説明

塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物及びその樹脂組成物から成るフィルム

【課題】高い押出レートでの押出製膜が可能で熱安定性に優れた新規塩化ビニリデン系樹脂組成物を提供すること、且つこの塩化ビニリデン系樹脂組成物から製膜されるバリア性、透明性に優れた二軸延伸フィルム、及びその延伸フィルムを含む多層フィルムを提供する。
【解決手段】アクリル酸メチル成分が4重量%以上、6重量%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量が6万以上、8万以下である塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂を含有し、添加剤として(a)エポキシ化植物油、(b)2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、(c)dl−α−トコフェロール、(d)チオジ脂肪酸ジアルキルエステル類、及び(e)エチレンジアミン四酢酸塩類を所定の量含む共重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い押出レートでの押出製膜が可能な熱安定性に優れた新規塩化ビニリデン系樹脂組成物と、この塩化ビニリデン系樹脂組成物から製膜されるバリア性、透明性に優れた二軸延伸フィルム、及びその延伸フィルムを含む多層フィルムに関するものである。本発明のフィルムを芯材とした、ラミネートフィルムは高バリア性を生かして、例えば医薬品、医療用器具、レトルト食品、冷凍食品、調味料、あめ菓子、畜肉・水産加工品、味付煮付加工食品等の食品類の包装材として利用できる。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデンとアクリル酸メチルの共重合体樹脂から製膜される二軸延伸フィルムは気体遮断性、防湿性、透明性、耐薬品性、耐油性等に優れているため、その表面に紙、アルミ等の金属箔及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の各種合成樹脂フィルムがラミネート加工され、多種多様の食品、医薬包装等に使用されている。しかしながら、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体フィルムはその突出したバリア性を保つために、樹脂にごく少量の添加剤しか加えることができない。このため押出製膜時の熱安定性が非常に悪く、生産性を犠牲にせざるを得なかった。
【0003】
特開昭61−120719号公報(特許文献1)には、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体のアクリル酸メチル成分が3〜15重量%、重量平均分子量が7〜25万で分子量が2万以下の低分子共重合体の含有率が、ある関係で含まれる樹脂の成形加工方法が記されている。しかしながら、該文献で述べられているアクリル酸メチルと熱安定剤のエポキシ化亜麻仁油(ELO)、酸化マグネシウム(MgO)の組み合わせと含有量では、目標とするバリアレベルを維持しつつ、高い押出レートで十分な熱安定性を得ることは困難であり、特に押出レートは100kg/hr程度が限界である。押出レートを更に上げると、押出機内での樹脂のシェア発熱が大きくなり、熱劣化が激しくなるために工業生産はできない。また、平均分子量を一定にしたまま分子量2万以下のものを一定以上含有させるには別途に重合した樹脂のブレンドが必要な場合もあり、手間がかかるという問題もある。
【0004】
特開昭62−267332号公報(特許文献2)には、可塑剤含有量が1重量%以下の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂からなる二軸延伸フィルムが記されており、熱安定剤にはELOが単独で使用されている。可塑剤含有量がこの範囲であればフィルムのバリア性を保つことはできるが、溶融押出時の熱安定性が十分ではなく、製膜時の樹脂の押出レートは100kg/hr程度が限界である。
【0005】
また、効果的な熱安定剤の組み合わせとして例えば、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕とクエン酸またはクエン酸アルカリ金属塩との併用(特開平8−165394号公報(特許文献3)参照)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(特公昭57−10894号公報(特許文献4)参照)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕とピロリン酸ナトリウムとの併用(特公平6−18963号公報(特許文献5)参照)、あるいはビタミンEとチオプロピオン酸アルキルエステル及び無機リン酸塩との併用(特公昭61−26813号公報(特許文献6)参照)、ビタミンEとエチレンジアミン四酢酸塩との併用(特公平1−990号公報(特許文献7)参照)等が知られている。しかしながらこれらの樹脂組成の熱安定性は未だ良いものではなく、熱プレス後のシートでの色差b値等では効果がみられるものの300kg/hr程度の押出レートでは著しい熱劣化が起こる。
【0006】
また、粉末の熱安定剤を大量に用いると、製膜後のフィルムのバリア性能を保つことはできるが、フィルムの透明性が阻害される問題がある。一方、分子量を下げることで溶融押出時のシェア発熱を少なくし、かつ低温で押出できるようにすることにより熱劣化を抑制する方法もあるが、分子量がある程度以下となるとフィルムの機械強度が弱くなり、製膜時に延伸することができなくなる。
【特許文献1】特開昭61−120719号公報
【特許文献2】特開昭62−267332号公報
【特許文献3】特開平8−165394号公報
【特許文献4】特公昭57−10894号公報
【特許文献5】特公平6−18963号公報
【特許文献6】特公昭61−26813号公報
【特許文献7】特公平1−990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高押出レートでの押出製膜が可能な熱安定性に優れた新規塩化ビニリデン系樹脂組成物を提供すること、更には該塩化ビニリデン系樹脂組成物から製膜されるバリア性、透明性に優れた二軸延伸フィルム、及びその延伸フィルムを含む多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは塩化ビニリデン−アクリル酸メチルの共重合体樹脂組成物において鋭意研究を重ねた結果、特定の添加剤の組み合わせと樹脂の選定により、300kg/hr程度の押出レートでも熱安定性を有し、且つ製膜後のフィルムが良好なバリア性と透明性を有するフィルムが製造可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕アクリル酸メチル成分が4重量%以上、6重量%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量が6万以上、8万以下である、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂を含有し、(a)0.1重量%以上、1.0重量%以下のエポキシ化植物油、(b)0.005重量%以上、0.05重量%以下の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、(c)0.001重量%以上、0.05重量%以下のdl−α−トコフェロール、(d)0.005重量%以上、0.5重量%以下のチオジ脂肪酸ジアルキルエステル類、及び(e)0.001重量%以上、0.05重量%以下のエチレンジアミン四酢酸塩類、を添加剤として含む、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物;
〔2〕前記添加剤(a)のエポキシ化植物油が、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、及びそれらの混合物から選ばれる、上記〔1〕に記載の樹脂組成物;
〔3〕前記添加剤(d)のチオジ脂肪酸ジアルキルエステル類が、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、及びそれらの混合物から選ばれる、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物;
〔4〕前記添加剤(e)のエチレンジアミン四酢酸塩類が、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウムである、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物;
〔5〕(f)0.01重量%以上、0.1重量%以下の脂肪酸アミド、及び(g)0.001重量%以上、0.1重量%以下の無機滑剤、を添加剤としてさらに含む、上記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物;
〔6〕上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物を延伸して得られる塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体二軸延伸フィルムであって、酸素透過率が50ml・μm/m2・day・MPa以上、400ml・μm/m2・day・MPa以下であり、且つ、水蒸気透過率が5g・μm/m2・day以上、40g・μm/m2・day以下である、二軸延伸フィルム;
〔7〕上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物を延伸して得られる塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体二軸延伸フィルムであって、厚み25μmの該二軸延伸フィルムをレトルト処理した後に、HAZE値が10%未満である、二軸延伸フィルム;
〔8〕上記〔6〕又は〔7〕に記載の二軸延伸フィルムを少なくとも一層以上含む、多層フィルム;
〔9〕上記〔6〕又は〔7〕に記載の二軸延伸フィルムを少なくとも一層以上含む、多層シート、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い押出レートでの押出製膜が可能な熱安定性に優れた新規塩化ビニリデン系樹脂組成物、該塩化ビニリデン系樹脂組成物から製膜されるバリア性、透明性に優れた二軸延伸フィルム、及びその延伸フィルムを含む多層フィルム(シート)を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0012】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物は、塩化ビニリデンとアクリル酸メチルからなる共重合体樹脂を含有する。該共重合体樹脂中のアクリル酸メチル成分は4〜6重量%、塩化ビニリデン成分は96〜94重量%であり、好ましくはアクリル酸メチル成分が4.7重量%〜5.7重量%、塩化ビニリデン成分が95.3重量%〜94.3重量%である。アクリル酸メチル成分が4重量%以上であって、後述する重量平均分子量と添加剤も所定の要件を満たす場合、溶融押出時の熱安定性が良好となり、アクリル酸メチル成分が6重量%以下であって、後述する添加剤も所定の要件を満たす場合、製膜後のフィルムが良好なバリア性を持つものとなる。
【0013】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂のゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー法(GPC法)で求めたポリスチレンを標準とした重量平均分子量(Mw)は6万以上、8万以下であり、好ましくは6.7万以上、7.7万以下である。Mwが6万以上であれば製膜延伸に耐え得る強度を有し、Mwが8万以下であって、前述したアクリル酸メチル成分含有量と後述する添加剤も所定の要件を満たす場合、溶融押出時の熱安定性が良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0014】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物は、添加剤として(a)エポキシ化植物油を0.1重量%〜1.0重量%、(b)2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を0.005重量%〜0.05重量%、(c)dl−α−トコフェロール(ビタミンE)を0.001重量%〜0.05重量%、(d)チオジ脂肪酸ジアルキルエステル類を0.005重量%〜0.5重量%、(e)エチレンジアミン四酢酸塩類を0.001重量%〜0.05重量%含む。それぞれ好ましくは(a)を0.4重量%〜1.0重量%、(b)を0.01重量%〜0.04重量%、(c)を0.003重量%〜0.03重量%、(d)を0.01重量%〜0.3重量%、(e)を0.002重量%〜0.02重量%含む。尚、上記「重量%」は、樹脂組成物の全重量を基準にして求めたものである。
【0015】
(a)エポキシ化植物油としては、好ましくはエポキシ化亜麻仁油(ELO)、エポキシ化大豆油(ESO)、或いはそれらの混合物があげられる。
【0016】
(d)チオジ脂肪酸ジアルキルエステル類としては、好ましくはジラウリルチオジプロピオネート(DLTDP)、ジステアリルチオジプロピオネート(DSTDP)、或いはそれらの混合物が用いられる。
【0017】
(e)エチレンジアミン四酢酸塩類として好ましくは、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム(EDTA-2Na)のようなEDTAとアルカリ金属の塩やEDTAとアルカリ土類金属の塩、或いはEDTA亜鉛等やそれらの混合物が用いられる。
【0018】
(a)エポキシ化植物油が0.1重量%以上であって、前述のアクリル酸メチル成分含有量、重量平均分子量、及び後述の添加剤が所定の要件を満たす場合、樹脂の溶融押出時の熱安定性が良好となる。エポキシ化植物油が1.0重量%以下であって、前述のアクリル酸メチル成分含有量が所定の要件を満たす場合、製膜後のフィルムは良好なバリア性をもつものとなる。
【0019】
(b)2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)が0.005重量%以上であって、前述のアクリル酸メチル含有量と重量平均分子量、その他の添加剤が所定の要件を満たす場合、溶融押出時の熱安定性が良好となり、特に製膜後のフィルムの色差b値(黄変度)を小さくする効果がある。b値が大きいほど、黄変が大きく熱劣化が進行していることを表す。またBHTが0.05重量%以下であれば、製膜後のフィルムにレトルト処理を施しても粉末添加剤のBHTに起因するボイドの発生が少なく、透明性が良好となる。
【0020】
(c)dl−α−トコフェロール(ビタミンE)が0.001重量%以上であって、前述のアクリル酸メチル含有量、重量平均分子量、及び、その他の添加剤が所定の要件を満たす場合、溶融押出時の熱安定性が良好となり、特に製膜後のフィルムのb値を小さくする効果がある。またビタミンEが0.05重量%以下であれば、製膜後のフィルムはビタミンE自体の色である黄色味を帯びない。また、(b)BHTと(c)ビタミンEの相乗効果により、フィルムのb値を抑制する効果はさらに高まる。それぞれ単独で同等の効果を得るためには多量に使用する必要があり、BHTについてはレトルト白化の問題が、ビタミンEについてはフィルムの黄色化の問題があるが、両方を添加する場合には、上述の量でb値の抑制効果が十分に得られる。
【0021】
(d)チオジ脂肪酸ジアルキルエステル類が0.005重量%以上であって、前述のアクリル酸メチル含有量、重量平均分子量、及び、その他の添加剤が所定の要件を満たす場合、溶融押出時の熱安定性が良好となり、特に、溶融押出時にダイ部と溶融樹脂の滑り性がよくなるために汚れが抑えられ、ダイ掃除間隔を延ばすことができる。チオジ脂肪酸ジアルキルエステル類が0.5重量%以下であれば、製膜後のフィルムにレトルト処理を施しても粉末添加剤のチオジ脂肪酸ジアルキルエステル類に起因するボイドの発生が少なく、透明性が良好である。
【0022】
(e)エチレンジアミン四酢酸塩類が0.001重量%以上であれば、キレート効果により樹脂中の不純物金属を分子内に取り込むため、製膜後のフィルムは不純物金属由来のカーボン状の異物が減少する。通常の生産工程で大きな異物が混入した場合、異物を取り除くためにフィルムをスプライスする回数が増えフィルムの品位が低下するが、エチレンジアミン四酢酸塩類の効果でこれが抑制される。また、エチレンジアミン四酢酸塩類が0.05重量%以下であれば、製膜後のフィルムにレトルト処理を施しても粉末添加剤のエチレンジアミン四酢酸塩類に起因するボイドの発生が少なく、透明性が良好である。
【0023】
これら(a)〜(e)の添加剤の相乗効果により特に押出溶融時の熱安定性が飛躍的によくなることが見出され、300kg/hrの押出量でも安定製膜することが可能になった。この(a)〜(e)の五つの添加剤の内、一つでも欠けると300kg/hrの押出レートでは十分な熱安定効果を示さない。
【0024】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂は、滑剤として、脂肪酸アミドを0.01重量%〜0.1重量%、無機滑剤を0.001重量%〜0.1重量%含むことが望ましく、脂肪酸アミドが0.02重量%〜0.08重量%、無機滑剤が0.005〜0.05重量%であればなお望ましい。尚、上記「重量%」は、樹脂組成物の全重量を基準にして求めたものである。
【0025】
(f)脂肪酸アミドとしては例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド等が挙げられ、中でもパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドが好ましく使用される。これらは単独、或いは混合しての使用のどちらでも良い。脂肪酸アミドが0.01重量%以上であれば後述の無機滑剤との組み合わせで製膜後のフィルムの滑り性が良くラミネート加工性が良好となり、0.1重量%以下であればフィルム表面への過剰なブリードアウトが抑制され、後工程で他基材とラミネートした際の接着強度が良好となる。
【0026】
(g)無機滑剤としては固体微粉末が使用でき、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属メタリン酸塩、その他自然鉱物等が挙げられるが、好ましくはシリカ、酸化マグネシウム、タルク、炭酸カルシウム、雲母、霞石である。これらは単独、或いは混合しての使用のどちらでも良い。無機滑剤が0.001重量%以上であれば前述の脂肪酸アミドとの組み合わせで製膜後のフィルムの滑り性が良くラミネート加工性が良好であり、0.1重量%以下であれば製膜後のフィルムにレトルト処理を施しても粉末添加剤の無機物に起因するボイドの発生が少なく、透明性が良好である。
【0027】
本発明はまた、上述した塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物から製膜された二軸延伸フィルムも提供する。
【0028】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物から製膜された二軸延伸フィルムの酸素透過率は50ml・μm/m2・day・Mpa以上、400ml・μm/m2・day・Mpa以下であり、水蒸気透過率は5g・μm/m2・day以上40g・μm/m2・day以下である。
【0029】
フィルムの酸素透過率と水蒸気透過率は、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体中のアクリル酸メチル成分と、共重合体樹脂組成物中の添加剤(a)の含有量を変化させることによって調節することができる。アクリル酸メチルの含有量を共重合体の4重量%以上、6重量%以下とし、添加剤(a)の含有量を0.1重量%以上、1.0重量%以下とすることによって、酸素透過率が50ml・μm/m2・day・MPa、水蒸気透過率は5g・μm/m2・day以上となる。
【0030】
また、例えば、アクリル酸メチル成分が5.5重量%以上、6重量%以下の時は、添加剤(a)を0.8重量%以下で適量にすることで酸素透過率を400ml・μm/m2・day・MPa以下に、水蒸気透過率を40g・μm/m2・day以下とすることができ、良好なバリア性を得ることができる。
【0031】
また、本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物から製膜された二軸延伸フィルムの透明性としては、厚み25μmのフィルムのレトルト処理後のHAZE値が10%未満であることが望ましく、更に望ましくは7%未満である。HAZE値が10%未満であればレトルト後の透明性も良好であり、透明フィルム包装を要求するアイテムに適用することができる。
【0032】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物から製膜された二軸延伸フィルムの厚みは10μm〜100μmであることが望ましく、更に望ましくは15μm〜50μmである。10μm以上の厚みがあれば全厚みとして十分なバリア性能があり100μm以下であれば押出製膜時の生産性が良い。
【0033】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物から製膜された二軸延伸フィルムは、その表面が、紙、アルミ等の金属箔やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の各種合成樹脂フィルムとラミネート加工される。中でもCPP、LLDPE、6-Ny、66-Ny、PET、PVC等が好ましく用いられる。尚、ラミネート方法としては好ましくはドライラミネート法、ウエットラミネート法、押出ラミネート法等が用いられる。
【0034】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂の製造方法は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等が用いられるが、中でも懸濁重合法が好ましい。懸濁重合法としては、懸濁剤を溶かした水の中にモノマーを添加する直接懸濁法、あるいは特開昭62-280207号公報に記載のようにモノマーに懸濁剤を溶かした水を添加し、モノマー相が連続相/水が不連続相である分散状態を経由して、モノマーが不連続相/水が連続相である分散体にする懸濁法等が使用される。
【0035】
本発明における塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂を懸濁重合にて製造する際に使用される油溶性開始剤としては、有機過酸化物、例えばラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパ−オキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられ、アゾビス化合物、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等が挙げられる。
【0036】
懸濁剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体やポリビニルアルコール又はポリ酢酸ビニルの部分ケン化物等を使用することができる。
【0037】
また、本発明における塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂を製造する重合温度は、一般に20℃〜100℃、好ましくは40℃〜90℃が適当である。
【0038】
上記重合が終了後、必要に応じて濾過、水洗、乾燥を行い、粉末状、粒状の樹脂を得る。
【0039】
こうして得られた樹脂を二軸延伸フィルム製造装置で押出製膜することにより、本発明に係る塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体二軸延伸フィルムを得ることができる。図1は、二軸延伸フィルム製造装置の概念図の一例である。図1において、押出機101のホッパー部102から供給された塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物はスクリュー103で推進、加熱混練されて溶融し、押出機の先端に取り付けられた環状ダイ104のスリット部から押出されて筒状パリソン105となる。パリソンは冷却槽106の冷水で急冷され、ピンチロールA,A’に導かれて筒状にして温水槽107で余熱され、ピンチロール群B,B’、C,C’との間で筒状フィルム内に密封入されたエアーの体積及びピンチロールB,B’、C,C’間の速度比によって、筒の周囲方向及び縦方向に延伸し配向される。延伸された筒状フィルムは平坦2枚重ねに折り畳まれ、巻き取りロール108によって巻き取られた後に一枚ずつのフィルムにはぎとられる。
【0040】
以下の実施例、比較例の押出評価は図1の装置を使用して実施し、得られたフィルムについて物性評価を行った。この時の押出機の形状はバレルの直径をD、バレルの長さをLとしてD=120mm、L/D=20の一軸押出機を使用し、特に記載のない場合は300kg/hrの押出レートにて行った。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明する。実施例、比較例中の重量平均分子量、押出機洗浄間隔、ダイ分掃間隔、カーボン異物点数、フィルム色調(b値)、酸素透過率、水蒸気透過率、レトルト後のHAZE、滑り性、ラミネート強度は以下の方法によって求めた。
【0042】
1)重量平均分子量
下記の機器及び条件でポリスチレンを標準とした、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求めた。
GPC:島津製作所製 LC-10AD
カラム:SHOWA DENKO社製 shodex Asahipak GS-710 7E とGS-310 7Eの併用
測定温度:40℃
測定濃度:ヘキサメチルリン酸トリアミドの溶媒に0.3重量%の試料を溶解させた
【0043】
2)押出機洗浄間隔
押出機内のバレルやスクリュー部での樹脂の滞留に対する樹脂の熱安定性を評価するもので、細かな熱劣化異物や変色物が25μm厚のフィルム2000m2において1mm角以上の異物が100個以上流出するまでの連続押出の時間の長さで評価する。多量に異物が流出すると、製膜を一旦中断し、樹脂をポリエチレン等に置換して押出機内の熱劣化物を掻きだす必要があるため、生産効率の低下につながる。
評価記号 評価尺度
◎ 48時間以上
○ 24時間以上、48時間未満
△ 6時間以上、24時間未満
× 6時間未満
【0044】
3)ダイ分掃間隔
ダイ内での樹脂の滞留に対する樹脂の熱安定性を評価するものである。ダイ内部の壁面と溶融樹脂の滑り性が悪いと、滞留した樹脂が熱劣化してダイ内部に付着する。程度がひどくなるとフィルムの厚み斑やすじ等が発生する。連続的にすじ状の汚れが発生したり、フィルム厚薄斑が10%以上になると、押出機を停止させ、ダイを分解して掃除することが必要となるために、生産効率が著しく低下する。このような状態になるまでの連続押出の時間の長さで評価する。
評価記号 評価尺度
◎ 1000時間以上
○ 500時間以上、1000時間未満
△ 100時間以上、500時間未満
× 100時間未満
【0045】
4)カーボン異物点数
押出機内で樹脂が滞留して発生したカーボン(炭化物)が突発的に剥離して流出するとカーボン異物となる。フィルム上に大きなカーボン異物(黒色)が流出すると製品の品質問題上、一旦フィルムを切って異物を取り除き、フィルムをスプライスする必要があり、問題となる。25μm厚のフィルム2000m2において1mm角以上のカーボン異物をカウントして評価する。
評価記号 評価尺度
◎ 0個
○ 1個以上、5個未満
△ 5個以上、10個未満
× 10個以上
【0046】
5)フィルム色調(b値)
樹脂の熱劣化の指標を表す。b値が大きいほどフィルムの黄変度合いが大きいことを表し、樹脂の熱劣化が激しい。色彩色差計(日本電色工業社製、Z-300A)の反射モード、23℃、50%RHの条件で測定した。サンプルは25μmのフィルムを6枚重ねて、150μmの厚みで測定した。
評価記号 評価尺度
◎ 0以上2.0未満
○ 2.0以上、3.0未満
△ 3.0以上、4.0未満
× 4.0以上
【0047】
6)酸素透過率(OTR)
ASTM D-3985準拠。測定はMocon OX-TRAN 2/20を使用して23℃、65%RHの条件の下、厚み25μmのフィルムで実施した。
評価記号 評価尺度
◎ 50ml・μm/m2・day・MPa≦OTR≦400ml・μm/m2・day・MPa
△ 400ml・μm/m2・day・MPa<OTR≦1000ml・μm/m2・day・MPa
【0048】
7)水蒸気透過率(WVTR)
ASTM F-1249準拠。測定はMocon PERMATRAN-W200を使用して38℃、90%RHの条件の下、厚み25μmのフィルムで実施した。
評価記号 評価尺度
◎ 5.0g・μm/m2・day≦WVTR≦40g・μm/m2・day
△ 40g・μm/m2・day<WVTR≦100g・μm/m2・day
【0049】
8)レトルト処理後のHAZE
ASTM D-1003準拠。測定前に下記の条件で加熱処理した厚み25μmのフィルムのHAZEをHAZE測定機(日本電色工業社製Z-300A)にて23℃、50%RHの条件で測定した。
レトルト条件:フィルムを金属枠に固定し、熱収縮しない状態で120℃の加圧熱水中に20分浸漬した後、室温にて1週間乾燥する。
評価記号 評価尺度
◎ 7%未満
○ 7%以上、10%未満
△ 10%以上、15%未満
× 15%以上
【0050】
9)滑り性
ASTM D-1894準拠。
測定は23℃、50%RHの条件で、25μm厚フィルム同士の動摩擦係数(μd)を測定した。
評価記号 評価尺度
◎ 0.4未満
○ 0.4以上、0.6未満
△ 0.6以上、0.8未満
× 0.8以上
【0051】
10)ラミネート強度
ドライラミネーターにより、本フィルム(25μm厚)を芯材としてO-Ny(二軸延伸ナイロン)フィルム(15μm厚:東洋紡製、ハーデンN1100タイプ)とLLDPEフィルム(60μm厚:東洋紡製、リックスL6102タイプ)をラミネート加工した。得られたラミネートフィルムを40℃で2日間、その後、常温で14日間エージングした後、本フィルムとO-Nyフィルム間のラミネート強度を測定した。
(ラミネーター条件他)
速度;100m/min
フィルムテンション;5MPa
ニップロール;60℃
乾燥;70℃×20秒
塗工方式;グラビアコート
接着剤;三井武田ケミカル(株)製 A515とA50を10:1の割合で混合したもの。溶剤として接着剤量の3倍重量の酢酸エチルに溶かしたものを使用した。
塗布量:4g/m2(dry)
評価記号 評価尺度(15mm幅での測定値)
◎ 500g以上
○ 400g以上500g未満
△ 200g以上400g未満
× 200g未満
【0052】
<実施例1>
内面がグラスライニングされた撹拌機付き反応機に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが0.2部溶解した脱イオン水120部を投入し、撹拌開始後、系内を30℃にて窒素置換して塩化ビニリデン単量体(VDC)95部、アクリル酸メチル単量体(MA)5部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.0部の混合物を投入し、反応機を80℃に昇温して重合を開始する。8時間後に降温したスラリーを取り出す。得られたスラリーを遠心式の脱水機にて水を分離し、ついで80℃の熱風乾燥機にて24時間乾燥して粉末状の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂を得た。
この共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.0万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.3/4.7であった。更に、全重量を基準に(a)ESOを0.5重量%、(b)BHTを0.025重量%、(c)ビタミンEを0.007重量%、(d)DLTDPを0.02重量%、(e)EDTA-2Naを0.004重量%、(f)エルカ酸アミドを0.05重量%、(g)シリカを0.015重量%、配合して樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を図1のインフレーション法により300kg/hrの押出レートで押出製膜し、25μm厚のフィルムを得た。その後、該フィルムを芯材として両側にO-Nyフィルム(15μm厚)とLLDPEフィルム(60μm厚)のラミネート加工を行った。
【0053】
<実施例2>
重合条件において、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを0.8部、重合温度を75℃、重合時間を10時間、添加剤について(b)BHTを0.04重量%、(c)ビタミンEを0.014重量%、(d)DLTDPを0.04重量%、(e)EDTA-2Naを0.01重量%とする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.9万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.1/4.9であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0054】
<実施例3>
重合条件において、塩化ビニリデン単量体(VDC)を95.8部、アクリル酸メチル単量体(MA)を4.2部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.9部、重合温度を75℃、重合時間を10時間、添加剤について(a)ESOを0.12重量%、(b)BHTを0.03重量%、(c)ビタミンEを0.01重量%、(d)DLTDPを0.08重量%、(e)EDTA-2Naを0.008重量%とする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.9万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.9/4.1であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0055】
<実施例4>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94部、アクリル酸メチル単量体(MA)を6部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.7部、重合温度を75℃、重合時間を12時間、添加剤について(a)ESOを0.12重量%、(b)BHTを0.02重量%、(c)ビタミンEを0.02重量%、(d)DLTDPを0.1重量%、(e)EDTA-2Naを0.006重量%とする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.9万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.1/5.9であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0056】
<実施例5>
重合条件においてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを2.0部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(b)BHTを0.006重量%、(c)ビタミンEを0.002重量%、(d)DLTDPを0.006重量%、(e)EDTA-2Naを0.002重量%とする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.3/4.7であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0057】
<実施例6>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を95.9部、アクリル酸メチル単量体(MA)を4.1部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを0.9部、重合温度を75℃、重合時間を10時間、添加剤について(a)ESOを0.9重量%、(b)BHTを0.01重量%、(c)ビタミンEを0.004重量%、(d)DLTDPを0.2重量%、(e)EDTA-2Naを0.02重量%とする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.9万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.9/4.1であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0058】
<実施例7>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.4部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.6部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを0.75部、重合温度を75℃、重合時間を12時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(b)BHTを0.025重量%、(c)ビタミンEを0.007重量%、(d)DLTDPを0.02重量%、(e)EDTA-2Naを0.04重量%にする以外は実施例1と同様である。
このときの共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.9万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0059】
<実施例8>
添加剤について(f)エルカ酸アミドを0.005重量%に(g)シリカを0.09重量%に変更した以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.0万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.2/4.8であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0060】
<実施例9>
添加剤について(f)エルカ酸アミドを0.14重量%に(g)シリカを0.002重量%に変更した以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.0万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.2/4.8であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0061】
<実施例10>
添加剤について(f)エルカ酸アミドを0.09重量%に(g)シリカを無添加に変更した以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.0万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.2/4.8であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0062】
<実施例11>
添加剤について(f)エルカ酸アミドを0.011重量%に(g)シリカを0.11重量%に変更した以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は7.0万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.2/4.8であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0063】
<比較例1>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を96.4部、アクリル酸メチル単量体(MA)を3.6部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを2.2部、重合温度を80℃、重合時間を8時間、添加剤について(a)ESOを0.9重量%、(b)BHTを0.04重量%、(c)ビタミンEを0.04重量%、(d)DLTDPを0.3重量%、(e)EDTA-2Naを0.04重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=96.5/3.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0064】
<比較例2>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を93.4部、アクリル酸メチル単量体(MA)を6.6部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.8部、重合温度を80℃、重合時間を10時間、添加剤について(a)ESOを0.12重量%、(f)エルカ酸アミドを0.07重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=93.5/6.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0065】
<比較例3>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.5部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.5部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.75部、重合温度を75℃、重合時間を12時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(b)BHTを0.04重量%、(c)ビタミンEを0.04重量%、(d)DLTDPを0.3重量%、(e)EDTA-2Naを0.04重量%、(f)エルカ酸アミドを0.1重量%、(g)シリカを0.002重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は8.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0066】
<比較例4>
重合条件においてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを2.2部、重合温度を80℃、重合時間を7時間にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は5.9万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.3/4.7であった。この樹脂組成物を図1のインフレーション法により押出製膜しようと試みたが、フィルム強度が弱すぎるために延伸ができなかった。
【0067】
<比較例5>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を93.8部、アクリル酸メチル単量体(MA)を6.2部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.8部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.08重量%、BHT(b)を0.04重量%、(c)ビタミンEを0.04重量%、(d)DLTDPを0.3重量%、(e)EDTA-2Naを0.04重量%、(f)エルカ酸アミドを0.2重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.1/5.9であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0068】
<比較例6>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を95.5部、アクリル酸メチル単量体(MA)を4.5部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを2.2部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを1.1重量%、(f)エルカ酸アミドを0.01重量%、(g)シリカを無添加にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=95.9/4.1であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0069】
<比較例7>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、追添添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(b)BHTを無添加にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0070】
<比較例8>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(b)BHTを0.1重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0071】
<比較例9>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(c)ビタミンEを無添加にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0072】
<比較例10>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(c)ビタミンEを0.1重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂組成物を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。しかしながら押出製膜により得られたフィルムはビタミンEに起因する黄色味を帯びており、製品として使用できるレベルではなかった。
【0073】
<比較例11>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(d)DLTDPを無添加にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0074】
<比較例12>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(d)DLTDPを0.7重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0075】
<比較例13>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(e)EDTA-2Naを無添加にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0076】
<比較例14>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を94.2部、アクリル酸メチル単量体(MA)を5.8部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを1.7部、重合温度を80℃、重合時間を7時間、添加剤について(a)ESOを0.4重量%、(e)EDTA-2Naを0.1重量%にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は6.1万、最終共重合体組成はVDC/MA=94.5/5.5であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0077】
<比較例15>
重合条件において塩化ビニリデン単量体(VDC)を97部、アクリル酸メチル単量体(MA)を3部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを0.6部、重合温度を70℃、重合時間を15時間、添加剤について(a)ESOを0.9重量%、(b)BHTを0.04重量%、(c)ビタミンEを0.04重量%、(d)DLTDPを0.3重量%、(e)EDTA-2Na を0.04重量%、にする以外は実施例1と同様である。
この時の共重合体の収率は99%で重量平均分子量は9.8万、最終共重合体組成はVDC/MA=97/3であった。この樹脂を実施例1と同様に図1のインフレーション法で製膜した後にラミネート加工を行った。
【0078】
【表1】

以上より、本発明に係る塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物は熱安定性に優れ、高い押出レートでの押出製膜が可能であり、かかる樹脂組成物を延伸して得られる二軸延伸フィルムはバリア性、透明性、ラミネート適性にも優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂は押出製膜時の熱安定性が優れており、高い生産性を有する。また、該樹脂から成る延伸フィルムはラミネート用のバリア素材として医薬品や食品用等の包装材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体フィルムを押出製膜する装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
101; 押出機
102; ホッパー部
103; スクリュー
104; 環状ダイ
105; 筒状パリソン
106; 冷却槽
107; 温水槽
108; 巻き取りロール
A,A’、B,B’、C,C’; ピンチロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸メチル成分が4重量%以上、6重量%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による重量平均分子量が6万以上、8万以下である、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂を含有し、
(a)0.1重量%以上、1.0重量%以下のエポキシ化植物油、
(b)0.005重量%以上、0.05重量%以下の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、
(c)0.001重量%以上、0.05重量%以下のdl−α−トコフェロール、
(d)0.005重量%以上、0.5重量%以下のチオジ脂肪酸ジアルキルエステル類、及び
(e)0.001重量%以上、0.05重量%以下のエチレンジアミン四酢酸塩類、を添加剤として含む、塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体樹脂組成物。
【請求項2】
前記添加剤(a)のエポキシ化植物油が、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、及びそれらの混合物から選ばれる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記添加剤(d)のチオジ脂肪酸ジアルキルエステル類が、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、及びそれらの混合物から選ばれる、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記添加剤(e)のエチレンジアミン四酢酸塩類が、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウムである、請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(f)0.01重量%以上、0.1重量%以下の脂肪酸アミド、及び
(g)0.001重量%以上、0.1重量%以下の無機滑剤、を添加剤としてさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を延伸して得られる塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体二軸延伸フィルムであって、
酸素透過率が50ml・μm/m2・day・MPa以上、400ml・μm/m2・day・MPa以下であり、且つ、
水蒸気透過率が5g・μm/m2・day以上、40g・μm/m2・day以下である、二軸延伸フィルム。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を延伸して得られる塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合体二軸延伸フィルムであって、
厚み25μmの該二軸延伸フィルムをレトルト処理した後に、HAZE値が10%未満である、二軸延伸フィルム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の二軸延伸フィルムを少なくとも一層以上含む、多層フィルム。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の二軸延伸フィルムを少なくとも一層以上含む、多層シート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−74908(P2008−74908A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253337(P2006−253337)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】