説明

塩化ビニル系樹脂組成物及び食品包装用ストレッチフィルム

【課題】
熱安定性に優れ、なおかつn−ヘプタン抽出量が極めて少ない塩化ビニル系樹脂組成物及び食品包装用ストレッチフィルムを提供する。
【解決手段】
ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、(A)アジピン酸エステル系可塑剤0.1〜10質量部、(B)アジピン酸ポリエステル系可塑剤1〜40質量部、(C)重量平均分子量1,000〜15万であるエポキシ基含有アクリル系化合物0.1〜20質量部からなる塩化ビニル系樹脂組成物及び、この塩化ビニル系樹脂組成物を製膜して得られるフィルムであって、フィルム厚みが5〜10μmで、昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量が50ppm以下であることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルム。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物及びそれを用いた食品包装用ストレッチフィルムに関し、エポキシ基含有アクリル系化合物を用いることで、エポキシ基が塩化ビニル樹脂から成形加工中に脱離する塩化水素(HCl)の捕捉、および不安定塩素の置換を行うことで熱安定性を向上させる効果があり、さらに得られた組成物を製膜することで昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量(以下、単にn−ヘプタン抽出量と呼ぶことがある)が極めて少ない塩化ビニル系樹脂組成物及び食品包装用ストレッチフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品の包装、特に精肉、鮮魚、青果等の生鮮食品の包装には、透明性、柔軟性およびヒートシール性に優れたストレッチフィルムが多数開発され、食品包装用フィルムとして広く使用されている。通常これらのフィルムは、ポリ塩化ビニル系樹脂にアジピン酸エステル系可塑剤とエポキシ化植物油とを可塑剤として使用したポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形したものが一般的である。
従来より、これらのフィルムは配合剤の衛生性、食品等への移行性が重要視されている。その衛生性では、米国のFDA規格(Food and Drug Administration)や日本のPL規格(塩化ビニル樹脂製包装容器包装等に関する自主規制基準)等に記載された添加剤より無毒化配合を確立し、また食品等への移行性については厚生省告示20号試験により蒸発残留物試験法として抽出試験を行い確認している。
このような背景において従来は種々のものがある。しかしながら、可塑剤の種類や量、フィルム厚みによってはn−ヘプタン抽出量が規制値の150ppmに近くになったり、或は上回ったりする傾向があった。n−ヘプタン抽出量を低下させるためにはフィルムを薄くする方法、可塑剤の量を減らす方法、抽出されにくい可塑剤に置き換える方法が上げられるが、塩化ビニル系樹脂からなる食品包装用ストレッチフィルムに用いられる可塑剤のうち、アジピン酸エステル系可塑剤は、n−ヘプタンに抽出されにくいアジピン酸ポリエステル系可塑剤に置き換えることができるが、熱安定剤兼可塑剤として用いられるエポキシ化植物油からなる可塑剤の置き換えが困難であり、n−ヘプタン抽出量を十分に低下させることが困難であった。
一方、エポキシ基含有アクリル系化合物を用いる例としては、以下の特許文献に示す例が挙げられる。しかし、エポキシ基含有アクリル系化合物を添加する目的は農業用フィルムの耐農薬性向上、べたつき改良、耐候性向上であり、本発明のように食品包装用ストレッチフィルムで用いられるエポキシ化植物油の添加量を0または極少量でも熱安定性に優れ、n−ヘプタン抽出量を削減することは考慮されていない。
【0003】
【特許文献1】特開2003−33116
【特許文献2】特開2002−226658
【特許文献3】特開2001−214018
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、熱安定性に優れるとともに、n−ヘプタン抽出性を少なくできる塩化ビニル系樹脂組成物及び食品包装用ストレッチフィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂に、エポキシ基を含有するアクリル系化合物を添加することで、エポキシ化植物油の添加量を0または極少量としても熱安定性に優れ、なおかつn−ヘプタン抽出量が少ないことを見出した。本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
1. ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、(A)アジピン酸エステル系可塑剤0.1〜10質量部、(B)アジピン酸ポリエステル系可塑剤1〜40質量部、(C)重量平均分子量1,000〜15万であるエポキシ基含有アクリル系化合物0.1〜20質量部からなる塩化ビニル系樹脂組成物
2. 1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を製膜して得られるフィルムであって、フィルム厚みが5〜10μmで、昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量が50ppm以下であることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱安定性に優れn−ヘプタン抽出量を少なくできる塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた食品包装用ストレッチフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の樹脂組成物において、ポリ塩化ビニル系樹脂としては、平均重合度700〜1,700程度の塩化ビニル単独重合体が好ましく用いられる。平均重合度が700未満では引張強度、伸び等の機械物性が劣り、平均重合度が1,700を越えると溶融粘度が上昇し、発熱による分解が顕著となり成形加工が困難となる。より好ましくは800〜1,500である。
本発明における塩化ビニル系樹脂とは、上記塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、塩化ビニル共重合体とする)、該塩化ビニル共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体等も用いることができる。これらの共重合体は、共重合体中の塩化ビニル以外の構成単位の含有量が多くなると機械的特性が低下するので、塩化ビニル単位を6.0質量%以上含有するものが好ましい。なお、上記各重合体は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等いずれの重合方法で得られたものでもよく、それぞれの単独又は2種以上の重合体の組み合わせで使用される。
【0008】
上記の塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、分子中に反応性二重結合を有するものであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニル等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせで用いられる。また、上記塩化ビニル共重合体以外の重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよく、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせで用いられる。
【0009】
本発明における(A)アジピン酸エステル系可塑剤とは、炭素数10以下のアルキル基を有する単独または2種以上の脂肪族アルコールとアジピン酸との混合アジピン酸エステル系可塑剤であって、単独アジピン酸エステル系可塑剤としては、ジイソノニルアジペート:DINA(炭素数9のもの)、ジオクチルアジペート:DOA(炭素数8のもの)等が挙げられ、混合アジピン酸エステル系可塑剤としてはC8,10アジペート(炭素数8、10のアルキル基を有するアルコールの混合エステル)、C7,8アジペート(同7、9のもの)、C6,8,10アジペート(同6、8、10のもの)等が挙げられ、1種単独または2種以上の組み合わせて用いても良い。本発明におけるアジピン酸エステル系可塑剤の添加量は0.1〜10質量部である。0.1重量部未満では十分な柔軟性付与効果が得られず、また成形加工時の溶融粘度が高くなりすぎて剪断発熱が多く熱劣化し易くなる。10質量部を越えると、成形後のフィルム厚みを10μm以下としてもn−ヘプタン抽出量を50ppm以下に下げることが困難となる。より好ましくは1〜5質量部である。
【0010】
本発明における(B)アジピン酸ポリエステル系可塑剤とは、アジピン酸と二価アルコールとの反応物であり、二価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール等があり、アジピン酸と1種類または2種類以上の二価アルコールとの反応生成物であり、具体的にはポリ(プロピレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(1、6−ヘキサンジオール、ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、アジピン酸)エステル等が挙げられる。この平均分子量は1000〜3000のものが効果的に使用されるが、これが1000未満ではn−ヘプタン抽出性が大きい。一方、平均分子量が3000を越えると押出成形性が大幅に低下するとともにストレッチフィルムの耐寒性が低下してしまう。物性の向上、押出成形性の点において、平均分子量2000前後のものが好適に使用される。本発明におけるアジピン酸ポリエステル系可塑剤の添加量は1〜40質量部である。1重量部未満では柔軟性付与効果が得られず、成形加工も困難となる。また40質量部を越えると10μm以下の厚みで成形したフィルムの腰(剛性)がなく、包装の仕上がりが悪化するだけでなく、不経済である。より好ましくは5〜30質量部である。
【0011】
本発明における(C)アクリル系重合体とは、重量平均分子量1,000〜15万で分子内にエポキシ基を50〜90質量%含有するアクリル系重合体である。重量平均分子量が5,000未満ではn−ヘプタン抽出量を抑制する効果が小さく、10万を越えると溶融粘度を低減させる効果が少なく、成形加工性が悪化する。より好ましくは5,000〜10万である。また、本発明におけるアクリル系重合体は、分子内にエポキシ基を50〜90質量%含有している。エポキシ基が50質量%未満では十分な熱安定性付与効果が得られず、90質量%を越えると成形加工中にアクリル系重合体同士または分子内で架橋してしまいブツやフィッシュアイ不良の原因となる。より好ましくは60〜80質量%である。これらのアクリル系重合体の添加量は0.1〜20質量部である。0.1質量部未満では十分な熱安定性向上効果が得られず、20質量部を越えるとアクリル臭気や架橋の問題が発生する。より好ましくは5〜18質量部である。
【0012】
このような特徴を有するアクリル系重合体としては、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートモノマーをポリマー分子中に1個以上含有しており、グリシジルメタクリレートと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。グリシジルメタクリレートと共重合可能なモノマーとしては、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、6−ヒドロキシペンチルアクリレート等のヒドロキシアクリル酸エステル;ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシペンチルメタクリレート等のヒドロキシメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアクリロアミド、N−ブトキシメタクリロアミド等が挙げられる。
【0013】
その他本発明において、熱安定剤は種々用いることができるが、エポキシ基による熱安定性を向上させるためにはCa−Zn系安定剤を用いることがより好ましい。Ca−Zn系安定剤とは、カルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物であり、その添加量は0.1〜2.0質量部である。0.1質量部未満では熱安定性の効果が発揮されず、2.0質量部を越えると亜鉛焼けと呼ばれる急激な分解が起こる。より好ましくは0.3〜1.8質量部である。
本発明に用いられるカルシウム、亜鉛と塩をつくる脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、目的に応じて2種以上組み合わせて用いることもできるが、成形加工時の滑性とプレートアウトのバランスからステアリン酸塩とするのが好ましい。また、カルシウムと亜鉛の比率は質量比で1:2〜1:3である。亜鉛の比率がカルシウムに対して2より少ないとカルシウム塩特有の赤味が出てしまい、亜鉛の比率がカルシウムに対して3よりも多いと、成形加工中に生成する塩化亜鉛が塩化ビニル系樹脂の分解触媒となり、「亜鉛焼け」と呼ばれる急激な黒化、分解が生じる。
【0014】
その他にも、防曇剤、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌・抗カビ剤、加工助剤、滑剤、着色剤、充填剤等、上記作用を損なわない範囲で、かつ塩ビ食品衛生協議会(JHPA)発行のポジティブリスト記載の添加剤を添加しても良い。
本発明における塩化ビニル系樹脂組成物は、上記の塩化ビニル系樹脂と、添加剤とをスーパーミキサー等の通常用いられる混合装置に投入し、加熱、撹拌、冷却する事により得られる。加熱温度や撹拌時間は、監視窓等から混合状態を見ながら決めれば良い。
本発明におけるストレッチフィルムの成形は、得られたコンパウンドを、単軸、2軸、または多軸押出機等を用いてTダイ法、またはインフレーション法にて製膜して得られる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
表1に示す配合比率で各配合剤を撹拌しながらスーパーミキサーに投入し、材料温度130℃まで昇温し、65℃まで冷却して取り出して、塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
使用した原料は下記の通りである。
【0016】
・塩化ビニル系樹脂:「TK−1000」(信越化学工業(株)社製)平均重合度1050の塩化ビニルホモポリマー
(A)アジピン酸エステル系可塑剤:ジイソノニルアジペート:「サンソサイザーDINA」(新日本理化(株)社製)
(B)アジピン酸ポリエステル系可塑剤:「BAA−15」(大八化学工業(株)社製) 重量平均分子量約2,500
(C−1)エポキシ基含有アクリル系化合物:「マープルーフG−1005S」(日本油脂(株)社製)エポキシ当量3,300、平均分子量100,000
(C−2)エポキシ基含有アクリル系化合物:「ブレンマーCP−15」(日本油脂(株)社製)エポキシ当量1,000、平均分子量11,400
【0017】
その他添加剤
・エポキシ化植物油:エポキシ化大豆油:「カポックスS−6」(花王(株)社製)
・Ca−Zn安定剤:「アデカスタブSP−76」(旭電化工業(株)社製)
・防曇剤:「リケマールXO−100」(理研ビタミン(株)社製)グリセリンモノオレート
【0018】
得られた樹脂組成物を、Tダイ(幅350mm、ギャップ0.5mm)を装着したφ40mmの単軸押出機(L/D=20)にて樹脂温度200℃で押出成形してフィルムを得た。得られたフィルムにつき以下の評価を行ない、その結果を表1に示した。
【0019】
[成形加工性]
・押出フィルムの外観を目視により観察し、以下の基準にて判断した。
○:着色、分解による炭化物等の発生が無くフィルムの採取ができた。
△:着色が見られるが、炭化物等の発生までは至らず、フィルムの採取ができた。
×:着色が見られ、炭化物が流出し、フィルムの採取が困難であった。
【0020】
[食品衛生試験]
・n−ヘプタン抽出試験:昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法で抽出量を測定し、n−ヘプタン抽出量(ppm)として示した。
○:50質量ppm以下
×:50質量ppm超
【0021】
[包装適性]
・自動包装機適性:PP製のトレーにシシャモ8尾を盛りつけ、フジキカイ社製自動包装機「A−18K」により包装速度40パック/分で自動包装し、包装適性を下記の基準で評価した。
○:しわや破れがなく包装できたもの
△:やや滑り不足、シワ等見られるが包装できたもの
×:しわ、破れまたは張り不足で包装不適なもの

【表1】

【0022】
表1から、実施例1〜4は外観(成形加工性)、n−ヘプタン抽出性、包装適性に優れることが分かる。
これに対して比較例1は、エポキシ基含有アクリル系化合物の添加量が少なく、外観が悪化する。比較例2は、エポキシ基含有アクリル系化合物の添加量が多く、柔軟性が損なわれることから包装適性が悪化する。比較例3は、エポキシ基含有アクリル系化合物に替えてエポキシ化大豆油を用いると外観や包装適性は優れるものの、n−ヘプタン抽出量が多いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
塩化ビニル系樹脂組成物及びそれを用いた食品包装用ストレッチフィルムに関し、特に熱安定性に優れ、なおかつ塩化ビニル系樹脂組成物を製膜してなるフィルムが、昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量が極めて少ない食品包装用ストレッチフィルムとしての利用性が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、(A)アジピン酸エステル系可塑剤0.1〜10質量部、(B)アジピン酸ポリエステル系可塑剤1〜40質量部、(C)重量平均分子量1,000〜15万であるエポキシ基含有アクリル系化合物0.1〜20質量部からなる塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を製膜して得られるフィルムであって、フィルム厚みが5〜10μmで、昭和57年厚生省告示20号に定める蒸発残留物試験法にて測定したn−ヘプタン抽出量が50ppm以下であることを特徴とする食品包装用ストレッチフィルム。

【公開番号】特開2008−138123(P2008−138123A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327291(P2006−327291)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】