説明

塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造することができる酸発生剤、およびそれを含むレジスト組成物の提供。
【解決手段】式(I)で表される塩。


[式中、R及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。Lは、単結合又は2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基等を表す。Yは、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基等を表す。Z1+は、ピリジン環を有する有機カチオンを表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる酸発生剤用の塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸発生剤用の塩として、下記式で表される塩を含有するレジスト組成物が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から知られる上記酸発生剤を含むレジスト組成物では、得られるレジストパターンのラインエッジラフネス(LER)が必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕式(I)で表される塩。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、単結合又は2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該2価の飽和炭化水素基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、該2価の飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
1+は、ピリジン環を有する有機カチオンを表す。]
〔2〕前記Z1+が、式(I−Z−1)で表される有機カチオンである前記〔1〕記載の塩。

[式(I−Z−1)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数2〜5のアシル基を表す。]
〔3〕前記Z1+が、式(I−Z−1−1)で表される有機カチオンである前記〔1〕記載の塩。

〔4〕前記L1が、*−CO−O−(CH−(*は、−C(R)(R)−との結合手を表し、nは0又は1を表す。)で表される基である前記〔1〕〜前記〔3〕のいずれか記載の塩。
〔5〕前記〔1〕〜前記〔4〕のいずれか記載の塩を含有する酸発生剤。
〔6〕前記〔5〕記載の酸発生剤と樹脂とを含み、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸との作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
〔7〕(1)前記〔6〕記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
酸発生剤として本発明の塩を含むレジスト組成物を用いれば、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<塩>
本発明の塩は、式(I)で表される塩(以下「塩(I)」という場合がある)である。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、単結合又は2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該2価の飽和炭化水素基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、該2価の飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
1+は、ピリジン環を有する有機カチオンを表す。]
なお、以下の説明において、塩(I)のうち、正電荷を有するZ1+で示される有機カチオンを除去してなる負電荷を有するものを「スルホン酸アニオン」ということがある。
【0008】
1及びR2で表される炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基及びペルフルオロヘキシル基等が挙げられる。
本発明のレジスト組成物に用いる酸発生剤としては、R1及びR2は、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基又はフッ素原子である塩(I)が好ましく、ともにフッ素原子である塩(I)がより好ましい。
【0009】
1で表される2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基としては、直鎖状アルカンジイル基、分岐状アルカンジイル基、単環式又は多環式の2価の脂環式炭化水素基が挙げられ、これらの基のうち2種以上を組み合わせたものでもよい。具体的な2価の飽和炭化水素基を、以下に示す。
メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基及びプロパン−2,2−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;
直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)の側鎖を有した分岐状アルキレン基、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基等の分岐状アルカンジイル基;
シクロブタン−1,3−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、1−メチルシクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロアルカンジイル基である単環式の2価の脂環式炭化水素基;
ノルボルナン−2,3−ジイル基、ノルボルナン−1,4−ジイル基、ノルボルナン−2,5−ジイル基、アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,5−ジイル基及びアダマンタン−2,6−ジイル等の多環式の2価の脂環式炭化水素基;
【0010】
で表される2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を構成しているメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、以下の式(b1−1)〜式(b1−6)のいずれかで示される基が挙げられる。L1は、好ましくは式(b1−1)〜式(b1−4)のいずれかで表される基であり、より好ましくは式(b1−1)で表される基又は式(b1−2)で表される基であり、さらに好ましくは式(b1−1)で表される基であり、さらにより好ましくは*−CO−O−(CH−(*は、−C(R)(R)−との結合手を表し、nは0又は1を表す。)で表される基である。なお、式(b1−1)〜式(b1−6)は、その左右を式(I)に合わせて記載しており、それぞれ*で示される2つの結合手のうち、下記式で表される基がLを表す場合は、左側の結合手は、C(R1)(R2)の炭素原子と結合し、右側の結合手はYと結合している。以下の式(b1−1)〜式(b1−6)の具体例も同様である。

式(b1−1)〜式(b1−6)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基を表す。
b4は、炭素数1〜13の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb3及びLb4の合計炭素数の上限は13である。
b5は、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b6は、単結合又は炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b7は、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb6及びLb7の合計炭素数の上限は16である。
b8は、炭素数1〜14の2価の飽和炭化水素基を表す。
b9及びLb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜11の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb9及びLb10の合計炭素数の上限は12である。
本発明のレジスト組成物に用いる酸発生剤としては、これらの中でも、式(b1−1)で表される2価の基をL1として有する塩(I)が好ましく、Lb2が単結合又はメチレン基である式(b1−1)で表される2価の基をL1として有する塩(I)がより好ましい。
【0011】
ここで、それぞれ式(b1−1)〜式(b1−6)で表される2価の基の具体例を挙げる。なお、*の定義はすでに説明したとおりである。
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0012】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0013】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0014】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0015】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0016】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0017】
水素原子がフッ素原子で置換されたLとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0018】
Yは炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
【0019】
Yで表される炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。なお、このアルキル基は直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0020】
Yで表される炭素数3〜18の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜12のシクロアルキル基がより好ましい。該シクロアルキル基は単環式であっても、多環式であってもよい。また、環を構成する原子としてのみ炭素原子を有するシクロアルキル基に留まらず、環を構成する原子の炭素原子に炭素数1〜12のアルキル基が結合してなる基もシクロアルキル基とする。該脂環式炭化水素基は任意に置換基を有する。本明細書において「置換基を有する脂環式炭化水素基」とは、該脂環式炭化水素基にある水素原子が、置換基で置換されている基を意味する。該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(但し、フッ素原子を除く)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基又は−(CH2j2−O−CO−Ri1で表される基(式中、Ri1は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基もしくは炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)等が挙げられる。かかる脂環式炭化水素基が有する置換基である炭素数6〜18の芳香族炭化水素基及び炭素数7〜21のアラルキル基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基を有していてもよい。
【0021】
Yで表される脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基がメチレン基を含む場合、該メチレン基は、酸素原子、スルホニル基(−SO−)又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基が、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、環状エーテル基(脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基の1つ又は2つが酸素原子に置き換わった基)、環状ケトン基(脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基の1つ又は2つがカルボニル基に置き換わった基)、スルトン環基(脂環基に含まれるメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びスルホニル基に置き換わった基)及びラクトン環基(脂環基に含まれるメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びカルボニル基に置き換わった基)等が挙げられる。
【0022】
Yの脂環式炭化水素基としては、例えば、式(Y1)〜式(Y29)のいずれかで表される基が挙げられる。ここで、式(Y12)〜式(Y26)でそれぞれ表される基が、脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基の1〜3個がそれぞれ、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わった基に該当する。なお、これら式(Y1)〜式(Y29)でそれぞれ表される基において、*はL1との結合手を表す。

Yとしては、これらの例示の中でも、式(Y1)〜式(Y19)及び式(Y27)〜式(Y29)のいずれかで表される基が好ましく、式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)、式(Y19)、式(Y27)、式(Y28)又は式(Y29)で表される基がより好ましく、式(Y11)又は式(Y14)で表される基がさらに好ましい。
【0023】
ヒドロキシ基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0024】
炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0025】
−(CH2j2−O−CO−Ri1で表される基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0026】
Yとしては、置換基を有していてもよいアダマンチル基が好ましく、アダマンチル基又はヒドロキシアダマンチル基がより好ましい。
【0027】
スルホン酸アニオンとしては、式(b1−1−1)〜式(b1−1−9)のいずれかで表されるスルホン酸アニオンが好ましい。また、Ri2及びRi3は、それぞれ独立に、Yで表される脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたものと同じであり、炭素数1〜4のアルキル基及びヒドロキシ基が好ましく、メチル基及びヒドロキシ基がより好ましい。
【0028】

【0029】
Yが脂肪族炭化水素基又は無置換の脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0030】

【0031】

【0032】

【0033】
Yが−(CH2j2−O−CO−Ri1で表される基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0034】
Yがヒドロキシ基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】
Yが芳香族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基又はアラルキル基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0039】
Yが環状エーテル基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0040】
Yがラクトン環基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0041】

【0042】
Yが環状ケトン基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0043】
Yがスルトン環基であり、L1が式(b1−1)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0044】
Yが脂肪族炭化水素基又は無置換の脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】

【0049】

【0050】
Yが−(CH2j2−O−CO−Ri1で表される基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0051】
Yがヒドロキシ基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0052】

【0053】
Yが芳香族炭化水素基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0054】
Yが環状エーテル基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0055】
Yがラクトン環基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0056】
Yが環状ケトン基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0057】
Yがスルトン環基であり、L1が式(b1−2)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0058】
Yが脂肪族炭化水素基又は無置換の脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−3)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0059】

【0060】
Yがアルコキシ基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−3)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0061】
Yがヒドロキシ基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−3)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。

【0062】
Yが環状ケトン基であり、L1が式(b1−3)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0063】
Yが無置換の脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−4)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0064】
Yがアルコキシ基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−4)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0065】
Yがヒドロキシ基を有する脂環式炭化水素基であり、L1が式(b1−4)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば以下のものが挙げられる。

【0066】
Yが環状ケトン基であり、L1が式(b1−4)で表される基であるスルホン酸アニオンとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0067】

【0068】
以上例示したスルホン酸アニオンの中でも、L1が式(b1−1)で表される基であるものが好ましい。より好ましいスルホン酸アニオンを以下に示す。

【0069】
1+は、ピリジン環を1以上有する有機カチオンである。
かかる有機カチオンとしては、例えば、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン、有機ホスホニウムカチオン等の有機オニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、有機スルホニウムカチオン又は有機ヨードニウムカチオンが好ましく、有機スルホニウムカチオンがより好ましく、なかでもアリールスルホニウムカチオンがさらに好ましい。
【0070】
1+としては、例えば、以下のカチオン等が挙げられる。

【0071】
式(I−Z−1)で表される有機カチオンが好ましい。

[式(I−Z−1)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数2〜5のアシル基を表す。]
及びRで示される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基又はブチル基である。
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。好ましくはメトキシ基又はブトキシ基である。
炭素数2〜5のアシル基としては、例えば、アセチル基、ベンジル基が挙げられる。好ましくはアセチル基である。
【0072】
なかでも式(I−Z−1−1)で表される有機カチオンがより好ましい。

【0073】
塩(I)としては、例えば、下記表1〜3記載のスルホン酸アニオンと有機カチオンとからなる塩が挙げられる。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
なかでも以下に示す塩が好ましい。

【0078】
次に、塩(I)の製造方法について説明する。
例えば、式(Ia)で表される塩は、式(Ia−a)で表される塩と式(Ia−b)で表される塩とを溶剤中で反応させることにより製造することができる。

(式中、R、R、L及びYは、それぞれ前記と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
溶剤としては、クロロホルム等が挙げられる。
式(Ia−b)で表される塩としては、例えば特開2008−209917号公報に記載された方法によって製造することができる。
【0079】
式(Ia−a)で表される塩は、式(I1−d)で表される化合物と式(I1−e)で表される化合物とをトリメチルシリルハライド存在下、溶剤中で反応させることにより製造することができる。

(式中、Xは、それぞれ上記と同じ意味を表す。)
溶剤としては、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0080】
式(I1−d)で表される化合物は、式(I1−c)で表される化合物を酸化剤存在下、溶剤中で反応させることにより製造することができる。

酸化剤としては、過酸化水素等が挙げられる。
溶剤としては、アセトン等が挙げられる。
【0081】
式(I1−c)で表される化合物は、式(I1−a)で表される化合物と式(I1−b)で表される化合物とを触媒存在下、溶剤中で反応させることにより製造することができる。

触媒としては、カリウムt−ブトキシド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。
溶剤としては、エタノール等が挙げられる。
【0082】
<酸発生剤>
本発明の酸発生剤は、塩(I)を含有する。塩(I)は、酸発生剤として使用する時、単独でも複数種を同時に用いてもよい。また、本発明の酸発生剤は、さらに、塩(I)以外の酸発生剤として公知の塩(例えば、塩(I)に含まれる有機カチオン及び公知のアニオン(塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン以外のアニオン)からなる塩並びに塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン及び公知のカチオン(塩(I)に含まれる有機カチオン以外のカチオン)からなる塩等)を含んでいてもよい。以下、かかる本発明の酸発生剤に含まれる塩(I)以外の塩を「酸発生剤(B)」という場合がある。
【0083】
塩(I)と併用する酸発生剤(B)としては、塩(I)に含まれるスルホン酸アニオンとトリアリールスルホニウムカチオンとからなる化合物が挙げられる。例えば、式(B1−1)〜式(B1−17)で表されるものが挙げられる。中でもトリフェニルスルホニウムカチオン及びトリトリルスルホニウムカチオンを含むものが好ましく、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)又は式(B1−14)でそれぞれ表される塩がさらに好ましい。
【0084】

【0085】

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】
本発明の酸発生剤が塩(I)と酸発生剤(B)とを含む場合、塩(I)の含有量は、酸発生剤全量100質量部に対して、好ましくは10質量部以上(より好ましくは30質量部以上)、好ましくは90質量部以下(より好ましくは70質量部以下)である。
【0090】
<レジスト組成物>
次に、本発明のレジスト組成物について説明する。本発明のレジスト組成物は、上記本発明の酸発生剤と樹脂とを含み、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸との作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂(以下、「樹脂(A)」という。)である。
【0091】
<樹脂(A)>
樹脂(A)は、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸との作用によりアルカリ水溶液に可溶となる特性を有する。「酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる」とは、酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となることを意味する。このような樹脂(A)は、分子内にある親水性基の一部又は全部が、酸との接触により脱離し得る保護基により保護されているものであり、樹脂(A)が酸と接触すると該保護基が脱離して、親水性基が生成することにより、樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶となる。該保護基により保護されている親水性基を以下、「酸不安定基」という場合がある。該親水性基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基がより好ましい。
該樹脂(A)は、酸不安定基を有するモノマー(以下、「モノマー(a1)」という。)を重合することによって製造できる。かかる重合の際には、モノマー(a1)を1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
<モノマー(a1)>
すでに説明したように、モノマー(a1)は酸不安定基を有する。親水性基がカルボキシ基である場合の酸不安定基は、該カルボキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、オキシ基と結合する該有機残基の炭素原子が第三級炭素原子である基(すなわち第三アルコールのエステル)が挙げられる。このような酸不安定基のうち、好ましい酸不安定基は例えば、以下の式(1)で表されるもの(以下、場合により「酸不安定基(1)」という。)である。

【0093】
式(1)中、Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、Ra1及びRa2は互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Ra1及びRa2が互いに結合して形成される環、該アルキル基又は該脂環式炭化水素基がメチレン基を有する場合、そのメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。*は結合手を表す。
【0094】
a1〜Ra3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などが挙げられる。
【0095】
a1〜Ra3の脂環式炭化水素基は、単環式及び多環式のいずれでもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及びメチルノルボルニル基、並びに下記に示す基などが挙げられる。

a1〜Ra3の脂環式炭化水素基は、その炭素数が3〜16の範囲であると好ましい。
【0096】
a1及びRa2が互いに結合して環を形成する場合、−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)で表される基としては、下記式でそれぞれ表される基が挙げられる。このような環の炭素数は、好ましくは3〜12である。

【0097】
酸不安定基(1)の具体例は、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3が全てアルキル基である基、このアルキル基のうち、1つはtert−ブトキシカルボニル基であると好ましい。)、2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともにアダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0098】
一方、親水性基がヒドロキシ基である場合の酸不安定基は、該ヒドロキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、アセタール構造又はケタール構造を含む基となったものが挙げられる。このような酸不安定基のうち、好ましい酸不安定基は例えば、以下の式(2)で表されるもの(以下、場合により「酸不安定基(2)」という。)である。

【0099】
式(2)中、Rb1〜Rb2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rb3は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、或いは、Rb2及びRb3は互いに結合して、それらが各々結合する炭素原子及び酸素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Rb2及びRb3は互いに結合して形成される環又は該炭化水素基メチレン基を有する場合、そのメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。*は結合手を表す。
【0100】
b1〜Rb3の炭化水素基は例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。ここで、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基は、Ra1〜Ra3の基として説明したものと同じである。該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。Rb1〜Rb2のうち、少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
【0101】
酸不安定基(2)としては、以下の基が挙げられる。

【0102】
酸不安定基を有するモノマー(a1)は、好ましくは、酸不安定基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー、より好ましくは酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0103】
モノマー(a1)は好ましくは、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)と、炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーであり、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)と(メタ)アクリル基とをともに分子内に有するモノマーであり、さらに好ましくは、より好ましくは酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0104】
酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーの中でも、酸不安定基(1)が、炭素数5〜20の脂肪族環を有するものが好ましい。立体的に嵩高い脂肪族環を有するモノマー(a1)を重合して得られる樹脂(A)を含む本レジスト組成物を用いてレジストパターンを製造すれば、より高解像度でレジストパターンを製造することができる。
【0105】
脂肪族環を部分構造とする酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーの中でも、式(a1−1)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−1)」という場合がある。)又は式(a1−2)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−2)」という場合がある。)が好ましい。樹脂(A)を製造する際、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

式(a1−1)及び式(a1−2)中、
a1及びLa2は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2k1−CO−O−で表される基を表す。ここで、k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。
a4及びRa5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a6及びRa7は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n2は0又は1の整数を表す。
なお、式(a1−1)においてアダマンタン環にある「−(CHm1」の表記は、アダマンタン環にあるメチレン基及び/又はメチン基の水素原子が、メチル基に置き換わっており、アダマンタン環に結合しているメチル基の個数がm1個であることを意味する。
【0106】
a1及びLa2は、好ましくは、酸素原子又は*−O−(CH2f1−CO−O−(但し、f1は1〜4の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。)で表される基であり、より好ましくは酸素原子である。f1は、より好ましくは1である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基が挙げられ、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が挙げられる。Ra6又はRa7のアルキル基は、好ましくは炭素数6以下の基である。Ra6又はRa7の脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数8以下であり、より好ましくは6以下である。
a6又はRa7が脂環式炭化水素基である場合、当該脂環式炭化水素基は単環式及び多環式のいずれでもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基、及び下記のような基等が挙げられる。

m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
*は、アダマンタン環又はシクロヘキサン環との結合手を表す。
【0107】
式(a1−1)で表されるモノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a1−1−1)〜(a1−1−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−1−1)〜(a1−1−3)で表されるモノマーがより好ましい。

【0108】
式(a1−2)で表されるモノマーとしては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート等が挙げられる。下式(a1−2−1)〜(a1−2−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−2−3)〜(a1−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、下式(a1−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0109】
樹脂(A)をモノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)を用いて製造する場合、得られる樹脂(A)の全構造単位を100モル%としたとき、これらモノマーに由来する構造単位の含有量の合計は、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲が一層好ましい。モノマー(a1−1)に由来する構造単位及び/又はモノマー(a1−2)に由来する構造単位の含有量の合計を、このような範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対するモノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)の使用量を調整すればよい。
【0110】
以上、モノマー(a1)として好適な(メタ)アクリル系モノマーについて説明したが、樹脂(A)の製造には、該(メタ)アクリル系モノマー以外に、酸不安定基(1)と炭素−炭素二重結合とを分子内に有する他のモノマーを用いることもできる。以下、このような他のモノマーの代表例について説明する。
【0111】
さらに、酸不安定基(1)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとして例えば、以下の式(a1−3)で表されるノルボルネン環を有するモノマー(以下、「モノマー(a1−3)」という場合がある。)が挙げられる。

式(a1−3)中、
a9は、水素原子、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシ基、シアノ基又は−COORa13を表す。
a13は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、又は、炭素数1〜8のアルキル基と炭素数3〜20の脂環式炭化水素基とからなる基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基にを構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
a10、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、Ra10及びRa11が互いに結合して、これらが結合している炭素原子とともに、炭素数3〜20の環を形成している。該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基等で置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
【0112】
a9の−COORa13としては、例えば、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基等のアルコキシ基にカルボニル基が結合した基が挙げられる。
【0113】
a9のヒドロキシ基を有していてもよいアルキル基は例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
a13のアルキル基、脂環式炭化水素基及び炭素数1〜8のアルキル基と炭素数3〜20の脂環式炭化水素基とからなる基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、2−オキソ−オキソラン−3−イル基及び2−オキソ−オキソラン−4−イル基などが挙げられる。
a10〜Ra12は、例えば、メチル基、エチル基、シクロへキシル基、メチルシクロへキシル基、ヒドロキシシクロへキシル基、オキソシクロへキシル基及びアダマンチル基等が挙げられる。
a10及びRa11が互いに結合して形成される環は脂肪族環が好ましく、具体的には、シクロへキサン環及びアダマンタン環等が挙げられる。
【0114】
モノマー(a1−3)を具体的に例示すると、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−tert−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル及び5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチル等が挙げられる。
【0115】
モノマー(a1−3)を用いて樹脂(A)を製造した場合、この樹脂(A)にはモノマー(a1−3)に由来する、立体的に嵩高い構造単位が含まれることになる。この構造単位を有する樹脂(A)を含む本レジスト組成物を用いてレジストパターンを製造すれば、より高解像度でレジストパターンを得ることができる。さらにモノマー(a1−3)を用いることにより、樹脂(A)の主鎖に剛直なノルボルナン環を導入できるため、該樹脂(A)を含む本レジスト組成物から得られるレジストパターンは、ドライエッチング耐性に優れる傾向がある。
【0116】
上述のように、良好な解像度でレジストパターンを製造できることや、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンが得られ易いという点では、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対する、モノマー(a1−3)に由来する構造単位の含有量は10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0117】
酸不安定基(2)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとしては、以下の式(a1−4)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−4)」という場合がある。)を用いることもできる。

[式(a1−4)中、
a32は、水素原子、ハロゲン原子、又は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
a33は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
laは0〜4の整数を表す。laが2以上である場合、複数のRa33は互いに同一であっても異なってもよい。
a34及びRa35はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
a2は、単結合又は2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基又は炭素数2〜4のアシルオキシ基で置換されていてもよく、該飽和炭化水素基にメチレン基が含まれる場合、そのメチレン基は、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基(−SO−)又は−N(R)−で表される基で置き換わっていてもよい。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
a3は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基の各々に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基又は炭素数2〜4のアシルオキシ基で置換されていてもよい。]
【0118】
a32及びRa33のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。Ra32及びRa33がアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
a32及びRa33のハロゲン原子は例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子などである。
a32のハロゲン原子を有してもよいアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基及びトリヨードメチル基などが挙げられる。
a33のアルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基及びn−ヘキトキシ基などが挙げられる。
a33のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基などが挙げられる。
a33のアシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基及びブチリルオキシ基などが挙げられる。
a34及びRa35の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。該アルキル基は、炭素数の上限が異なる以外は、モノマー(a1−1)のRa6及びRa7のアルキル基として説明したものを含み、その具体例もRa6及びRa7のアルキル基として例示したものを含む。該アルキル基としては、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基が好ましい。該脂環式炭化水素基も、炭素数の上限が異なる以外は、モノマー(a1−1)のRa6及びRa7の脂環式炭化水素基として説明したものを含み、その具体例もRa6及びRa7の脂環式炭化水素基として例示したものを含む。該脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカンー1−イル基及びイソボルニル基等が好ましい。該芳香族炭化水素基は典型的にはアリール基であり、具体的にいえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基及び2−メチル−6−エチルフェニル等である。
【0119】
a32及びRa33としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
a33としては、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
a34及びRa35としては、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキル基及びイソボルニル基等が好ましい。
【0120】
上述したように、Xa2及びYa3は、これらに含まれる水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基等に置換されていてもよいが、このように水素原子が置換されている場合、その置換基は好ましくはヒドロキシ基である。
【0121】
モノマー(a1−4)としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0122】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】

【0127】
樹脂(A)が、モノマー(a1−4)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0128】
さらに、酸不安定基(2)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとしては、式(a1−5)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−5)」という場合がある。)が挙げられる。

式(a1−5)中、
31としては、Rと同じものが挙げられ、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
及びLは、一方が酸素原子、他方が硫黄原子であることが好ましい。
は、酸素原子又は硫黄原子であり、酸素原子が好ましい。
s1は、1が好ましい。
s2は、0〜2の整数が好ましい。
は、単結合、*−(CHn4−O−又は*−(CHn4−CO−O−(各n4は1〜4の整数であり、1が好ましい。各*は、Lとの結合手を表す。)である。
【0129】
モノマー(a1−5)としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0130】

【0131】

【0132】

【0133】

【0134】

【0135】
樹脂(A)が、モノマー(a1−5)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0136】
<酸安定モノマー>
樹脂(A)としては、モノマー(a1)に加えて、酸不安定基を有さないモノマー(以下「酸安定モノマー」という場合がある)を用いて得られる共重合体であることが好ましい。また、レジスト組成物に用いる添加物として、酸安定モノマーから得られる樹脂を用いることもある。
【0137】
酸安定モノマーを併用して樹脂(A)を製造する場合、モノマー(a1)の使用量を基準にして、酸安定性モノマーの使用量を定めるとよい。モノマー(a1)の使用量と酸安定モノマーの使用量の割合は、〔モノマー(a1)〕/〔酸安定モノマー〕で表して、好ましくは10〜80モル%/90〜20モル%であり、より好ましくは20〜60モル%/80〜40モル%である。また、アダマンチル基を有するモノマー(特に、モノマー(a1−1))を、モノマー(a1)に用いる場合、該モノマー(a1)の使用量の総量(100モル%)に対して、アダマンチル基を有するモノマーの使用量を15モル%以上とすることが好ましい。このようにすると、樹脂(A)を含むレジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより良好になる傾向がある。
【0138】
酸安定モノマーとしては、ヒドロキシ基又はラクトン環を分子内に有するものが好ましい。ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a2)」という場合がある。)及び/又はラクトン環を含有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a3)」という場合がある。)に由来する構造単位を有する樹脂(A)は、当該樹脂(A)を含むレジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜、又は塗布膜から得られる組成物層と基板との間の密着性に優れるため、高解像度で、レジストパターンを製造することができる。
【0139】
<酸安定モノマー(a2)>
本レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ露光(波長:248nm)、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線露光に用いる場合には、酸安定モノマー(a2)として、フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2−0)〔例えば、ヒドロキシスチレン類等〕を樹脂(A)の製造に用いることが好ましい。
一方、短波長のArFエキシマレーザ露光(波長:193nm)を用いる場合は、酸安定モノマー(a2)として、後述の式(a2−1)で表される酸安定モノマーを樹脂(A)の製造に用いることが好ましい。このように、樹脂(A)製造に用いる酸安定モノマー(a2)は各々、レジストパターンを製造する際の露光源によって好ましいものを選ぶことができるが、当該酸安定モノマー(a2)は、露光源の種類に応じて好適なモノマー1種のみを用いて樹脂(A)を製造してもよく、露光源の種類に応じて好適なモノマー2種以上を用いて樹脂(A)を製造してもよく、或いは、露光源の種類に応じて好適なモノマーと、それ以外の酸安定モノマー(a2)とを組み合わせた2種以上を用いて樹脂(A)を製造してもよい。
【0140】
酸安定モノマー(a2)としては、以下の式(a2−0)で表されるp−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマー(以下、「酸安定モノマー(a2−0)」という場合がある。)が挙げられる。なお、この式(a2−0)は、フェノール性ヒドロキシ基が保護基で保護されていない形式で示すものである。

[式(a2−0)中、
a30は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は互いに同一であっても異なってもよい。]
【0141】
a30のハロゲン原子及びハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記モノマー(a1−4)のRa32の説明で例示したものと同じものを挙げることができる。これらのうち、Ra30は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
a31のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
a31のアルコキシ基としては、前記モノマー(a1−4)のRa33の説明で例示したものと同じものを挙げることができる。これらのうち、Ra31は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0142】
このような酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する共重合樹脂を得る場合は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン及び/又は他の重合性モノマーとをラジカル重合した後、塩基を用いて脱アセチルすることによって得ることができる。
【0143】
酸安定モノマー(a2−0)としては、例えば、特開2010−204634号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a2−0−1)及び(a2−0−2)で表されるモノマーが好ましい。樹脂(A)を製造する際には、これらにあるフェノール性ヒドロキシ基が適当な保護基で保護したものを用いることもできる。

【0144】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜95モル%の範囲が好ましく、10〜80モル%の範囲がより好ましく、15〜80モル%の範囲がさらに好ましい。
【0145】
酸安定モノマー(a2−1)は以下の式(a2−1)で表されるものである。

式(a2−1)中、
a3は、酸素原子又は*−O−(CH2k2−CO−O−を表し、
k2は1〜7の整数を表す。*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0146】
式(a2−1)では、La3は、好ましくは、酸素原子又は*−O−(CH2f2−CO−O−(ここでf2は、1〜4の整数である)であり、より好ましくは酸素原子である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0147】
酸安定モノマー(a2−1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。それぞれ下式(a2−1−1)〜(a2−1−6)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ下式(a2−1−1)〜(a2−1−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ下式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0148】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−1)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、3〜40モル%の範囲が好ましく、5〜35モル%の範囲がより好ましく、5〜30モル%の範囲がさらに好ましく、5〜20モル%の範囲がさらに好ましい。
【0149】
<酸安定モノマー(a3)>
酸安定モノマー(a3)は、ラクトン環を含有する酸安定モノマーである。かかるラクトン環は、例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0150】
酸安定モノマー(a3)は好ましくは、以下の式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるものである。樹脂(A)の製造においては、これらのうち1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、以下の説明においては、式(a3−1)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−1)」という場合があり、式(a3−2)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−2)」という場合があり、式(a3−3)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−3)」という場合がある。

式(a3−1)、式(a3−2)及び式(a3−3)のいずれか中、
a4、La5及びLa6(以下、「Ra18〜Ra20」のように表記する。)は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−を表す。
k3は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
a18、Ra19及びRa20(以下、「Ra18〜Ra20」のように表記する。)は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a21は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
q1及びr1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
p1が2以上のとき、複数のRa21は、互いに同一であっても異なってもよい。
q1が2以上のとき、複数のRa22は、互いに同一であっても異なってもよい。
r1が2以上のとき、複数のRa23は、互いに同一であっても異なってもよい。
【0151】
式(a3−1)〜式(a3−3)において、La4、La5及びLa6は、La3で説明したものが挙げられる。
a4、La5及びLa6は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2d1−CO−O−であることが好ましく(ここでd1は、1〜4の整数である)、より好ましくは酸素原子である。
a18〜Ra21は、それぞれ独立に、メチル基であることが好ましい。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1、q1及びr1は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0152】
酸安定モノマー(a3)としては、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。それぞれ下式(a3−1−1)〜(a3−1−4)、(a3−2−1)〜(a3−2−4)、(a3−3−1)〜(a3−3−4)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ下式(a3−1−1)〜(a3−1−2)、(a3−2−3)〜(a3−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ下式(a3−1−1)又は(a3−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0153】
樹脂(A)が、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位からなる群より選ばれる構造単位〔酸安定モノマー(a3)に由来する構造単位〕を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、5〜55モル%の範囲がより好ましく、10〜50モル%の範囲がさらに好ましく、15〜50モル%の範囲がさらにより好ましい。
また、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位それぞれの含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%の範囲がさらに好ましく、15〜50モル%の範囲がとりわけ好ましい。
【0154】
<酸安定モノマー(a4)>
樹脂(A)製造には、上述した酸安定モノマー以外の酸安定モノマーを用いることもできる。以下、このような酸安定モノマーを「酸安定モノマー(a4)」という場合がある。
【0155】
酸安定モノマー(a4)としては、下記式(a4−1)で表される無水マレイン酸、下記式(a4−2)で表される無水イタコン酸、及び、下記式(a4−3)で表されるノルボルネン環を有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a4−3)」という場合がある。)などが挙げられる。

式(a4−3)中、
a25及びRa26は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基又は−COORa27を表すか、或いはRa25及びRa26は互いに結合して−CO−O−CO−を形成する。
a27は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜8のアルキル基と炭素数3〜20の脂環式炭化水素基とからなる基を表す。該アルキル基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。但し−COORa27が酸不安定基となるものは除く(例えば、Ra27は、第三級炭素原子が−O−と結合するものを含まない)
【0156】
モノマー(a4−3)のRa25及びRa26において、ヒドロキシ基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
a27のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6の基である。脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数4〜12の基である。このRa27としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−アダマンチル)−1−メチルエチル基、2−オキソ−オキソラン−3−イル基及び2−オキソ−オキソラン−4−イル基などが挙げられる。
【0157】
ノルボルネン環を有する酸安定モノマー(a4−3)としては、例えば、2−ノルボルネン、2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0158】
樹脂(A)が、式(a4−1)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位、式(a4−2)で表される無水イタコン酸に由来する構造単位及びモノマー(a4−3)に由来する構造単位からなる群より選ばれる構造単位〔酸安定モノマー(a4)に由来する構造単位〕を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、2〜40モル%の範囲が好ましく、3〜30モル%の範囲がより好ましく、5〜20モル%の範囲がさらに好ましい。
【0159】
更に、酸安定モノマー(a4)としては、例えば、式(a4−4)で表されるスルトン環を有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a4−4)」という場合がある)などが挙げられる。

式(a4−4)中、
a7は、酸素原子又は*−O−(CH2k4−CO−O−を表し、
k4は1〜7の整数を表す。*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。
a28は、水素原子又はメチル基を表す。
16は、置換基を有していてもよいスルトン環を含む残基を表す。
【0160】
スルトン環としては、下記に示すものが挙げられる。スルトン環を含む残基の代表例は、下記スルトン環にある水素原子の1つが、結合手に置き換わったものである。

置換基を有していてもよいスルトン環を含む残基とは、上述の結合手に置き換わった以外の水素原子がさらに置換基で置換されたものであり、該置換基としては、ヒドロキシ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜7のアシル基及び炭素数1〜8のアシルオキシ基が挙げられる。
【0161】
式(a4−4)で表されるモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0162】

【0163】

【0164】

【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【0169】

【0170】

【0171】

【0172】

【0173】

【0174】

【0175】

【0176】

【0177】

【0178】

【0179】

【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a4−4)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、2〜40モル%の範囲が好ましく、3〜35モル%の範囲がより好ましく、5〜30モル%の範囲がさらに好ましい。
【0186】
また、酸安定モノマー(a4)としては、例えば、以下に示すようなフッ素原子を有するモノマー〔以下、「モノマー(a4−5)」という場合がある。〕も挙げられる。

【0187】
モノマー(a4−5)の中でも、単環式又は多環式の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸5−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸6−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸4,4−ビス(トリフルオロメチル)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノニルが好ましい。
【0188】
樹脂(A)が、モノマー(a4−5)に由来する構造単位を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜20モル%の範囲が好ましく、2〜15モル%の範囲がより好ましく、3〜10モル%の範囲がさらに好ましい。
【0189】
好ましい樹脂(A)は、モノマー(a1)と、酸安定モノマー(a2)及び/又は酸安定モノマー(a3)とを重合させて得られる共重合体である。この好ましい共重合体において、モノマー(a1)として、上述のモノマー(a1−1)及びモノマー(a1−2)の少なくとも1種を用いることが好ましく、モノマー(a1−1)を用いることがさらに好ましい。酸安定モノマー(a2)としては、酸安定モノマー(a2−1)が好ましく、酸安定モノマー(a3)としては、酸安定モノマー(a3−1)及び酸安定モノマー(a3−2)の少なくとも1種が好ましい。
【0190】
樹脂(A)は、モノマー(a1)と、必要に応じて、酸安定モノマー(a2)、酸安定モノマー(a3)及び酸安定モノマー(a4)からなる群より選ばれる酸安定モノマーとを用い、これらが上述のとおりの樹脂(A)の全構造単位に対する好適な含有量になるようにして使用量を調節した後、公知の重合法(例えばラジカル重合法)により製造することができる。
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは2,500以上であり、より好ましくは3,000以上である。該重量平均分子量の上限は50,000以下が好ましく、30,000以下がさらに好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものであり、該分析の詳細な分析条件は、本願の実施例で詳述する。
【0191】
<塩基性化合物(以下「塩基性化合物(C)」という。)>
本発明のレジスト組成物は、さらに、塩基性化合物(C)を含有していることが好ましい。ここでいう「塩基性化合物」とは、酸を捕捉するという特性を有する化合物(以下、「クエンチャー」という場合がある。)、特に、既に説明した酸発生剤から発生する酸を捕捉するという特性を有する化合物を意味する。この塩基性化合物(C)の含有量は、レジスト組成物の固形分量を基準に、0.01〜1質量%含有していてもよい。
【0192】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えば、アミン及びアンモニウムヒドロキシドを挙げることができる。アミンは、脂肪族アミンでも、芳香族アミンでもよい。脂肪族アミンは、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンのいずれもよい。芳香族アミンは、アニリンのような芳香族環にアミノ基が結合したものや、ピリジンのような複素芳香族アミンのいずれでもよい。好ましい塩基性化合物(C)として、以下の式(C2)で表される芳香族アミン、より好ましい塩基性化合物(C)として、以下の式(C2−1)で表されるアニリン類が挙げられる。

ここで、Arc1は、芳香族炭化水素基を表す。
c5及びRc6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。)、脂環式炭化水素基(好ましくは、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基である。)又は芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。)を表す。但し、該アルキル基、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基にある水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、このアミノ基はさらに、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい。
c7は、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。)、炭素数1〜6のアルコキシ基、脂環式炭化水素基(好ましくは、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数5〜10のシクロアルキル基である。)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基である。)又はニトロ基を表す。但し、ここでいうアルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基にある水素原子も、ヒドロキシ基、アミノ基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アミノ基はさらに、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい。
m3は0〜3の整数を表す。m3が2以上のとき、複数のRc7は、互いに同一でも異なってもよい。
【0193】
式(C2)で表される芳香族アミンは例えば、1−ナフチルアミン及び2−ナフチルアミン等が挙げられる。
式(C2−1)で表されるアニリン類は例えば、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン及びジフェニルアミン等が挙げられる。
【0194】
また、以下の式(C3)〜式(C11)のいずれかで表される化合物(以下、ここでいう化合物を、式番号に応じて、「化合物(C3)」〜「化合物(C11)」のように表記する。)も用いることができる。

式中、
c8と、芳香族炭素と結合するRc20、Rc21、Rc23、Rc24、Rc25、Rc26、Rc27及びRc28は、互いに独立に、Rc7で説明したいずれかの基を表す。
窒素原子と結合するRc9、Rc10、Rc11、Rc12、Rc13、Rc14、Rc16、Rc19及びRc22は、互いに同一でも異なってもよく、Rc5及びRc6で説明したいずれかの基を表す。
o3、p3、q3、r3、s3、t3及びu3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。o3が2以上であるとき、複数のRc20は互いに同一でも異なってもよく、p3が2以上であるとき、複数のRc21は互いに同一でも異なってもよく、q3が2以上であるとき、複数のRc24は互いに同一でも異なってもよく、r3が2以上であるとき、複数のRc25は互いに同一でも異なってもよく、s3が2以上であるとき、複数のRc26は互いに同一でも異なってもよく、t3が2以上であるとき、複数のRc27は互いに同一でも異なってもよく、u3が2以上であるとき、複数のRc28は互いに同一でも異なってもよい。
c15は、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。)、脂環式炭化水素基(好ましくは、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基である。)又はアルカノイル基(好ましくは、炭素数2〜6のアルカノイル基である。)を表す。
n3は0〜8の整数を表す。n3が2以上のとき、複数のRc15は、互いに同一でも異なってもよい。
c1及びLc2は、それぞれ独立に、2価のアルキレン基(好ましくは、炭素数1〜6のアルキレン基である。)、カルボニル基、−C(=NH)−、−C(=NRc3)−(但し、Rc3は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、チオキシ基、ジスルフィド結合(−S−S−)又はこれらの組合せを表す。
【0195】
化合物(C3)としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0196】
化合物(C4)としては、例えば、ピペラジンなどが挙げられる。
化合物(C5)としては、例えば、モルホリンなどが挙げられる。
化合物(C6)としては、例えば、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
化合物(C7)としては、例えば、2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
化合物(C8)としては、例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
化合物(C9)としては、例えば、ピリジン、4−メチルピリジンなどが挙げられる。
化合物(C10)としては、例えば、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミンなどが挙げられる。
化合物(C11)としては、例えば、ビピリジンなどが挙げられる。
【0197】
アンモニウム塩としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリン等が挙げられる。
【0198】
本発明のレジスト組成物に用いる塩基性化合物(C)としては、これらの中でもジイソプロピルアニリンが好ましく、2,6−ジイソプロピルアニリンがより好ましい。
【0199】
<溶剤(以下、「溶剤(D)」という。)>
本発明のレジスト組成物は、溶剤(D)を含むことが好ましい。かかる溶剤(D)は、用いる塩(I)の種類及びその量と、樹脂(A)の種類及びその量と、酸発生剤(B)の種類及びその量とに応じ、さらに後述するレジストパターンの製造において、基板上に本レジスト組成物を塗布する際の塗布性が良好となるという点から適宜、最適なものを選ぶことができる。
【0200】
好適な溶剤(D)の例としては、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類を挙げることができる。溶剤(D)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0201】
<その他の成分>
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、塩(I)及び樹脂(A)並びに必要に応じて用いられる溶剤(D)、酸発生剤(B)及び塩基性化合物(C)以外の構成成分を含んでいてもよい。この構成成分を「成分(F)」という場合がある。成分(F)としては、本技術分野で公知の添加剤、例えば、樹脂(A)以外の高分子化合物、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料等が挙げられる。
【0202】
<本発明のレジスト組成物及びその調製方法>
本発明のレジスト組成物は、通常、溶媒(D)の存在下で塩(I)及び樹脂(A)を混合することで調製することができる。さらに、上述のとおり必要に応じて酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)及び/又は成分(F)を混合してもよい。塩基性化合物(C)を混合することが好ましい。かかる混合において、その混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、用いる塩(I)等の種類や塩(I)等の溶剤(D)に対する溶解度等に応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合等を用いることができる。
本発明のレジスト組成物を調製する際に用いる各成分の使用量を選択することにより、本発明のレジスト組成物中の各成分の含有量を調節することができる。
【0203】
溶剤(D)の含有量は、本発明のレジスト組成物総質量に対して90質量%以上が好ましく、より好ましくは92質量%以上であり、さらに好ましくは94質量%以上であり、99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは99質量%以下である。このような含有量で溶剤(D)を含む本レジスト組成物は、レジストパターンの製造において、厚み30〜300nm程度の組成物層を形成しやすい。
【0204】
本発明のレジスト組成物に対する樹脂(A)の含有量は、該本レジスト組成物の固形分の総質量に対して、80質量%以上99質量%以下であることが好ましい。
なお本明細書において「組成物の固形分」とは、後述する溶剤(D)を除いたレジスト組成物成分の合計を意味する。例えば、溶剤(D)の含有量が90質量%である本発明のレジスト組成物において、レジスト組成物の固形分は10質量%に相当する。組成物の固形分及びこれに対する各成分の含有量は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0205】
本発明のレジスト組成物に対する塩(I)の含有量は、本発明のレジスト組成物に含まれる樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。
【0206】
本発明のレジスト組成物に酸発生剤(B)を用いる場合、その含有質量は、本発明のレジスト組成物に含まれる樹脂(A)の総質量に対して、好ましい範囲が選択される。具体的には、樹脂(A)100質量部に対して、酸発生剤(B)が好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、樹脂(A)100質量部に対して、酸発生剤(B)が好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。
【0207】
本発明のレジスト組成物に塩基性化合物(C)を用いる場合、その含有量も該本発明のレジスト組成物の固形分の総質量に対して、好ましい範囲が選択される。具体的にいうと、該固形分の総質量に対する塩基性化合物(C)の含有量は、0.01〜1質量%程度であると好ましい。なお、上述のとおり、塩基性化合物(C)の含有量は、塩(I)及び酸発生剤(B)の合計含有量よりも低くしておくことが好ましい。
【0208】
これら塩(I)及び樹脂(A)並びに必要に応じて用いられる酸発生剤(B)及び塩基性化合物(C)の各々の好適な含有量も、本発明のレジスト組成物を調製する際の各々の使用量により制御可能である。本発明のレジスト組成物を調製した後には、該本発明のレジスト組成物を、例えばガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の公知の分析手段に供して求めることもできる。
【0209】
なお、成分(F)を本発明のレジスト組成物に用いる場合には、当該成分(F)の種類に応じて、適切な含有量を調節可能である。
【0210】
このように、塩(I)、樹脂(A)及び溶剤(D)、並びに必要に応じて用いられる酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.01〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0211】
<レジストパターンの製造方法>
続いて、本発明のレジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法について説明する。
本発明のレジストパターンの製造方法は、
(1)本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程
を含むものである。
【0212】
工程(1)における本発明のレジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーター等、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。かくして基板上にレジスト組成物からなる塗布膜が形成される。当該塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで、該塗布膜の膜厚は調整可能であり、適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。本発明のレジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。なお、本発明のレジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成しておいたりすることもできる。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0213】
工程(2)においては、基板上に塗布された本発明のレジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させて、溶剤(D)を除去する。このような乾燥は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせることにより行われる。乾燥条件は、本発明のレジスト組成物に含まれる溶剤(D)の種類等に応じて選択でき、例えばホットプレートを用いる加熱手段では、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にして行うことが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧機の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にすればよい。これにより、該基板上に組成物層が形成される。
【0214】
工程(3)は該組成物層を露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層を露光する工程である。露光には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光が行われる。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。本明細書において、これらの放射線を照射することを総称して「露光」という場合がある。
マスクを介して露光することにより、該組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では該組成物層に含まれる塩(I)及び酸発生剤(B)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸の作用により、樹脂(A)にある酸不安定基が脱保護反応により親水性基を生じるため、露光部の組成物層にある樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けないため、樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違することとなる。
【0215】
工程(4)では、露光後の組成物層に加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)が行われる。加熱処理は前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段等が好ましい。工程(4)においてホットプレートを用いる加熱手段を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。当該加熱処理により、上記脱保護反応が促進される。
【0216】
工程(5)は、加熱後の組成物層を現像する工程であり、好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像するものである。現像する工程で、加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させると、露光部の組成物層は該アルカリ水溶液に溶解して除去され、未露光部の組成物層は基板上に残るため、当該基板上にレジストパターンが製造される。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。該アルカリ水溶液としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液や(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
【0217】
現像後、製造されたレジストパターンは、好ましくは超純水等でリンス処理を行うことが好ましい。さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0218】
<用途>
本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物として好適である。
【実施例】
【0219】
実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記しないかぎり質量基準である。樹脂(A)の組成比(樹脂(A)製造に用いた各モノマーに由来する構造単位の、樹脂(A)に対する共重合比)は、重合終了後の反応液における未反応モノマー量を液体クロマトグラフィーを用いて測定し、得られた結果から重合に用いられたモノマー量を求めることにより算出した。また重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた値である。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの分析条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0220】
また、化合物の構造は、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型)を用い、分子ピークを測定することで確認した。以下の実施例ではこの分子ピークの値を「MASS」で示す。
【0221】
実施例1:式(I1)で表される塩の合成
【0222】

式(I1−a)で表される化合物25.00部、式(I1−b)で表される化合物41.29部及びエタノール125部からなる溶液に、カリウムt−ブトキシド50.47部及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)2.60部を添加し、これを80℃で8時間還流した。更に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)7.80部を添加し、これを80℃で6時間還流した。得られた反応物を濃縮した後、酢酸エチル262.98部及びイオン交換水87.66部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。得られたマスを濾過して濾液を回収した。得られた濾液が2層に分離していたので、有機層を分液して取り出し、更に、該有機層にイオン交換水87.66部を添加し、水洗した。この操作を3回繰り返した。回収された有機層に、活性炭2.78部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、濾過して濾液を回収した。得られた濾液を濃縮することにより、式(I1−c)で表される化合物28.56部を得た。
【0223】

式(I1−c)で表される化合物4.26部及びアセトン25部からなる溶液に、過酸化水素2.50部(純度31%)を滴下し、これを23℃で5時間攪拌した。得られた反応物に、酢酸エチル125部及びイオン交換水62.5部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。得られたマスを濾過して濾液を回収した。得られた濾液が2層に分離していたので、有機層を分液して取り出し、更に、該有機層にイオン交換水41.67部を添加し、水洗した。この操作を5回繰り返した。回収された有機層を濃縮した後、n−ヘプタン21.25部を添加し攪拌した。上澄み液を除いた後、更に酢酸エチル20部を加えて23℃で30分間攪拌した後、濾過して濾液を回収した。得られた濾液を濃縮することにより、式(I1−d)で表される化合物1.24部を得た。
【0224】

式(I1−d)で表される化合物1.24部及びテトラヒドロフラン10部からなる溶液に、トリメチルシリルクロライド0.85部を滴下し、更に、式(I1−e)で表される化合物2.22部(純度32%)を滴下し、これを23℃で12時間攪拌した。得られた混合溶液に、式(I1−e)で表される化合物4.44部(純度32%)を滴下し、これを70℃で3時間還流した。得られた反応物を23℃まで冷却し、1N塩酸10部を滴下し、23℃で30分間攪拌した後、2層に分離したので上層を回収した。回収された上層に、tert−ブチルメチルエーテル10部を加えて23℃で30分間攪拌した後、tert−ブチルメチルエーテル層を取り除いた。回収された層に、クロロホルム30部を加えて23℃で30分間攪拌した後、2層に分離したのでクロロホルム層を回収し、濃縮することにより、式(I1−f)で表される塩0.50部を得た。
【0225】

特開2008−209917号公報に記載された方法によって得られた式(I1−g)で表される塩0.61部及びクロロホルム31.48部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、式(I1−f)で表される塩0.50部及びイオン交換水10部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。得られた混合溶液に、35%塩酸0.17部を添加し、これを23℃で12時間攪拌した。得られた反応マスに、28%アンモニア水0.5部を添加し、23℃で30分間攪拌した後、2層に分離したので、クロロホルム層を分液して取り出し、更に、該クロロホルム層にイオン交換水15.74部を添加し、水洗した。この操作を5回繰り返した。クロロホルム層を濃縮し、得られた残渣に、tert−ブチルメチルエーテル18.20部を加えて23℃で30分間攪拌した。上澄み液を除いた後、濃縮し、更にアセトニトリル10部を加えて23℃で30分間攪拌した後、濃縮することにより、式(I1)で表される塩0.15部を得た。
【0226】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 264.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 339.1
【0227】
実施例2:式(I2)で表される塩の合成

特開2008−209917号公報に記載された方法によって得られた式(I2−g)で表される塩0.58部及びクロロホルム30部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、式(I1−f)で表される塩0.50部及びイオン交換水10部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。得られた混合溶液に、35%塩酸0.17部を添加し、これを23℃で12時間攪拌した。得られた反応マスに、28%アンモニア水0.5部を添加し、23℃で30分間攪拌した後、2層に分離したので、クロロホルム層を分液して取り出し、更に、該クロロホルム層にイオン交換水15部を添加し、水洗した。この操作を5回繰り返した。クロロホルム層を濃縮し、得られた残渣に、tert−ブチルメチルエーテル20部を加えて23℃で30分間攪拌した。上澄み液を除いた後、濃縮し、更にアセトニトリル10部を加えて23℃で30分間攪拌した後、濃縮することにより、式(I2)で表される塩0.14部を得た。
【0228】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 264.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 323.0
【0229】
合成例1(樹脂(A)の合成)
使用したモノマーを下記に示す。

以下、これらのモノマーを「モノマー(A)」〜「モノマー(E)」という。
〔樹脂A1の合成〕
モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(D)を、モル比30:14:6:20:30の割合で仕込んだ。次いで、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを加えた。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1mol%と3mol%との割合で添加し、これを75℃で約5時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(4:1)に注いで沈殿させる操作を3回行うことにより精製し、重量平均分子量が約7.2×10である共重合体を収率78%で得た。この共重合体は、次式の構造単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。

【0230】
〔樹脂A2の合成〕
モノマー(A)、モノマー(B)及びモノマー(C)を、モル比50:25:25の割合で仕込み、次いで、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを加えた。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1mol%と3mol%との割合で添加し、これを80℃で約8時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(3:1)に注いで沈殿させる操作を3回行うことにより精製し、重量平均分子量が約9.2×10である共重合体を収率60%で得た。この共重合体は、次式の構造単位を有するものであり、これを樹脂A2とする。

【0231】
実施例3〜9及び比較例1
<レジスト組成物の調製>
表4に示すように、以下の各成分を混合し、得られた混合物を孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過することにより、レジスト組成物を調製した。
【0232】
【表4】

【0233】
<樹脂>
樹脂A1又はA2
<酸発生剤>
I1:

I2:

B1:

B2:

【0234】
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265.0部
2−ヘプタノン 20.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0235】
<レジストパターンの製造及びその評価>
12インチのシリコン製ウェハー上に、有機反射防止膜用組成物[ARC−29;日産化学(株)製]を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ780Åの有機反射防止膜を形成させた。次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥(プリベーク)後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。
レジスト組成物塗布後、得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表4の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベーク(PB)した。こうしてレジスト組成物膜を形成したウェハーに、液浸露光用ArFエキシマステッパー[XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、3/4Annular X−Y偏光]を用いて、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを液浸露光した。なお、液浸媒体としては超純水を使用した。
露光後、ホットプレート上にて、表4の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
【0236】
各レジスト膜において、50nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量となる露光量を実効感度とした。
【0237】
ラインエッジラフネス評価(LER):リソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの側壁の凹凸の振れ幅が、
3.5nm以下であるものを◎◎、
3.5nmを超え4nm以下であるものを◎
4nmを超え、4.5nm以下であるものを○、
4.5nmを超えるものを×、
として評価した結果を表5に示す。
【0238】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0239】
酸発生剤として本発明の塩を含むレジスト組成物を用いれば、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される塩。

[式(I)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、単結合又は2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該2価の飽和炭化水素基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよく、該2価の飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
1+は、ピリジン環を有する有機カチオンを表す。]
【請求項2】
前記Z1+が、式(I−Z−1)で表される有機カチオンである請求項1記載の塩。

[式(I−Z−1)中、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は炭素数2〜5のアシル基を表す。]
【請求項3】
前記Z1+が、式(I−Z−1−1)で表される有機カチオンである請求項1記載の塩。

【請求項4】
前記L1が、*−CO−O−(CH−(*は、−C(R)(R)−との結合手を表し、nは0又は1を表す。)で表される基である請求項1〜3のいずれか記載の塩。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の塩を含有する酸発生剤。
【請求項6】
請求項5記載の酸発生剤と樹脂とを含み、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸との作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
【請求項7】
(1)請求項6記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2012−121879(P2012−121879A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222671(P2011−222671)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】