説明

塗装部品の爪固定構造

【課題】加飾部材などの塗装部品の爪嵌合部を爪部材に爪嵌合するときに塗装ごみが生じることを防止することができるようにし、更に、爪嵌合部と爪部材との爪嵌合状態を容易に確認することができる塗装部品の爪固定構造を提供する。
【解決手段】塗装部品としての車両用コンビネーションメータの加飾部材1の縁部に、塗装処理を施していない爪嵌合部6aを形成し、ハウジング10に設けた弾性変形自在な爪部材11aの爪部11a1に爪嵌合部6aを爪嵌合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用コンビネーションメータの文字板上に配置され、目盛等の部分に光が透過するように塗装剥離された加飾部材などの塗装部品を、ハウジングに設けた爪部材で爪嵌合して固定する塗装部品の爪固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スピードメータ(速度計)などの指針計器を備えた車両用コンビネーションメータにおいて、近年、スピードメータの目盛などの視認性向上や視覚効果を高めるために、前記目盛などを文字板の裏面側から透過照明するようにした車両用指針計器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記特許文献1の車両用指針計器では、文字板上に、加飾部材としての光を透過する導光体を設け、この導光体に形成した反射部(目盛)に背面側から光を照射して表示に立体感を持たせるようにしている。
【0003】
ところで、前記導光体のような加飾部材は、文字板の前面側に接するようにしてハウジングに固定される。この固定構造として、例えば、図8(a),(b)に示すように、ハウジング100の表面側に突出するようにして設けた弾性変形自在な爪部材101に、樹脂材からなる加飾部材(導光体)102の縁部に形成した爪嵌合部102aを上方から押し込んで爪嵌合する爪固定構造が知られている。このような爪固定構造を採用することにより、加飾部材102をハウジング100の表面に作業性よく容易に取り付けることができる。なお、加飾部材102の目盛部(不図示)等以外の光を透過させたくない部分(爪嵌合部102aも含む)には、例えば黒色の塗装が施されている。
【特許文献1】特開2003−302262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したような爪固定構造では、図8(a)に示したように、塗装部品としての加飾部材102の爪嵌合部102aを、弾性変形自在な爪部材101の上面側に押し当てて押し込むときに、爪嵌合部102aの角部付近が擦れることによって、爪嵌合部102aの角部付近の塗装が剥がれる場合がある。これにより、剥がれた塗装ごみが車両用コンビネーションメータ内の文字板等に付着して、製品不良となる虞がある。
【0005】
また、前記したような爪固定構造では、図8(b)に示したように、加飾部材102の爪嵌合部102aの表面全面も一体に塗装処理が施されているので、爪嵌合部102aの幅が分かりにくく、爪部材101で爪嵌合部102aを爪嵌合したときに、爪嵌合部102aと爪部材101との爪嵌合状態が良好であるか否かが分かりにくかった。
【0006】
そこで、本発明は、加飾部材などの塗装部品の爪嵌合部を爪部材に爪嵌合するときに塗装ごみが生じることを防止することができるようにし、更に、爪嵌合部と爪部材との爪嵌合状態を容易に確認することができる塗装部品の爪固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、表面に塗装処理を施し、縁部に複数の爪嵌合部を有する塗装部品を、弾性変形自在な複数の爪部材を有するハウジングに、前記各爪嵌合部を爪嵌合させることにより所定位置に固定する塗装部品の爪固定構造であって、前記爪嵌合部の表面全域を非塗装状態としたことを特徴とする塗装部品の爪固定構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、爪嵌合部の表面全域を非塗装状態としたことにより、爪部材に爪嵌合部を爪嵌合させるときに塗装剥がれによる塗装ごみの発生を防止することができる。また、爪嵌合部の表面全域を非塗装状態としたことにより、塗装処理がされているその周囲に対して爪嵌合部を容易に識別することができるので、爪嵌合部と爪部材との爪嵌合状態を容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る塗装部品の爪固定構造を、車両用コンビネーションメータに設けた塗装部品としての加飾部材の爪固定構造に適用した、図示の実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用コンビネーションメータの加飾部材を示す平面図、図2(a)は、この加飾部材の下側縁部付近を示す図、図2(b)は、そのA−A線断面図、図3は、この加飾部材が固定される車両用コンビネーションメータの文字板が装着されたハウジングを示す平面図である。
【0011】
図1に示すように、光を透過するアクリル樹脂等からなる加飾部材1には、3つのリング部2、3、4が一体成形されており、車両用コンビネーションメータ(不図示)を構成するハウジング10(図3参照)の前面側(車室内の運転席と対向する側)に設置される。リング部2にはタコメータ用目盛部2a、リング部3にはスピードメータ用目盛部3a、リング部4には燃料計用目盛部4aおよび水温計用目盛部4bがそれぞれ形成されている。
【0012】
また、加飾部材1の各リング部2、3、4の外側に一体成形された縁部5の所定位置には、後述するハウジング10(図3参照)に設けた各爪部材11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11hに爪嵌合する爪嵌合部6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6hがそれぞれ形成されている。
【0013】
前記目盛部(タコメータ用目盛部2a、スピードメータ用目盛部3a、燃料計用目盛部4a、水温計用目盛部4b)、および爪嵌合部6a〜6hは、レーザ光の照射等により塗装膜を剥離して非塗装状態とし、光を透過するようにしている。即ち、例えば、図2(a),(b)に示すように、加飾部材1の爪嵌合部6a(爪嵌合部6b〜6hも同様である)はレーザ光の照射等により塗装膜を剥離して非塗装状態とし、それ以外の部分には、例えば黒色の塗装A(図2(b)参照)が施されている。このように、加飾部材1のこれらの目盛部(タコメータ用目盛部2a、スピードメータ用目盛部3a、燃料計用目盛部4a、水温計用目盛部4b)、および爪嵌合部6a〜6h以外の部分は光を透過しないように、例えば黒色に塗装されている。
【0014】
また、加飾部材1の縁部5の下部両側近傍および上部中央近傍には、ハウジング10に取り付けるときのガイド孔7a,7b,7cがそれぞれ形成されている。
【0015】
図3に示すように、車両用コンビネーションメータ(不図示)の背面側に位置するハウジング10には、その前面側に前記加飾部材1の3つのリング部2、3、4に対応するように形成された光を透過するアクリル樹脂等からなる文字板12が設置されている。文字板12には、図の左側からタコメータ用数字部12a、スピードメータ用数字部12b、燃料計用文字部12cおよび水温計用文字部12dがそれぞれ形成されている。
【0016】
文字板12のこれらの数字部と文字部(タコメータ用数字部12a、スピードメータ用数字部12b、燃料計用文字部12c、水温計用文字部12d)の部分、および前記加飾部材1に形成した目盛部(タコメータ用目盛部2a、スピードメータ用目盛部3a、燃料計用目盛部4a、水温計用目盛部4b)の位置に対応する導光部12e,12f,12g,12hのみが光を透過可能な状態となるように樹脂材の乳白色の表面を露出させ、他の部分が不透明状態(例えば黒色)になるように印刷処理されている。
【0017】
文字板12の下部両側近傍および上部中央近傍には、ハウジング10に設けたガイド突起片13a,13b,13cに挿通されるガイド孔14a,14b,14cがそれぞれ形成されている。
【0018】
ハウジング10内には、前記したタコメータ用数字部12a、スピードメータ用数字部12b、燃料計用文字部12c、水温計用文字部12dの前面側にそれぞれ設置される指針(不図示)を可動されるための回路部、駆動系等を収納したメータユニット(不図示)が設置されている。また、ハウジング10内には、前記した文字板12の数字部と文字部(タコメータ用数字部12a、スピードメータ用数字部12b、燃料計用文字部12c、水温計用文字部12d)の部分、および加飾部材1の目盛部(タコメータ用目盛部2a、スピードメータ用目盛部3a、燃料計用目盛部4a、水温計用目盛部4b)を背面側から透過照明するための光源(不図示)、および前記指針(不図示)を照明するための光源(不図示)が設置されている。
【0019】
また、ハウジング10の前面側に設置される文字板12の外周近傍の所定位置には、加飾部材1に形成した各爪嵌合部6a〜6hを爪係合するための前記した弾性変形自在な爪部材11a〜11hが形成されている。図4に示すように、爪部材11a(爪部材11b〜11hも同様である)には、前方に向けて下方に傾斜している爪部11a1が一体に形成されている。
【0020】
次に、ハウジング10の前面側に固定される加飾部材1の爪固定構造について説明する。
【0021】
ハウジング10(図3参照)には、予めメータユニット(不図示)を収納し、更にその前面側にガイド突起片13a,13b,13cに合わせて文字板12のガイド孔14a,14b,14cをそれぞれ挿通し、係止部材(不図示)によって文字板12を固定しておく。
【0022】
そして、加飾部材1(図1参照)のガイド孔7a,7b,7cをハウジング10のガイド突起片13a,13b,13cにそれぞれ挿通し、文字板12の前面側の所定位置に載置する。この状態では、図5に示すように、加飾部材1の爪嵌合部6aは、ハウジング10に設けた爪部材11aの爪部11a1上に位置し、まだ爪部材11aに爪係合されていない。なお、加飾部材1の他の爪嵌合部6b〜6hとハウジング10の他の爪部材11b〜11hにおいても同様の状態である。
【0023】
そして、この状態から、加飾部材1の前面側から力を加えて押し込むことにより、図6(a),(b)に示すように、圧接する爪嵌合部6aによって爪部材11aが弾性変形して、爪嵌合部6aが爪部材11aの爪部11a1内に爪嵌合される。なお、加飾部材1の他の爪嵌合部6b〜6hとハウジング10の他の爪部材11b〜11hにおいても同様の状態となる。
【0024】
これにより、図7に示すように、ハウジング10の文字板12上に接するようにして加飾部材1が爪固定される。なお、ハウジング10の各爪部材11a〜11hに爪嵌合(爪固定)される各爪嵌合部6a〜6hを含む加飾部材1の縁部5は、その前面側に設けられる見返し板(不図示)によって覆われる。このように、加飾部材1を文字板12の前面側に設置することにより、特に文字板12の背面側から透過照明したときにおいて、加飾部材1の(タコメータ用目盛部2a、スピードメータ用目盛部3a、燃料計用目盛部4a、水温計用目盛部4b)を立体感を持って表示することができるので、視認性向上と視覚効果を高めることができる。
【0025】
ところで、前記図5、図6(a),(b)に示した加飾部材1の爪嵌合部6a(爪嵌合部6b〜6hも同様である)を爪部材11aに爪嵌合(爪固定)するときにおいて、加飾部材1の爪嵌合部6a〜6hの角部付近は、爪部11a1上に圧接して擦れるが、本実施形態では、爪嵌合部6a(爪嵌合部6b〜6hも同様である)の全面は塗装処理を施していないので、塗装剥がれによる塗装ごみの発生を防止することができる。
【0026】
また、前記したように加飾部材1の爪嵌合部6a〜6hは塗装処理が施されていなく、その周囲に対して爪嵌合部6a〜6hを容易に識別することができる。これにより、加飾部材1の爪嵌合部6a〜6hをハウジング10の爪部材11a〜11hにそれぞれ爪嵌合したときにおて、例えば、図6(a)に示したように、爪部材11aの爪部11a1と爪嵌合部6aとの爪嵌合状態を、上方から作業者が目視で容易に確認することができる。
【0027】
これにより、例えば、図6(a)に示したように、爪部材11aの爪部11a1の先端側に爪嵌合部6aが所定量露出している場合には、良好な爪嵌合状態であると目視で容易に確認することができる。また、爪部材11aの爪部11a1の先端側に爪嵌合部6aが所定量よりも多く露出したり、爪部材11aの爪部11a1の先端側に爪嵌合部6aが全く露出していない場合は、爪嵌合が不良状態であるであると目視で容易に確認することができる。このような場合は、図6(a)のような良好な爪嵌合状態となる位置に加飾部材1をハウジング10の平面に沿って微動させる。
【0028】
このように、本実施形態に係る加飾部材1の爪固定構造によれば、ハウジング10に設けた各爪部材11a〜11hに爪係合される加飾部材1の爪嵌合部6a〜6hを非塗装処理としたことにより、各爪部材11a〜11hに各爪嵌合部6a〜6hを爪嵌合したときに塗装剥がれによる塗装ごみの発生を防止することができ、さらに、各爪部材11a〜11hと各爪嵌合部6a〜6hとの爪嵌合状態を容易に視認することができる。
【0029】
なお、本発明は、前記実施形態における車両用コンビネーションメータに設けた加飾部材の爪固定構造に限定されることなく、様々な塗装部品の爪固定構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用コンビネーションメータの加飾部材を示す平面図。
【図2】(a)は、加飾部材の下側縁部付近を示す図、(b)は、そのA−A線断面図。
【図3】加飾部材が固定される車両用コンビネーションメータの文字板が装着されたハウジングを示す平面図。
【図4】ハウジングに設けた爪部材を示す側面図。
【図5】加飾部材の爪嵌合部が爪部材の爪部上に位置している状態を示す図。
【図6】(a)は、加飾部材の爪嵌合部が爪部材の爪部に爪嵌合された状態を示す平面図、(b)は、加飾部材の爪嵌合部が爪部材の爪部に爪嵌合された状態を示す側面図。
【図7】加飾部材が文字板が装着されたハウジング上に爪固定された状態を示す平面図。
【図8】(a)、(b)は、従来例における加飾部材の爪固定構造を説明するための図。
【符号の説明】
【0031】
1 加飾部材(塗装部品)
2a タコメータ用目盛部
3a スピードメータ用目盛部
4a 燃料計用目盛部
4b 水温計用目盛部
10 ハウジング
11a〜11h 爪部材
11a1 爪部
6a〜6h 爪嵌合部
12a タコメータ用数字部
12b スピードメータ用数字部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に塗装処理を施し、縁部に複数の爪嵌合部を有する塗装部品を、弾性変形自在な複数の爪部材を有するハウジングに、前記各爪嵌合部を爪嵌合させることにより所定位置に固定する塗装部品の爪固定構造であって、
前記爪嵌合部の表面全域を非塗装状態とした、
ことを特徴とする塗装部品の爪固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−113602(P2007−113602A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302893(P2005−302893)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】