説明

塗装鋼板、加工品および薄型テレビ用パネルならびに塗装鋼板の製造方法

【課題】特に、曲げ加工性、プレス加工性、加工後塗膜密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性、導電性および耐食性に優れ、良好な表面外観と十分な塗膜硬度をもつ塗装鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、架橋剤により硬化させたポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子とを含有する単一塗膜を形成してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に薄い塗膜を形成し、好ましくは前記鋼板の他方の面に導電性を付与した、曲げ加工性、プレス加工性、加工後塗膜密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性、導電性および耐食性に優れ、良好な表面外観と十分な塗膜硬度をもつ塗装鋼板、加工品および薄型テレビ用パネルならびに塗装鋼板の製造方法に関するものである。本発明の塗装鋼板は、例えば薄型テレビ用パネル、冷蔵庫、ファンヒータなどの家電製品、建材、自動車部品などの素材として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
通常、プレコート鋼板では、外面下塗り塗料に主として変性ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂を使用することで、下地鋼板との密着性、耐食性などを確保し、また、外面上塗り塗料にポリエステル系、アクリル系塗料などを使用することで、主として耐汚染性、意匠性、耐傷付き性、バリア性などを付与している。一方で、このプレコート鋼板は、塗装や焼付の際の工程数が多く、そのための時間も多くかかるため、塗装作業の合理化や省資源化の観点からは、塗膜の薄膜化が望まれている。
【0003】
しかし、溶剤型塗料において、従来のプレコート鋼板用塗料をそのまま単一塗膜として用いた場合、下塗り塗料のみでは耐汚染性、意匠性などが不十分であり、また、上塗り塗料のみでは下地鋼板との密着性、耐食性などが不十分となる。また、粉体塗料は膜厚が厚く、硬化に時間がかかる難点がある。したがって、塗装作業の合理化、省資源化などを考慮した溶剤型塗料による薄膜化したプレコート鋼板を採用するためには、プレコート鋼板の下塗り層と上塗り層の両方の機能を併せ持ち、且つ短時間で硬化可能な薄膜塗膜の設計が必要となる。
【0004】
ところで、プレコート鋼板には、高硬度、高加工性、耐汚染性、耐薬品性、耐水性、耐食性など多くの性能が要求される。なかでも塗装・焼付を行った後にプレス加工が施されるプレコート鋼板にとって、加工性、特にプレス加工性は非常に重要な性能である。ここでいうプレス加工性とは、平らな金属板から種々の形状に加工していく際の折曲げ、絞り、切断などの工程において塗膜の損傷が少ないことを指し、比較的穏和な曲げ加工などの加工においては、塗膜自身の伸びや柔軟性の程度が大きいほど加工性は良好となるが、絞り加工のような厳しいプレス加工では、塗膜の伸びや柔軟性のみならず、変形や加工時の応力に耐え得る強度と耐傷付き性も重要となってくる。
【0005】
このようなプレコート鋼板の要求特性に対して、例えば、特許文献1では、硬度、耐汚染性および耐侯性に優れた塗膜を得ることを目的として、特定のポリエステル樹脂、メラミン樹脂(硬化剤)などを配合した塗料組成物及びこれを用いた塗装鋼板が提案されている。また、特許文献2では、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂(硬化剤)、防錆顔料、有機高分子微粒子などを配合した塗料組成物を塗装することにより、1コートで加工性、耐食性、密着性、耐衝撃性、耐スクラッチ性、意匠性を満足させる塗装鋼板が提案されている。
【特許文献1】特開平8−100150号公報
【特許文献2】特開平9−111183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載された塗装鋼板はいずれも、化成皮膜としてクロムを含有するクロメート系皮膜を用いることを想定しており、これは環境上好ましくなく、また、ポリエステル樹脂が、薄い塗膜で絞り加工のような厳しいプレス加工時の応力に耐え得る強度の塗膜が得られるようには設計されておらず、このため十分なプレス加工性が得られない。加えて、例えば薄型テレビ用パネルとして使用する場合、プレス加工したパネルの内面になる塗装鋼板の裏面は、溶接や電磁波シールド等の必要性から導電性を有することが必要となるが、特許文献1及び2はこの点について全く考慮されていない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記のような従来技術の課題を解決し、絞り加工性などの厳しいプレス加工に対しても塗膜に割れなどが生じにくく、しかも製造する際の高速操業が可能である、曲げ加工性、プレス加工性、加工後塗膜密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性、導電性および耐食性に優れ、良好な表面外観と十分な塗膜硬度をもつ塗装鋼板、加工品および薄型テレビ用パネルならびに塗装鋼板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決して優れた性能の薄膜の塗装鋼板を得るために検討を重ねた結果、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、架橋剤により硬化させたポリエステル系樹脂と、特定の樹脂粒子とを含有する薄い塗膜を形成し、好ましくは前記鋼板の他方の面は、導電荷重が500g以下の優れた導電性を有するように構成することにより、曲げ加工性、プレス加工性、加工後塗膜密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性、導電性および耐食性に優れ、良好な表面外観と十分な塗膜硬度をもつ塗装鋼板が得られることを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨構成は以下の通りである。
(1)鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、架橋剤により硬化させたポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子とを含有する単一塗膜を形成してなることを特徴とする塗装鋼板。
【0010】
(2)前記単一塗膜の膜厚は10μm以下である上記(1)記載の塗装鋼板。
【0011】
(3)前記架橋剤は、メラミン樹脂、尿素またはイソシアネートである上記(1)または(2)記載の塗装鋼板。
【0012】
(4)前記ポリエステル系樹脂は、エポキシ変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステルまたはアクリル変性ポリエステルである上記(1)、(2)または(3)記載の塗装鋼板。
【0013】
(5)前記樹脂粒子は、アクリル樹脂またはナイロン樹脂からなる上記(1)〜(4)のいずれか1項記載の塗装鋼板。
【0014】
(6)前記樹脂粒子の平均粒子径は、単一塗膜の膜厚の0.5倍超え2倍以下の範囲である上記(1)〜(5)のいずれか1項記載の塗装鋼板。
【0015】
(7)前記鋼板の一方の面の化成皮膜と前記単一塗膜との間に下塗り塗膜を形成する上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の塗装鋼板。
【0016】
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる加工品。
【0017】
(9)上記(1)〜(7)のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が外部に露出する凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる薄型テレビ用パネル。
【0018】
(10)鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、ポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子と、架橋剤とを含有する塗料組成物を塗布した後、鋼板温度170〜250℃、時間20〜90秒の加熱処理を施して、硬化した単一塗膜を形成することを特徴とする塗装鋼板の製造方法。
【0019】
(11)前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、下塗り塗膜を形成したのち、前記塗料組成物を塗布する上記(10)記載の塗装鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に薄い塗膜を形成し、好ましくは前記鋼板の他方の面に導電性を付与することで、絞り加工性などの厳しいプレス加工に対しても塗膜に割れなどが生じにくく、しかも製造する際の高速操業が可能である、曲げ加工性、プレス加工性、加工後塗膜密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性、導電性および耐食性に優れ、良好な表面外観と十分な塗膜硬度をもつ塗装鋼板、加工品および薄型テレビ用パネルならびに塗装鋼板の製造方法の提供が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の詳細と限定理由を説明する。
本発明の塗装鋼板は、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、架橋剤により硬化させたポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子とを含有する単一塗膜を形成してなることを特徴とする塗装鋼板である。
【0022】
(亜鉛系めっき)
本発明の塗装鋼板の下地鋼板となる亜鉛系めっき鋼板としては、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(例えば、溶融亜鉛−55質量%アルミニウム合金めっき鋼板、溶融亜鉛−5質量%アルミニウム合金めっき鋼板)、鉄−亜鉛合金めっき鋼板、ニッケル−亜鉛合金めっき鋼板、黒色化処理後のニッケル-亜鉛合金めっき鋼板などの各種亜鉛系めっき鋼板を用いることができる。
【0023】
(化成皮膜)
亜鉛系めっき層を有するめっき鋼板の両面に化成皮膜を形成する。化成皮膜は、環境の観点よりクロムを含有しない化成皮膜とする。この化成皮膜は、主としてめっき層と単一塗膜との密着性向上のために形成される。密着性を向上するものであればどのようなものでも支障はないが、密着性だけでなく耐食性を向上できるものがより好ましい。密着性と耐食性の点からシリカ微粒子を含有し、耐食性の点からリン酸及び/又はリン酸化合物を含有することが好ましい。シリカ微粒子は、湿式シリカ、乾式シリカのいずれを用いても構わないが、密着性向上効果の大きいシリカ微粒子、特に乾式シリカが含有されることが好ましい。リン酸やリン酸化合物は、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸など、これらの金属塩や化合物などのうちから選ばれる1種以上を含有すれば良い。さらに、アクリル樹脂などの樹脂、シランカップリング剤などの1種以上を添加してもよい。
【0024】
(単一塗膜)
亜鉛系めっき鋼板の一方の面の化成皮膜上に、架橋剤により硬化させたポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子とを含有する単一塗膜を形成する。
【0025】
(A)架橋剤
ポリエステル系樹脂を硬化させる架橋剤としては、例えばメラミン樹脂、尿素またはイソシアネートを用いることがプレス加工性と耐薬品性のバランスの点で好ましい。なお、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメテロール基の一部または総てをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。
【0026】
(B)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂は、架橋剤により硬化され塗膜の強靭性が向上し優れたプレス加工性が得られる。使用するポリエステル系樹脂の数平均分子量は5000〜25000、好ましくは10000〜22000、ガラス転移温度Tgが20〜80℃、好ましくは50〜70℃、水酸基価が3〜30 KOHmg/g、好ましくは4〜20 KOHmg/g、酸価が0〜10 KOHmg/g、好ましくは3〜9 KOHmg/gであることが好ましい。
【0027】
ポリエステル系樹脂の数平均分子量が5000未溝では塗膜の伸びが不十分となり、プレス加工性が低下するとともに、加工後塗膜密着性も低下する傾向がある。一方、数平均分子量が25000を超えると、塗料組成物が高粘度になるため過剰な希釈溶剤が必要となり、塗料中に占める樹脂の割合が滅少するため、適切な塗膜が得られず、さらに、他の配合成分との相溶性も著しく低下する傾向がある。
【0028】
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgが20℃未満では塗膜の強靭性が低下し、十分なプレス加工性が得られず、また、塗膜硬度、加工後塗膜密着性などの特性も低下する傾向がある。一方、ガラス転移温度Tgが80℃を超えると、十分な曲げ加工性が得られなくなるおそれがある。ポリエステル系樹脂の水酸基価が3 KOHmg/g未満では、架橋反応が不十分となるために十分な塗膜硬度が得られず、一方、水酸基価が30 KOHmg/gを超えると十分な加工性が得られなくなるおそれがある。また、ポリエステル系樹脂の酸価が10 KOHmg/gを超えると他の配合成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0029】
前記ポリエステル系樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとを常法により縮重合させることで得られるが、生成したポリエステル系樹脂の遊離カルボキシル基が極く僅かで酸価が低い場合、該ポリエステル系樹脂の水酸基の一部をカルボン酸で修飾し、酸価を3KOHmg/g以上に増やす(但し、10KOHmg/g以内)ことにより、下地に対する密着性をより一層向上させ、また、硬化速度をさらに高めることが可能である。前記多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、シュウ酸、トリメリット酸など、若しくはこれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物などが代表的なものとして挙げられる。
【0030】
また、ポリエステル系樹脂としては、エポキシ変性ポリエステル樹脂が好ましい。さらに、エポキシ変性ポリエステル樹脂の多価アルコール成分のうち、30〜60質量%をビスフェノールとすることが好ましく、これにより、より強靭で高弾性の塗膜が得られ、プレス加工性及び耐薬品性をより一層向上させることができる。
【0031】
多価アルコール成分のうち、ビスフェノールAが30質量%未満では、強靭な塗膜が得られず、耐薬品性及びプレス加工性が低下する傾向がある。一方、ビスフェノールAが60質量%を超えると単一塗膜が硬くなり、プレス加工性が低下する傾向がある。ビスフェノールA以外の多価アルコール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが代表的なものとして挙げられる。また、シクロヘキサンジメタノールを塗膜の強靭性を調整するために加えてもよい。
【0032】
ポリエステル系樹脂としてエポキシ変性ポリエステル樹脂を用い、架橋剤としてメラミン樹脂を用いる場合について、好適な配合割合について説明すると、ポリエステル系樹脂及びメラミン樹脂の配合割合は、固形分の割合でエポキシ変性ポリエステル樹脂100質量部に対し、メラミン樹脂を5〜30質量部、好ましくは10〜25質量部とする。エポキシ変性ポリエステル樹脂100質量部に対してメラミン樹脂の配合量が5質量部未満では、塗膜硬度、耐汚染性などの特性が低下し、一方、30質量部を超えると加工性、加工後塗膜密着性などの特性が低下する傾向がある。
【0033】
(C)樹脂粒子
単一塗膜中に含有する樹脂粒子は、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子を用いる。平均粒子径が3〜40μmで、かつガラス転移温度が70〜200℃の高硬度の樹脂粒子を含有させることで、曲げ加工性を確保しつつ、プレス加工性を向上させることができる。樹脂粒子の平均粒子径、ガラス転移温度および硬度を上記のように規定したのは、次の理由による。
【0034】
樹脂粒子は、潤滑剤、または金型と下地である化成皮膜との接触抑制効果を有するものとして作用し、プレス加工性を向上させる。樹脂粒子の平均粒子径が3μm未満の場合は、潤滑剤としての効果または金型と化成皮膜の接触抑制効果が不十分でプレス加工性向上効果がなくなり、一方、40μm超えの場合は、樹脂粒子自体が塗膜から剥離し、摺動抵抗が大きくなりプレス加工性が劣化する。このため、樹脂粒子の平均粒子径は3〜40μmとする。また、樹脂粒子のガラス転移温度が70℃未満の場合は、樹脂粒子の硬度が不足し、一方、120℃超えの場合は、樹脂粒子自体が摺動抵抗として働き、いずれもプレス加工性が劣る。
【0035】
なお、ここでいう「樹脂粒子の平均粒子径」は、塗膜断面を光学顕微鏡で少なくとも3視野で観察し、各樹脂粒子の最大径とそれに直交する径との平均径をそれぞれの視野で算出し、これら算出した平均径の平均値を意味する。
【0036】
また、樹脂粒子の硬度は、単一塗膜のベース層となるポリエステル系樹脂よりも高硬度であることが必要である。本発明では、単一塗膜中の樹脂粒子を高硬度とすることにより、プレス加工時に、樹脂粒子が金型に抵抗して金型表面が化成皮膜や亜鉛めっき層と直接接触して傷つけるのを防止することができる。樹脂粒子の硬度が、ポリエステル系樹脂と同等かもしくは軟質であると、上記の効果が得られないからである。
【0037】
なお、ここでいう樹脂粒子やポリエステル系樹脂の「硬度」は、そのTgで評価できる。Tgが高いと、硬度が高いものとする。
また、樹脂粒子の硬度は、ポリエステル系樹脂の硬度よりも過度に高いと、成形加工時に、単一塗膜を構成する樹脂粒子とポリエステル系樹脂の界面に応力が集中して、樹脂粒子が塗膜から脱離しやすくなるため、樹脂粒子とポリエステル系樹脂のTg差は、20〜130度の範囲であることが好ましい。
【0038】
特に優れたプレス加工性向上効果を発現させるには、樹脂粒子の含有量は、塗膜中に5〜20質量%含有させることが好ましい。
【0039】
樹脂粒子の樹脂種としては、例えばアクリル樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。特に、 ロールコートによる塗装がしやすい点で、樹脂粒子としてナイロン樹脂を用いることが好適である。
【0040】
プレス加工性をより一層向上させる場合には、単一塗膜中に、ポリオレフォン系、マイクロクリスタリン系またはフッ素系のワックスをさらに含有させることが好適である。なお、ポリオレフォン系、マイクロクリスタリン系の場合には軟化点を、フッ素系の場合には結晶化度を適宜選択して使用することが好ましい。例えば、ポリオレフォン系ワックス又はマイクロクリスタリン系ワックスを含有させる場合には、軟化点が70〜140℃のものを使用することが好ましい。軟化点が70℃未満であると、コイル保管時や背面パネルとして使用時にワックスが軟化して溶け出すおそれがあり、また、140℃超えでは、プレス時の摺動性改善効果が少なくなるからである。
【0041】
ワックスの含有量は塗膜中に0.4〜4.0質量%であることが好ましい。ワックスの含有量が塗膜中で0.4質量%未満になると、プレス加工性をさらに向上させる効果が十分でなく、また、4.0質量%を超えると、その効果が飽和状態に近づき、また、コスト的に不利になるからである。
【0042】
さらに、単一塗膜は、着色のために酸化チタンやカーボンブラック、また外観の意匠性の点からアルミニウム粉などを適宜添加しても構わない。
【0043】
単一塗膜の膜厚は10μm以下であることが好ましい。本発明の塗装鋼板は、薄膜用の塗膜設計のもとになされており、この点で、この発明では、単一塗膜の膜厚は10μm以下の場合に、顕著な効果を奏する。すなわち、本発明では、10μm以下の膜厚でも、厳しいプレス加工に対して十分耐え得る塗膜性能を有している。また、このような塗膜の薄膜化はコスト面で非常に有利である。単一塗膜の乾燥膜厚の下限は特に限定しないが、樹脂粒子の平均粒子径との関係から、2μm以上であることが好ましい。
【0044】
また、単一塗膜のプレス加工性の観点から、樹脂粒子の平均粒子径を、単一塗膜の膜厚の0.5倍超え2倍以下の範囲とすることが好ましく、1〜2倍の範囲にすることがより好ましい。
【0045】
単一塗膜は、例えば塗料組成物を塗布・加熱することにより形成することが好ましい。この塗料組成物には、樹脂の架橋反応を促進するために、必要に応じて硬化触媒を使用することができる。使用可能な硬化触媒としては、酸またはその中和物が挙げられ、例えば、P−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸及びこれらのアミン中和物が代表的なものとして挙げられる。これらの硬化触媒を用いることにより、短時間架橋が可能となり製造時の操業性が向上する。
【0046】
硬化触媒の配合量は、塗料固形分の割合で前記ポリエステル樹脂とメラミン樹脂の合計100質量部に対して、0.1〜2質量部の範囲が適当である。また、本発明で使用する塗料組成物には必要に応じて、通常塗料分野で使用されている顔料、潤滑剤、分散剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤などを適宜配合することができる。
【0047】
上記の塗料組成物を実際に使用するに当っては、これを有機溶剤に溶解して使用することが好ましい。使用する有機溶剤としては、通常塗料用に使用されている各種溶剤が使用可能であり、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、石油ナフサなどが挙げられる。有機溶剤の配合量は、塗装作業性に合わせて、塗料粘度が40〜200秒(フォードカップNo.4/室温)になるような量が適当である。
【0048】
以上が本発明で使用する塗料組成物の構成であるが、塗料組成物を調製するに当っては、サンドグラインドミル、ボールミル、ブレンダーなどの通常の分散機や混練機を適宜選択して使用し、各成分を配合することができる。このようにして配合した塗料の顔料分散度は、グラインドゲージA法25μm以下とするのが適当である。
【0049】
下塗り塗膜は、主に耐薬品性をさらに向上させるために、単一塗膜の下層に設けることが好ましい。ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂又はアミン変性エポキシ樹脂や、さらに、Caイオン交換シリカ、Mg処理トリポリリン酸二水素アルミニウム、Ca処理トリポリリン酸二水素アルミニウム又はMgイオン交換シリカなどの防錆顔料を含有する下塗り塗料を塗布して形成することが好ましい。下塗り塗膜は曲げ加工性を発現するために柔軟性を有することが好ましく、下塗り塗料のポリエステル樹脂のガラス転移温度は10℃から80℃であることが好ましい。さらに良好な耐食性を得るためには、Caイオン交換シリカ、Mg処理トリポリリン酸二水素アルミニウム、Ca処理トリポリリン酸二水素アルミニウム又はMgイオン交換シリカを含有させることが好ましい。好ましい含有量は10〜60質量%である。
【0050】
下塗り塗膜は、膜厚が1μm未満になると防錆顔料が不足するために耐食性に不利となり、5μmを超えると曲げ加工性に不利となるので、膜厚は1〜5μmが好ましい。
【0051】
本発明では、鋼板の一方の面の化成皮膜上に、またはさらに下塗り塗膜を形成した上に、上記単一塗膜を形成しただけではなく、鋼板の他方の面にも、上述のクロムを含有しない化成処理皮膜を有することで、従来のクロメート皮膜と同程度の耐食性と密着性を有するとともに、優れた導電性も有することが可能となる。導電性としては、導電荷重を500g以下とすることが、電磁波シールド性の点で好ましい。導電荷重は、後述する低抵抗測定装置による表面抵抗が10−4Ω以下となる最小荷重である。
【0052】
耐食性の要求度がそれほど高くない用途には、この他方の面はクロムを含有しない化成処理皮膜だけを形成し、特に電磁波シールド性に優れた塗装鋼板として提供できる。
【0053】
また、耐食性の要求度が高い用途には、この他方の面は、化成処理皮膜の上に有機樹脂層を設けて耐食性を向上させることが好ましい。有機樹脂層の有機樹脂種としてはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。有機樹脂層はCaイオン交換シリカ、Mg処理トリポリリン酸二水素アルミニウム、Ca処理トリポリリン酸二水素アルミニウム又はMgイオン交換シリカなどの防錆顔料を含有することがさらに優れた耐食性を得るために好ましい。
【0054】
有機樹脂層の膜厚は断面を光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察し、1視野につき任意の3箇所の膜厚を求め、少なくとも5視野を観察し、合計15箇所以上の平均値とする。
【0055】
化成皮膜および単一塗膜の膜厚についても、上記有機樹脂層の膜厚と同様にして求める。皮膜、塗膜から露出した防錆顔料、樹脂粒子の部分は計測しないこととする。
【0056】
有機樹脂層の膜厚が0.1μm未満では耐食性に不利となり、また1μm超えでは電磁波シールド性に不利となるので、0.1〜1μmが好ましい。
【0057】
上述の塗装鋼板は、深絞り加工、張り出し加工、曲げ加工のうちのいずれか1以上のプレス加工が施され、さらに電磁波シールド性が要求される電子機器及び家電製品等の用途で使用される部材に好適である。例えばプラズマディスプレーパネルや液晶テレビなどの薄型TVの背面パネルに使用すると、大型のパネルであっても優れた電磁波シールド性が発現される。
【0058】
次に、本発明の塗装鋼板の製造方法について説明すると、本発明の塗装鋼板は、被塗装鋼板である亜鉛系めっき鋼板の両面に先に述べた化成処理を施した後、必要に応じて下塗り塗膜用の塗料を塗布、加熱して、下塗り塗膜を形成した後、前記鋼板の一方の面に、前記塗料組成物を塗布、加熱することにより製造される。
【0059】
塗料組成物の塗布方法は特に限定しないが、好ましくはロールコーター塗装で塗布するのがよい。塗料組成物の塗布後、熱風乾燥、赤外線加熱、誘導加熱などの加熱手段により加熱処理を施し、樹脂を架橋させて硬化させた単一塗膜を得る。加熱条件は温度170〜250℃(到達板温)で、時間20〜90秒の処理を行うことが好ましく、これによって単一塗膜を形成し、塗装鋼板を製造する。
【0060】
ここで、加熱温度が170℃未満では架橋反応が十分に進まないため、十分な塗膜性能が得られない。一方、加熱温度が250℃を超えると熱による塗膜の劣化が起こり、塗膜性能が低下する。また、処理時間が20秒未満では架橋反応が十分に進まないため、十分な塗膜性能が得られない。一方、処理時間が90秒を超えると製造コスト面で不利となる。本発明の塗装鋼板は、さらに塗装鋼板裏面の耐食性を高める目的で、前記した有機樹脂層用の塗料組成物を鋼板裏面にも同様の方法で塗装するのが好ましい。
【0061】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0062】
本発明の実施例について説明する。
【0063】
(本発明例1〜14及び比較例1〜3)
塗装用亜鉛系めっき鋼板として、各々板厚0.5mmの電気亜鉛めっき鋼板(めっき種記号:EG)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(Fe含有率:10質量%、めっき種記号:GA)、溶融亜鉛めっき鋼板(めっき種記号:GI)、溶融Zn−Alめっき鋼板(Al含有率:4.5質量%、めっき種記号:GF)および黒色化電気亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板(Ni含有率:12質量%、めっき種記号:EZNB)を準備した。めっき鋼板のめっき付着量を表1に示す。なお、鋼板の一方の面(オモテ面)と他方の面(ウラ面)のめっき付着量、およびめっき組成は同一とした。準備しためっき鋼板に脱脂処理を行った後、以下の(i)〜(iV)の処理工程を行い、塗装鋼板を作製した。
【0064】
(i)オモテ面に化成処理液を塗布し、到達板温100℃となるように加熱し、表3の1に示す組成のオモテ面の化成処理皮膜を形成した。
(ii)次に、ウラ面に化成処理液を塗布し、加熱30秒後に到達板温が200℃となる加熱処理を行い、表3の2に示す組成のウラ面の化成処理皮膜を形成した。
(iii)下塗り塗膜を形成する場合(実施例12〜14)には、次にオモテ面に下塗り塗料を塗布し、加熱30秒後に到達板温が210℃になる加熱処理を行い、表4に示す下塗り塗膜(2μm)を形成した。
(iv)次に、オモテ面に表1に示す組成の塗料組成物を、表1に示す乾燥膜厚になるように塗布した後、ウラ面に、必要に応じて表5の組成となるように防錆顔料を添加した有機樹脂塗料を塗布した後、加熱60秒後に到達板温が230℃となる加熱処理を行い、表1と表2に示すオモテ面の単一塗膜とウラ面の有機樹脂層を形成した。
【0065】
作製した塗装鋼板のオモテ面、ウラ面の化成皮膜、単一塗膜および有機樹脂層の構成を表1および表2に示す。
【0066】
以上のようにして得られた塗装鋼板について各種試験を行った。本実施例で行った試験の評価方法を以下に示す。
<オモテ面の評価>
【0067】
(1)光沢度
正反射光沢度計を用いて、JIS K 5600-4-7-1999に規定された60度鏡面光沢度を測定した。
○:20%未満
△:20%以上〜40%未満
×:40%以上
【0068】
(2)鉛筆硬度
三菱鉛筆ユニを使用し、JIS K 5600-5-4:1999に準拠して、試験面に対して約45度の角度で鉛筆を持ち、前方に約1cm/sで約1cm押し出して引っかく。1回引っかくごとに鉛筆の芯先端を研いで同一硬度の鉛筆で5回くり返す。5回のうち3回以上傷付きなしの鉛筆の硬度の最大値で評価を行った。
○:2H
△:H
×:F以下
【0069】
(3)プレス加工性
試験片を100mmφで打ち抜き、ポンチ径50mmφ、ポンチ肩R:4mm、ダイ径:70mmφ、ダイ肩R:4mm、しわ押さえ圧:5ton、オモテ面がポンチ側となるようにして円錐台成形を行った。破断時の成形高さで以下のように評価した。
◎:18mm以上
○:16mm以上18mm未満
△:14mm以上16mm未満
×:14mm未満
【0070】
(4)曲げ加工性
試験片のオモテ面を外側、ウラ面を内側にしてウラ面同士を合わせるように曲げ加工する。その際、ウラ面間に試験片と同板厚の鋼板を1枚、2枚、3枚・・・とウラ面間の距離を変化させて挟み曲げ径Rを変化させて密着曲げ加工する。曲げられた試験片のオモテ面側にクラックが入らない最大板厚枚数で以下のように評価した。
オモテ面側にクラックが入らない最大板厚枚数
○:0〜1枚
△:2〜3枚
×:4枚以上
【0071】
(5)加工後塗膜密着性
前記曲げ加工性の評価に用いた試験片の折り曲げ(1枚)部分にニチバン(株)製のセロハン粘着テープを貼り付け、これを引き剥がした後の剥離状態を評価した。
○:異常なし
×:塗膜剥離あり
(6)耐溶剤性
20℃において、キシレンを浸したガーゼを塗膜面に1kg/cm2の荷重をかけて往復させた。下地金属面が見えるまでの往復回数を測定した。
○:100回を超えても下地めっき面が見えない場合
△:下地めっき面が見えない最大回数が100回以下50回超の場合
×:下地めっき面が見えない最大回数が50回以下の場合
【0072】
(7)耐侯性
JIS B 7753-1993に従ってサンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機で288時間の試験を行った後、試験面の60度鏡面光沢度を測定し、試験後の試験前に対する光沢度保持率(%)により評価した。その評価基準は以下の通りである。
○:60%以上
×:60%未満
【0073】
(8)耐薬品性
20℃、5質量%HCl水溶液に裏面と端面をシールした試験片を24時間浸漬した後、塗膜残存面積率を評価した。
○:塗膜剥離なし
△:塗膜残存面積率が100%未満50%以上
×:塗膜残存面積率が50%未満
【0074】
(9)耐汚染性
試験片表面にマジックインキ(登録商標)(赤と黒)を塗布し、24時間放置し、エチルアルコールを含浸させた布で拭き取った後の目視による外観で評価した。
○:インキ残存なし
×:インキ残存あり
<ウラ面の評価>
【0075】
(10)導電性
低抵抗測定装置(ロレスタGP:三菱化学(株)製:ESPプローブ)を用い、塗装板のウラ面の表面抵抗値を測定した。その時、プローブ先端にかかる荷重を20g/sで増加させ、表面抵抗が10−4Ω以下になった時の荷重値で以下のように評価した。
表面抵抗が10−4Ω以下になった時の荷重値
◎:10点測定の平均荷重が300g以下
○:10点測定の平均荷重が300g超500g以下
△:10点測定の平均荷重が500g超700g以下
×:10点測定の平均荷重が700g超
【0076】
(11)耐食性
50mm×80mmの試験片の4辺をシールし、塩水噴霧(JIS Z 2371-2000)8時間−停止16時間を1サイクルとし、合計3サイクル後の平面部の腐食面積率を求めて評価した。
腐食面積率
◎:1%以下
○:1%超え5%以下
△:5%超え20%以下
×:20%超え
【0077】
上記各試験の評価結果を表6に示す。
これによれば、実施例1〜14の塗装鋼板は、いずれも優れた曲げ加工性、プレス加工性、塗装表面外観、鉛筆硬度、加工後塗膜密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性、導電性及び耐食性を有している。また、短時間で加熱処理を行っても十分な性能が得られており、製造の際の高速操業に非常に適していることが判る。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明によれば、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に単一塗膜を形成し、好ましくは前記鋼板の他方の面に導電性を付与することで、絞り加工性などの厳しいプレス加工に対しても塗膜に割れなどが生じにくく、しかも製造する際の高速操業が可能である、曲げ加工性、プレス加工性、加工後塗膜密着性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性、導電性及び耐食性に優れ、良好な表面外観と十分な塗膜硬度をもつ塗装鋼板、加工品および薄型テレビ用パネルならびに塗装鋼板の製造方法の提供が可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、架橋剤により硬化させたポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子とを含有する単一塗膜を形成してなることを特徴とする塗装鋼板。
【請求項2】
前記単一塗膜の膜厚は10μm以下である請求項1記載の塗装鋼板。
【請求項3】
前記架橋剤は、メラミン樹脂、尿素またはイソシアネートである請求項1または2記載の塗装鋼板。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂は、エポキシ変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステルまたはアクリル変性ポリエステルである請求項1、2または3記載の塗装鋼板。
【請求項5】
前記樹脂粒子は、アクリル樹脂またはナイロン樹脂からなる請求項1〜4のいずれか1項記載の塗装鋼板。
【請求項6】
前記樹脂粒子の平均粒子径は、単一塗膜の膜厚の0.5倍超え2倍以下の範囲である請求項1〜5のいずれか1項記載の塗装鋼板。
【請求項7】
前記鋼板の一方の面の化成皮膜と前記単一塗膜との間に下塗り塗膜を形成する請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装鋼板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる加工品。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載の塗装鋼板を用い、該塗装鋼板の前記一方の面が外部に露出する凸表面になるようにプレス加工を施して形成してなる薄型テレビ用パネル。
【請求項10】
鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、
前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、ポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子と、架橋剤とを含有する塗料組成物を塗布した後、鋼板温度170〜250℃、時間20〜90秒の加熱処理を施して、硬化した単一塗膜を形成することを特徴とする塗装鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、下塗り塗膜を形成したのち、前記塗料組成物を塗布する請求項10記載の塗装鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2007−269010(P2007−269010A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22167(P2007−22167)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】