説明

塩化水素の測定方法及び測定装置

【課題】廃棄物処理施設の焼却炉や溶融炉から排出される排ガス中に含まれる塩化水素を連続的に測定する。
【解決手段】測定装置Aは、採取部1aが排ガスが流れる通路Bに開口し該通路を流れる排ガスを導通させる導通路1と、導通路1の供給部1bが開口し排ガスの水溶液が滞留すると共に該水溶液の水位を保持し得るように構成された容器2と、容器2に接続された吸引部材3と、容器2に滞留した水溶液に於ける水素イオンのイオン指数(pH)を測定すると共に測定結果を出力する測定部材4と、排ガスを吸収して水溶液を形成する吸収液の供給装置16を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理施設等の焼却炉から連続的に排出される排ガスに含まれる塩化水素を連続的に測定することを実現した測定方法と、測定装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂等を含む廃棄物を焼却する焼却炉では、発生する排ガス中に塩化水素が含まれる。この場合、排ガスをそのまま大気に放出することができないため、脱塩装置を通過させて塩化水素を除去することが行われる。また、大気に放出する以前に排ガス中に含まれる塩化水素を測定して適切な処理をとることが必要となる。
【0003】
塩化水素を測定する方法として、JIS K 0107では、イオンクロマトグラフ法、硝酸銀滴定法、イオン電極法、イオン電極連続分析法が夫々規定されており、付属書3にはチオシアン酸水銀(II)吸光光度法が規定されている。これらは何れも塩素イオンを測定して塩化水素濃度を算出するものである。
【0004】
また、例えば特許文献1に開示された技術は、資料中の有機塩素化合物を測定する方法に関するものであり、抽出溶媒によって資料中の有機塩素化合物を抽出して無機化し、更に塩化水素に変換して水素イオン濃度測定系に導入することにより、水素イオン濃度の測定に基づいて有機塩素化合物中の塩素量を算出するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2004−117146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
JIS規格に規定された各方法では塩化カルシウムや塩化ナトリウムの蒸気や微粒子が捕集されると、これらの塩素イオンを測定した合計が塩化水素として算出されることになり、塩化カルシウムや塩化ナトリウムの濃度が高いと、塩化水素の濃度を正確に測定ができないという問題がある。
【0007】
特に、消石灰を使用し、脱塩を行ったバグフィルターから排出された排ガスでは、塩化カルシウムや塩化ナトリウムの濃度が相対的に高くなるため、これらが塩化水素の測定に対する妨害成分となり、正確な測定が困難になるという問題がある。また炭酸カルシウムを使用して800℃以上の高温で脱塩を行った直後の排ガスには高濃度の塩化カルシウムの蒸気が存在し、この場合も塩化水素の正確な測定が略不可能となるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1の技術は、資料中の有機塩素化合物を測定するものであり、焼却炉から排出される排ガスを対象としたものではなく、この技術を、排ガス中に含まれる塩化水素を連続的に測定するように転用することはできない。
【0009】
上記何れの技術であっても、塩化水素以外に塩化カルシウムや塩化ナトリウムを含む排ガスを抽出して塩化水素の濃度を正確に測定し得るものではなく、例えば廃棄物処理施設のように、塩化水素を含んだ排ガスが連続的に排出される設備、或いは排ガス中の塩化水素を除去する脱塩装置を有する設備に於ける稼働中の塩化水素濃度を正確に測定することはできないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、廃棄物処理施設の焼却炉から排出される排ガスであって、塩化カルシウムや塩化ナトリウムも含む排ガス中に含まれる塩化水素を正確に測定することができる方法と、この測定方法を実現する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る塩化水素の測定方法は、焼却炉から排出される排ガス中の塩化水素の濃度を測定する測定方法であって、吸収液を供給して流れている排ガスの一部を連続的に吸引すると共に吸引した排ガスの水溶液を形成し、該水溶液に於ける水素イオンのイオン指数を連続的に測定して前記排ガスに於ける塩化水素の濃度を測定することを特徴とするものである。
【0012】
また本発明に係る塩化水素の測定装置は、焼却炉から排出される排ガス中の塩化水素の濃度を測定するための測定装置であって、一方の端部が排ガスが流れる通路に開口し該通路を流れる排ガスを導通させる導通路と、前記導通路の他方の端部が開口し下方に導通路を介して導通された排ガスの水溶液が滞留すると共に該水溶液の水位を保持し得るように構成された容器と、前記容器に接続された吸引部材と、前記容器に滞留した水溶液に於ける水素イオンのイオン指数を測定すると共に測定結果を出力する測定部材と、を有して構成されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る排ガス中の塩化水素の測定方法では、焼却炉から連続的に排出される排ガスに含まれる塩化水素を正確に測定することができる。即ち、流れているガスの一部を連続的に吸引して水溶液を形成し、この水溶液に於ける水素イオンのイオン指数(ペーハー、以下「pH」という)を測定することで、排ガス中に塩化カルシウムや塩化ナトリウムも含む排ガスに於ける塩化水素の濃度を正確に測定することができる。
【0014】
また本発明に係る塩化水素の測定装置では、通路を流れている排ガスの一部を導通路を介して吸引して水溶液が滞留した容器に滞留させ、測定部材によって水溶液のpHを測定すると共に測定結果を出力することで、排ガスの塩化水素を測定することができる。特に、容器が水溶液の水位を保持し得るように構成されているため、排ガスの吸引に伴って水溶液の量が増えた場合でも、余剰の水溶液を容器から排出することで、新たに滞留した水溶液のpHを測定することができる。
【0015】
従って、通路を流れている排ガスを連続的に吸引して連続的な塩化水素の測定を実現すると共に測定結果を出力することができ、焼却炉の運転の管理や、焼却炉に連続して設置される機器類の管理を適切に行うことができる。
【0016】
特に本発明では、水溶液に於ける水素イオン濃度を測定するため、排ガス中に含まれる塩化カルシウムや塩化ナトリウムの塩素イオンによる妨害を受けることなく、連続して安定した状態で塩化水素の測定を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は,廃棄物処理施設等の焼却炉等から排出される排ガス中に含まれる塩化水素を連続的に測定するための測定方法及び測定装置に関するものである。即ち、排ガスを吸収液に吸収させることによって水溶液とし、この水溶液に生じた水素イオンの濃度を測定し、更に、測定した水素イオン濃度から排ガス中の塩化水素の濃度を算出するものである。このため、排ガス中に存在する塩化カルシウムや塩化ナトリウムの蒸気や微粒子が吸収液に吸収されて塩素イオンを生じても妨害要素となることがなく、正確な塩化水素の測定を実現することが可能である。
【0018】
本発明に於いて、焼却炉とは必ずしも廃棄物を燃焼させて焼却灰にする炉に限定するものではなく、廃棄物を高温化で溶融させる溶融炉も含むものである。また焼却炉から排出される排ガスとは、焼却炉から排出された直後の排ガスにのみ限定するものではなく、焼却炉の直後の排ガスや、焼却炉の下流側に配置された例えば炭酸カルシウムによる塩化水素除去装置の前後、消石灰による脱塩装置(バグフィルター)の下流側等の装置類から排出された排ガスを含む。
【0019】
即ち、本発明に係る測定装置は、廃棄物処理施設を構成する焼却炉から大気放出部に至る通路の何れの位置に設置しても、設置位置を流れる排ガスの塩化水素濃度を連続的に且つ正確に測定することが可能である。
【0020】
本発明は、塩化水素以外の塩素イオンを生じさせる物質が存在する可能性の高い部位を流れる排ガスの測定に適用して有利である。このため、特に、発明に係る測定装置は、炭酸カルシウムによる塩化水素除去装置の下流側、或いは消石灰による脱塩装置(バグフィルター)の下流側に設置するのが有利である。
【0021】
先ず、本発明に係る測定装置を好適に適用することが可能な廃棄物処理施設の例について簡単に説明する。廃棄物処理施設は、廃棄物を焼却するための焼却炉あるいは溶融するための溶融炉及びこれらの炉から排出された排ガスを再燃焼させる二次燃焼室を有する炉設備と、炉設備から排出された排ガスを200℃以下に急冷してダイオキシン類の再合成を抑制するための冷却塔と、冷却塔から排出された排ガスに含まれる塩化水素ガスを除去する塩化水素ガス除去装置と、塩化水素ガス除去装置から排出される排ガス中に含まれる煤塵を捕集するための集塵装置と、炉設備から集塵装置に至る系の内部を負圧にして排ガスを集塵装置の方向に吸引する誘引ブロワと、を有して構成されるのが一般的である。
【0022】
上記の如く構成された廃棄物処理施設では、塩化ビニル系樹脂を焼却し、或いは溶融させたときに排出される塩化水素を含んだ排ガスを、塩化水素を除去した状態で大気中に放出することが可能である。
【0023】
そして本発明に係る測定装置は、上記廃棄物処理施設に於ける焼却炉或いは溶融炉と二次燃焼室との間、炉設備と冷却塔との間、冷却塔と塩化水素ガス除去装置との間、塩化水素ガス除去装置と集塵装置との間、集塵装置の下流側、に設けられた通路に配置され、該通路を流れる排ガスに含まれる塩化水素の濃度を測定することが可能である。特に、塩化水素除去装置の下流側に配置された場合には、大気に放出される排ガスの最終的な塩化水素濃度を測定することが可能となる。
【0024】
尚、上記した廃棄物処理施設の装置構成は単なる例であり、装置の構成順位はこの例に限定されるものではなく、例えば塩化水素ガス除去装置と冷却塔の配置が逆になるような設備や、他の機能を持った装置類が配置されるような設備にも適用することが可能である。
【実施例1】
【0025】
先ず、本発明の第1実施例に係る測定装置の構成について説明し、合わせて測定方法について説明する。図1は第1実施例に係る測定装置Aの構成を説明する図である。
【0026】
測定装置Aは、排ガスが流通する通路Bに一端が開口し該通路Bを流れる排ガスを導く導通路1と、導通路1の他端が開口し排ガスの水溶液が滞留すると共に水溶液の水位を保持し得るように構成された容器2と、容器2に接続され該容器2及び導通路1を負圧にして排ガスを吸引し得るようにした吸引部材3と、容器2に滞留した排ガスの水溶液のpHを測定すると共に測定結果を出力する測定部材4と、を有して構成されている。
【0027】
導通路1は、略直線状の直管10と、該直管10と連続した螺旋状の螺旋管11と、直管10と螺旋管11との接続部に配置された接続管12と、によって構成されている。そして、直管10の一方側の端部が通路Bに侵入して採取部1aを構成し、螺旋管11他方側の端部が容器2に開口して供給部1bを構成している。
【0028】
導通路1の採取部1aは、通路Bに気密性を保持して取り付けたブラケット13aに設けたフィルター13bに開口しており、この構成によって通路Bを流通する固形物の吸引を防止することが可能である。フィルター13bの構成は特に限定するものではないが、本実施例ではシリカを原料とするセラミックスフィルターを用いている。
【0029】
導通路1を構成する直管10の周囲にはリボンヒーター14が設けられており、該直管10に導かれた排ガスが温度の降下に伴って液化することのないように構成されている。このため、接続管12に温度計15が設けられており、直管10を流通した排ガスの温度を測定し得るように構成されている。従って、リボンヒーター14を常に発熱させておく必要はなく、温度計15によって排ガスの温度を測定しつつ、必要に応じてリボンヒーター14の作動を制御し得るように構成することが可能である。
【0030】
また接続管12には、排ガスを吸収して該排ガスの水溶液を形成するための吸収液供給装置16が接続されている。この吸収液供給装置16は、吸収液となる蒸留水又はイオン交換水(本実施例では蒸留水)を貯蔵したタンク16aと、タンク16aに接続された定量ポンプ16bとによって構成されている。
【0031】
上記吸収液供給装置16では、定量ポンプ16bを作動させることによって、タンク16aに貯蔵された吸収液を一定の流量で接続管12から導通路1に供給し、該導通路1の内部で吸収液と排ガスとを接触させつつ該螺旋管12内を流通させることで、充分な接触時間を確保して排ガスの水溶液を形成することが可能である。従って、形成された排ガスの水溶液を供給部1bから容器2に供給することが可能である。
【0032】
定量ポンプ16bの吐出量は導通路1の内部を流通する排ガスの流量との関係で設定されるものであり、一義的に設定し得るものではない。本実施例の定量ポンプ16bは、毎分10〜100ミリリットル(ml/min)程度の能力を有している。
【0033】
容器2は、滞留する排ガスの水溶液を保持すると共に測定部材4のpHセンサー41が配置された容器本体20と、下端部21aが開放され上端部21bに導通路1の供給部1b及び吸引部材3が接続された吸引容器21と、を有して構成されている。
【0034】
容器本体20の側面であって、底面20aから所定の高さ位置に、滞留した水溶液の水位を保持するための排出口22が設けられ、上面の所定位置に測定部材4のpHセンサー41を保持する保持部20bが設けられている。容器本体20の平面形状に対する保持部20bの配置位置は特に限定するものではないが、吸引容器21と排出口22との間にあることが好ましい。
【0035】
吸引容器21は、開口した下端部21aが容器本体20に設けた排出口22のレベルよりも底面20aに接近した位置にあるように配置されている。また吸引容器21の上端部21b側の側面には吸引部材3の吸引通路31が接続されている。
【0036】
更に、吸引容器21の上端面には導通路1の供給部1bが接続され、端部が吸引容器21の内部に位置している。本実施例では、排ガスの水溶液は導通路1の螺旋管11で形成されるため、供給部1bの吸引容器21に於ける開口位置は限定するものではない。しかし、供給部1bの開口位置が吸引部材3の吸引通路31の開口位置より上部にあると、滴下する水溶液が吸引通路31を通して作用する負圧の影響を受ける虞があり、また下端部21aの近傍にあって水溶液に浸漬されると、導通路1の内部に負圧を作用させることが不可能となる。従って、供給部1bは、吸引通路31の接続部よりも下方で、且つ水溶液に浸漬される虞のない高さまで突出させておくことが好ましい。
【0037】
上記容器2では、導通路1の供給部1bから供給された排ガスの水溶液は容器本体20に滞留し、水溶液の増加に伴って水位が上昇する。容器本体20の水位が上昇して吸引容器21の下端部21aが浸漬されると、該吸引容器21の水位は吸引部材3の負圧の値に相当する分だけ水位が上昇し、吸引容器21の内部は水封された空間となる。更に、排ガスの水溶液が供給されることによって、容器本体20の水位が上昇し、排出口22のレベルに到達すると、該排出口22からオーバーフローして排出される。
【0038】
容器2を構成する容器本体20及び吸引容器21の容量は特に限定するものではない。しかし、通路Bを流れる排ガスに含まれる塩化水素の濃度を敏感に測定するような場合には、可及的に小さい容量であることが好ましい。例えば、本実施例では、容器本体20の容量は約50mlであり、吸引容器21の容量は約30mlである。
【0039】
吸引部材3は、容器2の吸引容器21に接続された吸引通路31と、吸引通路31に負圧を作用させる真空ポンプ32と、吸引通路31の圧力を測定する流量計33と、を有して構成されている。
【0040】
真空ポンプ32は、吸引通路31を介して容器2の吸引容器21に負圧を作用させるものであり、この機能を有するものであれば構造を限定するものではない。本実施例では、100ml/min〜1000ml/min程度の吸引能力を持ったポンプを利用している。
【0041】
流量計33は、真空ポンプ32方向を下流側とし、吸引容器21方向を上流側として流通方向が設定されており、吸引容器21から真空ポンプ32方向への流量を測定することが可能である。
【0042】
測定部材4は、容器2の容器本体20に配置されたpHセンサー41と、pHセンサー41に接続されたpH計42と、を有して構成されている。本実施例に於いて、pHセンサー41は、石英ガラス管からなるガラス電極を有しており、イオン電極に比較して安価な電極として構成されている。
【0043】
pHセンサー41を容器2の容器本体20に取り付ける場合、該pHセンサー41の先端部41aにあるプローブとなる部分が充分に水溶液に浸漬される位置であることが必要である。即ち、pHセンサー42は、先端部41aが容器本体20に設けた排出口22よりも底面20aに接近した位置となるように保持部40bに保持されている。
【0044】
pH計42は、pHセンサー41で感知した電流から水溶液のpHを算出して算出値を出力する機能を有するものであり、従来より一般的に利用されているpH計を利用することが可能である。
【0045】
次に、上記の如く構成された測定装置Aを利用して通路Bを流れる排ガスに含まれる塩化水素濃度を測定する方法について説明する。尚、容器本体20には、既に、排ガスの水溶液が排出口22のレベルまで滞留しているものとする。
【0046】
先ず、吸引部材3の真空ポンプ32を作動させると共に流量計33によって流量を確認し、同時に吸収液供給装置16の定量ポンプ16bを作動させ、必要に応じてリボンヒーター14を作動させる。真空ポンプ32の作動に伴って、容器2の吸引容器21の内部が吸引されて負圧が作用し、この負圧が導通路1にも作用して採取部1aでは、通路Bを流れる排ガスが採取される。採取された排ガスは、直管10を通って接続管12から螺旋管11に導通する。
【0047】
また定量ポンプ16bの動作に伴って吸収液が導通路1の接続管12を介して螺旋管11に供給され、採取された排ガスと接触して排ガスの水溶液を形成する。形成された水溶液は、導通路1の供給部1bから吸引容器21に流下し、該吸引容器21の下端部21aを経て容器本体20に滞留する。排ガスが吸収液に吸収されて水溶液となることによって、排ガスに含まれた塩化水素によって塩素イオンと水素イオンとが生じる。
【0048】
容器本体20に滞留した水溶液はpHセンサー41によって水素イオン濃度が連続的に感知され、存在する水素イオン濃度に応じた電流がpH計42に伝達される。そしてpH計42では、伝えられた電流値から水素イオン濃度を測定し、更に、測定された水素イオン濃度の値から、排ガスに含まれた塩化水素の濃度を算出する。
【0049】
例えば、測定されたpH値から塩化水素の濃度[ppm]を算出する場合、Xを[ppm]とし、Wを滴定水量(定量ポンプ16bによって供給された吸収液の流量)とし[L]、Qを測定ガス量(吸引通路31の流量)[L]とした場合、
X=(22.4×10-pH ×W)/(Q×10-3
の式によって算出することが可能である。
【0050】
算出された排ガスに含まれる塩化水素の濃度の情報はpH計42の記憶部に記憶され、且つ図示しない出力部に出力される。この出力部の構成は特に限定するものではなく、塩化水素の濃度が異常に上昇したような場合に周囲に警戒させるためのサイレンや回転灯等の警報手段で良く、またディスプレイやプリンター等の表示手段であっても良く、更に、廃棄物処理設備全体の作動を制御する制御部に伝達するように構成しても良い。
【0051】
導通路1から吸引容器21に対し連続的に水溶液が供給され、容器本体20に滞留して水位が上昇する。水位の上昇に伴って、水溶液は容器本体20に設けた排出口22から排出され、容器本体20の内部は一定の水位に保持される。
【0052】
上記測定装置Aでは、通路Bを流れる排ガスに含まれる塩化水素を連続的に測定することが可能であり、特に、排ガスの水溶液を形成することによって生じる水素イオンを測定対象としているため、排ガス中に塩化カルシウムや塩化ナトリウムの蒸気、或いは微粒子濃度が高いような場合でも安定して正確な測定を実現することが可能である。
【0053】
また水溶液中の水素イオンを測定する場合、ガラス電極を利用することが可能であり、この場合、安価な電極とすることが可能である。
【実施例2】
【0054】
次に、第2実施例に係る測定装置Aの構成について図2により説明する。尚、図に於いて、前述の第1実施例と同一の部分及び同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する(以下同じ)。
【0055】
本実施例に係る測定装置Aは、前述の第1実施例に於ける吸収液供給装置16が容器2の容器本体20に接続されている点が異なり、他の構成は同一である。このため、排ガスの水溶液は、導通路1ではなく、容器本体20内で形成される。
【0056】
従って、導通路1は、通路Bに開口する直管10と、一端が直管10に接続され且つ温度計15を取り付けると共に他端が容器2の吸引容器21に開口して供給部1bを形成することが可能なL字型の屈折管17と、によって構成されている。
【0057】
上記の如く、導通路1に導かれた排ガスは、排ガスのままの状態で吸引容器21に供給される。このため、導通路1の供給部1bは吸引容器21の下端部21aの近傍にまで達しており、作動中に該供給部1bが容器本体20に滞留し、且つ吸引容器21に作用する負圧に伴って上昇した水面に浸漬されるように構成されている。この場合、通路Bの内圧は、フィルター13bの抵抗、導通路1の流路抵抗、吸引容器21に於ける水圧、を含む抵抗よりも大きい圧力であることが必要である。
【0058】
このように構成された本実施例であっても、前述の第1実施例と同様に、通路Bを流れる排ガスを吸引容器21に導いて吸収液に吸収して水溶液とし、この水溶液の水素イオンの濃度を連続的に測定することが可能である。
【実施例3】
【0059】
次に、第3実施例に係る測定装置Aの構成について図3により説明する。本実施例は、前述の第1実施例と比較して容器2の構成が異なるものの、他の構成は同じである。
【0060】
容器2は、水位を保持する排水口22を設けた容器本体20と、下端部21bが容器本体20に開口し上端部21bに吸引通路31が接続された吸引容器21と、全体が閉鎖され下端部23a側に導通路1の供給口1bが接続されると共に上端部23bからpHセンサー41が挿入された測定容器23と、吸引容器21と測定容器23を連通する連通管24と、を有して構成されている。
【0061】
尚、連通管24は測定容器23の水位を設定するものであり、測定容器23に滞留した水溶液の水位が連通管24を越えたとき、該連通管24を通って吸引容器21、容器本体20に流通する。このため、pHセンサー41の先端部41aは、連通管24よりも底面23bに接近した位置に配置される。
【0062】
本実施例では、導通路1で形成された排ガスの水溶液は測定容器23に一時的に滞留してpHセンサー41によって水素イオン濃度が連続的に測定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の排ガス中の塩化水素の測定方法及び測定装置は、排ガスに含まれた塩化水素を吸収液に吸収して水溶液とすることで水素イオンを生じさせ、この水素イオン濃度を測定すると共に、水素イオンの測定値から排ガス中の塩化水素濃度を算出するので、JIS規格に規定された方法と比較して正確に、且つ連続して排ガス中の塩化水素を測定することが可能であり、塩化水素を含む排ガスを排出する焼却炉や溶融炉を設けた廃棄物処理施設に適用して有利である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施例に係る測定装置Aの構成を説明する図である。
【図2】第2実施例に係る測定装置の構成を説明する図である。
【図3】第3実施例に係る測定装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
A 測定装置
B 通路
1 導通路
1a 採取口
1b 供給口
2 容器
3 吸引部材
4 測定部材
10 直管
11 螺旋管
12 接続管
13a ブラケット
13b フィルター
14 リボンヒーター
15 温度計
16 吸収液供給装置
16a タンク
16b 定量ポンプ
17 屈折管
20 容器本体
20a 底面
20b 保持部
21 吸引容器
21a 下端部
21b 上端部
22 排出口
23 測定容器
23a 下端部
23b 上端部
24 連通管
31 吸引通路
32 真空ポンプ
33 流量計
41 pHセンサー
42 pH計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉から排出される排ガス中の塩化水素の濃度を測定する測定方法であって、吸収液を供給して流れている排ガスの一部を連続的に吸引すると共に吸引した排ガスの水溶液を形成し、該水溶液に於ける水素イオンのイオン指数を連続的に測定して前記排ガスに於ける塩化水素の濃度を測定することを特徴とする塩化水素の測定方法。
【請求項2】
焼却炉から排出される排ガス中の塩化水素の濃度を測定するための測定装置であって、一方の端部が排ガスが流れる通路に開口し該通路を流れる排ガスを導通させる導通路と、前記導通路の他方の端部が開口し下方に導通路を介して導通された排ガスの水溶液が滞留すると共に該水溶液の水位を保持し得るように構成された容器と、前記容器に接続された吸引部材と、前記容器に滞留した水溶液に於ける水素イオンのイオン指数を測定すると共に測定結果を出力する測定部材と、を有することを特徴とする塩化水素の測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−234541(P2006−234541A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48498(P2005−48498)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000185374)小池酸素工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】