塩、酸発生剤、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法
【課題】優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを得ることができるレジスト組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】式(I)で表される塩、この塩を含有する酸発生剤及びこの酸発生剤と樹脂とを含有するレジスト組成物。
[式中、Q1及びQ2は、それぞれフッ素原子又はペルフルオロアルキル基;L1は2価の飽和炭化水素基を表し、該基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい;L2は、単結合又はアルカンジイル基を表し、該基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい;Yは、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を表し、該基に含まれるメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい;Z+は有機対イオンを表す。]
【解決手段】式(I)で表される塩、この塩を含有する酸発生剤及びこの酸発生剤と樹脂とを含有するレジスト組成物。
[式中、Q1及びQ2は、それぞれフッ素原子又はペルフルオロアルキル基;L1は2価の飽和炭化水素基を表し、該基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい;L2は、単結合又はアルカンジイル基を表し、該基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい;Yは、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を表し、該基に含まれるメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい;Z+は有機対イオンを表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる酸発生剤用の塩、酸発生剤、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸発生剤用の塩として、下記式で表される塩を含有するレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から知られる上記酸発生剤を含むレジスト組成物では、得られるレジストパターンのラインエッジラフネス(LER)が必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕式(I)で表される塩。
[式(I)中、
Q1及びQ2は、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
L1は、2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
L2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Z+は、有機対イオンを表す。]
〔2〕前記L1が、炭素数1〜6のアルカンジイル基又は*−CO−O−Lb2−(Lb2は、炭素数1〜15の飽和炭化水素基を表す。)である前記〔1〕記載の塩。
〔3〕前記L1が、メチレン基、*−CO−O−CH2−CH2−**又は以下で表される2価の基(*は、−C(Q1)(Q2)−との結合手、**は酸素原子との結合手を表す。)である〔1〕又は〔2〕記載の塩。
〔4〕前記L2が、単結合又は炭素数1〜6のメチレン基である前記〔1〕〜前記〔3〕のいずれか記載の塩。
〔5〕前記Z+が、アリールスルホニウムカチオンである前記〔1〕〜前記〔4〕のいずれか記載の塩。
〔6〕前記〔1〕〜前記〔5〕のいずれか記載の塩を含有する酸発生剤。
〔7〕前記〔6〕記載の酸発生剤と樹脂とを含有し、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
〔8〕さらに塩基性化合物を含有する前記〔7〕記載のレジスト組成物。
〔9〕(1)前記〔7〕又は前記〔8〕記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塩によれば、該塩を含むレジスト組成物を用いて、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〈式(I)で表される塩〉
本発明の塩は、式(I)で表される。(以下「塩(I)」という場合がある)
[式(I)中、
Q1及びQ2は、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
L1は、2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
L2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Z+は、有機対イオンを表す。]
なお、以下の説明において、塩(I)のうち、正電荷を有するZ+で示される有機カチオンを除去してなる負電荷を有するものを「スルホン酸アニオン」ということがある。
【0008】
Q1及びQ2で表されるペルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
Q1及びQ2は、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基又はフッ素原子であることが好ましく、ともにフッ素原子であることがより好ましい。
【0009】
L1は、2価の飽和炭化水素基としては、直鎖状アルカンジイル基、分岐状アルカンジイル基、単環式又は多環式の2価の脂環式炭化水素基が挙げられ、これらの基のうち2種以上を組み合わせたものでもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基及びプロパン−2,2−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;
直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等、特に、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい)の側鎖を有したもの、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基等の分岐状アルカンジイル基;
シクロブタン−1,3−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、1−メチルシクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロアルキレン基である単環式の2価の脂環式炭化水素基;
ノルボルナン−2,3−ジイル基、ノルボルナン−1,4−ジイル基、ノルボルナン−2,5−ジイル基、アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,5−ジイル基、アダマンタン−2,6−ジイル基等の多環式の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0010】
L1で表される2価の飽和炭化水素基を構成しているメチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、以下の式(L1−1)、式(L1−2)、式(L1−3)及び式(L1−4)のいずれかで示される基が挙げられ、中でも、式(L1−1)で示される基が好ましい。なお、式(L1−1)〜式(L1−4)は、その左右を式(I)に合わせて記載しており、左側でC(Q1)(Q2)−と結合し、右側で酸素原子と結合する。以下の式(L1−1)〜式(L1−4)の具体例も同様である。
【0011】
式(L1−1)〜式(L1−4)中、
L1b1は、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
L1b2及びL1b3は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基を表す。但しL1b2及びL1b3の合計炭素数の上限は13である。
L1b4及びL1b5は、それぞれ独立に、炭素数1〜13の2価の飽和炭化水素基を表す。但しL1b4及びL1b5の合計炭素数の上限は14である。
L1b6及びL1b7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。但しL1b6及びL1b7の合計炭素数の上限は16である。
【0012】
式(L1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0013】
式(L1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0014】
式(L1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0015】
式(L1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0016】
中でも、L1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基又は式(L1−1)で表される2価の基が好ましく、メチレン基、*−CO−O−CH2−CH2−**又は以下で表される2価の基(*は、−C(Q1)(Q2)−との結合手、**は酸素原子との結合手を表す)がさらにより好ましい。
【0017】
L2におけるアルカンジイル基としては、直鎖状アルカンジイル又は分岐状アルカンジイルが挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;
直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基)の側鎖を有したもの、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、1−メチルブタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基等の分岐状アルカンジイル基が挙げられる。
中でも、L2は、単結合又はメチレン基が好ましい。
【0018】
Yにおける脂環式炭化水素基としては、単環式及び多環式のいずれでもよい。また、環原子としてのみ炭素原子を有する脂環式炭化水素基に留まらず、環原子の炭素原子に炭素数1〜12のアルキル基が結合してなる基であってもよい。
単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及びメチルノルボルニル基、並びに下記に示す基などが挙げられる。
なかでも、炭素数3〜12のシクロアルキル基が好ましい。
【0019】
この脂環式炭化水素基は任意に置換基を有する。「置換基を有する脂環式炭化水素基」とは、該脂環式炭化水素基にある水素原子が、置換基で置換されている基を意味する。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子(但し、フッ素原子を除く)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基又は−(CH2)j2−O−CO−Ri1で表される基(式中、Ri1は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)等が挙げられる。この脂環式炭化水素基が有する置換基である芳香族炭化水素基及びアラルキル基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基を有していてもよい。
【0020】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基及びドデシルオキシ基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、トリチル、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などのアルキル基が挙げられる。
【0021】
脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基が酸素原子、スルホニル基(−SO2−)又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、環状エーテル構造(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基の1つ又は2つが酸素原子に置き換わった基)、環状ケトン基(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基の1つ又は2つがカルボニル基に置き換わった基)、スルトン環基(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びスルホニル基に置き換わった基)及びラクトン環基(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びカルボニル基に置き換わった基)等が挙げられる。
【0022】
Yの脂環式炭化水素基としては、例えば、以下の式(Y1)〜式(Y29)が好ましい。*はL2との結合手を表す。
なかでも、式(Y1)〜式(Y19)、式(Y27)〜式(Y29)のいずれかで表される基がより好ましく、式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)、式(Y19)、式(Y27)、式(Y28)又は式(Y29)で表される基がさらに好ましく、式(Y11)又は式(Y14)で表される基が特に好ましい。
【0023】
Yの置換基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0024】
Yは、好ましくは置換基を有していてもよいアダマンチル基であり、より好ましくはアダマンチル基、オキソアダマンチル基又はヒドロキシアダマンチル基である。
【0025】
塩(I)を構成するスルホン酸アニオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0026】
【0027】
Z+で示される有機対イオンとしては、例えば、有機オニウムカチオン、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及び有機ホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、有機スルホニウムカチオン及び有機ヨードニウムカチオンが好ましく、アリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0028】
さらに好ましくは、以下の式(b2−1)〜式(b2−4)」のいずれかで表される有機カチオン〔以下、各式の番号に応じて、「カチオン(b2−1)」等ということがある〕である。
【0029】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、
Rb4、Rb5及びRb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。Rb4、Rb5及びRb6から選ばれる2つが一緒になって、イオウ原子を含む環を形成してもよい。
【0030】
Rb4、Rb5及びRb6から選ばれる2つが一緒になって形成してもよい環としては、単環式、多環式、芳香族性、非芳香族性、飽和及び不飽和のいずれの環であってもよく、イオウ原子を1以上含むものであれば、さらに、1以上のイオウ原子及び/又は1以上の酸素原子を含んでいてもよい。該環としては、炭素数3〜18の環が好ましく、炭素数4〜13の環がより好ましい。
【0031】
Rb7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。m2が2以上である場合、複数のRb7は互いに同一であっても異なってもよく、n2が2以上である場合、複数のRb8は互いに同一であっても異なってもよい。
【0032】
Rb9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表すか、あるいは、Rb9とRb10は、それらが結合する硫黄原子とともに互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよい。
Rb11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
Rb12は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
Rb11とRb12は、それらが結合するメチン基及びカルボニル基それぞれの炭素原子とともに3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよい。
【0033】
Rb13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
Lb11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13は互いに同一であっても異なってもよく、p2が2以上であるとき、複数のRb14は互いに同一であっても異なってもよく、s2が2以上であるとき、複数のRb15は互いに同一であっても異なってもよく、t2が2以上であるとき、複数のRb18は互いに同一であっても異なってもよい。
【0034】
アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基及び2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0035】
好ましいアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基である。
好ましい脂環式炭化水素基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基である。
好ましい芳香族炭化水素基は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基である。
水素原子が芳香族炭化水素基で置換されたアルキル基としては、例えばベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
特に、Rb9〜Rb11のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12であり、脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜18、より好ましくは炭素数4〜12である。
Rb9とRb10とが互いに結合して、それらが結合する硫黄原子とともに形成する環としては、例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環等が挙げられる。
Rb11とRb12とが互いに結合して、それらが結合するメチン基及びカルボニル基それぞれの炭素原子とともに形成する環としては、例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環等が挙げられる。
【0036】
式(b2−1)〜式(b2−4)でそれぞれ表される有機対イオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたカチオンが挙げられる。
【0037】
かかる有機カチオンの中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機カチオン〔以下、「カチオン(b2−1−1)」という場合がある〕がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、Rb19、Rb20及びRb21がいずれもメチル基である。)がさらに好ましい。
式(b2−1−1)中、
Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、Rb19、Rb20及びRb21から選ばれる2つが一緒になって単結合、−O−又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表し、イオウ原子を含む環を形成してもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19は互いに同一でも異なってもよく、w2が2以上のとき、複数のRb20は互いに同一でも異なってもよく、x2が2以上のとき、複数のRb21は互いに同一でも異なってもよい。
【0038】
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0039】
有機対イオンであるカチオン(b2−1−1)としては、以下ものが挙げられる。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
カチオン(b2−1−1)のうち、イオウ原子を含む環が形成されたカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0044】
カチオン(b2−1)のうち、イオウ原子を含む環が形成されたカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0045】
有機対イオンであるカチオン(b2−2)としては、以下ものが挙げられる。
【0046】
有機対イオンであるカチオン(b2−3)としては、以下ものが挙げられる。
【0047】
塩(I)は、スルホン酸アニオン及び有機対イオンの組合せである。これらスルホン酸アニオンと有機対イオンとは任意に組み合わせることができる。
塩(I)としては、例えば、表1〜2記載の塩が挙げられる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
なかでも以下に示す塩が好ましい。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
塩(I)は、式(I−c)で表される塩と式(I−d)で表される化合物とを、触媒存在下、溶媒中で反応させることにより、製造することができる。触媒としては、炭酸カリウムなどが挙げられる。溶媒としては、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
(式中、Q1、Q2、L1、L2、Y及びZ+は、それぞれ上記と同じ意味を表す。)
式(I−d)で表される化合物としては、3−ヒドロキシメチルアダマンタン−1−オールなどが挙げられる。
【0062】
塩(I−c)は、式(I−a)で表される塩と式(I−b)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより、製造することができる。溶媒としては、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0063】
式(I−a)で表される塩は、例えば、特開2006−257078号公報に記載された方法で合成することができる。
【0064】
〈酸発生剤〉
本発明の酸発生剤は、塩(I)を含有する。塩(I)は、酸発生剤として使用する時、単独でも複数種を同時に用いてもよい。また、本発明の酸発生剤は、さらに、塩(I)以外の、酸発生剤として公知の塩(例えば、塩(I)に含まれる有機対イオン及び公知のアニオン(塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン以外のアニオン)からなる塩並びに塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン及び公知のカチオン(塩(I)に含まれる有機対イオン以外のカチオン)からなる塩等)を含んでいてもよい。以下、本発明の酸発生剤に含まれる塩(I)以外の塩を「酸発生剤(B)」という場合がある。
【0065】
酸発生剤(B)としては、例えば、それぞれ式(B1−1)〜式(B1−17)で表される塩が挙げられる。中でもトリフェニルスルホニウムカチオン、トリトリルスルホニウムカチオンを含む塩が好ましく、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)及び式(B1−14)でそれぞれ表される塩がさらに好ましい。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
本発明の酸発生剤が、塩(I)と酸発生剤(B)とを含む場合、塩(I)の含有量は、酸発生剤全量100質量部に対して、好ましくは10質量部以上(より好ましくは30質量部以上)、好ましくは90質量部以下(より好ましくは70質量部以下)である。
酸発生剤が、式(I)の塩と酸発生剤(B)とを含有する場合、式(I)の塩と酸発生剤(B)との含有量の比(質量)は、例えば、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85である。
【0071】
〈レジスト組成物〉
本発明のレジスト組成物は、上述した酸発生剤と樹脂とを含む。
樹脂は、酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂(以下、「樹脂(A)」という)である。
レジスト組成物において、酸発生剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(より好ましくは3質量部以上)、好ましくは40質量部以下(より好ましくは35質量部以下)である。
【0072】
〈樹脂(以下、「樹脂(A)」という場合がある)〉
樹脂(A)は、酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸との作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂である。「酸の作用によりアルカリ可溶となる」とは、酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となることを意味する。
このような樹脂(A)は、分子内にある親水性基の一部又は全部が、酸との接触により脱離し得る保護基により保護されているものであり、樹脂(A)が酸と接触すると保護基が脱離して、樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶な樹脂に転化する。保護基により保護されている親水性基を、以下「酸不安定基」という場合がある。親水性基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基がより好ましい。
【0073】
<モノマー(a1)>
樹脂(A)は、酸不安定基を有するモノマー(以下、「モノマー(a1)」という場合がある)を重合することによって製造できる。かかる重合の際には、モノマー(a1)を1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
親水性基がカルボキシ基である場合の酸不安定基は、該カルボキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、オキシ基と結合する該有機残基の炭素原子が第三級炭素原子である基(すなわち第三アルコールのエステル)が挙げられる。このような酸不安定基のうち、好ましい酸不安定基は、例えば、以下の式(1)で表されるもの(以下、場合により「酸不安定基(1)」という場合がある)である。
式(1)中、
Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、Ra1及びRa2は互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Ra1及びRa2が互いに結合して形成される環、アルキル基又は脂環式炭化水素基がメチレン基を有する場合、そのメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0075】
式(1)においては、Ra1〜Ra3の脂環式炭化水素基は、炭素数3〜16が好ましい。
−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)におけるRa1及びRa2が互いに結合して形成する環としては、下記に示すものが挙げられる。このような環は、好ましくは炭素数3〜12である。
【0076】
酸不安定基(1)の具体例は、
1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3が全てアルキル基である基、このアルキル基のうち、1つはtert−ブトキシカルボニル基であると好ましい。)、
2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともにアダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び
1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0077】
親水性基がヒドロキシ基である場合の酸不安定基は、ヒドロキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、アセタール構造又はケタール構造を含むものとなった基が挙げられる。このような酸不安定基のうち、好ましい酸不安定基は、例えば、以下の式(2)で表されるもの(以下、場合により「酸不安定基(2)」という)である。
式(2)中、
Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rb3は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、或いは、Rb2及びRb3は互いに結合して、それらが各々結合する炭素原子及び酸素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Rb2及びRb3は互いに結合して形成される環又は炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0078】
式(2)においては、Rb1及びRb2のうち、少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
酸不安定基(2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。
【0079】
酸不安定基を有するモノマー(a1)は、好ましくは、酸不安定基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー、より好ましくは酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0080】
モノマー(a1)は、好ましくは、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)と、炭素−炭素二重結合とを有するモノマーであり、より好ましくは酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0081】
酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーの中でも、酸不安定基(1)が、炭素数5〜20の脂肪族環を有するものが好ましい。このような立体的に嵩高い脂肪族環を有するモノマー(a1)を重合して得られる樹脂(A)を含むレジスト組成物を用いてレジストパターンを製造すれば、より良好なラインエッジラフネス(LER)でレジストパターンを製造することができる。
【0082】
脂肪族環を部分構造とする酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位の中でも、式(a1−1)で表される構造単位又は式(a1−2)で表される構造単位が好ましい。以下、式(a1−1)で表される構造単位を「構造単位(a1−1)」、式(a1−2)で表される構造単位を「構造単位(a1−2)」、これら構造単位を誘導するモノマーを、それぞれ「モノマー(a1−1)」、「モノマー(a1−2)」という場合がある。樹脂(A)を製造する際、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(a1−1)及び式(a1−2)中、
La1及びLa2は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2)k1−CO−O−で表される基を表す。ここで、k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。
Ra4及びRa5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ra6及びRa7は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表し、n1は0〜10の整数を表す。
n1’は0〜3の整数を表す。
なお、式(a1−1)においてアダマンタン環にある「−(CH3)m1」の表記は、アダマンタン環を構成しているメチレン基及び/又はメチン基の水素原子が、メチル基に置き換わっており、アダマンタン環に結合しているメチル基の個数がm1個であることを意味する。
【0083】
式(a1−1)及び式(a1−2)においては、La1及びLa2は、好ましくは、酸素原子又は*−O−(CH2)f1−CO−O−(但し、f1は1〜4の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。)で表される基であり、より好ましくは酸素原子である。f1は、より好ましくは1である。
Ra4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
Ra6及びRa7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が好ましい。これらのアルキル基は、好ましくは炭素数6以下の基である。Ra6又はRa7の脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数8以下であり、より好ましくは6以下である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1’は好ましくは0又は1である。
*は、アダマンタン環又はシクロヘキサン環との結合手を表す。
【0084】
式(a1−1)で表されるモノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a1−1−1)〜(a1−1−8)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−1−1)〜(a1−1−4)で表されるモノマーがより好ましい。
【0085】
式(a1−2)で表されるモノマーとしては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート等が挙げられる。下式(a1−2−1)〜(a1−2−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−2−3)〜(a1−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、下式(a1−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0086】
樹脂(A)をモノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)を用いて製造する場合、得られる樹脂(A)の全構造単位を100モル%としたとき、これらモノマーに由来する構造単位の含有量の合計は、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲が一層好ましい。構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の含有量の合計を、このような範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対するモノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)の使用量を調整すればよい。
【0087】
さらに、酸不安定基(1)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとして例えば、以下の式(a1−3)で表されるノルボルネン環を有するモノマー(以下、「モノマー(a1−3)」という場合がある)が挙げられる。
Ra9は、水素原子、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシ基、シアノ基又は−COORa13を表す。
Ra13は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜8のアルキル基と炭素数3〜20の脂環式炭化水素基とからなる基を表し、アルキル基及び脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、アルキル基及び脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Ra10〜Ra12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、Ra10及びRa11が互いに結合して、これらが結合している炭素原子とともに、炭素数3〜20の環を形成しており、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基等で置換されていてもよく、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
【0088】
ヒドロキシ基を有していてもよいアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0089】
式(a1−3)においては、Ra9は、好ましくは水素原子である。
Ra10及びRa11が互いに結合して形成される環は、好ましくは脂肪族環であり、具体的には、シクロへキサン環及びアダマンタン環等がより好ましい。
【0090】
モノマー(a1−3)としては、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−tert−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル及び5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチル等が挙げられる。
【0091】
モノマー(a1−3)を用いて樹脂(A)を製造した場合、この樹脂(A)にはモノマー(a1−3)に由来する、立体的に嵩高い構造単位が含まれる。この構造単位を有する樹脂(A)を含むレジスト組成物を用いてレジストパターンを製造することにより、より良好なラインエッジラフネス(LER)でレジストパターンを得ることができる。さらにモノマー(a1−3)を用いることにより、樹脂(A)の主鎖に剛直なノルボルナン環を導入できるため、樹脂(A)を含むレジスト組成物から得られるレジストパターンは、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンが得られ易いという傾向がある。
【0092】
良好なラインエッジラフネス(LER)でレジストパターンを製造でき、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンが得られ易いという観点から、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対する、モノマー(a1−3)に由来する構造単位の含有量は10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0093】
酸不安定基(2)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとしては、以下の式(a1−4)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−4)」という場合がある)を用いてもよい。
[式(a1−4)中、
Ra32は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Ra33は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
laは0〜4の整数を表す。laが2以上である場合、複数のRa33は互いに同一であっても異なってもよい。
Ra34及びRa35はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
Xa2は、単結合又は2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基又は炭素数2〜4のアシルオキシ基で置換されていてもよく、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基(−SO2−)又は−N(Rc)−で表される基で置き換わっていてもよい。ここで、Rcは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Ya3は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基の各々に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基又は炭素数2〜4のアシルオキシ基で置換されていてもよい。]
【0094】
ハロゲン原子を有してもよいアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基及びトリヨードメチル基などが挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等が挙げられる。
【0095】
式(a1−4)においては、アルキル基としては、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基が好ましい。脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基等が好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基及び2−メチル−6−エチルフェニル等が好ましい。
【0096】
特に、Ra32及びRa33としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra33としては、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
Ra34及びRa35としては、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基等が好ましい。
Xa2及びYa3の置換基としては、好ましくはヒドロキシ基である。
【0097】
モノマー(a1−4)としては、以下のモノマーが挙げられる。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
樹脂(A)が、モノマー(a1−4)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0104】
樹脂(A)の製造には、さらに、酸不安定基(1)と炭素−炭素二重結合とを有する他の構造単位を誘導するモノマーを用いてもよい。
このようなその他の酸不安定モノマーとしては、例えば、以下のモノマーが挙げられる。
【0105】
樹脂(A)が、その他の酸不安定モノマーに由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、好ましくは10〜95モル%の範囲であり、より好ましくは15〜90モル%であり、さらに好ましくは20〜85モル%である。
【0106】
さらに、酸不安定基(2)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとしては、式(a1−5)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−5)」という場合がある)が挙げられる。
式(a1−5)中、
R31は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
L3〜L5は、酸素原子又は硫黄原子又は*−O−(CH2)k1−CO−O−で表される基を表す。ここで、k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。
Z1は、単結合又は*−(CH2)n4−O−又は*−(CH2)n4−CO−O−(各n4は1〜4の整数であり、1が好ましい。各*は、L5との結合手を表す)である。
s1及びs1’は、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。
【0107】
式(a1−5)においては、R31は、好ましくは、水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基であり、より好ましくは水素原子及びメチル基である。
L3及びL4は、一方が酸素原子、他方が硫黄原子であることが好ましい。
L5は、酸素原子又は硫黄原子であり、酸素原子が好ましい。
s1は、1が好ましい。
s1’は、0〜2の整数が好ましい。
Z1は、単結合又は−CH2−CO−O−が好ましい。
【0108】
モノマー(a1−5)としては、以下のモノマーが挙げられる。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
樹脂(A)が、モノマー(a1−5)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜95モル%の範囲が好ましく、3〜90モル%の範囲がより好ましく、5〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0115】
樹脂(A)の製造において、アダマンチル基を有するモノマー(特に、モノマー(a1−1))をモノマー(a1)として用いる場合、モノマー(a1)の使用量の総量(100モル%)に対して、アダマンチル基を有するモノマーの使用量を15モル%以上とすることが好ましい。これにより、樹脂(A)を含むレジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより良好になる傾向がある。
【0116】
<酸安定モノマー>
本発明のレジスト組成物に用いる樹脂(A)としては、モノマー(a1)に加えて、酸不安定基を有さないモノマー(以下「酸安定モノマー」という場合がある)を用いて得られる共重合体であることが好ましい。また、レジスト組成物に用いる添加物として、酸安定モノマーから得られる樹脂を用いてもよい。
【0117】
酸安定モノマーを併用して樹脂(A)を製造する場合、モノマー(a1)の使用量を基準にして、酸安定性モノマーの使用量を定めるとよい。モノマー(a1)の使用量と酸安定モノマーの使用量の割合は、〔モノマー(a1)〕/〔酸安定モノマー〕で表して、好ましくは10〜80モル%/90〜20モル%であり、より好ましくは20〜60モル%/80〜40モル%である。
【0118】
酸安定モノマーとしては、ヒドロキシ基又はラクトン環を分子内に有するものが挙げられる。
ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a2)」という場合がある)及び/又はラクトン環を含有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a3)」という場合がある)に由来する構造単位を有する樹脂(A)は、樹脂(A)を含むレジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜又は塗布膜から得られる組成物層と基板との間の密着性に優れる。また、このレジスト組成物は良好なラインエッジラフネス(LER)で、レジストパターンを製造することができる。
【0119】
<酸安定モノマー(a2)>
酸安定モノマー(a2)を樹脂(A)の製造に用いる場合、樹脂(A)を含むレジスト組成物からレジストパターンを得る際の露光源の種類によって、各々、好適な酸安定モノマー(a2)を1種又は2種以上用いることができる。
例えば、レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ露光(波長:248nm)、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線露光に用いる場合には、酸安定モノマー(a2)として、フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2−0)〔例えば、ヒドロキシスチレン類等〕を樹脂(A)の製造に用いることが好ましい。
一方、短波長のArFエキシマレーザ露光(波長:193nm)を用いる場合は、酸安定モノマー(a2)として、後述の式(a2−1)で表される酸安定モノマーを樹脂(A)の製造に用いることが好ましい。
【0120】
酸安定モノマー(a2)としては、式(a2−0)で表されるp−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマー(以下、「酸安定モノマー(a2−0)」という場合がある)が挙げられる。
[式(a2−0)中、
Ra30は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Ra31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は互いに同一であっても異なってもよい。]
【0121】
式(a2−0)においては、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0122】
このような酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する共重合樹脂は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン及び又は他の重合性モノマーとをラジカル重合した後、塩基によって脱アセチルすることによって得ることができる。
【0123】
酸安定モノマー(a2−0)としては、例えば、特開2010−204634号公報に記載されたモノマーが挙げられる。なかでも、式(a2−0−1)及び(a2−0−2)で表されるモノマーが好ましい。樹脂(A)を製造する際には、これらに含まれるフェノール性ヒドロキシ基が適当な保護基で保護したものを用いてもよい。
【0124】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜95モル%の範囲が好ましく、10〜80モル%の範囲がより好ましく、15〜80モル%の範囲がさらに好ましい。
【0125】
酸安定モノマー(a2)としては、以下の式(a2−1)で表されるモノマー(以下、「酸安定モノマー(a2−1)」という場合がある)を用いることもできる。
式(a2−1)中、
La3は、酸素原子又は*−O−(CH2)k2−CO−O−を表し、
k2は1〜7の整数を表す。*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。
Ra14は、水素原子又はメチル基を表す。
Ra15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0126】
式(a2−1)では、La3は、好ましくは、酸素原子又は*−O−(CH2)f2−CO−O−(ここでf2は、1〜4の整数である)であり、より好ましくは酸素原子である。
Ra14は、好ましくはメチル基である。
Ra15は、好ましくは水素原子である。
Ra16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0127】
酸安定モノマー(a2−1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。なかでも、それぞれ式(a2−1−1)〜式(a2−1−6)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ式(a2−1−1)〜式(a2−1−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ式(a2−1−1)又は式(a2−1−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0128】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−1)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、3〜45モル%の範囲が好ましく、5〜40モル%の範囲がより好ましく、5〜35モル%の範囲がさらに好ましく、5〜20モル%の範囲がさらに好ましい。
【0129】
<酸安定モノマー(a3)>
酸安定モノマー(a3)は、ラクトン環を含有する酸安定モノマーである。ラクトン環は、例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0130】
酸安定モノマー(a3)は好ましくは、以下の式(a3−1)、式(a3−2)及び式(a3−3)で表されるモノマーである。樹脂(A)の製造においては、これらのうち1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。式(a3−1)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−1)」という場合があり、式(a3−2)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−2)」という場合があり、式(a3−3)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−3)」という場合がある。
式(a3−1)、式(a3−2)及び式(a3−3)中、
La4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2)k3−CO−O−を表す。
k3は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
Ra18〜Ra20は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ra21は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
Ra22及びRa23は、それぞれ独立に、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
q1及びr1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
p1が2以上のとき、複数のRa21は、互いに同一であっても異なってもよい。
q1が2以上のとき、複数のRa22は、互いに同一であっても異なってもよい。
r1が2以上のとき、複数のRa23は、互いに同一であっても異なってもよい。
【0131】
式(a3−1)〜式(a3−3)において、La4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2)d1−CO−O−であることが好ましく(ここでd1は、1〜4の整数である)、より好ましくは酸素原子である。
Ra18〜Ra21は、それぞれ独立に、好ましくはメチル基である。
Ra22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1、q1及びr1は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0132】
酸安定モノマー(a3)としては、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。それぞれ式(a3−1−1)〜式(a3−1−4)、式(a3−2−1)〜式(a3−2−4)、式(a3−3−1)〜式(a3−3−4)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ式式(a3−1−1)〜式(a3−1−2)、式(a3−2−3)〜式(a3−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ式(a3−1−1)又は式(a3−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0133】
樹脂(A)が、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位からなる群より選ばれる構造単位〔酸安定モノマー(a3)に由来する構造単位〕を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜70モル%の範囲が好ましく、10〜65モル%の範囲がより好ましく、10〜60モル%の範囲がさらに好ましい。
また、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位それぞれの含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜55モル%がより好ましく、10〜50モル%がさらに好ましい。
【0134】
<酸安定モノマー(a4)>
酸安定モノマー(a4)として、式(a4−1)で表される無水マレイン酸、式(a4−2)で表される無水イタコン酸及び式(a4−3)で表されるノルボルネン環を有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a4−3)」という場合がある)などが挙げられる。
式(a4−3)中、
Ra25及びRa26は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基又は−COORa27を表すか、或いはRa25及びRa26は互いに結合して−CO−O−CO−を形成する。
Ra27は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜8のアルキル基と炭素数3〜20の脂環式炭化水素基とからなる基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。但し−COORa27が酸不安定基となるものは除く(例えば、Ra27は、第三級炭素原子が−O−と結合するものを含まない)。
【0135】
式(a4−3)においては、アルキル基は、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6の基である。脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数4〜12の基である。
【0136】
酸安定モノマー(a4−3)としては、例えば、2−ノルボルネン、2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0137】
樹脂(A)が、式(a4−1)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位、式(a4−2)で表される無水イタコン酸に由来する構造単位及びモノマー(a4−3)に由来する構造単位からなる群より選ばれる構造単位〔酸安定モノマー(a4)に由来する構造単位〕を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、2〜40モル%の範囲が好ましく、3〜30モル%の範囲がより好ましく、5〜20モル%の範囲がさらに好ましい。
【0138】
また、酸安定モノマー(a4)として、例えば、以下に示すようなフッ素原子を有するモノマー〔以下、「モノマー(a4−4)」という場合がある〕を用いてもよい。
【0139】
モノマー(a4−4)の中でも、単環式又は多環式の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸5−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸6−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸4,4−ビス(トリフルオロメチル)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノニルが好ましい。
【0140】
樹脂(A)が、モノマー(a4−4)に由来する構造単位を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜20モル%の範囲が好ましく、2〜15モル%の範囲がより好ましく、3〜10モル%の範囲がさらに好ましい。
【0141】
樹脂(A)は、好ましくは、モノマー(a1)と、酸安定モノマー(a2)及び/又は酸安定モノマー(a3)とを重合させて得られる共重合体である。この好ましい共重合体において、モノマー(a1)として、上述のモノマー(a1−1)及びモノマー(a1−2)の少なくとも1種を用いることが好ましく、モノマー(a1−1)を用いることがさらに好ましい。酸安定モノマー(a2)としては、酸安定モノマー(a2−1)が好ましく、酸安定モノマー(a3)としては、酸安定モノマー(a3−1)が好ましい。
【0142】
樹脂(A)は、モノマー(a1)と、必要に応じて、酸安定モノマー(a2)、酸安定モノマー(a3)及び酸安定モノマー(a4)からなる群より選ばれる酸安定モノマーとを用い、これらが上述のとおりの樹脂(A)の全構造単位に対する好適な含有量になるようにして使用量を調節した後、公知の重合法(例えばラジカル重合法)により製造することができる。
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは2,500以上であり、より好ましくは3,000以上である。該重量平均分子量の上限は50,000以下が好ましく、30,000以下がさらに好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものであり、該分析の詳細な分析条件は、本願の実施例で詳述する。
【0143】
<塩基性化合物(以下、「塩基性化合物(C)」という場合がある。)>
本発明のレジスト組成物は、さらに、塩基性化合物(C)を含有していてもよい。ここでいう「塩基性化合物」とは、酸を捕捉するという特性を有する化合物(以下、「クエンチャー」という場合がある)、特に、酸発生剤から発生する酸を捕捉するという特性を有する化合物を意味する。
【0144】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えば、アミン及びアンモニウム塩を挙げることができる。アミンは、脂肪族アミンでも、芳香族アミンでもよい。脂肪族アミンは、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンのいずれでもよい。芳香族アミンは、アニリンのような芳香環にアミノ基が結合したもの、ピリジンのような複素芳香族アミンのいずれでもよい。好ましい塩基性化合物(C)として、以下の式(C2)で表される芳香族アミン、より好ましい塩基性化合物(C)として、以下の式(C2−1)で表されるアニリン類が挙げられる。
式(C2)及び式(C2−1)中、
Arc1は、芳香族炭化水素基を表す。
Rc5及びRc6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。
Rc7は、アルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はニトロ基を表す。
これらアルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基にある水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アミノ基はさらに、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい。
m3は0〜3の整数を表す。m3が2以上のとき、複数のRc7は、互いに同一でも異なってもよい。
【0145】
式(C2)及び式(C2−1)において、
アルキル基及びアルコキシ基は、好ましくは、炭素数1〜6である。
脂環式炭化水素基は、好ましくは、炭素数5〜10であり、さらに好ましくは、炭素数5〜10のシクロアルキル基である。
芳香族炭化水素基は、好ましくは、炭素数6〜10である。
【0146】
式(C2)で表される芳香族アミンは、例えば、1−ナフチルアミン及び2−ナフチルアミン等が挙げられる。
式(C2−1)で表されるアニリン類は、例えば、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン及びジフェニルアミン等が挙げられる。
【0147】
また、以下の式(C3)〜式(C11)のいずれかで表される化合物(以下、式番号に応じて、「化合物(C3)」〜「化合物(C11)」という)も用いることができる。
式(C3)〜式(C11)中、
Rc8、Rc20、Rc21、Rc23〜Rc28は、互いに独立に、Rc7で説明したいずれかの基を表す。
Rc9〜Rc14、Rc16、Rc17、Rc18、Rc19及びRc22は、互いに同一でも異なってもよく、Rc5及びRc6で説明したいずれかの基を表す。
o3、p3、q3、r3、s3、t3及びu3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。o3が2以上であるとき、複数のRc20は互いに同一でも異なってもよく、p3が2以上であるとき、複数のRc21は互いに同一でも異なってもよく、q3が2以上であるとき、複数のRc24は互いに同一でも異なってもよく、r3が2以上であるとき、複数のRc25は互いに同一でも異なってもよく、s3が2以上であるとき、複数のRc26は互いに同一でも異なってもよく、t3が2以上であるとき、複数のRc27は互いに同一でも異なってもよく、u3が2以上であるとき、複数のRc28は互いに同一でも異なってもよい。
Rc15は、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である)、脂環式炭化水素基(好ましくは、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基である)又はアルカノイル基(好ましくは、炭素数2〜6のアルカノイル基である)を表す。
n3は0〜8の整数を表す。n3が2以上のとき、複数のRc15は、互いに同一でも異なってもよい。
Lc1及びLc2は、それぞれ独立に、アルカンジイル基(好ましくは、炭素数1〜6のアルカンジイル基である)、カルボニル基、−C(=NH)−、−C(=NRc3)−(但し、Rc3は、炭素数1〜4のアルキル基を表す)、チオキシ基、ジスルフィド結合(−S−S−)又はこれらの組合せを表す。
【0148】
アルカノイル基としては、アセチル基、2−メチルアセチル基、2,2−ジメチルアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロピオニル基等が挙げられる。
【0149】
式(C3)〜式(C11)においては、アルキル基は、好ましくは、炭素数1〜6である。脂環式炭化水素基は、好ましくは、炭素数3〜6である。アルカノイル基は、好ましくは、炭素数2〜6である。
アルカンジイル基は、好ましくは、炭素数1〜6のアルカンジイル基である。
【0150】
塩基性化合物(C3)としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン等も用いることができる。
【0151】
化合物(C4)としては、例えば、ピペラジン等が挙げられる。
化合物(C5)としては、例えば、モルホリン等が挙げられる。
化合物(C6)としては、例えば、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
化合物(C7)としては、例えば、2,2’−メチレンビスアニリン等が挙げられる。
化合物(C8)としては、例えば、イミダゾール及び4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
化合物(C9)としては、例えば、ピリジン、4−メチルピリジン等が挙げられる。
化合物(C10)としては、例えば、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン及び2,2’−ジピコリルアミン等が挙げられる。
化合物(C11)としては、例えば、ビピリジン等が挙げられる。
【0152】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリン等が挙げられる。
【0153】
本発明のレジスト組成物に用いる塩基性化合物(C)としては、これらの中でもジイソプロピルアニリンが好ましく、2,6−ジイソプロピルアニリンが特に好ましい。
【0154】
<溶剤(以下、「溶剤(D)」という場合がある)>
本発明のレジスト組成物は、溶剤(D)を含むことが好ましい。溶剤(D)は、用いる塩(I)の種類及びその量、樹脂(A)の種類及びその量、酸発生剤(B)の種類及びその量、さらに後述するレジストパターンの製造方法に応じて、基板上にレジスト組成物を塗布する際の塗布性を考慮して、適宜選択することができる。
【0155】
溶剤(D)としては、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類を挙げることができる。溶剤(D)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0156】
<その他の成分(以下、「成分(F)」という場合がある)>
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、塩(I)及び樹脂(A)並びに必要に応じて用いられる溶剤(D)、酸発生剤(B)及び塩基性化合物(C)以外のその他の成分(F)を含んでいてもよい。成分(F)としては、本技術分野で公知の添加剤、例えば、樹脂(A)以外の高分子化合物、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料等が挙げられる。
【0157】
<レジスト組成物の調製>
本発明のレジスト組成物は、通常、溶剤(D)の存在下で、塩(I)を含む酸発生剤及び樹脂(A)を混合することにより調製することができる。さらに、上述のとおり必要に応じて酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)及び/又は成分(F)を混合してもよい。塩基性化合物(C)を混合することが好ましい。混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、用いる塩(I)等の種類や塩(I)等の溶剤(D)に対する溶解度等に応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合等を用いることができる。
本発明のレジスト組成物を調製する際に用いる各成分の使用量を選択することにより、本発明のレジスト組成物中の各成分の含有量を調節することができる。
【0158】
溶剤(D)の含有量は、レジスト組成物総質量に対して90質量%以上が好ましく、より好ましくは92質量%以上であり、さらに好ましくは94質量%以上であり、99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは99質量%以下である。このような含有量で溶剤(D)を含むレジスト組成物は、レジストパターンの製造方法において、厚み30〜300nm程度の組成物層を形成しやすい。
【0159】
レジスト組成物に対する樹脂(A)の含有量は、レジスト組成物の固形分の総質量に対して、好ましくは80質量%以上99質量%以下である。
本明細書において「組成物の固形分」とは、後述する溶剤(D)を除いたレジスト組成物成分の合計を意味する。例えば、溶剤(D)の含有量が90質量%である本発明のレジスト組成物において、レジスト組成物の固形分は10質量%に相当する。組成物の固形分及びこれに対する各成分の含有量は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0160】
レジスト組成物に対する塩(I)の含有量は、レジスト組成物に含まれる樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。
【0161】
レジスト組成物に酸発生剤(B)を用いる場合、その含有量は、レジスト組成物に含まれる樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。
レジスト組成物における塩(I)と酸発生剤(B)との合計含有量は、レジスト組成物に含まれる樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは35質量部以下である。
【0162】
レジスト組成物に塩基性化合物(C)を用いる場合、その含有量は、レジスト組成物の固形分の総質量に対して、好ましくは0.01〜1質量%程度である。なお、塩基性化合物(C)の含有量は、塩(I)及び酸発生剤(B)の合計含有量よりも低いことが好ましい。
【0163】
成分(F)を本レジスト組成物に用いる場合には、成分(F)の種類に応じて、適切な含有量を調節可能である。
このように各成分を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.003〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0164】
<レジストパターンの製造方法>
本発明のレジストパターンの製造方法は、
(1)本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含む。
【0165】
工程(1)におけるレジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーター等、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。これにより基板上にレジスト組成物からなる塗布膜を形成することができる。塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することにより、塗布膜の膜厚を調整することができる。適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。レジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄し、反射防止膜を形成するなどしてもよい。反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0166】
工程(2)では、基板上に塗布されたレジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させて、溶剤(D)を除去する。乾燥は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、塗布膜から溶剤を蒸発させることにより行われる。乾燥条件は、レジスト組成物に含まれる溶剤(D)の種類等に応じて選択でき、例えば、ホットプレートを用いる加熱手段では、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にして行うことが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、減圧機の内部圧力を1〜1.0×105Pa程度にすればよい。これにより、基板上に組成物層を形成することができる。
【0167】
工程(3)では、組成物層を露光する。好ましくは、露光機を用いて組成物層を露光する工程である。露光には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光することが好ましい。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。本明細書において、これらの放射線を照射することを総称して「露光」という場合がある。
マスクを介して露光することにより、組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では組成物層に含まれる塩(I)及び酸発生剤(B)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸との作用により、樹脂(A)にある酸不安定基が脱保護反応により親水性を生じるため、露光部の組成物層にある樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けないため、樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違することとなる。
【0168】
工程(4)では、露光後の組成物層に加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)を行う。加熱処理は、前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段等が好ましい。工程(4)において、ホットプレートを用いる加熱手段を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。当該加熱処理により、上記脱保護反応が促進される。
【0169】
工程(5)では、加熱後の組成物層を現像する。好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像する。現像する工程で、加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させると、露光部の組成物層は該アルカリ水溶液に溶解して除去され、未露光部の組成物層は基板上に残るため、基板上にレジストパターンを製造することができる。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。アルカリ水溶液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
【0170】
現像後、レジストパターンは、好ましくは超純水等でリンス処理を行うことが好ましい。さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0171】
<用途>
本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物、さらに液浸露光用のレジスト組成物として好適である。
【0172】
なお、本明細書では、特に断りのない限り、化合物の構造式における置換基の例示は、炭素数を適宜選択しながら、同様の置換基を有するいずれの構造式においても適用することができる。直鎖状、分岐状又は環状をとることができるものは、そのいずれをも含み、かつそれらが混在していてもよい。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。
また、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」及び「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【実施例】
【0173】
実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記しないかぎり質量基準である。樹脂(A)の組成比(樹脂(A)製造に用いた各モノマーに由来する構造単位の、樹脂(A)に対する共重合比)は、重合終了後の反応液における未反応モノマー量を、液体クロマトグラフィーを用いて測定し、得られた結果から重合に用いられたモノマー量を求めることにより算出した。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの分析条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3+guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0174】
化合物の構造は、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型)を用い、分子ピークを測定することで確認した。以下の実施例ではこの分子ピークの値を「MASS」で示す。
【0175】
実施例1:式(I1)で表される塩の合成
式(I1−a)で表される塩6.03部及びアセトニトリル30.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、式(I1−b)で表される化合物1.70部を添加し、60℃で1時間攪拌した。得られた反応溶液をろ過し、回収されたろ液を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム30部及びイオン交換水15部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水15部を加え、23℃で30分間攪拌した。この水洗の操作をさらに3回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル100部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I1−c)で表される塩6.12部を得た。
【0176】
式(I1−c)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I1−d)で表される化合物1.37部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.10部を仕込み、23℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム60部及びイオン交換水20.00部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮した。得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I1)で表される塩2.48部を得た。
【0177】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 547.2
【0178】
実施例2:式(I2)で表される塩の合成
【0179】
式(I2−a)で表される塩を、特開2008−127367号公報に記載された方法で合成した。式(I2−a)で表される塩50.00部、クロロホルム300.00部及び式(I2−b)で表される化合物20.34部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、これを、60℃に昇温し、さらに1時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却し、エチレングリコール28.31部を仕込み、23℃で3時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム200部及びイオン交換水75部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を4回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル80部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル150部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I2−d)で表される塩24.58部を得た。
【0180】
式(I2−e)で表される化合物20.00部、クロロホルム140.00部及び式(I2−b)で表される化合物19.57部を仕込み、23℃で1時間攪拌した。得られた反応物に、イオン交換水50部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を5回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮した。得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル100部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I2−f)で表される塩24.94部を得た。
【0181】
式(I2−d)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I2−f)で表される化合物3.01部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、これに、炭酸カリウム0.14部を仕込み、40℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム80部及びイオン交換水30.00部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を8回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮し、得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I2)で表される塩4.02部を得た。
【0182】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 427.1
【0183】
実施例3:式(I3)で表される塩の合成
リチウムアルミニウムハイドライド10.4部、無水テトラヒドロフラン120部を仕込み23℃で30分間攪拌した。次いで、式(I3−a)で表される塩62.2部を無水THF900部に溶かした溶液を氷冷下で滴下し、23℃で5時間攪拌した。反応マスに酢酸エチル50.0部、6N塩酸50.00部を添加、攪拌して、分液を行った。有機層を濃縮し、カラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I3−b)で表される塩84.7部(純度60%)を得た。
【0184】
得られた式(I3−b)で表される化合物6.13部、式(I3−c)で表される化合物5.98部及びクロロホルム100部を仕込み、23℃で3時間攪拌した。得られた反応マスに、イオン交換水50部を添加、分液水洗を行った。この操作を3回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル100部を添加して溶解し、濃縮し、酢酸エチル100部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣にtert−ブチルメチルエーテル100部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮し、得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I3−d)で表される塩4.96部を得た。
式(I3−d)で表される化合物4.40部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I2−f)で表される化合物3.01部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.14部を仕込み、40℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム80部及びイオン交換水30.00部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を8回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮し、得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I2)で表される塩0.52部を得た。
【0185】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 369.1
【0186】
実施例4:式(I83)で表される塩の合成
式(I1−c)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I83−d)で表される化合物0.87部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.10部を仕込み、23℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム60部及びイオン交換水20部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭0.80部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮することにより、式(I83)で表される塩3.48部を得た。
【0187】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 481.1
【0188】
実施例5:式(I84)で表される塩の合成
式(I1−c)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I84−d)で表される化合物0.55部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.10部を仕込み、23℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム60部及びイオン交換水20部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭0.80部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮することにより、式(I84)で表される塩2.24部を得た。
【0189】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 439.1
【0190】
実施例6:式(I85)で表される塩の合成
式(I1−c)で表される化合物3.00部、式(I85−d)で表される化合物0.98部、炭酸カリウム0.10部及びアセトン25.00部を仕込み、50℃で20時間攪拌した。得られた反応物を濃縮した後、残渣にクロロホルム36部及びイオン交換水12部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭0.50部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、ろ過した。得られた残渣を、アセトニトリルに溶解し、濃縮した。得られた濃縮物に、酢酸エチル15部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I85)で表される塩1.58部を得た。
【0191】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 555.1
【0192】
樹脂の合成
樹脂の合成において使用した化合物(モノマー)を下記に示す。以下、これらのモノマーを「モノマー(A)」〜「モノマー(G)」という。
【0193】
〔樹脂A1の合成〕
モノマー(D)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(F)を、そのモル比〔モノマー(D):モノマー(E):モノマー(B):モノマー(C):モノマー(F)〕が、30:14:6:20:30の割合となるように混合し、さらに、このモノマー混合物に、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%となるように添加し、これを73℃で約5時間加熱することで重合を行った。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収し、再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を2回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が約8.1×103である共重合体を収率65%で得た。この共重合体は、モノマー(D)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマーに各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。
【0194】
〔樹脂A2の合成〕
モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(F)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(E):モノマー(B):モノマー(C):モノマー(F)〕が、30:14:6:20:30の割合となるように混合し、さらに、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%との割合で添加し、これを73℃で約5時間加熱することで重合を行った。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収し、再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を3回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が約7.8×103である共重合体を収率68%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A2とする。
【0195】
〔樹脂A3の合成〕
モノマー(A)、モノマー(B)及びモノマー(C)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(B):モノマー(C)〕が、50:25:25となるように混合し、さらに、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1mol%と3mol%との割合で添加し、これを80℃で約8時間加熱することで重合を行った。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収し、再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を3回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が約9.2×103である共重合体を収率60%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(B)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の各モノマーから導かれる構造単位を有するものであり、これを樹脂A3とする。
【0196】
〔樹脂A4の合成〕
モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(E):モノマー(B):モノマー(F):モノマー(C)〕が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×103の共重合体を収率78%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A4とする。
【0197】
〔樹脂A5の合成〕
モノマー(A)、モノマー(N)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(G):モノマー(B):モノマー(F):モノマー(C)〕が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×103の共重合体を収率78%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(G)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A5とする。
【0198】
<レジスト組成物の調製>
合成例1で得られた樹脂A1、樹脂A2、樹脂A3、樹脂A4又は樹脂A5と、以下に示す酸発生剤と、以下に示すクエンチャーとを表4に示す質量部で、以下に示す溶剤と混合し、得られた混合物を孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0199】
【表4】
【0200】
<酸発生剤>
酸発生剤I1:式(I1)で表される塩
酸発生剤I2:式(I2)で表される塩
酸発生剤I3:式(I3)で表される塩
酸発生剤I83:式(I83)で表される塩
酸発生剤I84:式(I84)で表される塩
酸発生剤I85:式(I85)で表される塩
酸発生剤B1:特開2010−152341号公報の実施例に従って合成
酸発生剤B2:特開2007−161707号公報の実施例に従って合成
【0201】
<塩基性化合物:クエンチャー>
クエンチャーC1:2,6−ジイソプロピルアニリン(東京化成工業(株)製)
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265部
2−ヘプタノン 20.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0202】
<レジストパターンの製造及びその評価>
12インチのシリコン製ウェハ上に、有機反射防止膜用組成物[ARC−29;日産化学(株)製]を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ78nmの有機反射防止膜を形成した。次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥(プリベーク)後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。
得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表4の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベーク(PB)した。こうしてレジスト組成物膜を形成したウェハに、液浸露光用ArFエキシマステッパー[XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、3/4Annular X−Y偏光]を用いて、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを液浸露光した。なお、液浸媒体としては超純水を使用した。
露光後、ホットプレート上にて、表4の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
【0203】
得られたレジストパターンにおいて、50nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量となる露光量を実効感度とした。
【0204】
<ラインエッジラフネス評価(LER)>
リソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの側壁の凹凸の触れ幅が、
3.5nm以下であるものを◎◎、
3.5nmを超え、4nm以下であるものを◎
4nmを超え、4.5nm以下であるものを○、
4.5nmを超えるものを×とした。
以上のようにして求められたラインエッジラフネス評価(LER)の結果を表5に示す。括弧内の数字は側壁の凹凸の触れ幅(nm)を示す。
【0205】
【表5】
【0206】
式(I)で表される塩を含有するレジスト組成物は、そのラインエッジラフネス(LER)が「○」、「◎」又は「◎◎」の結果であり、ラインエッジラフネス(LER)が良好なレジストパターンが製造できることを確認した。
一方、塩(I)を含まない比較例1のレジスト組成物は、ラインエッジラフネス(LER)が不良(×)であった。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明の塩及びこの塩を含む本レジスト組成物は、半導体の微細加工に利用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる酸発生剤用の塩、酸発生剤、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、酸発生剤用の塩として、下記式で表される塩を含有するレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から知られる上記酸発生剤を含むレジスト組成物では、得られるレジストパターンのラインエッジラフネス(LER)が必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕式(I)で表される塩。
[式(I)中、
Q1及びQ2は、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
L1は、2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
L2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Z+は、有機対イオンを表す。]
〔2〕前記L1が、炭素数1〜6のアルカンジイル基又は*−CO−O−Lb2−(Lb2は、炭素数1〜15の飽和炭化水素基を表す。)である前記〔1〕記載の塩。
〔3〕前記L1が、メチレン基、*−CO−O−CH2−CH2−**又は以下で表される2価の基(*は、−C(Q1)(Q2)−との結合手、**は酸素原子との結合手を表す。)である〔1〕又は〔2〕記載の塩。
〔4〕前記L2が、単結合又は炭素数1〜6のメチレン基である前記〔1〕〜前記〔3〕のいずれか記載の塩。
〔5〕前記Z+が、アリールスルホニウムカチオンである前記〔1〕〜前記〔4〕のいずれか記載の塩。
〔6〕前記〔1〕〜前記〔5〕のいずれか記載の塩を含有する酸発生剤。
〔7〕前記〔6〕記載の酸発生剤と樹脂とを含有し、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
〔8〕さらに塩基性化合物を含有する前記〔7〕記載のレジスト組成物。
〔9〕(1)前記〔7〕又は前記〔8〕記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塩によれば、該塩を含むレジスト組成物を用いて、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〈式(I)で表される塩〉
本発明の塩は、式(I)で表される。(以下「塩(I)」という場合がある)
[式(I)中、
Q1及びQ2は、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
L1は、2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
L2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Z+は、有機対イオンを表す。]
なお、以下の説明において、塩(I)のうち、正電荷を有するZ+で示される有機カチオンを除去してなる負電荷を有するものを「スルホン酸アニオン」ということがある。
【0008】
Q1及びQ2で表されるペルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
Q1及びQ2は、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基又はフッ素原子であることが好ましく、ともにフッ素原子であることがより好ましい。
【0009】
L1は、2価の飽和炭化水素基としては、直鎖状アルカンジイル基、分岐状アルカンジイル基、単環式又は多環式の2価の脂環式炭化水素基が挙げられ、これらの基のうち2種以上を組み合わせたものでもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基及びプロパン−2,2−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;
直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等、特に、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい)の側鎖を有したもの、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基等の分岐状アルカンジイル基;
シクロブタン−1,3−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、1−メチルシクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロアルキレン基である単環式の2価の脂環式炭化水素基;
ノルボルナン−2,3−ジイル基、ノルボルナン−1,4−ジイル基、ノルボルナン−2,5−ジイル基、アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,5−ジイル基、アダマンタン−2,6−ジイル基等の多環式の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
【0010】
L1で表される2価の飽和炭化水素基を構成しているメチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、以下の式(L1−1)、式(L1−2)、式(L1−3)及び式(L1−4)のいずれかで示される基が挙げられ、中でも、式(L1−1)で示される基が好ましい。なお、式(L1−1)〜式(L1−4)は、その左右を式(I)に合わせて記載しており、左側でC(Q1)(Q2)−と結合し、右側で酸素原子と結合する。以下の式(L1−1)〜式(L1−4)の具体例も同様である。
【0011】
式(L1−1)〜式(L1−4)中、
L1b1は、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
L1b2及びL1b3は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基を表す。但しL1b2及びL1b3の合計炭素数の上限は13である。
L1b4及びL1b5は、それぞれ独立に、炭素数1〜13の2価の飽和炭化水素基を表す。但しL1b4及びL1b5の合計炭素数の上限は14である。
L1b6及びL1b7は、それぞれ独立に、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。但しL1b6及びL1b7の合計炭素数の上限は16である。
【0012】
式(L1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0013】
式(L1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0014】
式(L1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0015】
式(L1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0016】
中でも、L1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基又は式(L1−1)で表される2価の基が好ましく、メチレン基、*−CO−O−CH2−CH2−**又は以下で表される2価の基(*は、−C(Q1)(Q2)−との結合手、**は酸素原子との結合手を表す)がさらにより好ましい。
【0017】
L2におけるアルカンジイル基としては、直鎖状アルカンジイル又は分岐状アルカンジイルが挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;
直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基)の側鎖を有したもの、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、1−メチルブタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基等の分岐状アルカンジイル基が挙げられる。
中でも、L2は、単結合又はメチレン基が好ましい。
【0018】
Yにおける脂環式炭化水素基としては、単環式及び多環式のいずれでもよい。また、環原子としてのみ炭素原子を有する脂環式炭化水素基に留まらず、環原子の炭素原子に炭素数1〜12のアルキル基が結合してなる基であってもよい。
単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及びメチルノルボルニル基、並びに下記に示す基などが挙げられる。
なかでも、炭素数3〜12のシクロアルキル基が好ましい。
【0019】
この脂環式炭化水素基は任意に置換基を有する。「置換基を有する脂環式炭化水素基」とは、該脂環式炭化水素基にある水素原子が、置換基で置換されている基を意味する。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子(但し、フッ素原子を除く)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、炭素数2〜4のアシル基、グリシジルオキシ基又は−(CH2)j2−O−CO−Ri1で表される基(式中、Ri1は、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜16の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。j2は、0〜4の整数を表す。)等が挙げられる。この脂環式炭化水素基が有する置換基である芳香族炭化水素基及びアラルキル基は、例えば、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基を有していてもよい。
【0020】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基及びドデシルオキシ基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、トリチル、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基などのアルキル基が挙げられる。
【0021】
脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基が酸素原子、スルホニル基(−SO2−)又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、環状エーテル構造(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基の1つ又は2つが酸素原子に置き換わった基)、環状ケトン基(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基の1つ又は2つがカルボニル基に置き換わった基)、スルトン環基(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びスルホニル基に置き換わった基)及びラクトン環基(脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基のうち隣り合う2つのメチレン基が、それぞれ、酸素原子及びカルボニル基に置き換わった基)等が挙げられる。
【0022】
Yの脂環式炭化水素基としては、例えば、以下の式(Y1)〜式(Y29)が好ましい。*はL2との結合手を表す。
なかでも、式(Y1)〜式(Y19)、式(Y27)〜式(Y29)のいずれかで表される基がより好ましく、式(Y11)、式(Y14)、式(Y15)、式(Y19)、式(Y27)、式(Y28)又は式(Y29)で表される基がさらに好ましく、式(Y11)又は式(Y14)で表される基が特に好ましい。
【0023】
Yの置換基を有する脂環式炭化水素基としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0024】
Yは、好ましくは置換基を有していてもよいアダマンチル基であり、より好ましくはアダマンチル基、オキソアダマンチル基又はヒドロキシアダマンチル基である。
【0025】
塩(I)を構成するスルホン酸アニオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0026】
【0027】
Z+で示される有機対イオンとしては、例えば、有機オニウムカチオン、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及び有機ホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、有機スルホニウムカチオン及び有機ヨードニウムカチオンが好ましく、アリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0028】
さらに好ましくは、以下の式(b2−1)〜式(b2−4)」のいずれかで表される有機カチオン〔以下、各式の番号に応じて、「カチオン(b2−1)」等ということがある〕である。
【0029】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、
Rb4、Rb5及びRb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。Rb4、Rb5及びRb6から選ばれる2つが一緒になって、イオウ原子を含む環を形成してもよい。
【0030】
Rb4、Rb5及びRb6から選ばれる2つが一緒になって形成してもよい環としては、単環式、多環式、芳香族性、非芳香族性、飽和及び不飽和のいずれの環であってもよく、イオウ原子を1以上含むものであれば、さらに、1以上のイオウ原子及び/又は1以上の酸素原子を含んでいてもよい。該環としては、炭素数3〜18の環が好ましく、炭素数4〜13の環がより好ましい。
【0031】
Rb7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。m2が2以上である場合、複数のRb7は互いに同一であっても異なってもよく、n2が2以上である場合、複数のRb8は互いに同一であっても異なってもよい。
【0032】
Rb9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表すか、あるいは、Rb9とRb10は、それらが結合する硫黄原子とともに互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよい。
Rb11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
Rb12は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
Rb11とRb12は、それらが結合するメチン基及びカルボニル基それぞれの炭素原子とともに3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよい。
【0033】
Rb13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
Lb11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13は互いに同一であっても異なってもよく、p2が2以上であるとき、複数のRb14は互いに同一であっても異なってもよく、s2が2以上であるとき、複数のRb15は互いに同一であっても異なってもよく、t2が2以上であるとき、複数のRb18は互いに同一であっても異なってもよい。
【0034】
アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基及び2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0035】
好ましいアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基である。
好ましい脂環式炭化水素基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基である。
好ましい芳香族炭化水素基は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基である。
水素原子が芳香族炭化水素基で置換されたアルキル基としては、例えばベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
特に、Rb9〜Rb11のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12であり、脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜18、より好ましくは炭素数4〜12である。
Rb9とRb10とが互いに結合して、それらが結合する硫黄原子とともに形成する環としては、例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環等が挙げられる。
Rb11とRb12とが互いに結合して、それらが結合するメチン基及びカルボニル基それぞれの炭素原子とともに形成する環としては、例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環等が挙げられる。
【0036】
式(b2−1)〜式(b2−4)でそれぞれ表される有機対イオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたカチオンが挙げられる。
【0037】
かかる有機カチオンの中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機カチオン〔以下、「カチオン(b2−1−1)」という場合がある〕がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、Rb19、Rb20及びRb21がいずれもメチル基である。)がさらに好ましい。
式(b2−1−1)中、
Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、Rb19、Rb20及びRb21から選ばれる2つが一緒になって単結合、−O−又は炭素数1〜4の2価の脂肪族炭化水素基を表し、イオウ原子を含む環を形成してもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19は互いに同一でも異なってもよく、w2が2以上のとき、複数のRb20は互いに同一でも異なってもよく、x2が2以上のとき、複数のRb21は互いに同一でも異なってもよい。
【0038】
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0039】
有機対イオンであるカチオン(b2−1−1)としては、以下ものが挙げられる。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
カチオン(b2−1−1)のうち、イオウ原子を含む環が形成されたカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0044】
カチオン(b2−1)のうち、イオウ原子を含む環が形成されたカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0045】
有機対イオンであるカチオン(b2−2)としては、以下ものが挙げられる。
【0046】
有機対イオンであるカチオン(b2−3)としては、以下ものが挙げられる。
【0047】
塩(I)は、スルホン酸アニオン及び有機対イオンの組合せである。これらスルホン酸アニオンと有機対イオンとは任意に組み合わせることができる。
塩(I)としては、例えば、表1〜2記載の塩が挙げられる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
なかでも以下に示す塩が好ましい。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
塩(I)は、式(I−c)で表される塩と式(I−d)で表される化合物とを、触媒存在下、溶媒中で反応させることにより、製造することができる。触媒としては、炭酸カリウムなどが挙げられる。溶媒としては、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
(式中、Q1、Q2、L1、L2、Y及びZ+は、それぞれ上記と同じ意味を表す。)
式(I−d)で表される化合物としては、3−ヒドロキシメチルアダマンタン−1−オールなどが挙げられる。
【0062】
塩(I−c)は、式(I−a)で表される塩と式(I−b)で表される化合物とを、溶媒中で反応させることにより、製造することができる。溶媒としては、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0063】
式(I−a)で表される塩は、例えば、特開2006−257078号公報に記載された方法で合成することができる。
【0064】
〈酸発生剤〉
本発明の酸発生剤は、塩(I)を含有する。塩(I)は、酸発生剤として使用する時、単独でも複数種を同時に用いてもよい。また、本発明の酸発生剤は、さらに、塩(I)以外の、酸発生剤として公知の塩(例えば、塩(I)に含まれる有機対イオン及び公知のアニオン(塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン以外のアニオン)からなる塩並びに塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン及び公知のカチオン(塩(I)に含まれる有機対イオン以外のカチオン)からなる塩等)を含んでいてもよい。以下、本発明の酸発生剤に含まれる塩(I)以外の塩を「酸発生剤(B)」という場合がある。
【0065】
酸発生剤(B)としては、例えば、それぞれ式(B1−1)〜式(B1−17)で表される塩が挙げられる。中でもトリフェニルスルホニウムカチオン、トリトリルスルホニウムカチオンを含む塩が好ましく、式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)及び式(B1−14)でそれぞれ表される塩がさらに好ましい。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
本発明の酸発生剤が、塩(I)と酸発生剤(B)とを含む場合、塩(I)の含有量は、酸発生剤全量100質量部に対して、好ましくは10質量部以上(より好ましくは30質量部以上)、好ましくは90質量部以下(より好ましくは70質量部以下)である。
酸発生剤が、式(I)の塩と酸発生剤(B)とを含有する場合、式(I)の塩と酸発生剤(B)との含有量の比(質量)は、例えば、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは85:15〜15:85である。
【0071】
〈レジスト組成物〉
本発明のレジスト組成物は、上述した酸発生剤と樹脂とを含む。
樹脂は、酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂(以下、「樹脂(A)」という)である。
レジスト組成物において、酸発生剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(より好ましくは3質量部以上)、好ましくは40質量部以下(より好ましくは35質量部以下)である。
【0072】
〈樹脂(以下、「樹脂(A)」という場合がある)〉
樹脂(A)は、酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸との作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂である。「酸の作用によりアルカリ可溶となる」とは、酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となることを意味する。
このような樹脂(A)は、分子内にある親水性基の一部又は全部が、酸との接触により脱離し得る保護基により保護されているものであり、樹脂(A)が酸と接触すると保護基が脱離して、樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶な樹脂に転化する。保護基により保護されている親水性基を、以下「酸不安定基」という場合がある。親水性基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基がより好ましい。
【0073】
<モノマー(a1)>
樹脂(A)は、酸不安定基を有するモノマー(以下、「モノマー(a1)」という場合がある)を重合することによって製造できる。かかる重合の際には、モノマー(a1)を1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
親水性基がカルボキシ基である場合の酸不安定基は、該カルボキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、オキシ基と結合する該有機残基の炭素原子が第三級炭素原子である基(すなわち第三アルコールのエステル)が挙げられる。このような酸不安定基のうち、好ましい酸不安定基は、例えば、以下の式(1)で表されるもの(以下、場合により「酸不安定基(1)」という場合がある)である。
式(1)中、
Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、Ra1及びRa2は互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Ra1及びRa2が互いに結合して形成される環、アルキル基又は脂環式炭化水素基がメチレン基を有する場合、そのメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0075】
式(1)においては、Ra1〜Ra3の脂環式炭化水素基は、炭素数3〜16が好ましい。
−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)におけるRa1及びRa2が互いに結合して形成する環としては、下記に示すものが挙げられる。このような環は、好ましくは炭素数3〜12である。
【0076】
酸不安定基(1)の具体例は、
1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3が全てアルキル基である基、このアルキル基のうち、1つはtert−ブトキシカルボニル基であると好ましい。)、
2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともにアダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び
1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0077】
親水性基がヒドロキシ基である場合の酸不安定基は、ヒドロキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、アセタール構造又はケタール構造を含むものとなった基が挙げられる。このような酸不安定基のうち、好ましい酸不安定基は、例えば、以下の式(2)で表されるもの(以下、場合により「酸不安定基(2)」という)である。
式(2)中、
Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rb3は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、或いは、Rb2及びRb3は互いに結合して、それらが各々結合する炭素原子及び酸素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Rb2及びRb3は互いに結合して形成される環又は炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
【0078】
式(2)においては、Rb1及びRb2のうち、少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
酸不安定基(2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。
【0079】
酸不安定基を有するモノマー(a1)は、好ましくは、酸不安定基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー、より好ましくは酸不安定基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0080】
モノマー(a1)は、好ましくは、酸不安定基(1)及び/又は酸不安定基(2)と、炭素−炭素二重結合とを有するモノマーであり、より好ましくは酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0081】
酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーの中でも、酸不安定基(1)が、炭素数5〜20の脂肪族環を有するものが好ましい。このような立体的に嵩高い脂肪族環を有するモノマー(a1)を重合して得られる樹脂(A)を含むレジスト組成物を用いてレジストパターンを製造すれば、より良好なラインエッジラフネス(LER)でレジストパターンを製造することができる。
【0082】
脂肪族環を部分構造とする酸不安定基(1)を有する(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位の中でも、式(a1−1)で表される構造単位又は式(a1−2)で表される構造単位が好ましい。以下、式(a1−1)で表される構造単位を「構造単位(a1−1)」、式(a1−2)で表される構造単位を「構造単位(a1−2)」、これら構造単位を誘導するモノマーを、それぞれ「モノマー(a1−1)」、「モノマー(a1−2)」という場合がある。樹脂(A)を製造する際、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(a1−1)及び式(a1−2)中、
La1及びLa2は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2)k1−CO−O−で表される基を表す。ここで、k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。
Ra4及びRa5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ra6及びRa7は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表し、n1は0〜10の整数を表す。
n1’は0〜3の整数を表す。
なお、式(a1−1)においてアダマンタン環にある「−(CH3)m1」の表記は、アダマンタン環を構成しているメチレン基及び/又はメチン基の水素原子が、メチル基に置き換わっており、アダマンタン環に結合しているメチル基の個数がm1個であることを意味する。
【0083】
式(a1−1)及び式(a1−2)においては、La1及びLa2は、好ましくは、酸素原子又は*−O−(CH2)f1−CO−O−(但し、f1は1〜4の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。)で表される基であり、より好ましくは酸素原子である。f1は、より好ましくは1である。
Ra4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
Ra6及びRa7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等が好ましい。これらのアルキル基は、好ましくは炭素数6以下の基である。Ra6又はRa7の脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数8以下であり、より好ましくは6以下である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1’は好ましくは0又は1である。
*は、アダマンタン環又はシクロヘキサン環との結合手を表す。
【0084】
式(a1−1)で表されるモノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a1−1−1)〜(a1−1−8)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−1−1)〜(a1−1−4)で表されるモノマーがより好ましい。
【0085】
式(a1−2)で表されるモノマーとしては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート等が挙げられる。下式(a1−2−1)〜(a1−2−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−2−3)〜(a1−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、下式(a1−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0086】
樹脂(A)をモノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)を用いて製造する場合、得られる樹脂(A)の全構造単位を100モル%としたとき、これらモノマーに由来する構造単位の含有量の合計は、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲が一層好ましい。構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の含有量の合計を、このような範囲にするためには、樹脂(A)を製造する際に、全モノマーの使用量に対するモノマー(a1−1)及び/又はモノマー(a1−2)の使用量を調整すればよい。
【0087】
さらに、酸不安定基(1)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとして例えば、以下の式(a1−3)で表されるノルボルネン環を有するモノマー(以下、「モノマー(a1−3)」という場合がある)が挙げられる。
Ra9は、水素原子、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシ基、シアノ基又は−COORa13を表す。
Ra13は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜8のアルキル基と炭素数3〜20の脂環式炭化水素基とからなる基を表し、アルキル基及び脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、アルキル基及び脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Ra10〜Ra12は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、Ra10及びRa11が互いに結合して、これらが結合している炭素原子とともに、炭素数3〜20の環を形成しており、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基等で置換されていてもよく、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
【0088】
ヒドロキシ基を有していてもよいアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0089】
式(a1−3)においては、Ra9は、好ましくは水素原子である。
Ra10及びRa11が互いに結合して形成される環は、好ましくは脂肪族環であり、具体的には、シクロへキサン環及びアダマンタン環等がより好ましい。
【0090】
モノマー(a1−3)としては、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−tert−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル及び5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチル等が挙げられる。
【0091】
モノマー(a1−3)を用いて樹脂(A)を製造した場合、この樹脂(A)にはモノマー(a1−3)に由来する、立体的に嵩高い構造単位が含まれる。この構造単位を有する樹脂(A)を含むレジスト組成物を用いてレジストパターンを製造することにより、より良好なラインエッジラフネス(LER)でレジストパターンを得ることができる。さらにモノマー(a1−3)を用いることにより、樹脂(A)の主鎖に剛直なノルボルナン環を導入できるため、樹脂(A)を含むレジスト組成物から得られるレジストパターンは、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンが得られ易いという傾向がある。
【0092】
良好なラインエッジラフネス(LER)でレジストパターンを製造でき、ドライエッチング耐性に優れたレジストパターンが得られ易いという観点から、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対する、モノマー(a1−3)に由来する構造単位の含有量は10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0093】
酸不安定基(2)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとしては、以下の式(a1−4)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−4)」という場合がある)を用いてもよい。
[式(a1−4)中、
Ra32は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Ra33は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
laは0〜4の整数を表す。laが2以上である場合、複数のRa33は互いに同一であっても異なってもよい。
Ra34及びRa35はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
Xa2は、単結合又は2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基又は炭素数2〜4のアシルオキシ基で置換されていてもよく、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基(−SO2−)又は−N(Rc)−で表される基で置き換わっていてもよい。ここで、Rcは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Ya3は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素基の各々に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基又は炭素数2〜4のアシルオキシ基で置換されていてもよい。]
【0094】
ハロゲン原子を有してもよいアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基及びトリヨードメチル基などが挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等が挙げられる。
【0095】
式(a1−4)においては、アルキル基としては、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基が好ましい。脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基等が好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基及び2−メチル−6−エチルフェニル等が好ましい。
【0096】
特に、Ra32及びRa33としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra33としては、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
Ra34及びRa35としては、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基等が好ましい。
Xa2及びYa3の置換基としては、好ましくはヒドロキシ基である。
【0097】
モノマー(a1−4)としては、以下のモノマーが挙げられる。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
樹脂(A)が、モノマー(a1−4)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、10〜95モル%の範囲が好ましく、15〜90モル%の範囲がより好ましく、20〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0104】
樹脂(A)の製造には、さらに、酸不安定基(1)と炭素−炭素二重結合とを有する他の構造単位を誘導するモノマーを用いてもよい。
このようなその他の酸不安定モノマーとしては、例えば、以下のモノマーが挙げられる。
【0105】
樹脂(A)が、その他の酸不安定モノマーに由来する構造単位を有する場合、その含有割合は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、好ましくは10〜95モル%の範囲であり、より好ましくは15〜90モル%であり、さらに好ましくは20〜85モル%である。
【0106】
さらに、酸不安定基(2)と炭素−炭素二重結合とをともに分子内に有するモノマーとしては、式(a1−5)で表されるモノマー(以下、「モノマー(a1−5)」という場合がある)が挙げられる。
式(a1−5)中、
R31は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
L3〜L5は、酸素原子又は硫黄原子又は*−O−(CH2)k1−CO−O−で表される基を表す。ここで、k1は1〜7の整数を表し、*はカルボニル基(−CO−)との結合手である。
Z1は、単結合又は*−(CH2)n4−O−又は*−(CH2)n4−CO−O−(各n4は1〜4の整数であり、1が好ましい。各*は、L5との結合手を表す)である。
s1及びs1’は、それぞれ独立して、0〜4の整数を表す。
【0107】
式(a1−5)においては、R31は、好ましくは、水素原子、メチル基及びトリフルオロメチル基であり、より好ましくは水素原子及びメチル基である。
L3及びL4は、一方が酸素原子、他方が硫黄原子であることが好ましい。
L5は、酸素原子又は硫黄原子であり、酸素原子が好ましい。
s1は、1が好ましい。
s1’は、0〜2の整数が好ましい。
Z1は、単結合又は−CH2−CO−O−が好ましい。
【0108】
モノマー(a1−5)としては、以下のモノマーが挙げられる。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
樹脂(A)が、モノマー(a1−5)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜95モル%の範囲が好ましく、3〜90モル%の範囲がより好ましく、5〜85モル%の範囲がさらに好ましい。
【0115】
樹脂(A)の製造において、アダマンチル基を有するモノマー(特に、モノマー(a1−1))をモノマー(a1)として用いる場合、モノマー(a1)の使用量の総量(100モル%)に対して、アダマンチル基を有するモノマーの使用量を15モル%以上とすることが好ましい。これにより、樹脂(A)を含むレジスト組成物から得られるレジストパターンのドライエッチング耐性がより良好になる傾向がある。
【0116】
<酸安定モノマー>
本発明のレジスト組成物に用いる樹脂(A)としては、モノマー(a1)に加えて、酸不安定基を有さないモノマー(以下「酸安定モノマー」という場合がある)を用いて得られる共重合体であることが好ましい。また、レジスト組成物に用いる添加物として、酸安定モノマーから得られる樹脂を用いてもよい。
【0117】
酸安定モノマーを併用して樹脂(A)を製造する場合、モノマー(a1)の使用量を基準にして、酸安定性モノマーの使用量を定めるとよい。モノマー(a1)の使用量と酸安定モノマーの使用量の割合は、〔モノマー(a1)〕/〔酸安定モノマー〕で表して、好ましくは10〜80モル%/90〜20モル%であり、より好ましくは20〜60モル%/80〜40モル%である。
【0118】
酸安定モノマーとしては、ヒドロキシ基又はラクトン環を分子内に有するものが挙げられる。
ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a2)」という場合がある)及び/又はラクトン環を含有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a3)」という場合がある)に由来する構造単位を有する樹脂(A)は、樹脂(A)を含むレジスト組成物を基板に塗布したとき、基板上に形成される塗布膜又は塗布膜から得られる組成物層と基板との間の密着性に優れる。また、このレジスト組成物は良好なラインエッジラフネス(LER)で、レジストパターンを製造することができる。
【0119】
<酸安定モノマー(a2)>
酸安定モノマー(a2)を樹脂(A)の製造に用いる場合、樹脂(A)を含むレジスト組成物からレジストパターンを得る際の露光源の種類によって、各々、好適な酸安定モノマー(a2)を1種又は2種以上用いることができる。
例えば、レジスト組成物を、KrFエキシマレーザ露光(波長:248nm)、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線露光に用いる場合には、酸安定モノマー(a2)として、フェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2−0)〔例えば、ヒドロキシスチレン類等〕を樹脂(A)の製造に用いることが好ましい。
一方、短波長のArFエキシマレーザ露光(波長:193nm)を用いる場合は、酸安定モノマー(a2)として、後述の式(a2−1)で表される酸安定モノマーを樹脂(A)の製造に用いることが好ましい。
【0120】
酸安定モノマー(a2)としては、式(a2−0)で表されるp−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマー(以下、「酸安定モノマー(a2−0)」という場合がある)が挙げられる。
[式(a2−0)中、
Ra30は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Ra31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は互いに同一であっても異なってもよい。]
【0121】
式(a2−0)においては、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
maは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0122】
このような酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する共重合樹脂は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン及び又は他の重合性モノマーとをラジカル重合した後、塩基によって脱アセチルすることによって得ることができる。
【0123】
酸安定モノマー(a2−0)としては、例えば、特開2010−204634号公報に記載されたモノマーが挙げられる。なかでも、式(a2−0−1)及び(a2−0−2)で表されるモノマーが好ましい。樹脂(A)を製造する際には、これらに含まれるフェノール性ヒドロキシ基が適当な保護基で保護したものを用いてもよい。
【0124】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜95モル%の範囲が好ましく、10〜80モル%の範囲がより好ましく、15〜80モル%の範囲がさらに好ましい。
【0125】
酸安定モノマー(a2)としては、以下の式(a2−1)で表されるモノマー(以下、「酸安定モノマー(a2−1)」という場合がある)を用いることもできる。
式(a2−1)中、
La3は、酸素原子又は*−O−(CH2)k2−CO−O−を表し、
k2は1〜7の整数を表す。*はカルボニル基(−CO−)との結合手を表す。
Ra14は、水素原子又はメチル基を表す。
Ra15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0126】
式(a2−1)では、La3は、好ましくは、酸素原子又は*−O−(CH2)f2−CO−O−(ここでf2は、1〜4の整数である)であり、より好ましくは酸素原子である。
Ra14は、好ましくはメチル基である。
Ra15は、好ましくは水素原子である。
Ra16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0127】
酸安定モノマー(a2−1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。なかでも、それぞれ式(a2−1−1)〜式(a2−1−6)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ式(a2−1−1)〜式(a2−1−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ式(a2−1−1)又は式(a2−1−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0128】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−1)に由来する構造単位を有する場合、その含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、3〜45モル%の範囲が好ましく、5〜40モル%の範囲がより好ましく、5〜35モル%の範囲がさらに好ましく、5〜20モル%の範囲がさらに好ましい。
【0129】
<酸安定モノマー(a3)>
酸安定モノマー(a3)は、ラクトン環を含有する酸安定モノマーである。ラクトン環は、例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環及びδ−バレロラクトン環のような単環式でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、γ−ブチロラクトン環及びγ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が好ましい。
【0130】
酸安定モノマー(a3)は好ましくは、以下の式(a3−1)、式(a3−2)及び式(a3−3)で表されるモノマーである。樹脂(A)の製造においては、これらのうち1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。式(a3−1)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−1)」という場合があり、式(a3−2)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−2)」という場合があり、式(a3−3)で示される酸安定モノマー(a3)を「酸安定モノマー(a3−3)」という場合がある。
式(a3−1)、式(a3−2)及び式(a3−3)中、
La4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2)k3−CO−O−を表す。
k3は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
Ra18〜Ra20は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
Ra21は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
Ra22及びRa23は、それぞれ独立に、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表す。
q1及びr1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
p1が2以上のとき、複数のRa21は、互いに同一であっても異なってもよい。
q1が2以上のとき、複数のRa22は、互いに同一であっても異なってもよい。
r1が2以上のとき、複数のRa23は、互いに同一であっても異なってもよい。
【0131】
式(a3−1)〜式(a3−3)において、La4〜La6は、それぞれ独立に、酸素原子又は*−O−(CH2)d1−CO−O−であることが好ましく(ここでd1は、1〜4の整数である)、より好ましくは酸素原子である。
Ra18〜Ra21は、それぞれ独立に、好ましくはメチル基である。
Ra22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1、q1及びr1は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0又は1である。
【0132】
酸安定モノマー(a3)としては、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。それぞれ式(a3−1−1)〜式(a3−1−4)、式(a3−2−1)〜式(a3−2−4)、式(a3−3−1)〜式(a3−3−4)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ式式(a3−1−1)〜式(a3−1−2)、式(a3−2−3)〜式(a3−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ式(a3−1−1)又は式(a3−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0133】
樹脂(A)が、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位からなる群より選ばれる構造単位〔酸安定モノマー(a3)に由来する構造単位〕を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜70モル%の範囲が好ましく、10〜65モル%の範囲がより好ましく、10〜60モル%の範囲がさらに好ましい。
また、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位それぞれの含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜55モル%がより好ましく、10〜50モル%がさらに好ましい。
【0134】
<酸安定モノマー(a4)>
酸安定モノマー(a4)として、式(a4−1)で表される無水マレイン酸、式(a4−2)で表される無水イタコン酸及び式(a4−3)で表されるノルボルネン環を有する酸安定モノマー(以下、「酸安定モノマー(a4−3)」という場合がある)などが挙げられる。
式(a4−3)中、
Ra25及びRa26は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基又は−COORa27を表すか、或いはRa25及びRa26は互いに結合して−CO−O−CO−を形成する。
Ra27は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜8のアルキル基と炭素数3〜20の脂環式炭化水素基とからなる基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。但し−COORa27が酸不安定基となるものは除く(例えば、Ra27は、第三級炭素原子が−O−と結合するものを含まない)。
【0135】
式(a4−3)においては、アルキル基は、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6の基である。脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数4〜12の基である。
【0136】
酸安定モノマー(a4−3)としては、例えば、2−ノルボルネン、2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0137】
樹脂(A)が、式(a4−1)で表される無水マレイン酸に由来する構造単位、式(a4−2)で表される無水イタコン酸に由来する構造単位及びモノマー(a4−3)に由来する構造単位からなる群より選ばれる構造単位〔酸安定モノマー(a4)に由来する構造単位〕を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、2〜40モル%の範囲が好ましく、3〜30モル%の範囲がより好ましく、5〜20モル%の範囲がさらに好ましい。
【0138】
また、酸安定モノマー(a4)として、例えば、以下に示すようなフッ素原子を有するモノマー〔以下、「モノマー(a4−4)」という場合がある〕を用いてもよい。
【0139】
モノマー(a4−4)の中でも、単環式又は多環式の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸5−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸6−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−[トリフルオロメチル]プロピル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル、(メタ)アクリル酸4,4−ビス(トリフルオロメチル)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノニルが好ましい。
【0140】
樹脂(A)が、モノマー(a4−4)に由来する構造単位を有する場合、その合計含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、1〜20モル%の範囲が好ましく、2〜15モル%の範囲がより好ましく、3〜10モル%の範囲がさらに好ましい。
【0141】
樹脂(A)は、好ましくは、モノマー(a1)と、酸安定モノマー(a2)及び/又は酸安定モノマー(a3)とを重合させて得られる共重合体である。この好ましい共重合体において、モノマー(a1)として、上述のモノマー(a1−1)及びモノマー(a1−2)の少なくとも1種を用いることが好ましく、モノマー(a1−1)を用いることがさらに好ましい。酸安定モノマー(a2)としては、酸安定モノマー(a2−1)が好ましく、酸安定モノマー(a3)としては、酸安定モノマー(a3−1)が好ましい。
【0142】
樹脂(A)は、モノマー(a1)と、必要に応じて、酸安定モノマー(a2)、酸安定モノマー(a3)及び酸安定モノマー(a4)からなる群より選ばれる酸安定モノマーとを用い、これらが上述のとおりの樹脂(A)の全構造単位に対する好適な含有量になるようにして使用量を調節した後、公知の重合法(例えばラジカル重合法)により製造することができる。
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは2,500以上であり、より好ましくは3,000以上である。該重量平均分子量の上限は50,000以下が好ましく、30,000以下がさらに好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン基準の換算値として求められるものであり、該分析の詳細な分析条件は、本願の実施例で詳述する。
【0143】
<塩基性化合物(以下、「塩基性化合物(C)」という場合がある。)>
本発明のレジスト組成物は、さらに、塩基性化合物(C)を含有していてもよい。ここでいう「塩基性化合物」とは、酸を捕捉するという特性を有する化合物(以下、「クエンチャー」という場合がある)、特に、酸発生剤から発生する酸を捕捉するという特性を有する化合物を意味する。
【0144】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えば、アミン及びアンモニウム塩を挙げることができる。アミンは、脂肪族アミンでも、芳香族アミンでもよい。脂肪族アミンは、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンのいずれでもよい。芳香族アミンは、アニリンのような芳香環にアミノ基が結合したもの、ピリジンのような複素芳香族アミンのいずれでもよい。好ましい塩基性化合物(C)として、以下の式(C2)で表される芳香族アミン、より好ましい塩基性化合物(C)として、以下の式(C2−1)で表されるアニリン類が挙げられる。
式(C2)及び式(C2−1)中、
Arc1は、芳香族炭化水素基を表す。
Rc5及びRc6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。
Rc7は、アルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はニトロ基を表す。
これらアルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基にある水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アミノ基はさらに、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい。
m3は0〜3の整数を表す。m3が2以上のとき、複数のRc7は、互いに同一でも異なってもよい。
【0145】
式(C2)及び式(C2−1)において、
アルキル基及びアルコキシ基は、好ましくは、炭素数1〜6である。
脂環式炭化水素基は、好ましくは、炭素数5〜10であり、さらに好ましくは、炭素数5〜10のシクロアルキル基である。
芳香族炭化水素基は、好ましくは、炭素数6〜10である。
【0146】
式(C2)で表される芳香族アミンは、例えば、1−ナフチルアミン及び2−ナフチルアミン等が挙げられる。
式(C2−1)で表されるアニリン類は、例えば、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン及びジフェニルアミン等が挙げられる。
【0147】
また、以下の式(C3)〜式(C11)のいずれかで表される化合物(以下、式番号に応じて、「化合物(C3)」〜「化合物(C11)」という)も用いることができる。
式(C3)〜式(C11)中、
Rc8、Rc20、Rc21、Rc23〜Rc28は、互いに独立に、Rc7で説明したいずれかの基を表す。
Rc9〜Rc14、Rc16、Rc17、Rc18、Rc19及びRc22は、互いに同一でも異なってもよく、Rc5及びRc6で説明したいずれかの基を表す。
o3、p3、q3、r3、s3、t3及びu3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。o3が2以上であるとき、複数のRc20は互いに同一でも異なってもよく、p3が2以上であるとき、複数のRc21は互いに同一でも異なってもよく、q3が2以上であるとき、複数のRc24は互いに同一でも異なってもよく、r3が2以上であるとき、複数のRc25は互いに同一でも異なってもよく、s3が2以上であるとき、複数のRc26は互いに同一でも異なってもよく、t3が2以上であるとき、複数のRc27は互いに同一でも異なってもよく、u3が2以上であるとき、複数のRc28は互いに同一でも異なってもよい。
Rc15は、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である)、脂環式炭化水素基(好ましくは、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基である)又はアルカノイル基(好ましくは、炭素数2〜6のアルカノイル基である)を表す。
n3は0〜8の整数を表す。n3が2以上のとき、複数のRc15は、互いに同一でも異なってもよい。
Lc1及びLc2は、それぞれ独立に、アルカンジイル基(好ましくは、炭素数1〜6のアルカンジイル基である)、カルボニル基、−C(=NH)−、−C(=NRc3)−(但し、Rc3は、炭素数1〜4のアルキル基を表す)、チオキシ基、ジスルフィド結合(−S−S−)又はこれらの組合せを表す。
【0148】
アルカノイル基としては、アセチル基、2−メチルアセチル基、2,2−ジメチルアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロピオニル基等が挙げられる。
【0149】
式(C3)〜式(C11)においては、アルキル基は、好ましくは、炭素数1〜6である。脂環式炭化水素基は、好ましくは、炭素数3〜6である。アルカノイル基は、好ましくは、炭素数2〜6である。
アルカンジイル基は、好ましくは、炭素数1〜6のアルカンジイル基である。
【0150】
塩基性化合物(C3)としては、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン等も用いることができる。
【0151】
化合物(C4)としては、例えば、ピペラジン等が挙げられる。
化合物(C5)としては、例えば、モルホリン等が挙げられる。
化合物(C6)としては、例えば、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
化合物(C7)としては、例えば、2,2’−メチレンビスアニリン等が挙げられる。
化合物(C8)としては、例えば、イミダゾール及び4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
化合物(C9)としては、例えば、ピリジン、4−メチルピリジン等が挙げられる。
化合物(C10)としては、例えば、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン及び2,2’−ジピコリルアミン等が挙げられる。
化合物(C11)としては、例えば、ビピリジン等が挙げられる。
【0152】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリン等が挙げられる。
【0153】
本発明のレジスト組成物に用いる塩基性化合物(C)としては、これらの中でもジイソプロピルアニリンが好ましく、2,6−ジイソプロピルアニリンが特に好ましい。
【0154】
<溶剤(以下、「溶剤(D)」という場合がある)>
本発明のレジスト組成物は、溶剤(D)を含むことが好ましい。溶剤(D)は、用いる塩(I)の種類及びその量、樹脂(A)の種類及びその量、酸発生剤(B)の種類及びその量、さらに後述するレジストパターンの製造方法に応じて、基板上にレジスト組成物を塗布する際の塗布性を考慮して、適宜選択することができる。
【0155】
溶剤(D)としては、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン等の環状エステル類を挙げることができる。溶剤(D)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0156】
<その他の成分(以下、「成分(F)」という場合がある)>
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、塩(I)及び樹脂(A)並びに必要に応じて用いられる溶剤(D)、酸発生剤(B)及び塩基性化合物(C)以外のその他の成分(F)を含んでいてもよい。成分(F)としては、本技術分野で公知の添加剤、例えば、樹脂(A)以外の高分子化合物、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤及び染料等が挙げられる。
【0157】
<レジスト組成物の調製>
本発明のレジスト組成物は、通常、溶剤(D)の存在下で、塩(I)を含む酸発生剤及び樹脂(A)を混合することにより調製することができる。さらに、上述のとおり必要に応じて酸発生剤(B)、塩基性化合物(C)及び/又は成分(F)を混合してもよい。塩基性化合物(C)を混合することが好ましい。混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、用いる塩(I)等の種類や塩(I)等の溶剤(D)に対する溶解度等に応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて、0.5〜24時間の中から適切な時間を選ぶことができる。なお、混合手段も特に制限はなく、攪拌混合等を用いることができる。
本発明のレジスト組成物を調製する際に用いる各成分の使用量を選択することにより、本発明のレジスト組成物中の各成分の含有量を調節することができる。
【0158】
溶剤(D)の含有量は、レジスト組成物総質量に対して90質量%以上が好ましく、より好ましくは92質量%以上であり、さらに好ましくは94質量%以上であり、99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは99質量%以下である。このような含有量で溶剤(D)を含むレジスト組成物は、レジストパターンの製造方法において、厚み30〜300nm程度の組成物層を形成しやすい。
【0159】
レジスト組成物に対する樹脂(A)の含有量は、レジスト組成物の固形分の総質量に対して、好ましくは80質量%以上99質量%以下である。
本明細書において「組成物の固形分」とは、後述する溶剤(D)を除いたレジスト組成物成分の合計を意味する。例えば、溶剤(D)の含有量が90質量%である本発明のレジスト組成物において、レジスト組成物の固形分は10質量%に相当する。組成物の固形分及びこれに対する各成分の含有量は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0160】
レジスト組成物に対する塩(I)の含有量は、レジスト組成物に含まれる樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。
【0161】
レジスト組成物に酸発生剤(B)を用いる場合、その含有量は、レジスト組成物に含まれる樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。
レジスト組成物における塩(I)と酸発生剤(B)との合計含有量は、レジスト組成物に含まれる樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。また、好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは35質量部以下である。
【0162】
レジスト組成物に塩基性化合物(C)を用いる場合、その含有量は、レジスト組成物の固形分の総質量に対して、好ましくは0.01〜1質量%程度である。なお、塩基性化合物(C)の含有量は、塩(I)及び酸発生剤(B)の合計含有量よりも低いことが好ましい。
【0163】
成分(F)を本レジスト組成物に用いる場合には、成分(F)の種類に応じて、適切な含有量を調節可能である。
このように各成分を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.003〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過することが好ましい。
【0164】
<レジストパターンの製造方法>
本発明のレジストパターンの製造方法は、
(1)本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含む。
【0165】
工程(1)におけるレジスト組成物の基板上への塗布は、スピンコーター等、半導体の微細加工のレジスト材料塗布用として広く用いられている塗布装置によって行うことができる。これにより基板上にレジスト組成物からなる塗布膜を形成することができる。塗布装置の条件(塗布条件)を種々調節することにより、塗布膜の膜厚を調整することができる。適切な予備実験等を行うことにより、所望の膜厚の塗布膜になるように塗布条件を選ぶことができる。レジスト組成物を塗布する前の基板は、微細加工を実施しようとする種々のものを選ぶことができる。レジスト組成物を塗布する前に、基板を洗浄し、反射防止膜を形成するなどしてもよい。反射防止膜の形成には例えば、市販の有機反射防止膜用組成物を用いることができる。
【0166】
工程(2)では、基板上に塗布されたレジスト組成物、すなわち塗布膜を乾燥させて、溶剤(D)を除去する。乾燥は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)又は減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わせて、塗布膜から溶剤を蒸発させることにより行われる。乾燥条件は、レジスト組成物に含まれる溶剤(D)の種類等に応じて選択でき、例えば、ホットプレートを用いる加熱手段では、該ホットプレートの表面温度を50〜200℃程度の範囲にして行うことが好ましい。また、減圧手段では、適当な減圧機の中に、塗布膜が形成された基板を封入した後、減圧機の内部圧力を1〜1.0×105Pa程度にすればよい。これにより、基板上に組成物層を形成することができる。
【0167】
工程(3)では、組成物層を露光する。好ましくは、露光機を用いて組成物層を露光する工程である。露光には、微細加工を実施しようとする所望のパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光することが好ましい。露光機の露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、該露光機は液浸露光機であってもよい。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。本明細書において、これらの放射線を照射することを総称して「露光」という場合がある。
マスクを介して露光することにより、組成物層には露光された部分(露光部)及び露光されていない部分(未露光部)が生じる。露光部の組成物層では組成物層に含まれる塩(I)及び酸発生剤(B)が露光エネルギーを受けて酸を発生し、さらに発生した酸との作用により、樹脂(A)にある酸不安定基が脱保護反応により親水性を生じるため、露光部の組成物層にある樹脂(A)はアルカリ水溶液に可溶なものとなる。一方、未露光部では露光エネルギーを受けないため、樹脂(A)はアルカリ水溶液に対して不溶又は難溶のままとなる。露光部にある組成物層と未露光部にある組成物層とは、アルカリ水溶液に対する溶解性が著しく相違することとなる。
【0168】
工程(4)では、露光後の組成物層に加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)を行う。加熱処理は、前記工程(2)で示したホットプレートを用いる加熱手段等が好ましい。工程(4)において、ホットプレートを用いる加熱手段を行う場合、該ホットプレートの表面温度は50〜200℃程度が好ましく、70〜150℃程度がより好ましい。当該加熱処理により、上記脱保護反応が促進される。
【0169】
工程(5)では、加熱後の組成物層を現像する。好ましくは、加熱後の組成物層を現像装置により現像する。現像する工程で、加熱後の組成物層をアルカリ水溶液と接触させると、露光部の組成物層は該アルカリ水溶液に溶解して除去され、未露光部の組成物層は基板上に残るため、基板上にレジストパターンを製造することができる。
前記アルカリ水溶液としては、「アルカリ現像液」と称される本技術分野で公知のものを用いることができる。アルカリ水溶液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
【0170】
現像後、レジストパターンは、好ましくは超純水等でリンス処理を行うことが好ましい。さらに基板及びレジストパターン上に残存している水分を除去することが好ましい。
【0171】
<用途>
本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物、さらに液浸露光用のレジスト組成物として好適である。
【0172】
なお、本明細書では、特に断りのない限り、化合物の構造式における置換基の例示は、炭素数を適宜選択しながら、同様の置換基を有するいずれの構造式においても適用することができる。直鎖状、分岐状又は環状をとることができるものは、そのいずれをも含み、かつそれらが混在していてもよい。立体異性体が存在する場合は、全ての立体異性体を包含する。
また、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」及び「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【実施例】
【0173】
実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記しないかぎり質量基準である。樹脂(A)の組成比(樹脂(A)製造に用いた各モノマーに由来する構造単位の、樹脂(A)に対する共重合比)は、重合終了後の反応液における未反応モノマー量を、液体クロマトグラフィーを用いて測定し、得られた結果から重合に用いられたモノマー量を求めることにより算出した。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの分析条件は下記のとおりである。
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3+guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0174】
化合物の構造は、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型)を用い、分子ピークを測定することで確認した。以下の実施例ではこの分子ピークの値を「MASS」で示す。
【0175】
実施例1:式(I1)で表される塩の合成
式(I1−a)で表される塩6.03部及びアセトニトリル30.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、式(I1−b)で表される化合物1.70部を添加し、60℃で1時間攪拌した。得られた反応溶液をろ過し、回収されたろ液を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム30部及びイオン交換水15部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液して有機層を得た。得られた有機層に、イオン交換水15部を加え、23℃で30分間攪拌した。この水洗の操作をさらに3回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル100部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I1−c)で表される塩6.12部を得た。
【0176】
式(I1−c)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I1−d)で表される化合物1.37部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.10部を仕込み、23℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム60部及びイオン交換水20.00部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮した。得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I1)で表される塩2.48部を得た。
【0177】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 547.2
【0178】
実施例2:式(I2)で表される塩の合成
【0179】
式(I2−a)で表される塩を、特開2008−127367号公報に記載された方法で合成した。式(I2−a)で表される塩50.00部、クロロホルム300.00部及び式(I2−b)で表される化合物20.34部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、これを、60℃に昇温し、さらに1時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却し、エチレングリコール28.31部を仕込み、23℃で3時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム200部及びイオン交換水75部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を4回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル80部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル150部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I2−d)で表される塩24.58部を得た。
【0180】
式(I2−e)で表される化合物20.00部、クロロホルム140.00部及び式(I2−b)で表される化合物19.57部を仕込み、23℃で1時間攪拌した。得られた反応物に、イオン交換水50部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を5回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮した。得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル100部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I2−f)で表される塩24.94部を得た。
【0181】
式(I2−d)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I2−f)で表される化合物3.01部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、これに、炭酸カリウム0.14部を仕込み、40℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム80部及びイオン交換水30.00部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を8回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮し、得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I2)で表される塩4.02部を得た。
【0182】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 427.1
【0183】
実施例3:式(I3)で表される塩の合成
リチウムアルミニウムハイドライド10.4部、無水テトラヒドロフラン120部を仕込み23℃で30分間攪拌した。次いで、式(I3−a)で表される塩62.2部を無水THF900部に溶かした溶液を氷冷下で滴下し、23℃で5時間攪拌した。反応マスに酢酸エチル50.0部、6N塩酸50.00部を添加、攪拌して、分液を行った。有機層を濃縮し、カラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I3−b)で表される塩84.7部(純度60%)を得た。
【0184】
得られた式(I3−b)で表される化合物6.13部、式(I3−c)で表される化合物5.98部及びクロロホルム100部を仕込み、23℃で3時間攪拌した。得られた反応マスに、イオン交換水50部を添加、分液水洗を行った。この操作を3回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル100部を添加して溶解し、濃縮し、酢酸エチル100部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣にtert−ブチルメチルエーテル100部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮し、得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I3−d)で表される塩4.96部を得た。
式(I3−d)で表される化合物4.40部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I2−f)で表される化合物3.01部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.14部を仕込み、40℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム80部及びイオン交換水30.00部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を8回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮し、得られた濃縮物をカラム(メルク シリカゲル60−200メッシュ 展開溶媒:クロロホルム/メタノール=5/1)分取することにより、式(I2)で表される塩0.52部を得た。
【0185】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 369.1
【0186】
実施例4:式(I83)で表される塩の合成
式(I1−c)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I83−d)で表される化合物0.87部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.10部を仕込み、23℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム60部及びイオン交換水20部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭0.80部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮することにより、式(I83)で表される塩3.48部を得た。
【0187】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 481.1
【0188】
実施例5:式(I84)で表される塩の合成
式(I1−c)で表される化合物5.00部、ジメチルホルムアミド30.00部及び式(I84−d)で表される化合物0.55部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.10部を仕込み、23℃で2時間攪拌した。得られた反応物に、クロロホルム60部及びイオン交換水20部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭0.80部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル20部を添加して溶解し、濃縮した。その後、これに、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、濃縮することにより、式(I84)で表される塩2.24部を得た。
【0189】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 439.1
【0190】
実施例6:式(I85)で表される塩の合成
式(I1−c)で表される化合物3.00部、式(I85−d)で表される化合物0.98部、炭酸カリウム0.10部及びアセトン25.00部を仕込み、50℃で20時間攪拌した。得られた反応物を濃縮した後、残渣にクロロホルム36部及びイオン交換水12部を仕込み、攪拌、分液を行った。水洗を6回行った。得られた有機層に活性炭0.50部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル50部を加えて攪拌し、ろ過した。得られた残渣を、アセトニトリルに溶解し、濃縮した。得られた濃縮物に、酢酸エチル15部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I85)で表される塩1.58部を得た。
【0191】
MS(ESI(+)Spectrum):M+ 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M− 555.1
【0192】
樹脂の合成
樹脂の合成において使用した化合物(モノマー)を下記に示す。以下、これらのモノマーを「モノマー(A)」〜「モノマー(G)」という。
【0193】
〔樹脂A1の合成〕
モノマー(D)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(F)を、そのモル比〔モノマー(D):モノマー(E):モノマー(B):モノマー(C):モノマー(F)〕が、30:14:6:20:30の割合となるように混合し、さらに、このモノマー混合物に、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%となるように添加し、これを73℃で約5時間加熱することで重合を行った。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収し、再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を2回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が約8.1×103である共重合体を収率65%で得た。この共重合体は、モノマー(D)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマーに各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。
【0194】
〔樹脂A2の合成〕
モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(C)及びモノマー(F)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(E):モノマー(B):モノマー(C):モノマー(F)〕が、30:14:6:20:30の割合となるように混合し、さらに、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%との割合で添加し、これを73℃で約5時間加熱することで重合を行った。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収し、再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を3回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が約7.8×103である共重合体を収率68%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A2とする。
【0195】
〔樹脂A3の合成〕
モノマー(A)、モノマー(B)及びモノマー(C)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(B):モノマー(C)〕が、50:25:25となるように混合し、さらに、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを混合した。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1mol%と3mol%との割合で添加し、これを80℃で約8時間加熱することで重合を行った。その後、重合反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(質量比メタノール:水=4:1)に注いで、樹脂を沈殿させた。この樹脂をろ過・回収し、再度、ジオキサンに溶解させ、大量のメタノールと水との混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、沈殿した樹脂をろ過・回収するという操作を3回行うことにより再沈殿精製し、重量平均分子量が約9.2×103である共重合体を収率60%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(B)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の各モノマーから導かれる構造単位を有するものであり、これを樹脂A3とする。
【0196】
〔樹脂A4の合成〕
モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(E):モノマー(B):モノマー(F):モノマー(C)〕が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×103の共重合体を収率78%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(E)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A4とする。
【0197】
〔樹脂A5の合成〕
モノマー(A)、モノマー(N)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)を、そのモル比〔モノマー(A):モノマー(G):モノマー(B):モノマー(F):モノマー(C)〕が、30:14:6:20:30となるように混合し、全モノマー量の1.5質量倍のジオキサンを加えて溶液とした。この溶液に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を全モノマー量に対して各々、1mol%及び3mol%添加し、これらを75℃で約5時間加熱した。得られた反応混合物を、大量のメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過した。得られた樹脂を再び、ジオキサンに溶解させて得られる溶解液をメタノール/水混合溶媒に注いで樹脂を沈殿させ、この樹脂をろ過するという再沈殿操作を2回行い、重量平均分子量7.2×103の共重合体を収率78%で得た。この共重合体は、モノマー(A)、モノマー(G)、モノマー(B)、モノマー(F)及びモノマー(C)に各々由来する、以下の構造単位を有するものであり、これを樹脂A5とする。
【0198】
<レジスト組成物の調製>
合成例1で得られた樹脂A1、樹脂A2、樹脂A3、樹脂A4又は樹脂A5と、以下に示す酸発生剤と、以下に示すクエンチャーとを表4に示す質量部で、以下に示す溶剤と混合し、得られた混合物を孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0199】
【表4】
【0200】
<酸発生剤>
酸発生剤I1:式(I1)で表される塩
酸発生剤I2:式(I2)で表される塩
酸発生剤I3:式(I3)で表される塩
酸発生剤I83:式(I83)で表される塩
酸発生剤I84:式(I84)で表される塩
酸発生剤I85:式(I85)で表される塩
酸発生剤B1:特開2010−152341号公報の実施例に従って合成
酸発生剤B2:特開2007−161707号公報の実施例に従って合成
【0201】
<塩基性化合物:クエンチャー>
クエンチャーC1:2,6−ジイソプロピルアニリン(東京化成工業(株)製)
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265部
2−ヘプタノン 20.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0202】
<レジストパターンの製造及びその評価>
12インチのシリコン製ウェハ上に、有機反射防止膜用組成物[ARC−29;日産化学(株)製]を塗布して、205℃、60秒の条件でベークすることによって、厚さ78nmの有機反射防止膜を形成した。次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記のレジスト組成物を乾燥(プリベーク)後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。
得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表4の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベーク(PB)した。こうしてレジスト組成物膜を形成したウェハに、液浸露光用ArFエキシマステッパー[XT:1900Gi;ASML社製、NA=1.35、3/4Annular X−Y偏光]を用いて、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを液浸露光した。なお、液浸媒体としては超純水を使用した。
露光後、ホットプレート上にて、表4の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
【0203】
得られたレジストパターンにおいて、50nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量となる露光量を実効感度とした。
【0204】
<ラインエッジラフネス評価(LER)>
リソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、レジストパターンの側壁の凹凸の触れ幅が、
3.5nm以下であるものを◎◎、
3.5nmを超え、4nm以下であるものを◎
4nmを超え、4.5nm以下であるものを○、
4.5nmを超えるものを×とした。
以上のようにして求められたラインエッジラフネス評価(LER)の結果を表5に示す。括弧内の数字は側壁の凹凸の触れ幅(nm)を示す。
【0205】
【表5】
【0206】
式(I)で表される塩を含有するレジスト組成物は、そのラインエッジラフネス(LER)が「○」、「◎」又は「◎◎」の結果であり、ラインエッジラフネス(LER)が良好なレジストパターンが製造できることを確認した。
一方、塩(I)を含まない比較例1のレジスト組成物は、ラインエッジラフネス(LER)が不良(×)であった。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明の塩及びこの塩を含む本レジスト組成物は、半導体の微細加工に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される塩。
[式(I)中、
Q1及びQ2は、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
L1は、2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
L2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Z+は、有機対イオンを表す。]
【請求項2】
前記L1が、炭素数1〜6のアルカンジイル基又は*−CO−O−L1b1−(L1b1は、炭素数1〜15の飽和炭化水素基を表す。)である請求項1記載の塩。
【請求項3】
前記L1が、メチレン基、*−CO−O−CH2−CH2−**又は以下で表される2価の基(*は、−C(Q1)(Q2)−との結合手、**は酸素原子との結合手を表す。)である請求項1又は2記載の塩。
【請求項4】
前記L2が、単結合又はメチレン基である請求項1〜3のいずれか記載の塩。
【請求項5】
前記Z+が、アリールスルホニウムカチオンである請求項1〜4のいずれか記載の塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の塩を含有する酸発生剤。
【請求項7】
請求項6記載の酸発生剤と樹脂とを含有し、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
【請求項8】
さらに塩基性化合物を含有する請求項7記載のレジスト組成物。
【請求項9】
(1)請求項7又は8記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【請求項1】
式(I)で表される塩。
[式(I)中、
Q1及びQ2は、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
L1は、2価の炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
L2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成しているメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基を構成しているメチレン基は、酸素原子、スルホニル基又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。
Z+は、有機対イオンを表す。]
【請求項2】
前記L1が、炭素数1〜6のアルカンジイル基又は*−CO−O−L1b1−(L1b1は、炭素数1〜15の飽和炭化水素基を表す。)である請求項1記載の塩。
【請求項3】
前記L1が、メチレン基、*−CO−O−CH2−CH2−**又は以下で表される2価の基(*は、−C(Q1)(Q2)−との結合手、**は酸素原子との結合手を表す。)である請求項1又は2記載の塩。
【請求項4】
前記L2が、単結合又はメチレン基である請求項1〜3のいずれか記載の塩。
【請求項5】
前記Z+が、アリールスルホニウムカチオンである請求項1〜4のいずれか記載の塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の塩を含有する酸発生剤。
【請求項7】
請求項6記載の酸発生剤と樹脂とを含有し、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
【請求項8】
さらに塩基性化合物を含有する請求項7記載のレジスト組成物。
【請求項9】
(1)請求項7又は8記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層を露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。
【公開番号】特開2012−193170(P2012−193170A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37200(P2012−37200)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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