説明

塩化ビニル系共重合体ラテックスおよびその製造方法

【課題】 貯蔵安定性に優れる塩化ビニル系共重合体ラテックス、および重合中に発生するスケールが少なく、pHが3〜8である塩化ビニル系共重合体ラテックスの製造方法を提供する。
【解決手段】 塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物0.20〜10.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜3.0重量部を含有し、pH3〜8であることを特徴とする塩化ビニル系共重合体ラテックス、並びにその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系共重合体ラテックスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は安価でかつ品質バランスに優れているため、繊維処理、塗料など種々の分野で利用されている。塩化ビニル系樹脂からなる水性塗工液は、溶剤系と比較し有機溶剤を使用しないため大気汚染の問題、作業者の安全衛生の問題、火災の問題等がなく、近年利用が広がっている。その際、塩化ビニル樹脂の高機能化を目的とし、様々な単量体を塩化ビニル単量体と共重合している。特に、ガラス転移温度(Tg)の低下のため塩化ビニル単量体に、不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合するが、これらエステル類は加水分解しやすく、加水分解防止のため重合系内のpHを概ね3〜7に保つようにpH緩衝剤の添加が行われている(非特許文献1、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
ところが従来一般的に使用されている重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、一価又は二価のリン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等のpH緩衝剤を添加して塩化ビニルとビニルエステルを共重合すると、重合中のラテックス溶液のpH低下は防止できるものの、重合中にスケールが多く発生する問題があった。
【0004】
また、平均粒径0.15μmのラテックスを得る方法が記載されているが(特許文献3)、このラテックスはシードミクロ懸濁重合法に使用されるものであり、貯蔵安定性が十分でなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】室井宗一 著、高分子ラテックスの化学、高分子刊行会、1970年、p.184
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−269114号公報
【特許文献2】特開平8−188605号公報
【特許文献3】特開2003−301083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、貯蔵安定性に優れるラテックス、および重合中に発生するスケールが少なく、pHが3〜8であるラテックスの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物0.20〜10.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜3.0重量部となるように、重合中にスルホン酸塩又は硫酸エステル塩、脂肪酸塩を添加することで、重合中に発生するスケールが少なく、重合後に得られるラテックスのpHの低下を防止できることを見出した。すなわち、本発明は、塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物0.20〜10.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜3.0重量部を含有し、pH3〜8である塩化ビニル系共重合体ラテックス、並びにその製造方法である。
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックスは、塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物0.20〜10.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜3.0重量部を含有するものである。
【0011】
塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体は、塩化ビニル単量体と不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合させたものである。
【0012】
不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸のメチル,エチル,ブチル等のエステル、メタクリル酸のメチル,エチル,ブチル等のエステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル等を挙げることができ、これらは2種類以上でも用いることができる。
【0013】
塩化ビニルと不飽和カルボン酸エステルを共重合させる方法としては、例えば、乳化重合、溶液重合、気相重合等が挙げられる。
【0014】
スルホン酸塩を有する化合物としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩類;アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルフォン酸塩類;アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩類等が挙げられ、硫酸エステル塩を有する有機化合物としては、例えば、ラウリル硫酸エステルナトリウム、ミリスチル硫酸エステルナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類等が挙げられる。スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物の含有量としては、0.20〜10.0重量部である。0.20重量部未満の場合は、貯蔵安定性に劣り、ラテックスが不安定となり、10.0重量部を超える場合は、塩化ビニル系共重合体の不純物となる。好ましくは、1.0〜5.0重量部である。
【0015】
高級脂肪酸塩としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等とアルカリとの塩が挙げられる。入手のしやすさから、ナトリウム、カリウム、アンモニア、トリエタノールアミンとの塩が好ましい。高級脂肪酸塩の含有量は0.05〜3.0重量部である。0.05重量部未満の場合は、pHが3より低くなり、3.0重量部を超える場合は、pHが8より高くなる。好ましくは、0.1〜1.0重量部である。
【0016】
本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックス中の塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体の平均粒子径は、0.14μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.14μmを超えると長期貯蔵後に沈殿物が発生するおそれがある。平均粒子径は、さらに好ましくは0.12μm以下であり、特に好ましくは0.10μm以下であり、最も好ましくは0.05〜0.10μmである。
【0017】
本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックスは、pHが3〜8である。pHが3〜8を外れると、塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体の加水分解が進行しラテックスの品質が低下する。
【0018】
本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックスは、連鎖移動剤、還元剤、緩衝剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩以外の乳化剤等を含有してもよい。
【0019】
本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックスは、水を分散媒とし、塩化ビニル単量体と不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合する際に、塩化ビニル単量体及び不飽和カルボン酸エステル単量体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物0.05〜3.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜1.0重量部を使用して、乳化重合することによって得られる。スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物が0.05重量部未満の場合は、重合が不安定となり、得られるラテックスの平均粒子径が0.14μmを超えるおそれがある。3.0重量部を超える場合は、あわ立ちが問題となる。高級脂肪酸塩が0.05重量部未満の場合は、重合中のpHが低くなり、1.0重量部を超えて添加しても効果が少ない。スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物は、重合開始前、重合中、重合終了後に適時添加する。高級脂肪酸塩は、重合の開始前、重合中、重合終了後のいずれでいれても問題なく、重合中に高級脂肪酸塩を逐次又は分割添加で添加することも可能である。このなかでも高級脂肪酸塩を逐次又は分割添加で添加することが、少ない量でラテックスのpHを3〜8とすることが可能で好ましい。
【0020】
重合開始剤は、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性開始剤、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシピバレート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等の油溶性開始剤等を挙げることができる。
【0021】
重合温度は、特に限定するものではないが、30〜100℃が好ましく、40〜80℃がさらに好ましい。
【0022】
重合時間は、特に限定するものではないが、3〜24時間が好ましい。
【0023】
塩化ビニル単量体と不飽和カルボン酸エステル単量体の重合率は、全単量体に対して80〜97重量%であることが好ましい。
【0024】
重合の終了は、容器内の圧力を常圧、さらに減圧し、モノマーを回収することにより行う。重合禁止剤を添加して重合を終了させてもよい。
【0025】
必要に応じ、重合終了後のラテックスに、塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対して0.20〜10.0重量部を含有するように、アルキルベンゼンスルホン酸スルホン酸塩を追加添加することができる。また、塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対して、0.05〜3.0重量部を含有するように、高級脂肪酸塩を追加添加することができる。
【0026】
本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックスを製造する際に、重合の安定化やスケール発生量の低減を目的として連鎖移動剤、還元剤、緩衝剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩以外の乳化剤等を添加することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックスは、貯蔵安定性に優れ、本発明の塩化ビニル系共重合体ラテックスの製造方法は、重合中に発生するスケールが少なく、重合後に得られるラテックスのpHを3〜8とする方法を提供することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
平均粒子径、固形分濃度、pH、スケール発生量、ラテックス貯蔵安定性は、以下の通りである。
【0030】
<平均粒子径>
塩化ビニル樹脂ラテックスをレーザー透過率が84〜86%となるように水を添加して濃度調整を行った測定用試料を、レーザー回折/散乱式粒径測定装置(商品名LA−920、堀場製作所(株)製)を用いて、メジアン径を測定し、平均粒子径とした。
【0031】
<固形分濃度>
塩化ビニル系共重合体ラテックス5gをアルミ皿にとり、重量を測定後、40℃の乾燥機で24hr乾燥して水分を蒸発させた。その後、乾燥物の重量を測定し、重量比から固形分濃度を算出した。
【0032】
<pH>
pHメーター(商品名D−12、堀場製作所(株)製)を用いて、濃度調整をせず室温にて塩化ビニル系共重合体ラテックスのpHを測定した。
【0033】
<スケール発生量>
2.5Lオートクレーブ壁面及び攪拌翼への樹脂付着物と、得られた塩化ビニル系共重合体ラテックスを60メッシュの金網でろ過した後の樹脂捕集物を、40℃の乾燥機で72hr乾燥して水分を蒸発させた。その後、乾燥物の重量を測定し、この重量のオートクレーブに仕込んだ混合単量体重量に対する割合を、百分率で表し、スケール発生量とした。
【0034】
<ラテックスの貯蔵安定性>
塩化ビニル系共重合体ラテックスを水で希釈し、固形分を30重量%に調整した。そのうち500gを透明なガラス瓶に入れ、室温下2週間静置し、ラテックス中の沈降物発生の有無を目視で確認し、以下の通り評価した。
【0035】
○:沈降物の発生全くない。
【0036】
△:僅かに発生が見られた。
【0037】
×:多量の沈降物発生が見られた。
【0038】
実施例1
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム56.4g(単量体に対して0.47重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.44重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0039】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0040】
実施例2
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後すぐにブチルアクリレート単量体60gを300分間かけて連続添加し、重合開始60分後より5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム56.4g(単量体に対して0.47重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.47重量%と少なく、pH6.9とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0041】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0042】
実施例3
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液84g(単量体に対して0.70重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後すぐに、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液24g(単量体に対して0.20重量部)を300分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム138g(単量体に対して1.15重量部)、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液36g(単量体に対して0.30重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.49重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0043】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0044】
実施例4
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液84g(単量体に対して0.70重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後すぐに、ブチルアクリレート単量体60g、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液24g(単量体に対して0.20重量部)を300分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム138g(単量体に対して1.15重量部)、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液36g(単量体に対して0.30重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.49重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0045】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0046】
実施例5
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.56重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.70重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.11μmであった。
【0047】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0048】
実施例6
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに15重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム264.8g(単量体に対して6.62重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:8.89重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.48重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0049】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0050】
実施例7
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液22.8g(単量体に対して0.19重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム56.4g(単量体に対して0.47重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム6g(単量体に対して0.05重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.27重量部)。ラテックスのスケール発生量0.46重量%と少なく、pH6.1とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0051】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0052】
実施例8
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液60.0g(単量体に対して0.50重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム56.4g(単量体に対して0.47重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム156g(単量体に対して1.30重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:2.00重量部)。ラテックスのスケール発生量0.41重量%と少なく、pH7.5とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0053】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0054】
実施例9
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルメタクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルメタクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム56.4g(単量体に対して0.47重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.38重量%と少なく、pH6.4とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0055】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0056】
実施例10
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルメタクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルメタクリレート単量体を回収した。これに15重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム264.8g(単量体に対して6.62重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:8.89重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.43重量%と少なく、pH6.5とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0057】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0058】
実施例11
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、エチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびエチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム56.4g(単量体に対して0.47重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.54重量%と少なく、pH6.6とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0059】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0060】
実施例12
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、アクリル酸2−エチルヘキシル単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液105.6g(単量体に対して0.88重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびアクリル酸2−エチルヘキシル単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム56.4g(単量体に対して0.47重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.61重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであった。
【0061】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0062】
比較例1
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液130g(単量体に対して1.08重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液2.4g(単量体に対して0.02重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム32g(単量体に対して0.27重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.02重量部)。ラテックスのスケール発生量0.52重量%と少なく、平均粒子径を測定したところ0.1μmであったが、pH2.2と低い結果であった。
【0063】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0064】
比較例2
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液130g(単量体に対して1.08重量部)と5重量%ラウリン酸カリウム水溶液184g(単量体に対して1.53重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム32g(単量体に対して0.27重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム184g(単量体に対して1.53重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:3.41重量部)。ラテックスのスケール発生量0.83重量%と少なく、平均粒子径を測定したところ0.1μmであったが、pH8.4と高い結果であった。
【0065】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0066】
比較例3
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液2.4g(単量体に対して0.02重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後60分後より、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.02重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.53重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.15μmであった。
【0067】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物が多量に発生し(×)、劣った結果であった。
【0068】
比較例4
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)、25重量%の重炭酸カリウム3.2g(単量体に対して0.13重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液130g(単量体に対して1.08重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム32g(単量体に対して0.27重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、重炭酸カリウム:0.15重量部)。pH4.1とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであったが、ラテックスのスケール発生量2.1重量%と多い結果であった。
【0069】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0070】
比較例5
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)、25重量%の酢酸ナトリウム3.2g(単量体に対して0.13重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液130g(単量体に対して1.08重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム32g(単量体に対して0.27重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、酢酸ナトリウム:0.15重量部)。pH3.9とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであったが、ラテックスのスケール発生量2.2重量%と多い結果であった。
【0071】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0072】
比較例6
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液60g(単量体に対して0.50重量部)、25重量%のりん酸二水素ナトリウム3.2g(単量体に対して0.13重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始後60分後より、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液130g(単量体に対して1.08重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム32g(単量体に対して0.27重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、りん酸二水素ナトリウム:0.15重量部)。pH3.2とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.1μmであったが、ラテックスのスケール発生量1.9重量%と多い結果であった。
【0073】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物の発生は全くなく(○)、良好な結果であった。
【0074】
比較例7
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水670g、塩化ビニル単量体540g、ブチルアクリレート単量体60g、3重量%過硫酸カリウム5.4g及び5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液2.4g(単量体に対して0.02重量部)を仕込み、温度を66℃に上げて、乳化重合を開始した。温度を66℃に保ち、重合開始60分後より、5重量%ラウリン酸カリウム水溶液38.4g(単量体に対して0.32重量部)を240分間かけて連続添加した。66℃におけるオートクレーブ内の圧力が0.70MPaまで低下した後、未反応の塩化ビニル単量体およびブチルアクリレート単量体を回収した。これに5重量%濃度のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム219.6g(単量体に対して1.83重量部)、5重量%濃度のラウリン酸カリウム21.6g(単量体に対して0.18重量部)を追加添加し、塩化ビニル系共重合体ラテックスを得た(塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:2.06重量部、ラウリン酸カリウム:0.56重量部)。ラテックスのスケール発生量0.55重量%と少なく、pH6.7とpH3〜8の範囲に入っており、平均粒子径を測定したところ0.15μmであった。
【0075】
ラテックスの貯蔵安定性を評価したところ、沈降物が発生し(×)、劣った結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物0.20〜10.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜3.0重量部を含有し、pH3〜8であることを特徴とする塩化ビニル系共重合体ラテックス。
【請求項2】
塩化ビニル−不飽和カルボン酸エステル共重合体の平均粒子径が0.14μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系共重合体ラテックス。
【請求項3】
スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物が、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塩化ビニル系共重合体ラテックス。
【請求項4】
スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物が、スルホン酸又は硫酸エステルを有する有機化合物と、カリウム、ナトリウム、アンモニア、トリエタノールアミンのいずれかとの塩であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の塩化ビニル系共重合体ラテックス。
【請求項5】
高級脂肪酸塩が高級脂肪酸のカリウム、ナトリウム、アンモニア、トリエタノールアミンのいずれかとの塩である請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の塩化ビニル系共重合体ラテックス。
【請求項6】
不飽和カルボン酸がメタクリル酸又はアクリル酸であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載の塩化ビニル系共重合体ラテックス。
【請求項7】
塩化ビニル単量体と不飽和カルボン酸エステル単量体を水性媒体中で共重合する際に、塩化ビニル単量体及び不飽和カルボン酸エステル単量体100重量部に対して、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩を有する有機化合物0.05〜3.0重量部及び高級脂肪酸塩0.05〜1.0重量部の存在下で乳化重合することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載の塩化ビニル系共重合体ラテックスの製造方法。
【請求項8】
高級脂肪酸塩を逐次又は分割添加することを特徴とする請求項7に記載の塩化ビニル系共重合体ラテックスの製造方法。

【公開番号】特開2013−18974(P2013−18974A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134827(P2012−134827)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】