説明

塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】半導体微細加工の設計寸法がますます微細化していくことに従い、より優れたラインウィズスラフネス(LWR)を有するレジストパターンの製造が求められている。
【解決手段】分子内に、3級硫黄原子及びカルボキシレート基をそれぞれ1つずつ有する塩、該塩を含有するレジスト組成物、並びに該レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法。該塩としては、式(I)で表される塩が好ましい。


[式(I)中、A及びAは、それぞれ独立に炭素数1〜18の1価の有機基であり、Aは炭素数1〜18の2価の有機基である。A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよく、A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩、酸発生剤、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工用に活発に開発が進められているArF露光用レジスト組成物(以下、場合により「レジスト組成物」という。)には、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂と、酸発生剤とが含有されている。また、当該レジスト組成物には、その特性を調節するために、樹脂及び酸発生剤以外に、塩基性化合物などの添加剤が含有されることもある。このような塩基性化合物は、当技術分野では「クエンチャー」と呼ばれている。
【0003】
このようなレジスト組成物として、特許文献1には、
メタクリル酸=2−イソプロピル−2−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、メタクリル酸=1−エチル−1−シクロヘキシル、及びα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンから得られる樹脂と、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム1−((3−ヒドロキシアダマンチル)メトキシカルボニル)ジフルオロメタンスルホ
ナートからなる酸発生剤と、
2,6−ジイソプロピルアニリンからなるクエンチャーとからなるレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−152341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体微細加工の設計寸法がますます微細化していくことに従い、より優れたラインウィズスラフネス(LWR)を有するレジストパターンの製造が求められている。このようなレジストパターンを製造するためには、特許文献1記載のレジスト組成物は、いまだ改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕分子内に、3級硫黄原子及びカルボキシレート基をそれぞれ1つずつ有する塩。
〔2〕式(I)で表される、前記〔1〕記載の塩。

[式(I)中、
及びAは、それぞれ独立に炭素数1〜18の1価の有機基であり、
は炭素数1〜18の2価の有機基である。A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよく、A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよい。]
〔3〕前記式(I)のA及びAが、それぞれ独立に、以下の置換基群P1から選ばれる基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は、以下の置換基群P2から選ばれる基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基である、前記〔2〕記載の塩。
〔置換基群P1〕
ヒドロキシ基及び炭素数6〜12のアリール基
〔置換基群P2〕
ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基
〔4〕前記式(I)のA及びAが、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基である、前記〔2〕記載の塩。
〔5〕前記式(I)のAが、芳香環を含む2価の有機基である、前記〔2〕記載の塩。
〔6〕前記式(I)のAが、2価の芳香族炭化水素基である、前記〔2〕記載の塩。
〔7〕レジスト組成物用添加剤として用いられる、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の塩。
〔8〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の塩と、
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂と、
酸発生剤と
を含有するレジスト組成物。
〔9〕(1)請求項8記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塩を含むレジスト組成物を用いれば、優れたラインウィズスラフネス(LWR)を有するレジストパターンを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、
分子内に、特定の原子と、特定の基とを有する塩;
該塩と、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂(以下、場合により「樹脂(A)」という。)と、酸発生剤(以下、場合により「酸発生剤(B)」という。)とを含有するレジスト組成物(以下、場合により「本レジスト組成物」という。);
本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法を提供する。
まずは、このような塩に関して、好適なものを中心に説明し、該塩以外の本レジスト組成物の構成成分、これらを用いた本レジスト組成物の調製方法を説明する。また、最後に、本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法に関して説明する。
【0009】
本明細書では、特に断りのない限り、炭素数を適宜選択しながら、以下の置換基の例示は、同様の置換基を有するいずれの化学構造式においても適用される。脂肪族炭化水素基のうち、アルキル基のように直鎖状又は分岐状をとることができるものは、そのいずれをも含む。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。以下の置換基の例示において、「C」に付して記載した数値は、各々の基の炭素数を示すものである。
さらに、本明細書において、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0010】
本明細書において、有機基とは炭素原子を含む基をいい、炭化水素基、該炭化水素基の一部に、酸素原子、窒素原子又はハロゲン原子などのヘテロ原子が含まれた基を包含する。
【0011】
炭化水素基とは、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する。
脂肪族炭化水素基は、鎖式及び環式の双方を含み、特に定義しない限り、鎖式及び脂環式の脂肪族炭化水素基が組み合わせられたものをも包含する。また、これら脂肪族炭化水素基は、その一部に炭素−炭素二重結合を含んでいてもよいが、飽和の基(脂肪族飽和炭化水素基)が好ましい。
【0012】
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち1価のものとしては、典型的にはアルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基(C)、エチル基(C)、プロピル基(C)、ブチル基(C)、ペンチル基(C)、ヘキシル基(C)、ヘプチル基(C)、オクチル基(C)、デシル基(C10)、ドデシル基(C12)、ヘキサデシル基(C14)、ペンタデシル基(C15)、ヘキシルデシル基(C16)、ヘプタデシル基(C17)及びオクタデシル基(C18)などが挙げられる。
鎖式の脂肪族炭化水素基のうち2価のものとしては、アルキル基から水素原子を1個取り去ったアルカンジイル基が挙げられる。
該アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基及び2−メチル−1,4−ブチレン基などが挙げられる。
【0013】
環式の脂肪族炭化水素基(以下、場合により「脂環式炭化水素基」という。)は、典型的には、シクロアルキル基を意味し、以下に示す単環式及び多環式のいずれをも包含する。
【0014】
脂環式炭化水素基のうち1価のものとして、単環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−1)〜(KA−7)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0015】
多環式の脂肪族炭化水素基は、以下の式(KA−8)〜(KA−19)で表されるシクロアルカンの水素原子を1個取り去った基である。

【0016】
脂環式炭化水素基のうち2価のものとしては、式(KA−1)〜式(KA−19)の脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った基が挙げられる。
【0017】
脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、そのつど定義するが、該置換基は例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アリール基、アラルキル基及びアリールオキシ基が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基(C)、エトキシ基(C)、プロポキシ基(C)、ブトキシ基(C)、ペンチルオキシ基(C)、ヘキシルオキシ基(C)、ヘプチルオキシ基(C7)、オクチルオキシ基(C8)、デシルオキシ基(C10)及びドデシルオキシ基(C12)などが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基(C)、プロピオニル基(C)、ブチリル基(C)、バレイル基(C)、ヘキシルカルボニル基(C)、ヘプチルカルボニル基(C7)、オクチルカルボニル基(C8)、デシルカルボニル基(C10)及びドデシルカルボニル基(C12)などのアルキル基とカルボニル基とが結合したもの並びにベンゾイル基(C7)などのアリール基とカルボニル基とが結合したものが包含される。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基(C7)、フェネチル基(C8)、フェニルプロピル基(C9)、ナフチルメチル基(C11)及びナフチルエチル基(C12)などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基(C)、ナフチルオキシ基(C10)、アントニルオキシ基(C14)、ビフェニルオキシ基(C12)、フェナントリルオキシ基(C14)及びフルオレニルオキシ基(C13)などのアリール基と酸素原子とが結合したものが挙げられる。
【0018】
芳香族炭化水素基のうち1価のものは、典型的には、アリール基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基(C)、ナフチル基(C10)、アントニル基(C14)、ビフェニル基(C12)、フェナントリル基(C14)及びフルオレニル基(C13)などが挙げられる。ここに示すアリール基から、さらに水素原子を1個取り去ったアリーレン基が、2価の芳香族炭化水素基に該当する。
【0019】
芳香族炭化水素基も置換基を有することがある。このような置換基はそのつど定義するが、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アルキル基及びアリールオキシ基を挙げることができる。これらのうち、アルキル基は、鎖式脂肪族炭化水素基として例示したものと同じであり、芳香族炭化水素基に任意に有する置換基のうち、アルキル基以外のものは、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと同じものを含む。
【0020】
<塩>
本発明の塩は、その分子内に3級硫黄原子及びカルボキシレート基をそれぞれ1つずつ有する。3級硫黄原子とは、3つの基が結合することにより、正の電荷を有する硫黄原子(−S=)をいう。カルボキシレート基とは、*−COO(*は、結合手である。)で示される、カルボキシル基から水素イオンが解離してなる基であり、負の電荷を有する。本発明の塩は、3級硫黄原子の正の電荷と、カルボキシレート基の負の電荷とにより電気的に中和されている。このような本発明の塩は、後述するレジスト組成物用添加剤として用いたとき、優れたラインウィズスラフネス(LWR)を有するレジストパターンを製造し得るレジスト組成物を得ることができる。このようなレジスト組成物を実現できる本発明の塩は、有用且つ新規なものであり、本発明者らの独自の知見により得られたものである。
【0021】
本発明の塩は、好ましくは式(I)で表されるものである。このような塩を以下、場合により「塩(I)」という。

[式(I)中、
及びAは、それぞれ独立に炭素数1〜18の1価の有機基であり、
は炭素数1〜18の2価の有機基である。A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよく、A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよい。]
【0022】
及びAの有機基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、並びに、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせのいずれでもよい。また、炭素数18以下の範囲であれば、その一部にヘテロ原子を含んでいてもよいが、A及びAの有機基には、3級硫黄原子及びカルボキシレート基は含まれることはない。該脂肪族炭化水素基及び該芳香族炭化水素基の具体例は、炭素数18以下の範囲において、すでに例示したものを含む。また、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせも、炭素数18以下の範囲であれば、任意に組み合わせることができる。A及びAの有機基は、それぞれ独立に、置換基群P1から選ばれる置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は、以下の置換基群P2から選ばれる置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基であると好ましい。
〔置換基群P1〕
ヒドロキシ基及び炭素数6〜12のアリール基
〔置換基群P2〕
ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基
【0023】
ここで、置換基群P1から選ばれる基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、及び置換基群P2から選ばれる基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基について好適例を挙げる。
置換基群P1から選ばれる基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基の好適例は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基及びドデシル基などのアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基及びイソボルニル基などのシクロアルキル基;ベンジル基及びナフチルメチル基などのアリールアルキル基;ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヘプチル基及びヒドロキシオクチル基などのヒドロキシアルキル基などである。
【0024】
置換基群P2から選ばれる基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基の好適例は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ビフェニル基、アントリル基及びフェナントリル基などのアリール基;p−メチルフェニル基、p−ブチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、2,6−ジエチルフェニル基及び2−メチル−6−エチルフェニルなどのアルキルアリール基;フェノキシ基及びヒドロキシナフチル基などのヒドロキシアリール基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基及びジメトキシナフチル基などのアルコキシアリール基などである。
【0025】
また、AとAとが互いに結合して、これらが結合する硫黄原子とともに複素環を形成している場合の具体例は、塩(I)に含まれる

で示される部分構造が、以下のいずれかの構造となった場合を挙げることができる。

これらの式においては、
s1、Rs2、Rs3及びRs4は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数3〜12の脂環式炭化水素基を表す。また、t1は、0〜4の整数、t2は、0〜5の整数、t3は、0〜8の整数、t4は、0〜8の整数をそれぞれ表す。なお、ここでいうアルキル基、アルコキシ基及び脂環式炭化水素基の具体例は、炭素数が各々の範囲において、すでに例示したものを含む。また、これらのうちの

は、環を構成するメチレン基の1つ乃至2つが、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0026】
このように、AとAとが互いに結合して形成される複素環の具体例を示したが、該複素環は、その炭素数が4〜6の範囲であると好ましい。
【0027】
以上、A及びAの有機基を、その具体例及び好適例を示して説明したが、これらの中でも、A及びAの有機基は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はナフチル基であると好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であるとさらに好ましい。A及びAが、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又はナフチル基である塩(I)、特に炭素数1〜6のアルキル基である塩(I)は、後述する製造方法により、容易に製造できるという利点がある。
【0028】
の有機基は、2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、並びに、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせの2価の基のいずれでもよい。また、炭素数18以下の範囲であれば、その一部にヘテロ原子を含んでいてもよいが、Aの有機基には、3級硫黄原子及びカルボキシレート基は含まれることはない。該2価の脂肪族炭化水素基及び該2価の芳香族炭化水素基の具体例は、炭素数18以下の範囲において、すでに例示したものを含む。また、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせの2価の基も、炭素数18以下の範囲であれば、任意に組み合わせることができる。
【0029】
の有機基は、アルカンジイル基、脂環式炭化水素基又はアリーレン基、或いはこれらを任意に組み合わせた2価の基を挙げることができる。ここでいうアルカンジイル基、脂環式炭化水素基及びアリーレン基の具体例は、その炭素数がそれぞれの範囲で、すでに例示したものを含む。また、ここでいうアルカンジイル基及び脂環式炭化水素基、並びに、アルカンジイル基及び脂環式炭化水素基を組み合わせた2価の基は、該基を構成するメチレン基の1つ乃至3つが、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0030】
アルカンジイル基及び脂環式炭化水素基を組み合わせた有機基とは、例えば、式(X−A)〜式(X−C)のいずれかで表される基を挙げることができる。

式(X−A)〜式(X−C)中において、
1A及びX1Bは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルカンジイル基を表す。式(X−A)〜式(X−C)で表される基の総炭素数の上限は17である。このX1A及びX1Bのアルカンジイル基を構成するメチレン基も、酸素原子又はカルボニル基に置き換わることもある。
【0031】
ここで、アルカンジイル基を構成するメチレン基の1つ乃至3つが、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基の具体例を挙げておく。例えば、アルカンジイル基を構成するメチレン基が酸素原子に置き換わった基としては、*−X−O−X8−*(ただし、2つの*のうち、一方はカルボキシレート基との結合手であり、他方は3級硫黄原子との結合手である。)などが挙げられる。ここで、X及びXは、単結合又は炭素数1〜15のアルカンジイル基を表し、X及びXの合計炭素数の上限は17である。なお、ここでいうアルカンジイル基の具体例も、炭素数1〜15の範囲において、すでに例示したものを含む。
【0032】
さらに具体的に、アルカンジイル基、並びに、アルカンジイル基及びシクロアルカンジイル基の組み合わせの有機基を構成するメチレン基の1つ乃至3つが、酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基の例を挙げると以下のとおりである。

【0033】

【0034】
以上、Aが、アルカンジイル基、脂環式炭化水素基、又は、アルカンジイル基及び脂環式炭化水素基の組み合わせである場合について説明したが、Aは、2価の芳香族炭化水素基又は芳香環を含む2価の有機基であると好ましい。Aが芳香族炭化水素基である場合、典型的にはアリーレン基であり、当該アリーレン基の具体例は、炭素数が18以下の範囲ですでに例示したものを含む。なお、芳香環を含む基とは、典型的には、*−X10−Ar−X11−*(ただし、2つの*のうち、一方はカルボキシレート基との結合手であり、他方は3級硫黄原子との結合手である。)で表される基である。ここで、X10及びX11は、それぞれ独立に単結合又はアルカンジイル基を表し、これらがともに単結合であることはない。Arは2価の芳香族炭化水素基を表す。そして、Ar、X10及びX11の合計炭素数の上限は18である。
【0035】
芳香族炭化水素基及び芳香環を含む基の中では、芳香族炭化水素基、特にアリーレン基がAとして好ましい。当該アリーレン基は、その炭素数が12以下であるとさらに好ましい。
【0036】
以上、塩(I)を構成するA、A及びAについて具体例を示しつつ説明したが、これらは、例えば後述する塩(I)の製造方法により、市場から入手し易い原料を用いて容易に製造できる点から選択することもできる。容易に製造できる塩(I)を考慮すると、A及びAは1価の脂肪族炭化水素基であると好ましく、上述のとおり、炭素数1〜6のアルキル基であるとさらに好ましい。Aは上述のとおり、アリーレン基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましい。
【0037】
塩(I)の具体例を以下に示す。

【0038】

【0039】

【0040】
続いて、塩(I)の製造方法について説明する。塩(I)は例えば、分子内にスルフィド結合と、カルボキシル基とを有する化合物を準備し、当該化合物にあるスルフィド結合を形成している硫黄原子(2級硫黄原子)を3級化して3級硫黄原子にすることにより製造できる。このような製造方法を反応式の形式で示すと以下のとおりである。

上式中、
、A及びAはそれぞれ上記と同じ意味である。Xhalは脱離基を表し、典型的にはハロゲン原子である。
この反応により、式(I−A)で表される化合物と、式(I−B)で表される化合物とを反応させることにより塩(I)は製造できる。かかる反応は、酸化銀又は過塩素酸銀の存在下、有機溶媒中で実施できる。該有機溶媒としてはクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、メタノール、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルなどが用いられる。
【0041】
<本レジスト組成物>
本レジスト組成物は、塩(I)を含有することにより、優れたラインウィズスラフネス(LWR)を有するレジストパターンの製造を可能とする。本レジスト組成物中は、塩(I)以外に樹脂(A)及び酸発生剤(B)を含有する。さらに、溶剤(以下、場合により「溶剤(D)」という。)を含有することが好ましい。また、本レジスト組成物は必要に応じて、当技術分野で周知のクエンチャーである塩基性化合物(以下、場合により「塩基性化合物(C)」)を含有していてもよい。以下、塩(I)以外の本レジスト組成物の構成成分を、酸発生剤(B)及び樹脂(A)並びに、任意成分である塩基性化合物(C)及び溶剤(D)の順で説明する。
【0042】
<酸発生剤(B)>
本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B)は、スルホン酸を発生するものが好ましいが、これに限らず、非イオン系酸発生剤であっても、イオン系酸発生剤であっても、これらの組み合わせであってもよい。非イオン系酸発生剤としては、有機ハロゲン化物、スルホネートエステル類(例えば2−ニトロベンジルエステル、芳香族スルホネート、オキシムスルホネート、N−スルホニルオキシイミド、N−スルホニルオキシイミド、スルホニルオキシケトン、DNQ 4−スルホネート)及びスルホン類(例えばジスルホン、ケトスルホン、スルホニルジアゾメタン)などが挙げられる。イオン系酸発生剤としては、オニウムカチオンを含むオニウム塩(例えばジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩)などが挙げられる。オニウム塩のアニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、スルホニルメチドアニオンなどがある。
【0043】
酸発生剤(B)としては、例えば特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号、米国特許第3,779,778号、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号及び欧州特許第126,712号などに記載の放射線によって酸を発生する化合物も使用できる。
【0044】
これらの中でも好適なスルホン酸を発生する酸発生剤について説明する。スルホン酸を発生する酸発生剤の中でも、さらに好ましくは、フッ素含有酸発生剤であり、より好ましくは式(B1)で表されるスルホン酸塩(以下、場合により「酸発生剤(B1)」という。)である。

[式(B1)中、
1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
b1は、単結合又は炭素数1〜17の2価の脂肪族飽和炭化水素基を表し、該2価の脂肪族飽和炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の1価の脂肪族炭化水素基を表し、該1価の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
+は、有機カチオンを表す。]
【0045】
1及びQ2のペルフルオロアルキル基の具体例は、すでに例示したアルキル基のうち、炭素数1〜6のアルキル基において、該アルキル基を構成する水素原子の全部がフッ素原子に置き換わったものが該当する。具体的にいうと、例えば、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基及びペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
本レジスト組成物に含有される酸発生剤(B1)としては、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基又はフッ素原子の酸発生剤(B1)が好ましく、Q1及びQ2がともにフッ素原子である酸発生剤(B1)がさらに好ましい。
【0046】
b1の脂肪族炭化水素基の具体例は、すでに例示したアルカンジイル基、及び、上述の式(KA−1)〜式(KA−19)の脂環式炭化水素から水素原子を2個取り去った基などである。
【0047】
b1の脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基に置き換わったものとしては、例えば、以下の式(b1−1)、式(b1−2)、式(b1−3)、式(b1−4)、式(b1−5)及び式(b1−6)〔式(b1−1)〜式(b1−6)〕のいずれかで表される基が挙げられる。なお、式(b1−1)〜式(b1−6)における結合手を示す*は、その左右を式(B1)に合わせて記載しており、左側の結合手は、C(Q1)(Q2)の炭素原子と結合し、右側の結合手はYと結合している。以下の式(b1−1)〜式(b1−6)の具体例も同様である。

式(b1−1)〜式(b1−6)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基を表し、この脂肪族炭化水素基は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基を表し、この脂肪族炭化水素基は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。
b4は、炭素数1〜13の脂肪族炭化水素基を表し、この脂肪族炭化水素基は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。但しLb3及びLb4の合計炭素数の上限は13である。
b5は、炭素数1〜15のの脂肪族炭化水素基を表し、この脂肪族炭化水素基は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。
b6及びLb7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基を表し、これらの脂肪族炭化水素基は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。但しLb6及びLb7の合計炭素数の上限は16である。
b8は、炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基を表し、この脂肪族炭化水素基は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。
b9及びLb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜11の脂肪族炭化水素基を表し、これらの脂肪族炭化水素基は脂肪族飽和炭化水素基が好ましい。但しLb9及びLb10の合計炭素数の上限は12である。
本レジスト組成物に用いる酸発生剤としては、これらの中でも、式(b1−1)で表される2価の基をLb1として有する酸発生剤(B1)が好ましく、Lb2が単結合又はメチレン基である式(b1−1)で表される2価の基を、Lb1として有する酸発生剤(B1)がより好ましい。
【0048】
b1は、好ましくは式(b1−1)〜式(b1−4)のいずれかで表される基であり、さらに好ましくは式(b1−1)〜式(b1−3)のいずれかで表される基であり、特に好ましくは、式(b1−1)で表される基である。
【0049】
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0050】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0051】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0052】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0053】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0054】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0055】
上述のとおり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1〜18の1価の脂肪族炭化水素基を表す。この脂肪族炭化水素基のうち、Yはアルキル基又は脂環式炭化水素基であると好ましく、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜12の脂環式炭化水素基であると、さらに好ましく、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基であると特に好ましい。
Yの脂肪族炭化水素基が置換基を有する場合、この置換基は例えば、ハロゲン原子(但し、フッ素原子を除く)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基、−(CH2j2−O−CO−Rb1で表される基(式中、Rb1は、炭素数1〜16の炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)及びオキソ基などが挙げられる。ここでいう芳香族炭化水素基及びアラルキル基には、例えば、アルキル基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基をさらに有していてもよい。
Yの脂肪族炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、スルホニル基及びカルボニル基からなる群より選ばれる基に置き換わっていてもよい。脂環式炭化水素基を構成するメチレン基が、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わった基としては例えば、環状エーテル基(脂環式炭化水素基を構成するメチレン基の1つ又は2つが酸素原子に置き換わった基)、環状ケトン基(脂環式炭化水素基を構成するメチレン基の1つ又は2つがカルボニル基に置き換わった基)、スルトン環基(脂環式炭化水素基を構成するメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びスルホニル基に置き換わった基)及びラクトン環基(脂環式炭化水素基を構成するメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びカルボニル基に置き換わった基)などが挙げられる。
【0056】
特に、Yの脂環式炭化水素基における−CH−が−O−、−SO−又は−CO−で置き換わった基としては、式(Y12)〜式(Y26)で表される基が挙げられる。
特に、Yの脂環式炭化水素基としては、式(Y1)〜式(Y26)で表される基が挙げられる。

これらの中でも、好ましくは式(Y1)〜式(Y19)のいずれかで表される基であり、より好ましくは式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)又は式(Y19)で表される基であり、さらに好ましくは式(Y11)又は式(Y14)で表される基である。
【0057】
Yとしては、例えば以下のものが挙げられる。

【0058】
すでに説明したとおり、Yの脂環式炭化水素基は、式(Y1)及び式(Y2)で示したようにアダマンタン環を有する基であると好ましく、これらが置換基を有する場合、その置換基はヒドロキシ基又はオキソ基が好ましい。すなわち、置換基を有する脂環式炭化水素基としては、ヒドロキシアダマンチル基及びオキソアダマンチル基がYとして特に好ましい。
【0059】
スルホン酸アニオンの好適例を具体的に示すと、式(b1−1−1)〜式(b1−1−1−9)のいずれかで表されるスルホン酸アニオンを挙げることができる。この式(b1−1−1)〜式(b1−1−1−9)のいずれかで表されるスルホン酸アニオンにおいて、Lb1は式(b1−1)で表される基が好ましい。以下、このようなスルホン酸アニオンを場合により、その式番号に応じて、「アニオン(b1−1−1)」などという。

【0060】
式(b1−1−1)〜式(b1−1−9)のいずれかで表されるスルホン酸アニオンの具体例は例えば、特開2010−204646号公報に記載されているスルホン酸アニオンを挙げることができる。
【0061】
酸発生剤(B1)中の有機カチオン(Z+)は例えば、オニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及びホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくは、以下の式(b2−1)〜式(b2−4)のいずれかで表される有機カチオン〔以下、場合により、各式の番号に応じて「カチオン(b2−1)」などという。〕である。

【0062】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、
b4、Rb5及びRb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30の炭化水素基を表し、この炭化水素基のうちでは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基及び炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が好ましい。前記アルキル基は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を有していてもよく、前記脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよく、前記芳香族炭化水素基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の飽和環状炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を有していてもよい。
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b9〜Rb11は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基であり、この脂肪族炭化水素基がアルキル基である場合、その炭素数は1〜12の範囲であると好ましく、この脂肪族炭化水素基が脂環式炭化水素基である場合、その炭素数は3〜18の範囲であると好ましく、4〜12の範囲であるとさらに好ましい。
b12は、炭素数1〜18の炭化水素基を表す。この炭化水素基のうち、芳香族炭化水素基は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基を有していてもよい。
b9とRb10との組み合わせ、及び/又は、Rb11とRb12との組み合わせは、それぞれ独立に、互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、これらの3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)は脂肪族環又は、該脂肪族環を構成するメチレン基が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっている環である。
【0063】
b13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13は同一でも異なっていてもよく、p2が2以上であるとき、複数のRb14はそれぞれ独立であり、s2が2以上であるとき、複数のRb15は同一でも異なっていてもよく、t2が2以上であるとき、複数のRb18は同一でも異なっていてもよい。
【0064】
b12のアルキルカルボニルオキシ基としては、すでに例示したアシル基と酸素原子とが結合したものである。
【0065】
b9〜Rb12のアルキル基の好適例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基などである。
b9〜Rb11の脂環式炭化水素基の好適例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキル基及びイソボルニル基などである。
b12の芳香族炭化水素基の好適例は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基などである。
b12の芳香族炭化水素基とアルキル基が結合したものは、典型的にはアラルキル基である。
b9とRb10との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11とRb12との組み合わせが結合して形成する環としては例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0066】
カチオン(b2−1)、カチオン(b2−2)、カチオン(b2−3)及びカチオン(b2−4)の具体例は、特開2010−204646号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0067】
例示した有機カチオンの中でも、式(b2−1)で表されるものが好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機カチオン〔以下、「カチオン(b2−1−1)」という。〕がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、R19、R20及びR21がいずれもメチル基である。)がさらに好ましい。

式(b2−1−1)中、
b19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
この脂肪族炭化水素基の炭素数は1〜12の範囲であると好ましく、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数4〜18の脂環式炭化水素基がより好ましく、さらには置換基として、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基を有していてもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19は同一でも異なっていてもよく、w2が2以上のとき、複数のRb20は同一でも異なっていてもよく、x2が2以上のとき、複数のRb21は同一でも異なっていてもよい。
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0068】
酸発生剤(B1)は、上述のスルホン酸アニオン及び有機カチオンの組合せである。上述のアニオンとカチオンとは任意に組み合わせることができる。中でも、好ましくは、アニオン(b1−1−1)〜アニオン(b1−1−9)のいずれかと、カチオン(b2−1−1)との組合せ、並びにアニオン(b1−1−3)〜(b1−1−5)のいずれかとカチオン(b2−3)との組合せが挙げられる。
【0069】
さらに好ましい酸発生剤(B1)を具体的に示す。このような酸発生剤(B1)は、以下の式(B1−1)〜式(B1−17)のいずれかで表されるものである。中でも、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)及び(B1−14)のいずれかで表されるものがより好ましい。
【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】
<樹脂(A)>
本レジスト組成物に含有される樹脂(A)は上述のとおり、アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る特性(以下、場合により「酸作用特性」という。)を有する。かかる樹脂(A)を含有することにより、本レジスト組成物は、後述する酸発生剤(B)から発生される酸の作用により、レジストパターンを製造することができる。なお、「酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る」とは、「酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。
【0075】
酸作用特性を有する樹脂(A)は、その分子内に酸に不安定な基(以下、場合により「酸不安定基」という。)を有する。このような樹脂(A)は、酸不安定基を有するモノマー(以下、このモノマーを場合により「モノマー(a1)」といい、該モノマー(a1)由来の構造単位を「構造単位(a1)」という。)を重合することによって製造できる。樹脂(A)を製造する際には、モノマー(a1)を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
<酸不安定基>
「酸不安定基」とは、脱離基を有し、酸と接触すると脱離基が脱離して、親水性基(例えば、ヒドロキシ基又はカルボキシ基)を与え得る基を意味する。酸不安定基としては、例えば、式(1)で表される基(酸不安定基(1))、式(2)で表される基(酸不安定基(2))などが挙げられる。

[式(1)中、
a1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、Ra1及びRa2は互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。*は結合手を表す。]

[式(2)中、
a1’及びRa2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、Ra3’は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、Ra2’及びRa3’は互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。該1価の炭化水素基及び該2価の炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子に置き換わってもよい。*は結合手を表す。]
【0077】
酸不安定基(1)のRa1〜Ra3のアルキル基及び脂環式炭化水素基は、その炭素数がそれぞれ前記の範囲において、すでに例示したものを含む。該脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは5〜16の範囲である。
【0078】
a1及びRa2が、互いに結合して環を形成する場合とは、−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)で表される基が、以下のいずれかの基となる場合である。Ra1及びRa2が結合して形成される環の炭素数は、好ましくは3〜12の範囲である。

【0079】
酸不安定基(1)としては、例えば、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3がアルキル基である基、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基)、2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が結合することで、アダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0080】
酸不安定基(2)のRa1’及びRa2’の炭化水素基は、例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基などである。これらの基もすでに例示したもののうち、炭素数20以下の範囲で同じものを含む。ただし、Ra1'及びRa2'のうち少なくとも1つは水素原子であると好ましい。
【0081】
酸不安定基(2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。

【0082】
酸不安定基[好ましくは、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)]を有するモノマー(a1)は、好ましくは、酸不安定基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーであり、より好ましくは酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0083】
酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーのうち、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するモノマー(a1)が好ましい。このようなモノマー(a1)を用いて得られる樹脂(A)は、脂環式炭化水素基のような嵩高い構造を有するものとなるので、該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物の解像度が一層良好となる傾向がある。
【0084】
<好適な構造単位(a1)>
かかる脂環式炭化水素基を有するモノマー(a1)を用いて得られる好適な樹脂(A)について、さらに詳述する。該樹脂(A)の中でも、式(a1−1)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(a1−1)」という。)又は式(a1−2)で表される構造単位(以下、場合により「構造単位(a1−2)」という。)を有する樹脂が好ましい。かかる樹脂(A)には、構造単位(a1−1)を単独種有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−2)を単独種で有していてもよく、複数種有していてもよく、構造単位(a1−1)と構造単位(a1−2)とを合わせて有していてもよい。

[式(a1−1)中、
a1は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基との結合手を表す。)で表される基を表す。
a4は、水素原子又はメチル基を表す。
a6は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
式(a1−2)中、
a2は、酸素原子又は−O−(CH2k1−CO−O−(k1は前記と同義である。)で表される基を表す。
a5は、水素原子又はメチル基を表す。
a7は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
n1は0〜10の整数を表す。]
【0085】
a1及びLa2は、好ましくは、酸素原子又は、k1が1〜4の整数である*−O−(CH2k1−CO−O−で表される基であり、より好ましくは酸素原子又は*−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7の脂肪族炭化水素基のうち、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、この炭素数の上限以下の範囲で、すでに例示したものと同じものを含む。Ra6及びRa7の脂肪族炭化水素基はそれぞれ独立に、好ましくは炭素数8以下のアルキル基又は炭素数8以下の脂環式炭化水素基であり、より好ましくは炭素数6以下のアルキル基又は炭素数6以下の脂環式炭化水素基である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0086】
構造単位(a1−1)を誘導し得るモノマー(a1)は、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたものなどが挙げられる。これらに由来する構造単位(a1−1)のうち、以下の式(a1−1−1)〜式(a1−1−8)のいずれかで表される構造単位(a1−1)が好ましく、式(a1−1−1)〜式(a1−1−3)のいずれかで表される構造単位(a1−1)がより好ましい。

【0087】

【0088】
一方、構造単位(a1−2)を誘導し得るモノマー(a1)としては、例えば、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチル−1−シクロヘプチル(メタ)アクリレート、1−メチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレート及び1−イソプロピル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0089】
構造単位(a1−2)としては、以下の式(a1−2−1)〜式(a1−2−6)のいずれかで表されるものが好ましい。これらのなかでも、式(a1−2−3)又は(a1−2−4)で表される構造単位(a1−2)がより好ましく、式(a1−2−3)で表される構造単位(a1−2)がさらに好ましい。

【0090】
樹脂(A)が構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を有する場合、これらの合計含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、通常、10〜95モル%の範囲であり、15〜90モル%の範囲が好ましく、20〜85モル%の範囲がより好ましく、20〜60モル%の範囲がさらに好ましい。また、構造単位(a1)として、アダマンチル基を有する構造単位(a1)(特に好ましくは、構造単位(a1−1))を有する場合には、樹脂(A)中の構造単位(a1)の合計(100モル%)に対して、アダマンチル基を有する構造単位(a1)が15モル%以上であることが好ましい。このような含有割合で、アダマンチル基を有する構造単位(a1)を有する樹脂(A)は、該樹脂(A)を含有するレジスト組成物から製造されるレジストパターンのドライエッチング耐性が良好となる傾向がある。なお、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の合計含有割合を、上述の範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対する、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマーの使用量を調整すればよい。
【0091】
以上、好適な構造単位(a1)である、構造単位(a1−1)及び構造単位(a1−2)について説明したが、樹脂(A)はこれらの以外の酸不安定基を有する構造単位(a1)〔他の構造単位(a1)〕を有していてもよい。この場合は、すでに述べた樹脂(A)中の構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の合計含有割合を、構造単位(a1−1)、構造単位(a1−2)及び/又は他の構造単位(a1)の合計含有割合に読み替えればよい。
【0092】
<酸安定構造単位>
樹脂(A)は、酸不安定基を有する構造単位(a1)に加え、酸不安定基を有さない構造単位(以下、場合により「酸安定構造単位」といい、該酸安定構造単位を誘導し得るモノマーを、「酸安定モノマー」という。)を有していると好ましい。該樹脂(A)中、酸安定構造単位は1種のみを有していてもよく、複数種を有していてもよい。樹脂(A)中の酸安定構造単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
樹脂(A)が構造単位(a1)と酸安定構造単位とを有する場合、当該酸安定構造単位は100モル%から酸安定構造単位の含有割合を引いたものである。なお、構造単位(a1)の含有割合と酸安定性構造単位の含有割合との比は、〔構造単位(a1)〕/〔酸安定構造単位〕で表して、好ましくは10〜80モル%/90〜20モル%であり、より好ましくは20〜60モル%/80〜40モル%である。このようにすると、樹脂(A)を含有する本レジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより一層良好となる傾向がある。
【0093】
次に、酸安定構造単位のうち、好ましいものを説明する。
酸安定構造単位は、ヒドロキシ基又はラクトン環を有する構造単位が好ましい。ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位(以下、「酸安定構造単位(a2)」という。)及び/又はラクトン環を有する酸安定構造単位(以下、「酸安定構造単位(a3)」という。)を有する樹脂(A)は、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜、又は塗布膜から得られる組成物層が基板との間に優れた密着性を発現し易くなり、この本レジスト組成物は良好な解像度で、レジストパターンを製造することができる。なお、ここでいう本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法に関しては後述する。まず、酸安定構造単位として好適な、酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)に関して具体例を挙げつつ説明する。
【0094】
<酸安定構造単位(a2)>
酸安定構造単位(a2)を樹脂(A)に導入する場合、当該樹脂(A)を含有する本レジスト組成物からレジストパターンを製造する際の露光源の種類によって、各々、好適な酸安定構造単位(a2)を選択することができる。すなわち、本レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)を露光源とする露光、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線を露光源とする露光に用いる場合には、酸安定構造単位(a2)として、フェノール性水酸基を有する酸安定構造単位(a2−0)を樹脂(A)に導入することが好ましい。短波長のArFエキシマレーザ(波長:193nm)を露光源とする露光を用いる場合は、酸安定構造単位(a2)として、後述の式(a2−1)で表される酸安定構造単位を樹脂(A)に導入することが好ましい。このように、樹脂(A)が有する酸安定構造単位(a2)は各々、レジストパターンを製造する際の露光源によって好ましいものを選ぶことができるが、樹脂(A)が有する酸安定構造単位(a2)は、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)1種のみを有していてもよく、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)2種以上を有していてもよく、或いは、露光源の種類に応じて好適な酸安定構造単位(a2)と、それ以外の酸安定構造単位(a2)とを組み合わせて有していてもよい。
【0095】
酸安定構造単位(a2)の具体例の1つは、以下の式(a2−1)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−1)」という。)である。

式(a2−1)中、
a3は、酸素原子又は−O−(CH2k2−CO−O−(k2は1〜7の整数を表す。)を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0096】
a3は、好ましくは、酸素原子又は、k2が1〜4の整数である−O−(CH2k2−CO−O−で表される基であり、より好ましくは、酸素原子又は、−O−CH2−CO−O−であり、さらに好ましくは酸素原子である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0097】
酸安定構造単位(a2−1)としては、例えば、以下のものが挙げられる。

【0098】
以上、例示した酸安定構造単位(a2−1)は、例えば、特開2010−204646号公報に記載された酸安定モノマーから誘導される。これらの中でも、式(a2−1−1)、式(a2−1−2)、式(a2−1−3)及び式(a2−1−4)のいずれかで表される酸安定構造単位(a2−1)がより好ましく、式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表される酸安定構造単位(a2−1)がさらに好ましい。
【0099】
樹脂(A)が、酸安定構造単位(a2−1)を有する場合、その含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位に対して、3〜40モル%の範囲が好ましく、5〜35モル%の範囲がより好ましく、5〜30モル%の範囲がさらに好ましい。
【0100】
次に、ヒドロキシ基を有する酸安定構造単位のうち、フェノール性水酸基を有する酸安定構造単位について説明する。該酸安定構造単位は、以下の式(a2−0)で表されるもの(以下、場合により「酸安定構造単位(a2−0)」という。)が好ましい。

式(a2−0)中、
a30は、ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は同一でも異なっていてもよい。
【0101】
a30の「ハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基」における「炭素数1〜6のアルキル基」の具体例は、炭素数がこの範囲において、すでに例示したものを含む。「ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基」とは、該炭素数1〜6のアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子に置換されたものである。なお、ハロゲン原子の具体例もすでに説明したとおりである。これらのうち、Ra30は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
a31のアルコキシ基の具体例は、炭素数1〜6の範囲で、すでに例示したものを含む。これらのうち、Ra31は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が特に好ましい。
【0102】
酸安定構造単位(a2−0)の中でも、以下の式(a2−0−1)及び式(a2−0−2)のいずれかで表されるものが好ましい。かかる構造単位を誘導し得るモノマー(a1)は、例えば、特開2010−204634号公報に記載されている。

【0103】
p−ヒドロキシスチレンやp−ヒドロキシ−α−メチルスチレンといった酸安定構造単位(a2−0)を誘導し得る酸安定モノマー[以下、場合により「酸安定モノマー(a2)」という。]を、樹脂(A)製造に用いることにより、式(a2−0−1)又は式(a2−0−2)で表される酸安定構造単位(a2−0)を、樹脂(A)に導入することができるが、該酸安定モノマー(a2)にあるフェノール性水酸基を例えば、アセチル基のような保護基で保護し、保護化酸安定モノマー(a2)とした後、この保護化酸安定モノマー(a2)を用いて樹脂(A)を製造することもできる。保護化酸安定モノマー(a2)に由来する構造単位を有する樹脂を脱保護処理して、保護基を脱離することにより、酸安定構造単位(a2−0)を有する樹脂(A)を製造できる。ただし、脱保護処理を実施する際には、他の構造単位(a1)を著しく損なわないようにして、該脱保護処理を実施する必要がある。
【0104】
樹脂(A)が、酸安定構造単位(a2−0)を有する場合、その含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位に対して、90モル%以下の範囲であればよく、好ましくは10〜85モル%の範囲であり、さらに好ましくは、15〜80モル%の範囲である。
【0105】
<酸安定構造単位(a3)>
酸安定構造単位(a3)が有するラクトン環は例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0106】
酸安定構造単位(a3)は好ましくは、以下の式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表されるものである。樹脂(A)は、これらのうち1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。なお、以下の説明においては、式(a3−1)で示されるものを「酸安定構造単位(a3−1)」といい、式(a3−2)で示されるものを「酸安定構造単位(a3−2)」といい、式(a3−3)で示されるものを「酸安定構造単位(a3−3)」という。

[式(a3−1)中、
a4は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a18は、水素原子又はメチル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a21は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、p1が2以上の場合、複数のRa21は同一でも異なっていてもよい。
式(a3−2)中、
a5は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
a22は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、q1が2以上の場合、複数のRa22は同一でも異なっていてもよい。
式(a3−3)中、
a6は、酸素原子又は−O−(CH2k3−CO−O−(k3は1〜7の整数を表す。)を表す。*はカルボニル基との結合手を表す。
a20は、水素原子又はメチル基を表す。
r1は、0〜3の整数を表す。
a23は、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、r1が2以上の場合、複数のRa23は同一でも異なっていてもよい。]
【0107】
式(a3−1)〜式(a3−3)において、La4〜La6は、式(a2−1)のLa3で説明したものと同じものが挙げられる。
a4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は、k3が1〜4の整数である*−O−(CH2k3−CO−O−で表される基が好ましく、酸素原子及び、*−O−CH2−CO−O−がより好ましく、さらに好ましくは酸素原子である。
a18〜Ra21は、好ましくはメチル基である。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1、q1及びr1は、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。なお、p1が2である場合、2つのRa21は互いに同一でも異なっていてもよく、q1が2である場合、2つのRa22は互いに同一でも異なっていてもよく、r1が2である場合、2つのRa23は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0108】
以下、酸安定構造単位(a3−1)、酸安定構造単位(a3−2)及び酸安定構造単位(a3−3)の各々の好適例を示す。
【0109】
酸安定構造単位(a3−1)の好適例は、以下の式(a3−1−1)、式(a3−1−2)、式(a3−1−3)及び式(a3−1−4)のいずれかで表されるものである。

【0110】
酸安定構造単位(a3−2)の好適例は、以下の式(a3−2−1)、式(a3−2−2)、式(a3−2−3)及び式(a3−2−4)のいずれかで表されるものである。

【0111】
酸安定構造単位(a3−3)の好適例は、以下の式(a3−3−1)、式(a3−3−2)、式(a3−3−3)及び式(a3−3−4)のいずれかで表されるものである。

【0112】
酸安定構造単位(a3−3)を誘導し得る酸安定モノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0113】
樹脂(A)が、酸安定構造単位(a3−3)を有する場合、その含有割合は、該樹脂(A)の全構造単位に対して、5〜50モル%の範囲が好ましく、10〜45モル%の範囲がより好ましく、15〜40モル%の範囲がさらに好ましい。
【0114】
以上、樹脂(A)が有する構造単位(a1)として好適な構造単位(a1−1)又は構造単位(a1−2)、酸安定構造単位として好適な酸安定構造単位(a2)及び酸安定構造単位(a3)について詳述したが、これら以外の構造単位を有していてもよく、かかる構造単位としては、当技術分野で周知の構造単位を挙げることができる。
【0115】
<樹脂(A)の製造方法>
樹脂(A)は、構造単位(a1)を誘導するモノマー(a1)を、さらに好ましくは、該モノマー(a1)と、酸安定構造単位を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものであり、より好ましくは、構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)を誘導するモノマー(a1)、酸安定構造単位(a2)及び/又は酸安定構造単位(a3)を誘導する酸安定モノマーとを共重合させたものである。
樹脂(A)は、構造単位(a1)として、アダマンチル基を有する構造単位(a1−1)を有することがさらに好ましい。酸安定構造単位(a2)としては、ヒドロキシアダマンチル基を有する構造単位(a2−1)を用いることが好ましい。酸安定構造単位(a3)としては、γ−ブチロラクトン環を有する酸安定構造単位(a3−1)及びγ−ブチロラクトン環とノルボルナン環との縮合環を有する酸安定構造単位(a3−2)の少なくとも1種を有することが好ましい。樹脂(A)は、上述したようなモノマーを公知の重合法(例えばラジカル重合法)に供し、重合(共重合)することにより製造できる。
【0116】
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは、2,500以上(より好ましくは3,000以上)、50,000以下(より好ましくは30,000以下)である。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものである。この分析の詳細な分析条件は、本願の実施例に記載する。
【0117】
<塩基性化合物(C)>
すでに述べたとおり、本レジスト組成物は塩基性化合物(C)を含有していてもよい。
【0118】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性のアミン、アンモニウム塩又はこれらの組み合わせであり、該アミン及び該アンモニウム塩はその分子内に硫黄原子を有さないものが好ましい。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、1級アミン、2級アミン及び3級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、好ましくは、式(C1)〜式(C8)のいずれかで表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0119】

[式(C1)中、
c1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0120】

[式(C1−1)中、
c2及びRc3は、前記と同義である。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0121】

[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、
c5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同義である。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0122】

[式(C5)及び式(C6)中、
c10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同義である。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同義である。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3が2以上であるとき、複数のRc14は互いに同一でも異なってもよい。p3が2以上であるとき、複数のRc15は互いに同一でも異なってもよい。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0123】

[式(C7)及び式(C8)中、
c18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同義である。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3が2以上であるとき、複数のRc18は互いに同一でも異なってもよい。r3が2以上であるとき、複数のRc19は互いに同一でも異なってもよい。s3が2以上であるとき、複数のRc20は互いに同一でも異なってもよい。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0124】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミンエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、及び4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンなどが挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、特に好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0125】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジンなどが挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリンなどが挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリンなどが挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール及び4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン及び4−メチルピリジンなどが挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン及び2,2’−ジピコリルアミン、ビピリジンなどが挙げられる。
【0126】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリンなどが挙げられる。
【0127】
<溶剤(D)>
すでに述べたとおり、本レジスト組成物は溶剤(D)を含有することが好ましい。
本レジスト組成物に含有される溶剤(D)は、塩(I)や樹脂(A)などの種類及びその量に応じた溶解性、さらに後述するレジストパターンの製造において、基板上に本レジスト組成物を塗布する際の塗布性が良好となるという点から適宜、最適なものを選ぶことができる。
【0128】
溶剤(D)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。溶剤(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0129】
本レジスト組成物は、塩(I)、酸発生剤(B)〔好ましくは、スルホン酸を発生する酸発生剤であり、さらに好ましくはフッ素含有酸発生剤である。〕及び樹脂(A)を含有する。溶剤(D)を含有することが好ましい。また、必要に応じて塩基性化合物(C)を含有することもある。さらに、本レジスト組成物には、その特性を著しく損なわない範囲で、塩(I)や塩基性化合物(C)以外の添加剤(レジスト組成物用添加剤)を含有していてもよい。このような添加剤を以下、「成分(F)」という。かかる成分(F)としては、当技術分野で広く用いられている添加剤を挙げることができ、例えば、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料などがある。
【0130】
<本レジスト組成物及びその調製方法>
続いて、塩(I)、酸発生剤(B)及び樹脂(A)を含有する本レジスト組成物の調製方法を説明する。
本レジスト組成物は、好ましくは溶剤(D)の存在下で、塩(I)、酸発生剤(B)及び樹脂(A)を混合することで、
又は、
塩(I)、酸発生剤(B)、樹脂(A)及び塩基性化合物(C)を混合することで調製することができる。また、必要に応じて、成分(F)を混合することもある。かかる混合において、その混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、樹脂(A)などの種類や樹脂(A)などの溶剤(D)に対する溶解度などに応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合などを用いることができる。
【0131】
本レジスト組成物における塩(I)の含有量は、酸発生剤(B)の含有量を基準として好ましい範囲が定められる。具体的には、塩(I)及び酸発生剤(B)の合計含有割合が、本レジスト組成物の固形分の質量に対して、好ましくは、0.1〜35質量%程度であり、より好ましく1〜30質量%程度であり、特に好ましく10〜25質量%程度である。なお、塩(I)と、酸発生剤(B)との含有量の比は、〔塩(I)〕/〔酸発生剤(B)〕で表して、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲が、より好ましく、15/85〜85/15の範囲がさらに好ましい。ただし、塩(I)が酸発生剤として働く場合、酸発生剤(B)を本レジスト組成物に含有しないこともある。なお、ここでいう「固形分」の質量とは、本レジスト組成物から溶剤(D)を除いた成分の合計を意味する。当該固形分は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0132】
本レジスト組成物における樹脂(A)の含有割合は、本レジスト組成物の固形分を基準に好ましい範囲が定められる。具体的は、該固形分の質量を基準として、樹脂(A)は80質量%以上であることが好ましい。
【0133】
本レジスト組成物に塩基性化合物(C)を含有させる場合、その含有割合は、本レジスト組成物の固形分に対して、好ましくは、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜3質量%程度であり、特に好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0134】
本レジスト組成物に溶剤(D)を含有させる場合、その含有割合は、本レジスト組成物の総質量に対して、90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上であり、例えば99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下である。
【0135】
本レジスト組成物に成分(F)を含有させる場合、該成分(F)の種類に応じて、適切な含有量を定めることができる。
【0136】
このように、塩(I)、樹脂(A)及び酸発生剤(B)、並びに必要に応じて用いられる、溶剤(D)、塩基性化合物(C)又は成分(F)の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.2μm程度のフィルターを用いてろ過などすることにより、本レジスト組成物は調製できる。
【0137】
<レジストパターンの製造方法>
本レジスト組成物を用いるレジストパターンの製造方法を具体的に示すと、
(1)本レジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程
を含むものが挙げられる。以下、ここに示す工程の各々を、「工程(1)」〜「工程(5)」のようにいう。
【0138】
工程(1)における本レジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーターなど、半導体の微細加工のレジスト組成物塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。かくして基板上に、本レジスト組成物からなる塗布膜が形成される。当該塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することで、該塗布膜の膜厚は調整可能であり、適切な予備実験などを行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。本レジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。なお、本レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄したり、反射防止膜を形成しておいたりすることもできる。この反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0139】
工程(2)においては、基板上に塗布された本レジスト組成物、すなわち塗布膜から溶剤〔溶剤(D)〕を除去する。このような溶剤除去は、例えば、ホットプレートなどの加熱装置を用いた加熱手段、又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、該塗布膜から溶剤(D)を蒸発させることにより行われる。加熱手段や減圧手段の条件は、本レジスト組成物に含有される溶剤(D)の種類などに応じて調整されるが、例えばホットプレートを用いる加熱手段(ホットプレート加熱)では、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にしておけばよい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、該減圧機の内部圧力を1〜1.0×10Pa程度にすればよい。かくして塗布膜から溶剤(D)を除去することにより、該基板上には組成物層が形成される。
【0140】
工程(3)は該組成物層を露光する工程であり、好ましくは、露光機を用いて該組成物層を露光するものである。この際には、微細加工を実施しようとする所望のパターンに応じたマスクを介して露光が行われる。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するものなど、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。
上述のとおり、マスクを介して露光することにより、該組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では該組成物層に含まれる酸発生剤(塩(I)及び/又は酸発生剤(B))が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸の作用により、樹脂(A)にある酸不安定基が脱保護反応を生じ、結果として露光部の組成物層にある樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けていないため、樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。かくして、露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違することとなる。
【0141】
工程(4)においては、露光部で生じうる脱保護基反応を、さらにその進行を促進するための加熱処理が行われる。かかる加熱処理は前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段などが採用される。なお、工程(4)におけるホットプレート加熱では、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がさらに好ましい。
【0142】
工程(5)は、加熱後の組成物層を現像する工程であり、好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像するものである。加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させることにより、露光部の組成物層を該アルカリ水溶液に溶解させ、未露光部の組成物層を基板上に残すことにより、当該基板上にレジストパターンが製造される。
ここで用いられるアルカリ水溶液は、「アルカリ現像液」と称されて、本技術分野で用いられるものを用いることができる。該アルカリ水溶液としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液や(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液などが挙げられる。
【0143】
以上により基板上に製造されたレジストパターンは、好ましくは超純水などでリンス処理を行い、さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去する。
【0144】
以上のような工程(1)〜工程(5)を含むレジストパターン製造方法によれば、本レジスト組成物は、優れたラインウィズスラフネス(LWR)を有するレジストパターンを製造することができる。
【0145】
<用途>
本レジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、EB用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物として好適である。
【実施例】
【0146】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例及び比較例中、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記ないかぎり質量基準である。
また重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型、カラムはTSKgel Multipore HXL−M3本、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
また、化合物の構造はNMR(GX−270型又はEX−270型;日本電子製)、質量分析(LC;Agilent製1100型、MASS;Agilent製LC/MSD型又はLC/MSD TOF型)で確認した。
【0147】
実施例1:式(I−1)で表される塩(I)の合成

式(I−1−a)で表される化合物4.0部とメタノール20部とを混合した溶液に、酸化銀(I)2.7部を加え、室温(約23℃程度)下、18時間攪拌した。反応混合溶液に、ヨウ化メチル3.38部を加えて、さらに室温下、18時間攪拌した。反応混合液を濾過し、得られたろ液を濃縮した。得られた残渣を、メタノール及び酢酸エチルの混合溶液により再結晶を行い、式(I−1)で表される塩(I)2.0部を得た。
【0148】
H−NMR(DMSO−d):δ=8.12−8.02(1H,m),7.83−7.74(1H,m),7.71−7.59(2H,m),3.10(6H,s)
【0149】
実施例2:式(I−19)で表される塩(I)の合成

式(I−19−a)で表される化合物10.0部とメタノール50部とを混合した溶液に、酸化銀(I)6.9部を加え、室温(約23℃程度)下、18時間攪拌した。反応混合溶液に、ヨウ化ブチル16.4部を加えて、さらに室温下、18時間攪拌した。反応混合液を濾過し、得られたろ液を濃縮した。得られた残渣を、メタノール及び酢酸エチルの混合溶液により再結晶を行い、式(I−19)で表される塩(I)4.1部を得た。
【0150】
H−NMR(DMSO−d):δ=8.10−8.01(1H,m),7.84−7.74(1H,m),7.72−7.55(2H,m),3.54(2H,t,J=7.75Hz),3.08(3H,s),1.78−1.26(4H,m),0.87(3H,t,J=7.09Hz)
【0151】
合成例:樹脂の合成
樹脂の合成において使用した化合物(モノマー)を下記に示す。

以下、これらのモノマーを、その式番号に応じて、「モノマー(M−2)」などという。
【0152】
合成例1:樹脂A1の合成
モノマー(M−5)18.00部、モノマー(M−4)3.85部、モノマー(M−2)2.78部、及びモノマー(M−3)16.34部を反応器に仕込み(モル比; モノマー(M−5):モノマー(M−4):モノマー(M−2):モノマー(M−3)=35:10:6:49)、全モノマー量の1.5重量倍のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて溶液とした。そこに開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対してそれぞれ0.90mol%、2.70mol%添加し、75℃で約5時間加熱した。その後、得られた反応混合溶液を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。かくして得られた樹脂を再び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量が約8.4×10の樹脂を収率72%で得た。この樹脂は、以下の各構造単位を有するものであり、この樹脂を樹脂A1とする。

【0153】
実施例3,4及び比較例1
表1に示す各成分を混合して溶解することにより得られた混合物を孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過し、レジスト組成物を調製した。表中「−」は含有量が0であることを表す。
【0154】
【表1】

【0155】
<樹脂(A)>
A1:樹脂A1
<酸発生剤(B)>
B1:式(B1−3)で表される酸発生剤

<塩(I)>
I−1:式(I−1)で表される塩
<塩基性化合物:クエンチャー>
C1:2,6−ジイソプロピルアニリン
<溶剤(D)>
D1:
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 130.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 200.0部
γ−ブチロラクトン 20.0部
【0156】
12インチのシリコン製ウェハ上に、有機反射防止膜用組成物[ARC−29SR−309;日産化学(株)製]を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ75nmの有機反射防止膜を形成した。
次いで、有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥後の膜厚が80nmとなるようにスピンコートした。
得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、100℃で60秒間プリベーク(PB)した。得られたウェハに、液浸露光用ArFエキシマスキャナー[XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、Dipole35、σout/in=0.97/0.77、Y偏向]を用いて、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを液浸露光した。
露光後、ホットプレート上にて、80度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0157】
各レジスト膜において、42nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量となる露光量を実効感度とした。
【0158】
ラインウィズスラフネス評価(LWR):リソグラフィプロセス後のレジストパターンの線幅を走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの線幅のばらつき(3σ)が2.1nm未満であるものを”g”(good)、2.1nm以上のものを”b”(bad)とした。結果を表2に示す。
【0159】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の塩を含むレジスト組成物を用いれば、優れたラインウィズスラフネス(LWR)を有するレジストパターンを製造できる。そのため、本発明の塩及び該塩を含有するレジスト組成物は、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、3級硫黄原子及びカルボキシレート基をそれぞれ1つずつ有する塩。
【請求項2】
式(I)で表される請求項1記載の塩。

[式(I)中、
及びAは、それぞれ独立に炭素数1〜18の1価の有機基であり、
は炭素数1〜18の2価の有機基である。A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよく、A及びAが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子とともに複素環を形成していてもよい。]
【請求項3】
前記式(I)のA及びAが、それぞれ独立に、以下の置換基群P1から選ばれる基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は、以下の置換基群P2から選ばれる基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基である請求項2記載の塩。
〔置換基群P1〕
ヒドロキシ基及び炭素数6〜12のアリール基
〔置換基群P2〕
ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基
【請求項4】
前記式(I)のA及びAが、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基である請求項2記載の塩。
【請求項5】
前記式(I)のAが、芳香環を含む2価の有機基である請求項2記載の塩。
【請求項6】
前記式(I)のAが、2価の芳香族炭化水素基である請求項2記載の塩。
【請求項7】
レジスト組成物用添加剤として用いられる請求項1〜6のいずれか記載の塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の塩と、
アルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に溶解し得る樹脂と、
酸発生剤と
を含有するレジスト組成物。
【請求項9】
(1)請求項8記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2013−6827(P2013−6827A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112178(P2012−112178)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】