説明

塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた電線・ケーブル

【課題】耐候性良好な塩化ビニル樹脂組成物と、耐候性良好な電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、粒子形状が扁平で、平均粒子径が0.2〜0.6μm、45μm以上の粗粒が0.1体積%以下の合成ケイ酸アルミニウムを、0.1から10重量部添加したもので、好ましくは、上記合成ケイ酸アルミニウムを、高級脂肪酸の金属塩で表面処理する。また、上記塩化ビニル樹脂組成物を導体1上に絶縁体2を被覆したビニル絶縁電線3に適用して耐候性良好な電線を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐候性良好な塩化ビニル樹脂(以下、「PVC」という)組成物および、このPVC組成物により被覆を施した電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電線・ケーブルの被覆に用いられるPVC組成物は、電気特性と、引張り強さ、伸び、柔軟性などの物理特性が要求され、特に屋外で用いられる物については耐候性を要求されるため、各種充填剤や添加剤が配合されている。
【0003】
特に耐候性を保障するためにPVC組成物中に、黒色被覆の場合はカーボンブラックが配合され、他の色の被覆では、着色顔料の他にViosorb520等の商品名で市販されている高価な紫外線吸収剤が添加されている。
【0004】
また、要求される電線・ケーブルの電気特性を具備させるために、天然カオリナイトを焼成−粉砕したクレーが配合される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記説明から分かるように従来の電線・ケーブル被覆用のPVC組成物は、黒色の場合は電気特性を向上させるために天然のクレーを所要量配合し、着色のために配合されるカーボンブラックにより紫外線吸収効果を共に得ていたが、黒色以外の配合では、上述の高価な紫外線吸収剤を配合する必要があった。
【0006】
上記の状況の中にあって本願発明者は、高価な紫外線吸収剤を使用しないで紫外線に強い(耐候性良好な)電線・ケーブルの被覆材料を開発すべく努力を重ねてきた結果、耐候性良好な電線・ケーブル用PVC組成物の配合を見出した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づき高価な紫外線吸収剤を使用せず、これによって配合作業を軽減し、耐候性良好なPVC組成物と、耐候性良好な電線・ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためにこの発明は、PVC組成物において、PVC100重量部に対し、粒子形状が扁平で、平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ粒子径が45μm以上の粗粒が0.1体積%以下の合成ケイ酸アルミニウムを、0.1から10重量部添加したもの(請求項1)で、好ましくは、上記合成ケイ酸アルミニウムを、高級脂肪酸の金属塩で表面処理する(請求項2)。また、上記PVC組成物を電線・ケーブルの被覆に適用して耐候性良好な電線・ケーブルを得る(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
上記の如く構成するこの発明によれば、扁平で平均粒子径が0.2〜0.6μmで、45μm以上の粗粒が0.1体積%以下の合成ケイ酸アルミニウム、好ましくは、該合成ケイ酸アルミニウムを高級脂肪酸の金属塩で表面処理したものを、0.1から10重量部配合することにより、電気特性を保障すると共に良好な耐候性を有するPVC組成物と、電線・ケーブルを提供できるようになった。
【0010】
上記合成ケイ酸アルミニウムの平均粒子径は、小さいほど良好な物理特性、耐候性が得られるが、平均粒子径を小さくする程、高価になり経済性の観点から好ましくなく、上記範囲超えるときは物理特性と耐候性が低下する。また、上記合成ケイ酸アルミニウムの中に粗粒が存在すると物理特性、耐候性および電気特性を低下させる原因になるので上記のように規制した。
【0011】
上記合成クレーの添加量が上記範囲未満のときは、電気特性および耐候性が目標値に至らず、上記範囲を超えるときは物理特性が低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次にこの発明の実施の形態を表1、表2、表3および図面を参照しながら説明する。表1は、本発明の実施例および比較例で採用される配合材料の名称、化学名または構成、商品名およびメーカー名を表したものである。
【実施例】
【0013】
表2は実施例、表3は比較例を表し、それぞれ上欄に配合組成、下欄に評価項目、即ち各種試験結果を記し、その右端に目標値を記している。
【0014】
表2、表3に従って配合材料を配合し、170℃±2degに調整した試験用オープンロールで10分間混練りし、試験用プレスの下側圧盤にフェロタイプ板を敷き、その上に厚さ1mm、150mm角の型枠を載せ、この型枠に上記混練りPVC組成物を入れ、その上にフェロタイプ板をあてて上下圧盤を170℃±1degに制御し、190kgf/cm2の圧力でプレスして厚さ1mmのシートとし、このシートから試験片を調整した。
【0015】
なお、引張強さ・伸び試験、加熱後残率試験、油浸後残率試験および体積抵抗率は、JIS K 6723に準拠して行い、引張強さ・伸び試験は常温、加熱後残率試験は100℃×120hr加熱後、油浸後残率試験は70℃×4hr油浸後、体積抵抗率は30℃で行なった。
【0016】
耐候性試験は、スガ試験機株式会社製のサンシャインスーパーロングライフウェザーメーターで、試験槽内の温度を44℃に保ち暗黒時間60分(内降雨時間18分)+紫外線ランプ点灯60分を繰り返して1000hr暴露後、10倍の拡大鏡で試験片表面の亀裂の有無を観察した。
【0017】
亀裂発生の程度は、亀裂がある場合に断面を観察し、暴露面に凹凸の発生が無い場合は「小」、暴露面に凹凸が発生している場合は「大」とした。
【0018】
表2の各実施例は、高価な紫外線吸収剤を添加していないにも拘わらず全ての評価項目で目標値を達成しており、表3の比較例では耐候性、油浸後残率の伸びあるいは電気特性のいずれかの項目で満足できないものがある。
【0019】
上記各実施例に係るPVC組成物でもって、通常の電線製造技術により、導体1上に絶縁体2を被覆してビニル絶縁電線3を製造し、特性試験を行なった結果シート試験と同様の試験結果を得ることができた。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明したように、この発明のPVC組成物は、上記特定の合成クレーを特定量配合することにより、高価な紫外線吸収剤を配合しなくても充分な耐候性が得られ、このPVC組成物を、導体1上に絶縁体2を被覆したビニル絶縁電線3に適用するならばコストダウンが図れるのとともに、耐候性の優れた電線・ケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ビニル絶縁電線の斜視図
【符号の説明】
【0025】
1 導体
2 絶縁体
3 ビニル絶縁電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、粒子形状が扁平で、平均粒子径が0.2〜0.6μmであり、かつ粒子径が45μm以上の粗粒が0.1体積%以下の合成ケイ酸アルミニウムを、0.1から10重量部添加したことを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
上記合成ケイ酸アルミニウムを、高級脂肪酸の金属塩で表面処理したことを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の塩化ビニル樹脂組成物でもって、被覆を形成したことを特徴とする電線・ケーブル。

【図1】
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【公開番号】特開2006−22252(P2006−22252A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202899(P2004−202899)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)
【Fターム(参考)】