説明

塩味付与組成物および塩味味質改善方法

【課題】
異味や雑味がなく、飲食品の風味を損なうこともなく、飲食品にスッキリとした塩味を付与することができる塩味付与組成物、および、飲食品への塩味味質改善方法を提供する。
【解決手段】
メントールを含む乳化香料組成物を、本来よりも量を低減させた食塩や、塩化カリウム、乳清ミネラル、グルコン酸ナトリウム及びグルコン酸カリウムなどの食塩代替物と併せて飲食品へ配合する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品の風味を損なうことなく、食塩量の少ない若しくは食塩を含まない飲食品に塩味を付与することができる塩味付与組成物に関する。また本発明は、飲食品の塩味を向上する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム製品)は、食品に塩味を付与する調味料として、または食品の保存(塩漬けなど)の目的で使用されている。また一方で食塩は、多くの生物の体にとって体内浸透圧の維持や体内水分量の調整を担っているように必要不可欠な物質でもある。しかしながら、過剰な食塩の摂取は、血圧上昇を招いてしまい、高血圧や腎臓病、心臓病など生活習慣病の遠因となると考えられている。
【0003】
現代人、とりわけ生活習慣病に悩む人は、食塩の摂取を抑制したいと考えており、食塩の量を低減した飲食品が望まれている。しかしながら、食塩の量を減らすと、塩味が弱くなってしまい、飲食品が味気ないものになってしまう。そこで、食塩量を低減しているにも関わらず、塩味が通常の飲食品と遜色なく感じられるような塩味味質改善方法が求められている。
【0004】
これまでに従来技術として、食塩の代わりに塩味を呈する食塩代替物が検討されてきた。代表的な食塩代替物として、塩化カリウムがよく知られている。しかしながら塩化カリウムは、食塩のようなスッキリとした塩味を呈さず、独特の苦味・渋味を含む塩味を呈しているため、食塩の代替物として充分といえない。このような塩化カリウムの独特の異味を改善し食塩代替物とする技術として、塩化カリウムとγ−ポリグルタミン酸を所定濃度添加した混合物により塩味を増強する方法(特許文献1)、塩化カリウムに、グルコン酸ナトリウム及び又はグルコン酸カリウムと、乳清ミネラルを特定濃度配合することで塩化カリウムのえぐみ、苦味をマスキングする方法(特許文献2)などが知られている。また、乳清ミネラルも、特許文献3〜5にあるように食塩代替物として使用する方法が知られているが、塩味がかなり弱いという弱点があり、食塩の代替物として充分といえない。
【0005】
また、塩味を増強する化合物を添加して食塩量を低減する技術も検討されてきた。このような塩味を増強する化合物として、タン白加水分解タン白源を添加することで通常より食塩味を増強することができる方法(特許文献6)、スピラントールとアリウム属植物抽出物を含有することで塩味を増強する方法(特許文献7)、S−またはO−カルボキシアルキル化アミノ酸およびペプチド化合物を添加することで塩の塩味を増強できること(特許文献8)などが知られている。
【0006】
このように、食塩の量を抑えていながら充分な塩味を飲食品に付与する目的として種々の食塩代替物や塩味味質改善方法が検討されてきたが、いずれの代替物や方法も、塩味が不足していたり、特に味の面で雑味が生じてしまったりと、これらを使用した食品のおいしさが損なわれてしまうため、食塩の置き換えとして不十分であり、依然消費者の要求する水準を満足できるまでに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第07/108558号パンフレット
【特許文献2】特開2008−289426号公報
【特許文献3】特開昭63−141561号公報
【特許文献4】特開昭63−287460号公報
【特許文献5】特開平01−191659号公報
【特許文献6】特開平07−289198号公報
【特許文献7】特開2006−296357号公報
【特許文献8】特表2009−512425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、異味や雑味がなく、飲食品の風味を損なうこともなく、飲食品にスッキリとした塩味を付与することができる塩味付与組成物を提供すること、および、飲食品への塩味向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、メントールを含む乳化香料組成物を、本来よりも量を低減させた食塩や、塩化カリウム、乳清ミネラル、グルコン酸ナトリウム及びグルコン酸カリウムなどの食塩代替物と併せて飲食品へ配合することによって、異味や雑味を感じることなく、飲食品にスッキリとした塩味感が付与または向上されることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の態様を有する塩味付与組成物および塩味味質改善方法に関する。
項1.メントールを含む乳化香料組成物を含有することを特徴とする塩味付与組成物。
項2.食塩1質量部に対し、メントールを含む乳化香料組成物0.0001〜0.3質量部を含有することを特徴とする、項1に記載の塩味付与組成物。
項3.さらに食塩代替物を含有することを特徴とする、項1または2に記載の塩味付与組成物。
項3−1.食塩代替物が、塩化カリウム、乳清ミネラル、グルコン酸ナトリウム及びグルコン酸カリウムからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、項3に記載の塩味付与組成物。
項3−2.食塩代替物が、塩化カリウム及び/または乳清ミネラルであることを特徴とする、項3に記載の塩味付与組成物。
項4.メントール含有乳化香料組成物中の乳化粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、項1乃至3の何れかに記載の塩味付与組成物。
項5.メントール含有乳化香料組成物に用いる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ガティガムおよびレシチンからなる群から選択される少なくとも1種である、項1乃至4の何れかに記載の塩味付与組成物。
項6.メントールを含む乳化香料組成物を添加することを特徴とする塩味味質改善方法。
項7.メントール含有乳化香料組成物中の乳化粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、項6に記載の塩味味質改善方法。
項8.メントール含有乳化香料組成物に用いる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ガティガムおよびレシチンからなる群から選択される少なくとも1種である、項6または7に記載の塩味味質改善方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塩味味質改善方法によれば、余計な異味や雑味を付与することなく、さらに飲食品の風味をそこなうこともなく、飲食品に塩味を付与または向上することができる。また本発明において、塩化カリウムや乳清ミネラルなどの食塩代替物にメントールを含む乳化香料組成物を併用した場合、これら食塩代替物の塩味が向上し、さらには、食塩代替物が有する塩味以外の独特の苦味や渋味がマスキングされて、結果、食塩代替物の塩味味質が改善し、飲食品にスッキリとした塩味が付与される。このように本発明を飲食品に適用することで、食塩の使用を抑えた減塩飲食品を、おいしさが損なわれることなく提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、メントールを含む乳化香料組成物を添加することを特徴としている。
【0013】
本発明に使用されるメントールは、l−メントール、d−メントール、その他の異性体及び誘導体の何れでもよく、これらを任意の割合で複数組み合わせても良いが、l−メントールが好ましい。本発明に使用されるメントール含有乳化香料組成物中のメントールの含有量は、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0014】
本発明に使用されるメントール含有乳化香料組成物に使用する油としては、中鎖脂肪酸トリグリセライド、綿実油、コメ油、サフラワー油、ヒマワリ油、ゴマ油などの植物油脂、ラード、ファット、魚油などが挙げられるが、臭いなどの点から中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましい。
【0015】
本発明に使用されるメントール含有乳化香料組成物に用いられる乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、キラヤ抽出物、サポニン、ポリソルベート、アラビアガム、ガティガムなどが挙げられるが、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ガティガム、及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらの乳化剤の添加量は、メントール含有乳化香料組成物の1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%である。
【0016】
本発明に使用されるメントール含有乳化香料組成物には、本発明の効果を妨げない範囲において、糖アルコール(例えば、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、ラクチトールなど)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、天然精油(例えば、薄荷白油、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、アニスオイルなど)、香料成分(例えば、メントン、メンチルアセテート、カンファー、ボルネオールなど)、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB)などの比重調整剤、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、色素、ビタミン類、増粘多糖類などを含有してもよい。
【0017】
本発明に使用されるメントール含有乳化香料組成物は、前述のグリセリンなどに、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ガティガムなど)を溶解し、水やエタノールなどを加えて水相溶液とし、一方でメントール、中鎖脂肪酸トリグリセライド、乳化剤(レシチンなど)などを溶解して油相溶液とし、両者を撹拌混合して、高圧ホモジナイザーなどを用いて、従来から公知の方法で乳化して製造することができる。さらに、得られた乳化物を、噴霧乾燥などの技術を用いて粉末化して使用しても良い。
【0018】
本発明に使用されるメントール含有乳化香料組成物中の乳化粒子の平均粒子径の上限は、1.0μm以下であり、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。乳化粒子の平均粒子が1.0μmを超えるとメントール含有乳化香料組成物の安定性が悪くなるため、好ましくない。
【0019】
このようにして製造されたメントール含有乳化香料組成物は、食塩、または、食塩代替物と併用することで、食塩の量を低減させた塩味付与組成物として使用することができる。また、本発明の塩味付与組成物は、本発明の効果を妨げない範囲において、前述した物質に加え、その他の塩味向上効果が知られている物質、食塩代替物が呈する雑味をマスキングする効果の知られた物質を別途添加することができる。さらに、本発明の塩味付与組成物は、デキストリンなどの賦形剤により希釈して造粒することで、例えば食卓塩として粒状化された賦形剤を含む塩味付与組成物を用いる際、通常の食塩からなる食卓塩と同じ量を使用して同じ塩味を感じていながら、食塩の摂取量を少なくすることができる。
【0020】
本発明における、食塩代替物とは、食塩(塩化ナトリウム)を代替する目的で使用することが知られているものであれば、特に限定されず使用することができ、一例として、塩化カリウム、乳清ミネラル、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、L−グルタミン酸アンモニウムなどが挙げられ、これらの内の1種または2種以上を使用することができる。これらの内、汎用性及び塩味の強さ、安全性などから総合的に判断すると、塩化カリウム、乳清ミネラル、グルコン酸ナトリウム及びグルコン酸カリウムのうちの1種以上が好ましく、塩化カリウム及び/または乳清ミネラルがさらに好ましい。
【0021】
乳清ミネラルは、一般的に、塩味が食塩に比べて弱く、また若干の苦味も有しているが、メントール含有乳化香料組成物と併せて使用することで、苦味がマスキングされ、さらには塩味が強化されるので、飲食品に塩味を付与することができる。本発明で使用する乳清ミネラルは、牛乳又は脱脂乳に酸又は凝乳酵素を加えて生じる凝固物(カード)を除去した残りの黄緑色の液体(ホエー、乳清)に含まれるミネラル成分である。通常乳清には、乳糖、可溶性蛋白質(ラクトアルブミン、ラクトグロブリン)、水溶性ビタミン(B1、B2、ニコチン酸、C等)及び塩類の他、ミネラル成分が約0.7%含まれている。乳清ミネラルは、乳清を原料素材として、限外ろ過法等の方法によって分離取得することができるが、簡便には商業的に入手可能である。
【0022】
本発明の塩味付与組成物は、食卓塩や加工飲食品の原料として用いることができる。食卓塩として使用する場合、通常の食卓塩中の食塩の全て若しくは一部を本発明の塩味付与組成物と置き換えることで、食塩の使用量を低減することができる。また、加工飲食品の原料として使用する場合、本発明の塩味付与組成物をそのまま添加したり、塩味を呈する種々の飲食品にメントール含有乳化香料組成物を添加し、元の塩味を向上するという方法もある。加工飲食品としては、塩味を呈する食品、例えば、醤油、味噌、魚醤、醤、バター、マヨネーズやノンオイルドレッシング、乳化型ドレッシング等のドレッシング類、ホワイトソースやテリヤキソース、トマトケチャップ等のソース類、焼き肉や焼き鳥、鰻の蒲焼等のタレ類、ラーメンやうどん、パスタ等の麺類、おにぎりや冷凍炒飯等の米飯類、ハム、ベーコン、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉製品、蒲鉾や魚肉ソーセージ等の魚肉練製品、トマトジュースや野菜ジュース等の飲料、スープ、ポン酢、麺つゆ、漬物の素、漬物、佃煮、惣菜類、レトルト食品、干物、ルー、チーズ加工品、パン、菓子類、デザート類など、塩味を呈するものであればあらゆる食品に使用することができる。
【0023】
本発明における、メントール含有乳化香料組成物は、極僅かな量で塩味向上効果がある。具体的には、食塩1質量部に対して、メントール含有乳化香料組成物0.0001質量部の添加で塩味向上効果が認められ、0.001質量部の添加で塩味向上効果が明らかに確認でき、0.01質量部の添加で塩味向上効果が高く、0.05質量部の添加で塩味向上効果が極めて高い。また、メントール含有乳化香料組成物は、食塩1質量部に対して0.3質量部を超える量を加えるとメントール若しくは油や乳化剤自体の風味を感じるようになるのでこれよりも多い量の添加は避けるのが望ましい。メントール含有乳化香料組成物の好ましい添加量の上限は食塩1質量部に対して0.2質量部である。塩化カリウムや乳清ミネラルを使用した場合でも、上述のメントール含有乳化香料組成物の添加量の範囲で塩味向上効果が高く、かつ、苦味などの異味をマスキングする効果が高い。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0025】
(製造例1)メントール含有乳化香料組成物の製造
表1の処方に基づき、グリセリンに、グリセリン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルを溶解し、水を加えて均一に混合して50℃に加熱した。これに撹拌下、l−メントール、抽出トコフェロール、レシチン及び中鎖脂肪酸トリグリセライドを60℃に加熱溶解したものを添加して、撹拌混合した。次いで、高圧ホモジナイザー15MR-8TA(APV Gaulin社製)を用いて、圧力450kg/cm2で4回処理を行い、平均粒子径0.2μmのメントール含有乳化香料組成物を得た。
【0026】
【表1】

【0027】
実験例1:低塩タイプの食塩水を使用した塩味向上効果の試験
食塩濃度1%の食塩水を調製しこれを対照例として、表2記載のように、減塩食塩水(対照例に対して20%及び40%の減塩)に製造例1のメントール含有乳化香料組成物を各々所定の量配合し、それぞれの食塩水の塩味の強さについて官能評価した。尚、本試験の評価は、各塩水の処方内容について伏せた状態で行い、対照例である1%食塩水で感じられた塩味の強さをA、本実験例で最も塩味の弱かった試験区をEとして、塩味の強さに応じてA>B>C>D>Eの5段階で評価した。また、それぞれの食塩水は、表2記載の物質以外何も加えていない。
【0028】
【表2】

【0029】
表2の結果より、製造例1により調製されたメントール含有乳化香料組成物を配合した食塩水は、これを配合していない食塩水に比べて塩味が強く感じられた。また、対照例に比べて食塩量を2割削減した食塩水では、メントール含有乳化香料組成物を0.1質量%(食塩の8分の1量)以上加えることで、食塩量が低減されていない食塩水とほぼ同レベルに塩味が向上した。また、本実験例におけるメントール含有乳化香料組成物が配合された食塩水は、メントール含有乳化香料組成物の添加量を増加させるほど、塩味が向上した。
【0030】
実験例2:高塩タイプの食塩水を使用した塩味向上効果の試験
食塩濃度3%の食塩水を調製しこれを対照例として、表3記載のように、減塩食塩水(対照例に対して20%及び40%の減塩)に製造例1のメントール含有乳化香料組成物を各々所定の量配合し、それぞれの食塩水の塩味の強さについて官能評価した。尚、本試験の評価は、各塩水の処方内容について伏せた状態で行い、対照例である3%食塩水で感じられた塩味の強さをA、本実験例で最も塩味の弱かった試験区をDとして、塩味の強さに応じてA>B>C>Dの4段階で評価した。また、それぞれの食塩水は、表3記載の物質以外何も加えていない。
【0031】
【表3】

【0032】
表3の結果より、製造例1により調製されたメントール含有乳化香料組成物を配合した食塩水は、これを配合していない食塩水に比べて塩味が強く感じられた。また、対照例に比べて食塩量を2割削減した食塩水では、メントール含有乳化香料組成物を0.1質量%(食塩の24分の1量)以上加えることで、食塩量が低減されていない食塩水とほぼ同レベルに塩味が向上した。また、本実験例におけるメントール含有乳化香料組成物が配合された食塩水は、メントール含有乳化香料組成物の添加量を増加させるほど、塩味が向上した。これらの結果は実験例1の低塩タイプの食塩水を使用した場合と類似しており、本発明が塩分濃度に関わらず塩味の向上効果を有するということが明らかである。
【0033】
実験例3:食塩代替物を含む塩味付与組成物の検討
(浅漬けの素)
下記および表4の処方に従って浅漬けの素を調製した。水に、醸造酢、薄口醤油など各種調味料を加え、加熱溶解する。80℃に達したら加熱を止め、製造例1により調製したメントール含有乳化香料組成物をそれぞれ表4記載の所定量添加・混合し、最後に水で全体の分量を調整し、本実験例における各サンプルとした。このようにして得られた各浅漬
けの素は、当該浅漬の素に同容量の刻んだ大根を放り込んで、1時間漬け込んだ。漬かった大根を用いて塩味の強さについて評価した。尚、本試験の評価は、各浅漬けの素の処方内容について伏せた状態で行い、対照例の浅漬けの素で感じられた塩味の強さをA、本実験例で最も塩味の弱かった試験区をEとして、塩味の強さに応じてA>B>C>D>Eの5段階で評価した。評価結果は表4に示す。
【0034】
<浅漬けの素の処方>
醸造酢(酸度10%) 4.0 部
薄口醤油 3.0 部
L−グルタミン酸ナトリウム 0.6 部
調味料混合物(※1) 0.4 部
スクラロース製剤(※2) 0.09部
塩味付与組成物(表4) 表4参照
水にて合計 100.0 部

(※1)調味料混合物:サンライク※テイストベース※A*
(※2)スクラロース製剤:サンスイート※SU−100*

【0035】
【表4】

【0036】
表4の結果より、本発明の塩味付与組成物を含有する浅漬けの素でつけた大根(実施例17および実施例18)は、雑味を有していたり、塩味が不十分であるというようなことが広く知られている食塩代替物を使用しているにも関わらず、製造例1のメントール含有乳化香料組成物と併用することで、食塩と遜色のない味質を呈する大根の浅漬けであった。結果的に、本発明品を使用した大根の浅漬けは、味が通常のものとほとんど変わらないにも関わらず食塩を3分の1カットすることができた。
【0037】
実験例4:減塩食品における塩味向上効果の試験
(実施例19:めんつゆ)
表5の処方に従って水に原材料を混合し、80℃に達するまで加熱攪拌した。次いで、製造例1により調製したメントール含有乳化香料組成物を、表5記載の所定量添加・混合し、最後に水で全体の分量を調整し、アルミパウチに充填後、85℃30分間ボイル殺菌した。
【0038】
【表5】

【0039】
本発明を適用した実施例19のめんつゆは、めんつゆ本来の風味を損なうことなく、しっかりとした塩味を呈しており、本発明を適用せず食塩を添加した比較例6のめんつゆと遜色ないくらい十分に塩味が付与されていた。
【0040】
(実施例20:チキンソーセージ)
表6の処方のうち、鳥ムネ肉と豚脂を2〜3cm角にカットし混合後、ミンサーにて5mmφプレートを通し、挽肉を得た。次いで、前記挽肉に表6記載のその他の原材料を加え、フードミキサーで混合し、冷蔵庫にて一夜塩漬した。塩漬した原材料混合物は再度混合し、羊腸に充填後、スモークハウスにて、50℃30分間の乾燥、60℃30分間のスモーク、および、80℃(中心70℃)のスチームの各処理を行い、チキンソーセージを得た。
【0041】
【表6】

【0042】
本発明の塩味付与組成物を配合した実施例20のチキンソーセージは、通常のソーセージ(比較例7のソーセージ)に比べて食塩量を大幅に抑え、食塩代替物を使用しているにも関わらず、ソーセージ本来の風味が損なわれることなく、通常のソーセージと同程度にしっかりとした塩味を呈していた。さらには、同様に食塩代替物(塩化カリウム)を使用している比較例8のソーセージと比較しても、実施例20のソーセージは強い塩味を呈していた。
【0043】
(実施例21:ノンオイルドレッシング)
表7の処方に従って水に原材料を混合し、80℃に達するまで加熱攪拌した。次いで、製造例1により調製したメントール含有乳化香料組成物を、表7記載の所定量添加・混合し、最後に水で全体の分量を調整した。
【0044】
【表7】

【0045】
本発明を適用した実施例21のノンオイルドレッシングは、従来の処方で調製したノンオイルドレッシング(比較例9のノンオイルドレッシング)に比べて、食塩量を大幅に減量しているにも関わらず、余計な雑味などが付与されることなく、従来のノンオイルドレッシングと同程度にしっかりとした塩味を呈していた。
【0046】
(製造例2)メントール含有乳化香料組成物粉末品の製造
製造例1で得られたメントール含有乳化香料組成物を、入口温度140℃、排出温度80℃に設定したスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、メントール含有乳化香料組成物粉末品を得た。
【0047】
(実施例22:粉末クラムチャウダー)
表8の処方に従って原材料を混合し、20メッシュの篩に通した。得られた混合物を20gずつ袋に小分けし、粉末クラムチャウダーを得た。
【0048】
【表8】

【0049】
上記で得られた各クラムチャウダー粉末にお湯を入れて試飲したところ、本発明を適用した実施例22のクラムチャウダーは、従来の処方で調製したクラムチャウダー(例えば比較例10のクラムチャウダー)に比べて、食塩量を大幅に減量しているにも関わらず、余計な雑味などが付与されることなく、従来のクラムチャウダーと同程度にしっかりとした塩味を呈していた。また、本発明で用いるメントール含有乳化香料組成物は、粉末状(製造例2)であっても、液体状(製造例1)と同様に塩味を付与することができた。
【0050】
(実施例23:チキンナゲット(ねぎ塩味))
表9の処方に従ってチキンナゲット(ねぎ塩味)を調製した。バッター液は水以外の原材料を混合後、水を加えて調製した。ピックル液は、水に糖アルコール及び品質改良剤を加え、ターボンミキサーで10分間撹拌した。次いで、食塩、調味料を添加し、10分間撹拌した。
得られたピックル液及び鶏ムネ肉を混合し、1時間タンブリングし、無通気性ケーシングに充填後、急速凍結した。これを1cm幅(約15g)にカットし、調製したバッター液にてバッターリング後、170〜175℃で5分間油ちょうして、ねぎ塩味のチキンナゲットを調製した。
【表9】

【0051】
本発明を適用した実施例23のチキンナゲットは、従来の処方で調製したチキンナゲット(比較例11)に比べて塩味が増強され、余計な雑味などが付与されることなく、しっかりとした塩味を呈していた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メントールを含む乳化香料組成物を含有することを特徴とする塩味付与組成物。
【請求項2】
食塩1質量部に対し、メントールを含む乳化香料組成物0.0001〜0.3質量部を含有することを特徴とする、請求項1に記載の塩味付与組成物。
【請求項3】
さらに食塩代替物を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の塩味付与組成物。
【請求項4】
メントール含有乳化香料組成物中の乳化粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、請求項1乃至3の何れかに記載の塩味付与組成物。
【請求項5】
メントール含有乳化香料組成物に用いる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ガティガムおよびレシチンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至4の何れかに記載の塩味付与組成物。
【請求項6】
メントールを含む乳化香料組成物を添加することを特徴とする塩味味質改善方法。
【請求項7】
メントール含有乳化香料組成物中の乳化粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、請求項6に記載の塩味味質改善方法。
【請求項8】
メントール含有乳化香料組成物に用いる乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ガティガムおよびレシチンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6または7に記載の塩味味質改善方法。

【公開番号】特開2011−142905(P2011−142905A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272172(P2010−272172)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】