説明

塗装設備用構成要素及びかかる構成要素から塗料を除去する装置

本発明は、塗装設備の稼働中に塗料が跳ね掛かる塗装設備の構成要素、例えば格子、吊下げ具、カバー等に関する。本発明は、かかる構成要素が酸素、炭素及びケイ素を含有するプラズマポリマー被膜で被覆されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装設備の稼働中に塗料で汚れた塗装設備用構成要素及びかかる構成要素から塗料を除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる構成要素(コンポーネント)は、例えば、フロア領域、塗装されるべき部品の支持体又は塗装ブース内の覆い領域を形成する。かくして、塗装設備では、例えば、フロア領域のための格子床(グレーチング)が用いられる。塗装されるべき部品は、ハンガーに取り付けられ、そして大抵は自動化された塗装設備で塗装される。かかる塗装設備、例えば塗料ラインは、例えば車体部品又は車体全体を塗装する自動車業界で用いられる。特に、格子床をフロア部品として用いる目的は又、塗装設備を通風することにある。空気流のために、塗料残留物の付着が生じ、かかる付着した塗料残留物は、格子床の開口部を封止し、かくして、空気流に対して悪影響を及ぼすので、塗料を時々格子床から完全に除去しなければならない。これは、多種多様な仕方で行われる。例を挙げると、例えばサンド(砂)ジェット又はこれと同等手段による化学的又は物理的塗料除去方法が利用される。化学的塗料除去方法と物理的塗料除去方法の組合せも又利用される。
【0003】
独国特許出願公開第2052391号明細書から、物体を吹付け塗装したときに吹付け用スリットにくっついたままになっている塗料残量物を除去する方法及び装置が知られており、吹付け用スリットには圧力下で水が吹き付けられる。
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第2052391号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
満足のいく塗料除去結果を達成するため、高圧水ジェットを用いる塗料除去法の場合、1600〜3000バールの非常に高い圧力を使用しなければならない。かかる高い圧力の使用の結果として、これら圧力を発生させるために用いられる高圧水ポンプの摩耗がひどくなる。加うるに、高圧を使用する場合、高い水のスループットが必要である。この結果、運転費が高くなる。
【0006】
したがって、本発明は、第1に伝統的な構成要素と比較して、良好且つ迅速に洗浄できる塗装設備用構成要素を見出すという課題に基づいている。第2に、かかる塗装設備用構成要素から塗料の除去をできるだけ効率的にする装置が提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、塗装設備の稼働中に塗料で汚れる塗装設備用構成要素、例えば格子床、ハンガー、カバー及びこれらと同様な構成要素であって、構成要素が、酸素、炭素及びケイ素を含有したプラズマポリマー被膜で被覆されていることを特徴とする構成要素によって達成される。
【0008】
かかる塗装設備に用いられる構成要素、例えば格子床、ハンガー、カバープレート及びこれらと同等手段を酸素、炭素及びケイ素を含有したプラズマポリマー被膜で被覆することは、かかる被膜が、特に高い温度で高い機械的及び化学的安定性を有するだけでなく、向上した疎水性又は疎油性挙動を示し、その結果、これら構成要素が汚れをはじく効果的な表面を既に有しているので、構成要素のクリーニングが容易であるという顕著な利点を有する。構成要素の被膜は、好ましくは、例えば独国特許出願公開第10131156号明細書又は国際公開第03/002269号パンフレットに記載されているような性質を有する。なお、開示の目的上、これら特許文献の両方を参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。
【0009】
塗装設備の本発明の好ましい構成要素は、酸素、炭素及びケイ素を含有したプラズマポリマー被膜を有し、かかるプラズマポリマー被膜は、基板に被着されて好ましくはこれと共に平らであり、このプラズマポリマー被膜には、次の関係、即ち、
−材料の重量比O:Siが、≧1.1、好ましくは≧1.2、より好ましくは≧1.25であり、この場合、>1.35及び>1.4も又、それぞれ好ましく
−それと同時に、≦2.6、好ましくは≦2.0、より好ましくは≦1.9であり、
−材料の重量比C:Siが、≧0.6、好ましくは≧1.00、より好ましくは≧1.2、更に好ましくは、≧1.29であり、
−それと同時に、≦C2.2、好ましくは≦2.0、より好ましくは≦1.9であり、この場合、>1.76及び<1.7も又、それぞれ好ましい
という関係が成り立ち、上記の装置は、好ましくは基板から遠ざかる方向に向いた面について行われたESCA(エスカ:化学分析用電子分光法)により測定されたものである(測定に関するそれ以上の情報については、独国特許出願公開第10131156号明細書及び国際公開第03/002269号パンフレットを参照されたい)。当業者であれば、組成上の仕様と関連して、層の汚染の無い領域の測定のみが有用であることを認識している。これ以降において、「材料の重量比X:Y」は、比(nx:ny)と理解されたい。この関係で、材料の重量比の最大値と最小値の好ましい組合せは、上述の材料の重量比に関して最初に列記した最小値、2番目に列記した最小値、3番目に列記した最小値とそれぞれ最初に列記した最大値と2番目に列記した最大値と、3番目に列記した最大値の組合せである。
【0010】
本発明のプラズマポリマー被膜は、好ましくは、水素及び(又は)フッ素を除く原子のその総数に対し、次の成分、即ち
−最小22、好ましくは23、より好ましくは23.9及び最大27、好ましくは26.1、より好ましくは25の原子百分率のSi、
−最小25、好ましくは27、より好ましくは29(31及び34.2の原子百分率も又、それぞれ好ましい)及び最大50、好ましくは47、より好ましくは40.2の原子百分率のO、及び
−最小25、好ましくは27、より好ましくは34及び最大50、好ましくは48、より好ましくは46の原子百分率のC(この場合、44及び40の原子百分率も又、それぞれ好ましい)を含み、
上記数値は、好ましくは基板から遠ざかる方向に向いた面について行われたESCA(化学分析用電子分光法)により測定されたものである(測定に関するそれ以上の情報については、独国特許出願公開第10131156号明細書及び国際公開第03/002269号パンフレットを参照されたい)。
【0011】
塗装設備の本発明の好ましい構成要素の場合、プラズマポリマー層は、重合条件を経時的に変化させることにより作ることができる勾配層である。好ましい構成要素のためのプラズマポリマー勾配層及びこれらの形成法は、独国特許出願公開第10034737号パンフレットに記載されており、開示の目的上、この特許文献を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。この参照による引用は、特に、層の形成方法及び関連のパラメータに適用される。
【0012】
上述の元素である酸素、炭素及びケイ素と同様、プラズマポリマー被膜は、好ましくは、水素(ESCAを用いても実証できない)及び(又は)フッ素を含み、次の関係、即ち、
−1.8:1<n(H及び(又は)F):n(C)<3.6:1
好ましくは、
−2.2:1<n(H及び(又は)F):n(C)<3.3:1
が当てはまる。
【0013】
水素の割合の測定を微量元素分析法で実施したが、かかる微量元素分析法では、塩の結晶をまず最初に被覆し、被膜を水浴中で剥離することができるようにした。剥離した層を重量が一定になるまで100℃で乾燥させた。次に、水素及び炭素の質量百分率を測定した。
【0014】
場合によっては、フッ素が含まれていない(本質的に含まれていない)又は水素が含まれていない(本質的に含まれていない)層を形成するのが有利である。加うるに、上述の好ましい範囲がケイ素、炭素及び酸素並びに該当する場合には水素及び(又は)フッ素以外の層の組成について選択された場合、以下に記載した性質のうちの1つ又は2つ以上に関して大幅な改良結果が得られる。
−熱安定性
−化学的安定性
−機械的安定性
−疎水性(水のエッジアングルを与えることにより定量化できる)
−硬さ
【0015】
本発明によれば、塗装設備に関し、被覆されるべき構成要素表面は、種々の材料、例えば、プラスチック、金属、セラミック又はガラスから成るのが良い。個々の場合に選択される基材としての材料には、直ちに、即ち、予備処理なしにプラズマポリマー被膜が被着されるか、或いは、かかる基材としての材料をまず最初に表面的に洗浄すると共に(或いは)活性状態にすると共に(或いは)これにプラズマポリマー定着剤を与える。
【0016】
塗装設備の本発明の構成要素の場合、母材(ベースメタル)であってもこれを被膜の基材として用いることができるということは、有利な点である。これは、特に、鋼又はアルミニウム基材が関与する場合に当てはまる。金属基材をプラズマポリマー層の被着前に、亜鉛めっきし、青銅化し、エッチングし、陽極化(陽極酸化)し、高温亜鉛めっきし、高温錫めっきし、熱処理し、エナメル化し、ホスフェート化し、機械的に加工し又は塗装するのが良い。
【0017】
被覆されるべき基材が高温亜鉛めっき鋼である場合、好ましくは、存在している白色錆があればこれをまず最初に除去する。これは、好ましくは、この場合も好ましくは酸性又はアルカリ性エッチング剤を用いる湿式化学的方法によって行われる。特に好ましくは、白色錆の除去に用いられる酸は、20℃において1〜3モル/リットルの酸当量(H+)の濃度を有する。好ましい処理時間は、10〜120秒である。高温では、陽子濃度又は処理時間を好ましくは減少させることができる。陽子濃度が高い場合、処理時間を短くすることができる。用いられる酸の例は、塩化水素酸又は硫酸である。
【0018】
本明細書において説明しているプラズマポリマー被膜の使用及びその結果として得られる材料を節約した洗浄条件により、現在先行技術において用いられていて必要である材料とは別の材料から塗装設備の構成要素を作ることが可能になる。特に、軽量金属、例えばアルミニウム、及びそれどころかプラスチックやゴム材料を用いることができる。
【0019】
加うるに、説明対象であるプラズマポリマー被膜は又、これによる保護が行われない場合、塗装設備では用いることができない表面を保護することができる(「塗料ウェッティング(塗料ぬれ)を妨害する物質が含まれていない設備」という表現が用いられる)。というのは、例えば、かかる表面は、研磨のために塗料欠陥を生じさせるからである。これは、特に、塗料ガンの構成要素及びこれらの供給ライン、例えばゴムホース及びスパウト(注ぎ口)に当てはまる。
【0020】
上述したケイ素有機被膜以外の被膜、例えばシリコーン又は無機有機ハイブリッドポリマー(例えば“Ormocere”という商品名で市販されている)が満たす塗料工場オペレータに関する要件は、PTFEを含有した被膜と同じほど少ない。これら被膜のうちの幾つかは又、被覆基材への塗料の低い付着性を保証するが、これら被膜は、適当ではない。というのは、かかる被膜は、通常、高い油圧機械的及び低温機械的応力に耐えることができないからである。これは、一般に、圧力が400バールからの高圧水掃除機や圧力が5バール以上のドライアイスを用いた洗浄法に当てはまる。また、これら被膜では、取れた粒子が塗装されるべき表面に達し、それにより塗料にクレータ又はふくれ(ブリスタ)が生じるという恐れがある。他方、上述のプラズマポリマー層は、高圧水掃除機が最高2500バールの圧力で用いられた場合でも本質的に安定性があるという利点を有する。
【0021】
驚くべきことに、塗料の汚染の結果として、本発明の被膜に含まれている粒子によってでもなく、他の「剥離層」の場合のように純然たる被膜、例えばゾル−ゲル法により作製されたケイ素有機被膜又はPTFE被膜によってでもなく、クレータが生じる。
【0022】
かくして、被膜を塗料のスプレーしぶきが水から再処理される塗料工場でも使用することができる。ただし、被膜の部分(別々の粒子又は被覆されたばかりの粒子)にリサイクル後、塗料が施される恐れがある。特に、この被膜に関し、塗料の除去も又、塗料工場内で行われるのが良い。
【0023】
表面を形成するプラズマポリマー被膜のローバリュー(raw value )Ra(DIN4768に従って測定される)が1μm未満の値、好ましくは0.3μm未満の値、より好ましくは0.1μm未満の値である本発明の構成要素は、洗浄するのが特に容易である。かくして、被膜の表面は、非常に滑らかであり、これは、タームロータス効果(term lotus effect )で組み合わされる発見とは正反対である。
【0024】
プラズマポリマー被膜は、輪郭模倣性があり、したがって、これに対応して滑らかな表面を備えた基材が、洗浄するのが容易な物品を作製するのに特に適している。非常に滑らかな表面を得るためには、金属基材に例えば独国特許出願公開第19748240号明細書に記載されているように機械的、化学的及び(又は)電気化学的平坦化処理を施すのが良い。金属基材のかかる平坦化に続き、これ又独国特許出願公開第19748240号明細書に記載されているように、還元的に得られたプラズマ、特に水素プラズマによって表面処理を施すのが良く、金属基材が用いられている場合であって本発明に従って構成したプラズマポリマー被膜を金属基材に永続的に被着させようとする場合、特にこの表面処理が行われる。
【0025】
十分に正常な表面が与えられている場合、塗装設備の構成要素を再び被覆するのが良い。再被覆は、使用時間の終わりの直前に行われる。これを過ぎると、表面を非常に高い圧力で洗浄して再被覆プロセスに供するのが良い。
【0026】
本発明の要旨は又、塗装設備の本発明の構成要素から塗料を除去する装置であって、少なくとも1つの高圧水ノズルを有し、水ノズルの高圧水ジェットが、高圧水ジェットに対して少なくとも1つの方向に動くことができる構成要素に当てられることを特徴とする装置にある。構成要素は、少なくとも1つの方向(V)に動くことができる受け具上に配置できることが好ましい。また、本発明によれば、高圧水ノズルが、稼働中、回転するという実施形態が好ましい。高圧水ジェットは、300〜700バール、好ましくは400〜600バール、特に500バールの圧力を有する。
【0027】
好ましくは、本発明の装置は、可動キャリヤに取り付けられ、この可動キャリヤは、具体的には好ましくはローリ(運搬車、lorry)である。
【0028】
塗装設備の構成要素から塗料を除去する本発明の装置であって、少なくとも1つの高圧水ノズルを備え、その高圧水ジェットを高圧水ジェットに対して少なくとも1つの方向に動くことができる構成要素に当てることを特徴とする装置により、構成要素、例えば格子床、ハンガー及び同等の構成要素からの非常に効率的で安価なしかも自動化された塗料除去が可能になる。注目されるべきこととして、構成要素は、高圧水ジェットに対して可動形態であるのが良く、高圧水ジェットは、受け具に対して可動形態であるのが良い。これらの組合せも可能である。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの高圧水ノズルは、稼働中回転し、それにより塗料の除去効果が向上する。
【0030】
高圧水ジェットは、好ましくは、300〜700バール、好ましくは400〜600バール、特に500バールの圧力を有する。この圧力は、中程度の圧力範囲であるに過ぎないが、かかる圧力により、圧力を発生させる高圧ポンプの耐用寿命が著しく長くなる。というのは、この圧力において高圧ポンプに生じる摩耗は、先行技術から知られている高い圧力の場合よりも著しく少ないからである。
【0031】
塗料除去装置は、一体形乾燥設備を更に有している。この構成、特に構成要素のための可動受け具に鑑みて、前進及び(又は)後退運動中に、構成要素から片側又は両側塗料除去を行い、次にオプションとして乾燥を行うことができる。
【0032】
有利な実施形態は、装置のための可動キャリヤを提供し、したがって装置を可動形態で用いることができ、かくして、種々の塗装設備に持って行って現場で使用できるようになっている。
【0033】
塗料除去装置は、ローリの上部構造体の一部であっても良い。この場合、好ましくは、別個独立の電源、水供給のためのタンク及び圧縮空気を生じさせる圧縮機が設けられ、したがって、システムは、完全に独立して稼働するようになる。
【0034】
本発明の別の要旨は、塗装設備用構成要素を被覆する上述したプラズマポリマー層の用途である。
【0035】
本発明の別の要旨は、塗装設備のための本発明の構成要素から塗料を完全に除去するランスを備えた市販の高圧掃除機の用途である。
【0036】
本発明の別の要旨は、塗装設備用構成要素から塗料を除去する方法であって、
a)塗料で汚れた本発明の塗装設備用構成要素を用意するステップと、
b)本発明の塗装設備用構成要素から塗料を除去する本発明の装置を用意するステップと、
c)この装置によって汚染塗料を構成要素から除去するステップとを有することを特徴とする方法にある。
【0037】
塗料除去のための本発明の好ましい方法では、これは、ドライアイスを小球又は雪状片の形態で用いて行われる。できるだけ水を含んでいないドライアイスを用いることが好ましい。塗料設備のための本発明の構成要素のブラスト(blast)は、好ましくは、<4バール、特に好ましくは<3.5バールの圧力で行われる。
【0038】
本発明の他の利点及び好ましい特徴は、実施形態の以下の説明、実施例及び図面の記載の内容である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
実施例1(塗料除去装置)
図1及び図2に示す塗装設備(図示せず)の稼働中、塗料で汚れた塗装設備の構成要素(コンポーネント)、例えば格子床から塗料を除去する装置が、本質的に水平に配置される第1の支承面100及び本質的に垂直方向に配置された第2の支承面120を有し、洗浄されるべき構成要素、例えば格子床200が、これら表面上に位置している。高圧水ジェットが、Hで示された方向に沿って格子床200に当てられる。注目されるべきこととして、種々の方向のうちのHで示された1つの方向に差し向けられる高圧ジェットは、効果的な塗料除去をするのに1つだけで十分である。格子床200を両方向を示す矢印V(図2で示された)運動方向に沿って動かす。格子床200ではなく、格子床200がそのまま立った状態で高圧水ジェットが格子床200に対して動いても良いことは理解されよう。これらの組合せも又、想到できる。装置は、格子床200を手作業で押し込み又は引き込むことができる第1の受け具又は受け入れ領域105を有している。この隣りに、実際の塗料除去領域115が設けられ、この塗料除去領域において、格子床200を例えばモータ又はこれと同等手段、タペット、例えば摩擦ホイール又はこれと同等手段によって自動的に動かし、これらは、格子床200の頂部領域にできるだけ遠くから作用する。
【0040】
塗装設備の格子床200又は他の構成要素は、被膜、例えば、独国特許出願公開第10131156号明細書に記載されているように、酸素、炭素及びケイ素を含有したプラズマポリマー被膜を有し、この特許文献を参照により引用し、開示の目的に関しその記載内容を本明細書の一部とする。被膜を中間層を介して格子床に被着させるのが良い。
【0041】
高圧水ジェットの圧力は、300〜700バール、好ましくは400〜600バール、特に500バールである。したがって、これは、中程度の圧力範囲である。それ自体公知の高圧水ポンプの場合、かかる圧力では、先行技術で知られている塗料除去設備で用いられ、1000〜1200バールを超える圧力よりも、生じる摩耗は著しく少ない。加うるに、水のスループットは、著しく少なく、したがって、装置を費用効果良く使用できるようになっている。高圧水ノズル(図示せず)は、好ましくは、稼働中回転し、したがって、特に効果的な塗料除去が達成されるようになる。
【0042】
好ましくは、高圧水ポンプは、回路システム中に組み込まれ、この回路システムは、水タンク及び水処理のための所要の構成要素(図示せず)を有する。
【0043】
この装置は、塗料除去領域の隣りに位置する乾燥設備(図示せず)を更に有するのが良く、この乾燥設備内において、格子床200を上述した塗料除去領域115から動かし、多数回の塗料除去作業の場合、ここから塗料除去領域115に戻す。
【0044】
装置全体は、可動キャリヤ300上に配置され、この可動キャリヤは、例えば、移動のための車輪310を有し、又はそれ自体コンテナの形態をしている。この可動キャリヤは、現場で電力、圧縮空気及び静水のために現場に存在する供給システム並びに廃水及び排出空気の処分システムのための適当な連結部を備えている。このように、装置全体は、可動形態で使用でき、塗装設備まで運ぶことができ、ここで現場使用することができる。
【0045】
上述した塗料除去装置は又、このように塗装設備まで運ばれるローリ(運搬車)(図示せず)の上部構造体に組み込んでも良い。この場合、キャリヤ300は、ローリの上部構造体を形成する。この場合、装置は、好ましくは、適当な電力発生ユニットによるそれ自体の電源を有し、更に、水供給のためのタンク及び圧縮空気を生じさせる圧縮機を有し、したがって、システムは、完全に独立して稼働するようになっている。
【0046】
注目されるべきこととして、上述した本発明の塗装設備構成要素、例えば、格子床、ハンガー又はカバープレートは、ちょうど通過の際に、純粋に原理的に言えば、それ自体公知であり、ブラシや温水又は水蒸気の支援があり又はこれが無いランス(最高500又は最高250バールの水圧を用いる)を備えた市販の高圧掃除機によっても手作業で有利且つ簡単に洗浄でき、かかる掃除機は、それ自体公知であり、本発明の被膜を備えていない構成要素の場合、事実上不可能であり又は著しく時間がかかる。というのは、市販の高圧掃除機による塗料除去の場合、幾分かの塗料が、構成要素にくっついたままになるからである。
【0047】
実施例2(第1の塗料適合性試験)
高温亜鉛めっきプレートを低圧酸素プラズマ(周波数が、13.56MHz)によって申し分なくクリーニングした。次に、同じ周波数で、プラズマポリマー被膜を施し、プラズマは、酸素O2及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)から作られた。酸素とHMDSOの比を変化させて最終的に、HMDSOのガス流量とO2のガス流量の比を27.5:100にした。プラズマポリマー被膜の被着に関する最終的に被着させる方法の正確なパラメータが、表1に記載されている。
【0048】
厚さ約180nmの被膜の考えられる除去を実験的にシミュレートするため、細目の研磨紙を用いて表面を研磨した。参考までに、同じことを、未処理の高温亜鉛めっき鋼プレート及びゾル−ゲル法により鋼基材に被着された非粘着性ケイ素有機被膜に対して行った。
【0049】
次に、研磨により落としたダストを水性の下塗り塗料中に攪拌し、吹付け法によりコイル被覆を備えた鋼基材に塗装した。
【0050】
本発明の被膜及び処理しなかった基材の場合、亜鉛粒子は別にして、塗装上の欠陥は検出できなかったが、ケイ素有機基準基材の粉末を含む塗料は、何割かの金属粒子並びに表面上にクレータ及びふくれを示した。
【0051】
〔表1〕
ガス流量O2(sccm) :100
ガス流量HMDSO(sccm) :27.5
電力(W) :2500
時間(秒) :300
圧力(ミリバール) :0.03
【0052】
実施例3(第2の塗料適合性試験)
標準の家庭用粒状砂糖に本発明のプラズマポリマー被膜を3回被着させた。砂糖粒の表面を酸素プラズマによって活性化させた。次に、プラズマポリマー被膜を被着させ、プラズマは、酸素O2及びヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)から作られた。酸素とHMDSOの比を変化させて最終的に、HMDSOのガス流量とO2のガス流量の比を27.5:100にした。プラズマポリマー被膜の被着に関する最終的に被着させる方法の正確なパラメータが、表1に記載されている。
【0053】
層の厚さを求めるため、シリコンウェーハを同一プロセスで並行して被覆した。層の厚さの測定の結果は、557nmであった。塗料適合性を調べるため、各場合において、1g及び3gの被覆砂糖を10ミリリットルの水に溶かし、100ミリリットルの水性下塗り塗料を添加した。塗料を、攪拌により粉砕された薄いプラズマポリマー層を備えた鋼基材に吹き付けた。塗装の示すところによれば、塗装欠陥、例えばふくれ又はクレータが無く、外見上、これは、非被覆砂糖が塗料と同様な仕方で添加された基準サンプルとは区別できなかった。
【0054】
実施例4(塗料の付着性の試験)
高温亜鉛めっき鋼シートに実施例3の場合と同様プラズマポリマー被膜を被着させた。次に、シートをピーピージー・インダストリーズ・カンパニー(PPG Industries company)から入手した溶剤仕上げ塗り(トップコート)CA8100で塗装した。次に行ったDIN EN ISO2409による碁盤目試験は、GT5の値をもたらし、このことは、格子床の切断後、次の切断格子床内でのブラシによる払い取り後、塗料が本質的に切断縁部相互間の表面の65%以上の表面上に剥がれ落ち、この場合、塗料は、引っ掻きの際基材から完全に取り去られた。非被覆状態の基準基板では、GT3が与えられ、このことは、格子床の引っ掻き、次のブラシ払い取り後、切断縁部相互間の表面の15%〜35%で、塗料が剥がれ落ちたことを意味している。
【0055】
実施例5(高温亜鉛めっき表面の予備処理)
薄い白色錆の膜のある高温亜鉛めっき格子床をそれぞれ、以下の条件のうちの1つのもとでエッチングした。
−1リットルの35%塩化水素酸と50リットルの水の混合物(0.19モルH+/リットル)中で40秒、
−3リットルの35%塩化水素酸と50リットルの水の混合物(0.54モルH+/リットル)中で40秒、
−5リットルの35%塩化水素酸と50リットルの水の混合物(0.87モルH+/リットル)中で40秒、
−7.5リットルの35%塩化水素酸と50リットルの水の混合物(1.25モルH+/リットル)中で40秒、
−7.5リットルの35%塩化水素酸と50リットルの水の混合物(1.25モルH+/リットル)中で60秒、
−5.9リットルの35%塩化水素酸と31.1リットルの水の混合物(1.53モルH+/リットル)中で20秒、
−5.9リットルの35%塩化水素酸と26.1リットルの水の混合物(1.77モルH+/リットル)中で20秒、
−5.9リットルの25%硫酸と26.1リットルの水の混合物(1.77モルH+/リットル)中で20秒、
−3リットルの25%硫酸と4.7リットルの水の混合物(2.00モルH+/リットル)中で20秒、
−1リットルの96%硫酸と8.8リットルの水の混合物(2.00モルH+/リットル)中で20秒、
−3リットルの25%硫酸と6.0リットルの水の混合物(1.70モルH+/リットル)中で20秒、
−1リットルの96%硫酸と10.5リットルの水の混合物(1.70モルH+/リットル)中で20秒、
−1.75リットルの96%硫酸と18.4リットルの水の混合物(1.70モルH+/リットル)中で20秒、
−2.1リットルの96%硫酸と18.4リットルの水の混合物(2.01モルH+/リットル)中で20秒、
−2.7リットルの96%硫酸と18.4リットルの水の混合物(2.51モルH+/リットル)中で20秒、
−3.3リットルの96%硫酸と18.4リットルの水の混合物(2.98モルH+/リットル)中で20秒。
【0056】
次に、格子床を脱イオン水中ですすぎ洗いし、熱風ファンで乾燥させた。
【0057】
濃度が0.19モルH+/リットルの濃度の塩化水素酸による40秒間の処理は、白色錆を十分に除去するのには不適当であることが判明した。
【0058】
濃度が0.54モルH+/リットル及び0.87モルH+/リットルの塩化水素酸による40秒間の処理後、そして、濃度が1.53モルH+/リットルの塩化水素酸による20秒間の処理後、及び濃度が1.70モルH+/リットルの硫酸による処理後、薄い取れやすくなっている白色錆の被膜が、依然として存在し、これに対し、濃度が1.77モルH+/の塩化水素酸及び濃度が2.98モルH+/リットルの硫酸を用いると、取れやすい黒色腐食生成物が、亜鉛めっき表面上に残っていることが判明した。中間の設定値では、微量の白色及び黒色粉末が、表面上に残っていた。この粉末を除去するため、格子のうちの幾つかを高圧水掃除機による吹き付けを行い、その後熱風ファンで乾燥させた。
【0059】
この処理後、格子床を実施例3の場合と同様に被覆した。次のアクゾ・ノーベル・デコ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・カンパニー(Akzo Nobel GmbH company)から入手したGlasurit Universalgrund(コポリマー樹脂を基剤とする塗料)による塗装を硬化後、ティーイーエスエー・カンパニー(TESA company)から入手した“Budget”粘着テープのストリップとの付着性があるかどうかについて検査した。
【0060】
濃度が0.19モルH+/リットルの塩化水素酸による40秒間の処理を除き、上述した全ての予備処理方法は、本発明の被膜に関し、白色錆膜を除去するのに適していることが判明した。
【0061】
濃度が1.77モルH+/リットルの塩化水素酸による20秒間の処理及び濃度が2.01モルH+/リットルの硫酸による20秒間の処理は、特に好ましかった。この場合、従来の引き裂きを行わないで、テサフィルム(Tesafilm)をすばやく引き剥がすことにより塗料を引き剥がすことができ、それどころか、塗料をテサフィルムの広がりよりも数cm広く引き剥がすことができた。
【0062】
実施例6(被膜の耐久性)
亜鉛めっき格子床を実施例3で与えられたプロセスパラメータでプラズマ被覆した。次に、格子床を水性下塗り塗料で10回塗装し、高圧水掃除機により2500バールで洗浄した。その後であっても、被膜を低表面エネルギーとGlasurit Universalgrundの低付着性の両方を介して検出できた。
【0063】
同じ方法をドライアイスによる塗料除去についても用いた。この場合も又、ドライアイスの粒及び最高3.5バールの広いスリットノズルを用いた塗料除去後におけるプラズマポリマー被膜の耐久性を確立することができた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を利用する塗料除去装置の側面図である。
【図2】塗料除去装置の正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装設備の稼働中に塗料で汚れる塗装設備用構成要素(200)、例えば格子床、ハンガー、カバー及びこれらと同様な構成要素であって、前記構成要素は、酸素、炭素及びケイ素を含有したプラズマポリマー被膜で被覆されている、構成要素(200)。
【請求項2】
前記プラズマポリマー被膜に関し、ESCAによって測定すると、以下の関係、即ち、
−材料の重量比O:Siが、>1.1且つ<2.6であり、
−材料の重量比C:Siが、>0.6且つ<2.2である
という関係が成り立つ、請求項1記載の構成要素(200)。
【請求項3】
前記プラズマポリマー層は、プラズマ重合条件を経時的に変化させることにより作ることができる勾配層である、請求項1又は2記載の構成要素(200)。
【請求項4】
前記プラズマポリマー被膜は、水素及び(又は)フッ素を含み、次の関係、即ち、
−1.8:1<n(H及び(又は)F):n(C)<3.6:1
好ましくは、
−2.2:1<n(H及び(又は)F):n(C)<3.3:1
が当てはまる、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の構成要素(200)。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一に記載の塗装設備用構成要素(200)から塗料を除去する装置であって、少なくとも1つの高圧水ノズルを有し、前記水ノズルの高圧水ジェット(H)が、前記高圧水ジェットに対して少なくとも1つの方向(V)に動くことができる前記構成要素(200)に当てられる、装置。
【請求項6】
前記構成要素は、前記少なくとも1つの方向(V)に動くことができる受け具上に配置できる、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記高圧水ノズルは、稼働中、回転する、請求項5又は6記載の装置。
【請求項8】
前記高圧水ジェットは、300〜700バール、好ましくは400〜600バール、特に500バールの圧力を有する、請求項5〜7のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項9】
前記装置全体を搬送する可動キャリヤを有する、請求項5〜8のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、ローリの上部構造体の一部である、請求項5〜9のうちいずれか一に記載の装置。
【請求項11】
塗装設備用構成要素を被覆する請求項1〜4のうちいずれか一に記載のプラズマポリマー層の用途。
【請求項12】
請求項1〜4のうちいずれか一に記載の塗装設備用構成要素(200)から塗料を完全に除去するためのランスを備えた市販の高圧洗浄装置の用途。
【請求項13】
塗装設備用構成要素(200)から塗料を除去する方法であって、
a)請求項1〜4のうちいずれか一に記載に記載されていて、塗料で汚れた塗装設備用構成要素(200)を用意するステップと、
b)請求項5〜10のうちいずれか一に記載の装置を用意するステップと、
c)前記装置によって前記汚染塗料を前記構成要素(200)から除去するステップとを有する、方法。
【請求項14】
前記ステップc)において、ドライアイスを用いて前記汚染塗料を除去する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ステップc)において、前記ドライアイスをできるだけ水を含まない状態で用いると共に(或いは)雪状片及び(又は)小球の形態で用いると共に(或いは)<4バールの圧力で用いる、請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−535653(P2008−535653A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504785(P2008−504785)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061463
【国際公開番号】WO2006/106149
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(505201168)フラウンホファー ゲゼルシャフト ツール フェルドルンク デル アンゲヴァントテン フォルシュンク エー ファウ (10)
【Fターム(参考)】