説明

塗装面上突起物除去用カッター

【課題】優れた作業性が得られるとともに、平面および凹凸曲面のいずれの塗装面に対しても、作業者の熟練度や頻繁な刃先の位置調整を要することなく、突起物の除去残りの発生を防止することができる塗装面上突起物除去用カッターを提供すること。
【解決手段】切れ刃の少なくとも一部が塗装面に接触した状態で移動することで、塗装面上の突起物を切除する塗装面上突起物除去用カッターであって、前記切れ刃として、円周状の内切れ刃(円周切れ刃2)と、円周切れ刃2の内側であって、円周切れ刃2が全周にわたって接触する仮想平面上またはこの仮想平面に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、円周切れ刃2の略径方向に配される直線状の切れ刃(直線切れ刃3)と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車ボデー等の塗装面上に発生したブツやタレ等の突起物を除去するための塗装面上突起物除去用カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車ボデー等の塗装面(表面)においては、その塗装欠陥として塗装面上に不良の突起物が生じることがある。塗装面上の突起物としては、塗装面上にホコリやゴミ等の異物が付着することにより生じるブツや塗料のタレ等がある。そこで、こうした塗装面上の突起物を除去するための工具として刃具(カッター)が用いられている。つまり、この刃具により、塗装面上の突起物が削り落とされることで除去される。
【0003】
このような塗装面の突起物を除去するための刃具において、取り扱う作業者に熟練度が必要とされず取扱い性に優れる刃具を提供するための技術として、特許文献1に開示されている技術がある。特許文献1には、塗装面から突出する異物を所定の突出高さまで削り取るための補修工具として、所定のホルダと、このホルダに取り付けられる刃具とを備える構成が開示されている。
【0004】
具体的には、図10に示すように、上記補修工具101は、略矩形板状のホルダ102と、このホルダ102内に装着される刃具103とを備える。刃具103としては、パネルカッター等の平板状の直刃カッター(平刃カッター)が用いられている。直刃カッターである刃具103は、その一辺側(先端側)に直線状の切れ刃103aを有する。刃具103は、ホルダ102に対して位置調整可能とされている。ホルダ102は、その下面(切れ刃103a側の面)が傾斜面104とされている。つまり、補修工具101においては、刃具103が、ホルダ102に対して、傾斜面104から切れ刃103aの先端までの間隔が調整自在となるように設けられている。
このような構成を備える補修工具101においては、ホルダ102が刃具103に対するガイドの役目を果たすため、刃具103の塗装面に対する角度が所定の角度に保たれる。
【0005】
確かに、特許文献1に開示されている図10に示すような補修工具101は、平面の塗装面に対しては、良好な取扱い性が得られ、作業性に優れたものとなる。しかし、かかる補修工具101は、凹曲面や凸曲面の塗装面に対しては、突起物の除去残りを発生させる場合がある。
すなわち、図10(a)に示すように、塗装面150が凹曲面である場合、補修工具101のホルダ102の下面側(傾斜面104側)における端部(図10(a)では左右両側端部)が、塗装面150に接触した状態となる。このような状態においては、符号S11で示すように、刃具103の切れ刃103aの先端と塗装面150との間に生じる隙間が大きくなる。切れ刃103aと塗装面150との間の隙間が大きくなると、塗装面150において削り残される突起物の高さが大きくなり、突起物の除去残りが発生する。
一方、図10(b)に示すように、塗装面150が凸曲面である場合、ホルダ102と塗装面150との接触位置がばらつき易くなる。このため、ホルダ102が、その一端部(図10(b)では下面(傾斜面104)の右側端部)で塗装面150に接触する場合、符号S12で示すように、刃具103の切れ刃103aの先端と塗装面150との間に生じる隙間が大きくなる。したがって、前記と同様、突起物の除去残りが発生する。
【0006】
このような塗装面が凹曲面や凸曲面である場合の不具合(突起物の除去残り)の発生を防止するためには、塗装面の曲面形状(曲がり具合等)に合わせた刃先の位置調整が必要となる。つまり、図10に示す補修工具101においては、刃具103のホルダ102に対する位置(切れ刃103aの先端の傾斜面104に対する入り込み代)が、塗装面の形状に合わせて、その都度調整される必要がある。
【0007】
また、取り扱う作業者に熟練度が必要とされず取扱い性に優れる刃具として、円周状の内切れ刃を有する丸刃カッターが提案されている。この丸刃カッターは、具体的には次のような構成を備える。
すなわち、図11および図12に示すように、丸刃カッター201は、例えば略矩形状の板状の基部211と、基部211の一方の板面側から略円筒状の部分として突出するとともに切れ刃202を構成する刃部212とを備える。切れ刃202は、丸型(円周状)の内切れ刃として構成される。丸刃カッター201においては、板状の基部211の板面に対して垂直方向に、基部211および刃部212を貫通する孔部213が形成される。孔部213における刃部212側の開口端部に、切れ刃202が形成される。つまり、孔部213によって、略円筒形状の刃部212の内周面および基部211の内側面が形成され、基部211の内側面は、基部211において刃部212が設けられる側と反対側に開口する。
【0008】
このような構成を備える丸刃カッター201は、その基部211側からホルダ等の操作具(図示略)に取り付けられ、この操作具を介して作業者に操作される。そして、塗装面上の突起物の除去に際しては、操作具に取り付けられた状態の丸刃カッター201が、その円周状の切れ刃202の内側に突起物が位置するように塗装面に対してあてがわれ、切れ刃202が塗装面に接触した状態で滑り移動させられる。これにより、切れ刃202が突起物に作用し、突起物が切れ刃202によって削り落とされることで除去される。
塗装面上における丸刃カッター201の滑り移動に際しては、円周状の切れ刃202を形成する交差稜線部216の先端部がガイド部として機能する。つまり、塗装面が平面の場合、突起物の切除作業時には、円周状の切れ刃202(交差稜線部216)の先端全周部が塗装面と接触した状態となることで、丸刃カッター201が塗装面上における滑り移動についてガイドされることとなる。
【0009】
確かに、図11等に示すような丸刃カッター201は、平面の塗装面に対しては、良好な取扱い性が得られ、作業性に優れたものとなる。また、丸刃カッター201は、その切れ刃202の全長が、直刃カッターの切れ刃に対して比較的長いこと等から耐久性にも優れたものといえる。しかし、図11等に示すような丸刃カッター201は、曲面、特に凸曲面の塗装面に対しては、突起物の除去残りを発生させる場合がある。
すなわち、図12に示すように、塗装面250が凸曲面である場合、丸刃カッター201は、その切れ刃202の一部のみが塗装面250に接触した状態となる。このような状態においては、符号S13で示すように、切れ刃202と塗装面250との間に隙間が生じる。この切れ刃202と塗装面250との間の隙間が、塗装面250の曲面形状(曲がり具合等)等によって大きくなると、削り残される突起物の高さが大きなものとなる。つまりは、塗装面250における突起物の除去残りが発生する。
【0010】
以上のように、従来のカッターでは、塗装面が凹曲面や凸曲面である場合、塗装面における突起物の除去残りが発生し、塗装面上に発生した突起物に対する切断品質がばらつく。このため、突起物の除去残りの検査および再修正(再度の除去作業)に多大な工数が必要となる。また、特許文献1に開示されている技術のように、凹曲面や凸曲面である塗装面に対して、塗装面の形状(曲面形状)に合わせた刃先の位置調整で対応することは、作業性の低下を招く。
【特許文献1】特開2000−271539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、優れた作業性が得られるとともに、平面および凹凸曲面のいずれの塗装面に対しても、作業者の熟練度や頻繁な刃先の位置調整を要することなく、突起物の除去残りの発生を防止することができる塗装面上突起物除去用カッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
すなわち、請求項1においては、切れ刃の少なくとも一部が塗装面に接触した状態で移動することで、塗装面上の突起物を切除する塗装面上突起物除去用カッターであって、前記切れ刃として、円周状の内切れ刃と、前記円周状の内切れ刃の内側であって、該円周状の内切れ刃が全周にわたって接触する仮想平面上または該仮想平面に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、前記円周状の内切れ刃の略径方向に配される直線状の切れ刃と、を備えるものである。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載の塗装面上突起物除去用カッターにおいて、前記円周状の内切れ刃と、前記直線状の切れ刃とは、互いに着脱可能に組み付けられる別部材に設けられるものである。
【0015】
請求項3においては、請求項2に記載の塗装面上突起物除去用カッターにおいて、前記円周状の内切れ刃が設けられる部材と、前記直線状の切れ刃が設けられる部材とは、前記仮想平面と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で前記仮想平面に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士であるものである。
【0016】
請求項4においては、塗装面上の突起物を切除する塗装面上突起物除去用カッターであって、円環形状またはその一部形状であり少なくとも対向する一対の部分の形状を有し塗装面に接触するガイド接触部と、前記ガイド接触部の内側であって、前記ガイド接触部が全部にわたって接触する仮想平面上または該仮想平面に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、前記円環形状の略径方向に配される直線状の切れ刃と、を備えるものである。
【0017】
請求項5においては、請求項4に記載の塗装面上突起物除去用カッターにおいて、前記ガイド接触部と、前記直線状の切れ刃とは、互いに着脱可能に組み付けられる別部材に設けられるものである。
【0018】
請求項6においては、請求項5に記載の塗装面上突起物除去用カッターにおいて、前記ガイド接触部が設けられる部材と、前記直線状の切れ刃が設けられる部材とは、前記仮想平面と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で前記仮想平面に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士であるものである。
【0019】
請求項7においては、請求項4〜6のいずれかの項に記載の塗装面上突起物除去用カッターにおいて、前記ガイド接触部が、前記直線状の切れ刃に対して、該直線状の切れ刃の作用方向に対して垂直方向の両側の部位に配設されるものである。
【0020】
請求項8においては、請求項4〜6のいずれかの項に記載の塗装面上突起物除去用カッターにおいて、前記ガイド接触部が、円周状の内切れ刃であるものである。
【0021】
請求項9においては、請求項1〜8のいずれかの項に記載の塗装面上突起物除去用カッターにおいて、前記直線状の切れ刃を形成するすくい面が、前記仮想平面に対して鋭角をなすものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、塗装面上の突起物を切除する塗装面上突起物除去用カッターにおいて、優れた作業性が得られるとともに、平面および凹凸曲面のいずれの塗装面に対しても、作業者の熟練度や頻繁な刃先の位置調整を要することなく、突起物の除去残りの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る塗装面上突起物除去用カッター(以下単に「カッター」という。)は、例えば自動車ボデー等の塗装面上に発生したブツやタレ等の突起物を除去するためのものである。
【0024】
本発明に係るカッターの第一実施形態について説明する。
本実施形態に係るカッター1は、切れ刃の少なくとも一部が塗装面に接触した状態で移動することで、塗装面上の突起物を切除する。そして、図1〜図4に示すように、本実施形態に係るカッター1は、切れ刃として、円周状の内切れ刃(以下「円周切れ刃」という。)2と、直線状の切れ刃(以下「直線切れ刃」という。)3とを備える。
すなわち、図1に示すように、本実施形態に係るカッター1は、全体として略筒状に構成され、その一端側に円周切れ刃2と直線切れ刃3とを有し、これら切れ刃の少なくとも一部が塗装面に接触した状態で移動することで、塗装面上の突起物を切除する。以下の説明では、カッター1において切れ刃が設けられる側を下側、その反対側を上側として、カッター1における上下方向を定める。
【0025】
直線切れ刃3は、円周切れ刃2の内側であって、円周切れ刃2が全周にわたって接触する仮想平面4(図2参照)上またはこの仮想平面4に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、円周切れ刃2の略径方向に配される。ここで、仮想平面4とは、円周切れ刃2が全周にわたって接触可能な平面である。つまり、平面であると仮定される塗装面上に支持された状態のカッター1については、その塗装面が仮想平面4となる。
【0026】
このような仮想平面4に対し、直線切れ刃3は、同一位置(仮想平面4上)またはわずかな間隔を隔てた位置に配される。
すなわち、直線切れ刃3が、仮想平面4と同一位置(仮想平面4上)に配される場合は、直線切れ刃3の刃先が、仮想平面4上に位置する。つまりこの場合、円周切れ刃2の刃先と直線切れ刃3の刃先とが、同一平面(仮想平面4)上に存在することとなる。また、直線切れ刃3が、仮想平面4に対してわずかな間隔を隔てた位置に配される場合は、図2において符号S1で示すように、直線切れ刃3の刃先が、仮想平面4に対してわずかな間隔を隔てた位置に位置する。つまりこの場合、直線切れ刃3は、円周切れ刃2に対してわずかに引っ込んだ位置に存在することとなる。ここで、直線切れ刃3が仮想平面4に対して隔てる間隔(「わずかな間隔」)は、例えば数μmとなる。なお、直線切れ刃3は、仮想平面4に対して平行方向に配される。
【0027】
また、直線切れ刃3は、円周切れ刃2の略径方向に配される。
すなわち、直線切れ刃3は、その直線方向が、円周切れ刃2の円周形状における略径方向(円周形状の略中心位置を通る直線方向)となるように設けられる。そして、本実施形態のカッター1においては、直線切れ刃3が、円周切れ刃2に対して略径方向の略全体にわたるように設けられている。つまり、図2に示すように、カッター1においては、直線切れ刃3が、その直線方向の長さが、円周切れ刃2の略径方向の長さに対して略同一(若干短め)となるように設けられている。
【0028】
本明細書では、全体として略筒状に構成されるカッター1の筒軸方向を上下方向とする姿勢において、図2に示すように、直線切れ刃3の直線方向が左右方向となる側を正面とし、図3に示すように、直線切れ刃3の直線方向が奥行き方向となる側を側面とする。なお、図2は、カッター1の円周切れ刃2の径方向のうち直線切れ刃3の直線方向に沿う方向の断面図(正面断面図)であり、図3は、カッター1の円周切れ刃2の径方向のうち直線切れ刃3の直線方向に対して垂直方向の一部断面図(側面一部断面図)である。
【0029】
以下、本実施形態に係るカッター1の具体的な構成について、図1〜図4を用いて説明する。
本実施形態に係るカッター1は、円周切れ刃2が設けられる部材である丸刃カッター部材10と、直線切れ刃3が設けられる部材である直刃カッター部材20とを備える。これら丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とは、互いに着脱可能に構成される。
つまり、本実施形態に係るカッター1においては、円周切れ刃2と、直線切れ刃3とは、互いに着脱可能に組み付けられる別部材に設けられている(図4参照)。
【0030】
まず、丸刃カッター部材10について説明する。
丸刃カッター部材10は、鉄系合金等の金属材料を母材として構成されるものであり、円板状に形成される基部11と、基部11の一方の板面側から略円筒状の部分として突出するとともに円周切れ刃2を構成する刃部12とを有する。
丸刃カッター部材10においては、板状の基部11の板面に対して垂直方向に基部11および刃部12を貫通する孔部13が形成されている。孔部13の刃部12側の開口端部に、円周切れ刃2が形成される。つまり、孔部13によって、刃部12の略円筒形状の内周面および基部11の内側面が形成され、基部11の内周面は、基部11において刃部12が設けられる側と反対側に開口する。
【0031】
孔部13は、略円筒状の刃部12に対して同心位置に設けられ、直線部13aと、内側斜面部13bとを有する。直線部13aは、円柱形状を有し、孔部13において基部側(上側)の部分を形成する。直線部13aは、基部11の内周面および刃部12の内周面の一部を形成する。内側斜面部13bは、孔部13において直線部13aの下側に連続する部分であり、刃部12の基部側(基部11側、上側)から先端側(円周切れ刃2側、下側)にかけて徐々に縮径する(テーパする)。つまり、内側斜面部13bは、円周切れ刃2側が頂点側となる円錐面の一部形状を有する。内側斜面部13bは、刃部12の内周面の一部を形成する。
【0032】
内側斜面部13bの先端側には、円周切れ刃2を形成するすくい面14が形成される。
すくい面14は、内側斜面部13bに対して連続して形成される面であり、内側斜面部13bよりも縮径度合いが小さい円錐面の一部形状を有する。つまり、すくい面14は、基部11の板面に対して平行方向の面(以下「水平面」とする。)に対する傾斜角度が、内側斜面部13bのそれよりも大きくなる面である。したがって、すくい面14は、図2および図3に示すカッター1についての径方向の断面形状において、内側斜面部13bに対して外側方向に折れ曲がる部分となる。
【0033】
刃部12の端面側には、円筒状の外周面12aから連続する逃げ面15が形成される。
逃げ面15は、内側斜面部13bよりも縮径度合いが大きい円錐面の一部形状を有する。つまり、逃げ面15は、その水平面に対する傾斜角度が、内側斜面部13bのそれよりも小さくなる面であり、図2および図3に示すカッター1についての径方向の断面形状において、外周面12aから内側方向に折れ曲がる部分となる。
【0034】
すくい面14と逃げ面15とは、互いに交差して稜線部(以下「交差稜線部」とする。)16を形成する。交差稜線部16により、円周切れ刃2が形成される。つまり、円周切れ刃2の先端が、すくい面14と逃げ面15との稜線となる。したがって、すくい面14および逃げ面15は、円周切れ刃2を形成する交差稜線部16が円周状となるように形成される。
【0035】
このように、丸刃カッター部材10においては、基部11の一方の板面側から突出する刃部12の先端部に円周切れ刃2が形成される。そして、前記のとおりこの円周切れ刃2が全周にわたって接触可能な平面が、仮想平面4(図2参照)となる。
丸刃カッター部材10の基部11は、刃部12が突出される側と反対側の板面として、仮想平面4と平行な面である上側面11aを有する。
【0036】
次に、直刃カッター部材20について説明する。
直刃カッター部材20は、丸刃カッター部材10と同様に鉄系合金等の金属材料を母材として構成されるものであり、円板状に形成される基部21と、基部21の一方の板面側から円柱状に突出する嵌合部22と、嵌合部22における基部21側と反対側(下側)に突設され直線切れ刃3を構成する刃部23とを有する。
【0037】
基部21は、本実施形態では、丸刃カッター部材10の基部11と略同径の円板状に形成される。したがって、直刃カッター部材20の基部21と丸刃カッター部材10の基部11とは、互いに同心状態で重なった状態で略円柱状の部分となる。
【0038】
嵌合部22は、基部21の一方の板面である下側面21bから垂直方向に突出し、基部21に対して同心状態で形成される円柱状の部分である。嵌合部22は、基部21の下側面21bと平行な下側面22bを有する。
また、嵌合部22は、丸刃カッター部材10が有する孔部13の直線部13aに対して嵌合可能な径を有する。つまり、嵌合部22は、その径(外径)が孔部13の直線部13aの径(内径)と略同一となるように形成される。
【0039】
刃部23は、嵌合部22の下側面22bから垂直方向に突出する矩形板状の部分として形成される。刃部23は、円柱状の嵌合部22に対して、嵌合部22の略径方向に沿うように(図3において左右方向略中心位置に)設けられる。
また、刃部23は、その矩形板状の形状を形成する面として、両側の板面23a・23aと、先端面25とを有する。両側の板面23a・23aは、互いに平行な面であるとともに、嵌合部22の下側面22bに対して垂直な面として形成される。先端面25は、刃部23の先端側(下側)に形成される面であり、嵌合部22の下側面22b(基部21の下側面21b)と平行な面として形成される。
【0040】
刃部23は、前記のとおり直線切れ刃3を構成する。直線切れ刃3は、刃部23の先端部(下端部)に設けられる。具体的には、直線切れ刃3は、両側の板面23a・23aと、先端面25との、それぞれの交差稜線部26により形成される。つまり、刃部23において、一側の板面23aと先端面25との交差稜線部26により一方の直線切れ刃3が形成され、他側の板面23aと先端面25との交差稜線部26により他方の直線切れ刃3が形成される。交差稜線部26の方向(図2における左右方向)が、直線切れ刃3の直線方向となる。
そして、直線切れ刃3は、先端面25に対して略平行方向であって、刃部23の板面に対して略垂直方向(図3における略左右方向)を作用方向とする。したがって、刃部23の両側の板面23a・23aにおける少なくとも交差稜線部26を形成する部分が、直線切れ刃3のすくい面24として形成される。
【0041】
このように、直刃カッター部材20においては、基部21の下側面21bから嵌合部22を介して突出する刃部23の先端部に直線切れ刃3が形成される。そして、本実施形態では、直線切れ刃3は、刃部23の先端面25において両側の長辺部(交差稜線部26)に形成される。
【0042】
丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との着脱構成について説明する。
丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とは、直刃カッター部材20の嵌合部22が、丸刃カッター部材10の孔部13の直線部13aに嵌合することにより組み付けられる。すなわち、図4に示すように、直刃カッター部材20の刃部23が、丸刃カッター部材10の基部11の上側面11a側から孔部13に対して入り込む方向(図中白抜き矢印参照)に、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが組み合わされることにより、嵌合部22が、孔部13の上側からその直線部13aに嵌合(例えばインロー嵌合等)する。
このように、嵌合部22が孔部13に嵌合することにより、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との径方向(嵌合方向に対する垂直面方向)の相対的な位置決めがなされ、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが互いに組み付けられた状態(以下、カッター1について「組付状態」ともいう。)となる。したがって、カッター1の組付状態においては、嵌合部22が孔部13に嵌合した状態となるとともに、丸刃カッター部材10の基部11の上側面11aと、直刃カッター部材20の基部21の下側面21bとが対向する状態となる。
【0043】
そして、カッター1の組付状態における円周切れ刃2と直線切れ刃3とは、前述したような関係を有することとなる。すなわち、カッター1の組付状態において、直線切れ刃3は、円周切れ刃2の内側であって、円周切れ刃2が全周にわたって接触する仮想平面4(図2参照)上またはこの仮想平面4に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、円周切れ刃2の略径方向に配された状態なる。つまり、カッター1の組付状態において、円周切れ刃2と直線切れ刃3とが前記のような関係を有するように、円周切れ刃2の径や、直線切れ刃3を形成する刃部23の上下方向・左右方向(直線切れ刃3の直線方向)のそれぞれの長さ等が設定される。
また、カッター1の組付状態においては、直線切れ刃3を形成する刃部23の両側のすくい面24(板面23a)は、仮想平面4に対して垂直面となり、同じく直線切れ刃3を形成する先端面25は、仮想平面4に対して平行面となる。
【0044】
また、図2に示すように、カッター1の組付状態における丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とは、締結ボルト29が用いられて互いに締結固定される。
具体的には、組付状態のカッター1に対し、複数(図示では2本)の締結ボルト29が、直刃カッター部材20の上側面21a側から直刃カッター部材20を介して丸刃カッター部材10に対して螺挿されることにより、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが互いに固定される。すなわち、丸刃カッター部材10においては、基部11の所定の部位に、その上側面11aに開口する雌ネジ穴17が形成される。一方、直刃カッター部材20においては、基部21における前記雌ネジ穴17に対応する部位(カッター1の組付状態で雌ネジ穴17と連通可能な部位)に、上下方向に貫通する(上側面21aおよび下側面21bに開口する)ボルト孔27が形成される。そして、カッター1の組付状態において、締結ボルト29が、丸刃カッター部材10の基部11の上側面11a側から、ボルト穴27を貫通するとともに、雌ネジ穴17に螺挿されることにより、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが互いに締結固定される。ここで、ボルト穴27は、ボルト穴27を介して雌ネジ穴17に螺挿された締結ボルト29の頭部29aが収容される拡径部27aを有する。
【0045】
なお、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との互いの固定に用いられる締結ボルト29の本数は、特に限定されるものではない。また、カッター1の組付状態における丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが互いに固定されるための構成は、本実施形態のような締結ボルト29が用いられる構成に限られるものではなく、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが比較的容易な操作によって互いに着脱可能となる構成であればよい。
また、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが互いに組み付けられた状態(カッター1の組付状態)とは、前述のような締結ボルト29による互いの固定が行われることなく、単に、直刃カッター部材20の嵌合部22が、丸刃カッター部材10の孔部13に対して嵌合した状態をさす。つまり、互いに組み付けられた状態の丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが、前述のように締結ボルト29が用いられることによって互いに固定される。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るカッター1においては、円周切れ刃2が設けられる丸刃カッター部材10と、直線切れ刃3が設けられる直刃カッター部材20とが、互いに着脱可能に組み付けられる別部材として構成される。そして、丸刃カッター部材10と、直刃カッター部材20とは、仮想平面4と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で仮想平面4に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士となっている。
【0047】
前述したように、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが互いに組み付けられた状態においては、丸刃カッター部材10の基部11の上側面11aと、直刃カッター部材20の基部21の下側面21bとが対向する状態となる。丸刃カッター部材10の基部11の上側面11aは、前記のとおり仮想平面4と平行な面である。直刃カッター部材20の基部21の下側面21bは、カッター1の組付状態において、仮想平面4と平行な面となる。これら丸刃カッター部材10の上側面11aと直刃カッター部材20の下側面21bとは、直刃カッター部材20の嵌合部22の、丸刃カッター部材10の孔部13に対して嵌合する量(入り込む長さ)によって接触可能な面同士となる。したがって、丸刃カッター部材10の上側面11aは、丸刃カッター部材10の直刃カッター部材20に対する合わせ面となり、直刃カッター部材20の下側面21bは、直刃カッター部材20の丸刃カッター部材10に対する合わせ面となる。なお、本実施形態では、丸刃カッター部材10の上側面11aと、直刃カッター部材20の下側面21bとは、いずれも略円環形状を有し、互いに略同一の形状・大きさの面部となる。
このように、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とは、仮想平面4と平行な面を互いの(相手に対する)合わせ面に含む部材同士となる。
以下の説明では、丸刃カッター部材10の合わせ面となる上側面11aを「丸刃側合わせ面18」とし、直刃カッター部材20の合わせ面となる下側面21bを「直刃側合わせ面28」とする。
【0048】
また、同じくカッター1の組付状態においては、直刃カッター部材20の嵌合部22が、丸刃カッター部材10の孔部13に嵌合した状態となる。つまり、嵌合部22の孔部13に対する嵌合方向が、カッター1における丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との組付け方向(図4白抜き矢印参照)となる。また、嵌合部22の孔部13に対する嵌合方向は、仮想平面4に対して垂直方向となる。つまり、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との組付け方向は、仮想平面4に対して垂直方向となる。
また、直刃カッター部材20の嵌合部22は、丸刃カッター部材10の孔部13に嵌合した状態で、孔部13に対して摺動可能となる。つまり、嵌合部22が孔部13に嵌合した状態でこの孔部13に対して摺動可能となるように、嵌合部22の外径と孔部13の直線部13aの内径とが設定される。
したがって、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とは、互いに組み付けられた状態(カッター1の組付状態)で、孔部13の内周面と嵌合部22の外周面とが摺動面となり、互いの組付け方向、つまり仮想平面4に対して垂直方向に相対的に移動可能となる。
このように、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とは、互いに組み付けられた状態で仮想平面4に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士となる。
【0049】
以上のように、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とが、仮想平面4と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で仮想平面4に対して垂直方向に相対移動可能となるカッター1においては、その組付状態において、丸刃側合わせ面18と直刃側合わせ面28との間(以下「合わせ面間」という。)の間隔が調整されることにより、円周切れ刃2と直線切れ刃3との刃先の相対的な位置が調整される。円周切れ刃2と直線切れ刃3との刃先の相対的な位置は、円周切れ刃2が全周にわたって接触可能な仮想平面4に対する直線切れ刃3の位置となる。したがって、円周切れ刃2と直線切れ刃3との刃先の相対的な位置は、直線切れ刃3が、前述したように仮想平面4に対して同一位置(仮想平面4上)またはわずかな間隔を隔てた位置に配される範囲で調整され、セットされる。
【0050】
本実施形態に係るカッター1おいて、円周切れ刃2と直線切れ刃3との刃先の相対的な位置の調整(以下「刃先位置調整」という。)には、シム調整が用いられる。
すなわち、図1〜図3に示すように、カッター1における刃先位置調整には、合わせ面間に介装されるシム30が用いられる。そして、合わせ面間に介装されるシム30の数や厚さが調整されることにより、合わせ面間の間隔が調整され、カッター1の刃先位置調整が行われる。カッター1の刃先位置調整は、例えば数ミクロンオーダーで行われる。
【0051】
シム30としては、丸刃側合わせ面18および直刃側合わせ面28の形状に沿う略円環形状、あるいはその略円環形状の一部形状(例えば略C字形状)等を有するものが用いられる。シム30は、合わせ面間に介装された状態で、締結ボルト29による丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との固定が行われることにより、合わせ面間にて固定される。したがって、シム30は、その合わせ面間に介装された状態で、締結ボルト29の螺挿を許容するための貫通孔31を有する。
【0052】
また、シム30のカッター1における着脱(介装や交換等)に関しては、次のような構成が適宜用いられる。すなわち、シム30が、例えば略C字形状等の、略円環形状に切欠き部が設けられた形状に形成される。また、そのシム30の切欠き部に対応する位置に、締結ボルト29による締結部(雌ネジ穴17およびボルト孔27)が設けられる。このような構成により、シム30のカッター1における着脱に際し、シム30の切欠き部に対応する位置に設けられる締結部における、締結ボルト29の挿脱操作が省略される。
なお、カッター1の刃先位置調整のための構成は、本実施形態のようにシム調整が用いられる構成に限定されるものではない。カッター1の刃先位置調整に際しては、シム調整のほか、ボルトの締付け量等によって合わせ面間の間隔が調整されるボルト調整等が用いられてもよい。
【0053】
このような構成を備えるカッター1は、直刃カッター部材20の基部21側からホルダ等の操作具(図示略)に取り付けられ、この操作具を介して作業者に操作される。そして、塗装面上の突起物の除去に際しては、操作具に取り付けられた状態のカッター1が、その円周切れ刃2の内側であって直線切れ刃3を介するいずれかの側(図3では直線切れ刃3の左右いずれかの側)に突起物が位置するように塗装面に対してあてがわれ、円周切れ刃2および直線切れ刃3の少なくとも一部が塗装面に接触した状態で滑り移動させられる。これにより、円周切れ刃2および直線切れ刃3の少なくともいずれかが突起物に作用し、突起物が削り落とされることで除去される。
塗装面上におけるカッター1の滑り移動に際しては、円周切れ刃2を形成する交差稜線部16の先端部がガイド部として機能する。つまり、塗装面が平面の場合、突起物の切除作業時には、円周切れ刃2(交差稜線部16)の先端全周部が塗装面と接触した状態となることで、カッター1が塗装面上における滑り移動についてガイドされることとなる。
【0054】
以上のような構成を備えるカッター1の作用・効果について説明する。
【0055】
まず、図5(a)を用いて、突起物であるブツ51が存在する塗装面50が凸曲面である場合について説明する。
この場合、ブツ51の切除には、直線切れ刃3が好適に用いられる。すなわち、凸曲面である塗装面50上に存在するブツ51に対しては、従来の丸刃カッターの構成(円周切れ刃2のみを有する構成)では、例えば図5(a)に示すように円周切れ刃2がその中央部のみで塗装面に当接した状態において切れ刃(円周切れ刃2)と塗装面50との間の隙間が大きくなり、ブツ51の切除が不十分となる等の除去残りが発生する。この点、直線切れ刃3は、同じく図5(a)に示すように円周切れ刃2がその中央部のみで塗装面に接触した状態においても、切れ刃(直線切れ刃3)と塗装面50との間の隙間を小さく保つことができる。つまり、カッター1が、凸曲面である塗装面50に対して、直線切れ刃3を構成する刃部23が(刃部23の嵌合部22からの突出方向が)、凸曲面である塗装面50に対して垂直方向(法線方向)となるような姿勢となることで、直線切れ刃3が、凸曲面である塗装面50上のブツ51に対して、塗装面が平面である場合に近い状態で作用することとなる。つまりは、切れ刃(直線切れ刃3)と塗装面50との間の隙間が小さい状態でのブツ51の切除が可能となる。
このように、直線切れ刃3が用いられることにより、凸曲面である塗装面50上に存在するブツ51であっても確実に除去することが可能となり、塗装面における突起物の除去残りの発生を防止することができる。
【0056】
具体的に、凸曲面である塗装面50上のブツ51のカッター1による切除は、次のようにして行われる。
すなわち、図5(a)に示すように、凸曲面である塗装面50上のブツ51に対して、円周切れ刃2の内側であって直線切れ刃3の前側(カッター1の移動方向(図中白抜き矢印参照)前側)にブツ51が位置するように、カッター1が塗装面50に対してあてがわれる。そして、カッター1が、前記のように直線切れ刃3を構成する刃部23が凸曲面である塗装面50に対して垂直方向(法線方向)となるような姿勢で、塗装面50に沿って滑り移動させられる。このカッター1の滑り移動により、前側(図において左側)の直線切れ刃3がブツ51に作用し、ブツ51が切除される。
【0057】
なお、何らかの理由により、カッター1の中央部(円周切れ刃2の中央部)での塗装面50に対する当接が困難な場合は、円周切れ刃2が用いられることによってもブツ51の切除が可能となる。つまりこの場合、カッター1が、図5(a)に示すような中央部で塗装面50に対して当接した状態から、後側(カッター1の移動方向(図中白抜き矢印参照)後側)にやや傾けられた姿勢で、塗装面50に対してあてがわれる。そして、円周切れ刃2の後側(図において右側)の部分が用いられて、ブツ51が切除される。
ただし、このようにカッター1が塗装面50に対して傾けられることで円周切れ刃2が用いられてブツ51が切除されることは、カッター1の傾き度合いによっては、円周切れ刃2が塗装面50に対して点当たり(点接触)することで塗装面50に対する傷付きを発生させる可能性を有する。したがって、凸曲面である塗装面50に対しては、直線切れ刃3が好適に用いられる。
【0058】
次に、図5(b)を用いて、突起物であるブツ51が存在する塗装面50が凹曲面である場合について説明する。
この場合、ブツ51の切除には、円周切れ刃2および直線切れ刃3の両方が用いられる。すなわち、カッター1の一方向の移動により、ブツ51に対して円周切れ刃2および直線切れ刃3の両方を作用させることが可能となり、ブツ51の段階的な切除が可能となる。これにより、凹曲面である塗装面50上のブツ51を確実に除去することができ、塗装面における突起物の除去残りの発生を防止することができる。また、円周切れ刃2にかかる負担が軽減するため、円周切れ刃2の寿命を延ばすことができる。
【0059】
具体的に、凹曲面である塗装面50上のブツ51のカッター1による切除は、次のようにして行われる。
すなわち、図5(b)に示すように、凹曲面である塗装面50上のブツ51に対して、円周切れ刃2の内側であって直線切れ刃3の前側(カッター1の移動方向(図中白抜き矢印参照)前側)にブツ51が位置するように、カッター1が塗装面50に対してあてがわれる。そして、カッター1が、円周切れ刃2(の一部)が塗装面50に接触した状態で塗装面50に沿って滑り移動させられる。このカッター1の滑り移動により、前側(図において左側)直線切れ刃3が作用した後、円周切れ刃2の後側(図において右側)の部分が作用し、ブツ51が段階的に切除される。
【0060】
つまり、凹曲面である塗装面50に対しては、図5(b)に示すように、直線切れ刃3の塗装面50に対する隙間が、円周切れ刃2のそれに対して比較的大きくなる。このため、前記のとおり直線切れ刃3を先にブツ51に作用させることで、ブツ51の概略部分を切除した後、円周切れ刃2を作用させることで、ブツ51の残りの部分の切除(仕上げ切除)を行うことができる。つまりは、凹曲面である塗装面50上のブツ51に対しては、円周切れ刃2および直線切れ刃3による二枚刃切除が可能となる。
【0061】
なお、本実施形態に係るカッター1は、平面である塗装面上の突起物に対しては、刃先位置調整によって、次のようにして切れ刃を作用させることができる。すなわち、直線切れ刃3を仮想平面4上にセットすることにより、平面である塗装面上の突起物に対して、円周切れ刃2および直線切れ刃3を選択的に作用させることができる。この場合、本実施形態のカッター1は、直線切れ刃3を有する分、従来の丸刃カッターの構成(円周切れ刃2のみを有する構成)に対して、切れ刃の全長が実質的に長くなるので耐久性が向上する。また、直線切れ刃3を仮想平面4に対してわずかな間隔を隔てた位置にセットすることにより、平面である塗装面上の突起物に対して、円周切れ刃2のみを作用させることや、前述したような円周切れ刃2および直線切れ刃3による段階的な切除が可能となる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係るカッター1においては、優れた作業性が得られるとともに、平面および凹・凸曲面のいずれの塗装面に対しても、作業者の熟練度や頻繁な刃先の位置調整を要することなく、突起物の除去残りの発生を防止することができる。
【0063】
すなわち、本実施形態に係るカッター1においては、前述したように塗装面上におけるカッター1の滑り移動に際し、円周切れ刃2を形成する交差稜線部16の先端部がガイド部として機能するため、良好な取扱い性が得られ、優れた作業性が得られる。
また、本実施形態に係るカッター1は、前述したように、平面である塗装面上の突起物に対しては、円周切れ刃2および直線切れ刃3のいずれも作用させることができ、突起物の除去残りの発生を防止することができるのはもちろんのこと、凹・凸曲面である塗装面上の突起物に対しても、直線切れ刃3を用いることにより、突起物の除去残りの発生を防止することができる。ここで、塗装面上の突起物の切除に際しては、前記のとおり円周切れ刃2を形成する交差稜線部16の先端部がガイド部として機能するため、作業者について熟練度を要しない。また、塗装面上の突起物の切除に対しては、塗装面が平面および凹・凸曲面のいずれであっても、円周切れ刃2および直線切れ刃3のいずれかで対応可能であるため、頻繁な刃先の位置調整が不要となる。
このように、本実施形態に係るカッター1においては、使用する塗装面の形状に対する制約が少なくなる。
【0064】
また、本発明に係るカッターが用いられる塗装面の一例である自動車ボデーの塗装面は、一般的に外側に湾曲する曲面(凸曲面)が多い。この点、本実施形態に係るカッター1は、前述したように、凸曲面である塗装面上の突起物に対して、従来の丸刃カッターとの対比において除去残りの発生を効果的に防止することができ、有用である。
【0065】
また、本実施形態に係るカッター1においては、次のような効果が得られる。
すなわち、円周切れ刃2と直線切れ刃3とが、互いに着脱可能に組み付けられる丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との別部材に設けられることにより、円周切れ刃2および直線切れ刃3を別々に製作することが可能となる。これにより、円周切れ刃2および直線切れ刃3の製作の容易化を図ることができる。また、円周切れ刃2および直線切れ刃3の補修を行うに際し、カッター1を丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とに分解した状態で、それぞれの部材に対して行うことができるので、補修性の向上を図ることができる。また、丸刃カッター部材10や直刃カッター部材20について替えの部材を準備しておくことにより、円周切れ刃2または直線切れ刃3を容易に交換することが可能となる。
【0066】
また、円周切れ刃2が設けられる丸刃カッター部材10と、直線切れ刃3が設けられる直刃カッター部材20とが、仮想平面4と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で仮想平面4に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士であることにより、刃先位置調整にシム調整を用いることが可能となる。これにより、カッター1における刃先位置調整を、高精度に行うことができるとともに、簡単かつ安価な構成により行うことができる。また、丸刃側合わせ面18と直刃側合わせ面28との間に介在させるシム30の厚さ等により、直線切れ刃3の仮想平面4(円周切れ刃2)に対する位置が導かれることから、円周切れ刃2および直線切れ刃3それぞれの加工精度に基づき、シム30の厚さ等を決定し、丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20とを組み付け固定することで、直線切れ刃3の仮想平面4に対する位置測定が不要となる。さらに、円周切れ刃2または直線切れ刃3について研ぎ直し等の補修をした場合、その補修により変化した(減少した)切れ刃の寸法分を、シム30による調整のみで容易に補正することが可能となる。
【0067】
次に、本実施形態に係るカッター1の別構成について、図6を用いて説明する。
本構成においては、カッター1において、直線切れ刃3を形成するすくい面24が、仮想平面4に対して鋭角をなす。
すなわち、図6に示すように、直線切れ刃3を形成するすくい面24の仮想平面4に対する角度αが、図3等に示すようにすくい面24の仮想平面4に対する角度が略90度である構成に対して、鋭角となっている。角度αは、前記のとおり先端面25は仮想平面4に対して平行面であるため、言い換えると、直線切れ刃3を形成するすくい面24の先端面25に対する角度となる。
【0068】
具体的には、直線切れ刃3を構成する刃部23の両側の板面23a・23aにおいて、その下端部に凹状溝33が形成されることにより、仮想平面4に対して鋭角をなすすくい面24が形成される。つまり、凹状溝33は、直線切れ刃3の直線方向に沿う方向(図6における奥行き方向)に形成される溝部であり、この凹状溝33の下端部にすくい面24が形成される。そして、刃部23において、一側のすくい面24と先端面25との交差稜線部26により一方の直線切れ刃3が形成され、他側のすくい面24と先端面25との交差稜線部26により他方の直線切れ刃3が形成される。
直線切れ刃3を形成するすくい面24の仮想平面4に対する角度αは、直線切れ刃3の切れ味やカッター1の取扱いの難易度(作業性)や刃先強度等が考慮され設定される。
【0069】
このように、直線切れ刃3を形成するすくい面24が、仮想平面4に対して鋭角をなすことにより、直線切れ刃3の切れ味を向上させることができる。
すなわち、直線切れ刃3を形成するすくい面24の仮想平面4に対する角度αが小さいほど、直線切れ刃3のすくい角(すくい面24の垂直面に対する角度)が大きくなるため、切れ味は良くなる。ただし、角度αが過度に小さいと、直線切れ刃3のすくい角が大きくなり、刃先強度が低下し、使用中に破損し易くなる。
また、直線切れ刃3を形成するすくい面24の仮想平面4に対する角度αが異なる直刃カッター部材20を複数準備することにより、直刃カッター部材20を交換することのみにより、直線切れ刃3の切れ味を容易に変更することが可能となる。
【0070】
本発明に係るカッターの第二実施形態について説明する。なお、第一実施形態と共通する部分については、同一の符号を用いる等して適宜その説明を省略する。
本実施形態に係るカッター41は、図7〜図9に示すように、切れ刃として、直線切れ刃43を備えるとともに、この直線切れ刃43の周囲に設けられるガイド接触部42を備える。つまり、本実施形態に係るカッター41は、第一実施形態のカッター1における円周切れ刃2の部分が、内切れ刃とされずにガイド部として構成される。
【0071】
ガイド接触部42は、円環形状またはその一部形状であり、少なくとも対向する一対の部分の形状を有する。
すなわち、ガイド接触部42は、図7において二点鎖線で示すような円環形状またはその一部形状を有する。また、ガイド接触部42は、その全部が同一平面に対して接触可能な平面部またはR形状部で構成される。本実施形態のカッター41においては、円環形状の一部形状を有するガイド接触部42は、直線切れ刃43の直線方向(図7における左右方向)の両側にて対向する一対の部分として対称に設けられる。つまり、各ガイド接触部42は、直線切れ刃43の両側にて、円環形状に対して所定の角度範囲で設けられる。
ただし、ガイド接触部42は、本実施形態のように直線切れ刃43の直線方向の両側に設けられる場合に限られず、例えば直線切れ刃43の直線方向に対する垂直方向(直線切れ刃43の作用方向、図7における上下方向)の両側に設けられてもよい。また、ガイド接触部42は、円環形状の一部形状を有する場合に限られず、円環形状を有してもよい。つまり、ガイド接触部42は、円環形状(図7二点鎖線参照)の全周にわたって設けられてもよい。
【0072】
直線切れ刃43は、ガイド接触部42の内側であって、ガイド接触部42が全部にわたって接触する仮想平面44(図8参照)上またはこの仮想平面44に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、ガイド接触部42の円環形状の略径方向に配される。ここで、仮想平面44とは、ガイド接触部42が全周にわたって接触可能な平面である。つまり、平面であると仮定される塗装面上に支持された状態のカッター41については、その塗装面が仮想平面44となる。
このような仮想平面44に対し、直線切れ刃43は、第一実施形態の直線切れ刃3の仮想平面4に対する関係と同様に、同一位置(仮想平面4上)またはわずかな間隔を隔てた位置に配される。
【0073】
また、直線切れ刃43は、ガイド接触部42が一部形状となる円環形状の略径方向に配される。
すなわち、直線切れ刃43は、その直線方向が、ガイド接触部42が一部形状となる円環形状(図7二点鎖線参照)における略径方向(円環形状の略中心位置を通る直線方向)となるように設けられる。そして、本実施形態のカッター41においては、直線切れ刃43が、ガイド接触部42の円環形状に対して略径方向の略全体にわたるように設けられている。つまり、図8に示すように、カッター41においては、直線切れ刃43が、その直線方向の長さが、ガイド接触部42の円環形状の略径方向の長さに対して略同一(若干短め)となるように設けられている。
【0074】
以下、本実施形態に係るカッター41の具体的な構成について、図7〜図9を用いて説明する。
本実施形態に係るカッター41は、ガイド接触部42が設けられる部材であるガイド部材60と、直線切れ刃43が設けられる部材である直刃カッター部材70とを備える。これらガイド部材60と直刃カッター部材70とは、互いに着脱可能に構成される。
つまり、本実施形態に係るカッター41においては、ガイド接触部42と、直線切れ刃43とは、互いに着脱可能に組み付けられる別部材に設けられている。
【0075】
まず、ガイド部材60について説明する。
ガイド部材60は、第一実施形態における丸刃カッター部材10と略同様に構成され、円板状に形成される基部61と、基部61の一方の板面側から略円筒状の一部形状の部分として突出するとともにガイド接触部42を構成するガイド部62とを有する。
ガイド部材60においては、板状の基部61の板面に対して垂直方向に基部61を貫通する孔部63が形成されている。つまり、孔部63によって、基部61の内側面が形成され、孔部63は、略円筒状のガイド部62に対して同心位置に設けられ、円柱形状を有する。
【0076】
ガイド部62は、前記のとおりガイド接触部42を構成する部分であるため、ガイド接触部42の形状に対応して設けられる。したがって、本実施形態のカッター41においては、前記のとおり直線切れ刃43の直線方向の両側にて対向する一対の部分として対称に設けられるガイド接触部42に対応して、ガイド部62は、直線切れ刃43の直線方向の両側にて対向する一対の部分として構成される。つまり、本実施形態におけるガイド部62は、図7に示すように、基部61の一方の板面側から突出する略円筒状の部分のうち、直線切れ刃43の両側の部分以外の部分が除かれたような形状を有する。言い換えると、各ガイド部62は、基部61の一方の板面側から突出する略円筒状の一部形状を有する。
したがって、ガイド部62は、前記のとおりガイド接触部42が例えば円環形状を有する場合は、これに対応して、基部61の一方の板面側から突出する略円筒状の部分(全周部分)となる。
【0077】
各ガイド部62は、円柱形状の一部形状を有する内側面63bと、円筒面の一部形状となる外側面62aと、この外側面62aから連続する斜面部65とを有する。内側面63bは、孔部63に対して若干径方向外側に位置する。つまり、図8に示すように、ガイド部62の内側面63bは、孔部63に対して径方向外側に若干の段差を形成する。また、斜面部65は、円錐面の一部形状を有する。また、各ガイド部62は、その円環形状の一部形状を円環形状から区切る面として、両側の側面62bを有する。側面62bは、本実施形態では、図7に示すように、直線切れ刃43の直線方向(図7における左右方向)と略平行であって、仮想平面44に対して垂直方向の面となっている。
【0078】
ガイド部62においては、内側面63bと斜面部65との互いの交差稜線部に、ガイド接触部42が形成される。
ガイド接触部42は、前記のとおり本実施形態では、直線切れ刃43の直線方向の両側において対向する一対の部分として対称に設けられている。そして、各ガイド接触部42の直線切れ刃43に対する大きさ(円環形状における角度範囲)は、ガイド接触部42の円環形状の全周に対して1/3程度、つまり片側のガイド接触部42が円環形状の全周に対して1/6程度の部分(角度範囲で60°程度の部分)となる。
【0079】
このように、ガイド部材60においては、基部61の一方の板面側から突出するガイド部62の先端部にガイド接触部42が形成される。そして、前記のとおりこのガイド接触部42が全部(全面)にわたって接触可能な平面が、仮想平面44(図8参照)となる。
ガイド部材60の基部61は、ガイド部62が突出される側と反対側の板面として、仮想平面44と平行な面である上側面61aを有する。
【0080】
次に、直刃カッター部材70について説明する。
直刃カッター部材70は、第一実施形態における直刃カッター部材20と略同様に構成され、円板状に形成される基部71と、基部71の一方の板面側から円柱状に突出する嵌合部72と、嵌合部72における基部71側と反対側(下側)に突設され直線切れ刃43を構成する刃部73とを有する。
【0081】
本実施形態の直刃カッター部材70における刃部73は、嵌合部72を構成する円柱状の部分が、延設されるとともにその延設部において径方向の両側(図9において左右両側)の部分が蒲鉾状に削り取られることで形成されるような板状の部分となる。刃部73の両側の側面73b・73bは、円柱面の一部形状を有する。
直刃カッター部材70のその他の構成は、第一実施形態における直刃カッター部材20と同様であり、説明を省略する。なお、直刃カッター部材70の基部71は、仮想平面44と平行な面である下側面71bを有する。
【0082】
また、ガイド部材60と直刃カッター部材70との着脱構成については、第一実施形態の丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との着脱構成と同様である。すなわち、ガイド部材60と直刃カッター部材70とは、直刃カッター部材70の嵌合部72が、ガイド部材60の孔部63に嵌合することにより組み付けられる。
ガイド部材60と直刃カッター部材70とが互いに組み付けられた状態(以下、カッター41について「組付状態」ともいう。)においては、嵌合部72が孔部63に嵌合した状態となるとともに、ガイド部材60の基部61の上側面61aと、直刃カッター部材70の基部71の下側面71bとが対向する状態となる。
カッター41の組付状態は、第一実施形態の場合と同様にして、締結ボルト29等が用いられて固定される。
【0083】
そして、カッター41の組付状態におけるガイド接触部42と直線切れ刃43とは、前述したような関係を有することとなる。すなわち、カッター41の組付状態において、直線切れ刃43は、ガイド接触部42が沿う円環形状の内側であって、ガイド接触部42が全部にわたって接触する仮想平面44(図8参照)上またはこの仮想平面44に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、前記円環形状の略径方向に配された状態なる。つまり、カッター41の組付状態において、ガイド接触部42と直線切れ刃43とが前記のような関係を有するように、前記円環形状の径や、直線切れ刃43を形成する刃部73の上下方向・左右方向(直線切れ刃43の直線方向)のそれぞれの長さ等が設定される。
また、カッター41の組付状態においては、直線切れ刃43を形成する刃部73の両側のすくい面74(板面73a)は、仮想平面44に対して垂直面となり、同じく直線切れ刃43を形成する先端面75は、仮想平面44に対して平行面となる。
【0084】
以上のように、本実施形態に係るカッター41においては、ガイド接触部42が設けられるガイド部材60と、直線切れ刃43が設けられる直刃カッター部材70とが、互いに着脱可能に組み付けられる別部材として構成される。そして、ガイド部材60と、直刃カッター部材70とは、第一実施形態における丸刃カッター部材10と直刃カッター部材20との関係と同様にして、仮想平面44と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で仮想平面44に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士となっている。
【0085】
すなわち、ガイド部材60における基部61の上側面61a、および直刃カッター部材70における基部71の下側面71bは、いずれも仮想平面44と平行な面であり、これらが互いの(相手に対する)合わせ面となる。つまり、ガイド部材60と直刃カッター部材70とは、仮想平面44と平行な面を互いの(相手に対する)合わせ面に含む部材同士となる。
以下の説明では、ガイド部材60の合わせ面となる上側面61aを「丸刃側合わせ面68」とし、直刃カッター部材70の合わせ面となる下側面71bを「直刃側合わせ面78」とする。
【0086】
また、同じくカッター41の組付状態においては、直刃カッター部材70の嵌合部72が、ガイド部材60の孔部63に嵌合した状態となる。
したがって、ガイド部材60と直刃カッター部材70とは、互いに組み付けられた状態(カッター41の組付状態)で、孔部63の内周面と嵌合部72の外周面とが摺動面となり、互いの組付け方向、つまり仮想平面44に対して垂直方向に相対的に移動可能となる。
【0087】
そして、本実施形態に係るカッター41おいて、直線切れ刃43のガイド接触部42(仮想平面44)に対する位置の調整には、第一実施形態に係るカッター1における刃先位置調整と同様、シム調整が用いられる。つまり、直線切れ刃43のガイド接触部42(仮想平面44)に対する位置の調整には、丸刃側合わせ面68と直刃側合わせ面78との間に介装されるシム30が用いられる。
【0088】
以上の構成を備える本実施形態に係るカッター41においては、ガイド接触部42により、直線切れ刃43を、塗装面上に容易に垂直に保持することができる。つまり、ガイド接触部42を塗装面に接触させることにより、直線切れ刃43をガイドすることができ、直線切れ刃43を塗装面に対して常に一定の姿勢で保持することができる。これにより、良好な操作性が得られ、作業性を向上させることが可能となる。
【0089】
また、カッター41においては、ガイド接触部42が、直線切れ刃43に対して、この直線切れ刃43の作用方向に対して垂直方向の両側の部位に配設されることが好ましい。
つまり、本実施形態に係るカッター41のように、ガイド接触部42を構成するガイド部62が、直線切れ刃43の作用方向となる直線方向の両側に設けられることにより、ガイド接触部42がこの直線切れ刃43の作用方向に対して垂直方向の両側の部位に配設される。
【0090】
このように、ガイド接触部42が直線切れ刃43の両側に設けられることにより、特に凸曲面である塗装面に対して良好な作業性が得られ効果的となる。すなわち、凸曲面である塗装面に対しては、カッター41が、例えば直線切れ刃43を構成する刃部73が凸曲面である塗装面に対して垂直方向(法線方向)となるような姿勢で、塗装面に沿って滑り移動させられる。このカッター41の移動に際し、ガイド接触部42により、塗装面に対する直線切れ刃43の刃先の位置を保持した状態でのカッター41の移動が可能となる。これにより、良好な作業性が得られる。
【0091】
なお、本実施形態に係るカッター41においては、ガイド接触部42が、円周状の内切れ刃である構成を採用することもできる。
すなわち、ガイド接触部42が、直線切れ刃43に対して全周にわたって(円環形状に)設けられ、そのガイド接触部42が、第一実施形態における円周切れ刃2と同様にして構成される。つまりこの場合、ガイド部62が、直線切れ刃43に対して全周にわたって設けられるとともに、第一実施形態に係るカッター1における直刃カッター部材20の刃部23と同様にして構成される。このように、ガイド接触部42が円周状の内切れ刃となることにより、結果として、本実施形態に係るカッター41が、第一実施形態に係るカッター1と同様に、直線切れ刃43に加え、円周切れ刃を備える構成となる。
【0092】
また、本実施形態に係るカッター41においても、図6に示す第一実施形態のカッター1の別構成と同様に、直線切れ刃43を形成するすくい面74が、仮想平面44に対して鋭角をなすように構成することができる。
その他の作用、効果については、第一実施形態のカッター1と同様であり、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第一実施形態に係るカッターの切れ刃側から見た斜視図。
【図2】本発明の第一実施形態に係るカッターの正面断面図。
【図3】同じく側面一部断面図。
【図4】本発明の第一実施形態に係るカッターの丸刃カッター部材と直刃カッター部材との分解図。
【図5】本発明の第一実施形態に係るカッターの作用等の説明図。(a)は塗装面が凹曲面である場合を示す図。(b)は塗装面が凸曲面である場合を示す図。
【図6】本発明の第一実施形態に係るカッターの別構成を示す部分拡大図。
【図7】本発明の第二実施形態に係るカッターの低面図。
【図8】同じく正面断面図。
【図9】同じく側面図。
【図10】従来技術である直刃カッターを備える補修工具の作用等の説明図。
【図11】従来の丸刃カッターを示す切れ刃側から見た斜視図。
【図12】従来の丸刃カッターの作用等の説明図。
【符号の説明】
【0094】
1 カッター(塗装面上突起物除去用カッター)
2 円周切れ刃
3 直線切れ刃
4 仮想平面
10 丸刃カッター部材
18 丸刃側合わせ面
20 直刃カッター部材
28 直刃側合わせ面
30 シム
33 凹状溝
41 カッター(塗装面上突起物除去用カッター)
42 ガイド接触部
43 直線切れ刃
44 仮想平面
60 ガイド部材
68 ガイド側合わせ面
70 直刃カッター部材
78 直刃側合わせ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切れ刃の少なくとも一部が塗装面に接触した状態で移動することで、塗装面上の突起物を切除する塗装面上突起物除去用カッターであって、
前記切れ刃として、
円周状の内切れ刃と、
前記円周状の内切れ刃の内側であって、該円周状の内切れ刃が全周にわたって接触する仮想平面上または該仮想平面に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、前記円周状の内切れ刃の略径方向に配される直線状の切れ刃と、
を備えることを特徴とする塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項2】
前記円周状の内切れ刃と、前記直線状の切れ刃とは、
互いに着脱可能に組み付けられる別部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載の塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項3】
前記円周状の内切れ刃が設けられる部材と、前記直線状の切れ刃が設けられる部材とは、
前記仮想平面と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で前記仮想平面に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士であることを特徴とする請求項2に記載の塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項4】
塗装面上の突起物を切除する塗装面上突起物除去用カッターであって、
円環形状またはその一部形状であり少なくとも対向する一対の部分の形状を有し塗装面に接触するガイド接触部と、
前記ガイド接触部の内側であって、前記ガイド接触部が全部にわたって接触する仮想平面上または該仮想平面に対してわずかな間隔を隔てた位置にて、前記円環形状の略径方向に配される直線状の切れ刃と、
を備えることを特徴とする塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項5】
前記ガイド接触部と、前記直線状の切れ刃とは、
互いに着脱可能に組み付けられる別部材に設けられることを特徴とする請求項4に記載の塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項6】
前記ガイド接触部が設けられる部材と、前記直線状の切れ刃が設けられる部材とは、
前記仮想平面と平行な面を互いの合わせ面に含むとともに、互いに組み付けられた状態で前記仮想平面に対して垂直方向に相対移動可能な部材同士であることを特徴とする請求項5に記載の塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項7】
前記ガイド接触部が、前記直線状の切れ刃に対して、該直線状の切れ刃の作用方向に対して垂直方向の両側の部位に配設されることを特徴とする請求項4〜6のいずれかの項に記載の塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項8】
前記ガイド接触部が、円周状の内切れ刃であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかの項に記載の塗装面上突起物除去用カッター。
【請求項9】
前記直線状の切れ刃を形成するすくい面が、前記仮想平面に対して鋭角をなすことを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の塗装面上突起物除去用カッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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