説明

塩化ビニル系樹脂フィルム

【課題】ロール剥離性、耐ブロッキング性、透明性、印刷適性、高周波ウェルダー適性に優れ、印刷加工用フィルム、あるいは二次成形用フィルムとして好適な塩化ビニル系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂と1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルよりなり、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルの配合量が30〜60重量部であるフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂フィルムに関するものであり、詳細には、滑剤を用いなくともブロッキングがすることがなく、透明性、印刷適性、高周波ウェルダー適性に優れた二次加工に有用な塩化ビニル系樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟質の塩化ビニル系樹脂フィルムは、カレンダー成形、押出成形等により成形されるが、柔軟性を付与し成形を容易にするために可塑剤を添加している。代表的な可塑剤としては、フタル酸エステルやアジピン酸エステル等の高級アルキルエステルが挙げられる。中でも、DOPは可塑化効率や耐寒性等の諸物性のバランスに優れることから、広く利用されている。このような可塑剤を添加することによって柔軟性を付与することは可能であるが、一方で、可塑剤の添加量が増加するとフィルムの成形性が悪化する傾向にあり、特にカレンダー成形においては、ロールから剥離しにくく、成形が非常に困難である。また、成形されて巻き取ったフィルム同士が密着(以下、ブロッキングという)しやすいという問題もある。
【0003】
このような不都合を解消するために、滑剤を添加することが知られている(特許文献1等)。滑剤を添加することにより、ロール剥離性が向上し、ブロッキングを防止できる効果がある。しかしながら、滑剤を添加すると印刷適性が損なわれたり、高周波ウェルダー加工時に融着しづらくなったりする等の成形されたフィルムの二次加工性の悪化、さらには滑剤のブリードの懸念がある。
滑剤のブリードを抑制するために、オリゴマー系の滑剤を添加することも検討されている。しかしながら、オリゴマー系の滑剤を用いた場合、滑性を付与する効果が十分でなく、さらにブリードの抑制も十分なものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−63840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために種々検討したところ、可塑剤として1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを用いることにより、滑剤を用いなくとも成形時のロール剥離性に優れ、また、成形されて巻き取ったフィルム同士がブロッキングしやすいという問題も解消される本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムを完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような知見の下、成し得たものであり、以下を要旨とする。
(1)塩化ビニル系樹脂と1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルとを含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂フィルム。
(2)塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを30〜60重量部含有することを特徴とする(1)に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
(3)印刷加工用、二次成形用に用いられるものであることを特徴とする(1)または(2)に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは、可塑剤として1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを用いることにより、滑剤を用いなくとも成形時のロール剥離性に優れ、また、成形されて巻き取ったフィルム同士がブロッキングしやすいという問題も解消される。
また、滑剤を用いないで成形することにより、印刷適性が損なわれたり、高周波ウェルダー加工等の融着性が阻害されたりする等問題がなく、二次加工性に優れたフィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂と1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルとを含有する塩化ビニル系樹脂フィルムである。
【0009】
本発明で使用される塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルや、塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマーと高級ビニルエーテルとの共重合体等、またはこれらの混合物が挙げられる。塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、マレイン酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸ビニル等のオレフィン系モノマーやアクリル系モノマーが挙げられる。
【0010】
上記塩化ビニル系樹脂の重合度としては、500〜1500が好ましく、更に好ましくは800〜1300である。重合度が低すぎると、溶融張力が低く成形が困難であり、重合度が高すぎると囲う温度が高くなり分解しやすい傾向にある。
【0011】
本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを含有する。1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルは優れた可塑化効果を有するにも拘わらず、ロール剥離性およびブロッキング性に優れるため、滑剤を添加する必要がない。したがって、滑剤の添加により懸念される印刷適性の悪化、二次加工性の悪化、滑剤のブリード等の心配がない。
【0012】
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルの添加量については特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、30〜60重量部含有されることが好ましい。1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルの添加量が30〜60重量部であると、他の可塑剤を用いなくとも可塑化効果が充分であり、フィルムの成形性を損なうこともない。
【0013】
本願発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは、目的とするフィルムの物性を得るために、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを含有させた効果を損なわない範囲で他の可塑剤を併用してもよい。
【0014】
他の可塑剤としては、フタル酸ジオクチルエステル(DOP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ブチルベンジルエステル(BBP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)などに代表される一般のフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジオクチルエステル(DOA)、セバシン酸ジオクチルエステル(DOS)、アゼライン酸ジオクチルエステル(DOZ)に代表される一般の脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリオクチルエステル系可塑剤、ポリプロピレンアジペート等に代表されるポリエステル系可塑剤などの高分子系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、塩素化パラフィンなどの一般的な可塑剤、トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0015】
本願発明の塩化ビニル系樹脂フィルムには、上記他の可塑剤以外にも、必要に応じて熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤等を配合することが可能である。
【0016】
塩化ビニル系樹脂に、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、必要に応じて添加される各種添加剤を添加した塩化ビニル系樹脂組成物は、カレンダー法、押出法、インフレーション法等の適宜の手段により、所望の厚さのフィルムに成形される。フィルムの厚さについては特に限定されないが、一般的に使用されるフィルムの厚さは0.06〜0.5mm程度である。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0018】
<実施例1〜5、比較例1〜6>
表1に記載の配合処方でカレンダー成形し、厚さ0.3mmの塩化ビニル系樹脂フィルムを作製した。
【0019】
【表1】

【0020】
表中;
塩化ビニル系樹脂:(重合度1000)
可塑剤1:
DOP(フタル酸ジオクチルエステル)
可塑剤2:
ポリエステル系可塑剤(アデカ社製、PN7650)
可塑剤3:
カルボン酸系可塑剤(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)
安定剤:
アデカ社製、LA−63
滑剤1:
アマイド系滑剤(ビスアマイド)
滑剤2:
オリゴマー系滑剤(アデカ製、LS−5)
【0021】
得られた塩化ビニル系樹脂フィルムについて、以下の評価を行なった。
【0022】
<ロール剥離性>
ロール表面からの剥離性を官能評価した。
〇・・・ロール取られがない
△・・・ロール取られが一部ある
×・・・ロール取られがある
【0023】
<ブロッキング性>
室温でフィルム同士を貼り合わせ、一日常温で保管後(促進前)および80℃×24時間×1KG荷重で促進したもの(促進後)各々をテンシロンにて300mm/minで180°剥離し、その際の平均荷重でブロッキング性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
<促進前>
〇・・・0.1N/25mm以下
△・・・0.1〜0.2N/25mm
×・・・0.2N/25mm以上
<促進後>
○・・・0.5N/25mm以下
△・・・0.5〜1.0N/25mm
×・・・1.0N/25mm以上
【0024】
<印刷適性>
TOKAベストキュア−UVインクとの密着性を評価した。3mm角の切れ目を入れて、テープ剥離をした。
〇・・・90%以上密着
△・・・60〜90%密着
×・・・密着が60%以下
【0025】
実施例1〜5は、表1からわかるように何れもロール剥離性及びブロッキング性に優れ、印刷適性にも優れることがわかる。そのため、印刷加工用、高周波ウェルダー加工用等の二次加工フィルムとして非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂と1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルとを含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項2】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルを30〜60重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項3】
印刷加工用、二次成形用に用いられるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。

【公開番号】特開2011−231226(P2011−231226A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103061(P2010−103061)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】