説明

塩化ビニル系壁紙のリサイクル方法及びシート並びに前記シートを含む構成体

【課題】塩化ビニル樹脂系壁紙のポリ塩化ビニルから成る表層材層と裏打材層をそれぞれ分離せずに、所定の処理を経てリサイクルする方法を提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル樹脂から成る表層材層とパルプ繊維から成る裏打材層が接合一体化された塩化ビニル樹脂系壁紙の廃材を、表層材層と裏打材層をそれぞれ分離せずに、スクリーンメッシュ4mm以下に粉砕し、粉砕物100重量部に対してポリ塩化ビニル改質剤としてのアクリル変性ポリテトラフルオロエチレン5重量部、及び必要に応じて所定量のプラスチック用各種添加剤を配合して、固体混合し、ついで、押出機−Tダイ−ポリシングロールの組み合わせから成るシート成形装置により加圧して所定厚のシートに成形する。得られたシートは、シートまたはタイルタイプの塩ビ床材のバッキング材及びセンター材、フローリングのバッキング材、遮音シート、又はプラスチックパレットに応用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩化ビニル系壁紙のリサイクル方法及塩化ビニル系壁紙のリサイクル方法によって製造されたシート、並びに前記シートを含む構成体に関する。より詳細に述べれば、本発明は、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と、裏打材層を接合一体化した、いわゆる塩化ビニル系壁紙のポリ塩化ビニルから成る表層材層と、裏打材層をそれぞれ分離せずに、所定の処理を経てリサイクルする方法、及びその方法により製造されたシート、並びに前記シートを構成材料の一つとして含む構成体に関する。
本発明で使用する用語「構成体」は、タイルカーペット又は床材、フローリングのバッキング材、遮音シート、又はプラスチックパレット等と定義する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系壁紙の廃材には、その製造工程で発生する「工場廃材」と、施工段階で発生する「施工廃材」と、適正に施工された後に更新等で不要になった「使用済み廃材」がある。本発明では、これら3種の廃材を総称して「塩化ビニル系壁紙廃材」と呼称する。
【0003】
塩化ビニル系壁紙の廃材の排出量は、年間約6億4千万m(約20万トン)程である。塩化ビニル系壁紙は、平成13年4月施行の「資源有効利用促進法」により、指定表示製品に指定されていて、分別回収促進のための材質表示等が求められている。然しながら、塩化ビニル系壁紙の廃材の年間回収率に対するリサイクル率は1%以下と言われている。その大きな原因は、従来法の主流は、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と、パルプ繊維から成る裏打材層を分離する工程を含んでいるために、設備、その他にかかるコストが上昇し、再生した製品に、産業規模での用途がなかなか開発されないことにあった。
【0004】
従来の塩化ビニル系壁紙廃材のリサイクル方法としては、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と、パルプ繊維等から成る裏打材層を分離し、粉砕したり、或いはさらに、加熱溶融してペレットにする方法がある。たとえば、特許文献1は、繊維質である裏打ち紙基材に塩化ビニル系樹脂を被覆した壁紙等や塩化ビニル樹脂を布製軍手の表面に塗布した作業手袋の繊維質層と合成樹脂被覆層とを含む廃製品から、繊維質成分と樹脂成分を分離回収して、それぞれ再生原料として再資源化する方法において、先ず粉砕した後、塩化ビニル系樹脂片と、繊維片それぞれの比重の相違を利用して風力によってサイクロンを経て別々に回収する方法を記載している。
【0005】
また、特許文献2は、特許文献1に記載された発明と同じように、繊維及び樹脂を含む 複合樹脂廃材を、繊維質成分と樹脂成分を分離回収して、それぞれ再生原料として再資源化する方法において、先ず粉砕した後、サイクロンを利用して樹脂片と繊維片それぞれの比重の相違を利用して分離する技術を記載している。
【0006】
また、特許文献3は、塩化ビニル系壁紙の樹脂層を有機溶剤で膨潤させ、繊維層と分離して塩化ビニル系樹脂を回収する技術を記載している。
【0007】
また、特許文献4は、切削刃を有する回転体を用いて積層体の一層を切削剥離する方法を開示している。
【0008】
上述した特許文献に記載された従来技術は、いずれも、いわゆる塩化ビニル系壁紙廃材をリサイクル処理するに当たって、専用に開発された特殊な装置、機械、器具等を必要とするので初期設備投資、メンテナンス費用等に多大のコストがかかり、再生した製品に、産業規模での用途があって、コストを十分吸収することができない限り実用化に困難を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−275852号公報
【特許文献2】特開2008−213423号公報
【特許文献3】特開平09−59423号公報
【特許文献4】特開平2003−88772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献1〜4に記載されているように、塩化ビニル系壁紙廃材のリサイクルは、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と、パルプ繊維から成る裏打材層を分離し、粉砕したり、或いはさらに、加熱溶融してペレットにする方法がある。然しながら、前述した特許文献に記載されているような方法では、専用に開発された特殊な装置、機械、器具等を必要とするので初期設備投資、メンテナンス費用等に多大のコストがかかる上、製造工程が複雑化して最終製品の用途によっては、実用が困難な場合がある。たとえば、塩化ビニル系壁紙廃材を床面の不陸調整材や下地材、カーペットのバック層などのように、仕上がり状態よりもコストや製造工程の単純化が要求される製品に再利用する場合などが、その一例である。
【0011】
従って、発明が解決しようとする主たる課題は、塩化ビニル系壁紙廃材を、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と、パルプ繊維から成る裏打材層を分離せずに、リサイクルシートに成形することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の各項に述べる手段により解決される。
1.ポリ塩化ビニル樹脂から成る表層材層と裏打材層が接合一体化された塩化ビニル樹脂系壁紙の廃材を所定の大きさに裁断して粉砕物とし、
その粉砕物をポリ塩化ビニル樹脂改質剤と一緒に高速混練することによって得られた分散物を加圧してシートに成形することを特徴とする塩化ビニル系壁紙のリサイクル方法。
【0013】
2.前記1項において、ポリ塩化ビニル樹脂改質剤としてアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを使用する。
【0014】
3.前記1又は2項において製造されたシート。
【0015】
4.前記3項記載のシートを構成材料の一つとして含む構成体。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載した発明により、ポリ塩化ビニル樹脂から成る表層材層と裏打材層が接合一体化された塩化ビニル樹脂系壁紙の廃材を所定の大きさに裁断して粉砕物とし、
その粉砕物をポリ塩化ビニル樹脂改質剤と一緒に高速混練することによって得られた分散物を加圧してシートに成形するので、従来のように、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と、裏打材層を分離し、粉砕したり、或いはさらに、加熱溶融してペレットにする方法と異なり、専用に開発された特殊な装置、機械、器具等を必要としない。従って、初期設備投資、メンテナンス費用等に多大のコストを必要としない。また、リサイクル工程も分離工程が無いため、比較的単純なものとなる。従って、たとえば、塩化ビニル系壁紙廃材を再利用して、床面の不陸調整材や下地材、カーペットのバック層などのように、仕上がり状態よりもコストや製造工程の単純化が要求される製品の場合などに産業上の利用可能性がある。
【0017】
さらに、請求項1に記載した発明は、塩化ビニル樹脂系壁紙をポリ塩化ビニル改質剤と一緒に高速混練する工程を含むので、後続工程で、ポリ塩化ビニルから成る表層材層を効率よく溶融させ、裏打材層を一種のセルローズ系充填材として得ることができる。このようにして得られたセルローズ系充填材は、従来からゴム、プラスチック用充填材として利用されている、木材パルプをアルカリ処理し、機械的に砕断したアルファ繊維素からなる繊維フロック、綿実から得られるコットンリッターまたはコットンフロックや、人絹を細断した人絹フロック等の代替品として機能させることができる。このセルローズ系充填材は、ポリ塩化ビニルに対して加工性の改良、変形・収縮の防止、硬度の向上等の効果がある。
【0018】
請求項2に記載した発明により、ポリ塩化ビニル改質剤としてアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを選択することにより、ポリ塩化ビニルの溶融張力を増大させ、成形工程における樹脂の流動特性を向上させ、成形品の外観を向上させることができる。
【0019】
請求項3に記載した発明により、塩化ビニル樹脂系壁紙のリサイクルにより、安価に且つ使用済み資源の有効利用としてのシートを製造することができる。
【0020】
請求項4に記載した発明により、塩化ビニル樹脂系壁紙のリサイクルにより、安価に且つ使用済み資源の有効利用として製造されたシートを、シートまたはタイルタイプの塩ビ床材のバッキング材及びセンター材、フローリングのバッキング材、遮音シート、又はプラスチックパレットに応用することにより、当該産業分野の材料コストを低減することができ、且つ、省資源に資する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】製品例1のタイルカーペットの断面図。
【図2】製品例2の床材の断面図。
【図3】シート成型工程の一例の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための形態を具体的に説明する。
【0023】
本発明が処理対象とする塩化ビニル樹脂系壁紙は、塩化ビニル樹脂に、可塑剤、充填材、安定剤、発泡剤、発泡助剤、防かび剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤又は顔料、酸化防止剤、滑剤等常用の樹脂用各種添加剤を、所要の目的、効果等を勘案して添加して所定の方法により成形したフィルム又はシートから成るポリ塩化ビニル表層材層と、裏打ち材層を積層して一体化したものである。
【0024】
塩化ビニル樹脂に添加される可塑剤、充填材、安定剤、発泡剤、発泡助剤、防かび剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤又は顔料、酸化防止剤、滑剤等樹脂用各種添加剤は、塩化ビニル樹脂のフィルム又はシートの成形では従来から広く使用されているので、それらに関する説明は割愛する。
【0025】
化粧面であるポリ塩化ビニル表層材層の表面には、表面のつや調整、表面強度の向上のためにアクリル樹脂などを塗布したり、耐傷(耐スクラッチ)性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性などを改良するためにフッ素樹脂コーティングをしたり、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム等を積層してもよい。また、消臭、抗菌、調湿、蓄光機能を付与させてもよい。壁紙としての最も重要な美的効果を発現する模様、柄を、アクリル樹脂等に有色顔料を添加した印刷インキで印刷する。
【0026】
裏打ち材層としては、普通パルプ紙、普通パルプ紙を難燃剤で処理した難燃紙、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム等の無機質材及びガラス繊維を混抄した無機質紙、織布等が例示される。
【0027】
上述した構成の塩化ビニル樹脂系壁紙は、色、デザイン共に広範な範囲から選択でき、量産性に富み、広範な価格帯から希望するものが選択でき、施工性がよく、メンテナンス性にも優れていて、多様な機能性を付与したものもあり、物性面でも安定している等の多種多様な利点が評価され、紙系壁紙、繊維系壁紙、塩化ビニル樹脂系壁紙、プラスチック系壁紙、無機質系壁紙等壁紙の全生産量の約95%を占めている。
【0028】
塩化ビニル樹脂系壁紙として、主として、ポリ塩化ビニル樹脂31重量%、フタル酸エステル系可塑剤14重量%、カルシウム系安定剤1重量%、二酸化チタン光遮蔽剤6重量%、炭酸カルシウム充填剤23重量%、パルプ繊維25重量%から成る配合部を所定の方法により厚さ0.20〜0.25mmのシートに成形し、その表面に、表面のつや調整、表面強度の向上のためにアクリル樹脂を塗布して表面処理をし、アクリル樹脂等に有色顔料を添加した印刷インキで模様、柄を印刷した使用済み塩化ビニル樹脂系壁紙を処理対象壁紙とした。
【0029】
ポリ塩化ビニルから成る表層材層とパルプ繊維から成る裏打材層をそれぞれ分離せずに、汎用の粉砕機でスクリーンメッシュ8mm以下、望ましくは5mm以下、より望ましくは4mm以下に粉砕する。以下これを「原材料」と呼称する。
【0030】
原材料は、粉砕サイズが大きすぎると溶融しない紙成分が増えるため、装置内で詰まりを発生しやすくなる。このため、生産に支障をきたし、歩留まりが悪くなる場合がある。一方、原材料の粉砕サイズが小さすぎると、粉砕物が浮遊しやすくなり扱いが難しくなる上、粉砕工程に要するエネルギーが大きくなり、コストの増大を招く可能性があるため、スクリーンメッシュ1mm以上、望ましくは2mm以上とする。
【0031】
本発明における原材料の粉砕径は、原材料のフィーダーでの搬送状況、樹脂溶融の状態、粉砕機の能力等の要素も考慮して決定されるべき値であるが、通常の条件下では、8mm以下、望ましくは5mm以下、より望ましくは4mm以下であると搬送しやすく、押出機から押出しやすいので好ましい。
【0032】
粉砕機で粉砕された原材料は、ポリ塩化ビニル改質剤と混合攪拌される。混合攪拌装置は、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タンブラーミキサー、レデイミキサー、V型ブレンダー、オープンニーダー等など、高い精度の混合が行える装置であることが好ましい。特に、精度と処理能力の点からスーパーミキサーが好適に使用できる。微粒子を均一に分散させるためには、混練機中やあるいはダイ中でのシェアーにより、前記微粒子が粉体から微粒子化され微細分散化される工程を含むことが好ましい。混合攪拌の条件は、装置の種類、攪拌条件、原材料の種類や粉砕条件などによって適宜設定すれば良い。混合攪拌装置による固体混合は、全ての投入材料が混合により均一に分散していればよく、目視及び手触りによるドライ感で仕上がりを確認して終了することができる。
【0033】
本発明のポリ塩化ビニル改質剤としては、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを用いるのが望ましい。ポリ塩化ビニル改質剤は、2重量部以上、7重量部以下、望ましくは、3重量部以上、6重量部以下、さらに望ましくは、4重量部以上、5重量部以下用いる。ポリ塩化ビニル改質剤の添加量が少なすぎると、熱時間の樹脂流れは良いが、最終的に成形されたシートの柔軟性は良いが、他方、柔らかく、熱時間のシート強度は脆く裂けやすくなる。逆に、添加量が余り多すぎると、最終的に成形されたシートの柔軟性が悪く、硬くなり、熱時間のシート強度が上昇し、熱時間の樹脂流れの負荷が大きくなる。
【0034】
シートに成形する工程の一例を図3に示す。図3の工程100において、原材料とポリ塩化ビニル改質剤の混練物を、押出機23で加熱溶融し、シート状に拡幅する金型(以下「押出成形用ダイ25」と称する)から押し出し、ポリッシングロール26を介してシートに成形する方法である。押出し成形の条件は、一般的に行われている樹脂シートの成形条件と同じであり、適宜、温度条件を設定すれば良い。
粉砕機で粉砕されスーパーミキサーなど混合攪拌装置によって混合攪拌された原材料Xは、貯留フィーダー21によってサービスタンク20から搬送され、押出機23に連続的に送られる。ここでそれぞれの樹脂組成物は加熱溶融され、ブレイカブルプレート24を通して押出成形用ダイ25に圧送される。押出機23のスクリュー(図示せず)の回転数は、10rpm以上1000rpm以下が好ましく、より好ましくは、20rpm以上700rpm以下、さらにより好ましくは30rpm以上500rpm以下である。これより回転速度が遅くなると、滞留時間が長くなり、熱劣化による分子量の低下が生じる場合があり、好ましくない。また回転速度が速すぎると、剪断により分子の切断がおきやすくなり、分子量低下や架橋ゲル発生の増加などの問題が生じやすくなる。押出成形用ダイ25としては、Tダイ、ハンガーダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイ、フィードブロックダイ、マルチマニホールドダイなどが用いられる。押出成形用ダイ25は、ダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるいずれのタイプでも構わない。押出成形用ダイ25は、シートの厚み調整が精度良くできるものが好ましい。このようにして、原材料は、加熱溶融されて押出成形用ダイ25から押出される。また、樹脂中の異物ろ過や異物によるギアポンプ損傷防止を目的として、押出機23の出口にフィルター濾材としてブレイカブルプレート24を設けるのが好ましい。
【0035】
押出成形用ダイ25から押出された分散物は、ポリッシングロール26により加圧されてシート状に成形された後、ポリッシングロール26上で徐々に冷却され固化し、シート2となる。また、基材層9と接合する場合は、基材層9が、搬送ロール28によってシート2と等速で繰り出され、プレースロール29によって、基材層9の表面がシート2の裏面に接するように重ねられる。基材層9とシート2は、ポリッシングロール26により一体化されて排出される。
なお、図3に示される工程100は、あくまでも一例であり、例えばポリッシングロール26やプレースロール29、搬送ロール28等の本数は必要に応じて増減、省略しても良い。
また、シート2の加圧成形は、カレンダーロール、押出機、またはプレス機など一般に用いられる樹脂シートの加圧成形方法を用いても良いが、ポリッシングロール26による方法が層厚のコントロール精度が良く、分散物の樹脂成分が変性しにくいので最も好ましい。
【実施例1】
【0036】
以下更に詳細に説明する。
粉砕サイズ3〜4mmに粉砕した原材料100重量部に対して、ポリ塩化ビニル改質剤としての三菱レイヨン(株)製「メタブレン(登録商標)」(アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン)5重量部、 ステアリン酸(日油(株)製商品名「ビーズステアリン酸さくら」)0.5重量部、安定剤(アデカ(株)製商品名「アデカスタブSP−96」)1重量部、及び可塑剤としてDOP(新日本理化(株)製商品名「サンサイザーDOP」)10重量部を配合して、汎用のスーパーミキサー「SGM・C-300」((株)カワタ製)で固体混合して原材料の分散物を得た。スーパーミキサーによる混合条件は、攪拌時間2〜3分、仕上がり材料温度は100℃以下と設定した。スーパーミキサーよる固体混合は、DOPが壁紙に吸収された時点で完了したものと確認した。
得られた原材料の分散物を二軸押出機「GT110」(株式会社池貝製:スクリュー径=110mm;回転数(r. p. m.)=30;L/D=17〜22逆方向の溝形状を有する逆フィライトエレメントを3箇所に配したスクリューエレメント構成、シリンダーの設定温度(C1=145℃;C2=155℃;C3=175℃;C4=170℃;C5=170℃)、押出量=250〜600、二軸押出機「GS125」(株式会社池貝製:スクリュー径=125mm;回転数(r. p. m.)=30;L/D=25〜34;シリンダーの設定温度(C1=165℃;C2=170℃;C3=170℃;C4=170℃;アダプタ=165℃;ダイネック=165℃;押出量=100〜400、樹脂圧力=約200)の2つを用いた押出機23の押出口に300メッシュのステンレス製金網をブレイカブルプレート24として1枚装着して、溶融混練し、樹脂組成物を押出した。
【0037】
押出成形用ダイ25には、(有)内田製作所製T−ダイ「コートハンガーダイ」(ダイ幅=1550mm;リップクリアランス=4.5mm;温度(D1(端)=187℃;D2=185℃;D3=178℃;D4(中央)=178℃;D5=178℃;D6=185℃;D7(端)=187℃)を用いて、押出機23の押出口からブレイカブルプレート24を介して排出される押出物をシート状に拡幅した。
【0038】
押出成形用ダイ25によって拡幅された樹脂組成物をポリシングロール26(三晃特殊金属工業(株)製)によって下記の条件にて厚さ5mmのシートに圧延した。
圧延条件:
スピード(m/分):上ロール=1.28;中ロール=1.28;下ロール=1.00
温度(℃):上ロール=30;中ロール=70;下ロール=70
クリアランス(mm):上ロール−ロール間=開放;中ロール−下ロール間=4.5
紋形状:上ロール=鏡面;中ロール及び下ロール=梨地
【0039】
実施例1で製造した厚さ5mmのシートは、シートまたはタイルタイプの塩ビ床材のバッキング材、フローリングのバッキング材、遮音シート、プラスチックパレット等に利用可能性があることを確認した。
【実施例2】
【0040】
予め、押出機のブレーカープレート24の開口径を実施例1のそれとは変更し開口率37%とし、樹脂圧力を120に低下させ、樹脂の流動性を改善した。
【0041】
実施例1で製造した原材料の分散物を用いて、実施例1と同じ諸元を有する押出機23、押出成形用ダイ25及びポリシングロール26の構成から成る汎用のシート成形装置により、厚さ2mmのシートに圧延した。
【0042】
実施例2で製造した厚さ2mmのシートは、シートまたはタイルタイプの塩ビ床材のバッキング材、フローリングのバッキング材、遮音シート、プラスチックパレット等に利用可能性があることを確認した。
【実施例3】
【0043】
図1は、本件発明のシート2を用いて、シート積層方式又は枚葉積層方式で製造されたタイルカーペットの断面図である。図1において、1はタイルカーペット、2は実施例1で製造した壁紙のリサイクルシート、3は第1接着剤層、4は基布原反、5は第2接着剤層、6は生機、7は基布、8はカーペットテクスチャー、9は基材層である。
【0044】
実施例3においては、実施例1で製造した厚さは5mmのリサイクルシート2を用いるが、この厚さは特段に限定されない。即ち、一旦5mm厚に製造したシート2をタイルカーペット1の構成材料として必要な所定の厚さに裁断しても、或いは予めタイルカーペット1の構成材料用として必要な別の厚さに成形してもよい。
【0045】
第1接着剤層3は、シート2及び基布原反4を完全に接合一体化するものであれば特段に限定されない。たとえば、ポリ塩化ビニル系またはアクリル系等常用の接着剤を使用することができ、たとえば平均重合度が約1300〜約2000のペースト塩化ビニルレジンゾルを使用した下記の配合成分が例示される。尚、下記の配合には、必要に応じてその他の添加剤を配合することができ、その配合比率を変えることができる。
配合成分 重量%
ペースト塩化ビニルレジンゾル 10〜20
可塑剤(DOP) 10〜20
充填材(炭酸カルシウム) 50〜70
安定剤(Ba-Ca-Zn系) 所定量
エポキシ化大豆油 所定量
【0046】
第2接着剤層5は、その下層のガラス基布4及び生機6のバッキングを完全に接合一体化するものであれば特段に限定されない。従って、第1接着剤層3と同じ配合成分を使用することができる。
【0047】
第1接着剤層3及び第2接着剤層5で挟支される基布原反4には、天然繊維又は合成繊維の織布又は不織布、たとえばガラス繊維の織布又は不織布、ポリエステル繊維の平織り、即ち、寒冷紗、ガラスネット等から任意に選択することができる。
【0048】
生機6は、天然又は合成繊維よりなる基布7に天然又は合成繊維からなるカーペットテクスチャー8をタフトまたは接合したものである。図1では、テクスチャー8は、ループ状に記載されているが、特段に限定されない。即ち、本発明では、パイルのあるカーペット及びパイルのないカーペットが対象になる。
【0049】
基材層9は、製造されたタイルカーペット1の構成上の反りバランスを取ることや最下層面の耐久性維持、滑り止め加工等を目的とするもので、壁紙のリサイクルシートの下に基材層を貼り合わせることも可能である。製造方法としては、予め、壁紙のリサイクルシート製作時に積層しておく方法やペースト加工時に最初に繰り出し、塩ビペーストをコートし、壁紙のリサイクルシートを積層する方法等がとれる。基材層9の材料としては、天然繊維又は合成繊維の織布又は不織布、たとえばガラス繊維の織布又は不織布、ポリエステル繊維の平織り、即ち、寒冷紗、ガラスネット等従来から使用しているものが例示される。当然、天然又は各種合成ゴム、又は各種熱可塑性合成樹脂成形品のリサイクル品を起源とする材料を使用することもできる。
【0050】
タイルカーペット1の製造方法としては、下記の製造例1、製造例2が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
製造例1(シート積層方式)
シート2を繰り出し、その表面に前述したペースト塩化ビニルゾル配合物から成る第1接着剤層3を約1〜5mmの厚さでコーティングし、この上に前述した基布原反4を積層し、この基布原反4の上に前述したペースト塩化ビニルゾル配合物から成る第二接着層5をコーティングし、更にこの上に生機6を積層し、オーブン装置にてペーストをゲル化させて、各層を一体接着することにより製造した原反を、カッターにて所定形状(例えば500mm四方大)に裁断することにより、タイルカーペット1を製造した。
【0052】
製造例2(枚葉積層方式)
シート2を荒切り、また、プレス方式で枚葉プレートを成形する。このプレート表面に前述したペースト塩化ビニルゾル配合物から成る第1接着剤層3をロールコーターで接着剤100〜500g/m2をコーティングし、この上に前述した基布原反4を積層し、この基布原反4の上に前述したペースト塩化ビニルゾル配合物から成る第二接着層5をコーティングし、更にこの上に生機6を積層し、オーブン装置にてペーストをゲル化させて、各層を一体接着することにより大判のタイルカーペットを形成する。接着剤硬化後にカッターにて所定形状(例えば500mm四方大)に裁断することにより、タイルカーペット1を製造した。製造例2で使用する接着剤は2液反応型のウレタン系接着剤や一液湿気硬化型ウレタン系接着剤が好ましい。その理由は酢ビ系やアクリル系の水系接着剤では乾燥時間がかかる上に接着不良にもなる可能性が高いからである。
【実施例4】
【0053】
図2は、床材12の断面図である。図2において参照番号2,4及び9は、図1のそれらと同じ材料なので、説明を割愛する。
【0054】
図2において、10は中間層で、たとえば下記の配合成分からなる厚さ2.0mmのポリ塩化ビニルシートを使用した。尚、必要に応じて常用されるポリ塩化ビニル用各種添加剤を配合してもよい。
配合成分 重量部
ポリ塩化ビニル(重合度1100) 100
可塑剤(DOP) 10〜30
安定剤(Ba-Ca-Zn系) 4〜5
着色剤 1〜2
【0055】
図2において、11は表面保護層で、たとえば下記の配合成分からなる厚さ0.4mmのポリ塩化ビニルフィルムを使用した。尚、必要に応じて常用されるポリ塩化ビニル用各種添加剤を配合してもよい。
配合成分 重量部
ポリ塩化ビニル(重合度1100) 80〜100
艶消しポリ塩化ビニル 20〜30
可塑剤(DOP) 10〜40
充填材(炭酸カルシウム) 20〜40
安定剤(Ba-Ca-Zn系) 1〜5
着色剤 1〜5
【0056】
床材12の製造方法としては、下記の製造例1、製造例2が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
製造例1(シート積層方式)
シート2を繰り出し、その表面に基布原反4を積層し、この基布原反4の上に前述した塩化ビニル樹脂の中間層10を積層、その上に意匠層となる塩化ビニルプリントシートを積層、更にこの上にクリアの塩化ビニルシートからなる表面保護層11を積層し、加熱オーブン装置にて、塩化ビニル樹脂を軟化させた上で鉄ロールにより圧着させることで、各層を一体接着することにより、床材12を製造した。
尚、所望により、鉄ロールで圧着後に、表面を再加熱し、エンボスロールで圧着することにより、表面へ導管エンボスや梨地エンボス等を付与することも可能である。また、構成上の反りバランスを取ることや最下層の耐久性維持、滑り止め加工等を目的として、シート2の下に下層シート9を貼り合わせることも可能である。製造方法としては、予め、シート2の製作時に積層しておく方法や積層加工時に最初に繰り出し、シート2を積層する方法等がとれる。また、中間層10とシート2の間に基布原反4を積層することで、基材の寸法安定性を向上させることも可能である。
【0058】
製造例2(枚葉積層方式)
シート2を荒切り加工、また、プレス方式で枚葉プレートを成形する。このプレート表面に基布原反4を積層し、この基布原反4の上に前述した塩化ビニル樹脂の中間層10を積層、その上に意匠層となる塩化ビニルプリントシートを積層、更にこの上にクリアの塩化ビニルシートからなる表面保護層11を積層し、加熱オーブン装置にて、塩化ビニル樹脂を軟化させた上で鉄ロールにより圧着させることで、各層を一体接着することにより、大判の塩化ビニルタイルを成形し、カッターにて所定形状(例えば500mm四方大)に裁断することにより、床材12を製造することができる。
ここでの接着剤は2液反応型のウレタン系接着剤や一液湿気硬化型ウレタン系接着剤が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
1.ポリ塩化ビニルから成る表層材層と裏打材層が接合一体化された塩化ビニル樹脂系壁紙の廃材を所定の大きさに裁断した粉砕物をポリ塩化ビニル改質剤と一緒に高速混練とによって得られた分散物を、加圧によりシートに成形するので、従来のように、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と裏打材層を分離し、粉砕したり、或いはさらに、加熱溶融してペレットにする方法と異なり、専用に開発された特殊な装置、機械、器具等を必要とせず、初期設備投資、メンテナンス費用等に多大のコストを必要としない。従って、たとえば、塩化ビニル系壁紙廃材を床面の不陸調整材や下地材、カーペットのバック層などのように、仕上がり状態よりもコストや製造工程の単純化が要求される製品に再利用する場合などに産業上の利用可能性がある。
【0060】
2.塩化ビニル系壁紙を、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と裏打材層をそれぞれ分離せずに、ポリ塩化ビニル改質剤と一緒に高速混練する工程を含むので、後続工程で、ポリ塩化ビニルから成る表層材層を効率よく溶融させ、裏打材層を一種のセルローズ系充填材として得ることができる。このようにして得られたセルローズ系充填材は、従来からゴム、プラスチック用充填材として利用されている、木材パルプをアルカリ処理し、機械的に細断したアルファ繊維素からなる繊維フロック、綿実から得られるコットンリッターまたはコットンフロックや、人絹を細断した人絹フロック等の代替品として機能させることができる。このセルローズ系充填材は、ポリ塩化ビニルに対して加工性の改良、変形・収縮の防止、硬度の向上等の効果がある。
【0061】
3.ポリ塩化ビニル改質剤としてアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを選択することにより、ポリ塩化ビニルの溶融張力を増大させ、成形工程における樹脂の流動特性を向上させ、成形品の外観を向上させるので、たとえば、塩化ビニル系壁紙廃材を再利用して床面の不陸調整材や下地材、カーペットのバック層などのように、仕上がり状態よりもコストや製造工程の単純化が要求される製品の場合などに産業上の利用可能性がある。
【0062】
4.塩化ビニル系壁紙を、ポリ塩化ビニルから成る表層材層と裏打材層をそれぞれ分離せずにできるだけ小さく、たとえば、8mm以下、望ましくは5mm以下、より望ましくは4mm以下に粉砕するので、カレンダー、押し出し、プレス等後続の成形工程における支障が無い。従って、たとえば、塩化ビニル系壁紙廃材を再利用して床面の不陸調整材や下地材、カーペットのバック層などのように、仕上がり状態よりもコストや製造工程の単純化が要求される、製品の場合などに産業上の利用可能性がある。
【0063】
5.本発明によるリサイクルシートは、タイルカーペット又は床材、フローリングのバッキング材、遮音シート、又はプラスチックパレット等の構成材料として使用することができるので、資源の有効利用及び材料費のコスト低減に資することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 タイルカーペット
2 壁紙のリサイクルシート
3 第1接着剤層
4 基布原反
5 第2接着剤層
6 生機
7 基布
8 カーペットテクスチャー
9 基材層
10 中間層
11 表面保護層
12 床材
20 サービスタンク
21 貯留フィーダー
23 押出機
24 ブレイカブルプレート
25 押出成型用ダイ
26 ポリッシングロール
28 搬送ロール
29 プレースロール
100シート成型工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂から成る表層材層と裏打材層が接合一体化された塩化ビニル樹脂系壁紙の廃材を所定の大きさに裁断して粉砕物とし、
その粉砕物をポリ塩化ビニル樹脂改質剤と一緒に高速混練することによって得られた分散物を加圧してシートに成形することを特徴とする塩化ビニル系壁紙のリサイクル方法。
【請求項2】
ポリ塩化ビニル樹脂改質剤としてアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを使用することを特徴とする請求項1に記載した塩化ビニル系壁紙のリサイクル方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された方法で製造されたシート。
【請求項4】
請求項3のシートを構成材料の一つとして含む構成体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56989(P2013−56989A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195628(P2011−195628)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】