説明

塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】レジストパターン製造時のマスクエラーファクター(MEF)を十分に満足するレジスト組成物及び該レジスト組成物に含有される新規な塩を提供する。
【解決手段】式(I)で表される塩。(式(I)中、Q及びQは、フッ素原子等を表す。Lは、脂肪族飽和炭化水素基等を表し、該脂肪族飽和炭化水素基のメチレン基は、酸素原子等に置き換わっていてもよい。Lは、脂肪族飽和炭化水素基を表し、該脂肪族飽和炭化水素基のメチレン基は、酸素原子−NR−等に置き換わっていてもよい。Rは、水素原子又はアルキル基を表す。環Wは、脂肪族環を表し、該脂肪族環を構成するメチレン基は、酸素原子等で置き換わっていてもよく、該脂肪族環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。Rは、フッ素置換芳香環を含む1価の有機基であり、該有機基は置換基を有していてもよい。Zは、有機対イオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物及び該レジスト組成物に含有される新規な塩に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術を用いた半導体の微細加工に用いられる化学増幅型レジスト組成物は、塩からなる酸発生剤と、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂と、溶剤とを含有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、以下の式(Z1)で表される塩からなる酸発生剤と、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂とを含有するレジスト組成物が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−74843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレジスト組成物では、レジストパターン製造時のマスクエラーファクター(MEF)が十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の事情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕式(I)で表される塩。

[式(I)中、
及びQは、同一又は相異なり、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
は、炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、カルボニル基又は−NR−に置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
環Wは、炭素数3〜36の脂肪族環を表し、該脂肪族環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、該脂肪族環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
は、フッ素置換芳香環を含む1価の有機基であり、該有機基は置換基を有していてもよい。
は、有機対イオンを表す。]
〔2〕前記式(I)のRが、式(R−1)又は式(R−2)で表される有機基である、前記〔1〕記載の塩。

(*は、Lとの結合手を表す。)
〔3〕前記式(I)の

で表される部分構造が、
式(Ia1−1)、式(Ia1−2)又は式(Ia1−3)のいずれかで表される構造である、前記〔1〕又は〔2〕記載の塩。


[式(Ia1−1)中、
アダマンタン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、アダマンタン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]


[式(Ia1−2)中、
シクロヘキサン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、シクロヘキサン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]



[式(Ia1−3)中、
ノルボルナン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、ノルボルナン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
〔4〕前記式(I)のLが、
*−CO−O−(CH
(uは0〜6の整数を表す。*は、Q及びQと結合する炭素原子との結合手を表す。
)である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の塩。
〔5〕前記式(I)のLが、
*−CO−O−(CH−又は*−O−CH−CO−O−
(vは0〜4の整数を表す。*は、Wとの結合手を表す。)
である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の塩。
〔6〕前記Zが、トリアリールスルホニウムカチオンである、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の塩。
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の塩を有効成分として含有する酸発生剤。
〔8〕前記〔7〕記載の酸発生剤と、
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂と、
溶剤とを含有するレジスト組成物。
〔9〕さらに、塩基性化合物を含有する、前記〔8〕記載のレジスト組成物。
〔10〕(1)前記〔8〕又は〔9〕記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塩を酸発生剤として含有するレジスト組成物は、優れたマスクエラーファクター(MEF)で、レジストパターンを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、
前記式(I)で表される塩(以下、場合により「塩(I)」という。);
該塩(I)と、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(以下、場合により「樹脂(A)」という。)とを含有するレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。);
また、本レジスト組成物は、さらに、塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」という。)及び溶剤(以下、場合により「溶剤(D)」という。)を含有していることが好ましい。
本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法を提供する。
以下、塩(I)に関して、好適なものを中心に説明し、塩(I)以外の本レジスト組成物の構成成分、これらを用いた本レジスト組成物の調製方法を説明する。また、最後に、本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法に関して説明する。
【0009】
本明細書では、特に断りのない限り、炭素数を適宜選択しながら、以下の置換基の例示は、同様の置換基を有するいずれの化学構造式においても適用される。脂肪族炭化水素基のうち、アルキル基のように直鎖状又は分岐状をとることができるものは、そのいずれをも含む。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。以下の置換基の例示において、「C」に付して記載した数値は、各々の基の炭素数を示すものである。
さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0010】
炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する。
脂肪族炭化水素基は、鎖式及び環式の双方を含み、特に定義しない限り、鎖式及び脂環式の脂肪族炭化水素基が組み合わせられたものをも包含する。また、これら脂肪族炭化水素基は、その一部に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいが、飽和の基(脂肪族飽和炭化水素基)が好ましい。
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち1価のものとしては、典型的にはアルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基(C)、エチル基(C)、プロピル基(C)、ブチル基(C)、ペンチル基(C)、ヘキシル基(C)、ヘプチル基(C)、オクチル基(C)、デシル基(C10)、ドデシル基(C12)、ヘキサデシル基(C14)、ペンタデシル基(C15)、ヘキシルデシル基(C16)、ヘプタデシル基(C17)及びオクタデシル基(C18)などが挙げられる。
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち2価のものとしては、アルキル基から水素原子を1個取り去ったアルカンジイル基が挙げられる。
アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基及び2−メチルブタン−1,4−ジイル基などが挙げられる。
【0011】
環式の脂肪族炭化水素基(以下、場合により「脂環式炭化水素基」という)は、典型的には、シクロアルキル基を意味し、以下に示す単環式及び多環式のいずれをも包含する。
【0012】
脂環式炭化水素基のうち1価のものとして、単環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−1)〜(KA−7)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0013】
多環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−8)〜(KA−22)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0014】
脂環式炭化水素基のうち2価のものとしては、式(KA−1)〜式(KA−22)の脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った基が挙げられる。
【0015】
脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、そのつど定義するが、該置換基は例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、アラルキル基及びアリールオキシ基が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基(C)、エトキシ基(C)、プロポキシ基(C)、ブトキシ基(C)、ペンチルオキシ基(C)、ヘキシルオキシ基(C)、ヘプチルオキシ基(C7)、オクチルオキシ基(C8)、デシルオキシ基(C10)及びドデシルオキシ基(C12)などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、アルコキシ基の酸素原子が硫黄原子に置き換わったものが挙げられ、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基及びドデシルチオ基などが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基(C)、プロピオニル基(C)、ブチリル基(C)、バレイル基(C)、ヘキサノイル基(C)、ヘプタノイル基(C7)、オクタノイル基(C8)、デカノイル基(C10)及びドデカノイル基(C12)などのアルキル基とカルボニル基とが結合したもの並びにベンゾイル基(C7)などのアリール基とカルボニル基とが結合したものが包含される。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基(C7)、フェネチル基(C8)、フェニルプロピル基(C9)、ナフチルメチル基(C11)及びナフチルエチル基(C12)などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基(C)、ナフチルオキシ基(C10)、アントリルオキシ基(C14)、ビフェニルオキシ基(C12)、フェナントリルオキシ基(C14)及びフルオレニルオキシ基(C13)などのアリール基と酸素原子とが結合したものが挙げられる。
【0016】
芳香族炭化水素基としては、典型的には、アリール基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基(C)、ナフチル基(C10)、アントリル基(C14)、ビフェニル基(C12)、フェナントリル基(C14)及びフルオレニル基(C13)などが挙げられる。
【0017】
芳香族炭化水素基も置換基を有することがある。このような置換基はそのつど定義するが、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルキル基及びアリールオキシ基を挙げることができる。これらのうち、アルキル基は、鎖式脂肪族炭化水素基として例示したものと同じであり、芳香族炭化水素基に任意に有する置換基のうち、アルキル基以外のものは、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと同じものを含む。
【0018】
<塩(I)>

[式(I)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
は、炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、カルボニル基又は−NR−(Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)に置き換わっていてもよい。
Wは、炭素数3〜36の脂肪族環基を表し、該脂肪族環基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、該脂肪族環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
は、フッ素置換芳香環を含む1価の有機基であり、該有機基は置換基を有していてもよい。
は、有機対イオンを表す。]
本レジスト組成物に含まれる塩(I)は、新規且つ酸発生剤として有用な塩であり、本発明は塩(I)に係る発明を含む。
なお、以下の説明において、塩(I)から、有機カチオン(Z)を除去してなる負電荷を有するものを、場合により「スルホン酸アニオン」という。
【0019】
まず、塩(I)を構成するスルホン酸アニオンから説明する。
及びQはそれぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。このペルフルオロアルキル基としては、すでに例示した炭素数1〜6のアルキル基において、当該アルキル基に含まれる全ての水素原子がフッ素原子に置き換わったものが挙げられる。具体的にいえば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基及びペルフルオロヘキシル基などである。以上、ペルフルオロアルキル基を、その具体例を挙げて説明したが、Q及びQはそれぞれ独立に、フッ素原子又はトリフルオロメチル基が好ましく、Q及びQはともにフッ素原子であると、さらに好ましい。
【0020】
の2価の脂肪族飽和炭化水素基は、炭素数1〜17の範囲において、すでに例示したアルカンジイル基、上述の式(KA−1)〜式(KA−22)のいずれかの脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った、2価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。当該アルカンジイル基は、直鎖でも分岐していてもよい。また、Lの2価の脂肪族飽和炭化水素基は、炭素数17以下の範囲であれば、アルカンジイル基と、2価の脂環式炭化水素基とを任意に組み合わせた、2価の基でもよい。
【0021】
の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。このように、メチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基をLとして有する塩(I)は、当該塩(I)の製造上の容易さを考慮すれば好ましいものである。なお、塩(I)の製造方法については後述する。
の2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基の具体例としては、例えば、以下の式(b1−1)〜式(b1−7)のいずれかで表される基が挙げられる。L1は、好ましくは式(b1−1)〜式(b1−4)のいずれかで表される基であり、さらに好ましくは式(b1−1)又は式(b1−3)で表される基である。なお、式(b1−1)〜式(b1−7)の具体例における結合手を示す*は、その左右を式(B1)に合わせて記載している。左側の*は、C(Q1)(Q2)の炭素原子と結合し、右側の*は環Wと結合している。
【0022】


式(b1−1)〜式(b1−7)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b4は、炭素数1〜13の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb3及びLb4の合計炭素数の上限は13である。
b5は、炭素数1〜15の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b6は、単結合又は炭素数1〜15の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b7は、炭素数1〜15の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb6及びLb7の合計炭素数の上限は16である。
b8は、炭素数1〜14の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b9は、単結合又は炭素数1〜11の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b10は、炭素数1〜12の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb9及びLb10の合計炭素数の上限は12である。
b11及びLb12は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜13の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。
b13は、炭素数1〜14の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表す。但しLb11、Lb12及びLb13の合計炭素数の上限は14である。
【0023】
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0024】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0025】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0026】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0027】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0028】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0029】
式(b1−7)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0030】
中でも、Lは、式(b1−1)で表される2価の基が好ましく、Lb2が単結合又は炭素数1〜6の脂肪族飽和炭化水素基である式(b1−1)で表される2価の基であることがより好ましく、
*−CO−O−(CH
(uは0〜6の整数を表し、*は、−C(Q)(Q)−の炭素原子との結合手を表す)
であることがさらに好ましく、uが0、すなわち、
*−CO−O−
(*は、−C(Q)(Q)−の炭素原子との結合手を表す)
であることが特に好ましい。
【0031】
は、炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、カルボニル基又は−NR−(Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)に置き換わっていてもよい。なお、塩(I)の製造上の容易さを考慮すると、脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基を、Lとして有するものが好ましい。
【0032】
の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、*−CO−O−(CH−(vは0〜4の整数を表す)、*−O−CO−、*−O−CH−CO−O−、*−O−CO−O−、*−O−CO−O−CH−、*−O−CO−CH−O−、*−O−CH−CO−O−CH−、*−O−CO−CH−O−CH−、*−O−CH−CH−O−等が挙げられ、なかでも、L2としては、*−CO−O−(CH−(vは、0〜4の整数を表す。
)又は*−O−CH−CO−O−が好ましい。
【0033】
環Wは、炭素数3〜36の脂肪族環を表す。
環Wの脂肪族環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよいが、塩(I)の製造上の容易さを考慮すると、該メチレン基が、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基に置き換わっていない、脂肪族環基であることが好ましい。また、Wの脂肪族環基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基は、その炭素数が、それぞれ前記の範囲で、すでに例示したものを含む。より好ましい環Wは、アダマンタン環、シクロヘキサン環及びノルボルナン基であり、この好ましいW環を、前記式(I)の


で表される部分構造で表すと、式(Ia1−1)、式(Ia1−2)又は式(Ia1−3)のいずれかで表される構造を挙げることができる。
【0034】


式(Ia1−1)中、
アダマンタン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよいが、該メチレン基は、ここに示す基に置換されていないものが好ましい。
該アダマンタン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよいが、アダマンタン環に含まれる水素原子は、ここに示す基に置換されていないものが好ましい。
【0035】


式(Ia1−2)中、
シクロヘキサン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよいが、これらの基にメチレン基が置き換わっていないものが好ましい。
該シクロヘキサン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよいが、シクロヘキサン環に含まれる水素原子は、ここに示す基に置換されていないものが好ましい。
【0036】


式(Ia1−3)中、
ノルボルナン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよいが、これらの基にメチレン基が置き換わっていないものが好ましい。
該ノルボルナン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよいが、ノルボルナン環に含まれる水素原子は、ここに示す基に置換されていないものが好ましい。
【0037】
以上の環Wを含む部分構造を示して例示したものの中では、式(Ia1−1)で表される構造がさらに好ましい。
【0038】
式(I)のRは、フッ素置換芳香環を含む1価の有機基であり、該有機基は置換基を有していてもよい。より具体的にRを例示すると以下の式(R−1)〜式(R−16)で表される有機基に示すものが挙げられる。なお、このRの具体例のそれぞれにある*は、Lとの結合手である。


これらの具体例の中でも、式(R−1)〜式(R−11)のいずれかで表される有機基が好ましく、式(R−1)〜式(R−6)のいずれかで表される有機基がより好ましく、式(R−1)又は式(R−2)で表される有機基がさらに好ましい。
【0039】
以上、塩(I)を構成するスルホン酸アニオンに関し、Q、Q、L、L、R及びWのそれぞれについて、具体例を示しつつ説明したが、ここで、該塩(I)を構成するスルホン酸アニオンの具体例を示す。

【0040】
次に、塩(I)を構成する有機カチオン(Z+)について説明する。
+で示される有機カチオンとしては、例えば、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及び有機ホスホニウムカチオン等の有機オニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、有機スルホニウムカチオン及び有機ヨードニウムカチオンが好ましく、アリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0041】
さらに好ましくは、Z+は、以下の式(b2−1)〜式(b2−4)のいずれかで表される有機カチオン(以下、各式の番号に応じて、「カチオン(b2−1)」、「カチオン(b2−2)」、「カチオン(b2−3)」及び「カチオン(b2−4)」ということがある〕が挙げられる。

【0042】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、
b4、Rb5及びRb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、Rb4とRb5が一緒になってイオウ原子を含む環を形成してもよい。
【0043】
b4とRb5が一緒になって形成してもよいイオウ原子を含む環としては、単環式、多環式、芳香族性、非芳香族性、飽和及び不飽和のいずれの環であってもよく、イオウ原子を1以上含むものであれば、さらに、1以上のイオウ原子及び/又は1以上の酸素原子を含んでいてもよい。該環としては、炭素数3〜18の環が好ましく、炭素数4〜13の環がより好ましい。
【0044】
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。m2が2以上の整数である場合、複数のRb7は互いに同一であっても異なっていてもよく、n2が2以上の整数である場合、複数のRb8は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b9〜Rb11は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。該アルキル基の炭素数は1〜12が好ましい。該脂環式炭化水素基の炭素数は4〜12が好ましい。
b12は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
b9とRb10、及び/又は、Rb11とRb12は、それぞれ独立に、互いに結合して、それらが結合している原子とともに3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、これらの環に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0046】
b13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13は同一でも異なっていてもよく、p2が2以上であるとき、複数のRb14は同一でも異なっていてもよく、s2が2以上であるとき、複数のRb15は同一でも異なっていてもよく、t2が2以上であるとき、複数のRb18は同一でも異なっていてもよい。
【0047】
b12のアルキルカルボニルオキシ基としては、すでに例示したアシル基と酸素原子とが結合したものである。
【0048】
b9〜Rb12のアルキル基の好適例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基などである。
b9〜Rb11の脂環式炭化水素基の好適例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基及びイソボルニル基などである。
b12の芳香族炭化水素基の好適例は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基などである。
b12の芳香族炭化水素基とアルキル基が結合したものは、典型的にはアラルキル基である。
【0049】
b9とRb10との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11とRb12との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0050】
式(b2−1)〜式(b2−4)でそれぞれ表される有機カチオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたカチオンが挙げられる。
【0051】
例示した有機カチオンの中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機カチオン〔以下、「カチオン(b2−1−1)」という場合がある。〕がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、Rb19、Rb20及びRb21がいずれもメチル基である。)がさらに好ましい。

式(b2−1−1)中、
b19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。また、Rb19〜Rb21から選ばれる2つが一緒になってヘテロ原子を有してもよい環を形成してもよい。
この脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜12であると好ましく、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数4〜18の脂環式炭化水素基がより好ましく、さらには置換基として、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよい。
b19〜Rb21のアルキル基は、炭素数1〜12の範囲が好ましく、当該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基に置換されていてもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19は同一でも異なっていてもよく、w2が2以上のとき、複数のRb20は同一でも異なっていてもよく、x2が2以上のとき、複数のRb21は同一でも異なっていてもよい。
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0052】
カチオン(b2−1−1)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0053】

【0054】

【0055】


【0056】
カチオン(b2−2)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0057】
カチオン(b2−3)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0058】
以上、塩(I)をそれを構成するスルホン酸アニオン及び有機カチオンにわけて説明したが、当該塩(I)は、スルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。これらスルホン酸アニオンと有機カチオンとは任意に組み合わせることができる。
この組み合わせを具体的に例示すると、例えば、下記表1〜表3記載のものが挙げられる。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
表1〜表3に組み合わせで示した塩(I)の中でも、さらに好ましい塩(I)を具体的に示すと、以下のとおりである。

【0063】

【0064】

【0065】
続いて、Lが*−CO−O−(*は、−C(Q)(Q)−との結合手を表す)であり、Lが*−CO−O−(*は、Wとの結合手を表す)である塩)である場合の塩(I)を例により、塩(I)の製造方法の一実施態様を説明する。この塩(I)は例えば、式(b1−a)で表される化合物と、式(b1−b)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより製造することができる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

(式中、全ての符号は、それぞれ前記と同義である。)
この反応の溶媒としては、アセトニトリルなどが用いられる。
【0066】
式(b1−a)で表される化合物は、式(b1−c)で表される化合物と、式(b1−d)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより得ることができる。この反応を反応式の形式で示すと以下のとおりである。


この反応の溶媒としては、アセトニトリルなどが用いられる。式(b1−c)で表される化合物は、例えば、特開2008−127367号公報に記載された方法で合成することができる。
【0067】
式(b1−b)で表される塩は、式(b1−e)で表される化合物と式(b1−f)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより得ることができる。溶媒としては、クロロホルムなどが用いられる。

式(b2−f)で表される化合物としては、例えば、以下で表される化合物などが挙げられる。

【0068】
式(b1−e)で表される化合物は、式(b1−g)で表される化合物と、式(b1−d)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより得ることができる。溶媒としては、クロロホルムなどが用いられる。


式(b1−g)で表される化合物としては、例えば、以下で表される化合物などが挙げられる。

【0069】
式(b1−g)で表される化合物は、例えば、式(b1−h)で表される化合物を還元することにより得ることもできる。当該還元も溶媒中で実施することが好ましく、かかる溶媒としては、アセトニトリル及び水などが用いられる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウムなどが用いられる。


式(b1−h)で表される化合物としては、例えば、以下で表される化合物などが挙げられる。

【0070】
<塩(I)以外の酸発生剤>
本レジスト組成物に含有される酸発生剤は、塩(I)を有効成分として含有されることを特徴とし、この塩(I)は、単独種で用いても、複数種を併用してもよい。また、本レジスト組成物に含有される酸発生剤は、さらに、塩(I)以外の公知の酸発生剤を含有してもよい。塩(I)以外の酸発生剤としては、イオン性酸発生剤でも、非イオン性発生剤でもよく、該イオン性酸発生剤は、それを構成するカチオン及びアニオンがともに、塩(I)とは異なるものはもちろん、
塩(I)を構成する有機カチオンと同じカチオンと、塩(I)を構成するスルホン酸アニオン以外の公知のアニオンとの組み合わせからなるイオン性酸発生剤であっても、
塩(I)を構成するスルホン酸アニオンと同じアニオンと、塩(I)を構成する有機カチオン以外の公知のカチオンとの組み合わせからなるイオン性酸発生剤であってもよい。
以下、本レジスト組成物に含有される、塩(I)以外の酸発生剤を場合により、「酸発生剤(B)」という。
【0071】
酸発生剤(B)としては、例えば、式(B1−1)〜式(B1−20)のいずれかで表されるものが挙げられる。中でもトリフェニルスルホニウムカチオン、トリトリルスルホニウムカチオンを含むものが好ましく、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)及び式(B1−14)でそれぞれ表される塩がさらに好ましい。

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】
塩(I)の含有量は、酸発生剤全量100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上である。実質的に、塩(I)のみを酸発生剤として用いることもできる。また、本レジスト組成物に係る特性を調整するために、上述のように酸発生剤(B)を用いてもよい。
【0076】
<本レジスト組成物>
本レジスト組成物は、塩(I)を有効成分とする酸発生剤を含有する。また、本レジスト組成物は、酸発生剤以外に、樹脂(A)を含有する。また、必要に応じて、当技術分野でクエンチャーと呼ばれる塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」という。)などの添加剤及び溶剤(D)を含有することもある。以下、酸発生剤以外に、本レジスト組成物に含有される樹脂(A)、塩基性化合物(C)などの添加剤及び溶剤(D)の各々を順次説明する。なお、以下の説明において、本レジスト組成物の組成などを説明するにあたり、本レジスト組成物から溶剤を取り除いたものを、本レジスト組成物の「固形分」と定義することがある。この固形分の本レジスト組成物総質量に対する含有割合は、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定できる。
【0077】
<樹脂(A)>
酸発生剤から発生される酸の作用により、レジストパターンを製造するためには、本レジスト組成物に含有される樹脂(A)は上述のとおり、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる特性(以下、場合により「酸作用特性」という。)を有すると好ましい。なお、「酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る」とは、「酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。
【0078】
酸作用特性を有する樹脂(A)は、その分子内に酸に不安定な基(以下、場合により「酸不安定基」という。)を有する。このような樹脂(A)は、酸不安定基を有するモノマー(以下、このモノマーを場合により「モノマー(a1)」といい、該モノマー(a1)由来の構造単位を「構造単位(a1)」という。)を重合することによって製造できる。
酸作用特性を有する樹脂(A)を製造する際には、モノマー(a1)を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
<酸不安定基>
「酸不安定基」とは、脱離基を有し、酸と接触すると脱離基が脱離して、親水性基(例えば、ヒドロキシ基又はカルボキシ基)を形成する基を意味する。酸不安定基としては、例えば、式(1)で表される基又は式(2)で表される基などが挙げられる。
【0080】

[式(1)中、Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、Ra1及びRa2は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。*は結合手を表す。]

[式(2)中、Ra1’及びRa2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Ra3’は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、Ra2’及びRa3’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成し、該1価の炭化水素基及び該2価の炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子で置き換わっていてもよい。*は結合手を表す。]
【0081】
a1〜Ra3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の飽和炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及び下記のような基等が挙げられる。

式(1)における脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜16である。
【0082】
a1及びRa2が互いに結合して2価の炭化水素基を形成する場合、−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)基としては、下記の基が挙げられる。

2価の炭化水素基数は、好ましくは炭素数3〜12である。
【0083】
式(1)で表される酸に不安定な基としては、例えば、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3がアルキル基である基、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基)、2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1、Ra2及び炭素原子がアダマンチル基を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0084】
a1’及びRa2’の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。
【0085】
好ましくは、Ra1’及びRa2’のうち少なくとも1つが水素原子である。
式(2)で表される基の具体例としては、以下の基が挙げられる。

【0086】
酸に不安定な基を有するモノマー(a1)は、好ましくは、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するものが挙げられる。脂環式炭化水素基のような嵩高い構造を有するモノマー(a1)を重合して得られる樹脂を使用すれば、レジストの解像度を向上させることができる。
【0087】
酸に不安定な基を有するモノマー(a1)は、好ましくは、酸に不安定な基(1)と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーであり、より好ましくは酸に不安定な基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーである。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを表す。
【0088】
酸に不安定な基と脂環式炭化水素基とを有する(メタ)アクリルモノマーとして、好ましくは式(a1−1)で表されるモノマー及び式(a1−2)で表されるモノマーが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】

[式(a1−1)及び式(a1−2)中、
a1及びLa2は、それぞれ独立に、−O−又は*−O−(CH2k1−CO−O−を表し、k1は1〜7の整数を表し、*は−CO−との結合手を表す。
a4及びRa5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a6及びRa7は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n1’は0〜3の整数を表す。]
【0090】
式(a1−1)及び式(a1−2)においては、La1及びLa2は、好ましくは、−O−又は*−O−(CH2k1−CO−O−であり、より好ましくは−O−である。k1は、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。Ra6及びRa7のアルキル基は、好ましくは炭素数6以下である。
a6及びRa7の脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の飽和炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及び下記のような基等が挙げられる。

脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数8以下、より好ましくは6以下である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1’は、好ましくは0又は1である。
【0091】
式(a1−1)で表されるモノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。式(a1−1−1)〜式(a1−1−8)のいずれかで表されるモノマーが好ましく、式(a1−1−1)〜式(a1−1−4)のいずれかで表されるモノマーがより好ましい。

【0092】
式(a1−2)で表されるモノマーとしては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−イソプロピルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート等が挙げられる。式(a1−2−1)〜式(a1−2−12)のいずれかで表されるモノマーが好ましく、式(a1−2−1)〜(a1−2−4)及び式(a1−2−9)〜式(a1−2−10)のいずれかで表されるモノマーがより好ましく、式(a1−2−3)又は(a1−2−9)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0093】
樹脂(A)が構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を有する場合、これらの合計含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましく、20〜60モル%の範囲が特に好ましい。また、構造単位(a1)として、アダマンチル基を有する構造単位(a1)(特に好ましくは、構造単位(a1−1))を有する場合には、樹脂(A)中の構造単位(a1)の合計(100モル%)に対して、アダマンチル基を有する構造単位(a1)が15モル%以上であることが好ましい。このような含有割合で、アダマンチル基を有する構造単位(a1)を有する樹脂(A)は、該樹脂(A)を含有するレジスト組成物から製造されるレジストパターンのドライエッチング耐性が良好となる傾向がある。なお、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の合計含有割合を、上述の範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対する、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマーの使用量を調整すればよい。
【0094】
以上、好適な構造単位(a1)である、構造単位(a1−1)及び構造単位(a1−2)について説明したが、樹脂(A)はこれらの以外の構造単位(a1)を有していてもよい。以下、構造単位(a1−1)及び構造単位(a1−2)以外の構造単位(a1)を、当該構造単位(a1)を誘導するモノマーを示すことで説明する。
【0095】
樹脂(A)には、以下の式(a1−3)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a1−3)」という。)に由来する構造単位(a1)を有していてもよい。該モノマー(a1−3)に由来する構造単位(a1)を有する樹脂(A)は、当該構造単位(a1)が、樹脂(A)の主鎖に剛直なノルボルナン環を含むものとなるので、このような樹脂(A)を含有する本レジスト組成物は、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンを製造できる傾向がある。


[式(a1−3)中、
a9は、水素原子、置換基(例えばヒドロキシ基)を有していてもよい炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、カルボキシ基、シアノ基、又は−COORa13で表される基を表し、Ra13は、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子はヒドロキシ基などで置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。Ra10、Ra11及びRa12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基を表すか、或いはRa10及びRa11は互いに結合して環を形成している。該脂肪族炭化水素基及に含まれる水素原子はヒドロキシ基などで置換されていてもよく、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。]
【0096】
a9の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基は典型的には、置換基を有していてもよいアルキル基であり、かかるアルキル基のうち、置換基を有さないアルキル基は、その炭素数が1〜8の範囲ですでに例示したものを含む。置換基、特にヒドロキシ基を有する脂肪族炭化水素基(アルキル基)としては例えば、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基などである。Ra13としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2−オキソ−オキソラン−3−イル基及び2−オキソ−オキソラン−4−イル基などが挙げられる。
【0097】
a10〜Ra12の脂肪族炭化水素基も典型的には、アルキル基であり、その具体例はRa9の場合と同じである。Ra10とRa11とが結合し、これらが結合する炭素原子とともに形成される環は、シクロへキシル環及びアダマンチル環などである。
【0098】
モノマー(a1−3)としては例えば、特開2010−204646号公報に記載されたものが用いられる。これらの中でも、以下の式(a1−3−1)、式(a1−3−2)、式(a1−3−3)及び式(a1−3−4)のいずれかで表されるモノマーが好ましく、式(a1−3−2)又は(a1−3−4)で表されるモノマーがより好ましく、式(a1−3−2)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0099】
樹脂(A)が、モノマー(a1−3)に由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0100】
樹脂(A)は以下の式(a1−4)で表されるモノマー(以下「モノマー(a1−4)」という場合がある。)に由来する構造単位(a1)を有していてもよい。


[式(a1−4)中、
10は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
は0〜4の整数を表す。
11は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表し、lが2以上である場合、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよい。
12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
a2は、置換基を有していてもよい炭素数1〜17の脂肪族炭化水素基又は単結合を表し、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は−N(R)−(ただし、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す)で表される基に置き換わっていてもよい。
a3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の炭化水素基を表す。]
【0101】
「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」のうち、アルキル基としては、炭素数が1〜6の範囲ですでに例示したものを含む。ハロゲン原子を有するアルキル基としては、フッ素原子を有するアルキル基が好ましく、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基及びペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、R10としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
11のアルコキシ基は、炭素数1〜6の範囲においてすでに例示したものを含むが、中でも、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
11のアシル基及びアシルオキシ基も、その炭素数が2〜4の範囲において、すでに例示したものを含む。
12及びR13の炭化水素基は、その炭素数が1〜12の範囲において、Ya3の炭化水素基は、その炭素数が1〜18の範囲において、すでに例示した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを含む。
a2の脂肪族炭化水素基は2価の鎖式炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基又は、鎖式炭化水素基と脂環式炭化水素基とが組み合わさった2価の基であり、炭素数1〜17の範囲ですでに例示した基を適宜組み合わせた基を挙げることができる。
【0102】
モノマー(a1−4)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。以下の式(a1−4−1)〜式(a1−4−7)のいずれかで表されるいずれかのモノマーが好ましく、式(a1−4−1)〜式(a1−4−5)のいずれかで表されるモノマーがより好ましい。

【0103】
樹脂(A)がモノマー(a1−4)に由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲が、より好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0104】
他のモノマー(a1)としては、例えば、式(a1−5)で表されるモノマー(以下「モノマー(a1−5)」という場合がある)を用いてもよい。

式(a1−5)中、
31は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
〜Lは、酸素原子、硫黄原子又は*−O−(CH2k4−CO−O−で表される基を表す。ここで、k4は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。
1’は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基であり、該アルカンジイル基中に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
s1及びs1’は、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。
【0105】
式(a1−5)においては、R31は、水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基が好ましい。
は、酸素原子が好ましい。
及びLは、一方が酸素原子、他方が硫黄原子であると好ましい。
s1は、1が好ましい。
s1’は、0〜2の整数が好ましい。
1’は、単結合又は*−CH−CO−O−が好ましい。
【0106】
モノマー(a1−5)としては、以下のモノマーが挙げられる。

【0107】
樹脂(A)が、モノマー(a1−5)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜95モル%の範囲が好ましく、3〜90モル%の範囲がより好ましく、5〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0108】
<酸安定構造単位>
樹脂(A)は、酸不安定基を有する構造単位(a1)に加え、酸不安定基を有さない構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位」といい、該酸安定構造単位を誘導し得るモノマーを、「酸安定モノマー」という場合がある。)を有していると好ましい。該樹脂(A)中、酸安定構造単位は1種のみを有していてもよく、複数種を有していてもよい。
【0109】
樹脂(A)が酸安定構造単位を有する場合、構造単位(a1)の含有割合を基準にして、酸安定性構造単位の含有割合を定めるとよい。構造単位(a1)の含有割合と酸安定性構造単位の含有割合との比は、〔構造単位(a1)〕/〔酸安定構造単位〕で表して、好ましくは10〜80モル%/90〜20モル%であり、より好ましくは20〜60モル%/80〜40モル%である。このようにすると、樹脂(A)を含有する本レジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより一層良好になる傾向がある。
【0110】
次に、酸安定構造単位のうち、好ましいものを説明する。
酸安定構造単位は、ヒドロキシ基又はラクトン環を有する構造単位が好ましい。ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位(以下、「酸安定構造単位(a2)」という場合がある。)及び/又はラクトン環を有する酸安定構造単位(以下、「酸安定構造単位(a3)」という場合がある。)を有する樹脂(A)は、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜、又は塗布膜から得られる組成物層が基板との間の密着性に優れるため、良好な解像度で、レジストパターンを製造することができる。なお、ここでいう本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法に関しては後述する。まず、酸安定構造単位として好適な、酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)に関して具体例を挙げつつ説明する。
【0111】
<酸安定構造単位(a2)>
酸安定構造単位(a2)を樹脂(A)に導入する場合、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物からレジストパターンを製造する際の露光源の種類によって、各々、好適な酸安定構造単位(a2)を選択することができる。すなわち、本レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)を露光源とする露光、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線を露光源とする露光に用いる場合には、酸安定構造単位(a2)として、フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位(a2−0)を樹脂(A)に導入することが好ましい。
短波長のArFエキシマレーザ(波長:193nm)を露光源とする露光を用いる場合は、酸安定構造単位(a2)として、後述の式(a2−1)で表される酸安定構造単位を樹脂(A)に導入することが好ましい。このように、樹脂(A)が有する酸安定構造単位(a2)は各々、レジストパターンを製造する際の露光源によって好ましいものを選ぶことができるが、樹脂(A)が有する酸安定構造単位(a2)は、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)1種のみを有していてもよく、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)2種以上を有していてもよく、或いは、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)と、それ以外の酸安定構造単位(a2)とを組み合わせて有していてもよい。
【0112】
酸安定構造単位(a2)の具体例の1つは、以下の式(a2−1)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−1)」という。)である。


式(a2−1)中、
a3は、酸素原子又は*−O−(CH2k2−CO−O−(k2は1〜7の整数を表す。)を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0113】
a3は、好ましくは、酸素原子又は、k2が1〜4の整数である*−O−(CH2k2−CO−O−で表される基であり、より好ましくは、酸素原子又は、*−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0114】
酸安定構造単位(a2−1)としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0115】
以上、例示した酸安定構造単位(a2−1)は、例えば、特開2010−204646号公報に記載された酸安定モノマーから誘導される。これらの中でも、式(a2−1−1)、式(a2−1−2)、式(a2−1−3)及び式(a2−1−4)のいずれかで表される酸安定構造単位がより好ましく、式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表される酸安定構造単位がさらに好ましい。
【0116】
樹脂(A)が式(a2−1)で表されるモノマーに由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、通常3〜45モル%であり、好ましくは5〜40モル%であり、より好ましくは5〜35モル%である。
【0117】
次に、ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位のうち、フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位について説明する。該酸安定構造単位は、以下の式(a2−0)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−0)」という。)が好ましい。

式(a2−0)中、
a30は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は同一でも異なっていてもよい。
【0118】
a30の「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」における「炭素数1〜6のアルキル基」の具体例は、炭素数がこの範囲において、すでに例示したものを含む。「ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基」とは、該炭素数1〜6のアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換されたものである。なお、ハロゲン原子の具体例もすでに説明したとおりである。これらのうち、Ra30は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
a31のアルコキシ基の具体例は、炭素数1〜6の範囲で、すでに例示したものを含む。これらのうち、Ra31は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0119】
酸安定構造単位(a2−0)の中でも、以下の式(a2−0−1)、式(a2−0−2)、式(a2−0−3)及び式(a2−0−4)のいずれかで表されるものが好ましい。
かかる構造単位を誘導し得るモノマーは、例えば、特開2010−204634号公報に記載されている。

【0120】
p−ヒドロキシスチレンやp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンといった酸安定構造単位(a2−0)を誘導し得る酸安定モノマー[以下、場合により「酸安定モノマー(a2)」という。]を、樹脂(A)製造に用いることにより、式(a2−0−1)又は式(a2−0−2)で表される酸安定構造単位(a2−0)を、樹脂(A)に導入することができるが、該酸安定モノマー(a2)にあるフェノール性ヒドロキシ基を例えば、アセチル基のような保護基で保護し、保護化酸安定モノマー(a2)とした後、この保護化酸安定モノマー(a2)を用いて樹脂(A)を製造することもできる。保護化酸安定モノマー(a2)に由来する構造単位を有する樹脂を脱保護処理して、保護基を脱離することにより、酸安定構造単位(a2−0)を有する樹脂(A)を製造できる。ただし、脱保護処理を実施する際には、他の構造単位(a1)を著しく損なわないようにして、該脱保護処理を実施する必要がある。
【0121】
樹脂(A)が式(a2−0)で表されるモノマーに由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)において、通常5〜90モル%であり、好ましくは10〜85モル%であり、より好ましくは15〜80モル%である。
【0122】
<酸安定構造単位(a3)>
酸安定構造単位(a3)が有するラクトン環は例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0123】
酸安定構造単位(a3)は好ましくは、以下の式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるものである。樹脂(A)は、これらのうち1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。なお、以下の説明においては、式(a3−1)で表されるものを「酸安定構造単位(a3−1)」という場合があり、式(a3−2)で表されるものを「酸安定構造単位(a3−2)」という場合があり、式(a3−3)で表されるものを「酸安定構造単位(a3−3)」という場合がある。


[式(a3−1)中、
a4は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a18は、水素原子又はメチル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a21は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、p1が2以上の場合、複数のRa21は同一でも異なっていてもよい。
式(a3−2)中、
a5は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
a22は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、q1が2以上の場合、複数のRa22は同一でも異なっていてもよい。
式(a3−3)中、
a6は、酸素原子又は*−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a20は、水素原子又はメチル基を表す。
r1は、0〜3の整数を表す。
a23は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、r1が2以上の場合、複数のRa23は同一でも異なっていてもよい。]
【0124】
式(a3−1)〜式(a3−3)において、La4〜La6は、式(a2−1)のLa3で説明したものと同じものが挙げられる。
a4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は、k3が1〜4の整数である*−O−(CH2k3−CO−O−で表される基が好ましく、酸素原子及び、*−O−CH2−CO−O−がより好ましく、さらに好ましくは酸素原子である。
a18〜Ra21は、好ましくはメチル基である。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1、q1及びr1は、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。なお、p1が2である場合、2つのRa21は互いに同一でも異なっていてもよく、q1が2である場合、2つのRa22は互いに同一でも異なっていてもよく、r1が2である場合、2つのRa23は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0125】
以下、酸安定構造単位(a3−1)、酸安定構造単位(a3−2)及び酸安定構造単位(a3−3)の各々の好適例を示す。
【0126】
酸安定構造単位(a3−1)の好適例は、以下の式(a3−1−1)、式(a3−1−2)、式(a3−1−3)及び式(a3−1−4)のいずれかで表されるものである。

【0127】
酸安定構造単位(a3−2)の好適例は、以下の式(a3−2−1)、式(a3−2−2)、式(a3−2−3)及び式(a3−2−4)のいずれかで表されるものである。

【0128】
酸安定構造単位(a3−3)の好適例は、以下の式(a3−3−1)、式(a3−3−2)、式(a3−3−3)及び式(a3−3−4)のいずれかで表されるものである。

【0129】
酸安定構造単位(a3−1)、酸安定構造単位(a3−2)及び酸安定構造単位(a3−3)は、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーにより誘導できる。
。上記の酸安定構造単位(a3)の具体例の中でも、式(a3−1−1)、式(a3−1−2)、式(a3−2−3)、式(a3−2−4)のいずれかで表される酸安定構造単位がより好ましく、式(a3−1−1)又は式(a3−2−3)で表される酸安定構造単位がさらに好ましい。
【0130】
樹脂(A)が、酸安定構造単位(a3)を有する場合、その合計含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜70モル%の範囲が好ましく、10〜65モル%の範囲がより好ましく、10〜60モル%の範囲がさらに好ましい。
また、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位それぞれの含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、5〜50モル%の範囲がより好ましく、10〜50モル%の範囲がさらに好ましい。
【0131】
<その他の酸安定構造単位>
樹脂(A)が有する酸安定構造単位として、好適な酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)を説明したが、当該樹脂(A)は酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)以外の酸安定構造単位を有していてもよい。ここで、酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)以外の酸安定構造単位(a4)という。以下、この酸安定構造単位(a4)を、当該酸安定構造単位(a4)を誘導し得る酸安定モノマー(以下、場合により「酸安定モノマー(a4)」という。)を示すことで説明する。
【0132】
酸安定モノマー(a4)の具体例は例えば、以下の式(a4−1)で表されるモノマー(以下、場合により「モノマー(a4−1)」という。)である。このモノマー(a4−1)は、後述するように、フッ素原子を有するものであると好ましい。

[式(a4−1)中、
41は、水素原子又はメチル基を表す。
41は、式(a4−g1)で表される基を表す。

(式(a4−g1)中、
ssは0〜2の整数を表す。
40及びA41は、それぞれ独立に、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。
ssが2のとき、複数存在するA40は、互いに同一であるか相異なる。
40は、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
ssが2のとき、複数存在するX40は、互いに同一であるか相異なる。)
42は、フッ素原子を有する炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。]
41の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状であっても、分岐していてもよい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基及びペンタンジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。
41としては、炭素数1〜6のアルカンジイル基が好ましく、炭素数1〜4のアルカンジイル基がより好ましく、エチレン基がさらに好ましい。
【0133】
式(a4−g1)で表される基(以下「基(a4−g1)」という場合がある)の具体例を以下に示す。各具体例において、*は結合手を表す。
酸素原子を有する基(a4−g1)としては、

等が挙げられる。
【0134】
カルボニル基を有する基(a4−g1)としては、

等が挙げられる。
【0135】
カルボニルオキシ基を有する基(a4−g1)としては、

等が挙げられる。
【0136】
オキシカルボニル基を有する基(a4−g1)としては、

等が挙げられる。
【0137】
42は、脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子のうち少なくとも一つがフッ素原子で置き換わった基である。脂肪族炭化水素基は、部分的に炭素−炭素不飽和結合を有していてもよいが、炭素−炭素不飽和結合を有さない飽和の脂肪族炭化水素基(脂肪族飽和炭化水素基)が好ましい。脂肪族飽和炭化水素基としては、アルキル基(直鎖及び分岐状)及び脂環式炭化水素基並びにアルキル基及び脂環式炭化水素基を組み合わせた脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基は、単環式及び多環式のいずれでもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及び下記に示す基などが挙げられる。

【0138】
かかる脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子のうち少なくとも一つがフッ素原子で置き換わった基としては、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペルフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、ペルフルオロエチルメチル基、1−(トリフルオロメチル)−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、1,1,2,2−テトラフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル基、ペルフルオロブチル基、1,1−ビス(トリフルオロ)メチル−2,2,2−トリフルオロエチル基、2−(ペルフルオロプロピル)エチル基、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンチル基、ペルフルオロペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンチル基、1,1−ビス(トリフルオロメチル)−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロシクロペンチル基、2−(ペルフルオロブチル)エチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロヘキシル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロペンチルメチル基及びペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
【0139】
該脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、式(a−g2)で表される基が挙げられる。

(式(a−g2)中、
13は、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜15の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
12は、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を表す。
14は、フッ素原子を有していてもよい炭素数1〜15の1価の脂肪族炭化水素基を表す。
但し、A13又はA14の少なくとも一方はフッ素原子を有し、それらの炭素数の合計は17以下である。)
【0140】
13のフッ素原子を有する2価の脂肪族炭化水素基とは、フッ素原子を有するアルカンジイル基及びフッ素原子を有する2価の脂環式炭化水素基(好ましくは、フッ素原子を有するシクロアルカンジイル基)が挙げられる。フッ素原子を有するアルカンジイル基は、アルカンジイル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものであり、フッ素原子を有する2価の脂環式炭化水素基とは、2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものである。
【0141】
42がフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、A41がエチレン基である化合物(a4−1)は、以下の式(a4−1−1)〜式(a4−1−22)のいずれかで表される化合物が挙げられる。

【0142】

【0143】
42のフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基は、アルキル基に含まれる水素原子の全部がフッ素原子で置換されたペルフルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基及びペルフルオロオクチル基など)又はシクロアルキル基に含まれる水素原子の全部がフッ素原子で置換されたペルフルオロシクロアルキル基が好ましい。
【0144】
42が、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロシクロアルキル基である化合物は、上述の式(a4−1−3)、式(a4−1−4)、式(a4−1−7)、式(a4−1−8)、式(a4−1−11)、式(a4−1−12)、式(a4−1−15)、式(a4−1−16)、式(a4−1−19)、式(a4−1−20)、式(a4−1−21)及び式(a4−1−22)のいずれかで表される化合物が該当する。
【0145】
42としては、ペルフルオロアルキル基がより好ましい。さらに好ましくは、炭素数が1〜6のペルフルオロアルキル基であり、さらにより好ましくは、炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。
【0146】
42が、式(a−g2)である化合物(a)は、以下の式(a4−1’)で表されるもの(以下、場合により「化合物(a4−1’)」という)である。

[式(a4−1’)中、A13、A14、A41、R41及びX12は、それぞれ前記と同義である。]
【0147】
化合物(a4−1’)において、A13及びA14はともにフッ素原子を有することもあるが、A13がフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基であるか、または、A14がフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基であるものが好ましい。さらに、A13がフッ素原子を有する脂肪族炭化水素基であるものが好ましく、なかでも、A13はフッ素原子を有するアルカンジイル基であるものがより好ましく、ペルフルオロアルカンジイル基であるものが特に好ましい。「ペルフルオロアルカンジイル基」とは、水素原子の全部がフッ素原子に置換されたアルカンジイル基をいう。
【0148】
42がペルフルオロアルカンジイル基であり、A41がエチレン基である化合物(a4−1’)としては、以下の式(a4−1’−1)〜式(a4−1’−46)のいずれかで表される化合物が挙げられる。

【0149】

【0150】


【0151】
13及びA14の炭素数は、それらの合計が17以下である範囲で任意に選択されるが、A13の炭素数は1〜6が好ましく、1〜3がより好ましい。
14の炭素数は4〜15が好ましく、5〜12がより好ましい。さらに好ましいA14は、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基であり、シクロヘキシル基及びアダマンチル基がさらにより好ましい。
【0152】
*−A13−X12−A14(*はカルボニル基との結合手である)としては、好ましくは、以下の基が挙げられる。

【0153】

このような基を有する化合物(a4−1’)は、上述した式(a4−1’−7)〜式(a4−1’−42)のいずれかで表される化合物が該当する。
【0154】
樹脂(A)が化合物(a4−1)に由来する構造単位を含む場合、その含有率は、樹脂(A)の全構造単位に対して、通常、1〜20モル%であり、2〜15モル%が好ましく、3〜10モル%がより好ましい。
【0155】
以上、樹脂(A)が有する構造単位(a1)として好適な構造単位(a1−1)又は構造単位(a1−2)、及びその他の構造単位(a1)、ならびに、酸安定構造単位として好適な酸安定構造単位(a2)、酸安定構造単位(a3)、酸安定構造単位(a4)について詳述したが、これら以外の構造単位を有していてもよく、かかる構造単位としては、当技術分野で周知の構造単位を挙げることができる。
【0156】
また、ここに示すモノマー(a4−1)に由来する構造単位を有する樹脂を、樹脂(A)とは別に本レジスト組成物に含有させることもできる。換言すると、分子内に酸不安定基[構造単位(a1)]を有する樹脂(A)と、分子内に酸不安定基を有さず、モノマー(a4−1)に由来する構造単位を有する樹脂(以下、場合により「樹脂(X)」という。)とを組み合わせて、本レジスト組成物に含有させることができる。
この場合、樹脂(X)における、モノマー(a4−1)に由来する構造単位の含有割合は、当該樹脂(X)の全構造単位(100モル%)に対して、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
【0157】
また、本レジスト組成物には、酸作用特性を有する樹脂(A)と、酸作用特性を有しない樹脂(X)とを合わせて用いてもよく、この場合の樹脂(X)として、モノマー(a4−1)に由来する構造単位を有する樹脂を用いることができる。さらにいえば、樹脂(X)は、モノマー(a4−1)に由来する構造単位の中でも、モノマー(a4−1’)に由来する構造単位を有していると好ましい。樹脂(X)の全構造単位に対する、モノマー(a4−1)〔モノマー(a4−1’)〕に由来する構造単位の含有割合は例えば、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。樹脂(X)は、実質的にモノマー(a4−1)〔モノマー(a4−1’)〕に由来する構造単位からなるものであってもよい。なお、樹脂(X)が、モノマー(a4−1)に由来する構造単位以外に有していてもよい構造単位としては、上述の酸安定構造単位(a2)や酸安定構造単位(a3)などを挙げることができる。
【0158】
樹脂(X)もモノマー(a4−1)〔モノマー(a4−1’)〕に由来する構造単位を有するものであれば好ましいが、酸不安定基を有しない構造単位からなるものであれば、当技術分野で周知の構造単位を、さらに有していてもよい。
【0159】
<樹脂(A)の製造方法>
樹脂(A)は、構造単位(a1)を誘導するモノマー(a1)を、さらに好ましくは、該モノマー(a1)と、酸安定構造単位を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものであり、より好ましくは、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマー(a1)と、酸安定構造単位(a2)及び/又は酸安定構造単位(a3)を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものである。なお、本レジスト組成物を例えば、EUV露光用とするうえでは、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマー(a1)と、酸安定構造単位(a2−0)を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものを挙げることができる。
樹脂(A)は、構造単位(a1)として、アダマンチル基を有する構造単位(a1−1)を有することがさらに好ましい。樹脂(A)は、上述したようなモノマーを公知の重合法(例えばラジカル重合法)に供し、重合(共重合)することにより製造できる。
一方、樹脂(X)は好ましくは、モノマー(a4−1)〔モノマー(a4−1’)〕を公知の重合法に供して重合させたものであり、かかる重合〔樹脂(X)の製造〕には、モノマー(a4−1)〔モノマー(a4−1’)〕に加えて、他の酸安定モノマー[例えば、酸安定構造単位(a2)又は酸安定構造単位(a3)を誘導するモノマー]を用い、これらを共重合させたものであってもよい。
【0160】
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは、2,500以上(より好ましくは3,000以上)、50,000以下(より好ましくは30,000以下)である。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものである。この分析の詳細な分析条件は、本願の実施例に記載する。
一方、樹脂(X)を本レジスト組成物に用いる場合、当該樹脂(X)の重量平均分子量は、好ましくは、8,000以上(より好ましくは10,000以上)、80,000以下(より好ましくは60,000以下)である。かかる樹脂(X)の重量平均分子量の測定手段は、樹脂(A)の場合と同様である。
【0161】
<塩基性化合物(C)>
本発明のレジスト組成物は、さらに、塩基性化合物(C)を含むことが好ましい。塩基性化合物(C)はクエンチャーとして作用する。
【0162】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、好ましくは、式(C1)で表される化合物〜式(C8)で表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0163】

[式(C1)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0164】

[式(C1−1)中、Rc2及びRc3は、上記と同じ意味を表す。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一であるか相異なる。]
【0165】

[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、Rc5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9の全部又は一部は同じであってもよい。]
【0166】

[式(C5)及び式(C6)中、Rc10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3が2以上であるとき、複数のRc14の全部又は一部は同じであってもよい。p3が2以上であるとき、複数のRc15の全部又は一部は同じであってもよい。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0167】

[式(C7)及び式(C8)中、Rc18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3が2以上であるとき、複数のRc18の全部又は一部は同じであってもよい。r3が2以上であるとき、複数のRc19の全部又は一部は同じであってもよい。s3が2以上であるとき、複数のRc20の全部又は一部は同じであってもよい。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0168】
式(C1)〜式(C8)においては、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、アルカンジイル基は、上述したものと同様のものが挙げられる。
アルカノイル基としては、アセチル基、2−メチルアセチル基、2,2−ジメチルアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロピオニル基等が挙げられる。
【0169】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン等が挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、より好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0170】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジン等が挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリン等が挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリン等が挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール、4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン、4−メチルピリジン等が挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミン、ビピリジン等が挙げられる。
【0171】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリン等が挙げられる。
【0172】
塩基性化合物(C)の含有率は、レジスト組成物の固形分量を基準に、好ましくは、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜3質量%程度であり、特に好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0173】
<溶剤(D)>
本レジスト組成物は、さらに溶剤(D)を含有していると好ましい。本レジスト組成物に含有される溶剤(D)は、塩(I)や樹脂(A)などの種類及びその量に応じ、さらに後述するレジストパターンの製造において、基板上に本レジスト組成物を塗布する際の塗布性が良好となるという点から適宜、最適なものを選ぶことができる。
【0174】
溶剤(D)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0175】
<その他の成分>
本レジスト組成物は、塩(I)を有効成分とする酸発生剤及び樹脂(A)並びに必要に応じて用いられる溶剤(D)、酸発生剤(B)及び塩基性化合物(C)以外の構成成分を含有していてもよい。この構成成分を「成分(F)」という場合がある。かかる成分(F)に特に限定はなく、レジスト分野で公知の添加剤、例えば、樹脂(A)以外の高分子化合物、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料等が挙げられる。
【0176】
<本レジスト組成物の調製方法>
本レジスト組成物は、通常、溶剤(D)の存在下で、塩(I)及び樹脂(A)を混合することで調製することができる。さらに、上述のとおり必要に応じて酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)及び/又は成分(F)を混合してもよい。塩基性化合物(C)を混合することが好ましい。混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、樹脂(A)などの種類や樹脂(A)などの溶剤(D)に対する溶解度などに応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合などを用いることができる。
本発明のレジスト組成物を調製する際に用いる各成分の使用量を選択することにより、本発明のレジスト組成物中の各成分の含有量を調節することができる。
【0177】
本レジスト組成物における酸発生剤の含有割合は、本レジスト組成物の固形分に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
【0178】
塩(I)の含有量は、酸発生剤全量100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上である。本レジスト組成物には、実質的に塩(I)のみを酸発生剤として用いることもできる。なお、塩(I)以外の酸発生剤としては前記酸発生剤(B)が好ましいものである。
【0179】
本レジスト組成物における樹脂(A)の含有割合は、本レジスト組成物の固形分を基準に好ましい範囲が定められる。具体的は、該固形分の質量を基準として、樹脂(A)は80質量%以上99質量%以下であることが好ましい。本レジスト組成物に樹脂(X)を含有させる場合、その含有割合は、樹脂(A)の含有量を基準として、0.1〜30質量%程度であり、より好ましく0.5〜20質量%程度であり、特に好ましく1〜15質量%程度である。
【0180】
本レジスト組成物に塩基性化合物(C)を含有させる場合、その含有割合は、本レジスト組成物の固形分に対して、好ましくは、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜3質量%程度であり、特に好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0181】
本レジスト組成物中の溶剤(D)の含有割合は、本レジスト組成物の総質量に対して、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上であり、例えば99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
【0182】
本レジスト組成物に成分(F)を含有させる場合、該成分(F)の種類に応じて、適切な含有量を調節可能である。
【0183】
このように、塩(I)を有効成分とする酸発生剤及び樹脂(A)、並びに必要に応じて用いられる溶剤(D)、塩基性化合物(C)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.003〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0184】
<レジストパターンの製造方法>
本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法を具体的に示すと、
(1)本レジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を、現像する工程
を含むものである。以下、ここに示す工程の各々を、「工程(1)」〜「工程(5)」のようにいう。
【0185】
工程(1)における本発明のレジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーター等、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで、塗布膜の膜厚は調整可能であり、適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。本発明のレジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。なお、本発明のレジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0186】
工程(2)における乾燥は、基板上に塗布された本発明のレジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させる。このような乾燥は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、該塗布膜から溶剤を蒸発させて除去することにより行われる。乾燥条件は、本発明のレジスト組成物に含まれる溶剤(E)の種類等に応じて選択でき、例えばホットプレートによる加熱手段の場合、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にすることが好ましい。また、減圧手段の場合、減圧装置の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧装置の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にすればよい。かくして塗布膜を乾燥させることにより、該基板上には組成物層が形成される。
【0187】
工程(3)は該組成物層を露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層を露光する工程である。露光は、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して行われる。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。本明細書において、これらの放射線を照射することを総称して「露光」という場合がある。
マスクを介して露光することにより、該組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では該組成物層に含まれる塩(I)及び酸発生剤(B)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸との作用により、「アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂」である樹脂(A)が有する酸不安定基が脱保護反応により親水性基を生じるため、露光部の組成物層にある上記樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けないため、上記樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違するため、アルカリ水溶液による現像によりレジストパターンを形成することができる。
【0188】
工程(4)は露光後の組成物層を加熱する工程(いわゆるポストエキスポジャーベーク)である。該加熱により、露光部で生じうる脱保護基反応が促進される。かかる加熱処理は前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段等が好ましい。なお、工程(4)においてホットプレートを用いる加熱手段を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。
【0189】
工程(5)は、加熱後の組成物層を現像する工程であり、好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像する。現像する工程で、加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させると、露光部の組成物層が該アルカリ水溶液に溶解して除去され、未露光部の組成物層は、基板に残るため、該基板上にレジストパターンが製造される。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。該アルカリ水溶液としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液や(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
【0190】
現像後、超純水等でリンス処理を行うことが好ましい。さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0191】
<用途>
本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光用のレジスト組成物、さらに液浸露光用のレジスト組成物として好適である。
【実施例】
【0192】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
実施例及び比較例中、含有量及び使用量を表す「%」及び「部」は、特記ないかぎり質量基準である。
重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型、カラムは”TSKgel Multipore HXL−M”3本、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0193】
化合物の構造は、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型)を用い、分子ピークを測定することで確認した。以下の実施例ではこの分子ピークの値を「MASS」で示す。
【0194】
実施例1:式(I−1)で表される塩の合成

式(I−1−a)で表される化合物6.43部及びクロロホルム38.60部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した。次いで、式(I−1−b)で表される化合物5.91部を添加した。60℃程度まで昇温し、同温度で2時間攪拌することにより、式(I−1−c)で表される化合物を含む溶液を得た。得られた式(I−1−c)で表される化合物を含む溶液に、式(I−1−d)で表される化合物5.00部及びクロロホルム15.00部の混合溶液を仕込み、23℃で24時間攪拌した。得られた反応物に、イオン交換水26.80部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。このような水洗操作を6回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮して得られた濃縮物に、n−ヘプタン66.15部を仕込み、23℃で1時間攪拌した後、ろ過することにより、式(I−1−e)で表される化合物7.66部を得た。
【0195】

式(I−1−e)で表される化合物7.00部及びテトラヒドロフラン35.00部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した。0℃まで冷却し、水素化ホウ素ナトリウム0.39部及びイオン交換水5.80部の水溶液を25分かけて滴下した。更に、0℃で1時間攪拌した後、イオン交換水48.19部及び酢酸エチル144.57部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水48.19部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。このような水洗操作を5回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮して得られた濃縮物に、n−ヘプタン32.75部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。得られた濃縮物を酢酸エチルに溶解した後、濃縮することにより、式(I−1−f)で表される化合物4.74部を得た。
【0196】

式(I−1−g)で表される塩3.49部及びアセトニトリル17.50部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、式(I−1−b)で表される化合物1.52部を添加し、70℃程度まで昇温した後、同温度で2時間攪拌し、式(I−1−h)で表される化合物を含む溶液を得た。得られた式(I−1−h)で表される化合物を含む溶液に、50℃で、式(I−1−f)で表される化合物2.46部及びクロロホルム7.57部の混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに、60℃で12時間攪拌した後、得られた反応物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム66.92部及び2%シュウ酸水50.19部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水33.46部を加え、23℃で30分間攪拌した。
その後、静置し、分液して有機層を得た。この水洗操作をさらに5回繰り返した。水洗後の有機層に活性炭0.97部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル18.75部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I−1)で表される塩2.94部を得た。
MASS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 501.1
【0197】
実施例2:式(I−4)で表される塩の合成

式(I−4−a)で表される化合物5.39部及びクロロホルム32.36部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌し、式(I−4−b)で表される化合物4.95部を添加した。その後、60℃程度まで昇温し、同温度で2時間攪拌することにより、式(I−4−c)で表される化合物を含む溶液を得た。得られた式(I−4−c)で表される化合物を含む溶液に、式(I−4−d)で表される化合物5.00部及びクロロホルム15.00部の混合溶液を仕込み、23℃で4時間攪拌した。得られた反応混合物に、イオン交換水23.68部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。このような水洗操作を6回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮することにより、式(I−4−e)で表される化合物6.98部を得た。
【0198】

式(I−4−e)で表される化合物5.76部及びアセトニトリル29.05部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した後、0℃まで冷却し、水素化ホウ素ナトリウム0.29部及びイオン交換水4.37部の水溶液を20分かけて滴下した。更に、0℃で1時間攪拌した後、イオン交換水39.52部及び酢酸エチル118.56部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水39.52部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。このような水洗操作を5回繰り返した。水洗後の有機層を濃縮し、得られた濃縮物に、n−ヘプタン42.80部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。得られた濃縮物を酢酸エチルに溶解した後、濃縮することにより、式(I−4−f)で表される化合物4.23部を得た。
【0199】

式(I−4−g)で表される塩3.49部及びアセトニトリル17.50部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、式(I−4−b)で表される化合物1.52部を添加し、70℃程度まで昇温した後、同温度で2時間攪拌し、式(I−4−h)で表される化合物を含む溶液を得た。得られた式(I−4−h)で表される化合物を含む溶液に、50℃で、式(I−4−f)で表される化合物2.69部及びクロロホルム8.07部の混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに、60℃で12時間攪拌した後、得られた反応物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム65.48部及び2%シュウ酸水50.20部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水35.00部を加え、23℃で30分間攪拌した。
その後、静置し、分液して有機層を得た。この水洗操作をさらに5回繰り返した。水洗後の有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル20.00部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I−4)で表される塩2.83部を得た。
MASS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 533.1
【0200】
実施例3:式(I−14)で表される塩の合成

式(I−14−g)で表される塩3.82部及びアセトニトリル19.12部を、反応器に仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、式(I−14−b)で表される化合物1.52部を添加し、70℃程度まで昇温した後、同温度で2時間攪拌し、式(I−14−h)で表される化合物を含む溶液を得た。得られた式(I−14−h)で表される化合物を含む溶液に、50℃で、式(I−4−f)で表される化合物2.69部及びクロロホルム8.07部の混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに、60℃で12時間攪拌した後、得られた反応物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム70部及び2%シュウ酸水50部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水35部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。この水洗操作をさらに5回繰り返した。水洗後の有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル20部を加えて攪拌した。得られた上澄液を除去し、濃縮した。得られた濃縮物をアセトニトリルに溶解した後、濃縮することにより、式(I−14)で表される塩2.98部を得た。
MASS(ESI(+)Spectrum):M 305.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 533.1
【0201】
樹脂(A)の合成
樹脂(A)の合成に使用した化合物を下記に示す。

以下、これらの化合物をその式番号に応じて、「モノマー(a1−1−2)」などという。
【0202】
合成例1:〔樹脂A1の合成〕
モノマー(a1−1−3)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−1−1)及びモノマー(a3−2−3)を、そのモル比〔モノマー(a1−1−3):モノマー(a1−2−3):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−1−1):モノマー(a3−2−3)〕が、30:14:6:20:30の割合となるように混合し、さらに、このモノマー混合物に、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%となるように添加した。これを73℃で約5時間加熱することにより重合した。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収した。再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を2回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が8.1×10である共重合体を収率65%で得た。この共重合体は、モノマー(a1−1−3)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−1−1)、モノマー(a3−2−3)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。

【0203】
合成例2:〔樹脂A2の合成〕
モノマー(a1−1−2)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−1−1)及びモノマー(a3−2−3)を、そのモル比〔モノマー(a1−1−2):モノマー(a1−2−3):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−1−1):モノマー(a3−2−3)〕が、30:14:6:20:30の割合となるように混合し、さらに、このモノマー混合物に、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%となるように添加した。これを73℃で約5時間加熱することにより重合した。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収した。再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を2回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が7.8×10である共重合体を収率68%で得た。この共重合体は、モノマー(a1−1−2)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−1−1)、モノマー(a3−2−3)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A2とする。

【0204】
合成例3:〔樹脂A3の合成〕
モノマー(1−1−2)、モノマー(a2−1−1)及びモノマー(a3−1−1)を、そのモル比〔モノマー(1−1−2):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−1−1)〕が、50:25:25となるように混合し、さらに、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1mol%と3mol%との割合で添加し、これを80℃で約8時間加熱することで重合を行った。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収した。再度、得られた樹脂を、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を3回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が約9.2×10である共重合体を収率60%で得た。この共重合体は、モノマー(1−1−2)、モノマー(a2−1−1)及びモノマー(a3−1−1)に各々由来する、以下の各モノマーから導かれる構造単位を有するものであり、これを樹脂A3とする。

【0205】
合成例4〔樹脂A4の合成〕
モノマーとして、モノマー(a1−1−3)、モノマー(a1−2−3)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−3)及びモノマー(a3−1−1)を用い、そのモル比(モノマー(a1−1−3):モノマー(a1−2−3):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−2−3):モノマー(a3−1−1))が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.0×10の樹脂A4(共重合体)を収率60%で得た。この樹脂A4は、以下の構造単位を有するものである。

【0206】
合成例5〔樹脂A5の合成〕
モノマーとして、モノマー(a1−1−3)、モノマー(a1−5−1)、モノマー(a2−1−1)、モノマー(a3−2−3)及びモノマー(a3−1−1)を用い、そのモル比(モノマー(a1−1−3):モノマー(a1−5−1):モノマー(a2−1−1):モノマー(a3−2−3):モノマー(a3−1−1))が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.4×10の樹脂A5(共重合体)を収率62%で得た。この樹脂A5は、以下の構造単位を有するものである。

【0207】
合成例6〔樹脂X1の合成〕
モノマーとして、モノマー(a4−1−7)を用い、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。当該溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、0.7mol%及び2.1mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。
かくして得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量1.8×10の樹脂X1を収率77%で得た。この樹脂X1は、以下の構造単位を有するものである。

【0208】
実施例4〜15、比較例1:レジスト組成物の調製
表7に示すように、各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0209】
<酸発生剤>
I−1:式(I−1)で表される塩
I−4:式(I−4)で表される塩
I−14:式(I−14)で表される塩
B1−3:


B1−11:

【0210】
<樹脂>
A1:樹脂A1
A2:樹脂A2
A3:樹脂A3
A4:樹脂A4
A5:樹脂A5
X1:樹脂X1
<塩基性化合物:クエンチャー>
C1:2,6−ジイソプロピルアニリン
【0211】
【表4】



<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
2−ヘプタノン 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0212】
<レジストパターンの製造及びその評価>
シリコンウェハに、有機反射防止膜用組成物(ARC−29;日産化学(株)製)を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ780Åの有機反射防止膜を形成した。次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥(プリベーク)後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。レジスト組成物を塗布したシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表4の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベークし、レジスト膜(組成物層)を形成した。レジスト膜が形成されたシリコンウェハに、液浸露光用ArFエキシマレーザステッパー(XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、3/4Annular X−Y偏光)で、コンタクトホールパターン(ホールピッチ95nm/ホール径60nm)を形成するためのマスクを用いて、露光量を段階的に変化させて露光した。尚、液浸媒体としては超純水を使用した。
露光後、前記シリコンウェハを、ホットプレート上にて、表4の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク処理した。次いでこのシリコンウェハを、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
【0213】
各レジスト組成物からのレジストパターン形成において、マスクホール径が60nmのマスクを用いて形成されたレジストパターンのホール径が50nmとなる露光量を実効感度とした。
【0214】
以上のようなレジストパターンの製造において、以下の項目を評価した。
【0215】
マスクエラーファクター(MEF)評価:実効感度において、マスクホール径がそれぞれ62nm、61nm、60nm、59nm、58nm(ピッチはともに95nm)のマスクでレジストパターンをそれぞれ形成した。マスクホール径を横軸に、各マスクホール径のマスクから形成されたレジストパターンのホール径を縦軸にプロットし、該プロットから求めた回帰直線の傾きをMEFとして算出した。傾きが、
2.5未満のものを◎、
2.5以上3.0以下のものを○、
3.0より大きいものを×として判断した。
【0216】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明の塩(I)を有効成分とする酸発生剤は、該酸発生剤を含有するレジスト組成物に用いることにより、優れたマスクエラーファクター(MEF)でレジストパターンを製造することができる。そのため、本発明の塩(I)は半導体の微細加工に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される塩。

[式(I)中、
及びQは、同一又は相異なり、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
は、炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、カルボニル基又は−NR−に置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
環Wは、炭素数3〜36の脂肪族環を表し、該脂肪族環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、該脂肪族環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
は、フッ素置換芳香環を含む1価の有機基であり、該有機基は置換基を有していてもよい。
は、有機対イオンを表す。]
【請求項2】
前記式(I)のRが、式(R−1)又は式(R−2)で表される有機基である請求項1記載の塩。

(*は、Lとの結合手を表す。)
【請求項3】
前記式(I)の

で表される部分構造が、
式(Ia1−1)、式(Ia1−2)又は式(Ia1−3)のいずれかで表される構造である請求項1又は2記載の塩。



[式(Ia1−1)中、
アダマンタン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、アダマンタン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]



[式(Ia1−2)中、
シクロヘキサン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、シクロヘキサン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]



[式(Ia1−3)中、ン環を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、ノルボルナン環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【請求項4】
前記式(I)のLが、
*−CO−O−(CH
(uは0〜6の整数を表す。*は、Q及びQと結合する炭素原子との結合手を表す。
)である請求項1〜3のいずれか記載の塩。
【請求項5】
前記式(I)のLが、
*−CO−O−(CH−又は*−O−CH−CO−O−
(vは0〜4の整数を表す。*は、環Wとの結合手を表す。)
である請求項1〜4のいずれか記載の塩。
【請求項6】
前記Zが、トリアリールスルホニウムカチオンである請求項1〜5のいずれか記載の塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の塩を有効成分として含有する酸発生剤。
【請求項8】
請求項7記載の酸発生剤と、
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂とを含有するレジスト組成物。
【請求項9】
さらに、塩基性化合物を含有する請求項8記載のレジスト組成物。
【請求項10】
(1)請求項8又は9記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2013−53137(P2013−53137A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171773(P2012−171773)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】