カバー体の内側に形成される塗装空間内に噴射するための複数の塗料噴射部と、
を有することを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記塗料噴射部が前記内側カバー体に形成される噴射口から成ることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記塗料噴射部が前記噴射カバーに着脱自在に取り付けられる噴射ユニットから成ることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記内側カバー体と前記外側カバー体とが互いに着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記噴射カバーは、円筒形状、円錐形状、または、六角形状を成すことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200694(P2012−200694A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69096(P2011−69096)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(511078808)有限会社大栄塗装 (1)
【Fターム(参考)】