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塩の基を有するポリマーおよび該ポリマーを含む防汚コーティング組成物
説明

塩の基を有するポリマーおよび該ポリマーを含む防汚コーティング組成物

防汚コーティング用途において改善された化学安定性を有する被膜形成ポリマーであって、該ポリマーは、その主鎖にペンダントする、(i)共役酸の第一pKが少なくとも4.0である塩基性基と、(ii)第一pKが2.0以下である有機酸との塩を有し、該塩基性基はポリマー主鎖に共有結合しているポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーおよび海洋用途用の防汚塗料におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ボートの船体、ブイ、掘削基地、石油採掘装置およびパイプなどの、水に浸かっている人工構造物は、緑藻類および褐藻類、フジツボ、イガイならびに同種のものなどの水生生物が付着しやすい。そのような構造物は、一般に金属または木材製であるが、コンクリートなどの他の構造材料を含むこともある。この付着物は、水中を移動中に摩擦抵抗を増加させ、その結果速度が低下し燃料費が増加するため、ボートの船体にとって厄介なものである。第一に、波および潮流に対する厚い層の付着物の抵抗により、構造物に予測不可能で潜在的に危険な応力が生じる可能性があるため、第二に、付着物により応力亀裂および腐食などの欠陥について構造物を点検するのが困難になるため、掘削基地および石油採掘装置の脚などの固定された構造物にとって付着物は厄介なものである。付着物により有効断面積が減少し、その結果、流量が減少するため、冷却水を吸入および排出するなどのパイプにおいても付着物は厄介なものである。
【0003】
通常、海洋生物に対する殺生物剤を放出することによってフジツボおよび藻類などの海洋生物の定着および成長を抑制するために、防汚塗料を例えば、船体のトップコートとして使用することが知られている。
【0004】
従来、防汚塗料は、塗料から滲出する殺生物性顔料を含む比較的不活性なバインダーを含む。使用されてきたバインダーには、ビニル樹脂およびロジンがある。ビニル樹脂は、海水に不溶性であり、ビニル樹脂ベースの塗料には顔料粒子同士が接触して、確実に滲出するように顔料が高濃度で使用される。ロジンは、海水に非常にわずかにしか溶解しない堅くてもろい樹脂である。ロジンベースの防汚塗料は、溶解マトリックス型塗料または腐食性塗料と称されてきた。殺生物性顔料は、ロジンのバインダーのマトリックスから極めてゆっくりと滲出し、ロジンの骨格マトリックスを残し、これが船体表面から洗い流されて塗料被膜の深部から殺生物性顔料が滲出できるようになる。
【0005】
近年、成功をおさめてきた多くの防汚塗料としては、重合体バインダーベースの「自己研磨型コポリマー」塗料があり、これには、殺生物性のトリ有機スズ部分が化学的に結合しており、そこから殺生物性部分が海水によって徐々に加水分解される。そのようなバインダー系において、第一のステップで、海水による反応によって直鎖のポリマー単位の側基が分離され、結果的に、残っているポリマー骨格が水溶性または水分散性になる。第二のステップでは、船の塗料層表面にある水溶性または水分散性の骨格が洗い流されるか、または腐食される。そのような塗料系については、例えば、GB−A−1457590に記載されている。
【0006】
しかしながら、世界中でトリ有機スズの使用が禁止されてきている。したがって、防汚組成物に使用できる代わりの防汚物質に対する需要がある。そのような選択肢の1つが、WO05/075581に開示されている。この文献に開示されているコーティング組成物は、主鎖にペンダントする、アミン官能基もしくはホスフィン官能基の1つまたは複数の塩および/または下記式(I)の基を含むホスフィン官能基の1つまたは複数の塩を含むバインダーポリマーを含む。
【0007】
【化1】

【0008】
上記式中、
Yは、OまたはNHであり、Zは、NまたはPであり、
は、C〜C12の二価炭化水素基、好ましくは、C〜C二価炭化水素基であり、
およびRは、独立に水素原子もしくはアルキル基または任意選択で置換されたフェニル基を表し、
Xは、少なくとも5個の炭素原子を含む脂肪族、芳香族またはアルカリール炭化水素基を有する酸のアニオン性残基である。
【0009】
本文献中に開示されている酸/塩基の組合せは、トリアルキルアミン塩基とロジンのような長鎖カルボン酸およびパルミチン酸との組合せである。すなわち、比較的強塩基と比較的弱酸の組合せである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、ポリマー主鎖にペンダントする塩が強酸と強塩基との組合せである場合に、このような系の化学安定性がさらに改善される可能性があることがわかっている。
【0011】
酸および塩基の相対的強度は、形成される塩の適切さに直接影響を与える。酸および塩基の相対的強度は、酸性または塩基性官能基によってだけでなく、酸および塩基官能性から外れて空間的に離れているものを含む、分子の他のすべての置換基によって決まる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、被膜形成ポリマーであって、その主鎖にペンダントする、(i)共役酸の第一pKが少なくとも4.0である塩基性基と、(ii)第一pKが2.0以下である有機酸との塩を有し、該塩基性基はポリマー主鎖に共有結合しているポリマーに関する。
【0013】
「有機酸の第一pK」とは、酸の相対的強度を特定し、存在する最も多い酸性基の水中での解離定数または電離定数の負の対数として定義することができる。酸の強度が増すにつれ酸の第一pKaの値は小さくなる。
【0014】
「共役酸」とは、塩基のプロトン化された形態である。共役酸の第一pK」とは、塩基の相対的強度を特定し、存在する最も塩基性の基の共役酸の水中での解離定数または電離定数の負の対数として定義することができる。塩基の強度が増すにつれ共役酸の第一pKaの値は大きくなる。
【0015】
酸の第一pKaおよび塩基の共役酸の第一pKaは、部分的な電荷分布および経験的線形または非線形方程式を用いて微細種(microspecies)の原子分極率から算出することができる。SzegezdiおよびCsizmadia(New method for pKa estimation、eCheminformaticsにおいて発表、2003年11月10〜14日)、SzegezdiおよびCsizmadia(Prediction of dissociation constants using microconstants(American Chemical Society National Meetingにおいて発表、2004年3月28〜4月、2004年4月15に更新)ならびにSzegezdiおよびCsizmadia(A method for calculating pKa values of small and large molecules;American Chemical Society Spring Meetingにおいて発表、2007年3月25〜29日)によって適切な方法が説明されている。
【0016】
塩基性基は、共役酸の第一のpKが少なくとも4.0、好ましくは少なくとも5.0、より好ましくは少なくとも6.0、さらにより好ましくは少なくとも7.0および最も好ましくは少なくとも8.0である。
【0017】
適切な塩基性基の例は、共役酸の第一pKaが少なくとも4.0であるアミン、複素環式窒素塩基およびホスフィンなどの窒素またはリンを含む塩基性基である。より好適な塩基性基は、共役酸の第一pKaが少なくとも4.0であるトリアルキルアミン基およびジアルキルアミン基などのアルキルアミン基ならびにピリジン基である。こうしたアミン基のアルキル基は、好ましくはメチルおよび/またはエチル基などの小さなものである。
【0018】
上記のとおり、塩基の相対的強度は、塩基性官能基によってだけでなく、塩基官能性から外れて空間的に離れているものを含む、分子の他のすべての置換基によって決まる。
【0019】
上記から、当然、塩基性基は、プロトン化できるものである必要がある。このことから、第4級アンモニウム基は、塩基性基またはその共役酸とは見なされない。
【0020】
有機酸は、第一pKが2.0以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.0以下、さらにより好ましくは−1.0以下である。
【0021】
脂肪族、芳香族またはアラルキル炭化水素基を含有し、第一pKaが2.0以下である有機スルホン酸が本発明の使用に好適な有機酸である。適切な有機スルホン酸の例は、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸およびβ−ナフチルスルホン酸である。あるいは、第一pKaが2.0以下である有機酸は、殺海洋生物特性を有する酸であってもよい。殺海洋生物特性を有する適切な有機酸の例は、ゾステリン酸(zosteric acid)などの硫酸エステルである。
【0022】
上記のとおり、酸の相対的強度は、酸性官能基によってだけでなく、酸官能性から外れて空間的に離れているものを含む、分子の他のすべての置換基によって決まる。
【0023】
本発明のポリマーは、第一pKaが2.0以下である有機酸および共役酸の第一pKaが少なくとも4.0である重合可能な塩基由来の単量体塩またはそのような単量体塩の混合物を、任意選択で1つまたは複数のコモノマーと組み合わせて、重合させることによって調製することができる。
【0024】
重合可能な塩基としては、(メタ)アクリル酸またはビニルモノマーなどのオレフィン性不飽和モノマーを含有する塩基性基が好ましい。適切な単量体塩の例は、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびビニルピリジンの有機スルホン酸塩である。
【0025】
適切な(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルの例は、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルおよび(メタ)アクリル酸ジエチルアミノプロピルであり;適切なジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの例は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドであり;ビニルピリジンの例は、4−ビニルピリジンおよび2−ビニルピリジンである。
【0026】
本発明によるポリマーは、被膜形成するものとされており、これは、コーティング組成物に含まれる場合、バインダー系部分を形成することができることを意味する。
【0027】
本発明によるポリマーは、好ましくは少なくとも5mol%、より好ましくは少なくとも10mol%の1つまたは複数の単量体塩を含むモノマーの混合物由来であることが好ましい。好ましくは、ポリマーが誘導されるモノマーの70mol%未満、より好ましくは60mol%未満が単量体塩である。
【0028】
単量体塩と共重合させて、本発明によるポリマーを形成できるモノマーには、アクリル酸またはメタクリル酸エステル、オレフィン性不飽和カルボン酸、スチレンおよびオレフィン性不飽和トリオルガノシリルエステルのようなさまざまなオレフィン性不飽和モノマーが挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルの例は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、ポリオキシエチレン(n=8)グリコールモノメチルエーテルメタクリレートなどのポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸イソボルニルである。
【0030】
オレフィン性不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸および酸官能性エステルまたはコハク酸モノ−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]、フタル酸モノ−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]、2−アクリルアミドグリコール酸および3−アクリルアミド−3−メチル酪酸などのアクリル酸もしくはメタクリル酸のアミドである。オレフィン性不飽和カルボン酸は、任意選択で重合の前または後のいずれかでさらに反応させて、WO00/043460に記載されている種類の金属エステルなどの海水反応基を形成してもよい。
【0031】
オレフィン性不飽和トリオルガノシリルエステルの例は、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−tert−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−アミルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−p−メチルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリベンジルシリル、(メタ)アクリル酸ジメチルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸n−ブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸t−ブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピル−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸n−オクチルジ−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルステアリルシリル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸t−ブチルジフェニルシリルおよび(メタ)アクリル酸ラウリルジフェニルシリルなどのアクリル酸トリオルガノシリルエステルおよびメタクリル酸トリオルガノシリルエステルである、
【0032】
あるいは、本発明のポリマーは、第一pKaが2.0以下である酸を、共役酸の第一pKaが少なくとも4.0である重合可能な単量体塩基由来のポリマーおよび任意選択で1つまたは複数のコモノマーに加えることによって調製してもよい。単量体塩基由来のポリマーは、1つまたは複数の単量体塩基を少なくとも5mol%、より好ましくは少なくとも10mol%含むモノマーの混合物から形成されることが好ましい。好ましくは、ポリマーが誘導されるモノマーの70mol%未満、より好ましくは60mol%未満が単量体塩基である。
【0033】
適切な単量体塩基の例は、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびビニルピリジンである。適切な(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルの例は、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルおよび(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルであり;適切なジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの例は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドであり;ビニルピリジンの例は、4−ビニルピリジンおよび2−ビニルピリジンである。
【0034】
単量体塩との共重合に関して上述したとおりコモノマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸エステル、オレフィン性不飽和カルボン酸、スチレンおよびオレフィン性不飽和トリオルガノシリルエステルのようなさまざまなオレフィン性不飽和モノマーが挙げられる。
【0035】
本発明は、さらに防汚コーティング組成物における本発明のポリマーの使用に関する。そのようなコーティング組成物は、殺海洋生物特性を有する成分を含有してもよい。この成分は、色素性であっても、非色素性であってもよい。殺生物特性を有する成分の混合物を使用してもよい。適切な殺生物剤の例は、無機金属含有殺生物剤、例えば、酸化銅、チオシアン酸銅、青銅、炭酸銅、塩化銅、銅ニッケル合金;有機金属殺生物剤、例えば、亜鉛ピリチオン(2−ピリジンチオール−1−オキシドの亜鉛塩)、銅ピリチオン、ビス(N−シクロヘキシル−ジアゼニウムジオキシ)銅、エチレン−ビス(ジチオカルバミン酸)亜鉛(すなわち、ジネブ)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ジラム)、および亜鉛塩とのエチレン−ビス(ジチオカルバミン酸)マンガン錯体(すなわち、マンコゼブ);ならびに有機殺生物剤、例えば、ホルムアルデヒド、ドデシルグアニジン一塩酸塩、チアベンダゾール、N−トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミドなどのN−アリールマレイミド、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(ジウロン)、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2−メチルチオ−4−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、3−ベンゾ[b]チエン−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキシド、4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル)−3(2H)−イソチアゾロン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、ブチルカルバミン酸3−ヨード−2−プロピニル、メデトミジン、ピリジントリフェニルボランなどのボラン、2−(p−クロロフェニル)−3−シアノ−4−ブロモ−5−トリフルオロメチルピロールなどの5位および任意選択で1位で置換された2−トリハロゲノメチル−3−ハロゲノ−4−シアノピロール誘導体および3−ブチル−5−(ジブロモメチリデン)−2(5H)−フラノンなどのフラノンならびにそれらの混合物である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の好適な一実施形態では、コーティング組成物は、1つまたは複数の有機金属殺生物剤または有機殺生物剤と組み合わせて、やや溶解性で銅ベースの無機金属含有殺生物剤を含有する。本発明の別の好適な実施形態では、コーティング組成物は、本質的に銅ベースの無機金属含有殺生物剤を含まない。
【0037】
防汚コーティング組成物は、本発明によるポリマーを少なくとも3wt%、好ましくは少なくとも6wt%、より好ましくは少なくとも10wt%の量で含有することが好ましい。防汚コーティング組成物は、通常、最大で60wt%、好ましくは最大で50wt%、より好ましくは最大で45wt%の量で存在する。
【0038】
水生生物に対する殺生物特性を有する成分の総量は、コーティング組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1から70wt%の間、より好ましくは1から60wt%の間、さらにより好ましくは2から55wt%の間である。
【0039】
殺海洋生物特性を有する成分に加えて、コーティング組成物は、(他の)顔料を含有してもよい。例えば、海水と反応するか、もしくは海水に溶ける酸化亜鉛もしくは石膏などの顔料または、海水と反応せず、海水にほとんど溶けなくてもよい(溶解度が0.5重量パーツパーミリオン未満)二酸化チタンもしくは酸化鉄などの顔料、あるいはフタロシアニンもしくはアゾ顔料などの有機顔料。上記のようなほとんど溶けない顔料は、塗料の総顔料含有量の60重量%未満、最も好ましくは40重量%未満で使用されるのが好ましい。
【0040】
防汚コーティング組成物は、追加のバインダー物質としてロジン物質をさらに含んでもよい。ロジンのバインダー物質と、本発明によるポリマーとの比は、塗料被膜の強度および/またはロジンベース塗料マトリックスの制御された腐食に影響を与える。
【0041】
本発明の好適な実施形態よると、防汚コーティング組成物は、ロジン物質と本発明によるポリマーとを少なくとも1:99、より好ましくは少なくとも5:95、さらにより好ましくは少なくとも25:75および最も好ましくは少なくとも35:65の重量比で含む。ロジンと本発明のポリマーの重量比は、好ましくは99:1以下、より好ましくは80:20以下である。
【0042】
ロジン物質は、好ましくはロジン、より具体的にはウッドロジン、あるいはトールロジンまたはガムロジンである。ロジンの主な化学成分は、アビエチン酸である。ロジンは、市販されているグレードのいかなるものであってもよく、WW(ウォーターホワイト)ロジンとして販売されているものが好ましい。あるいは、ロジン物質は、ロジン誘導体、例えば、マレイン化もしくはフマル化ロジン、水素化ロジン、ホルミル化ロジンもしくは重合ロジンまたはロジン酸カルシウム、ロジン酸マグネシウム、ロジン酸銅もしくはロジン酸亜鉛などのロジン金属塩であってもよい。
【0043】
さらに、防汚コーティング組成物は、非加水分解性で不水溶性の被膜形成ポリマー(B)を含んでいてもよい。この非加水分解性で不水溶性の被膜形成ポリマー(B)は、例えば、ビニルエーテルポリマー−例えば、ポリビニルイソブチルエーテルなどのポリ(ビニルアルキルエーテル)−またはビニルアルキルエーテルの酢酸ビニルもしくは塩化ビニルとのコポリマー、好ましくはアルキル基に1から6個の炭素原子を含有する、1つまたは複数のアクリル酸アルキルもしくはメタクリル酸アルキルのホモポリマーもしくはコポリマーなどのアクリル酸エステルポリマーであってもよく、アクリロニトリルもしくはスチレンなどのコモノマーおよびポリ酢酸ビニルもしくは酢酸ビニル塩化ビニルコポリマーなどの酢酸ビニルポリマーを含有してもよい。適切なポリマー(B)の他の例は、変性アルキド樹脂、エポキシポリマー、エポキシエステル、エポキシウレタン、ポリウレタン、アマニ油、ヒマシ油、大豆油およびそのような油の誘導体ならびに塩化物含有コポリマーである。あるいは、ポリマー(B)は、ポリアミン、具体的には、脂肪酸二量体のポリアミドまたは商標「Santiciser」として販売されているポリアミドなどの可塑化効果を有するポリアミドであってもよい。
【0044】
ポリマー(B)は、コーティング組成物の総バインダー含有量の99重量%未満、より好ましくは75%未満および最も好ましくは65%未満の量で防汚コーティング組成物中に存在するのが好ましい。
【0045】
他の実施形態では、防汚コーティング組成物は、水と反応するか、やや水溶性であるか、または感水性であるが、主鎖にペンダントする基を含まない、(i)共役酸の第一pKが少なくとも4である塩基性基と、(ii)第一pKが2.0以下である有機酸との塩である1つまたは複数の被膜形成ポリマー(C)を含んでもよい。
【0046】
ポリマー(C)は、コーティング組成物の総バインダー含有量の99重量%未満、より好ましくは75%未満および最も好ましくは65%未満の量で防汚コーティング組成物中に存在するのが好ましい。
【0047】
適切なポリマー(C)の例は、WO00/043460に記載されているようなポリマーであり、少なくとも1つの下記式の末端基を持つアクリル系主鎖を有する。
【0048】
【化2】

式中、Xは、
【0049】
【化3】

を表し、
Mは、亜鉛、テルルまたは好ましくは銅から選択される金属であり、
nは、1から2の整数であり;Rは、
【0050】
【化4】

から選択される有機残基を表し;ここで、R1は、一価有機残基である。
【0051】
適切なポリマー(C)の他の例は、酸官能性被膜形成ポリマーであり、その酸基は、WO02/02698に記載されているような、第4級アンモニウム基または第4級ホスホニウム基によって、あるいは好ましくは、EP0529693で開示されているような、8から25個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を含有する有機アミンによってブロックされている。
【0052】
適切なポリマー(C)の別の例は、ポリマーの主鎖に結合(ペンダント)した第4級アンモニウム基および/または第4級ホスホニウム基を含むポリマーであり、上記第4級アンモニウム基および/または第4級ホスホニウム基は中和されているか、または、言い換えると少なくとも6個の炭素原子を含む脂肪族、芳香族もしくはアルカリール炭化水素基を有する酸のアニオン性残基からなる対イオンによってブロックまたはキャップされている。そのような系は、WO04/018533に記載されている。
【0053】
適切なポリマー(C)の別の例は、WO05/005516で開示されているような、少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を含むシリルエステルコポリマーである。そのようなポリマーは、下記式による少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を含有する。
【0054】
【化5】

式中、nは、0または1から50の整数であり、R1、R2、R3、R4およびR5はそれぞれ任意選択で置換されたC1〜20−アルキル、任意選択で置換されたC1〜20−アルコキシ、任意選択で置換されたアリールおよび任意選択で置換されたアリールオキシからなる群から独立して選択される。好ましくは、シリルエステルコポリマーの基R1〜R5のうちの少なくとも1つは、メチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルまたはフェニルである。より好ましくは、nは、0であり、R3、R4およびR5は、同じであるか、または異なり、イソプロピル、n−ブチルまたはイソブチルを表す。
【0055】
そのようなポリマーは、重合可能な1つまたは複数のビニルモノマーを、1つまたは複数のオレフィン二重結合および1つまたは複数の上記の末端基を含む1つまたは複数のモノマーと共重合させることによって得ることができる。
【0056】
適切なポリマー(C)の他の例は、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、アルキド樹脂、変性アルキド樹脂、ポリウレタン、飽和ポリエステル樹脂およびポリ−N−ビニルピロリドンである。
【0057】
本防汚コーティング組成物は、溶媒、例えば、キシレン、トルエンもしくはトリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、n−ブタノールなどのアルコール、ブトキシエタノールもしくはメトキシプロパノールなどのエーテルアルコール、酢酸ブチルもしくは酢酸イソアミルなどのエステル、酢酸エトキシエチルもしくは酢酸メトキシプロピルなどのエーテルエステル、メチルイソブチルケトンもしくはメチルイソアミルケトンなどのケトン、ホワイトスピリットなどの脂肪族炭化水素または2つ以上のそのような溶媒の混合物をさらに含有してもよい。あるいは、本防汚コーティング組成物は、水性でもよい。
【0058】
本防汚コーティング組成物は、非重合体可塑剤をさらに含んでもよい。そのような可塑剤は、例えば、ポリマーの総重量に基づいて最大で50重量%、最も好ましくは、ポリマーの総重量に基づいて少なくとも10重量%、最大で35重量%存在することができる。そのような可塑剤の例は、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジルもしくはフタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル、リン酸トリクレシルもしくはリン酸トリス(イソプロピル)フェニルなどのリン酸トリエステルまたは塩素化パラフィンである。
【0059】
さらに、本防汚コーティング組成物は、他の添加剤、例えば、従来の増粘剤、具体的には、シリカ、ベントナイトもしくはポリアミドワックスなどのチキソトロピー剤および/または安定剤、例えば、ゼオライトもしくは脂肪族アミンもしくはデヒドロアビエチルアミンなどの芳香族アミンを含有してもよい。
【実施例】
【0060】
基本手順
ポリマー調製
200gの(1:1)キシレン:ブタノール中の0.47モルの単量体塩、0.94モルのメタクリル酸イソボルニル、0.94モルのn−ブチルメタクリレートおよび0.0235モルの2,2’−アゾジ(2−メチルブチロニトリル)開始剤(AMBN)からなるモノマーの溶液を機械的に撹拌しながら3時間半かけて85℃の約350gの1:1キシレン:ブタノール混合物を入れた重合反応槽に加えた。溶液に添加を完了したら、温度を95℃にまで上げ、促進量のAMBN(0.0117モル)を加えた。さらに2時間この温度で反応を維持した。冷却後、生成物であるポリマー溶液を保存容器に入れた。
【0061】
塗料調合
ポリマーを調合して、約33wt%のポリマー溶液、約43wt%の銅含有殺生物剤、約12wt%の酸化亜鉛、約5wt%の溶媒(キシレン)ならびに7wt%の他の顔料、分散剤およびチキソトロピー剤を含有する防汚塗料とした。この塗料は、高速分散法を使用して製造した。
【0062】
比較例A
この例では、上述の基本手順に従って、強塩基と弱酸との塩を含有するポリマーを調製した。ポリマーの調製に使用された単量体塩は、強塩基であるジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(第一pKaが9.30)の塩であり、弱酸成分はパルミチン酸(pKaが4.95)とした。
【0063】
この単量体塩は、撹拌されている2Lの2口丸底フラスコ中で300gのメタノールに80g(0.47モル)のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを溶解することによって調製した。これに粉末状のパルミチン酸(120.49g、0.47モル)を加えた。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、塩形成が進行するにつれてパルミチン酸が分解された。これにより生じた無色の液体を重力濾過して残りのあらゆる粒子を除去し、溶媒を減圧下で除去した。H NMRにより、所望のモノマーの定量的構造を確認した。得られた粘性の液体は、さらには精製を行わずに使用した。
【0064】
赤外線(IR)分光法を使用して上記単量体塩を分析した(ゴールデンゲート(Golden Gate)ダイヤモンドATR付属装置を備えたアバター(Avatar)360赤外線分光計を使用した固体試料分析)。遊離パルミチン酸(カルボニル伸縮、約1700cm−1)の吸光度特性がこの物質のスペクトルにあり、これは、不完全な塩形成であることを示している。
【0065】
105℃で75分間乾燥した3つのサンプルの重量損失から測定すると、上記の単量体塩を使用して調製されたポリマー溶液は、不揮発性物質含有量が49wt%であった。
【0066】
ポリマー溶液の粘度は、ブルックフィールドコーン・プレート粘度計を使用して23℃で4.85ポアズとして測定された。
【0067】
ポリマーの分子量測定は、トリプル検出と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して行い、絶対分子量は光散乱(LS)検出によって算出した。このポリマーの数平均分子量(M)は31000、重量平均分子量(M)は89000および多分散性(D=M/M)は2.9であった。
【0068】
上述の基本手順による上記ポリマーにより塗料を調合した。23℃および45℃の両方で保存された2つのサンプルに対して間隔(最大6カ月)をおいて、塗料の粘度(ブルックフィールドコーン・プレート粘度計、23℃)および分散度(fineness of grind)(ヘグマンゲージ)を測定することによってこの塗料の化学安定性を評価した。その結果を下の表1に示している。
【0069】
この表からわかるように、23℃および45℃の両方で保存されたサンプルにおいて試験の継続期間、粘度は本質的に変わらず残っていたが、分散度が急速に増加したことが観察された。わずか1カ月後、2つのサンプルの分散度は、製造後の測定値<40μmから>100μmに増した。2カ月の時点における評価では、両サンプルの分散度は、最大記録可能レベルである150μmを超えて増加したことがわかった。
【0070】
乾いていない塗料を45℃で2カ月の保存した後の乾いた塗料の被膜の光学顕微鏡画像から、保存中に結晶性固体物質が形成されたことがはっきりと示されていた。その結果として分散度の増加が観察された。IR透過分光法による結晶性固体のさらなる試験により、パルミチン酸亜鉛が存在していることが示された。
【0071】
単量体塩の合成に使用されるパルミチン酸の弱い酸性の性質を受けて、生成塩、構成成分である強塩基および弱い酸の出発物質からなる平衡が生じることが理論づけられる。この結果、遊離パルミチン酸は、塗料組成物中に存在するあらゆる利用できる金属イオンまたは塩と容易に反応することができる。例示のケースでは、酸化亜鉛顔料と遊離パルミチン酸との間の反応の結果としてパルミチン酸亜鉛が検出される;亜鉛錯体の溶解度が保存中の塗料媒体から晶出するほどになる。
【0072】
ニュートンフェラーズ(Newton Ferrers)(イギリス南西部)の水域に、塗装した試験パネルを浸漬すると、パネルの81%に微小生物が付着した。
【0073】
実施例1
この例では、上述の基本手順に従って強塩基と強酸との塩を含有するポリマーを調製した。ポリマーの調製に使用される単量体塩は、強塩基であるジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(第一pKaが9.30)と強酸であるドデシルベンゼンスルホン酸(pKaが−1.84)との塩とした。
【0074】
この単量体塩は、撹拌されている2Lの2口丸底フラスコ中で300gのメタノールに80g(0.47モル)のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを溶解することによって調製した。これにドデシルベンゼンスルホン酸(153.42g、0.4699モル)の1:1(wt:wt)キシレン:ブタノール(100g)溶液を1時間かけて加えた。得られた溶液をさらに1時間撹拌した。H NMRにより、所望の単量体塩の定量的構造を確認した。得られた粘性の液体は、さらには精製を行わずに使用した。
【0075】
赤外線(IR)分光法を使用して上記単量体塩を分析した(ゴールデンゲートダイヤモンドATR付属装置を備えたアバター360赤外線分光計を使用した固体試料分析)。
【0076】
単量体塩のIRスペクトルにドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)の特徴的な吸光度−900、1100および1600cm−1における−がなく、その代わりにスルホン酸塩に特有の1000〜1200cm−1の間の異なる4つの吸光度が示された。このサンプルに過剰なDBSA添加すると、遊離DBSAの吸光度特性(900、1100および1600cm−1)が現れた。強塩基と強酸との反応時に完全な塩形成が起こっているとの仮説をこの証拠が裏付けている。
【0077】
105℃で75分間乾燥した3つのサンプルの重量損失から測定すると、上記の単量体塩を使用して調製されたポリマー溶液は、不揮発性物質含有量が51wt%であった。
【0078】
ポリマー溶液の粘度は、ブルックフィールドコーン・プレート粘度計を使用して23℃で8.54ポアズとして測定された。
【0079】
ポリマーの分子量測定は、トリプル検出と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して行い、絶対分子量は光散乱(LS)検出によって算出した。このポリマーのMは26000、Mは58000および多分散性(D=M/M)は2.2であった。
【0080】
上述の基本手順による上記ポリマーにより塗料を調合した。23℃および45℃の両方で保存された2つのサンプルに対して間隔(最大6カ月)をおいて、塗料の粘度(ブルックフィールドコーン・プレート粘度計、23℃)および分散度(ヘグマンゲージ)を測定することによってこの塗料の化学安定性を評価した。その結果を下の表1に示している。
【0081】
この表からわかるように、本実施例による塗料は、23℃および45℃の両方における保存の最初1カ月間に製造後の<40μmから<80μmの中程度の分散度の増加を示したに過ぎない。その後、6カ月の試験期間の残りの期間、分散度は安定していた。23℃および45℃におけるこの試験期間の保存中、この塗料の粘度も本質的に変わらなかった。
【0082】
さらに、保存された塗料には結晶の突出が見られない滑らかな被膜が形成された。これにより、強塩基と強酸との組合せがモノマーの塩形成の反応を完全にするとの結論が導き出される。比較例Aの塗料とは対照的に、得られる塗料は保存中、化学的に安定である。
【0083】
比較例Aの塗料と同時に、ニュートンフェラーズ(イギリス南西部)の水域に、塗装した試験パネルを浸漬すると、パネルの55%に微小生物が付着した。これにより、比較例Aのポリマーと比較して本発明によるポリマーは、塗料の防汚作用を改善するとの結論が導き出される。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例2および比較例B〜E
酸/塩基のpKと得られるポリマーの安定性との間の関係をさらに説明するために、一連の単量体塩を調製し分光法によって分析した。
【0086】
各単量体塩は、メタノール中において1.968Mの濃度で構成成分である酸/塩基の出発物質を混合することによって調製した。酸/塩基の出発物質の添加に次いで、この混合物を室温で24時間撹拌した。次に、溶媒を蒸発させて単量体塩を単離した。
【0087】
実施例2−強塩基および強酸からなるモノマー。
この例の強塩基を構成する単量体のアミンは、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド(DMAEMA;第一pKaが8.42)とし、強酸成分は、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA;pKaが−1.84)とする。
【0088】
混合中に熱を発した。これは発熱反応プロセスであることを示している。
【0089】
単量体塩のIRスペクトルにドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)の特徴的な吸光度−900、1100および1600cm−1における−がなく、その代わりにスルホン酸塩に特有の1000〜1200cm−1の間の異なる4つの吸光度が示された。
【0090】
単量体塩(0.0827M)のCDCl溶液に対してH NMR分光法を行った。このサンプルのスペクトルにおいてDMAEMA部分に存在するCH基両方についての共鳴に関するピークが、DMAEMA出発物質の参照スペクトルと比較した場合、低磁場にシフトしたのがわかった(CH−CH−NMeのδ4.25がδ4.6にシフトし、CH−CH−NMeのδ2.6がδ3.5にシフトした)。さらに、DMAEMA出発物質のスペクトルではこうした両方の共鳴は単純に三重線として現れたが、単量体塩のスペクトルでは各共鳴について、分裂したより複雑なパターンが観察された。これは、隣接するNMe部分のプロトン化が完了することによる、CHの共鳴の化学環境の変化によるものである。これは、完全な塩形成を示す。
【0091】
比較例B−強塩基および弱酸からなるモノマー。
この例の強塩基を構成する単量体のアミンは、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド(DMAEMA)(第一pKaが8.42)とし、弱酸成分はパルミチン酸(pKaが4.95)とする。
【0092】
遊離パルミチン酸(カルボニル伸縮、約1700cm−1)の吸光度特性がこの物質のIRスペクトルにあり、これは不完全な塩形成を示している。
【0093】
モノマー(0.0827M)のCDCl溶液に対してH NMR分光法を行った。このサンプルのスペクトルにおいてDMAEMA部分に存在するCH基両方についての共鳴に関連するピークが、DMAEMA出発物質の参照スペクトルと比較した場合、これもまた低磁場にシフトしたのがわかった(CH−CH−NMeのδ4.25がδ4.35にシフトし、CH−CH−NMeのδ2.6がδ2.8にシフトした)。しかしながら、この場合、両共鳴に関する化学シフトにおける振幅の変化は、実施例2のスペクトルで観察されたものより著しく小さかった。さらに、(DMAEMA出発物質のスペクトルの場合)これらの両共鳴は単純に三重線として現れ、実施例2のスペクトルに示された細かな構造は現れなかった。前述の観察から、この例では不完全な塩形成であることが示唆され、出発物質および酸−塩基の塩生成物の両方が動的平衡状態で存在することを示している。
【0094】
比較例C−強塩基および弱酸からなるモノマー。
この例の強塩基を構成する単量体のアミンは、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA;第一pKaが9.30)とし、弱酸成分は、ヘキサン酸(pKaが5.09)とする。
【0095】
混合中に熱を発した。これは発熱反応プロセスであることを示している。
【0096】
IR分光法より、遊離ヘキサン酸に特有の1700cm−1においてはっきりした吸光度が示された。これは、不完全な塩形成を示している。
【0097】
実施例D−弱塩基および強酸からなるモノマー。
この例の弱塩基を構成する単量体のアミンは、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP;pKaが0.07)とし、強酸成分は、ドデシルベンゼンスルホン酸(pKaが−1.84)とする。
【0098】
混合中に熱を発した。これは発熱反応プロセスを示している。
【0099】
このサンプルのスペクトルに未反応の遊離ドデシルベンゼンスルホン酸(900、1100および1600cm−1)のIR吸光度特性がはっきりとある。これもまた、不完全な塩形成を示している。
【0100】
実施例E−弱塩基および弱酸からなるモノマー。
この例の弱塩基を構成する単量体のアミンは、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP;pKaが0.07)とし、弱酸成分はパルミチン酸(pKaが4.95)とする。
【0101】
パルミチン酸をメタノール性NVP溶液に添加すると、溶解が起こらず、目立った温度変化も現れないことがわかった。これらの観察から、塩形成が起こらなかったと結論づけた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜形成ポリマーであって、その主鎖にペンダントする、(i)共役酸の第一pKが少なくとも4.0である塩基性基と、(ii)第一pKが2.0以下である有機酸との塩を有し、前記塩基性基は前記ポリマー主鎖に共有結合している、ポリマー。
【請求項2】
前記塩基性基の前記共役酸の前記第一pKは、少なくとも8.0である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記有機酸の前記第一pKは、0.0未満である、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記塩基性基は、窒素またはリンを含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記塩基性基は、トリアルキルアミン、ジアルキルアミンまたは複素環式窒素塩基である、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
前記酸は、脂肪族、芳香族またはアラルキル炭化水素基を含有するスルホン酸である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の被膜形成ポリマーの調製方法であって、モノマーを重合するステップを含み、前記モノマーの少なくとも一部は、第一pKが2.0以下である有機酸および共役酸の第一pKが少なくとも4.0である重合可能な塩基由来の単量体塩である、方法。
【請求項8】
5から70mol%の前記モノマーは、第一pKが2.0以下である有機酸および共役酸の第一pKが少なくとも4.0である重合可能な塩基由来の単量体塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の被膜形成ポリマーの調製方法であって、第一pKが2.0以下である有機酸をモノマー由来のポリマーに添加するステップを含み、前記モノマーの少なくとも一部は、共役酸の第一pKが少なくとも4.0である単量体塩基である、方法。
【請求項10】
5から70mol%の前記モノマーは、共役酸の第一pKが少なくとも4.0である単量体塩基である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマーおよび殺海洋生物特性を有する成分を含む、防汚コーティング組成物。
【請求項12】
ロジン物質をさらに含む、請求項11に記載の防汚コーティング組成物。
【請求項13】
ボートの船体、ブイ、掘削基地、石油採掘装置およびパイプのような、水に浸かっている人工構造物を保護するための、請求項11または12に記載の防汚コーティング組成物の使用。

【公表番号】特表2011−530637(P2011−530637A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522493(P2011−522493)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060317
【国際公開番号】WO2010/018144
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】