説明

塩基反応性光酸発生剤およびこれを含むフォトレジスト

【課題】新規の光酸発生剤化合物およびこの化合物を含むフォトレジスト組成物であり、特に、塩基開裂性基をふくむ光酸発生剤化合物を提供する。
【解決手段】例えば下記反応で得られる化合物で示される光酸発生剤化合物を含むフォトレジスト組成物が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の光酸発生剤化合物(PAG)およびこの化合物を含むフォトレジスト組成物に関する。特に、本発明は塩基反応性基を含む光酸発生剤化合物に関する。このPAGを含みかつサブ−300nmおよびサブ−200nm放射線のような短波長放射線で像形成されるポジ型およびネガ型化学増幅型レジストが特に好ましい。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは像を基体に転写するための感光膜である。これはネガもしくはポジの像を形成する。フォトレジストを基体上にコーティングした後で、この塗膜がパターン形成されたフォトマスクを通して活性化エネルギー源、例えば、紫外光に露光されて、フォトレジスト塗膜内に潜像を形成する。このフォトマスクは、下にある基体に転写されることが望まれる像を画定する活性化放射線に対して不透明な領域および透明な領域を有する。レジスト塗膜内の潜像パターンの現像によってレリーフ像が提供される。フォトレジストの使用は概して当業者に周知である。
【0003】
既知のフォトレジストは多くの既存の商業的用途に充分な解像度およびサイズを有するフィーチャを提供することができる。しかし、多くの他の用途のためには、サブミクロン寸法の高解像の像を提供できる新たなフォトレジストについての必要性が存在している。
【0004】
機能的特性の性能を向上させるために、フォトレジスト組成物の構成を変える様々な試みがなされてきた。例えば、使用されるPAGを変えることによりフォトレジストの性能を向上させる試みがなされてきた。例えば、米国特許出願公開第2010/0081088号を参照、この文献は、とりわけ、フォトレジスト組成物に使用するための様々な光活性化合物を開示する。米国特許出願公開第2010/0081088号に開示される、PAGスルホニウムカチオン上にエステル部分を有するあるPAGは、極度に遅い塩基促進解離性を有し、それによりフォトレジストのリソグラフィ性能に全く利益をもたらさないか、最小限の利益しかもたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0081088号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
比較的速い塩基促進溶解速度を有する光酸発生剤についての必要性が依然として存在する。このような光酸発生剤はフォトレジストのリソグラフィ性能を助ける、例えば、フォトレジスト組成物から形成されたレジストレリーフ像に関連する欠陥の低減を示し、および/または向上した露光許容度(exposure latitude;EL)および/または低減されたマスクエラーファクター(mask error factor;MEF)を提供する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポジ型もしくはネガ型フォトレジスト組成物に使用するための新規の光酸発生剤化合物(PAG)を見いだした。特に、1以上の塩基反応性部分、特に、露光および露光後リソグラフィ処理工程の後で反応性である塩基反応性部分を有する光酸発生剤化合物が提供される。好ましくは、この塩基反応性部分は水性アルカリ現像剤組成物、例えば、0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水性現像剤組成物での処理の際に反応しうる。
【0008】
本発明は式(I)もしくは(II)の光酸発生剤化合物を提供する:
(I)R S−R−X−(R
(II)(P−R−Zg1 S−R−X−(Rx1(R−Rg2
式中、各Rは(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有(C−C10)アルキル、フルオロ(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C−C10)アルキル、(C−C10)アリール、およびフルオロ(C−C10)アリールから選択され;各Rは化学結合、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;各RはH、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;各Rは化学結合、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;R、RおよびRは独立して、場合によって置換された炭素環式アリール基、アリル基、および場合によって置換された(C−C20)アルキル基から選択され;Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、アセトアセトキシエステル、−C(O)−O−C(O)−R−、−C(CFO−、−COO−R−、−SO−R−、−OCH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され;Zは二価の塩基反応性基であり;Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(O)−O−C(O)−R−、アセトアセトキシエステル、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され;各Rは独立してフルオロ(C−C10)アルキルであり;Pは重合性基であり;p=0〜6;w=1〜3;x=1〜4;x1=0〜4;y=0〜5;z=1〜2;g1=0〜3;g2=0〜3;r=0〜1;MはSもしくはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=0、M=Sの場合にはr=1、ただしg1およびg2の少なくとも一方は0ではない。
【0009】
さらに、本発明は上記式(II)の光酸発生剤化合物の1種以上を重合単位として含むポリマーを提供する。このポリマーはフォトレジスト組成物において光酸発生剤化合物として有用である。
本発明によって、上記光酸発生剤化合物のいずれかを含むフォトレジスト組成物も提供される。
さらに、本発明は、(a)上記フォトレジスト組成物の塗膜層を基体上に適用し;並びに(b)フォトレジスト塗膜層をパターン化された活性化放射線に露光し、そして露光されたフォトレジスト層を現像してレリーフ像を提供する;ことを含むレリーフ像を形成する方法を提供する。このレリーフ像(例えば、本質的に垂直な側壁を有するパターン形成されたライン)はサブ−クオーターミクロン寸法もしくはそれ未満、例えば、サブ−0.2もしくはサブ−0.1ミクロン寸法を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は線状、分岐および環式アルキルを含む。用語「フルオロアルキル」とは、アルキル基の水素の1以上が1以上のフッ素原子で置き換えられたアルキル基をいう。フルオロアルキルは、モノフルオロアルキルからペルフルオロアルキルまでの全ての量のフッ素置換を含む。用語「(メタ)アクリラート」はアクリラートおよびメタクリラートの双方を含む。同様に、用語「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを含む。以下の略語は以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;nm=ナノメートル;μm=ミクロン=マイクロメートル;cm=センチメートル;mJ=ミリジュール;重量%=重量パーセント;およびPAG=光酸発生剤。他に示されない限りは、全ての比率はモル比である。
【0011】
本明細書において言及される場合、塩基反応性基は、その塩基反応性基を含むフォトレジストの現像工程前は有意に反応しない(例えば、結合破壊反応を受けない)。よって、例えば、塩基反応性基は、露光前ソフトベーク工程、露光工程および露光後ベーク工程の際は実質的に不活性である。「実質的に不活性」とは、塩基反応性基(もしくは部分)の5%以下、好ましくは1%以下が露光前ソフトベーク工程、露光工程および露光後ベーク工程の際に、分解、開裂もしくは反応することを意味する。本明細書において言及される場合の塩基反応性基は、典型的には、典型的なフォトレジスト現像条件下、例えば、0.26Nのテトラブチルアンモニウムヒドロキシド現像剤組成物でのシングルパドル現像の条件下で反応性でありうる。
【0012】
本発明の光酸発生剤化合物の成分の好ましい塩基反応性基は、塩基(例えば、水性アルカリ現像剤)での処理の際に、1以上のヒドロキシ基、1以上のカルボン酸基、1以上のスルホン酸基および/またはレジスト塗膜層をより親水性にする1以上の他の極性基を提供できる。
【0013】
理論に拘束されないが、本発明のフォトレジストは、現像工程の際に光酸発生剤化合物での塩基反応性基の反応およびより極性の(親水性の)基の形成の結果として、現像の際に露出することが意図される基体領域での欠陥、特に有機物質残留物の発生を低減させることができる、より親水性の表面のフォトレジストレリーフ像を提供することにより、欠陥の低減を示すことができると考えられる。理論に拘束されないが、本発明の光酸発生剤化合物はレジスト膜内でのPAG酸の望まれる低い拡散性に対処することができ、並びに現像後の欠陥を低減できると考えられる。さらに、本発明のPAGを含むフォトレジスト組成物は、従来のフォトレジストと比較して、向上した露光許容度(EL)および/または低減したマスクエラーファクター(MEF)を示すと考えられる。
【0014】
本発明のPAGは式(I)もしくは(II)を有する:
(I)R S−R−X−(R
(II)(P−R−Zg1 S−R−X−(Rx1(R−Rg2
式中、各Rは(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有(C−C10)アルキル、フルオロ(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C−C10)アルキル、(C−C10)アリール、およびフルオロ(C−C10)アリールから選択され;各Rは化学結合、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;各RはH、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;各Rは化学結合、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;R、RおよびRは独立して、場合によって置換された炭素環式アリール基、アリル基、および場合によって置換された(C−C20)アルキル基から選択され;Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、アセトアセトキシエステル、−C(O)−O−C(O)−R−、−C(CFO−、−COO−R−、−SO−R−、−OCH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され;Zは二価の塩基反応性基であり;Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(O)−O−C(O)−R−、アセトアセトキシエステル、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され;各Rは独立してフルオロ(C−C10)アルキルであり;Pは重合性基であり;p=0〜6;w=1〜3;x=1〜4;x1=0〜4;y=0〜5;z=1〜2;g1=0〜3;g2=0〜3;r=0〜1;MはSもしくはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=0、M=Sの場合にはr=1、ただしg1およびg2の少なくとも一方は0ではない。
【0015】
好ましくは、Rは(CRであり、ここで、各RはH、F、(C−C10)アルキル、およびフルオロ(C−C10)アルキルであり、n=0〜6、好ましくは0〜4、より好ましくは1〜4である。RがH、F、フルオロ(C−C10)アルキルから選択されるのがより好ましく、H、Fおよびフルオロ(C−C)アルキルから選択されるのがさらにより好ましく、Fおよびフルオロ(C−C)アルキルから選択されるのがさらにより好ましい。
【0016】
は好適な(C−C30)ヒドロカルビル基でありうる。典型的なヒドロカルビル基には、(C−C30)アルキル、フルオロ(C−C30)アルキルおよび(C−C20)アリールが挙げられる。RはH、(C−C30)アルキル、フルオロ(C−C30)アルキルおよび(C−C20)アリールから選択されるのが好ましい。
【0017】
は好適な(C−C30)ヒドロカルビル基でありうる。典型的なヒドロカルビル基には、(C−C30)アルキル、フルオロ(C−C30)アルキルおよび(C−C20)アリールが挙げられる。Rは化学結合、(C−C30)アルキル、フルオロ(C−C30)アルキルおよび(C−C20)アリールから選択されるのが好ましい。
【0018】
Zは好ましくは二価の連結基である。様々な二価の連結基がXのために使用されうる。典型的な二価の連結基には、C−C30含有基、好ましくはO、N、Sおよびこれらの組み合わせから選択される1種以上のヘテロ原子を有するものが挙げられる。他の好適な二価の連結基は、ヘテロ原子含有官能基、例えば、式:−Xt1−(Y=X)Xt2−のものであり、式中、X=O、SもしくはNR;Y=C、SもしくはS=O、X=OもしくはS;t1=0もしくは1;並びにt2=0もしくは1。好ましい二価の連結基には、以下の1以上を有する二価の基が挙げられる:−C(O)O−、−C(O)S−、−SO−、−S(O)−、−SO−、
【化1】

およびこれらの組み合わせ。
【0019】
本発明のPAGは、式(I)においてはZであり、式(II)においてはZもしくはZである1以上の塩基反応性部分を含む。
【0020】
式(I)においては、Zは塩基反応性基を表す。この塩基反応性基は、例えば、Zが無水物である場合には、(C−C10)ヒドロカルビル基に結合されうる。このヒドロカルビル基が存在する場合には、それは好ましくは、(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有(C−C10)アルキル、フルオロ(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C−C10)アルキル、(C−C10)アリールおよびフルオロ(C−C10)アリールから選択される。Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(CFO−、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択されるのが好ましい。より好ましくは、Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(CFO−、−COO−R−、−SO−R−、および−CH3−z(CHOC(=O)−R−)から選択される。z=1もしくは2であるのが好ましい。好ましくは、R=フルオロ(C−C)アルキルである。R=フルオロ(C−C)アルキルであり、かつz=1もしくは2であるのがさらに好ましい。典型的なβ−ヘテロ原子−置換ラクトンには、限定されないが、下記式のものが挙げられる:
【化2】

式中、r1およびr2は独立して1〜10であり;q1およびq2は独立して1〜10であり;RおよびRは独立して(C−C10)ヒドロカルビルから選択され;RはH、もしくは(C−C10)ヒドロカルビルである。好ましいβ−ヘテロ原子−置換ラクトンには以下のものが挙げられる:
【化3】

基−COO−R−には、−C(O)−O−R−および−O−C(O)−R−の双方が挙げられる。同様に、基−SO−R−には、−SO−O−R−および−O−S(O)−R−の双方が挙げられる。塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基は芳香族もしくは脂肪族であることができ、かつ場合によってはO、SおよびNから選択されるヘテロ原子を含むことができる。この(C−C30)シクロヒドロカルビル基における典型的な塩基反応性基には、ヒドロキシル、フルオロアルキルエステル、フルオロスルホナートエステル、および−C(CFO−が挙げられる。好ましい塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基はフェノール、およびヒドロキシナフチレンである。
【0021】
は好適な塩基反応性基であってよく、これは多価である。多価とは2つの別の基(2価)もしくは2つより多くに結合した塩基反応性基をいう。好ましくは、Zは二価の塩基反応性基である。Zに典型的な塩基反応性基には、β−ヘテロ原子−置換ラクトン、アセトアセトキシエステル、−C(O)−O−C(O)−R−、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基、−COOR−、−SO−、
【化4】

およびこれらの組み合わせが挙げられ、ここでR、Rおよびzは上述の通りである。好ましくは、Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、アセトアセトキシエステル、−C(O)−O−C(O)−R−、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され、より好ましくはZはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、アセトアセトキシエステル、−C(O)−O−C(O)−R−、−COO−R−、−SO−R−、および−CH3−z(CHOC(=O)−R−)から選択される。典型的なβ−ヘテロ原子−置換ラクトンはZについて上述したものである。好適な塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基はZについて上述したものである。
【0022】
も多価の(二価を含む)塩基反応性基であって、β−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(O)−O−C(O)−R−、アセトアセトキシエステル、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され、ここでR、Rおよびzは上述の通りである。Zについての好ましい基はβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(O)−O−C(O)−R−、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基であり、より好ましくはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(O)−O−C(O)−R−、−COO−R−、−SO−R−、および−CH3−z(CHOC(=O)−R−)である。典型的なβ−ヘテロ原子−置換ラクトンはZについて上述したものである。好適な塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基はZについて上述したものである。
【0023】
式(II)の化合物においては、Pは好適な重合性基でありうる。用語「重合性基」とは、それだけで(ホモ重合)もしくは1種以上の他の重合性基と(共重合)重合されてポリマーを形成しうるあらゆる基を意味する。Pは、フリーラジカル重合によってもしくは縮合によって重合されうる基であることが好ましい。フリーラジカル重合性基が好ましく、より好ましくはPは(メタ)アクリル基もしくはビニル基を含む。
【0024】
式(II)の化合物においては、g1およびg2の少なくとも一方は0ではなく、すなわち、塩基反応性基(ZもしくはZ)に結合した少なくとも1つの重合性基が存在しなければならない。g1もしくはg2のいずれかが1であるのが好ましい。
【0025】
Mは有機スルホニウムカチオンであるのが好ましい。Mについての好適なカチオンは式(III)のスルホニウムカチオンおよび式(IV)のヨードニウムカチオンである:
【化5】

式中、R〜Rは独立して、置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)炭素環式アリール基、アリル基、置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)(C−C20)アルキル基、例えば、ペルフルオロ(C−C20)アルキル基、または(C−C15)アルアルキル基、例えば、ベンジルおよびフェネチルを表し、好ましくはR〜Rの少なくとも1つは炭素環式アリール基を表し;あるいは、RとR、またはRとRは互いに結合して、これらが結合している硫黄イオンと一緒に環を形成しており、Rは置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)炭素環式アリール基、置換基を含んでいてもよい(すなわち、場合によって置換されていてよい)(C−C20)アルキル基を表す。
【0026】
好ましいスルホニウムカチオンは式(3a)〜(3f)のものである:
【化6】

式中、RおよびRは式(3)について上述した通りであり;R10〜R12は独立して、水素、ヒドロキシ、(C−C20)アルキル基、ハロゲン、(C−C20)アルコキシ基、アリール、チオフェノキシ、チオ(C−C20)アルコキシ基および(C−C20)アルコキシカルボニルから選択され;R13は(C−C20)アルキルであり;q=1〜10;並びに、r=1〜2である。R10〜R12のそれぞれは、独立して酸不安定基(acid labile group)、塩基不安定基(base labile group)もしくは塩基可溶性基を含むことができる。
【0027】
式(3c)の特に好ましいスルホニウムカチオンは構造C1〜C6によって示され、式(3d)の特に好適なスルホニウムカチオンは構造D1およびD2によって示され、並びに式(3e)の特に好適な構造は構造E1によって示される。
【化7】

【0028】
g1=1の場合には、式(II)の化合物は塩基反応性基に結合した少なくとも1つの重合性基(P)を含み、塩基反応性基はそれ自体Rに結合している。g1=0の場合には、その結果、g2は1以上でなければならない。同様に、g2=0の場合には、g1は1以上でなければならない。
【0029】
本発明のPAGは1つもしくは1つより多くの塩基反応性基を上述のように含むことができる。ある形態においては、好ましいのは、イオン性光酸発生剤化合物であり、特にPAG化合物は光活性化の際にスルホン酸(−SO)を生じさせる。特に好ましい形態においては、1以上の塩基反応性基を含むフッ素化PAGが提供される。特に好ましいのは光活性化の際にスルホン酸(−SO)、例えば、以下の基のいずれか:フッ素化スルホン酸基(例えば、−CFSO、−CHFSO、−(エステル)CFSO、および−(エステル)CHFSO)を生じさせる1以上の塩基反応性基を有するフッ素化PAGである。
【0030】
式(I)のいくつかの特に好ましい化合物には、下記式の化合物が挙げられる:
【化8】

式中、R14はH、F、(C−C10)アルキル、およびフルオロ(C−C10)アルキルから選択され;W=フッ素化スルホン酸部分;m=0〜5、およびs=0もしくは1;ただし、s=1の場合にはm=0である。Wは構造4および5から選択されるのが好ましい。
【化9】

これらアダマンタン成分は、アルカリ開裂性単位を組み込むために、アルコールもしくはカルボン酸基を含むノルボルナンもしくはジノルボルナンのような他のかさ高なケージ構造で置換されうる。
【0031】
式(I)の他の好ましい成分は構造6および7に示される。
【化10】

【0032】
重合単位として式(II)のPAGを含むポリマーの場合には、アニオン成分およびカチオン成分のいずれかもしくは双方は樹脂に共有結合されうる。このようなポリマーは既知の手順に従って製造されうる。
【0033】
式(II)の好適なPAGは下記の構造を含むことができる:
【化11】

式中、MおよびMの少なくとも一方は重合性基であり;X1−4は塩基反応性基を表し;Yはフッ素化連結基を表し;Q1−4は二価の基を表し;n1およびn2のそれぞれは0もしくは1の整数を表し、かつn1はn2と同じではなく;m1およびm2は0もしくは1の整数を表し、かつm1はm2と同じではない。
【0034】
式(II)の他の好適なPAGは構造(A)および(B)によって示される。
【化12】

【化13】

式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の、直鎖もしくは分岐(C−C10)アルキル、アルケニルもしくはオキソアルキル基、または置換もしくは非置換(C−C18)アリール、アリーキル(arkyl)もしくはアリールオキソアルキル基であるか、またはR、RおよびRのいずれか2以上は一緒に結合されて硫黄原子と共に環を形成していてよく;Rf1およびRf2は過フッ素化もしくは部分フッ素化された、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐(C−C10)アルキル基もしくは環式アルキル基であり;XはH、CH、F、CFもしくは他の置換基であり;YおよびZは置換もしくは非置換の直鎖もしくは分岐(C−C20)アルキル、環式アルキルおよび/またはケージ(caged)基結合である。
【0035】
好ましくは、本発明のPAGはポジ型もしくはネガ型化学増幅型フォトレジストにおいて使用され、すなわち、ネガ型レジスト組成物は光酸促進架橋反応を受けて、レジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも低い現像剤可溶性にし、ポジ型レジスト組成物は1種以上の組成物成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を受けて、レジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも水性現像剤中でより可溶性にする。
【0036】
本発明のフォトレジストは像形成有効量の1種以上の本発明のPAGを含む。このPAGは別個の成分であってよく、または樹脂に結合されていてもよい。さらなる選択肢においては、本発明のフォトレジストは像形成有効量の1種以上の個別のPAGと本発明のPAGを重合単位として含む1種以上の樹脂との双方を含むことができる。本発明の樹脂は別個のPAGの混合物、典型的には2もしくは3種類の異なるPAGの混合物、より典型的には合計で2種類の別個のPAGからなる混合物を含んでいてもよい。この混合物の少なくとも1種のPAGは本明細書において開示される1以上の塩基開裂性基を有する。
【0037】
本発明のフォトレジストは典型的には樹脂バインダー(ポリマー)、上述のようなPAG、および場合によって、1種以上の他の成分、例えば、塩基(クエンチャー)、溶媒、化学線(actinic)およびコントラスト染料(contrast dye)、抗ストリエーション剤(anti−striation agent)、可塑剤、速度向上剤、増感剤などを含む。これらフォトレジスト成分のいずれか1種より多くが使用されうる。このような任意の添加剤は、使用される場合には、典型的にはフォトレジスト組成物の全固形分を基準にして0.1〜10重量%のような少量で組成物中に存在する。好ましくは、樹脂バインダーはフォトレジスト組成物に水性アルカリ現像可能性を付与する官能基を有する。例えば、好ましいのは極性官能基、例えば、ヒドロキシルもしくはカルボキシラートを含む樹脂バインダーである。好ましくは、樹脂バインダーは樹脂組成物中に、アルカリ水溶液でレジストを現像可能にするのに充分な量で使用される。
【0038】
本発明のポジ型化学増幅型フォトレジストにおける使用に好ましい、酸不安定デブロッキング(deblocking)基を有する樹脂は、欧州特許出願公開第0829766号(アセタールを有する樹脂およびケタール樹脂)、並びに欧州特許出願公開第EP0783136号(1)スチレン;2)ヒドロキシスチレン;および3)酸不安定基、特にアクリル酸アルキル酸不安定基、例えば、アクリル酸t−ブチルもしくはメタクリル酸t−ブチルの単位を含むターポリマーおよび他のコポリマー)に開示されている。概して、酸感受性エステル、カルボナート、エーテル、イミドなどの様々な酸不安定基を有する樹脂が好適でありうる。光酸不安定基はより典型的にはポリマー骨格からペンダントでありうるが、ポリマー骨格と一体になった酸不安定基を有する樹脂も使用されうる。
【0039】
本発明のフォトレジストの好ましい像形成波長には、サブ−300nm波長、例えば、248nm、およびより好ましくはサブ−200nm波長、例えば、193nmおよびEUVが挙げられるが、他のサブ−200nm波長、例えば、電子ビーム、イオンビームおよびx線または他のイオン化放射線が使用されてもよい。
【0040】
200nmより大きな波長、例えば、248nmでの像形成のためには、フェノール系樹脂が典型的に好ましい。好ましいフェノール系樹脂はポリ(ビニルフェノール)であり、これは触媒の存在下での対応するモノマーのブロック重合、乳化重合もしくは溶液重合によって形成されうる。これらの波長での像形成に有用な特に好ましい樹脂には以下のものが挙げられる:i)ビニルフェノールおよび(メタ)アクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、ここにおいて、重合された(メタ)アクリル酸アルキル単位は光酸の存在下でデブロッキング反応を受けうる。光酸誘起デブロッキング反応を受けうる代表的な(メタ)アクリル酸アルキルには、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、および光酸誘起反応を受けうる他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラートが挙げられ、例えば、米国特許第6,042,997号および第5,492,793号におけるポリマーが挙げられ、これら文献は参照によって本明細書に組み込まれる:ii)ビニルフェノール、場合によって置換されている(ヒドロキシもしくはカルボキシ環置換基を含まない)ビニルフェニル(例えばスチレン)、および上記ポリマーi)で記載されたデブロッキング基を有するもののような(メタ)アクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第6,042,997号に記載されたポリマー、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる:およびiii)光酸と反応しうるアセタールもしくはケタール部分を含む繰り返し単位、および場合によってフェニルもしくはフェノール性基のような芳香族繰り返し単位を含むポリマー。
【0041】
サブ−200nm、例えば、193nmで像形成するのに好適な樹脂は様々な(メタ)アクリラートモノマーを含み、かつ例えば、米国特許第7,968,268号、第7,700,256号、第7,432,035号、第7,122,589号、第7,041,838号、第6,492,091号、第6,280,898号、および第6,239,231号、並びに米国特許出願公開第2009/0117489号および第2011/0003257号に記載されるもののように当該技術分野において知られている。典型的には、樹脂には下記一般式(I)、(II)および(III)の単位を含むものが挙げられる:
【化14】

式中、Rは(C−C)アルキル基であり;Rは(C−C)アルキレン基であり;Lはラクトン基であり;並びに、nは1もしくは2である。
【0042】
式(I)の単位を形成するのに好適なモノマーには、例えば、以下のものが挙げられる:
【化15】

【0043】
一般式(II)の単位を形成するのに好適なモノマーには、例えば、以下のものが挙げられる:
【化16】

【0044】
式(III)の単位を形成するためのモノマーには、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(HAMA)および好ましくはアクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(HADA)が挙げられる。
【0045】
樹脂は第1の単位とは異なる一般式(I)、(II)および/または(III)の1種以上の追加の単位を含むことができる。樹脂中に追加のこのような単位が存在する場合には、それは好ましくは式(I)の追加の脱離基含有単位および/または式(II)のラクトン含有単位を含むことができる。
【0046】
上記重合単位に加えて、樹脂は一般式(I)、(II)もしくは(III)のものではない1種以上の追加のモノマー単位を含んでいてもよい。本発明に有用なフォトレジスト樹脂を製造するために、様々なこのような追加のモノマー単位が使用されうる。典型的には、この樹脂のための追加の単位は、一般式(I)、(II)もしくは(III)の単位を形成するのに使用されるモノマーについて使用されるのと同じもしくは類似の重合性基を含んでいるが、同じポリマー骨格内に、例えば、ビニルもしくは非芳香族環式オレフィン(環内二重結合)、例えば、場合によって置換されたノルボルネンの重合単位を含むもののような、他の異なる重合性基を含んでいてもよい。サブ−200nm波長、例えば、193nmでの像形成のために、樹脂は典型的にはフェニル、ベンジルもしくは他の芳香族基(これらの基はその放射線を非常に吸収する)を実質的に含まない(すなわち、15モル%未満)。使用される場合には、追加の単位は10〜30モル%の量でポリマー中に典型的に存在する。
【0047】
本発明の組成物中に2種以上の樹脂のブレンドが使用されてもよい。樹脂は、所望の厚さの均一な塗膜を得るのに充分な量でレジスト組成物中に存在する。典型的には、樹脂はフォトレジスト組成物の全固形分を基準にして70〜95重量%の量で組成物中に存在する。有機現像剤中での樹脂の向上した溶解特性のせいで、樹脂の有用な分子量は低い値に限定されず、非常に広範囲をカバーする。例えば、ポリマーの重量平均分子量Mは典型的には100,000未満、例えば、5000〜50,000、より典型的には6000〜30,000、または7,000〜25,000である。
【0048】
樹脂を形成するのに使用される好適なモノマーは市販されておりおよび/または既知の方法を用いて合成されうる。樹脂は既知の方法でのモノマーおよび他の市販の出発材料を用いて当業者によって容易に合成されることができる。
【0049】
本発明のフォトレジストの好ましい任意成分の添加剤は追加塩基、特にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)もしくは様々なアミドであり、これらは現像されたレジストレリーフ像の解像度を向上させることができる。追加塩基は好適には比較的少量で、例えば、PAGに対して1〜10重量パーセント、より典型的には1〜5重量パーセントで使用される。他の好ましい塩基性添加剤には、スルホン酸アンモニウム塩、例えば、p−トルエンスルホン酸ピペリジニウム、およびp−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルアンモニウム;アルキルアミン、例えば、トリプロピルアミンおよびドデシルアミン;アリールアミン、例えば、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどを挙げることができる。
【0050】
本発明のフォトレジストは典型的には溶媒を含む。好適な溶媒には、例えば、グリコールエーテル、例えば、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート;乳酸エステル、例えば、乳酸メチルもしくは乳酸エチル;プロピオン酸エステル、特にプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、エチルエトキシプロピオナートおよびメチル−2−ヒドロキシイソブチラート;セロソルブエステル、例えば、メチルセロソルブアセタート;芳香族炭化水素、例えば、トルエンおよびキシレン;並びにケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノンが挙げられる。上述の溶媒の2種、3種もしくはそれより多種のブレンドのような溶媒のブレンドも好適である。溶媒は典型的にはフォトレジスト組成物の全重量を基準にして90〜99重量%、より典型的には95〜98重量%の量で組成物中に存在する。
【0051】
本発明のフォトレジストは概して、既知の手順に従って製造される。例えば、本発明のレジストは好適な溶媒にフォトレジストの成分を溶解させることによってコーティング組成物として製造されうる。本発明のレジストの樹脂バインダー成分は、典型的には、レジストの露光された塗膜層を、アルカリ水溶液などを用いて現像可能にするのに充分な量で使用される。より具体的には、樹脂バインダーは好適に、レジストの全固形分の50〜90重量%を構成しうる。光活性成分は、レジストの塗膜層中の潜像の形成を可能にするのに充分な量で存在すべきである。より具体的には、光活性成分は、好適には、レジストの全固形分の1〜40重量%の量で存在する。典型的には、より少ない量の光活性成分が化学増幅型レジストに好適である。
【0052】
本発明のフォトレジスト組成物の所望の全固形分量は組成物中の具体的なポリマー、最終層厚さおよび露光波長のような要因に応じて変動しうる。典型的には、フォトレジストの固形分量はフォトレジスト組成物の全重量を基準にして1〜10重量%、より典型的には2〜5重量%で変動する。
【0053】
好ましい本発明のネガ型フォトレジスト組成物は、本発明の光活性成分、並びに酸に曝露すると硬化し、架橋しまたは固化する材料の混合物を含む。好ましいネガ型組成物はフェノール系もしくは非芳香族樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤成分および本発明の光活性成分を含む。このような組成物およびその使用は、欧州特許出願公開第0164248号および第0232972号並びに米国特許第5,128,232号(Thackerayらへの)に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するのに好ましいフェノール系樹脂にはノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)、例えば、上述のものが挙げられる。好ましい架橋剤には、アミンベースの物質、例えば、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミンベースの物質および尿素ベースの物質が挙げられる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が概して最も好ましい。このような架橋剤は市販されており、例えばメラミン樹脂はCytecにより、商品名Cymel 300、301および303で販売されている。グリコールウリル樹脂はCytecにより、Cymel 1170、1171、1172の商品名で販売されており、尿素ベースの樹脂はBeetle 60、65および80の商品名で販売されており、ベンゾグアナミン樹脂はCymel 1123および1125の商品名で販売されている。
【0054】
本発明のフォトレジストは既知の手順に従って使用されうる。本発明のフォトレジストはドライフィルムとして適用されうるが、本発明のフォトレジストは好ましくは液体コーティング組成物として基体上に適用され、加熱により乾燥させられ、好ましくは塗膜層が粘着性でなくなるまで溶媒を除去し、フォトマスクを通して活性化放射線に露光され、場合によっては露光後ベークされて、レジスト塗膜層の露光領域と未露光領域との間の溶解度差を作り出すかまたは大きくし、次いで、好ましくは水性アルカリ現像剤で現像されてレリーフ像を形成する。本発明のレジストが適用され好適に処理される基体は、マイクロエレクトロニクスウェハのような、フォトレジストを伴うプロセスに使用されるあらゆる基体であり得る。例えば、基体は、ケイ素、二酸化ケイ素、アルミニウム−酸化アルミニウムマイクロエレクトロニクスウェハでありうる。ガリウムヒ素、セラミック、石英または銅基体も使用されうる。プリント回路板基体、例えば、銅張積層板も好適な基体である。液晶ディスプレイおよび他のフラットパネルディスプレイ用途に使用される基体、例えば、ガラス基体、インジウムスズ酸化物コーティング基体なども好適に使用される。液体コーティングレジスト組成物はスピニング、ディッピング、またはローラーコーティングのようなあらゆる標準的な手段で適用されうる。
【0055】
フォトレジスト層は(存在する場合には、上塗りバリア組成物層と共に)、好ましくは活性化放射線に、液浸リソグラフィシステム(すなわち、露光ツール(特に投影レンズ)と基体をコーティングするフォトレジストとの間の空間が液浸流体、例えば、水または1種以上の添加剤、例えば、向上した屈折率の流体を提供できる硫酸セシウムと混合された水で占有されている)において露光される。好ましくは、液浸流体(例えば、水)は気泡を回避するために処理されており、例えば、水はナノバブルを回避するために脱ガスされうる。本明細書における「液浸露光」または他の類似の用語についての言及は、露光ツールと塗布されたフォトレジスト組成物層との間にあるこのような流体層(例えば、水または添加剤含有水)を用いて露光が行われることを示す。
【0056】
露光エネルギーは、感放射線システムの光活性成分を効果的に活性化して、レジスト塗膜層にパターン形成された像を生じさせるのに充分であるべきである。好適な露光エネルギーは典型的には約1〜300mJ/cmの範囲である。好適な露光後ベーク温度は50℃以上、より具体的には50〜140℃である。酸硬化性ネガ型レジストについては、望まれる場合には、現像により形成されたレリーフ像をさらに硬化させるために100〜150℃の温度で数分以上で現像後ベークが使用されうる。現像および何らかの現像後硬化の後で、現像によって露出させられた基体表面は、次いで、選択的に処理、例えば、フォトレジストが除かれた基体領域を、当該技術分野で知られている手順に従って化学エッチングまたはめっきすることができる。好適なエッチング剤には、フッ化水素酸エッチング溶液およびプラズマガスエッチング、例えば、酸素プラズマエッチングが挙げられる。
【0057】
本発明は、本発明のフォトレジストのレリーフ像を形成する方法、例えば、サブクオーターμm寸法もしくはそれ未満、例えば、サブ−0.2もしくはサブ−0.1μm寸法の高解像パターン形成されたフォトレジスト像(例えば、本質的に垂直の側壁を有するパターン形成されたライン)を形成する方法も提供する。
【0058】
本発明は、本発明のフォトレジストおよびレリーフ像が基体上にコーティングされた、マイクロエレクトロニクスウェハもしくはフラットパネルディスプレイ基体のような基体を含む製造物品をさらに提供する。
【実施例】
【0059】
実施例1:
光酸発生剤TPS NBHFA−TFPSがスキーム1および以下のパラグラフに概説されるように多工程合成によって製造された。詳細な合成プロセスは以下に示される。
【化17】

【0060】
150mLのテトラヒドロフラン中の4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブタン酸(1)(26g、102.7mmol)の溶液に、カルボニルジイミダゾール(CDI、16.7g、103.0mmol)が添加され、この混合物が室温で2時間攪拌された。この反応混合物は70℃に加熱され、次いで化合物2(30g、102.6mmol)が添加され、この反応系は70℃で窒素下で16時間攪拌された。減圧下で溶媒が除去され、得られた油状残留物が200mLの塩化メチレンに溶解された。後の溶液が200mLの1NのHClで2回洗浄され、200mLの水で1回洗浄され、MgSOで乾燥させられ、減圧下で溶媒が除去されて、無色オイルとして化合物3を得た。
【0061】
第2の工程において、化合物3(45g、85.35mmol)が200mLのアセトニトリルに溶かされた。亜ジチオン酸ナトリウム(32.69g、187.75mmol)および炭酸水素ナトリウム(21.5g、255.9mmol)が200mLの蒸留水に溶かされた。この水溶液が攪拌されたアセトニトリル溶液に添加され、反応混合物は70℃で16時間攪拌された。19FNMRによる反応モニタリングは完全な変換を示した。このアセトニトリル溶液は、中間生成物のさらなる精製なしに酸化工程において使用された。このアセトニトリル溶液に、100mLの水、NaWO2HO(50mg)、次いでH(30w/w%水性、14.5g)が添加された。この反応系は周囲温度で16時間攪拌された。有機相がロータリーエバポレータで濃縮された。残留固体は100mLのアセトンに溶かされ、この溶液がゆっくりとメチルt−ブチルエーテル(2L)に注がれた。デカンテーションによって溶媒を除去することにより単離されたワックス状生成物が得られた。このワックス状生成物は減圧下でさらに乾燥させられた。粗生成物4の全体収率は30.0g(64%)であった。この生成物はさらなる精製なしに次の工程で使用された。
【0062】
最後の工程において、200mLのジクロロメタンおよび200mLの脱イオン水の攪拌混合物が粗化合物4(30g、54.5mmol)および臭化トリフェニルスルホニウム(18.71g、54.5mmol)に添加された。反応系は周囲温度で一晩攪拌された。相が分離させられた。有機相は容積200mLの蒸留水で5回洗浄された。有機相が分け取られた。分け取られた有機相が濃縮され、メチルt−ブチルエーテルに注がれて、目的の光酸発生剤であるTPS NBHFA−TFPSを得た。
【0063】
実施例2:リソグラフィ評価
光酸発生剤化合物である実施例1からのTPS NBHFA−TFPSがリソグラフィ的に評価され、従来のPAGであるペルフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムと比較された。フォトレジストは以下に記載される成分および割合を用いて配合された。
このリソグラフィ評価(以下)に使用するためのフォトレジストポリマー(A1)は以下のモノマーM1〜M5を用いて、以下の手順に従って製造された。
【化18】

【0064】
30gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解されたメタクリル酸1−エチルシクロペンチル(ECPMA、M1;20mmol)、メタクリル酸1−イソプロピル−アダマンタニル(IAM、M2;20mmol)、メタクリル酸2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イル(α−GBLMA、M3;30mmol)、メタクリル酸3−オキソ−4,10−ジオキサ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシ−8(もしくは9)−イル(ODOTMA、M4;20mmol)およびメタクリル酸3−ヒドロキシ−アダマンタニル(HAMA、M5;10mmol)が窒素でのバブリングによって脱ガスされ、そして凝縮器、窒素入口および機械式スターラーを備え、追加の10gの脱ガスされたTHFを入れた500mLのフラスコに入れられた。この溶液は還流させられ、5gのTHFに溶かされた6gのジメチル−2,2−アゾジイソブチラートがこのフラスコに入れられた。この重合混合物は、次いで、約4時間、還流で攪拌され、その後の時点で、反応物は5gのTHFで希釈され、重合混合物は室温に冷却された。1.0Lのイソプロパノールへの添加によってポリマーは沈殿させられ、濾過によって集められ、50gのTHFに溶解し、そして別の1.0Lのイソプロパノールに添加することによって再沈殿させられ、集められ、減圧下45℃で48時間乾燥させられて、フォトレジストポリマーであるポリ(IAM/ECPMA/α−GBLMA/ODOTMA/HAMA)を生じさせた。Mw=8,000。
【0065】
このフォトレジストは表1に示された成分および割合を用いて配合され、この表では重量パーセンテージは組成物の全固形分を基準にした。使用された塩基はt−ブチルオキシカルボニル−4−ヒドロキシピリジン(TBOC−4HP)であり、SLA(表面レベリング剤すなわち界面活性剤)はPF656(Omnovaから入手可能)であった。このフォトレジストはさらに溶媒として、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(S1)およびメチル2−ヒドロキシイソブチラート(S2)(1:1重量比)を用いて配合された。このフォトレジストおよび比較のフォトレジストはそれぞれ最終固形分4重量%に希釈された。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1および比較例1からのフォトレジストは以下のようにリソグラフィ処理された。有機反射防止コーティング(AR商標77、ダウエレクトロニックマテリアルズ)を有する200mmシリコンウェハ上にフォトレジストがスピンコートされ、110℃で60秒間ベークされて、厚さ100nmのレジスト膜を形成した。このフォトレジストは、ASML−1100露光ツール(ASMLにより製造)を用いて、0.89/0.64のアウター/インナーシグマおよびフォーカスオフセット/ステップ0.10/0.05で、環状照明下、0.75の開口数(NA)で、ArFエキシマレーザー放射線(193nm)で露光された。フィーチャを像形成するために、90nmのライン幅および180nmのピッチを目標とするライン−スペースパターンマスクが使用された。
【0068】
パターン形成されたレジストは100℃で60秒間、露光後ベーク(PEB)され、次いで0.26Nの水性テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液で現像され、その後水洗浄が行われた。各例について、90nmのライン幅および180nmのピッチを有するL/Sパターンが形成された。日立9380CD−SEMを用いて、800ボルト(V)の加速電圧で操作し、8.0ピコアンペア(pA)のプローブ電流で、200Kx倍率を用いて捕捉された像を使用して、トップダウン走査型電子顕微鏡検査(SEM)によって、マスクエラーファクター(Mask Error Factor;MEF)、および露光許容度(Exposure Latitude;EL)が決定された。露光許容度(EL)はサイジング(sizing)エネルギーによって正規化された目標直径の±10%をプリントするための露光エネルギーの差として定義された。マスクエラーファクター(MEF)はマスクパターン上の相対的な寸法変化に対する解像されたレジストパターンについての臨界寸法(CD)変化の比率として定義された。比較例1および実施例1からの配合物のリソグラフィ評価の結果が表2に示される。
【0069】
【表2】

【0070】
表2に示されるように、実施例1からのPAGを用いて製造された本発明(PR1)のフォトレジスト配合物は、市販のペルフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムをPAGとして使用して製造されたほぼ同じ比較のフォトレジスト配合物と比べた場合、より高い露光許容度およびより低いMEFを示す。よって、本発明からのPAGは露光許容度(EL)およびマスクエラーファクター(MEF)に基づいて向上したリソグラフィ性能を示す。
【0071】
実施例3:ペルフルオロブタンスルホン酸(4−((2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシ)プロパノイル)オキシ)フェニル)−ジフェニルスルホニウムの合成
【化19】

【0072】
2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシ)プロパン酸:
10.1g(100mmol)のトリエチルアミンを含む250mLのジクロロメタンの混合物に、12.6g(100mmol)の2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシプロパン酸が添加され、得られた混合物が氷浴中に配置される。10.5g(100mmol)の塩化メタクリロイルがこのフラスコにゆっくりと添加され、反応系は攪拌しつつ一晩維持される。得られた混合物は、次いで、200mLの1%NaHCO溶液で洗浄され、次いで溶媒が除去される。この生成物は、次いで、メタノールから再結晶させられて、2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシ)プロパン酸を期待される良好な収率で提供し、これはさらなる精製をすることなく後の合成に使用される。
【0073】
ペルフルオロブタンスルホン酸(4−((2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシ)プロパノイル)オキシ)フェニル)−ジフェニルスルホニウム:
100mLのジクロロメタン中の5g(25.7mmol)の2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシ)プロパン酸の混合物に、5.3g(25.7mmol)のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび0.06g(0.5mmol)の4−ジメチルアミノピリジンが添加され、1時間攪拌される。次いで、14.9g(25.7mmol)のペルフルオロブタンスルホン酸p−ヒドロキシフェニルジフェニルがこの混合物に添加され、混合物は24時間攪拌される。溶媒を乾燥除去した後で、得られた混合物はジクロロメタン/メタノール(90/10v/v)の溶出混合物を用いるシリカゲルカラムによってさらに精製されて、6.7g(8.9mmol)の純粋なペルフルオロブタンスルホン酸(4−((2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシ)プロパノイル)オキシ)フェニル)−ジフェニルスルホニウムが得られる。
【0074】
20.0mmolのVazo登録商標52低温重合開始剤(E.I.duPont de Nemours and Company)が、100gのアセトニトリル:テトラヒドロフラン2:1混合物中の35.7g(152.3mmol)のメタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、25.9g(152.3mmol)の2−メチル−アクリル酸2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル、17.4g(76.2mmol)のアクリル酸ヒドロキシナフチルメチル、および15.1g(20.0mmol)のペルフルオロブタンスルホン酸(4−((2,2−ジフルオロ−3−(メタクリロイルオキシ)プロパノイル)オキシ)フェニル)−ジフェニルスルホニウムの溶液に添加される。このモノマーおよび開始剤溶液は10分間脱ガスされる。不活性雰囲気下で、5mLのこのモノマーおよび開始剤溶液が、80℃に予備加熱されている(油浴)反応器に導入される。モノマーおよび開始剤混合物の残りは2時間にわたってこの反応器に80℃で供給される。添加の完了の後、反応混合物はさらに2時間還流される。次いで、この混合物は室温まで冷却され、重合溶液は多量のジイソプロピルエーテル中で沈殿させられ、濾過され、次いで減圧下で乾燥させられる。得られた粗ポリマーは25〜30重量%のテトラヒドロフラン(THF)に溶かされ、ジイソプロピルエーテル中で沈殿させられる。沈殿したポリマーは濾過によって単離され、減圧下で40℃で一晩乾燥させられる。このポリマー結合PAGについてのモノマー構造は以下の表にまとめられる。
【0075】
【表3】

【0076】
実施例4:
PAGポリマーを製造するために以下のPAGモノマー(P1〜P3)のそれぞれが使用される点を除いて、実施例3におけるのと類似のモノマーを有するポリマーが実施例3の一般的な手順に従って製造される。
【化20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)もしくは(II)の光酸発生剤化合物:
(I)R S−R−X−(R
(II)(P−R−Zg1 S−R−X−(Rx1(R−Rg2
式中、各Rは(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有(C−C10)アルキル、フルオロ(C−C10)アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C−C10)アルキル、(C−C10)アリール、およびフルオロ(C−C10)アリールから選択され;各Rは化学結合、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;各RはH、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;各Rは化学結合、もしくは(C−C30)ヒドロカルビル基であり;R、RおよびRは独立して、場合によって置換された炭素環式アリール基、アリル基、および場合によって置換された(C−C20)アルキル基から選択され;Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、アセトアセトキシエステル、−C(O)−O−C(O)−R−、−C(CFO−、−COO−R−、−SO−R−、−OCH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され;Zは二価の塩基反応性基であり;Zはβ−ヘテロ原子−置換ラクトン、−C(O)−O−C(O)−R−、アセトアセトキシエステル、−COO−R−、−SO−R−、−CH3−z(CHOC(=O)−R−)、および塩基反応性基含有(C−C30)シクロヒドロカルビル基から選択され;各Rは独立してフルオロ(C−C10)アルキルであり;Pは重合性基であり;p=0〜6;w=1〜3;x=1〜4;x1=0〜4;y=0〜5;z=1〜2;g1=0〜3;g2=0〜3;r=0〜1;MはSもしくはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=0、M=Sの場合にはr=1、ただしg1およびg2の少なくとも一方は0ではない。
【請求項2】
請求項1に記載の式(II)の光酸発生剤化合物を重合単位として含むポリマー。
【請求項3】
請求項2に記載のポリマーを含むフォトレジスト組成物。
【請求項4】
Xが−C(O)O−、−C(O)S−、−SO−、−S(O)−、−SO−、
【化1】

およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の光酸発生剤化合物。
【請求項5】
β−ヘテロ原子−置換ラクトンが下記式のいずれかを有する請求項1に記載の光酸発生剤:
【化2】

式中、r1およびr2は独立して1〜10であり;q1およびq2は独立して1〜10であり;RおよびRは独立して(C−C10)ヒドロカルビルから選択され;RはH、もしくは(C−C10)ヒドロカルビルである。
【請求項6】
β−ヘテロ原子−置換ラクトンが下記式:
【化3】

のいずれかを有する請求項5に記載の光酸発生剤化合物。
【請求項7】
が(メタ)アクリル基もしくはビニル基を含む請求項1に記載の光酸発生剤。
【請求項8】
請求項1に記載の光酸発生剤化合物を含むフォトレジスト組成物。
【請求項9】
(a)請求項8に記載のフォトレジスト組成物の塗膜層を基体上に適用し;並びに(b)前記フォトレジスト塗膜層をパターン化された活性化放射線に露光し、そして露光されたフォトレジスト層を現像してレリーフ像を提供する;
ことを含む基体上にフォトレジストレリーフ像を形成する方法。
【請求項10】
前記露光されたフォトレジスト層を水性アルカリ現像剤で現像し、それにより1以上の塩基反応性基が結合破壊反応を受けて1以上の極性基を提供することをさらに含む、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2012−136507(P2012−136507A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−249714(P2011−249714)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】