説明

塗装金属板用塗料、塗装金属板及び塗装金属板の製造方法

【課題】外部からの摩擦などの衝撃や長期間の放置によっても色落ちしないのと共に、加工性のすぐれた塗装金属板及びその塗装金属板に用いる塗料を提供することを目的とする。また、色落ちが防止された塗装金属板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基体樹脂、メラミン樹脂とイソシアネート樹脂とを含む架橋剤及び顔料を塗装金属板用塗料に含有する。この塗装金属板用塗料により表面塗膜を金属板に形成して塗装金属板を得る。顔料としては、平均粒径0.5μm以下の顔料、有機顔料、並びに、赤外線反射顔料及び赤外線透過顔料の少なくとも一方の顔料が含まれているのが好ましい。基体樹脂としてはポリエステル樹脂が好ましい。メラミン樹脂は表面濃化能を有するものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材や壁材などの建材や電化製品などの金属外装に用いられる塗装金属板用塗料、塗装金属板及び塗装金属板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋根材や壁材などの建材や電化製品などの金属外装に用いられる金属板として、塗料が金属板に塗布されることにより表面に塗膜が形成された塗装金属板が知られている。この塗装金属板は、加工・成形される前に金属板の表面にあらかじめ形成される表面塗膜により、金属の耐食性、耐候性及び耐汚染性などを向上させるものである。
【0003】
塗装金属板は、加工・成形時に折り曲げられたり湾曲されたりするため、そのような加工・成形の際にも、塗装金属板を形成する金属板及び表面塗膜に剥離が生じないものでなければならない。また、加工・成形後においても、長期間にわたって劣化しない耐食性、耐候性を有するものが求められている。
【0004】
さらに近年、耐食性など金属板の劣化に対する耐性の向上といった機能だけではなく、所望の色があらかじめ金属板に着色されることにより、加工・成形後の着色工程を省いたり、簡略化させたりする機能を有する塗装金属板が求められている。このような着色された塗装金属板は、表面塗膜を形成する塗料の中に顔料が配合されることにより所望の色に着色されている。そして、着色された塗装金属板として、種々の色のバリエーションが望まれており、その要求を満たすためには、さまざまな顔料を塗料に使用する必要が生じている。
【0005】
しかしながら、表面塗膜に顔料を使用して着色した場合、加工・成形の際に手袋や器材が擦れるなどした際に顔料が塗膜から脱落することにより、塗装金属板が色落ちすることがある。
【0006】
このような問題に関して、特許文献1には、色落ちを解決し得る塗装金属板の発明が開示されている。この技術は、染料を含有した第一塗膜の上に透明な第二塗膜を設けることにより、第一塗膜中の染料が色落ちするのを防止するものである。しかし、この技術は、染料を塗膜の内層に封じこめるものであり、表面塗膜に含有される顔料が脱落するのを防止するものではない。また、この技術によれば、金属板の着色の目的で二つの塗膜を形成する必要があり、塗装金属板の製造における作業が煩雑となってしまう。
【特許文献1】特開平5−177168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、加工・成形の際に手袋や器材等が擦れるなどした場合にも色落ちするのを防止し、耐候性がよく、加工性のすぐれた塗装金属板を形成するための塗料、その塗料を用いた塗装金属板、及び、塗装金属板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る塗装金属板用塗料は、塗装金属板の表面塗膜を形成するための塗料であって、基体樹脂、メラミン樹脂とイソシアネート樹脂とを含む架橋剤及び顔料を含有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る塗装金属板用塗料は、上記構成に加え、平均粒径0.5μm以下の顔料を含むことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る塗装金属板用塗料は、上記構成に加え、有機顔料を含むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る塗装金属板用塗料は、上記構成に加え、赤外線反射顔料及び赤外線透過顔料の少なくとも一方の顔料を含むことを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る塗装金属板用塗料は、上記構成に加え、メラミン樹脂が表面濃化能を有するものであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に係る塗装金属板用塗料は、上記構成に加え、基体樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に係る塗装金属板用塗料は、上記構成に加え、基体樹脂が水酸基を含むものであり、メラミン樹脂の含有量が基体樹脂100質量部に対して2〜18質量部であると共に、イソシアネート樹脂のイソシアネート基と基体樹脂の水酸基との比(NCO/OH)が0.1〜0.9であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8に係る塗装金属板は、上記構成の塗料により表面塗膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項9に係る塗装金属板は、上記構成に加え、表面塗膜は、その最外層がメラミン樹脂が表面濃化して形成されているものであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項10に係る塗装金属板は、上記構成に加え、金属板が、アルミニウムと亜鉛との合金めっき鋼板であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項11に係る塗装金属板の製造方法は、上記構成の塗装金属板用塗料を金属板に塗布した後、焼付けて表面塗膜を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る塗装金属板用塗料によれば、メラミン樹脂とイソシアネート樹脂とを含む架橋剤が塗膜中で基体樹脂と架橋構造を形成することにより、基体樹脂と架橋剤とが塗膜中で絡み合ったマトリックスを形成するので、顔料を表面塗膜中に保持することができ、顔料の脱落を防いで塗装金属板の色落ちを防止することができる。また、このマトリックスにより形成された表面塗膜は加工の際に破断しない良好なものとなるので、塗装金属板の加工性を向上することができる。
【0020】
請求項2に係る塗装金属板用塗料によれば、色落ちの生じやすい平均粒径0.5μm以下の小粒径の顔料が含まれている場合であっても、色落ちを防止することができるので、
塗膜表面が削れることによる意匠性・耐候性・耐食性の低下を防ぐことができる。
【0021】
請求項3に係る塗装金属板用塗料によれば、色落ちの生じやすい有機顔料が含まれている場合であっても、色落ちを防止することができるので、塗膜表面が削れることによる意匠性・耐候性・耐食性の低下を防ぐことができる。
【0022】
請求項4に係る塗装金属板用塗料によれば、赤外線反射顔料及び赤外線透過顔料の少なくとも一方の顔料が含まれていることにより、金属板に赤外線が吸収されないようにすることができ、塗装金属板の遮熱性を向上することができる。すなわち、赤外線反射顔料を用いた場合は、塗膜中の赤外線反射顔料により、赤外線が反射されるので、赤外線が金属板に到達するのを抑制する。したがって、赤外線を吸収して金属板が加熱されるのを防止し、塗装金属板の遮熱性を向上することができる。また、赤外線透過顔料を用いた場合は、赤外線が塗膜中の赤外線透過顔料ではほとんど吸収されないようにすることができると共に、塗膜を通過した赤外線は塗膜よりも下の塗膜や金属板等で反射して吸収されないようにすることができる。したがって、赤外線を吸収して金属板が加熱されるのを防止し、塗装金属板の遮熱性を向上することができる。特に太陽光に晒される建材等の金属材料においては、赤外線を吸収した金属が加熱されて屋内の温度を高くすることがあり、この温度上昇を防ぐことが望まれる。その際、本発明によれば、上記のような遮熱性の高い塗装金属板を用いることにより、耐色落ち性及び加工性を満たしつつ、屋内の温度の上昇を抑制する金属材料を提供することができる。
【0023】
請求項5に係る塗装金属板用塗料によれば、メラミン樹脂として表面濃化能を有するものを用いることにより、表面塗膜を形成する際に最外層ではメラミン樹脂の濃度が高いために基体樹脂との架橋を密に形成して硬度の高い塗膜になるとともに、塗膜の内部では逆に架橋を少なくして柔軟な塗膜を形成する。このような表面塗膜の形成により、外部からの摩擦などの衝撃に対して耐性のある硬度の高い塗膜層を表面に形成しつつ、塗装金属板の折り曲げ時に破断を生じない柔軟な塗膜層を内部に形成することができ、耐色落ち性と加工性とがさらに向上する。また、このメラミン樹脂の表面濃化能により、長期に亘って表面の硬度が高い表面塗膜が維持されるので、耐候性の優れた塗装金属板を得ることができる。
【0024】
請求項6に係る塗装金属板用塗料によれば、基体樹脂としてポリエステル樹脂を用いることにより、柔軟性を確保しながら硬度の良好な塗膜を形成することができるので、塗装金属板の加工性を向上することができる。
【0025】
請求項7に係る塗装金属板用塗料によれば、基体樹脂とメラミン樹脂による硬化により塗膜の硬度をより良好なものとするとともに、基体樹脂とイソシアネート樹脂によって形成される架橋構造によって塗膜中のマトリックスを緻密で柔軟なものとすることができるので、塗装金属板の色落ちを防止すると共に加工性をさらに向上することができる。
【0026】
請求項8に係る塗装金属板によれば、上記構成を有する塗料により表面塗膜が形成されることにより、上記の効果を有する塗装金属板を得ることができる。すなわち、上記構成の塗料に含まれるメラミン樹脂及びイソシアネート樹脂を含有する架橋剤が表面塗膜中で基体樹脂と架橋構造を形成することにより、基体樹脂と架橋剤とが表面塗膜中で絡み合ったマトリックスを形成するので、顔料が表面塗膜中に保持され、顔料の脱落が防止されて耐色落ち性のある塗装金属板を得ることができる。
【0027】
また、色落ちの生じやすい平均粒径0.5μm以下の小粒径の顔料が表面塗膜に含まれている場合であっても、塗装金属板の色落ちを防止することができるので、塗膜表面が削れることによる意匠性・耐候性・耐食性の低下を防ぐことができる。
【0028】
また、色落ちの生じやすい有機顔料が表面塗膜に含まれる場合であっても、塗装金属板の色落ちを防止することができるので、塗膜表面が削れることによる意匠性・耐候性・耐食性の低下を防ぐことができる。
【0029】
また、赤外線反射顔料及び赤外線透過顔料の少なくとも一方の顔料が表面塗膜に含まれている場合は、金属板に赤外線が吸収されないようにすることができ、遮熱性の高い塗装金属板を得ることができる。
【0030】
また、メラミン樹脂として表面濃化能を有するものが用いられた場合は、メラミン樹脂の濃度が塗膜の表面で高くなって硬度の高い塗膜層を形成するとともに、表面塗膜の内部においてはメラミン樹脂の濃度が低くなって柔軟な塗膜層を形成するので、耐色落ち性と加工性とがさらに向上した塗装金属板を得ることができる。
【0031】
また、基体樹脂としてポリエステル樹脂が用いられた場合は、柔軟性を確保しながら硬度の良好な塗膜を形成することができるので、加工性の高い塗装金属板を得ることができる。
【0032】
また、基体樹脂と架橋剤との量比を所定のものとしたときは、基体樹脂とメラミン樹脂による硬化により塗膜の硬度をより良好なものとするとともに、基体樹脂とイソシアネート樹脂によって形成される架橋構造によって塗膜中のマトリックスを緻密で柔軟なものとすることができるので、さらに色落ちが防止され加工性が向上した塗装金属板を得ることができる。
【0033】
請求項9に係る塗装金属板によれば、表面塗膜の最外層がメラミン樹脂が表面濃化して形成されていることにより、表面塗膜の表面においてはメラミン樹脂の濃度が高くなって硬度の高い塗膜層を形成するとともに、表面塗膜の内部においてはメラミン樹脂の濃度が低くなって柔軟な塗膜層を形成する。さらに、この表面塗膜は、表面から内部に向かってメラミン樹脂の濃度が低下する構造を有している。このような表面塗膜の形成により、外部からの摩擦などの衝撃に対して耐性のある硬度の高い塗膜層を表面に形成しつつ、塗装金属板の折り曲げ時に破断を生じない柔軟な塗膜層を内部に形成することができ、耐色落ち性と加工性とがさらに向上する。また、このメラミン樹脂の表面濃化により、長期に亘って表面の硬度が高い表面塗膜を維持するので、耐候性の優れた塗装金属板を得ることができる。
【0034】
請求項10に係る塗装金属板によれば、アルミニウムと亜鉛との合金めっき鋼板を金属板に用いることにより、赤外線の反射性の高い合金により金属板を形成することができるので、赤外線の吸収による金属板の加熱を防止することができ、塗装金属板の遮熱性を向上することができる。また、アルミニウムと亜鉛との合金により耐食性の高い金属板を形成することができるので、塗装金属板の耐食性を向上することができる。
【0035】
請求項11に係る塗装金属板の製造方法によれば、架橋剤としてメラミン樹脂及びイソシアネート樹脂を含有してなる塗料が塗布された金属板を焼付けて塗膜を形成することにより、メラミン樹脂及びイソシアネート樹脂を含有する架橋剤が塗膜中で架橋構造を形成し、基体樹脂と架橋剤とが金属表面塗膜中で絡み合ったマトリックスが形成される。これにより、顔料が表面塗膜中に保持されて耐色落ち性・加工性・耐候性が優れた塗装金属板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の塗装金属板用塗料は、基体樹脂、メラミン樹脂とイソシアネート樹脂とを含む架橋剤及び顔料を含有するものである。この塗料は金属板に塗布されて金属板の表面に表面塗膜を形成するものである。
【0037】
基体樹脂は、表面塗膜を膜状に形成するための樹脂成分である。このような樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、ケイ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニルデン樹脂など、一般的に塗料に用いられる樹脂を使用することができる。これらの樹脂の中でも水酸基を有するものが好ましく、ポリエステル樹脂は柔軟性を確保しながら硬度の良好な表面塗膜を形成することができ、塗装金属板の加工性を向上させるのでより好ましい。ポリエステル樹脂としては、数平均分子量が2500〜20000であり、水酸基の含有量を示すOH価が1〜60であるのが好ましい。また、OH価は小さい方がメラミン樹脂が表面濃化しやすいので好ましい。なお、OH価とは、試料1g中に含まれる水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数を言う。
【0038】
架橋剤は、加熱により基体樹脂と架橋構造を形成し、表面塗膜を形成する硬化剤である。本発明に用いられる架橋剤には、メラミン樹脂及びイソシアネート樹脂が含有されている。メラミン樹脂としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミンなどを用いることができる。また、イソシアネート樹脂は、イソシアネート基を有する化合物からなる樹脂により形成された架橋剤である。本発明において、架橋剤は、メラミン樹脂とイソシアネート樹脂とが併用されるものである。この併用によって、基体樹脂に良好な架橋構造を形成して塗装金属板の耐色落ち性・加工性・耐候性を向上することができる。メラミン樹脂が含有されていないと表面塗膜に硬度が得られず、顔料が脱落しやすくなるので、塗装金属板の色落ちを十分に防止できない。一方、イソシアネート樹脂が含有されていないと表面塗膜に緻密で柔軟な架橋構造が形成できず、十分な加工性が得られない。架橋剤には、必要に応じてアミン等で中和した酸触媒を用いることが好ましい。それにより、メラミン樹脂による架橋反応の速度を促進することができる。酸触媒としては、例えばDBTDL(ジブチルチンジラウレート)、DBSA(ドデシルベンゼンスルホン酸)、パラトルエンスルフォン酸などを用いることができる。
【0039】
メラミン樹脂の含有量は、基体樹脂100質量部に対して2〜18質量部であるのが好ましく、5〜15質量部であるのがさらに好ましい。メラミン樹脂の含有量が2質量部
未満になると、塗膜の耐色落ち性が低下するおそれがある。一方、メラミン樹脂の含有量が18質量部を超えると加工性が低下するおそれがある。
【0040】
イソシアネート樹脂は、イソシアネート樹脂のイソシアネート基と基体樹脂の水酸基との比(NCO/OH)が0.1〜0.9となるように塗料中に配合されることが好ましく、0.25〜0.75となるように塗料中に配合されることがさらに好ましい。メラミン樹脂及びイソシアネート樹脂の含有量がこの範囲になることにより、耐色落ち性と加工性を向上することができるものである。基体樹脂の水酸基に対するイソシアネート基の量がこの範囲よりも少ないと加工性が低下するおそれがある。一方、基体樹脂の水酸基に対するイソシアネート基の量がこの範囲を超えると耐色落ち性が低下するおそれがある。塗料に配合するイソシアネート樹脂の量は、イソシアネート樹脂中に存在するイソシアネート基の量に依存しており、上記のNCO/OHとなるような範囲で適宜設定し得るものであるが、通常、ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜30質量部程度である。
【0041】
また、メラミン樹脂は、表面濃化能を有するものが好ましい。表面濃化能を有するメラミン樹脂を用いて表面塗膜を形成すれば、塗膜の最外層ではメラミン樹脂の濃度が高いために基体樹脂との架橋を密に形成して硬度の高い塗膜になるとともに、塗膜の内部では逆に架橋を少なくして柔軟な塗膜を形成することができる。このような表面塗膜を形成することにより、外部からの摩擦などの衝撃に対して耐性のある硬度の高い塗膜層を表面に形成しつつ、塗装金属板の折り曲げ時に破断を生じない柔軟な塗膜層を内部に形成することができ、耐色落ち性と加工性とをさらに向上することができる。
【0042】
メラミン樹脂を表面濃化させるためには、例えば、アミンで中和した酸触媒を用いることにより容易に行うことが可能である。このときアミンは揮発性のものが好ましい。すなわち、塗膜表面では解離したアミンが空気中に揮発しやすいために酸触媒の濃度は塗膜表面で高くなる。したがって、酸触媒の存在下で反応が速くなるメラミン樹脂を選択すると、塗膜表面でメラミン樹脂が架橋剤として消費され、塗膜中のメラミン樹脂が表面において拡散され、メラミン樹脂が塗膜表面に多く存在させることができると考えられる。この場合、表面濃化能を有するメラミン樹脂とは酸触媒存在下で架橋反応の速度が促進されるメラミン樹脂であると言える。酸触媒としては、例えばDBTDL、DBSA、パラトルエンスルフォン酸などを用いることができる。なお、基体樹脂の水酸基量が多い(OH価が高い)とメラミン樹脂がこの水酸基と反応して塗膜表面への拡散が減少するので好ましくなく、OH価としては、上記の範囲のものが好ましく用いられる。
【0043】
顔料は、表面塗膜に分散されて塗装金属板に色を付加する着色剤である。本発明に用いられる顔料としては、一般的に塗料として使用されているものを用いることができる。例えば、ペニレン系顔料、アゾ系顔料、ナフトール系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アクリルビーズなどの有機顔料や、カーボンブラック、鉄クロム複合酸化物、酸化鉄、酸化チタン、シリカ、アルミニウムなどの無機顔料を用いることができる。また、塗装金属板が所望の色となるように、各種の顔料を単独で又は混合して用いることができる。色調を調整するために各種の顔料を組み合わせる場合には、大まかに色調を決める主顔料と、色調を整える補色顔料とを用いることができる。その場合、赤外線を反射する効果の高い太陽熱高反射顔料を主顔料として所望の色調が調整される量、例えば基体樹脂100質量部に対して10〜100質量部塗料中に含有させ、小粒径の有機顔料を補色顔料として必要な色調を出すための量、例えば基体樹脂100質量部に対して1〜30質量部塗料中に含有させるのが好ましい。
【0044】
顔料として色調を出すために平均粒径0.5μm以下の小粒径の顔料を用いることができる。平均粒径の小さい顔料は、表面塗膜中の樹脂に保持されにくく、外部からの物理的な衝撃により脱落しやすく、そのため、塗装金属板の色落ちが起りやすい。しかしながら、本発明によれば、基体樹脂とメラミン樹脂及びイソシアネート樹脂からなる架橋剤とによって表面塗膜中に形成される樹脂マトリックスが、顔料の脱落を防止することができる。したがって、外部からの物理的な衝撃に対しても耐性を持ち、塗装金属板の色落ちを防止することができる。なお、顔料の平均粒径は、島津SALD−2200などの粒度分布計により測定することができる。
【0045】
小粒径の顔料としては、平均粒径0.01〜0.05μmのフタロシアニンブルー、平均粒径0.01〜0.02μmのフタロシアニングリーン、平均粒径0.009〜0.5μmのカーボンブラックなどが、例示される。なお、このような小粒径の顔料の色落ちは、メラミン樹脂が塗膜表層にて濃化すれば、硬性の高い塗膜表面により顔料がより保持されるので、さらに防止されるものである。小粒径の顔料は、色調にもよるが基体樹脂100質量部に対して一般的に1〜30質量部塗料中に含有される。
【0046】
また、顔料として有機顔料を用いることもできる。塗膜の色調にもよるが、特に遮熱性を要望される場合は調色のために赤外線透過性に優れた有機顔料を使用することが多い。有機顔料は無機顔料に比べて多種多様な色の顔料が塗料用として知られており、補色顔料として色調を整えることにより、微妙で繊細な着色を付与することができるものである。しかしながら、有機顔料は、平均粒径0.5μm以下と小粒径のものが多く、塗装金属板として用いた際に色落ちが生じやすい。しかし、本発明によれば、基体樹脂とメラミン樹脂及びイソシアネート樹脂からなる架橋剤とによって表面塗膜中に形成される樹脂マトリックスによって、有機顔料が強固に保持されているので、外部からの摩擦などの衝撃に対する塗装金属板の色落ちを防止することができる。さらに、メラミン樹脂とイソシアネート樹脂との架橋剤が良好に硬化することにより、長期間使用した際も色落ちを防止することができる。
【0047】
有機顔料としては、青色を呈するフタロシアニンブルー、緑色を呈するフタロシアニングリーン、黒色を呈するペニレン系顔料、黄色を呈するアゾ系顔料、赤色を呈するナフトール系顔料などが例示される。このような有機顔料の色落ちは、メラミン樹脂が表面濃化して表面塗膜の最外層が形成されれば、硬性の高い塗膜表面により顔料がより保持されるので、さらに防止されるものである。
【0048】
また、顔料として、赤外線反射顔料及び赤外線透過顔料の少なくとも一方の顔料を含むことも好ましい。このような顔料を含有することにより、金属板が赤外線を吸収して加熱されるのを防止し、塗装金属板の遮熱性が向上される。特に、これらの顔料と、上記の小粒径顔料や有機顔料とが併用されたり、赤外線を反射又は透過させる性質を有する小粒径顔料や有機顔料が用いられたりした場合、遮熱性を向上させつつ、多様な色の表面塗膜を形成することができる。
【0049】
赤外線反射顔料は、赤外線を反射する作用を有する無機の顔料である。このようなものとして、鉄クロム複合酸化物、酸化チタン、酸化鉄、鉄コバルト、アルミ、マイカが、例示される。
【0050】
赤外線透過顔料は、赤外線を透過させる作用を有する有機の顔料である。このようなものとして、ペニレン系顔料、アゾ系顔料、ナフトール系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが、例示される。その中でも、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンが、塗膜への適応性がよく赤外線透過能が高いので、好ましい。
【0051】
赤外線反射顔料及び赤外線透過顔料の含有量は、所望される色調により適宜設定されるが、一般的に基体樹脂100質量部に対して10〜100質量部程度である。
【0052】
上記の各成分を含有する塗装金属板用塗料は、金属板への塗布性付与や表面塗膜の機能向上などのために、適宜、その他の成分が含有される。例えば、上記の各成分を分散するために溶剤が含有される。溶剤としては、シンナーなどが使用される。
【0053】
本発明の塗装金属板は、金属板の表面に上記の塗装金属板用塗料によって表面塗膜が形成されているものである。この塗装金属板は、塗装鋼板として使用することができる。
【0054】
金属板は、塗装金属板の基材となる板状の金属である。金属板としては、塗装金属板として使用されるものを任意に用いることができるが、赤外線の反射性が高い金属板であることが好ましい。赤外線の反射性が高いと、表面塗膜を通過して金属板に届いた赤外線が反射されるために、塗装金属板の遮熱性が向上される。このようなものとして、例えば、アルミニウム系や亜鉛系のめっきを施しためっき鋼板を用いることができる。また、高い耐食性を維持するためにアルミニウムと亜鉛との合金めっき鋼板などを用いること、特に55%アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板を用いることが好ましい。さらなる耐食性の向上のために、マグネシウムなど他の合金成分を含有しためっきが施されてもよい。
【0055】
金属板がめっき鋼板の場合、塗膜の密着性向上のために、金属板に下地処理を施すのが好ましい。下地処理は、金属板がアルカリ脱脂などの洗浄がなされた後に行われてもよい。この下地処理は、塗布型クロメート処理あるいはクロメートフリー処理のいずれであってもよく、公知の方法で行われる。下地処理の付着量は、10〜200mg/mが好ましい、この範囲より少ないと、塗膜の密着性が低下するおそれがあり、この範囲より多いと、下地処理が凝集破壊しやすく、塗装金属板の加工性が低下するおそれがある。
【0056】
表面塗膜は、金属板の表面に直接形成されてもよいが、好ましくは金属板の表面に下塗り塗膜が塗布された後に、上塗り塗膜として塗布されることにより形成される。これにより、表面塗膜の金属板への密着性が向上する。また、下塗り塗膜と表面塗膜との間に、中塗り塗膜を設けてもよい。下塗り塗膜及び中塗り塗膜としては、エポキシ系の樹脂やポリエステル系、ウレタン系の樹脂などにより形成することができるが、これに限定されるものではない。この下塗り塗膜と中塗り塗膜の厚みは、合わせて3〜30μmとするのが好ましい。下塗り塗膜及び中塗り塗膜の厚みがこの範囲よりも薄いと、塗装金属板の耐食性や表面塗膜の密着性が低下するおそれがある。一方、下塗り塗膜及び中塗り塗膜の厚みがこの範囲よりも厚いと、塗装金属板の加工性や遮熱性が低下するおそれがある。このようにして、直接、又は、下塗り塗膜や中塗り塗膜を介して、金属板に表面塗膜が設けられる。
【0057】
表面塗膜の厚みは、加工性や着色性などの性能が所望のものとなるように設定されるものであるが、好ましくは、10〜30μmである。表面塗膜の厚みが10μmより少ないと、塗装金属板に十分な着色が得られないおそれがある。一方、表面塗膜の厚みが30μmを超えると、加工性の低下を招くおそれがある。
【0058】
こうして表面塗膜が形成された塗装金属板は、外部から摩擦などの衝撃が加えられた際、特にその表面が擦られた際も、顔料の脱落がしにくく、色落ちを防止するものである。さらに、この塗装金属板は、0.8〜2.1μm波長域での日射熱反射率が30%以上のものであることが好ましい。日射熱反射率がこの値になることにより、塗装金属板の遮熱性が向上し、塗装金属板を建材として使用した場合に屋内の温度の上昇をより抑制することができる。日射熱反射率は、例えば、分光測光器によって測定することができる。
【0059】
表面塗膜は、その最外層がメラミン樹脂が表面濃化して形成されているものであることが好ましい。表面濃化とは、メラミン樹脂が表面で濃化していることをいい、塗料が硬化して表面塗膜が形成した際に、表面塗膜の最外層におけるメラミン樹脂の濃度が、表面塗膜の内部における濃度よりも高くなることを意味する。この表面濃化により、表面塗膜は、表面から内部に向かってメラミン樹脂の濃度が徐々に低下する構造を有している。このように、メラミン樹脂が表面濃化して表面塗膜の最外層が形成されることによって、表面塗膜の表面においてはメラミン樹脂の濃度が高くなって硬度の高い塗膜層を形成するとともに、表面塗膜の内部においてはメラミン樹脂の濃度が低くなって柔軟な塗膜層を形成する。したがって、外部からの摩擦などの衝撃に対して耐性のある硬度の高い塗膜層を表面に形成しつつ、柔軟な塗膜層を内部に形成することができ、加工性の高い塗装金属板を得ることができる。また、表面において濃化して硬性のある塗膜表面を形成することによって、表面塗膜の内部の顔料が硬性のある塗膜表面によって強固に保持されるので、塗装金属板の色落ちを防止することができる。さらに、このメラミン樹脂の表面濃化により、屋外に晒された場合でも、長期に亘って表面塗膜の性質が維持される。すなわち、塗装金属板の白亜化やチョーキングなどが抑制される。したがって、耐候性の優れた塗装金属板を得ることができる。
【0060】
メラミン樹脂の表面濃化は、表面塗膜中のメラミン樹脂濃度が最外層で濃化しているものであればよく、表面塗膜内部の濃度は限定されるものではない。すなわち、最外層でのメラミン樹脂の濃度が最も高ければよく、表面塗膜の内部に最外層よりも低い濃度で極大域を有するようなものであってもよい。この表面濃化によるメラミン樹脂の濃度としては、表面塗膜の膜厚中央の濃度よりも膜表面の濃度が1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。このような、濃度勾配になることにより、柔軟性が高く硬性のよい表面塗膜が形成され、塗装金属板の加工性と耐色落ち性をさらに向上することができる。メラミン樹脂の表面濃化は、例えば、メラミン樹脂に含まれているトリアジン環のIR吸収(815cm−1)を分析することによって判別される。すなわち、表面濃化されていれば、表面塗膜の最外層でのIRの吸収強度が高くなる。メラミン樹脂を表面濃化させるには、上述したように表面濃化能を有するイソシアネート樹脂と、ポリエステル樹脂と、酸触媒とを適宜組み合わせることにより可能である。
【0061】
本発明は、さらに、上記の表面塗膜を形成する工程を含む塗装金属板の製造方法に関するものである。製造方法としては、まず、金属板に、必要な場合は下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成する。その際、金属板は、好ましくは下地処理されたものが用いられる。下塗り塗膜及び中塗り塗膜は、ロールコータ、スプレーなどによる塗布など、適宜の方法により形成される。そして、別途に調製された表面塗膜形成用の塗料をロールコータ、スプレー、カーテンフローコーター、ダイコーター、粉体塗装等で下塗り塗膜等の上に塗布する。この塗布は、塗料が乾燥して形成された表面塗膜の厚みが10〜30μmとなるように行われる。また、表面塗膜形成用の塗料は、基体樹脂、架橋剤及び顔料が溶剤中に分散混合されて形成されるものである。塗料の好ましい構成は上記の通りであり、例えば、基体樹脂としてポリエステル樹脂が、架橋剤として表面濃化するメラミン樹脂及びイソシアネート樹脂が、顔料として有機顔料と赤外線反射顔料が、溶媒としてシンナーが、それぞれ用いられる。その際、酸触媒を配合することも好ましく、メラミン樹脂が表面濃化するような基体樹脂とメラミン樹脂と酸触媒との組み合わせを適宜用いることが可能である。そして、塗料の塗布後、最高到達温度200〜250℃となるように、金属板を約30〜100秒で焼付け乾燥する。このような焼付け条件により、硬度が良好で顔料の脱落のない表面塗膜を形成することができ、加工性がよく色落ちのない塗装金属板を製造することができる。
【0062】
このように製造された塗装金属板は、屋根材や壁材などの建材や電化製品などの金属外装に用いられる。そして、長期に亘って、外部からの摩擦などの衝撃に対しても色落ちを防止し、表面に白亜化などを起こさず、又、金属には腐食を招かず、耐候性のあるものである。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0064】
[実験1:塗装金属板の製造と評価]
[塗装金属板の製造]
金属板として、55%アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板(目付:AZ150、板厚:0.3mm)を用いた。この金属板に、塗布型クロメート(日本ペイント株式会社製:NRC300、クロム換算で30mg/m2 )で下地処理を施した。次に、下塗り塗膜用の塗料として、エポキシ樹脂(日本ファインコーティングス株式会社製:P667Sプライマー)を用い、乾燥時の塗膜の厚みが4μmとなるように、この塗料をバーコーターで金属板に塗装した。その後、最高到達温度200℃で約40秒間焼き付けて、下塗り塗膜を形成した。
【0065】
上塗り塗膜用の塗料の材料として、すなわち表面塗膜形成用の塗料の材料として、次のものを用いた。
・基体樹脂:ポリエステル樹脂(三井化学株式会社製:アルマテックスP645)
・メラミン樹脂A(三井サイテック株式会社製:サイメル303、表面濃化能あり)
・メラミン樹脂B(三井サイテック株式会社製:サイメル370、表面濃化能なし)
・メラミン樹脂C(三井サイテック株式会社製:サイメル325、表面濃化能なし)
・イソシアネート樹脂(住友バイエルウレタン株式会社製:デスモジュール1265)
・酸触媒:DBTDL(ジブチルチンジラウレート)
・酸触媒:パラトルエンスルフォン酸(楠本化成株式会社:NACURE2500)
・鉄クロム複合酸化物顔料(東罐マテリアル・テクノロジー株式会社製:42-703、黒色を呈する無機顔料、赤外線反射顔料)
・フタロシアニンブルー(大日精化株式会社製:S-4920、青色を呈する有機顔料、平均粒径0.01〜0.05μm)
・溶剤:シンナー
ポリエステル樹脂100質量部に対して、表1に示した配合量(質量比、NCO/OH)の架橋剤、鉄クロム複合酸化物顔料33質量部、フタロシアニンブルー5質量部、及び、イソシアネート樹脂の6分の1の質量のDBTDLを適宜シンナー及び添加剤を使用してガラスビーズで分散し、表面塗膜形成用の塗料を調製した。また、メラミン樹脂Aを用いたものには酸触媒としてパラトルエンスルフォン酸をメラミン樹脂100質量部に対して6質量部加えた。なお、イソシアネート樹脂の量はポリエステル樹脂100質量部に対して1〜20質量部程度であった。そして、調製された各塗料をバーコーターにより、下塗りされた金属板の上に、乾燥時の塗膜の厚みが15μmとなるように塗装した。その後、最高到達温度230℃で約60秒間焼き付けて、表面塗膜を形成した。このようにして製造された塗装金属板について各種の評価を行った。
【0066】
[塗装金属板の評価方法]
評価1.耐色落ち性
ガーゼを塗装金属板にあてて50回擦り、ガーゼに顔料が移っているか否かを目視により観察した。ガーゼに顔料が確認された程度により、次の4段階の評価を付けた。
【0067】
色落ちなし(◎)、 わずかに色落ちあり(○)
色落ちあり(△)、 著しい色落ちあり(×)
評価2.加工性
曲げ性加工方法(JIS3321.8.2)に準拠し、内側間隔(表示厚さの板の枚数)0枚で塗装金属板の加工を行った。加工後、テープによる剥離試験を行い、テープに塗膜が付着している面積率で評価した。なお、試験は温度20℃で実施した。面積率により、次の4段階の評価を付けた。
【0068】
剥離がない(◎)、 面積率10%未満の剥離(○)
面積率10〜35%の剥離(△)、 面積率35%を超える剥離(×)
評価3.耐候性(エロージョン)
太陽光線、空気、湿気などに晒される大阪府堺市の野外に、1年間塗装金属板を放置した。目視により外観(表面の白亜化、表面の凹凸形成、チョーキング、色落ち、金属板の腐食)を観察した。外観から次の2段階の評価を付けた。
【0069】
変化が小さい(○)、 変化が大きい(×)
[評価結果]
各評価の結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1には、実施例の塗装金属板が、比較例の塗装金属板よりも耐色落ち性及び加工性に優れていることが示されている。具体的には、イソシアネート樹脂が含有されていない比較例1〜3の塗装金属板は、いずれも加工性がよくない。また、メラミン樹脂が含有されていない比較例4の塗装金属板は、耐色落ち性がよくない。これに対して、実施例は、いずれも耐色落ち性と加工性がよい。その中でも、実施例1〜5は、耐候性も優れており、実施例3及び4は、加工性がさらに優れていることが示されている。なお、加工性は、塗装金属板における基本的な要件であり、耐候性が良好であっても加工性が満足されなければ、塗装金属板の性能が著しく劣るものである。
【0072】
[実験2:表面塗膜の分析]
実施例3の塗装金属板について、金属表面に形成された塗膜を厚み方向で斜めに切断して、表面に露出された塗膜について、IR(赤外吸収スペクトル)分析を行った。IRでメラミン樹脂由来のトリアジン環の吸収(815cm−1)強度を測定することにより、塗膜の厚み方向のメラミン樹脂の濃淡が判断できる。図1には、IRの分析結果がグラフで示されている。図1の横軸は塗膜の表面からの深さ(厚み)を表し、縦軸はIR吸収強度を表している。図1に示されるように、塗膜の内部から表面に近づくに従ってトリアジン環の吸収強度が高くなっており、メラミン樹脂が塗膜の表面で濃化されていることが確認された。
【0073】
[実験3:塗装金属板の評価]
実施例1〜6及び比較例1〜4により得た塗装金属板について、実験1の評価1の方法と同様に、ガーゼを塗装金属板にあてて50回擦り、ガーゼをカメラで撮影して、画像を比較することにより、塗装金属板の耐色落ち性を評価した。図2に塗装金属板を擦った後のガーゼの画像を示す。図2の画像に示されるように、本発明の塗装金属板は、比較例の塗装金属板よりも、色落ちを防止するものであることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の塗装金属板の一例についての表面塗膜に関する分析例であり、表面塗膜の深さとIR吸収強度との関係が示されている。
【図2】耐色落ち性の試験結果を示す画像であり、試験後の本発明と比較例の塗装金属板の画像が示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装金属板の表面塗膜を形成するための塗料であって、基体樹脂、メラミン樹脂とイソシアネート樹脂とを含む架橋剤及び顔料を含有することを特徴とする塗装金属板用塗料。
【請求項2】
平均粒径0.5μm以下の顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載の塗装金属板用塗料。
【請求項3】
有機顔料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装金属板用塗料。
【請求項4】
赤外線反射顔料及び赤外線透過顔料の少なくとも一方の顔料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装金属板用塗料。
【請求項5】
メラミン樹脂が表面濃化能を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗装金属板用塗料。
【請求項6】
基体樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装金属板用塗料。
【請求項7】
基体樹脂が水酸基を含むものであり、メラミン樹脂の含有量が基体樹脂100質量部に対して2〜18質量部であると共に、イソシアネート樹脂のイソシアネート基と基体樹脂の水酸基との比(NCO/OH)が0.1〜0.9であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装金属板用塗料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装金属板用塗料により表面塗膜が形成されていることを特徴とする塗装金属板。
【請求項9】
表面塗膜は、その最外層がメラミン樹脂が表面濃化して形成されているものであることを特徴とする請求項8に記載の塗装金属板。
【請求項10】
金属板が、アルミニウムと亜鉛との合金めっき鋼板であることを特徴とする請求項8又は9に記載の塗装金属板。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装金属板用塗料を金属板に塗布した後、焼付けて表面塗膜を形成することを特徴とする塗装金属板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−150374(P2010−150374A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329615(P2008−329615)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】