説明

塩化ビニル樹脂組成物、及び、塩化ビニル樹脂シート

【課題】燃焼時の二酸化炭素発生量が少ないながらも、良好な成形加工性とを備え、高い強度を有するシートが得られる塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】炭酸カルシウムを10重量%以上25重量%以下、水酸化アルミニウムを10重量%以上25重量%以下、及び、ハイドロタルサイトを0.1重量%以上、それぞれ含有し、かつ、前記炭酸カルシウムと前記水酸化アルミニウムとの含有重量比が1:2〜2:1の範囲である塩化ビニル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却処理を行った場合でも二酸化炭素の排出量の少ない塩化ビニル樹脂組成物、及び、そのような塩化ビニル樹脂組成物からなるシート類に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂製のシート(フィルムを含む)は広告・標識幕、建築工事用シート、レジャーシート、文具やファンシー商品などに広く使用されているが、これらは使用後、多くの場合、焼却処理されている。
【0003】
しかしながら、現在、温室効果ガスによる大気・海水温度の上昇が問題となっており、さらに温室効果ガスの中でも、その原因の過半数を占めると云われる二酸化炭素の発生を抑えることが地球規模での課題となっている。
【0004】
ここで、塩化ビニル樹脂は、もともとその重量のうち、約6割が塩素から構成されているために、焼却時の二酸化炭素発生量はポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂よりも低い。また、化石原料である石油への依存率も低い、環境負荷の少ない樹脂である。
【0005】
さらに、これら塩化ビニル樹脂に無機成分を添加することにより、燃焼時の二酸化炭素発生量を抑えることができるが、そのような成分としては一般に炭酸カルシウムが使用されていた(特許文献1)。
【0006】
このような炭酸カルシウムは、主として石灰石などの炭酸カルシウムを主成分とする天然原料であるが、これは太古のサンゴやウミユリなどの遺骸が堆積してできたものと考えられており、このような炭酸カルシウムを含有する樹脂を焼却すると太古に化石化した二酸化炭素が再び大気に放出されることになる。一般に1気圧、898℃で次の反応により炭酸カルシウムから二酸化炭素が発生すると云われている。
【0007】
[化1]
CaCO → CaO+CO
【0008】
従って、炭酸カルシウム以外の、燃焼時に二酸化炭素を発生することのない無機成分を多量に配合させることが、二酸化炭素の減少に有効であると考えられるが、従来行われていたゼオライトなどの無機成分を多量に配合する(特許文献1)と成形加工性が悪化してしまう、また、成形後のシート(フィルム)の機械的強度が低下する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】平7−188487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、燃焼時の二酸化炭素発生量が少ないながらも、良好な成形加工性を備え、高い強度を有するシートが得られる塩化ビニル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、炭酸カルシウムを10重量%以上25重量%以下、水酸化アルミニウムを10重量%以上25重量%以下、及び、ハイドロタルサイトを0.1重量%以上、それぞれ含有し、かつ、前記炭酸カルシウムと前記水酸化アルミニウムとの含有重量比が1:2〜2:1の範囲であることを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物である。
【0012】
また、本発明の塩化ビニル樹脂シートは、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル樹脂シートである。
【0013】
また、本発明の塩化ビニル樹脂シートは、請求項3に記載の通り、請求項2に記載の塩化ビニル樹脂シートにおいて、内部に補強繊維が配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物によれば、燃焼時の二酸化炭素発生量が少ないながらも、良好な成形加工性と高い強度を有する塩化ビニルシートを作製することができる。
【0015】
また、本発明の塩化ビニル樹脂シートは、燃焼時の二酸化炭素発生量が少ない上に、歩留まりが良好であるために安価となり、かつ、高い強度を得ることができる。
【0016】
請求項3に記載の塩化ビニル樹脂シートは、上記効果に加え、耐久性が特に求められるターポリンとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は上述の通り、炭酸カルシウムを10重量%以上25重量%以下、水酸化アルミニウムを10重量%以上25重量%以下、及び、ハイドロタルサイトを0.1重量%以上、それぞれ含有し、かつ、前記炭酸カルシウムと前記水酸化アルミニウムとの含有重量比が1:2〜2:1の範囲であることを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物である。
【0018】
ここで炭酸カルシウムの配合量が10重量%未満であると二酸化炭素発生量が多くなり、また25重量%超であると成形加工性が悪化し、成形後のシートの強度が低下する。
【0019】
また、水酸化アルミニウムの配合量が10重量%未満であると二酸化炭素発生量が多くなり、また25重量%超であると成形加工性が悪化し、成形後のシートの強度が低下する。
【0020】
さらに、炭酸カルシウムと水酸化アルミニウムとの含有重量比が1:2〜2:1(境界値を含む)となるように配合する。この範囲外であると、成形加工性が悪化し、成形後のシートの強度が低下する。
【0021】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物にはハイドロタルサイトが0.1重量%以上となるように配合される。このハイドロタルサイトの添加によりシートとするときのカレンダー適性が向上する。ハイドロタルサイトの添加量が0.1重量%未満であると添加の効果が充分に得られない。なお、ハイドロタルサイトの添加によりカレンダー適性が向上するが、0.5重量%以上添加しても添加量の上昇に見合うカレンダー適性の向上がなくなるので、添加の上限の目安としては0.5重量%である。
【0022】
本発明で用いるベース樹脂である塩化ビニル樹脂としては一般的なシート形成用の塩化ビニル樹脂組成物を用いることができる。
【0023】
そのようなものとしてはベース樹脂であるポリ塩化ビニルに、上記炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及び、ハイドロタルサイトに加えて、フタル酸ジオクチル(以下「DOP」とも云う)、アジピン酸ジオクチル(以下「DOA」とも云う)、エポキシ化大豆油やリン酸トリクレシル(TCP)などの可塑剤、バリウム/亜鉛系安定剤(BaZn系安定剤)、カルシウム/亜鉛系安定剤、あるいは、錫系安定剤などの安定剤、紫外線吸収剤、顔料などの着色剤、さらには酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、その他の難燃剤などを求められる性質に従って適宜添加し、一般的な混合・混練手段、例えばヘンシュルミキサー、バンバリミキサー等で混合、混練して本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物を得て、その後、必要に応じて押出成形によってペレット化しても良い。
【0024】
シート化(フィルム化)加工に当たっては一般的なシート化方法、例えば、カレンダー加工、押出成形、インフレーション成形法などを用いることができる。
【0025】
また、ターポリンなどの内部に補強繊維が配されている塩化ビニル樹脂シートは、上記樹脂組成物によって例えばカレンダー成形を行ってシートを作製する際にカレンダーロールから供給されるシートが冷却する前にその片面に織物や編み物、あるいは不織布などの繊維組織体を重ね合わせて一体化した後、冷却した後に、今度は繊維組織体側の面に、カレンダー成形におけるカレンダーロールから供給されるシートをその冷却前に重ね合わせて一体成形することにより容易に製造することができる。
【0026】
ここで上記繊維組織体を構成する繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、PVA(ポリビニルアルコール)繊維、ガラス繊維などが挙げられ、ターポリン用途としてはポリエステル繊維からなる織物であると、柔軟性、及び、機械的強度に優れるために好ましい。
【実施例】
【0027】
以下に本発明の塩化ビニル樹脂組成物、及び、塩化ビニル樹脂シートの実施例について具体的に説明する。
【0028】
原料を表1及び表2で示す配合比(重量部。ただし表中の括弧内の数字は重量%である)で、ヘンシェルミキサーで混合後、バンバリミキサーで混練し、さらに混練ロールで混練した後、逆L型カレンダー成形機(カレンダー温度:185℃)により、厚さ:0.1mm、幅1000mmに成形し、11種類のフィルムを得た。
【0029】
これらフィルムについて、CO(炭酸ガス)排出量、混練性、カレンダー適性、及び、強度をそれぞれ評価した。
【0030】
CO排出量については、JIS K 2541−3(燃焼管式空気法)に従い測定したとき、1500mg/mm未満であるときを充分であるとして「◎」、1500mg/mm以上1800mg/mm未満であるときを充分であるとして「○」、1800mg/mm以上2000mg/mm未満であるときを不充分であるとして「△」、そして2000mg/mm超であるときを不充分であるとして「×」としてそれぞれ評価した。
【0031】
また、混練性はカレンダー加工における重要なファクターであり、混練性が充分でないとカレンダー加工が困難となる。ここで、混練性は次のように評価した。すなわち、混練ロールでの混練後にロールから樹脂組成物がスムーズに剥がれ、常に人の補助なしにカレンダーロールへ供給がなされたときを充分であるとして「◎」、時々人の補助が必要であるときを充分であるとして「○」、常に人の補助が必要であるときを不充分であるとして「△」、そして、混練ロールからの樹脂組成物が剥がれないときを不充分であるとして「×」としてそれぞれ評価した。
【0032】
また、カレンダー適性はカレンダー加工における重要なファクターであり、カレンダー適性が充分でないとカレンダー加工が困難となる。ここでカレンダー適性は次のように評価した。すなわち、カレンダー加工時にカレンダーロールからシートがスムーズに剥がれるときを充分であるとして「◎」、時々、カレンダーロールにシートが巻き付きかけ(いわゆる「フィルムがとられる」)、人の補助が必要となるときを充分であるとして「○」、常に人の補助が必要であるときを不充分であるとして「△」、そしてカレンダーロールからシートが剥がれない場合を不充分であるとして「×」としてそれぞれ評価した。
【0033】
強度はJIS K 6732に従い、引張強度を測定したときに、10N/mm以上であるときを充分であるとして「○」、8N/mm以上10N/mm未満であるときを不充分であるとして「△」、8N/mm未満であるときを不充分であるとして「×」としてそれぞれ評価した。
【0034】
上記結果から総合評価を行った。すなわち、一つでも「△」あるいは「×」がある場合を不充分であるとして「×」、一つも「△」あるいは「×」がない場合を充分であるとして「○」として評価した。
これら評価結果を併せて表1及び表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1及び表2により、本発明に係る塩化ビニル樹脂組成物によれば、燃焼時の二酸化炭素発生量が少ないながらも、良好な成形加工性を備え、高い強度を有するシートが得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムを10重量%以上25重量%以下、水酸化アルミニウムを10重量%以上25重量%以下、及び、ハイドロタルサイトを0.1重量%以上、それぞれ含有し、かつ、前記炭酸カルシウムと前記水酸化アルミニウムとの含有重量比が1:2〜2:1の範囲であることを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物からなることを特徴とする塩化ビニル樹脂シート。
【請求項3】
内部に補強繊維が配されていることを特徴とする請求項2に記載の塩化ビニル樹脂シート。

【公開番号】特開2010−189501(P2010−189501A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33652(P2009−33652)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(505244394)日本ウェーブロック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】