説明

塩およびその結晶変態

【課題】本発明は、式Iの既知の化合物の新規で改良された塩の提供。
【解決手段】本発明は、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの塩およびその結晶形態、それらの製造法および使用、ならびにこのような塩および結晶形態を含む医薬に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの塩およびその結晶形態に関する。また、その製造法、本発明の化合物を含む医薬組成物、および温血動物、とりわけヒトの治療処置におけるそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアは、下記式
【化1】

により示すことができ、特許文献1(この文献を出典明示により包含させる)により既知であり、そして該明細書に記載のとおりに合成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願公開WO2004/026843
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式Iの既知の化合物の新規で改良された塩に関する。式Iの化合物はラセミまたはエナンチオマー形態を含む。特に、本発明において好ましいものは、式Ia:
【化2】

により示される式IのSエナンチオマーである。
【0005】
1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの遊離塩基は水性媒体において難溶解性を示し、これが1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアを、特に、例えば、高用量または静脈内(IV)製剤のための医薬組成物に製剤することを困難にしている。本発明によって、今回驚くべきことに、遊離塩基を製剤する困難性を本発明の化合物で克服できることを見いだした。予期しないことに、式Iの化合物のベンゼンスルホン酸との塩は特に有利な薬物動態学的特性を有することを見いだし、さらに、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの全身投与のために適当される医薬組成物の製造のために、特に適当である有利な製剤特性のユニークな組合わせを有することを見いだした。
【0006】
さらに、驚くべきことに、本発明によって、ある条件下で、結晶形態が1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート塩から得られることが見い出された。このような結晶形態は改良された安定性および純度を示し、したがって、例えば、工場における取扱いを容易にする。1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶形態は、好ましくは実質的に純粋である。本明細書において、実質的に純粋なる用語は、関連物質の合計が1重量%未満、好ましくは0.75重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満であり、残留溶媒および水が1重量%未満、好ましくは0.75重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満およびさらに好ましくは0.25重量%未満であることを意味する。
【0007】
本発明によって、さらに驚くべきことに結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレートが水和物として回収できることを見いだした。したがって、好ましい態様において、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレートの結晶形態は水和物であり、特に好ましくは一水和物である。他の好ましい態様において、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレートの結晶形態は水和物でなく、すなわち無水和物である。無水和物は、例えば、適当な条件下での一水和物の脱水により製造できる。化合物Iのベシレートの塩の水和物、例えば、一水和物は、特に水性媒体における高溶解性特性を示し、したがって式Iの化合物のための医薬組成物の改良された製剤、例えば、高用量製剤またはIV製剤のための新しい可能性を開く。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート一水和物塩の多形形態は、一般的に、10℃/分の加熱速度での示差走査熱量測定法により分析するとき、約115℃で(開始、広いピーク)脱水する。しかしながら、融点は、例えば、測定される条件、または、例えば、サンプルの純度に依存し、変化することが理解されている。これは、10℃/分の加熱速度での熱重量分析により分析するとき、約130℃で約3.2重量%の喪失に相当する。1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート無水和物塩の多形形態は、約170から175℃、好ましくは約173℃の開始温度で融解することにより特徴付けることができる。融点は、TA DSC Q1000を使用するDSCサーモグラムによって測定する。DSCは“示差走査熱量測定法”である。この技術を使用して、多形形態の融解温度を、サーマル(thermal)までサンプルを加熱する、すなわち吸熱反応を超高感度センサーにより検出することによって測定する。本明細書において示される融点は、TA DSC Q1000装置を使用し、約1から3mgの各サンプルをアルミニウム製ふた付きるつぼ中で、窒素雰囲気下で10℃/分の加熱速度(30℃で開始)で加熱して測定する。
【0009】
図1は1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶性のベシレート一水和物塩のX線回折図を示す。X線図において、回折角2θが横軸(x軸)でプロットされ、ピーク強度が縦軸(y軸)でプロットされている。X線粉末回折像を、Cu Kα放射線源でBruker D8 Discover回折計において測定する(Kα1放射線、波長λ=1.54056Å)。したがって、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート一水和物塩の結晶形態であるとき、該結晶形態は、回折角2θ(±0.5°)で少なくとも1つの下記回折ピークにより特徴づけられる:7.5、9.5、11.9、12.1、15.4、16.3、17.1、19.0、19.4、20.6、21.3、22.1、22.5、23.1、23.6、24.2、24.7、25.8、26.8、27.8、29.2、29.7、30.5、32.0、32.3、36.4、37.3。当業者に理解されるとおり、回折の相対強度は、例えば、利用したサンプル製造法または製造装置に依存して変化し得るし、また、上記のピークの幾つかは常に検出できるとは限らない。したがって、1つの態様において、本発明は、回折角2θで特性ピーク、7.5°を含むX線粉末回折像を有する、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート一水和物塩の結晶形態を提供する。さらなる態様において、本発明は、回折角2θでさらなる特性ピーク、21.3°および/または23.1°を含むX線粉末回折像を有する、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート一水和物塩の結晶形態を提供する。
【0010】
図6は1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの無水結晶性のベシレート塩のX線回折図を示す。したがって、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの無水ベシレート塩の結晶形態であるとき、該結晶形態は、回折角2θ(±0.5°)で少なくとも1つの下記回折ピークにより特徴づけられる:5.8、10.3、11.8、12.0、13.5、14.5、16.1、16.7、17.4、18.2、19.0、19.7、20.2、20.6、21.1、21.6、22.1、22.7、23.7、24.8、25.1、25.7、26.8、28.3、30.7、33.2、35.0、35.5、39.0、39.2。当業者に理解されるとおり、回折の相対強度は、例えば、利用したサンプル製造法または製造装置に依存して変化し、また、上記のピークの幾つかは常に検出できるとは限らない。したがって、1つの態様において、本発明は、回折角2θで特性ピーク、25.1°を含むX線粉末回折像を有する、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの無水ベシレート塩の結晶形態を提供する。さらなる態様において、本発明は、回折角2θで1つ、または、いくつか、または、すべての特性ピーク、14.5°、22.7°、22.1°、20.2°および/または23.7°を含むX線粉末回折像を有する、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート一水和物塩の結晶形態を提供する。
【0011】
表1.1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶性のベシレート一水和物塩の多数の有意な回折ピークの表
【表1】

【0012】
表2.1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの無水結晶性のベシレート塩の多数の有意な回折ピークの表
【表2】

【0013】
本発明において、観察される回折角2θは、上記屈折角の±0.1°、±0.2°、±0.3°または±0.5°、または、±10%または±20%までバラつくことがあり得る。
【0014】
図2は、結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のFT−IRスペクトルを示す。FT−IRスペクトルはNicolet Magna−IR560を使用して記録した。該サンプルをATR(減衰全反射法)サンプリング装置を使用して試験した。該結晶形態は、下記の主なIRバンド:1696cm−1、1540cm−1、1189cm−1、1126cm−1、1034cm−1および1016cm−1により特徴付けることができる。さらに広範には、下記のIRバンド:3289cm−1、3080cm−1、2892cm−1、1696cm−1、1606cm−1、1540cm−1、1493cm−1、1478cm−1、1458cm−1、1444cm−1、1379cm−1、1351cm−1、1328cm−1、1309cm−1、1261cm−1、1222cm−1、1189cm−1、1126cm−1、1107cm−1、1071cm−1、1034cm−1、1016cm−1、996cm−1、962cm−1、943cm−1、932cm−1、879cm−1、834cm−1、787cm−1、764cm−1、733cm−1、697cm−1、670cm−1、645cm−1、621cm−1、604cm−1、564cm−1および537cm−1により特徴付けることができる。
【0015】
図3は結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のTGAカーブを示す。
図4は結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のDSCカーブを示す。
図5は結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のNMRを示す。
【0016】
本発明は、また、遊離塩基形態の式Iの化合物と適当な形態のベンゼンスルホン酸を反応させ、反応混合物から得られた塩を回収することを含む、本発明のベシレート塩の製造法を含む。本発明の工程は慣用の方法、例えば、適当な不活性溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチルまたはt−ブチルメチルエーテル中での反応により実施できる。
【0017】
本発明において、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレートの結晶化のための方法を提供する。結晶を形成する正確な条件は、現在、経験的に決定されており、実施例1から3に記載されている結晶化条件を含む、多くの方法が実際に適当である。
【0018】
結晶化誘導条件は、通常、適当な結晶化誘導溶媒、例えば、酢酸エチルまたはt−ブチルメチルエーテルの使用を含む。好都合には、該化合物を環境温度で溶媒に溶解する。該溶液は、溶媒に化合物の何らかの1種以上の形態およびその溶媒和物、例えば、水和物を溶解することにより製造できる。次に結晶は、遊離塩基から塩への変換、上記のように約0℃から約40℃の温度で、好ましくは環境温度で実施する結晶化により形成できる。溶解および結晶化を様々な慣用の方法によって実施できる。例えば、遊離塩基を、環境温度で高溶解性であるがベシレート塩は同じ温度で非常に難溶性である溶媒または溶媒の混合物に溶解させることができる。高温で遊離塩基を溶解し、次に塩形成後に冷却することでも、ベシレート塩結晶を溶液から結晶化することを促進できる。該化合物が、好ましくは、少なくとも10重量%の量で20℃で高溶解性である良溶媒、および、好ましくは多くて約0.1重量%の量で20℃で非常に難溶性である貧溶媒を含む混合溶媒もまた使用できるが、混合物からの結晶化は、通常、少なくとも約0℃の低温で、選択された溶媒混合物を使用して可能である。
【0019】
あるいは、異なる溶媒における結晶の溶解性の差を使用できる。例えば、遊離塩基を、少なくとも1重量%の量で約20℃で溶解し得る高溶解性である良溶媒、例えば、酢酸エチルまたはアセトンに溶解し、塩溶液に変換し、次に非常に難溶性である貧溶媒、例えば、多くて約0.1重量%の量で20℃で溶解し得るものと混合できる。したがって、良溶媒中の遊離塩基の溶液を、貧溶媒中のベンゼンスルホン酸に、通常、約20℃以上の温度を維持しながら加えるか、または、貧溶媒を良溶媒中の変換されたベシレート塩の溶液に、再び、通常、約20℃以上の温度を維持しながら加えることができる。遊離塩基に対する良溶媒の例は、アセトンまたは酢酸エチルを含んでもよい。ベシレート塩に対する貧溶媒の例は、酢酸エチルまたはt−ブチルメチルエーテルまたは水を含んでもよい。好ましくは、結晶化は約0℃から約40℃の範囲の温度で実施される。
【0020】
本発明方法の別の態様において、固体遊離塩基を通常、少なくとも約20℃の温度で、この温度で不完全な溶解性、好ましくは非常に難溶性である溶媒に懸濁する。固体粒子が分散され、溶媒中で不完全な溶解を維持している懸濁液となる。好ましくは、固体を振動、例えば、振盪または撹拌により、懸濁液の状態に維持する。遊離塩基のベシレート塩への変換を行なうため、懸濁液を通常、約20℃以上の温度に維持する。適当な溶媒に懸濁した遊離塩基は非結晶性または結晶性であり得るし、それは、また、溶媒和物、例えば、水和物であり得る。
【0021】
便宜的には、結晶性の物質の“種晶”を、利用できるとき、結晶化を誘導するため溶液に加えることができる。
【0022】
本発明の好ましい態様において、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレートの結晶形態、例えば、その一水和物は、高結晶化度を有する。結晶形態は、本明細書において、他の形態を多くても約0.5%(w/w)、例えば多くても約0.1%(w/w)で含むとき、“高結晶化度”を有する、または“結晶学的に純粋”であると定義する。したがって、例えば“結晶学的に純粋な形態A”は、約0.5%(w/w)以下、例えば約0.1%(w/w)以下の他の結晶学的形態および/または非結晶形の形態を含む。
【0023】
1つの局面において、本発明は、有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。好ましい態様において、このような組成物は、例えば、少なくとも50mg、好ましくは少なくとも100mg、より好ましくは少なくとも250mgの1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレートおよび適当な医薬担体または希釈剤を含む、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの高用量製剤である。さらなる好ましい例において、このような組成物は、例えば、5mgから500mgの1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレートおよび適当な医薬担体または希釈剤を含む、IV製剤である。
【0024】
1つの態様は、ウイルスによる温血動物、とりわけヒトの感染を予防または処置する方法であって、有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。好ましい態様において、感染は、WO2004/026843に記載されているウイルス感染、特に呼吸器多核体ウイルス(RSV)、または、例えば、インフルエンザウイルス、メタ肺炎ウイルス、麻疹、パラインフルエンザまたはムンプスウイルス感染である。好ましい態様において、ウイルスは哺乳動物、より好ましくはヒトに感染する。
【0025】
本発明は、さらに下記を含む:
−本発明の塩または結晶性の塩と少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物;
−本発明の塩または結晶性の塩とWO2004/026843に記載されている抗炎症性化合物と組み合わせて含む医薬組成物;
−本発明の塩または結晶性の塩から製造される、遊離形またはベンゼンスルホン酸付加塩形態以外の薬学的に許容される塩形態の式Iの化合物を含む医薬組成物;
−医薬として使用するための本発明の塩または結晶性の塩;
−薬剤の製造において使用するための本発明の塩または結晶性の塩;
−上記定義の方法により製造される、本発明の塩または結晶性の塩;
−本発明の塩または結晶性の塩から製造される、遊離塩基形態またはベンゼンスルホン酸付加塩形態以外の塩形態の式Iの塩または結晶性の塩;
−例えば、経口または静脈内投与で、遊離塩基形態または塩形態の式Iの塩または結晶性の塩での治療に感受性である疾患、例えば、ウイルス疾患を処置するための薬剤の製造における本発明の化合物の使用;
−本発明の塩または結晶性の塩と少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤を混合して含む医薬組成物の製造法;および
−ウイルス疾患、例えば、RSV感染の予防または治療処置のための方法であって、治療有効量の本発明の塩または結晶性の塩をこのような処置を必要とする対象に投与することを含む方法。
【0026】
本発明の結晶形態は、本発明の範囲を限定しない説明のためである下記実施例にしたがって合成できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶性のベシレート一水和物塩のX線回折図を示す。
【図2】図2は、結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のFT−IRスペクトルを示す。
【図3】図3は結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のTGAカーブを示す。
【図4】図4は結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のDSC曲線を示す。
【図5】図5は結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物のNMRを示す。
【図6】図6は1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの無水結晶性のベシレート塩のX線回折図を示す。
【実施例】
【0028】
実施例1:
RSV604ベシレート一水和物塩の製造
1)約50mgのRSV604遊離塩基を2mlのアセトン(またはアセトニトリル)に溶解した。
2)約40mgのベンゼンスルホン酸(水和物、97%純度)を透明な溶液に加えた。沈殿物が数分後発生した。2時間撹拌を続ける。
3)2から4mlのMtBEを貧溶媒としてゆっくり加えた。
4)スラリーを2時間撹拌し、次に固体を濾過する。
5)固体を真空オーブン中で環境温度で一晩乾燥させる。
【0029】
実施例2
RSV604ベシレート一水和物塩の製造
1)45gの(S)−1−(2−フルオロフェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア(A9)および1420.6gの酢酸エチルで2LのArgonaut反応器に加える。
2)反応混合物を20±3℃で10分間撹拌する。
3)188gのDI水を20±3℃で5分で加え、透明な溶液を得る。溶液を20分撹拌し、水層を分離する。有機層を2回、188gのDI水で洗浄し、水層を分離する。
4)250mL(301g)の飽和NaCl溶液を加え、水層を分離する。
5)別のフラスコに20±3℃で41.65gのベンゼンスルホン酸水和物(12%の水を含む)および299.5gの酢酸エチルを加える。この温度で透明な溶液が形成するまで撹拌する(20分)。
6)A9の酢酸エチル溶液(上記)をベンゼンスルホン酸溶液にゆっくり加える(1時間10分)。A9溶液の約70%容量を加えると固体が形成する。添加完了後、20±3℃で2時間撹拌する。
7)ブフナー漏斗(直径6cm)中のポリプロピレン濾布を介して固体を濾取し、次にフラスコおよび濾取ケーキ(高さ3cm)を全量170gの酢酸エチルで2回洗浄する。
8)湿ったケーキを、EtOAc≦0.5%および水≦5%となるまで、50±2℃(20mbar)で16時間乾燥させ、51gのA11をほぼ白色の固体として78%収率、99%純度で得る。
【0030】
実施例3
RSV604無水ベシレート塩の製造
1)250mLのフラスコに3.0gのベンゼンスルホン酸水和物(12%の水を含む)および160mLのアセトンを加える。室温で30分撹拌し、すべての固体を溶解させる。
2)次に、4gの(S)−1−(2−フルオロフェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア(A9)を加える。20±3℃で30分撹拌し、すべての固体を溶解させる。
3)190mLのメチルtert−ブチルエーテルを20±3℃で20分にわたって加え、懸濁液を16時間撹拌する。
4)ブフナー漏斗(直径6cm)中のポリプロピレン濾布を介して固体を濾取し、次にフラスコおよび濾取ケーキを全量60mLのメチルtert−ブチルエーテルで2回洗浄する。
5)湿ったケーキを50±2℃(20mbar)で16時間乾燥させ、5.4gの塩を黄色の固体として、96%収率、99%純度で得る。
【0031】
実施例4
ベシレート一水和物の元素分析
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベンゼンスルホン酸との塩。
【請求項2】
結晶形態の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベンゼンスルホン酸との塩。
【請求項3】
結晶性の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート一水和物。
【請求項4】
無水結晶性1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレア・ベシレート。
【請求項5】
該結晶形態が7.5°±0.5°または21.3°±0.5°または23.1°±0.5°の回折角2θで、少なくとも1つのX線図ピーク位置を有する、請求項2または3に記載の結晶性塩。
【請求項6】
該結晶形態が25.1°±0.5°または14.5°±0.5°または22.7°±0.5°または22.1°±0.5°または20.2°±0.5°または23.7°±0.5°の回折角2θで、少なくとも1つのX線図ピーク位置を有する、請求項2または4に記載の結晶性塩。
【請求項7】
図1または図6に示されるX線粉末回折像を示す、請求項2または6に記載の結晶性塩。
【請求項8】
実質的に純粋な形態で存在する、請求項1から7のいずれかに記載の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの塩または結晶性塩。
【請求項9】
高結晶化度を有する、請求項2から8のいずれかに記載の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶性塩。
【請求項10】
1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアとベンゼンスルホン酸を反応させ、反応混合物から得られた塩を回収することを含む、請求項1に記載の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート塩の製造法。
【請求項11】
結晶化誘導条件下で1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの遊離塩基を溶液中で結晶性ベシレート塩に適切に変換することを含む、請求項2から6のいずれかに記載の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶性ベシレート塩の製造法。
【請求項12】
1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアおよびベンゼンスルホン酸を適当な溶媒に溶解し、所望により該溶液に1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート塩の種晶を加え、そして、貧溶媒、例えば、酢酸エチルまたはt−ブチルメチルエーテル中でベシレート塩を結晶化させる工程を含む、請求項2から6のいずれかに記載の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶性ベシレート塩の製造法。
【請求項13】
アセトン、アセトニトリル、酢酸エチルまたはt−ブチルメチルエーテルを含む溶液中で、1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアのベシレート塩を結晶化または再結晶化させる工程を含む、請求項2から6のいずれかに記載の1−(2−フルオロ−フェニル)−3−(2−オキソ−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン−3−イル)−ウレアの結晶性ベシレート塩の製造法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかに記載のベシレート塩またはベシレート塩の結晶形態を含む、医薬組成物。
【請求項15】
少なくとも50mgの請求項1から6のいずれかに記載のベシレート塩またはベシレート塩の結晶形態および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、高用量医薬組成物。
【請求項16】
請求項1から9のいずれかに記載のベシレート塩またはベシレート塩の結晶形態および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、静脈内適用のための医薬組成物。
【請求項17】
病原体による感染の処置法であって、必要としている患者に治療有効量の請求項1から9のいずれかに記載のベシレート塩またはベシレート塩の結晶形態を投与することを含む、処置法。
【請求項18】
薬剤中で使用するための、請求項1から9のいずれかに記載のベシレート塩またはベシレート塩の結晶形態。
【請求項19】
病原体による感染の処置のための薬剤の製造のための、請求項1から9のいずれかに記載のベシレート塩またはベシレート塩の結晶形態の使用。
【請求項20】
病原体がウイルス、例えば、RSVである、請求項19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−75910(P2013−75910A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−196(P2013−196)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2009−512241(P2009−512241)の分割
【原出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】