説明

塩化しやすい官能基を有する新規O−カルボン酸無水物(OCA)およびこれらのOCAから得られるポリマー

本発明は、O−カルボン酸無水物(OCA)とも呼ばれ、塩化しやすい官能基を含む、一般式(I)(式中、Aはヘテロ原子または−COOまたはNH基であり、BはAの保護基である)の1,3−ジオキソラン−2,4−ジオンに関する。本発明はまた、これらのOCAの制御重合のための方法に関するものであり、この場合、重合反応は塩基を含む触媒系の存在下、制御された様式で行われる。最後に、本発明は、これらのOCAから得られるポリ(α−ヒドロキシ酸)、ならびに有効成分の送達のための、または生体材料の製造のためのそれらの使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、O−カルボン酸無水物(OCA)とも呼ばれ、塩化しやすい官能基を含む、1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン、これらOCAの制御重合法およびこれらOCAから得られるポリ(α−ヒドロキシ酸)に関する。
【0002】
ポリ(α−ヒドロキシ酸)は、手術において、そして医薬品の送達のために特に興味深い、生分解性の生体適合性ポリエステルである。特に、ポリ(α−ヒドロキシ酸)は、補綴物、インプラントを製造するための原料として使用し得る生体材料を形成することができ、あるいは、有効成分の放出のための担体としても使用することができる。これらのポリ(α−ヒドロキシ酸)は、吸収性縫合糸、一時的な代用皮膚または織物繊維としての適用も可能である。
【0003】
生物医学用生分解性ポリマーの分野では、手術(縫合、整形外科手術など)の場合であろうと有効成分の送達の場合であろうと、問題点は特定の適用に必要な特性の制御にある。
【0004】
活性分子のin vivoアドレッシング系の設計では、またはより正確には薬物の関連治療標的への制御運搬および送達では、種々の生理的障害の通過を可能にする寸法、物理的構造および化学的構造の材料を開発する必要があり、標的の探索および認識に引き続いてその処置または破壊が行われる。立体共重合(鏡像異性体の共重合)を含む生体適合性モノマーの共重合および化学修飾は、高分子物質の特性を適合させるために用いることができる(Vert M.: 1' Actualite Chimique, Nov-Dec.2003, p.20-25)。
【0005】
これまで、最もよく使用されているポリ(α−ヒドロキシ酸)は、ポリ(グリコール酸)(PGA)、およびポリ(L−乳酸)(PLA)であり、これらは、生細胞の生化学的作用下で生分解性、すなわち、切断可能であるだけでなく、放出されたα−ヒドロキシ酸の特性そのものによって生体取込みも受けるポリマーである。
【0006】
PGAおよびPLAは、グリコール酸(グリコリド)またはL−乳酸(L−ラクチド)の環状ジエステルの重合によって、あるいは該ヒドロキシ酸を重縮合することによって調製することができる。最も研究されている経路は、2−エチルヘキサン酸スズの存在下でのグルコリド(glucolide)およびラクチド(L型およびD型)の開環による共重合であろう(Kowalski A., Libiszowski J., Duda A., Penczek S.: Macromolecules, 2000, 33, 1964)。
【0007】
α−ヒドロキシ酸のジエステル型ヘテロ環の開環による重合または共重合は、グリコール酸および乳酸での実施が限定され、これにより必要な特性への適合可能性が明らかに制限され、アミノ酸由来のN−カルボン酸無水物などの他の環状モノマーとの困難な共重合が必要となる(FR 2 838 964)。
【0008】
PGAおよびPLAの共重合および立体共重合が数多くの分解性高分子化合物への経路を切り開くならば、これらのポリマーは一般に官能化されない。さらに、現時点において、特性の多様化および増加さえしている要求の厳しい仕様に適合するニーズには、特に薬理学における、広範囲に及ぶ治療用途を扱うには、官能化ポリマーの合成が必要である。
【0009】
一般にO−カルボン酸無水物(OCA)と呼ばれている1,3−ジオキソラン−2,4−ジオンは、それらの数多くの潜在的用途から、文献において主として研究されている5員ヘテロ環である。それらは、例えば抗生物質の側鎖の化学修飾に用いられる(Lilly, Eli & Co: US 3 641 021)。対応するα−ヒドロキシ酸のホスゲン化によるそれらの調製は、特にW. H. Daviesによる研究を通じて長く知られている(J.. Chem. Soc., 1951, 1357-1359)。
【0010】
OCA、特に5−メチル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオン(乳酸の誘導体)で行われた総ての重合試験では、H.R.KricheldorfおよびJ.M. Jonteによる研究(Polym. Bulletin, 1983, 9, 276-281)で明確に示されるように、オリゴマーがランダムに導かれている(モル質量M 3000g/mol未満)。いくつかの塩基触媒が試験されている(ピリジン、トリエチルアミン、カリウム t−ブチレート、チタン酸テトラブチル)が、上記に引用した著者らは、3000g/mol未満のモル質量を有するポリマーを合成しただけであった。
【0011】
Smith J、Tighe Jによる刊行物: Makromol. Chem, 1981, 182, 313には、ピリジンまたは置換ピリジンの存在下での5−フェニル−1,3−ジオキソラン−2,4−ジオンの重合について記載されている。記載されている方法によれば、2100〜3940g/molの数平均モル質量を有するポリマーの形成がもたらされ;その多分散性指数は1.2〜1.3であった。これらの結果を考慮して、この刊行物の著者らは、得られたポリマーのモル質量は初期ピリジン濃度とは無関係であると記している。
【0012】
ポリ(α−ヒドロキシ酸)の対象とする用途との関係において、合成されるポリマーのモル質量を制御できることが望ましい。
【0013】
生物医学的用途では、例えば有効成分の放出のための担体として、ポリマーのモル質量を想定される治療用途の種類に適応させることができることが好ましい:例えば注射製剤の場合には質量500〜5000、パッチの場合には質量50000〜100000。吸収性縫合糸または一時的な代用皮膚などの生物医学的用途では、ポリマーのモル質量が15000g/molより大きいことが好ましい。
【0014】
また、これらのポリマーを塩化しやすい(salifiable)側鎖により官能化することができることも重要である。特に、天然アミノ酸由来の官能化鎖を存在させることで、天然ポリアミノ酸(またはタンパク質)の模倣が可能になるため、これらの化合物の取込みおよび生体適合性の改善が可能になる。カルボキシル鎖またはヒドロキシル鎖を含む一部のポリマーは、保護され、ラクチドの重合から誘導されるかどうかにかかわらず、文献に記載されている。塩化しやすい基により官能化されるOCAと構造的に最も近いポリマーは、OuchiおよびFujinoによって報告されているポリ−p−マレートである(Makromol. Chem. 1989, 190, 1523)。しかしながら、ジベンジルエステルマリドモノマー(the dibenzylester malide monomer)はその場合に収量14%で得られるだけであり、その単独重合時の変換は200℃での加熱時間10時間にもかかわらず15%以下である。さらに、ラクチドの重合には、一般に、毒性がよく知られているスズ触媒の使用が必要とされる。
【0015】
酸により官能化された側鎖を有するOCAは既に文献に記載されている(Al-Mesfer et al, Biomaterials, (1987), 8 (5), 353-359)。このOCAはタルトロン酸のOCAである。しかしながら、リンゴ酸などの他の酸からOCAを調製する試みは失敗に終わり、無水リンゴ酸が得られただけであった。加えて、記載されている合成法は、対応するOCAの合成に有利に働くタルトロン酸(タルトロン酸では対応する無水物は知られていない)の場合に用いることができるだけである。
【0016】
最後に、タルトロン酸のOCAの重合は非常に迅速であり、あまりにも迅速すぎて非官能性OCAの重合と比較することができず、共重合を考える可能性が排除されることに留意されたい。
【0017】
タルトロン酸のOCAの酸官能基はポリマー鎖と非常に近接しており、そのため、このOCAは本発明者らが発見したものとは異なっている。さらに、この文献では本発明の重合法を用いていないため、α−ヒドロキシ酸重合の制御を提供していない。
【発明の開示】
【0018】
従って、本発明の目的の1つは、塩化しやすい官能基(salifiable function)によって官能化された新規OCAと、これらのOCAからポリ(α−ヒドロキシ酸)を合成するための方法を提供することであり、これらのOCAを用いることにより、最終生成物、すなわち、この塩化しやすい官能基を含み、制御可能な数平均モル質量Mnを有するポリマーを得ることが可能となる。これらの新規OCAは公知の非官能化OCAと容易に共重合することができる。
【0019】
本発明者らは、新規官能化OCA、ならびに官能化OCAの制御重合によってα−ヒドロキシ酸のポリエステルを調製するために使用することができる新規触媒系を見出した。本発明は、6員環状ジエステルの開環によってこれらのポリマーを作り出す従来の方法の、より一般的な代替技術を提供する。
【0020】
本発明の対象は、次の一般式I:
【化1】

{式中:
nは1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、さらに好ましくは2〜4の整数であり;
Aは、O、NおよびSの中から選択されるヘテロ原子、または−COO基または−NH基であり、
BはAのプロテクター基であり、
mは1または2であり、
Rは
・水素、
・(CH)n−A−(B)m基(式中、n、m、AおよびBは前に定義されているとおりである)、
・直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜C12アルキル基、
・C〜C20アラルキル基、
・単純もしくは縮合C〜C14シクロアルキル基、
・単純もしくは縮合C〜C14ヘテロシクロアルキル基、
・単純もしくは縮合C〜C14芳香族基、および
・単純もしくは縮合C〜C14複素芳香族基
からなる群から選択される基である}
のOCA、またはそれらの付加塩、それらの異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体もしくはそれらの混合物である。
【0021】
前記R基は、好ましくは水素、直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜Cアルキル基、5または6個の環員を有する(ヘテロ)シクロアルキル基、および5または6個の環員を有する(ヘテロ)芳香族基からなる群から選択される基を表す。前記R基は、さらに好ましくは水素原子を表す。
【0022】
本発明において、「Aのプロテクター基」とは、OCAの重合中の望ましくない反応からAH官能基を保護する任意の基を意味する。
【0023】
「プロテクター基」または「保護基」との用語は、多官能性化合物における反応性部位(ここでは部位A)を選択的にブロックし、これにより、合成化学における通常の意味で、保護されていない別の反応性部位において選択的に化学反応が行われることを可能とする基を意味する。
【0024】
Aが酸素原子または−COO基を表すならば、Aのプロテクター基はO−プロテクター基である。この場合、mは1に等しい。
【0025】
本発明における「O−プロテクター基」との用語は、OCAの重合中の望ましくない反応からそのヒドロキシル基またはカルボニル基、すなわち、反応性酸素原子を保護する、Greene "Protective Groups in Organic Synthesis" (John Wiley & Sons, New York,(1981))、およびHarrison et al "Compendium of Synthetic Organic Methods" Vols. 1 to 8 (J. Wiley & Sons 1971 to 1996)に記載されているO−プロテクター基のような任意の置換基を意味する。O−プロテクター基には、置換または非置換のメチルまたはアルキルエーテルまたはエステル、例えばメトキシメチル、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、t−ブチル、ベンジルおよびトリフェニルメチル、ベンジルエーテル(置換または非置換)、テトラヒドロピラニルエーテル、アリルエーテル、置換エチルエーテル、例えば2,2,2−トリクロロエチル、シリルエーテルまたはアルキルシリルエーテル、例えばトリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル、ヘテロ環エーテル;ならびにヒドロキシル基とカルボン酸との反応によって調製されるエステル、例えばtert−ブチル、ベンジルまたはメチルエステル、炭酸エステル、特にベンジルまたはハロゲノアルキル炭酸エステル、その酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステルなどが含まれる。O−プロテクター基はベンジル基であることが有利である。
【0026】
AがNH基またはそのNヘテロ原子を表すならば、Aのプロテクター基はN−プロテクター基である。この場合、mの値は1または2である。
【0027】
本発明において「N−プロテクター基」とは、OCAの重合中の望ましくない反応からそのNH基を保護する、Greene "Protective Groups in Organic Synthesis" (John Wiley & Sons, New York,(1981))、およびHarrison et al "Compendium of Synthetic Organic Methods" Vols. 1 to 8 (J. Wiley & Sons 1971 to 1996)に記載されているN−プロテクター基のような任意の置換基を意味する。N−プロテクター基には、カルバミン酸エステル、アミド、N−アルキル誘導体、アミノアセタール誘導体、N−ベンジル誘導体、イミン誘導体、エナミン誘導体およびN−ヘテロ原子誘導体が含まれる。特に、N−プロテクター基には、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、フェニルスルホニル、ベンジル(Bn)、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(benzloxycarbonyl)(Cbz)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジル−オキシカルボニル、トリクロロエトキシカルボニル(TROC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリフルオロ−アセチル、ベンジルカルバミン酸エステル(置換または非置換)などが含まれる。例えばBOCに関しては弱酸、例えばトリフルオロ酢酸または酢酸エチル中塩酸による、またはCbzに関しては接触水素化による除去の相対的な容易さから、N−プロテクター基としてBOCまたはCbzのいずれかを使用することが有利である。N−プロテクター基はCbz基であることが有利である。
【0028】
Aが硫黄原子を表すならば、Aのプロテクター基はS−プロテクター基である。この場合、mの値は1である。
【0029】
本発明において「S−プロテクター基」とは、OCAの重合中の望ましくない反応からそのチオール基を保護する、Greene "Protective Groups in Organic Synthesis" (John Wiley & Sons, New York,(1981))に記載されているS−プロテクター基のような任意の置換基を意味する。S−プロテクター基には、ベンジルエーテル(置換または非置換)、例えばp−メトキシベンジルまたはp−ニトロベンジル、トリチルエーテル、チオアセテート、チオアセタールおよびチオエーテルが含まれる。
【0030】
本発明において「異性体」とは、同一分子式を有するが原子の空間的配置が異なる化合物を意味する。原子の空間的配置の点で異なる異性体は「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像ではない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は「鏡像異性体」または時には光学異性体と呼ばれる。4つの同一でない置換基と結合した炭素原子は「キラル中心」と呼ばれる。
【0031】
「キラル異性体」とは、キラル中心を有する化合物を意味する。キラル異性体には正反対のキラリティーを有する2つの鏡像異性体形態が含まれ、個別の鏡像異性体の形態で、または鏡像異性体の混合物として存在し得る。正反対のキラリティーを有する個別鏡像異性体形態を等量ずつ含む混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。
【0032】
本発明において化合物の「付加塩」とは、次のとおり形成される該化合物の塩を意味する:
(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸とともに形成される酸付加塩;または酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンフェルスルホン酸(camphersulfonic acid)、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸(hydroxynaphtoic acid)、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸(naphtalenesulfonic acid)、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、トリフルオロ酢酸などのような有機酸とともに形成される酸付加塩;あるいは
(2)親化合物中に存在する酸プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオンに置換されるときに形成される塩;または有機もしくは無機塩基の配位化合物。有利な有機塩基には、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが含まれる。有利な無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムが含まれる。
【0033】
好ましい付加塩は、塩酸、トリフルオロ酢酸、ジベンゾイル−L−酒石酸およびリン酸から形成される塩である。
【0034】
本発明によるOCAは、式(I)においてBがベンジルオキシカルボニル基を表し、かつAがNHを表すか、またはBがベンジル基を表し、かつAがOまたは−COO基を表すものであることが有利である。
【0035】
本発明のOCAは、
【化2】

の中から選択されることが有利である。
【0036】
本発明によるOCAは、当業者に公知の合成法に従って、対応するα−ヒドロキシ酸のホスゲン化によって得ることができる。
【0037】
第一の実施態様によれば、前記OCAは、ホスゲン化剤と反応しない有機溶媒の存在下、−20℃〜+40℃、好ましくは−5℃〜+30℃、より好ましくは−20℃〜−5℃の温度において、第3級アミン塩基を加えないホスゲン化剤との反応により、次式(VI):
【化3】

(式中、n、A、B、mおよびRは一般式(I)において定義されているとおりである)
のα−ヒドロキシ酸リチウム塩をホスゲン化することによって得られる。
【0038】
先行技術に記載されている方法とは異なり、この実施態様による方法では塩酸を捕捉するためのN−メチルモルホリンタイプの第3級アミン塩基の存在は不要である。
【0039】
そのため、この実施態様による方法においては、所望のOCAを得るために必要とされるのは、ホスゲン化剤、式(VI)の化合物および溶媒のみである。
【0040】
第二の実施態様によれば、前記OCAは、所望により担体(例えばポリスチレン)上に存在していてよい有機第3級アミン塩基の存在下、対応するα−ヒドロキシ酸、またはその塩の1つをホスゲン化することによって得られる。
【0041】
前記有機第3級アミン塩基は、ジイソプロピルエチルアミンであることが好ましい。
【0042】
以下に示すOCA合成法の特徴は、前記方法の第一の実施態様および前記方法の第二の実施態様の両方に関するものである。
【0043】
好ましくは、前記ホスゲン化剤は、ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンの中から選択され、好ましくはホスゲンとされる。ホスゲン化剤の量と式(VI)化合物の量は等モルであることが有利であり、あるいは、ホスゲン化剤が式(VI)化合物と比べてわずかに過剰に存在してもよいが、この過剰分は式(VI)化合物の10〜50%以下である。
【0044】
好ましくは、前記溶媒は、エーテル(例えばジエチルエーテルまたはTHF)、芳香族炭化水素(例えばトルエン)、およびエステル(例えばメチルホルミアート(methyl formiate))の中から選択される。さらに好ましくは、前記溶媒は、THFまたはジエチルエーテルである。
【0045】
好ましくは、前記反応時間は20時間未満、さらに好ましくは2時間〜6時間である。
【0046】
前記式(VI)化合物は、当業者に周知の方法を用いて、対応するアミノ酸から容易に得ることができる。
【0047】
本発明のさらなる対象は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)の製造のための、本発明による一般式(I)のOCAの使用である。
【0048】
本発明のもう1つの対象は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)を製造する方法であり、この方法は次の連続的工程を含んでなる:
i)少なくとも1個の環内窒素原子を含有する5−または6−員芳香族ヘテロ環である塩基を含む触媒系の存在下において、有機溶媒、好ましくは無水溶媒中、−20〜200℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃の温度で、本発明による式(I)OCAのモノマーを制御重合させる工程(ただし、該触媒系において該塩基を単独で用いるときには、該塩基はピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジンまたは2−メトキシピリジンではない)、そして
ii)所望により、工程i)で得られたポリマーを精製する工程、
iii)工程i)またはii)で得られたポリマーを回収する工程、
iv)所望により、Bとは異なるO−プロテクター基によって、工程iii)で得られたポリマーの末端OH基を保護する工程、
v)所望により、工程iv)で得られたポリマーのA基を脱保護してAH基を得る工程、
vi)所望により、工程v)で得られたポリマーの末端OH基を脱保護する工程。
【0049】
「脱保護」または「脱保護された」との用語は、保護されていない基に対して選択的な反応を行った後にプロテクター基を除去するプロセスが完了したことを意味する。一部のプロテクター基は、それらの実用性または除去の相対的な容易さから他のものより好ましいことがある。保護されたヒドロキシル基またはカルボキシル基の脱保護試薬には、炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウム、アルコール溶液中の水酸化リチウム、メタノール中の亜鉛、酢酸、トリフルオロ酢酸、パラジウム触媒、パラジウム触媒の存在下での水素、塩酸もしくは硫酸、水酸化ナトリウムおよび有機塩基(例えばFmoc基を除去するためのピペリジン)または三臭化ホウ素などが含まれる。
【0050】
本発明の1つの本質的な特徴によれば、工程i)での重合反応は制御下で行われる。すなわち、合成反応の終わりに得られるポリマーの数平均または重量平均モル質量は、モノマーの初期モル量に対して加える触媒系のモル量を調整することによって、すなわち、初期モノマー/(触媒系)モル比を調整することによって予め定めることができる。本発明者らは、得られるポリマーのモル質量は、数平均であろうと重量平均であろうと、初期モノマー/(触媒系)モル比の準線形関数であり、そのガイディング係数(the guiding coefficient)は反応が起こる溶媒によって決まる(溶媒効果)ということを事実上見出した。よって、モノマーの初期モル量に対して必要なモル量の触媒系を加えることによって、3000g/molを超える数平均モル質量を有するポリマーを合成することは容易である。
【0051】
高モル質量のポリマーを得ることが望まれるほど、モノマー/(触媒系)の初期モル比は高くなる、すなわち、モノマーの初期モル量に対して加える触媒系のモル量は低くならなければならない。
【0052】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、前記重合法は、前記モノマー/(触媒系)モル比は10より大きく、好ましくは20〜1000、より好ましくは50〜1000、さらに好ましくは120〜1000、一層さらに好ましくは200〜1000であることを特徴とする。
【0053】
本発明の触媒系に存在する塩基は、好ましくは別の環内または環外窒素原子との少なくとも1個の環内窒素原子コンジュゲートを含む5−または6−員芳香族ヘテロ環である。
【0054】
本発明の1つの実施態様によれば、前記塩基は、式(II):
【化4】

(式中、RおよびRは互いに独立して、直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和のC〜Cアルキル基であり、またはRおよびRは一緒に5−または6−員ヘテロシクロアルキルを形成し、該−NR基は2位もしくは4位に存在する)
のアミノ−ピリジンである。
【0055】
ピリジンのコアはまた、1つ以上のC〜Cアルキル基によって置換されていてもよい。
【0056】
特に、前記塩基は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)である。
【0057】
本発明の別の実施態様によれば、前記塩基は、好ましくは式(III):
【化5】

(式中、Rは直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和のC〜Cアルキル基である)
のイミダゾールである。
【0058】
イミダゾールコアもまた、1つ以上のC〜Cアルキル基によって置換されていてもよい。
【0059】
特に、前記塩基はN−メチル−イミダゾールである。
【0060】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、本発明による触媒系は単に1つの塩基を含むだけである。この場合では、ポリマーの直線表示においてZ基は水素原子を表し、Xは酸素原子を表す。
【0061】
前記初期モノマー/塩基モル比は、好ましくは10より大きく、より好ましくは20〜1000、さらに好ましくは50〜1000、さらに好ましくは120〜1000、さらに好ましくは200〜1000である。
【0062】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記触媒系はプロトン性試薬も含む。
【0063】
本発明において、「プロトン性試薬」とは、プロトンの形で放出され得る水素原子を含む任意の試薬を意味する。
【0064】
前記プロトン性試薬は、少なくとも1個のプロトンの放出を通じて、重合反応を開始させる。一度、重合反応が開始されたら、このようにして形成されるオリゴマーのアルコール官能基によって重合反応は自立する。
【0065】
従って、工程i)までの重合反応を以下のように記載することができる:
【化6】

(Zは残りのプロトン性試薬を表し、XはN、OおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を表す)。
【0066】
本発明において、前記プロトン性試薬は、好ましくは水、アルコール、第1級および第2級アミン、チオール、およびアルコール官能基、アミノ官能基またはチオール官能基を有するポリマーからなる群から選択される。
【0067】
本発明において、プロトン性試薬として、第1級、第2級または第3級にかかわらず任意のアルコールを使用することができる。例えば、エタノール、ペンタノール、Boc−エタノールアミン、ネオペンチルアルコールまたはより複雑な構造のアルコールを使用することができる。同様に、任意の第1級または第2級アミンも本発明に使用することができる。例えば、ベンジルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン、エタノールアミン、塩基性アミノ酸(例えばリジン)またはより複雑な構造のC−保護ペプチドもしくはアミンが挙げられる。任意のチオールもプロトン性試薬として使用してよい。例えば、ベンジルチオール、システイン(cystein)誘導体を使用してよい。
【0068】
本発明において、「アルコール官能基、アミノ官能基またはチオール官能基を有するポリマー」との表現は、−OH官能基、−NH官能基および−SH官能基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基を含む置換基を有する総てのポリマーを示す。
【0069】
前記プロトン性試薬は、好ましくは水、C〜C12脂肪族アルコール、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)およびそれらのコポリマーからなる群から選択される。
【0070】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、前記プロトン性試薬は、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)およびそれらのコポリマーからなる群から選択される。この場合、(ラクチドおよび/またはグリコリド)−OCAのブロックコポリマーが得られる。
【0071】
前記触媒系中に存在するプロトン性試薬は、1に近い多分散性指数(PDI)(分子量分布)のより優れた制御を可能にし、ポリマー質量の制御も促す。
【0072】
工程i)では、前記溶媒は、好ましくは塩素化脂肪族溶媒、エーテル、環状エーテル、芳香族化合物、アミドまたはラクタム(例えばN−メチルピロリドン)からなる群から選択される。
【0073】
工程i)の後に得られるポリマーは、所望により工程ii)において精製してよく、その後、そのポリマーを工程iii)において回収する。
【0074】
ポリマーのこれらの精製および回収操作は、従来のように、例えば溶媒除去、真空蒸発、反応媒質の濃縮の実施または非実施、続いて、非溶媒(例えばC〜Cアルカン)の添加による沈殿または二相洗浄によって行われる。
【0075】
工程iv)〜vi)により、前記塩化しやすい官能基(A−(B)m)のプロテクター基を切断し、塩化しやすい官能基が保護されていないポリマー(AH)を得ることが可能になる。
【0076】
特に、これらの塩化しやすい官能基を脱保護する(工程v)ためには、予め、工程iii)において得られたポリマーの末端ヒドロキシル官能基を保護する(工程iv)ことが有利である。この保護は、Bとは異なるO−プロテクター基、好ましくはアセチルを用いて実施しなければならない。よって、この保護工程は、当業者に周知の方法を用いて行われる。
【0077】
工程v)は、用いるBプロテクター基に応じて、当業者に周知の方法を用いて行われる。例えばBがBn基を表す場合には、脱保護は、工程iv)において得られたポリマーの接触水素化によって、好ましくはPd/C触媒(10%)の存在下で行うことができる。
【0078】
任意の工程vi)により、末端OH官能基が保護されていないポリマーを回収することが可能になる。これは当業者に周知の方法を用いて得られる。
【0079】
よって、本発明は、本発明の方法を用いて得られるポリ(α−ヒドロキシ酸)ポリマーに関する。
【0080】
ゆえに、α−ヒドロキシ酸から誘導されるポリエステルについて想定される総ての用途に必要な寸法的、機械的、化学的、生化学的および生物学的特性を有するポリマーおよび材料が得られる:
インプラント、歯科医術、体内補綴物、整形外科医術;
すなわち、医療分野または化粧品分野にかかわらず、選択された生物学的標的への有効成分の輸送および制御送達のための、活性分子のin vivoアドレッシング系。
【0081】
本発明は、先行技術の方法の実施によって必然的に引き起こされる問題に対して有効な解決をもたらす:
適切に保護された官能基を含む極めて多数のα−ヒドロキシ酸の重合および共重合の可能性;
コストに関連する理由だけでなく、「統計」コポリマーまたは「ブロック」コポリマーの調製にも望ましい重合速度の増加および調和;
「テイラード」ポリマー(tailored polymers)、すなわち、所望の物理的特性および化学構造を有し、かつそのペンダント基が塩化しやすいポリマーへのアクセス。
【0082】
本発明の方法を用いて得られるポリマーは、好ましくは1〜2、より好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.4の多分散性指数を有する。よって、本発明の方法を用いて得られるポリマーは、狭い分子量分布曲線を有しているため、モル質量はほとんど分散しない。多分散性指数値が1に近いほど、形成される同じモル質量を有する高分子の数は多くなる。
【0083】
本発明の方法に従って得られるポリマーを活性分子のin vivoアドレッシング系に用いる場合には、これらのポリマーが1に近い多分散性指数を有することが特に有利である。
【0084】
1に近い多分散性指数により、重合の「リビング」性、すなわち、二次反応の不在と、活性末端を含むポリマーの正確な定義づけが確認される。また、狭い分子分布は、所望の標的および関連する生物学的機構との関連で、医薬製剤の質量組成をより正確に調整することも可能にする。例えば、注射用製剤では、前記分子が、特に毛細血管通過を容易にするために、同じサイズのものであることが好ましい。最後に規制の観点から、単分子有効成分に関する薬物承認はより得やすい。
【0085】
本発明の1つの実施態様によれば、本発明の方法により得られるポリマーは、好ましくは1000g/molより大きい、さらに好ましくは2000g/molより大きい数平均モル質量を有する。
【0086】
本発明はまた、本発明の方法を用いて得ることができる、式(IV):
【化7】

(式中:
・nおよびRは式(I)のOCAの場合と同じ定義を有し:
・R1は−A−(B)m基または−A−H基を表し、ここで、A、Bおよびmは式(I)のOCAの場合と同じ定義を有し;
・R2はBとは異なるO−プロテクター基、または水素原子を表し;
・XはO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはO、またはポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを表し、該ポリマーは−X’基を末端とし、ここで、X’はO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはOであり;
・Zは直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜C12アルキル基を表し;
・rは1以上である)
の新規ポリマーにも関し、rは好ましくは1〜500、より好ましくは1〜400、さらに好ましくは11〜350である。
【0087】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、式(IV)において、Xはヘテロ原子Oを表し、ZはC〜Cアルキル基を表す。
【0088】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、式(IV)において、−X−Zは式(V):
【化8】

(式中、oは1以上であり、R3およびR4はHまたはC〜Cアルキル基、好ましくはCH、C〜CシクロアルキルもしくはC〜Cアリールアルキル基を表し、X’はO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはOを表し、Zは直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜C12アルキル基である)
の基を表す。好ましくは、X’はヘテロ原子Oであり、ZはC〜Cアルキル基である。
【0089】
式(IV)のポリマーは、好ましくは1〜2、より好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.4の多分散性指数を有する。
【0090】
本発明の1つの実施態様によれば、式(IV)のポリマーは、好ましくは1000g/molより大きい、より好ましくは2000g/molより大きい数平均モル質量を有する。
【0091】
最後に、本発明は、有効成分の送達のため、および生体材料の製造のための、本発明の方法に従って得ることができるポリマーの使用に関する。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は本発明を例証するものであり、限定するものではない。以下の実施例において、特に断りのない限り:
・使用するペンタノールおよびTHFはナトリウムで蒸留した。DCMはPで蒸留した。DMAPはトルエン中で再結晶させた。Lac−OCAはエチルエーテル中で再結晶させた後、昇華させた。
BnGlu−OCAはiPrO/EtOの2/1混合物中で再結晶させた。
・数平均(Mn)モル質量および重量平均(Mw)モル質量はTHF中でのGPCによって決定した(Waters 600ポンプ;Waters 2410屈折率検出器;Waters Styragel HR1カラム)。多分散性指数が低いポリスチレン標品を用いて、検量線を描いた。
H NMRスペクトルはCDCl中で記録した(300MHzのBrucker社製分光計)。
【0093】
実施例1:BnOGlu−OCAの合成
γ−ベンジル−2−ヒドロキシグルタル酸の合成
(Deechongkit S. et al, Org. Lett. 2004, 6, 497-500; Civitello E.R. et al, J. Org. Chem. 1994, 59, 3775-3782).
【化9】

【0094】
0℃において、HO/AcOHの8:2混合物100mL中のL−BnOGlu(2.37g;10.0mmol)の懸濁液に、10mL(20.0mmol)の2M NaNO溶液を30分以内に加える。周囲温度で4時間の攪拌下で放置すると、この反応媒質は均質になる。100mLの水を加え、AcOEt(3x50mL)で抽出する。ブラインで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させて、2.70gの粘性油を得る。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(100gシリカ)により精製する。溶離剤:DCM 95:MeOH 4.5:AcOH 0.5。淡色の油を回収する(1.38g、58%)。
【0095】
H NMR(CDCl−300 MHz):7.35(m,5H);5.13(s,2H);4.31(dd,IH,JHH=7.6および3.9Hz);2.6(m,2H);2.0−2.3(m,2H).
13C NMR(CDCl−75 MHz):171.2;166.6;147.9;135.2;128.7−128.2;78.0;67.1;28.4;26.0.
【0096】
グルタミン酸−OCAの合成
プロトコールN°1
【化10】

【0097】
無水ジエチルエーテル中のヒドロキシル酸(4.20mmol;1.0g)の溶液に、BuLi(4.20mmol)の溶液を−30℃で15分以内に加える。この反応媒質は急速に不均質になる。−20℃で1時間の攪拌下で放置する。−20℃において、リチウム塩の懸濁液にジホスゲン(4.20mmol;0.50mL)を加える。この反応媒質を−20℃で2.5時間の攪拌下で放置し、その後、H NMRによって制御する。不溶性リチウム塩を不活性雰囲気中での濾過により除去し、10mL無水ジエチルエーテルですすぐ。溶媒を真空除去し、得られた油をペンタン(2x10ml)ですすぐ。この油性残渣をジイソプロピルエーテル中でトリチュレートする。予想される生成物はこの媒質中で白色の結晶として結晶化する(0.41g、37%)。
【0098】
プロトコールN°2:
0℃において、無水THF中のヒドロキシル酸溶液(6.30mmol;1.50g)にジイソプロピルエチルアミン(6.30mmol;1.10mL)を加える。この反応媒質を周囲温度で30分の攪拌下で放置する。0℃において、前記溶液にジホスゲン(6.30mmol;0.76mL)を加える。この反応媒質を0℃で1時間、次に周囲温度で3時間の攪拌下で放置する。THFを蒸発させる。得られた油をペンタン(2x15mL)で洗浄する。この油性残渣をジエチルエーテルに溶かし、不溶性物質を除去する。ジエチルエーテルを真空蒸発させて、油を得、この油は結晶化する(0.99g、59%)。
【0099】
プロトコールN°3:
0℃において、20mL無水ジエチルエーテル中の、ヒドロキシル酸ジシクロヘキシルアミン塩(3.0mmol;1.26g)およびポリスチレン上にグラフトされたジイソプロピルエチルアミン(1.0g;3.0mmol)の懸濁液にジホスゲン(3.0mmol;0.36mL)を加える。この反応媒質を周囲温度で4時間の攪拌下で放置する。この樹脂を濾過し、15mL無水ジエチルエーテルですすぐ。これらのエーテル相を集めた後、溶媒を蒸発させる。得られた油をペンタン(2x10mL)で洗浄する。生成物を真空乾燥させて、油を得、この油は冷凍庫内で結晶化する(0.53g;67%)。
【0100】
H NMR(CDCl−200 MHz):2.44−2.22(m,2H);2.63(t,2H,JHH=6.7Hz);5.14(s,2H);5.21(dd,1H,JHH=7.8および5.4Hz);7.36(m,5H).
13C NMR(CDCl−75 MHz):26.0;28.3;67.1;78.0;128.2−128.7;135.2;147.9;166.6;171.2.
融点:59−60℃.
IR(KBr):1891;1805;1740.
MS(IE):264;236;210;174;108;91;65(M=264.23).
【0101】
実施例2:実施例1で得られたBnGlu−OCAの重合
単独重合:
【化11】

【0102】
ポリ(BnGlu)20
予め真空乾燥させたシュレンク管に、5mL DCM中の、実施例1で得られたBnGlu−OCA(1.58mmol、370mg)の溶液を入れる。周囲温度での攪拌下でn−ペンタノール(0.079mmol、9μL)、次にDMAP(0.079mmol、10mg)を加える。5分(CO放出の終了)後、モノマーの全消費量をH NMRによって確認する。5mL DCMを加え、この反応媒質を10mL 2N HClおよび10mLブラインで2回洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾固させて、粘性油を得る(120mg、75%)。
【0103】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+CHOCO);4.29(dd,JHH=4.2Hz,JHH=7.8Hz,CHOH);4.04(t,JHH=6.8Hz,OCHCH);2.0−2.6(m,CHCHCOBn);1.50(m,OCHCHCH);1.23(m,CHCHCH);0.83(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).
20のグルタミン酸モチーフ当たり1つのn−ペンタノールモチーフの組込み。
GPC:Mn=2700;Mw=3380;PDI=1.25.
【0104】
ポリ(BnGlu)50
予め真空乾燥させたシュレンク管に、4mL DCM中の、実施例1で得られたBnGlu−OCA(1.05mmol、277mg)の溶液を入れる。周囲温度での攪拌下でDCM中0.05Mネオペンチルアルコール溶液(21μmol、140μL)、続いてDCM中0.066M DMAP溶液(21μmol、140μL)を加える。15分(CO放出の終了)後、モノマーの全消費量をH NMRによって確認する。5mL DCMを加え、この反応媒質を10mL 2N HClおよび10mLブラインで2回洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾固させて、粘性油を得る(210mg、91%)。
【0105】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+CHOCO);3.82(s,OCHtBu);2.0−2.6(m,CHCHCOBn);0.90(s,OCHtBu).
50のグルタミン酸モチーフ当たり1つのアルコールモチーフの組込み。
GPC:Mn=6290;Mw=7440;PDI=1.18.
【0106】
ポリ(Glu)10OAc
【化12】

【0107】
1)重合
予め真空乾燥させたシュレンク管に、5mL DCM中の、実施例1で得られたBnGlu−OCA(0.81mmol、215mg)の溶液を入れる。周囲温度での攪拌下でn−ペンタノール(0.08mmol、9μL)、次にDMAP(0.08mmol、10mg)を加える。5分(CO放出の終了)後、モノマーの全消費量をH NMRによって確認する。
【0108】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+CHOCO);4.30(dd,JHH=4.2Hz,JHH=7.8Hz,CHOH);4.05(m,OCHCH);2.10−2.50(m,CHCHCOBn);1.60(m,OCHCHCH);1.30(m,CHCHCH);0.88(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).
9のグルタミン酸モチーフ当たり1つのn−ペンタノールモチーフの組込み。
GPC:Mn=2060;Mw=2560;PDI=1.24.
【0109】
2)末端アルコール官能基の保護
反応媒質に2当量の無水酢酸(0.16mmol、16μL)を加え、周囲温度での攪拌下で1時間放置する。H NMRスペクトルにより末端アルコール官能基の完全保護(CHOHシグナルの消失)を確認する。この反応媒質を5mL 2N Hcl、次に5mLブラインで2回洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾固させて(トルエン同時蒸発後)、粘性油を得る。
【0110】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+CHOCO);4.10(m,OCHCH);2.05−2.50(m,CHCHCOBn);2.06(s,OCOCH);1.60(m,OCHCHCH);1.30(m,CHCHCH);0.86(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).
CHOHシグナルの消失およびアセチルモチーフの組込み、2.06ppmにおける一重線。
GPC:Mn=1960;Mw=2430;PDI=1.24.
【0111】
3)カルボン酸官能基の脱保護
25mL酢酸エチル中のアセチル化共重合体の溶液の水素分解を水素雰囲気中、10%Pd/C(10mg)の存在下、大気圧下で1時間行う。セライトに通し、酢酸エチルですすぎ、溶媒を蒸発させる。THFに再度溶かし、乾固させる。このポリマーをクロロホルム中でトリチュレートし、クロロホルムを除去し、乾固させて、白色の「泡沫物質」を得る。
【0112】
H NMR:5.00−5.30(m,CHOCO);4.02(m,OCHCH);1.90−2.50(m,CHCHCOH);2.05(s,OCOCH);1.55(m,OCHCHCH);1.22(m,CHCHCH);0.77(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).完全脱ベンジル化.
GPC:Mn=1860;Mw=2230;PDI=1.19.
【0113】
統計共重合 lac−OCA/BnGlu−OCA
【化13】

【0114】
−ポリ(Lac)10ポリ(BnGlu)10
予め真空乾燥させたシュレンク管に、3mL DCM中の、実施例1で得られたBnGlu−OCA(0.95mmol、250mg)およびLac−OCA(0.95mmol、110mg)の溶液を入れる。周囲温度での攪拌下でn−ペンタノール(0.095mmol、10μL)、次にDMAP(0.095mmol、12mg)を加える。5分(CO放出の終了)後、2つのモノマーの全消費量をH NMRによって確認する。さらに5mL DCMを加え、次いでこの反応媒質を5mL 2N HClおよび5mLブラインで2回洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾固させて、粘性油を得る(250mg、87%)。
【0115】
H NMR:7.30(m,Ar);5.07(m,CHAr+CHOCO);4.30(m,CHOH);4.05(m,OCHCH);2.10−2.50(m,CHCHCOBn);1.53(m,CHCH+OCHCHCH);1.23(m,CHCHCH);0.80(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).10のグルタミン酸モチーフおよび10の乳酸モチーフ当たり1つのn−ペンタノールモチーフの組込み。
GPC:Mn=2800;Mw=3860;PDI=1.38.
【0116】
ポリ(Lac)10ポリ(BnGlu)
予め真空乾燥させたシュレンク管に、5mL DCM中の、実施例1で得られたBnGlu−OCA(0.12mmol、32mg)およびLac−OCA(1.20mmol、140mg)の溶液を入れる。周囲温度での攪拌下でn−ペンタノール(0.12mmol、12μL)、次にDMAP(0.12mmol、14mg)を加える。5分(CO放出の終了)後、2つのモノマーの全消費量をH NMRによって確認する。この反応媒質を2回の5mL 2N HClおよび5mLブラインで洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾固させて、粘性油を得る(90mg、81%)。
【0117】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+CHOCO);4.30(m,CHOH);4.05(m,OCHCH);2.10−2.50(m,CHCHCOBn);1.50(m,CHCH+OCHCHCH);1.20(m,CHCHCH);0.80(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).1のグルタミン酸モチーフおよび10の乳酸モチーフ当たり1つのペンタノールモチーフの組込み。
GPC:Mn=1125;Mw=1550;PDI=1.38.
【0118】
ポリ(Lac)10ポリ(Glu)OAc
【化14】

【0119】
1)重合
予め真空乾燥させたシュレンク管に、10mL DCM中の、実施例1で得られたBnGlu−OCA(0.45mmol、119mg)およびLac−OCA(2.33mmol、270mg)の溶液を入れる。周囲温度での攪拌下でn−ペンタノール(0.23mmol、26μL)、次にDMAP(0.23mmol、28mg)を加える。5分(CO放出の終了)後、モノマーの全消費量をH NMRによって確認する。
【0120】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+CHOCO);4.30(m,CHOH);4.05(m,OCHCH);2.10−2.50(m,CHCHCOBn);1.50−1.20(m,CHCH+OCHCHCHCHCHCH);0.80(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).1.8のグルタミン酸モチーフおよび10の乳酸モチーフ当たり1つのn−ペンタノールモチーフの組込み。
GPC:Mn=1560;Mw=2070;PDI=1.33.
【0121】
2)末端アルコール官能基の保護
反応媒質に2当量の無水酢酸(0.46mmol、44μL)を加え、周囲温度で1時間の攪拌下で放置する。H NMRスペクトルにより末端アルコール官能基の完全保護(CHOHシグナルの消失)を確認する。この反応媒質を10ML 2N HCl、次に5mlブラインで2回洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾固させて(トルエン同時蒸発後)、粘性油を得る(250mg、91%)。
【0122】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+COCO);4.05(m,OCHCH);2.05−2.50(m,CHCHCOBn);2.05(s,OCOCH);1.50−1.20(m,CHCH+OCHCHCHCHCHCH);0.80(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).
CHOHシグナルの消失および1つのアセチルモチーフの組込み、2.05ppmにおける一重線。
GPC:Mn=1530;Mw=2020;PDI=1.32.
【0123】
3)カルボン酸官能基の脱保護
25mL酢酸エチル中のアセチル化共重合体(220mg)の溶液の水素分解を水素雰囲気下、10%Pd/C(10mg)の存在下、大気圧下で1時間行う。セライトに通し、酢酸エチルですすぎ、溶媒を蒸発させる。THFに再度溶かし、乾固させて、白色の「泡沫物質」を得る(190mg)。
【0124】
H NMR:5.10(m,CHOCO);4.05(m,OCHCH);2.05−2.50(m,CHCHCOH);2.07(s,OCOCH);1.50−1.20(m,CHCH+OCHCHCHCHCHCH);0.80(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).完全脱ベンジル化.
GPC:Mn=1370;Mw=1790;PDI=1.30.
【0125】
lac−OCA/BnGlu−OCAブロックにおける共重合
【化15】

【0126】
ポリ(Lac)20ポリ(BnGlu)10
予め真空乾燥させたシュレンク管に、3mL DCM中のLac−OCA(1.77mmol、205mg)の溶液を入れる。周囲温度での攪拌下でn−ペンタノール(0.088mmol、10μL)、次にDMAP(0.088mmol、10mg)を加える。5分(CO放出の終了)後、モノマーの全消費量をH NMRによって確認する。
【0127】
H NMR:5.15(m,CHOCO);4.30(m,CHOH);4.10(m,OCHCH);1.50(m,CHCH+OCHCHCH);1.30(m,CHCHCH);0.90(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).20の乳酸モチーフ当たり1つのn−ペンタノールモチーフの組込み。
GPC:Mn=1440;Mw=1780;PDI=1.24.
【0128】
ポリ(lac)20の前記溶液に、2mL DCM中の、実施例1で得られたBnGlu−OCAの溶液を加える。5分(CO放出の終了)後、モノマーの全消費量をH NMRによって再度確認する。4.30ppmにおけるCHOHシグナルの消失により、ポリ(lac)20がマクロ開始剤としてのその役割を効果的に果たすことが確認される。この反応媒質を2回の10mL 2N HClおよび10mLブラインで洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾固させて、白色の泡沫物質を得る(330mg、88%)。
【0129】
H NMR:7.30(m,Ar);5.10(m,CHAr+CHOCO);4.30(m,CHOH);4.10(m,OCHCH);2.10−2.50(m,CHCHCOBn);1.50(m,CHCH+OCHCHCH);1.30(m,CHCHCH);0.90(t,JHH=6.8Hz,CHCHCH).ポリ(BnGlu)鎖へのポリ(Lac)20の末端アルコールの組込み。10のグルタミン酸モチーフおよび20の乳酸モチーフ当たり1つのn−ペンタノールモチーフの存在。
GPC:Mn=2540;Mw=3120;PDI=1.23.
【0130】
実施例3:OCA−Bnセリンの合成
L−Bn−セリンのジアゾ化 (Deechongkit S. et al, Org. Lett 2004, 6, 497-500)
【化16】

【0131】
8:2 HO/AcOH混合物200mL中のL−Bnセリン(3.92g、20.0mmol)の懸濁液に、20mLの2M NaNO水溶液(40.0mmol)を30分以内に0℃において加える。この反応媒質は0℃で1時間後に均質になる。周囲温度で5時間の攪拌下で放置して、この反応を完了する(CCM対照:DCM 90−MeOH 9−AcOH 1)。250mL水を加え、AcOEt(4x100mL)で抽出する。これらの有機相を集め、それらをブラインで洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させて、3.85gの油を得る。クロマトグラフィー(DCM 95−MeOH 4.5−AcOH 0.5)により精製する。油を回収し、この油は結晶化する(3.15g、82%)。
【0132】
H NMR(CDCl−300 MHz):3.80(m,2H);4.41(m,1H);4.57(d,1H,JHH=12.3Hz);4.62(d,1H,JHH=12.3Hz);7.33(m,5H).
13C NMR(CDCl−75 MHz):70.4;71.0;73.6;127.9−128.5;137.2;176.2.
融点:55−56℃.
【0133】
Bnセリン OCAの合成
【化17】

【0134】
5mL無水THF中のヒドロキシル酸(240mg、1.22mmol)の溶液に、担持されたジイソプロピルエチルアミン(400mg;1.22mmol)を加える。ジホスゲン(1.22mmol;0.15mL)を0℃において加え、この反応媒質を周囲温度での攪拌下で4時間放置する。樹脂を濾過し、すすいだ後、THFを蒸発させる。この残渣をペンタン(2x5mL)で洗浄し、乾固させて、無色の油を得る(240mg、88%)。
【0135】
H NMR(CDCl−300 MHz):3.84(m,2H);4.49(d,1H,JHH=12.1Hz);4.54(d,1H,JHH=12.1Hz);5.03(m,1H);7.17−7.31(m,5H).
13C NMR(CDCl−75 MHz):66.1;73.8;79.6;127.7;128.3;128.7;136.2;148.4;165.5.
融点:63−64℃.
IR(cm−1;CCl):1905,1815
MS(DCI,CH):222;198;181;131;119;107(M=222.19).
【0136】
実施例4:Cbzリジン−OCAの合成
L−Cbzリジンのジアゾ化 (Deechongkit S. et al, Org. Lett. 2004, 6, 497-500; Shin I. et al J. Org. Chem. 2000, 65, 7667-7575).
【化18】

【0137】
氷浴で冷却したHO/AcOHの1:1混合物200mL中のL−Cbzリジン(10.0g;35.7mmol、Bachem)の懸濁液に、400mLの2M NaNO溶液(5.0g;70.0mmol)を30分以内に加える。この反応媒質は周囲温度での攪拌下で18時間放置すると、均質になる。
【0138】
200mL水を加え、酢酸エチル(3x150mL)で抽出する。これらの有機相を集め、それらをブライン(3x100mL)で洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、この油性残渣をトルエンに再度溶かして、最大限の量の酢酸を除去する。蒸発乾固して、ll.5gの黄色の油(大部分はO−アセチル誘導体)を得る。
【0139】
MeOH/HOの1:1混合物100mL中、6.0g炭酸カリウムの存在下(pH9〜10)で脱アセチル化を行う。反応は3時間30分後に完了した。
【0140】
50mL水を加え、メタノールを蒸発させる。この水相を100mL酢酸エチルで抽出する。この水相を酸性化し(pH2)、酢酸エチル(2x100mL)で抽出する。ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。蒸発させて、8.70gの粘着性の白っぽい粉末を得る。100mlペンタン中でトリチュレートする。溶媒を除去して、白色の粉末を得る(7.22g;72%)。
【0141】
H NMR(CDCl−300 MHz):1.51(m,4H);1.72−1.76(m,2H);3.18(m,2H);4.25(m,1H);5.11(s,2H);7.34(m,5H).
13C NMR(CDCl−75 MHz):21.9;29.3;33.5;40.9;66.9;70.1;128.0−128.5;136.4;158.0;177.7.
融点:74−76℃(床(bed)温:79−81℃).
【0142】
Cbzリジン−OCAの合成
【化19】

【0143】
3mL無水THF中のヒドロキシル酸(160mg;0.57mmol)の溶液に、担持されたジイソプロピルエチルアミン(380mg;1.14mmol)を加える。ジホスゲン(0.57mmol;70μL)を0℃において加え、この反応媒質を周囲温度での攪拌下で1時間放置する。樹脂を濾過し、すすいだ後、THFを蒸発させる。この残渣をペンタン(2x5mL)で洗浄し、乾固させて、無色の油を得る(160mg;91%)。
【0144】
H NMR(CDCl−300 MHz):1.55(m,4H);2.10(m,2H);3.22(m,2H);4.80(m,1H);4.95(m,1H);5.10(s,2H);7.35(m,5H).
13C NMR(CDCl−75 MHz):21.3;29.1;30.3;40.3;66.7;79.6;128.1;128.2;128.6;136.6;148.3;156.6;167.1.
融点:57−58℃.
IR(cm−1;CCl):1896,1812,1718.
MS(DCI,CH):354;325;308;290;264;218;192;174;156;119(M=307.29).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式IのOCA、またはそれらの付加塩、それらの異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体もしくはそれらの混合物:
【化1】

{式中:
nは1〜10、好ましくは1〜6の整数であり;
Aは、O、NおよびSの中から選択されるヘテロ原子、または−COO基もしくは−NH基であり、
BはAのプロテクター基であり、
mは1または2であり、
Rは、
・水素、
・(CH)n−A−(B)m基(式中、n、m、AおよびBは前に定義されているとおりである)、
・直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜C12アルキル基、
・C〜C20アラルキル基、
・単純もしくは縮合C〜C14シクロアルキル基、
・単純もしくは縮合C〜C14ヘテロシクロアルキル基、
・単純もしくは縮合C〜C14芳香族基、および
・単純もしくは縮合C〜C14複素芳香族基
からなる群から選択される基である}。
【請求項2】
RがHを表す、請求項1に記載のOCA。
【請求項3】
Bがベンジルオキシカルボニル基を表し、AがNHを表す、請求項1または2に記載のOCA。
【請求項4】
Bがベンジル基を表し、AがOまたは−COO基を表す、請求項1または2に記載のOCA。
【請求項5】
【化2】

の中から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載のOCA。
【請求項6】
ポリ(α−ヒドロキシ酸)の製造のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の一般式(I)のOCAの使用。
【請求項7】
ポリ(α−ヒドロキシ酸)を製造する方法であって、次の連続的工程:
i)少なくとも1個の環内窒素原子を含有する5−または6−員芳香族ヘテロ環である塩基を含む触媒系の存在下において、有機溶媒、好ましくは無水溶媒中、−20〜200℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃の温度で、請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)OCAのモノマーを制御重合させる工程(ただし、該触媒系において該塩基を単独で用いるときには、該塩基はピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジメチルピリジンまたは2−メトキシピリジンではない)、そして
ii)所望により、工程i)で得られたポリマーを精製する工程、
iii)工程i)またはii)で得られたポリマーを回収する工程、
iv)所望により、Bとは異なるO−プロテクター基によって、工程iii)で得られたポリマーの末端OH基を保護する工程、
v)所望により、工程iv)で得られたポリマーのA基を脱保護してAH基を得る工程、
vi)所望により、工程v)で得られたポリマーの末端OH基を脱保護する工程
を含んでなる、方法。
【請求項8】
前記塩基が、式II:
【化3】

(式中、RおよびRは互いに独立して、直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜Cアルキル基を表し、またはRおよびRは一緒に5または6個の環員を有するヘテロシクロアルキルを形成し、該−NR基は2位もしくは4位に存在する)
のアミノ−ピリジンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記塩基が4−ジメチルアミノピリジンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程i)における前記触媒系がプロトン性試薬も含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロトン性試薬が、水、アルコール、第1級および第2級アミン、チオール、およびアルコール官能基、アミノ官能基またはチオール官能基を有するポリマーからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロトン性試薬が、水、C〜C12脂肪族アルコール、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)およびそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
工程i)において、前記有機溶媒が塩素化脂肪族溶媒、エーテル、環状エーテル、芳香族化合物、アミドまたはラクタムからなる群から選択される、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式(IV)のポリ(α−ヒドロキシ酸):
【化4】

(式中:
・nおよびRは請求項1〜5のいずれか一項に定義されているとおりであり、
・R1は−A−(B)m基または−A−H基を表し、ここで、A、Bおよびmは請求項1〜5のいずれか一項に定義されているとおりであり、
・R2はBとは異なるO−プロテクター基、または水素原子を表し;
・XはO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはO、またはポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)およびそれらのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを表し、該ポリマーは−X’基を末端とし、ここで、X’はO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはOであり;
・Zは直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜C12アルキル基を表し;
・rは1以上である)。
【請求項15】
rが1〜500、好ましくは1〜400、さらに好ましくは1〜50である、請求項14に記載のポリ(α−ヒドロキシ酸)。
【請求項16】
Xがヘテロ原子Oを表し、ZがC〜Cアルキル基を表す、請求項14または15に記載のポリ(α−ヒドロキシ酸)。
【請求項17】
−X−Zが式(V):
【化5】

(式中、oは1以上であり、R3およびR4はHまたはC〜Cアルキル基、好ましくはCH、C〜CシクロアルキルもしくはC〜Cアリールアルキル基を表し、X’はO、NおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはOを表し、Zは直鎖もしくは分枝鎖の、飽和もしくは不飽和C〜C12アルキル基である)
の基を表す、請求項14または15に記載のポリ(α−ヒドロキシ酸)。
【請求項18】
X’がヘテロ原子Oを表し、ZがC〜Cアルキル基を表す、請求項17に記載のポリ(α−ヒドロキシ酸)。
【請求項19】
有効成分の送達のための、請求項14〜18のいずれか一項に記載のポリ(α−ヒドロキシ酸)の使用。
【請求項20】
生体材料の製造のための、請求項14〜18のいずれか一項に記載のポリ(α−ヒドロキシ酸)の使用。

【公表番号】特表2009−532435(P2009−532435A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503578(P2009−503578)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053257
【国際公開番号】WO2007/113304
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(599109353)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(506138878)ユニベルシテ・ポール・サバティエール・トゥールーズ・トロワ (4)
【Fターム(参考)】