説明

塗装設備の臭気検知システム

【課題】臭気センサの劣化を確実に抑えることができる塗装設備の臭気検知システムを提供すること。
【解決手段】本発明の臭気検知システム1は、塗装設備2の周辺の臭気を検知するシステムであり、臭気センサ23を備える。また、臭気検知システム1は、被測定気体を臭気センサ23に導いて臭いの強さを間欠的に測定する。そして、臭気検知システム1は、臭気センサ23による臭いの強さの測定が完了する度に、被測定気体よりも臭いが弱いまたは無臭気の置換用気体を臭気センサ23に導くことにより、臭気センサ23の検知部に滞留する被測定気体を置換用気体に一旦置き換えて、次の測定時までその状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装設備周辺の臭気を検知する塗装設備の臭気検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、塗装ブース(塗装設備)内にて被塗物に対する霧化塗装を行うと、オーバースプレーにより、塗料ミストや揮発性有機溶剤などを含んだ汚染空気(気体)が塗装ブース内に充満してしまう。そして、汚染空気の一部は、塗装ブースの周辺に漏れ出すおそれがあるため、漏れ出した気体に含まれる塗料ミストや揮発性有機溶剤によって作業者の健康が害される可能性がある。そこで、塗装ブースからの汚染空気の漏れを検出するセンサ(臭気センサ)を塗装ブースの外部に設けることが従来提案されている。なお、臭気センサが塗装ブース周辺の気体の臭いの強さを測定することにより、汚染空気の漏れが検出されるようになる。
【0003】
しかし、上記のセンサは、臭いの強さを測定しているときに常時臭気に晒されるため、短期間でセンサが劣化し、センサの寿命が低下してしまう。そのため、センサの使用時間を短くする技術が種々提案されている(例えば特許文献1,2参照)。具体的に言うと、特許文献1に記載の従来技術では、ガスの流量に基づいてセンサ(ガスセンサ)の動作頻度を調整しているため、センサが常に使用状態に置かれることを防止でき、センサの長寿命化を図ることができる。また、特許文献2に記載の従来技術では、ガスメータからガス流入信号を受信した際にガス警報器のセンサ(ガスセンサ)を駆動させるため、ガス警報器の長寿命化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−344674号公報(図1等)
【特許文献2】特開2001−141595号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1,2に記載の従来技術では、センサによる測定が完了したとしても、センサの検知部に臭気が滞留し続けている。その結果、センサの短期間の劣化を抑えることができないため、実際上はセンサの長寿命化を図ることができない。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、臭気センサの劣化を確実に抑えることができる塗装設備の臭気検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明では、塗装設備周辺の臭気を検知するシステムにおいて、前記塗装設備の外部に設置され、前記塗装設備周辺の気体を被測定気体としてその臭いの強さを測定する臭気センサを備え、前記被測定気体を前記臭気センサに導いて臭いの強さを間欠的に測定し、前記臭気センサによる臭いの強さの測定が完了する度に、前記被測定気体に代えて前記被測定気体よりも臭いが弱いまたは無臭気の置換用気体を前記臭気センサに導くことにより、前記臭気センサの検知部に滞留する前記被測定気体を前記置換用気体に一旦置き換えて、次の測定時までその状態を維持することを特徴とする塗装設備の臭気検知システムをその要旨とする。
【0008】
従って、上記手段1に記載の発明によれば、臭気センサによる臭いの強さの測定が完了する度に、被測定気体に代えて被測定気体よりも臭いが弱いまたは無臭気の置換用気体を臭気センサに導くことにより、臭気センサの検知部に滞留する被測定気体を置換用気体に一旦置き換えている。その結果、臭いの強さの測定時にのみ臭気センサが臭気(被測定気体)に晒されるようになるため、被測定気体が検知部に滞留する時間、即ち、臭気センサが臭気に晒される時間が短くなる。従って、臭気センサの劣化を確実に抑えることができ、ひいては、臭気センサの長寿命化を図ることができる。
【0009】
手段2に記載の発明は、上記手段1において、前記臭気センサが設置された気体経路と、前記気体経路上において前記臭気センサよりも上流側に設置され、前記被測定気体が前記臭気センサに導かれる第1状態と、前記置換用気体が前記臭気センサに導かれる第2状態とに切り替えられる切替手段と、前記気体経路上に設置され、前記被測定気体または前記置換用気体を前記臭気センサに導く気体導入手段と、前記切替手段を前記第1状態または前記第2状態に切り替えるための駆動信号を出力する切替制御手段とを備えることをその要旨とする。
【0010】
従って、上記手段2に記載の発明によれば、被測定気体や置換用気体が気体経路を流れるようになるため、被測定気体や置換用気体の全てを気体経路に設置された臭気センサに確実に導くことができる。よって、被測定気体の臭いの強さを確実に測定することができる。
【0011】
手段3に記載の発明は、上記手段1または2において、前記塗装設備周辺の気体を取り込んで脱臭することにより前記置換用気体を生成する脱臭手段を備えることをその要旨とする。
【0012】
従って、上記手段3に記載の発明によれば、塗装設備周辺の気体を利用して置換用気体を生成できるため、置換用気体を別途準備しなくても済む。よって、塗装設備の臭気検知システムのランニングコストを抑えることができる。
【0013】
手段4に記載の発明は、上記手段2において、前記臭気センサによる臭いの強さの測定が完了した際に、前記被測定気体の導入を休止させる休止時間の長さを設定し、前記切替制御手段は、前記塗装設備の運転状況に応じて前記休止時間の長さを変更することをその要旨とする。
【0014】
従って、上記手段4に記載の発明によれば、塗装設備の運転状況に応じて、被測定気体の導入を休止させる休止時間の長さ、即ち、臭いの強さの測定間隔の長さを変更している。よって、被測定気体の臭いが弱い場合に、休止時間を延長して測定間隔を長くすれば、被測定気体が置換用気体に置き換わった状態を長く維持するようになる。即ち、被測定気体に臭気センサが晒される時間が短くなるため、臭気センサの劣化をより確実に抑えることができる。一方、被測定気体の臭いが強い場合に、休止時間を短縮して測定間隔を短くすれば、被測定気体の導入が素早く再開されるため、被測定気体の臭いの強さを臭気センサによって頻繁に測定することができる。その結果、臭気センサによる測定の見逃しが防止されるため、臭いの強さの測定精度が向上する。
【0015】
手段5に記載の発明は、上記手段4において、前記塗装設備の運転状況は、前記塗装設備内において被塗物の塗装が行われる運転時、前記被塗物の塗装が休止される休止時、及び、前記塗装設備のメンテナンス時を含み、前記切替制御手段は、前記休止時の休止時間を前記運転時の休止時間よりも長くするとともに、前記メンテナンス時の休止時間を前記運転時の休止時間よりも短くすることをその要旨とする。
【0016】
従って、上記手段5に記載の発明によれば、被塗物の塗装が休止される休止時の休止時間を、被塗物の塗装が行われる運転時の休止時間よりも長くしている。また、塗装設備のメンテナンス時の休止時間を、運転時の休止時間よりも短くしている。即ち、臭いが弱くなりやすい運転状況になる程、休止時間を延長して測定間隔を長くしているため、被測定気体が置換用気体に置き換わった状態を長く維持するようになる。この場合、被測定気体に臭気センサが晒される時間が短くなるため、臭気センサの劣化をより確実に抑えることができる。一方、臭いが強くなりやすい運転状況になる程、休止時間を短縮して測定間隔を短くしているため、被測定気体の導入が素早く再開されるようになり、被測定気体の臭いの強さを臭気センサによって頻繁に測定できるようになる。その結果、臭気センサによる測定の見逃しが防止されるため、臭いの強さの測定精度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、臭気センサの劣化を確実に抑えることができる塗装設備の臭気検知システムを提供することができる。特に、請求項2に記載の発明によると、被測定気体の臭いの強さを確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における塗装ブースの臭気検知システムを示す概略構成図。
【図2】臭いの強さの測定頻度を示すタイミングチャート。
【図3】切替バルブの動作と臭気センサの出力との関係を示すタイミングチャート。
【図4】臭気センサを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1に示されるように、臭気検知システム1は、塗装ブース2(塗装設備)及び臭気測定用制御盤3を備え、塗装ブース2の周辺の臭気を検知するシステムである。塗装ブース2は、自動車ボディ10(被塗物)に塗料を吹き付けることにより、その自動車ボディ10の表面に塗膜を形成させるためのものである。この塗装ブース2は、自動車ボディ10の塗装を行うための塗装室11と、塗装室11の上側に設けられ塗装室11にダウンフロー(上方から下方に向かう一定方向)の空気を供給するための給気室12と、塗装室11の下側に設けられその塗装室11内の空気を排気するための排気室13とを備えている。
【0021】
なお、塗装室11では、空気と微粒化塗料とを混合してなる塗料ミスト(霧化塗料)を回転霧化式の塗装機14から噴射することで、自動車ボディ10の塗装が行われる。このとき、塗装機14からオーバースプレーされて飛散した塗料ミストは、ダウンフローの空気によって塗装室11から排気室13に導かれる。排気室13は、塗料ミストを含む塗装室11内の汚染空気を排気ファン15の吸引力によって吸引し、吸引した汚染空気の処理を行うようになっている。なお、排気室13内にて浄化された空気は、排気ファン15によって大気に放出される。
【0022】
図1に示されるように、臭気測定用制御盤3は、塗装ブース2の外部に設置され、塗装ブース2周辺の空気(気体)である被測定空気(被測定気体)と、被測定空気よりも臭いが弱く無臭気の置換用空気(置換用気体)とが流れる空気供給流路21(気体経路)を備えている。空気供給流路21は、上流側において、被測定空気が流れる第1供給管21aと、置換用空気が流れる第2供給管21bとに分岐している。なお、本実施形態の被測定空気は、塗装ブース2から漏れたり排出されたりした空気であって、塗装ブース2内の空気と自動車ボディ10に付着しなかった塗料ミストとを含みうるものである。
【0023】
また、空気供給流路21上には、切替バルブ22(切替手段)、臭気センサ23及び吸引ポンプ24(気体導入手段)が設置されている。切替バルブ22は、空気供給流路21上において臭気センサ23よりも上流側であって、第1供給管21aと第2供給管21bとの接続部分に設置されている。切替バルブ22は、空気供給流路21を第1状態と第2状態とに切り替えるようになっている。切替バルブ22は、第1状態に切り替えられた際に、臭気センサ23に被測定空気を供給可能とするようになっている。また、切替バルブ22は、第2状態に切り替えられた際に、臭気センサ23に置換用空気を供給可能とするようになっている。なお、本実施形態の切替バルブ22は、2位置切替のモーター22aにより作動する弁である。
【0024】
また、図1に示される臭気センサ23は、塗装ブース2の外部であって、空気供給流路21上において切替バルブ22よりも下流側に設置されている。臭気センサ23は、空気供給流路21を流れる空気(被測定空気または置換用空気)の臭いの強さを検知部(図示略)によって測定したことを契機として、オン状態となり、臭気測定信号を出力するようになっている。一方、臭気センサ23は、臭いの強さを測定していないときにオフ状態となり、臭気測定信号を出力しなくなる。
【0025】
なお図4に示されるように、臭気センサ23は、2つのセンサ部(第1センサ部23a及び第2センサ部23b)を備えている。また、空気供給流路21において第1センサ部23a側と第2センサ部23b側とに分岐する箇所には、図示しない切替バルブが設置されている。切替バルブは、第1センサ部23aに被測定空気または置換用空気を供給可能とする状態と、第2センサ部23bに被測定空気または置換用空気を供給可能とする状態とに切り替えるようになっている。なお、本実施形態の切替バルブは、図示しない2位置切替のモーターにより作動する弁である。また本実施形態では、通常、第1センサ部23aのみを用いて臭いの強さの測定を行うようになっている。そして、第1センサ部23aを交換する際や第1センサ部23aの校正を行う際に、第2センサ部23bを用いて臭いの強さの測定を行うようになっている。
【0026】
図1に示されるように、吸引ポンプ24は、空気供給流路21上において臭気センサ23よりも下流側に設置されている。吸引ポンプ24は、空気供給流路21を流れる空気(被測定空気または置換用空気)を吸引して臭気センサ23に導くようになっている。
【0027】
また、第2供給管21b上には、吸着剤25(脱臭手段)が設置されている。吸着剤25は、塗装ブース2の周辺の空気を取り込んで脱臭することにより、置換用空気を生成するようになっている。
【0028】
次に、臭気検知システム1の電気的構成について説明する。
【0029】
図1に示されるように、臭気検知システム1は、装置全体を統括的に制御する制御装置30を備えている。制御装置30は、CPU31、メモリ32及び入出力ポート33等からなる周知のコンピュータにより構成されている。CPU31は、塗装機14、排気ファン15、切替バルブ22、臭気センサ23及び吸引ポンプ24に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。例えば、CPU31には、塗装ブース2が起動または停止していることを示す信号、塗装機14から塗料ミストが吐出されているか否かを示す信号、及び、排気ファン15が通常運転または低速運転であることを示す信号が入力されるようになっている。
【0030】
そして、CPU31は、被測定空気を臭気センサ23に導いて臭いの強さを間欠的に測定する制御を行うようになっている。具体的に言うと、CPU31は、切替制御手段としての機能を有しており、切替バルブ22に切替バルブ開閉信号(駆動信号)を出力して切替バルブ22を第1状態に切り替える制御を行うようになっている。また、CPU31は、吸引ポンプ24に駆動信号を出力して吸引ポンプ24による空気の吸引を開始させる制御を行うようになっている。その結果、被測定空気が第1供給管21a及び空気供給流路21を順番に通過して臭気センサ23に導かれるため、被測定空気の臭いの強さの測定が可能となる。そして、臭気センサ23は、臭いの強さが測定されたことを契機として、臭気測定信号を出力するようになっている。また、CPU31は、臭気センサ23による臭いの強さの測定時間t1(図2,図3参照)を測定タイマとしてメモリ32に設定(記憶)し、臭気センサ23から臭気測定信号が入力されたか否かの検知を開始させる。なお、測定時間t1は、臭いの強さを測定可能な最短時間(本実施形態では1分)に設定されている。
【0031】
また、図1に示されるCPU31は、設定した測定タイマを減算する。そして、CPU31は、臭気センサ23による臭いの強さの測定が完了する度、具体的には、測定タイマが0msになる度に、切替バルブ22に切替バルブ開閉信号を出力して切替バルブ22を第2状態に切り替える制御を行うようになっている。その結果、塗装ブース2周辺の気体が第2供給管21bに取り込まれて吸着剤25に導かれ、導かれた気体が吸着剤25によって脱臭されて置換用空気となる。そして、置換用空気は、第2供給管21b及び空気供給流路21を順番に通過して臭気センサ23に導かれ、臭気センサ23の検知部に滞留する被測定空気が置換用空気に一旦置き換えられる。なお、この状態は次の測定時まで維持される。具体的に言うと、CPU31は、切替バルブ22に切替バルブ開閉信号を出力したことを契機として、被測定空気の導入を休止させる休止時間T1〜T3(図2,図3参照)のいずれか1つを休止タイマとしてメモリ32に設定(記憶)し、休止タイマの減算を開始させる。なお本実施形態では、運転時の休止時間T1が10分に設定され、休止時の休止時間T2が20分に設定され、メンテナンス時の休止時間T3が5分に設定されている。その後、CPU31は、休止タイマが0msになる度に、次の測定を開始させる制御を行うようになっている。
【0032】
さらに、CPU31は、塗装ブース2の運転状況に応じて、臭いの強さの測定が完了した際における休止時間T1〜T3の長さを変更する制御を行うようになっている。また、本実施形態の運転状況は、塗装ブース2内において自動車ボディ10の塗装が行われる運転時、自動車ボディ10の塗装が休止される休止時、及び、塗装ブース2のメンテナンス時の3つに区分されている。なお、メンテナンス時は、塗装ブース2内の洗浄にシンナー(揮発性有機溶剤)が大量に用いられるため、臭いが最も強くなっている。一方、休止時は、シンナーを用いる作業(自動車ボディ10の塗装や塗装ブース2内の洗浄)が全く行われないため、臭いが最も弱くなっている。
【0033】
なお、図1に示されるCPU31は、塗装ブース2が停止していることを示す信号、塗装機14から塗料ミストが吐出されていないことを示す信号、及び、排気ファン15が低速運転であることを示す信号が入力された場合に、現在の運転状況がメンテナンス時であると判定する。また、CPU31は、塗装ブース2が起動していることを示す信号、塗装機14から塗料ミストが吐出されていないことを示す信号、及び、排気ファン15が低速運転であることを示す信号が入力された場合に、現在の運転状況が休止時であると判定する。さらに、CPU31は、塗装ブース2が起動していることを示す信号、塗装機14から塗料ミストが吐出されていることを示す信号、及び、排気ファン15が通常運転であることを示す信号が入力された場合に、現在の運転状況が運転時であると判定する。
【0034】
そして、図1に示されるCPU31は、現在の運転状況がメンテナンス時であると判定された場合に、休止時間を運転時の休止時間T1よりも短い休止時間T3に変更する制御を行うことにより、臭気センサ23の測定頻度を高くするようになっている(図2に示す「高頻度」参照)。このようにすれば、臭いが強いメンテナンス時において臭いの強さを頻繁に測定するため、臭いの強さの測定精度が向上する。また、CPU31は、現在の運転状況が休止時であると判定された場合に、休止時間を運転時の休止時間T1よりも長い休止時間T2に変更する制御を行うことにより、臭気センサ23の測定頻度を低くするようになっている(図2に示す「低頻度」参照)。さらに、CPU31は、現在の運転状況が運転時であると判定された場合に、休止時間を休止時間T1に変更する制御を行うことにより、臭気センサ23の測定頻度を中程度にするようになっている(図2に示す「中頻度」参照)。なお、CPU31は、運転時の終了時に必ず置換用空気を臭気センサ23に導く制御を行い、臭気センサ23の検知部に滞留する被測定空気を追い出すようになっている。
【0035】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0036】
(1)本実施形態の臭気検知システム1では、臭気センサ23による臭いの強さの測定が完了する度に、無臭気の置換用空気を臭気センサ23に導くことにより、臭気センサ23の検知部に滞留する被測定空気を置換用空気に一旦置き換えている。その結果、臭いの強さの測定時にのみ臭気センサ23が臭気(被測定空気)に晒されるようになるため、臭気センサ23が臭気に晒される時間が短くなる。従って、臭気センサ23の劣化を確実に抑えることができ、ひいては、臭気センサ23の長寿命化を図ることができる。
【0037】
(2)本実施形態では、臭気センサ23が臭気に晒される時間が短くなることで、臭気センサ23の通電時間を短くすることができるため、消費電力の低減を図ることができる。また、臭気センサ23は、通電によって劣化が進行するものであるため、通電時間を短縮できれば臭気センサ23の長寿命化が可能である。
【0038】
(3)本実施形態の吸着剤25は、塗装ブース2の周辺の空気を利用して置換用空気を生成できるため、置換用空気が充填されたガスボンベなどを別途準備しなくても済む。よって、臭気検知システム1のランニングコストを抑えることができる。
【0039】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0040】
・上記実施形態では、吸着剤25が、塗装ブース2の周辺の空気を取り込んで脱臭することによって無臭気の置換用空気を生成し、生成した置換用空気が臭気センサ23に供給されるようになっていた。しかし、吸着剤25を省略するとともに、置換用空気が充填されたガスボンベから臭気センサ23に置換用空気を供給するようにしてもよい。また、吸着剤25を省略するとともに、塗装ブース2の外部から取り込んだ新鮮な空気を、そのまま置換用空気として臭気センサ23に供給するようにしてもよい。なお、新鮮な空気を置換用空気として用いる場合、塗装ブース2から離れた箇所の空気を取り込むことが好ましい。仮に、塗装ブース2の周辺の空気を取り込むと、取り込んだ置換用空気の臭いの強さが被測定空気の臭いの強さとほぼ同一になるため、臭いの強さの測定が完了する度に、臭気センサ23の検知部に滞留する被測定空気を置換用空気に置き換えたとしても、臭気センサ23が臭気に晒される可能性が高くなってしまう。
【0041】
・上記実施形態の臭気センサ23は、2つのセンサ部23a,23bを備え、通常、第1センサ部23aを用いて臭いの強さの測定を行い、第1センサ部23aの交換や校正を行う際に、第2センサ部23bを用いて臭いの強さの測定を行うようになっていた。しかし、第2センサ部23bを通常時にも用いるようにしてもよい。例えば、臭いの強さの測定を行う度に、第1センサ部23aと第2センサ部23bとを交互に用いるようにしてもよい。このようにすれば、第1センサ部23aの測定頻度(または第2センサ部23bの測定頻度)が半減するため、第1センサ部23a(または第2センサ部23b)の劣化をより確実に抑えることができる。なお、第1センサ部23a及び第2センサ部23bのいずれか一方は省略されていてもよい。
【0042】
・上記実施形態の吸引ポンプ24は、空気供給流路21上において臭気センサ23よりも下流側に設置されていた。しかし、吸引ポンプ24を、空気供給流路21上において切替バルブ22よりも下流側、かつ臭気センサ23よりも上流側に設置するようにしてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、塗装ブース2内において塗装が行われる被塗物は自動車ボディ10であった。しかし、被塗物は、空力付加物(スポイラーなど)やバンパーなどの自動車用部品であってもよい。なお、被塗物は、必ずしも自動車用部品でなくてもよい。
【0044】
・上記実施形態は、塗装設備を塗装ブース2に具体化したものであったが、塗装設備を乾燥炉や粕池などの他の設備に具体化してもよい。
【0045】
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0046】
(1)上記手段1乃至5のいずれか1つにおいて、前記被測定気体は、前記塗装設備内の空気と前記被塗物に付着しなかった霧化塗料とを含みうるものであり、前記霧化塗料は、前記空気と微粒化塗料とを混合してなることを特徴とする塗装設備の臭気検知システム。
【0047】
(2)上記手段1乃至5のいずれか1つにおいて、前記置換用気体は、前記塗装設備の外部から取り込んだ空気であることを特徴とする塗装設備の臭気検知システム。
【符号の説明】
【0048】
1…臭気検知システム
2…塗装設備としての塗装ブース
10…被塗物としての自動車ボディ
21…気体経路としての空気供給流路
22…切替手段としての切替バルブ
23…臭気センサ
24…気体導入手段としての吸引ポンプ
25…脱臭手段としての吸着剤
31…切替制御手段としてのCPU
T1〜T3…休止時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装設備周辺の臭気を検知するシステムにおいて、
前記塗装設備の外部に設置され、前記塗装設備周辺の気体を被測定気体としてその臭いの強さを測定する臭気センサを備え、
前記被測定気体を前記臭気センサに導いて臭いの強さを間欠的に測定し、
前記臭気センサによる臭いの強さの測定が完了する度に、前記被測定気体に代えて前記被測定気体よりも臭いが弱いまたは無臭気の置換用気体を前記臭気センサに導くことにより、前記臭気センサの検知部に滞留する前記被測定気体を前記置換用気体に一旦置き換えて、次の測定時までその状態を維持する
ことを特徴とする塗装設備の臭気検知システム。
【請求項2】
前記臭気センサが設置された気体経路と、
前記気体経路上において前記臭気センサよりも上流側に設置され、前記被測定気体が前記臭気センサに導かれる第1状態と、前記置換用気体が前記臭気センサに導かれる第2状態とに切り替えられる切替手段と、
前記気体経路上に設置され、前記被測定気体または前記置換用気体を前記臭気センサに導く気体導入手段と、
前記切替手段を前記第1状態または前記第2状態に切り替えるための駆動信号を出力する切替制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の塗装設備の臭気検知システム。
【請求項3】
前記塗装設備周辺の気体を取り込んで脱臭することにより前記置換用気体を生成する脱臭手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装設備の臭気検知システム。
【請求項4】
前記臭気センサによる臭いの強さの測定が完了した際に、前記被測定気体の導入を休止させる休止時間の長さを設定し、
前記切替制御手段は、前記塗装設備の運転状況に応じて前記休止時間の長さを変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の塗装設備の臭気検知システム。
【請求項5】
前記塗装設備の運転状況は、前記塗装設備内において被塗物の塗装が行われる運転時、前記被塗物の塗装が休止される休止時、及び、前記塗装設備のメンテナンス時を含み、
前記切替制御手段は、前記休止時の休止時間を前記運転時の休止時間よりも長くするとともに、前記メンテナンス時の休止時間を前記運転時の休止時間よりも短くする
ことを特徴とする請求項4に記載の塗装設備の臭気検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57981(P2012−57981A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199083(P2010−199083)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】