説明

塩基性アミノ酸を有するらせん状ポリマー

【課題】温度変化、極性変化に対しても高い高次構造を取ることができ、酸に対する応答性に優れる、光学分割材料、不斉認識材料、pHセンサー等として有用な塩基性アミノ酸を有する新規ならせん状ポリマーおよびその製造方法の提供。
【解決手段】主鎖が実質的に下記の繰り返し単位(I):


(式中、RおよびRは同一または異なって、tert-ブトキシカルボニル (Boc)、ベンジルオキシカルボニル (CBZ)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル (Z(NO2))、p-メトキシベンジルオキシカルボニル (Z(OMe))、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル (Fmoc)、トリフェニルメチル (Trt)等を表し、mは3または4を表す)からなるポリマー、その製造方法および使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学分割材料、不斉認識材料、pHセンサー等として有用な塩基性アミノ酸を有する新規ならせん状ポリマー、その製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸はシンプルな構造ながらアミノ基、カルボキシ基はもとより、各種のアルキル基、アリール基、さらには水酸基、メルカプト基などの修飾可能な官能基を複数個分子内に有する、安価で高純度の光学活性源として有機合成の分野で広く用いられている。アミノ酸から誘導される合成高分子であるペプチドは、タンパク質のモデル化合物として研究されており、その高次構造ならびに種々の反応の触媒作用が検討されている。アミノ酸は医薬品、農薬、飼料、調味料、甘味料、健康栄養食品、香粧品の原料として幅広く用いられており、近年の発酵法、化学合成法の目覚ましい発展により高い光学純度のものが安価に入手可能である。このような状況に鑑み,発明者らはアミノ酸を生体関連機能のみならず、様々な化学的機能を発現する機能性高分子の材料として位置付け検討してきた(非特許文献1)。アミノ酸のポリマーとしてはペプチドが一般的であるが、発明者らはアミノ酸構造を有するアセチレン誘導体がロジウム触媒により効率よく重合し、側鎖にアミノ酸を規則正しく配列する一方向巻き優先のらせん構造を形成すること、このらせんは外部刺激(熱、光、溶媒)により巻き方向を反転させる、あるいはランダム構造に転移すること、また、幾つかのポリマーは不斉認識能、金属捕捉能を有すること、このポリマーの金属錯体は不斉水素移動反応を触媒することを見出し、これによりこれらのアミノ酸のポリマーが光学分割材料、不斉認識材料、pHセンサー等として有用と考えられる。しかしながら、従来に報告されているアミノ酸を側鎖に有するらせんポリマーの安定性は必ずしも高くなく、また酸に応答してその高次構造を転換するものはいまだ報告されていない。
【0003】
【非特許文献1】Sanda et al. Macromolecules, Vol. 38, pp. 8149-8154 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、温度変化、極性変化に対しても高い高次構造を取ることができ、かつ酸に対する応答性に優れる新規なポリマー、その製造方法および光学分割における使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
より詳しくは、本発明は、以下の[1]〜[11]を提供する。
[1]主鎖が実質的に下記の繰り返し単位(I):
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、RおよびRは同一または異なって、tert-ブチルオキシカルボニル (Boc)、ベンジルオキシカルボニル (CBZ)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル (Z(NO2))、p-メトキシベンジルオキシカルボニル (Z(OMe))、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル (Fmoc)、トリフェニルメチル (Trt)、ホルミル (HCO)、アセチル (Ac)、トリフルオロアセチル (TFA)、ベンゾイル (Bz)、フタロイル (Pht)または水素を表し、mは3または4を表す)からなるポリマー。
[2] RおよびRが同一または異なり、それぞれ独立して、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルおよび水素よりなる群から選択される前記[1]記載のポリマー。
[3] Rがtert-ブチルオキシカルボニルであって、Rが9-フルオレニルメチルオキシカルボニルである前記[2]記載のポリマー。
[4] 一般式(II):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、RおよびRは同一または異なって、tert-ブチルオキシカルボニル (Boc)、ベンジルオキシカルボニル (CBZ)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル (Z(NO2))、p-メトキシベンジルオキシカルボニル (Z(OMe))、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル (Fmoc)、トリフェニルメチル (Trt)、ホルミル (HCO)、アセチル (Ac)、トリフルオロアセチル (TFA)、ベンゾイル (Bz)、フタロイル (Pht)または水素を表し、mは3または4を表す)で表されるモノマーをロジウム触媒存在下で重合させ、
主鎖が実質的に下記の繰り返し単位(I):
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R、Rおよびmは前記定義に同じ)からなるポリマーを得ることを特徴とする
ポリマーの製造方法。
[5] RおよびRが同一または異なり、それぞれ独立して、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルおよび水素よりなる群から選択される前記[4]記載の製造方法。
[6] Rがtert-ブチルオキシカルボニルであって、Rが9-フルオレニルメチルオキシカルボニルである前記[5]記載の製造方法。
〔7〕 前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポリマーを含む光学分割剤。
〔8〕 ポリマーをゲル化させた前記〔7〕記載の光学分割剤。
〔9〕 ポリマーを担体に担持させた前記〔7〕または〔8〕記載の光学分割剤。
〔10〕 前記〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の光学分割剤を用いて、光学活性体混合物を分離することを特徴とする光学活性化合物の分離方法。
〔11〕 前記〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の光学分割剤を固定相成分として含む高速液体クロマトグラフィー用カラム充填剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、塩基性アミノ酸を有する新規ならせん状ポリマーおよびその製造方法を提供することができる。また、特に、該ポリマーを光学分割材料、不斉認識材料、pHセンサー等として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物は、主鎖が実質的に下記の繰り返し単位(I):
【0014】
【化4】

【0015】
からなる新規なポリマー(以下、ポリマーIという)である。
【0016】
前記の繰り返し単位(I)からなるポリマーIにおいて、RおよびRは同一または異なって、tert-ブチルオキシカルボニル (Boc)、ベンジルオキシカルボニル (CBZ)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル (Z(NO2))、p-メトキシベンジルオキシカルボニル (Z(OMe))、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル (Fmoc)、トリフェニルメチル (Trt)、ホルミル (HCO)、アセチル (Ac)、トリフルオロアセチル (TFA)、ベンゾイル (Bz)、フタロイル (Pht)または水素を表し、mは3または4を表す。
【0017】
前記のポリマーIの化合物の具体例としては、例えば、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-フルオレニルメトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド)が挙げられ、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-フルオレニルメトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド)、ポリ(N-α-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド)が好ましい。
【0018】
本発明の前記のポリマーIの化合物は、例えば、以下のようにして製造できる。すなわち、一般式(II):
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、RおよびRは同一または異なって、tert-ブチルオキシカルボニル (Boc)、ベンジルオキシカルボニル (CBZ)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル (Z(NO2))、p-メトキシベンジルオキシカルボニル (Z(OMe))、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル (Fmoc)、トリフェニルメチル (Trt)、ホルミル (HCO)、アセチル (Ac)、トリフルオロアセチル (TFA)、ベンゾイル (Bz)、フタロイル (Pht)または水素を表し、mは3または4を表す)で表されるモノマーをロジウム触媒存在下で重合させて、主鎖が実質的に下記の繰り返し単位(I):
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R、Rおよびmは前記定義に同じ)からなるポリマーを得ることができる。
【0023】
前記一般式(II)で表されるモノマーの具体例としては、例えば、N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド、N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド、N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド、N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド、N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-フルオレニルメトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド、N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド、N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド、N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミドが挙げられ、入手のしやすさ、ポリマー物性の観点からN-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-フルオレニルメトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミドが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる一般式(II)で表されるモノマーには、市販または合成して得られたもののいずれを用いてもよい。
【0025】
また、本発明に用いられるロジウム触媒として、例えば、(nbd)Rh+[η6-C6H5B(C6H5)3]、[(Ph3P)3RhCl]、[(nbd)RhCl]2、[(cod)RhCl]2、[(nbd)Rh(OCH3)]2、[(nbd)Rh{-C(Ph)=CCPh2}{(4-FC6H4)3P}]が挙げられ、入手のしやすさおよび活性の観点から(nbd)Rh+[η6-C6H5B(C6H5)3]が好ましい。
【0026】
ロジウム触媒の使用量は、前記モノマー1モル当たり0.005〜0.1モルの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.05モルである。ロジウム触媒の使用量が、0.005モル未満の場合、重合反応が進行しにくく、重合が完結しにくくなるおそれがあり、0.1モルを超える場合、重合が完結するものの経済的でなくなるおそれがある。
【0027】
本発明のポリマーIの化合物を得るための前記反応に用いられる溶媒は、当該重合反応に不活性な溶媒であれば特に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が挙げられ、好ましくは、重合性の観点からTHF、クロロホルムであり、THFが最も好ましい。
【0028】
溶媒の使用量は、重合反応の完結および経済性の観点から、使用されるモノマー、触媒等の種類、使用量、反応温度等に依存して、適宜選定され、特に限定されるものではないが、好ましくは、モノマー1モルに対して0.1〜50Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10L、最も好ましくは、1〜5Lである。
【0029】
重合反応の温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは-20〜70℃、より好ましくは0〜50℃、最も好ましくは、10〜30℃である。重合反応の温度が、-20℃未満である場合、重合反応が進行しにくく、重合が完結しにくくなるおそれがあり、70℃以上である場合、重合が完結するが、副生成物が生成するおそれがある。
【0030】
重合反応の時間は、特に限定されるものではなく、用いられるモノマー、触媒および溶媒の種類、使用量、ならびに重合反応の温度等に依存して適宜選定することができる。
【0031】
得られたポリマーIの化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、2,000〜1,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは3,000〜100,000、最も好ましくは、5,000〜50,000である。数平均分子量が1,000,000を超える場合、重合溶液の粘度が高くなりすぎて実験操作が困難であり、数平均分子量が1000未満である場合、らせん構造の形成が困難であり好ましくない。
【0032】
本発明のポリマーIは、光学活性体混合物から、光学活性化合物を得るための光学分割活性成分として幅広く使用することができ、この目的で、ポリマーIを光学分割剤に含有させる。
本発明のポリマーIは、そのままの状態でも光学分割活性成分として使用できるが、常法によりゲル化することにより簡便なバッチ式の光学分割活性成分として用いることができる。ポリマーIのゲル化はどのような方法によっても良いが、例えば、ジプロパルギルアジピン酸等の架橋化剤を用いて、架橋化させた状態でTHF等の溶媒を保持させることによりゲル化させることができる。
さらに、耐圧能力の向上、溶媒置換による膨潤、収縮の防止、理論段数の向上等の目的のため、いずれかの担体に担持させてもよい。
【0033】
担体としては、例えば、シリカゲル、アルミナ、架橋ポリスチレン、ポリシロキサン等の多孔質担体が好適なものとして挙げられ、光学活性ポリマレイミド誘導体との親和性を向上させるため、有機シラン化合物を用いて表面処理してもよい。
【0034】
担体の粒径としては、使用するカラムやプレートの大きさにより異なり、特に限定するものではないが、担持操作の容易さ、光学分割能の観点から、通常1μm〜10mm、好ましくは1〜300μmである。また、平均孔径は10Å〜100μm、好ましくは50〜100000Åである。なお、高速液体クロマトグラフィー用のカラム充填剤の固定相として使用する場合、充填操作の容易さ、光学分割能の観点から、粒径が1〜200μm、平均細孔径が10〜3000Åの範囲の多孔質担体が好ましい。
【0035】
ポリマーIを担体に担持させる方法としては、物理的方法でも化学的方法でもよく、特に限定されない。物理的方法としては、光学活性ポリマレイミド誘導体と多孔質担体を接触させる方法が例示される。また、化学的方法としては、ポリマーIの製造時にそのポリマーの末端に官能基を付与し、多孔質の担体と化学的に結合させる方法が挙げられる。
【0036】
担体におけるポリマーIの担持量としては、用いる担体の種類、物性により異なり、特に限定するものではないが、担持操作の容易さ、光学分割能の観点から、担体の重量に対して、通常1〜100重量%、好ましくは1〜70重量%、とりわけ好ましくは1〜30%の範囲である。
【0037】
本発明の前記の各光学分割剤を用いて、光学活性体混合物を光学分割する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法により、光学活性体混合物を分離することによって、目的とする光学活性化合物を容易に得ることができる。
【0038】
本発明の光学分割剤を、例えば、高速液体クロマトグラフィー用のカラム充填剤の固定相成分として使用でき、その場合、溶離液としては、本発明の光学分割剤を溶解またはこれと反応する液体を除いて特に限定するものではなく、ヘキサン−2−プロパノール等を用いる順相系、アルコール−水等を用いる逆相系のいずれも応用可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例および参考例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1〜8において、原料である一般式(II)で表されるモノマー化合物の調製方法を説明する。実施例9および10において、実施例1〜8において調製された各モノマー化合物を用いたポリマーIの製造例および物性値、ならびに酸についての応答性を説明する。また、実施例11および12において、ポリマーゲルの製造および光学分割試験を説明する。なお、以下の合成および分析には、BACHEM社製、和光純薬工業社製、または東京化成工業社製の特級もしくは分析用試薬を用いた。
【0040】
実施例1:N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド(1)の調製
N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン (5.5 g, 15 mmol)およびプロパルギルアミン (0.83 g, 15 mmol)をAcOEt (100 mL)に溶解し、得られた溶液を室温にて10分間撹拌した。その溶液に4-[4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4-メチルモルホリニウム クロリド (TRIAZIMOCH, 4.2 g, 15 mmol)を添加し、得られた混合物を室温にて一晩撹拌した。混合物を引き続いて、0.5 M HCl、飽和NaHCO3水溶液および飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をn-ヘキサン/AcOEt (1/2, v/v)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、61%の収率で1を得た。融点 118-119 ℃, [α]D = -2.6° (c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.43-1.79 [m, 13H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 2.19 (s, 1H, HC≡), 3.16-3.36 (m, 2H, CH2CH2NH), 3.99 (s, 2H, ≡CCH2), 4.27 (s, 1H, COCHNH), 5.10 (s, 3H, CH2C6H5, NHCO), 5.32 (s, 1H, NHCOO), 6.78 (s, 1H, NHCOO), 7.34 (s, 5H, C6H5). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 26.17, 28.33, 29.01, 39.73, 53.85, 66.70, 71.51, 79.36,79.98, 127.96, 128.49, 155.89 (NHCOO), 156.94 (NHCOO), 172.05 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3332 (HC≡), 2125 (C≡C), 1687 (NHCOO), 1659 (NHCO), 1529, 1465, 1368, 1296, 1274, 1173, 1055, 1020, 868, 644. 元素分析 C21H29N3O5として 計算値: C, 62.51; H, 7.24; N, 10.41. 実測値: C, 62.32; H, 7.20; N, 10.52.
【0041】
実施例2:N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド(2)の調製
表題化合物は、N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-ベンジルオキシカルボニル-L-リジンおよびプロパルギルアミンから実施例1と同様に合成した。収率 68% (白色固体)。融点 114-115℃, [α]D = 2.4° (c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.43-1.80 [m, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 2.21 (s, 1H, HC≡), 3.16-3.18 (m, 2H, CH2CH2NH), 4.01 (s, 2H, ≡CCH2), 4.12 (s, 1H, COCHNH), 5.09 (s, 3H, CH2C6H5, NHCO), 5.38 (s, 1H, NHCOO), 6.92 (s, 1H, NHCOO), 7.33 (s, 5H, C6H5). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 22.39, 28.96, 29.36, 31.85, 40.34, 54.03, 66.55, 71.49, 79.32, 80.04, 127.81, 128.02, 128.43, 155.83 (NHCOO), 156.56 (NHCOO), 171.93 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3313 (HC≡), 2125 (C≡C), 1689 (NHCOO), 1658 (NHCO), 1538, 1458, 1373, 1268, 1169, 1068, 1018, 860, 667. 元素分析 C22H31N3O5として 計算値: C, 63.29; H, 7.48; N, 10.06. 実測値: C, 63.19; H, 7.60; N, 10.24.
【0042】
実施例3:N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド(3)の調製
表題化合物は、N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチンおよびプロパルギルアミンから実施例1と同様に合成した。収率 57% (白色固体)。融点 129-130 ℃, [α]D = 9.5°(c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.44-1.79 [m, 13H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 2.35 (s, 1H, HC≡), 3.05-3.35 (m, 2H, CH2CH2NH), 4.00 (s, 2H, ≡CCH2), 4.24 (s, 1H, COCHNH), 4.81 (s, 1H, NHCO), 5.09 (s, 2H, CH2C6H5), 5.70 (s, 1H, NHCOO), 7.10 (s, 1H, NHCOO), 7.34 (s, 5H, C6H5). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 26.34, 28.38, 29.03, 38.87, 58.31, 65.84, 67.00, 71.55, 79.42, 123.57, 127.98, 128.48, 156.38 (NHCOO), 156.72 (NHCOO), 171.84 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3296 (HC≡), 2127 (C≡C), 1684 (NHCOO), 1649 (NHCO), 1540, 1449, 1368, 1274, 1254, 1141, 1054, 1030, 863, 670. 元素分析 C21H29N3O5として 計算値: C, 62.51; H, 7.24; N, 10.41. 実測値: C, 62.51; H, 7.13; N, 10.50.
【0043】
実施例4:N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド(4)の調製
表題化合物は、N-α-ベンジルオキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジンおよびプロパルギルアミンから実施例1と同様に合成した。収率 71% (白色固体)。融点 98.5-99.5 ℃, [α]D = 7.3° (c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.38-1.67 [m, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 2.22 (s, 1H, HC≡), 3.08 (s, 2H, CH2CH2NH), 4.01 (s, 2H, ≡CCH2), 4.18 (s, 1H, COCHNH), 4.68 (s, 1H, NHCO), 5.10 (s, 2H, CH2C6H5), 5.66 (s, 1H, NHCOO), 6.78 (s, 1H, NHCOO), 7.34 (s, 5H, C6H5). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 22.34, 28.38, 29.54, 31.93, 39.73, 54.64, 67.11, 71.68, 79.22, 128.04, 128.19, 128.50, 156.20 (NHCOO), 156.37 (NHCOO), 171.56 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3344 (HC≡), 2121 (C≡C), 1689 (NHCOO), 1658 (NHCO), 1535, 1454, 1369, 1268, 1165, 1037, 9933, 872, 660. 元素分析 C22H31N3O5として 計算値: C, 63.29; H, 7.48; N, 10.06. 実測値: C, 63.17; H, 7.57; N, 10.16.
【0044】
実施例5:N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-フルオレニルメトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド(5)の調製
表題化合物は、N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-δ-フルオレニルメトキシカルボニル-L-オルニチンおよびプロパルギルアミンから実施例1と同様に合成した。収率61% (白色固体)。融点 127-128 ℃, [α]D = 5.4° (c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.38-2.02 [m, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 3.13 (s, 1H, HC≡), 3.87 (s, 2H, ≡CCH2), 4.18 (s, 2H, COCHNH, ArCHCH2), 4.33 (s, 2H, ArCHCH2), 5.13 (s, 1H, NHCO), 5.32 (s, 1H, NHCOO), 6.98 (s, 1H, NHCOO), 7.25-7.77 (m, 8H, Ar). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 23.29, 26.44, 28.28, 29.02, 29.90, 41.38, 47.15, 49.62, 67.01, 71.50, 79.22, 119.95, 124.94, 127.00, 127.65, 141.23 (NHCOO), 141.70 (NHCOO), 172.10 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3325 (HC≡), 2108 (C≡C), 1689 (NHCOO), 1655 (NHCO), 1539, 1465, 1369, 1296, 1261, 1164, 1018, 937, 863, 659. 高分解能質量分析 C28H34N3O5 [M+H]+として計算値: 492.2498 実測値: 492.2513.
【0045】
実施例6:N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド(6)の調製
表題化合物は、N-α-tert-ブトキシカルボニル-N-ε-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジンおよびプロパルギルアミンから実施例1と同様に合成した。収率 54% (白色固体)。 融点 142-143 ℃, [α]D = 8.3° (c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.43-1.85 [m, 17H, (CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 3.19 (s, 1H, HC≡), 3.98 (s, 2H, ≡CCH2), 4.04 (s, 2H, COCHNH, ArCHCH2), 4.24 (s, 2H, ArCHCH2), 4.97 (s, 1H, NHCO), 5.25 (s, 1H, NHCOO), 6.72 (s, 1H, NHCOO), 7.29-7.82 (m, 8H, Ar). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 22.40, 28.37, 29.05, 31.95, 40.34, 47.00, 67.06, 71.63, 79.15, 81.72, 119.90, 125.00, 127.00, 127.67, 141.26, 143.64, 156.65 (NHCOO), 158.95 (NHCOO), 171.61 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3313 (HC≡), 2112 (C≡C), 1683 (NHCOO), 1654 (NHCO), 1542, 1473, 1373, 1261, 1157, 933, 814, 740, 659. 高分解能質量分析 C29H36N3O5 [M + H]+として 計算値: 506.2655. 実測値: 506.2658.
【0046】
実施例7:N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチン N’-プロパルギルアミド(7)の調製
表題化合物は、N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-δ-tert-ブトキシカルボニル-L-オルニチンおよびプロパルギルアミンから実施例1と同様に合成した。収率 47% (白色固体)。 融点 118.5-119.5 ℃, [α]D = 7.9°(c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.46-2.17 [m, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 3.08 (s, 1H, HC≡), 4.01 (s, 2H, ≡CCH2), 4.21 (s, 2H, COCHNH, ArCHCH2), 4.38 (s, 2H, ArCHCH2), 4.81 (s, 1H, NHCO), 5.77 (s, 1H, NHCOO), 7.08 (s, 1H, NHCOO), 7.29-7.76 (m, 8H, Ar). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 23.17, 26.42, 28.43, 29.03, 30.87, 41.38, 47.09, 49.68, 66.95, 71.50, 79.22, 79.41, 119.92, 125.08, 127.02, 127.65, 144.23 (NHCOO), 143.70 (NHCOO), 172.01 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3305 (HC≡), 2114 (C≡C), 1689 (NHCOO), 1657 (NHCO), 1531, 1465, 1368, 1296, 1249, 1170, 1057, 1022, 863, 740. 高分解能質量分析 C28H34N3O5 [M + H]+として 計算値: 492.2498. 実測値: 492.2508.
【0047】
実施例8:N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジン N’-プロパルギルアミド(8)の調製
表題化合物は、N-α-フルオレニルメトキシカルボニル-N-ε-tert-ブトキシカルボニル-L-リジンおよびプロパルギルアミンから実施例1と同様に合成した。収率 42% (白色固体)。 融点 158-159 ℃, [α]D = 10.1° (c = 0.1 g/dL, CHCl3, 室温). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.47-2.16 [m, 17H, (CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 3.09 (s, 1H, HC≡), 4.01 (s, 2H, ≡CCH2), 4.20 (s, 2H, COCHNH, ArCHCH2), 4.40 (s, 2H, ArCHCH2), 4.67 (s, 1H, NHCO), 5.62 (s, 1H, NHCOO), 6.71 (s, 1H, NHCOO), 7.30-7.77 (m, 8H, Ar). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): δ 22.39, 28.38, 29.12, 30.88, 40.34, 47.07, 67.04, 71.70, 79.15, 80.92, 119.95, 125.02, 127.06, 127.71, 141.25, 143.66, 156.18 (NHCOO), 171.46 (NHCO). IR (cm-1, KBr): 3301 (HC≡), 2103 (C≡C), 1685 (NHCOO), 1653 (NHCO), 1535, 1458, 1369, 1246, 1169, 1064, 1018, 744, 651. 高分解能質量分析 C29H36N3O5 [M + H]+として 計算値: 506.2655. 実測値: 506.2653.
【0048】
実施例9: ポリマーIの製造
重合反応は、窒素下、三方コックを備え付けた10mL容のガラス管において行った。(nbd)Rh+[η6-C6H5B(C6H5)3] (0.02 mmol)をTHF (5.0 mL)中の実施例1〜8で製造された各モノマー(0.20 mmol)の溶液に添加し、得られた混合物を激しく撹拌した。混合物を水浴中で30℃に3時間保った。得られた混合物をn-ヘキサン (250 mL)に注ぎ、ポリマーを沈殿させた。沈殿物をメンブランフィルター(ADVANTEC H100A047A)を用いるろ過により分離し、減圧下で乾燥させ、上記モノマーに対応するポリマーI、Poly(1)〜Poly(8)を得た。
【0049】
ポリマーIの分光学的データ
1)Poly(1).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.37 [br, 13H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 3.02 (br, 2H, CH2CH2NH), 4.02 (br, 3H, CH2NHCO, COCHNH), 5.03 (br, 3H, CH2C6H5, NHCO), 5.92 (br, 1H, CH=), 6.45 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.26 (br, 5H, C6H5). IR (cm-1, KBr): 3307 (NHCO), 1697 (C=O), 1651 (NHCO), 1250, 1169, 1027.
2)Poly(2).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.33 [br, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 3.10 (br, 2H, CH2CH2NH), 4.05 (br, 3H, CH2NHCO, COCHNH), 5.02 (br, 3H, CH2C6H5, NHCO), 6.01 (br, 1H, CH=), 6.14 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.26 (br, 5H, C6H5). IR (cm-1, KBr): 3313 (NHCO), 1700 (C=O), 1654 (NHCO), 1254, 1169, 1022.
3)Poly(3).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.37 [br, 13H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 3.03 (br, 2H, CH2CH2NH), 4.03 (br, 3H, CH2NH, COCHNH), 4.92 (br, 3H, CH2C6H5, NHCO), 5.84 (br, 1H, CH=), 6.38 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.26 (br, 5H, C6H5). IR (cm-1, KBr): 3307 (NHCO), 1701 (C=O), 1655 (NHCO), 1254, 1168, 1026.
4)Poly(4).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.39 [br, 15H,(CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 2.98 (br, 2H, CH2CH2NH), 3.75 (br, 3H, CH2NHCO, COCHNH), 5.06 (br, 3H, CH2C6H5, NHCO), 5.96 (br, 1H, CH=), 6.25 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.26 (br, 5H, C6H5). IR (cm-1, KBr): 3320 (NHCO), 1700 (C=O), 1654 (NHCO), 1257, 1168, 1037.
5)Poly(5).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.39 [br, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 4.21 (br, 6H, CH2NHCO, COCHNH, CH2COONH, CHCH2COONH,), 5.06 (br, 1H, NHCO), 6.15 (br, 1H, CH=), 6.87 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.39 (br, 8H, Ar). IR (cm-1, KBr): 3325 (NHCO), 1701 (C=O), 1651 (NHCO), 1531, 1253, 1169.
6)Poly(6).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.42 [br, 17H,(CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 4.04 (br, 6H, CH2NHCO, COCHNH, CH2COONH, CHCH2COONH,), 5.89 (br, 1H, CH=), 6.51 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.39 (br, 8H, Ar). IR (cm-1, KBr): 3316 (NHCO), 1701 (C=O), 1649 (NHCO), 1531, 1369, 1249, 1165.
7)Poly(7).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.37 [br, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH], 4.00 (br, 6H, CH2NHCO, COCHNH, CH2COONH, CHCH2COONH,), 5.01 (br, 1H, NHCO), 6.17 (br, 1H, CH=), 6.58 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.32 (br, 8H, Ar). IR (cm-1, KBr): 3309 (NHCO), 1697 (C=O), 1653 (NHCO), 1519, 1249, 1169, 868, 744.
8)Poly(8).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.34 [br, 17H, (CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH], 3.99 (br, 6H, CH2NHCO, COCHNH, CH2COONH, CHCH2COONH,), 6.07 (br, 1H, CH=), 6.34 (br, 2H, CH2NHCOO, CHNHCOO), 7.36 (br, 8H, Ar). IR (cm-1, KBr): 3301 (NHCO), 1697 (C=O), 1652 (NHCO), 1246, 1167, 1012, 864.
【0050】
物性値
【0051】
【表1】

a 条件: [M]0 = 0.2 M, 触媒 (nbd)Rh+6-C6H5B-(C6H5)3], [M]0/[cat] = 50
(30℃のTHF中で3時間)。 b n-ヘキサン-不溶性部分。
c ポリスチレン標準により較正したTHFで溶出するGPCにより測定。
【0052】
【表2】

a室温での偏光測定により測定 (c = 0.1-0.11 g/dL)。b 測定せず。
【0053】
実施例1〜8の各モノマーをより得られたポリマーIの数平均分子量(Mn)は、4900〜12600の範囲にあり、分子量分布(Mw/Mn )は、1.59〜3.22の範囲であった(表1)。これは、重合が効率的に副反応無く進行したことを示している。
【0054】
また、温度変化、極性変化に対しても高い高次構造を取ることができる。表2に示すように、各種溶媒中でモノマーに比べて一桁大きい比旋光度を示すこと、図1に示すようにいずれのポリマーもクロロホルム中およびTHF中、主鎖ポリアセチレンの共役に基づくCDシグナル、UV-可視シグナルを400nm近辺に示したことから、主鎖がらせん構造を形成していることが分かる。図2、図3に示すように、これらのシグナルは0〜60℃の温度範囲ではほとんど強度変化を示さず、ポリマーのらせん構造が熱に対して安定であることが分かる。図4に示すように、ポリマーのクロロホルム溶液にメタノールを添加した場合、Poly(1)、Poly(2)、Poly(5)、Poly(6)はほとんどCDシグナル、UV-可視シグナルの変化を示さず、極性溶媒に対して安定ならせんであることが分かる。
【0055】
実施例10: 他のポリマーIの製造および酸に対する応答性
応答性の試験のための使用に際して、ポリマーのFMOC基を塩基性条件下で除去し、本願発明のポリマーIの範囲内のポリマーを調製した。典型的な製造例を下記に示す。
ピペリジン(10 mL)をCH2Cl2 (10 mL)中のPoly(5) (982 mg, 2 mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を室温にて45分間撹拌し、次いでn-ヘキサン(150 mL)中に注いで、ポリマーを沈殿させた。沈殿物をメンブランフィルター(ADVANTEC H100A047A)を用いるろ過により集め、減圧下で乾燥させ、Poly(5a)を得た。
【0056】
【化7】

【0057】
Poly(5a): 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.54 [br, 13H, (CH3)3, CH2CH2CH2NH2], 2.80 (br, 2H, CH2NH2), 3.88 (br, 7H, CH2NHCO, COCHNHCOO, CH2NH2), 6.15 (br, 1H, CH=).
Poly(6a): 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.54 [br, 15H, (CH3)3, CH2CH2CH2CH2NH2], 2.81 (br, 2H, CH2NH2), 3.89 (br, 7H, CH2NHCO, COCHNHCOO, CH2NH2), 6.16 (br, 1H, CH=).
図5に示すように、Poly(5a)について、フタル酸の添加量に依存してらせん状態が大きく変化し、酸に対する応答性が確認された。また、同様の結果が、Poly(6)から上記手順により得られたPoly(6a)についても観察された。
【0058】
実施例11:ポリマーゲルIの製造と光学分割試験
光学活性を簡便に試験するためポリマーIのゲル化を行った。
実施例5〜8で製造したモノマー(5)〜(8)(各0.95 mmol)とジプロパギルアジペート(0.050 mmol)をTHF 1mlに溶解し、窒素下、三方コックを備え付けたガラス管の中で、(nbd)Rh+6-C6H5B(C6H5)3] (0.010 mmol)を滴下して重合反応を行った。反応溶液は30℃で1時間保った後、重合混合物をメタノール中で2.5時間、クロロホルム中で2.5時間攪拌した後、減圧乾燥、ろ過により、poly(6)gel (収率86%)、poly(5)gel (収率80%)、poly(8)gel (収率 91%)およびpoly(7)gel (収率93%)を得た。
各ポリマーゲルのIR値は以下の通りであった。
poly(6)gel: IR (cm-1, KBr): 3343, 2939, 1725, 1652, 1582, 1479, 1365, 1249, 1166, 816, 759, 740. poly(5)gel: IR (cm-1, KBr): 3323, 2940, 1720, 1584, 1478, 1365, 1247, 1162, 817, 759, 741. poly(8)gel: IR (cm-1, KBr): 3342, 2919, 1654, 1523, 1368, 1240, 1168, 817, 759, 741, 621, 540. poly(7)gel: IR (cm-1, KBr): 3320, 2941, 1691, 1523, 1365, 1252, 1169, 816, 760, 741.
ポリマーゲルに光学分割活性があるかどうかの確認は、エナンチオマーの選択的吸着試験により行った。
N-ベンジルオキシカルボニル L-およびD-アラニン (Z-L-AlaおよびZ-D-Ala)、N-ベンジルオキシカルボニル L-およびD-アラニンメチルエステル (Z-L-Ala-OMeおよびZ-D-Ala-OMe)、(R)-()-および(S)-(+)-1-フェニル-1,2-エタンジオールを吸着質として、以下のように評価試験を行った。
poly(5)gel〜poly(8)gel(20 mg)の各々を試験管の中に入れ、THF(1 ml)で3回洗浄した。吸着質を含んだTHF溶液(C=10 mg/mL)とヘキシルベンゼン(C=5 mg/mL)をゲルに加え、混合溶液を所定の時間放置した。
混合溶液をHPLC (カラム: DAICEL CHIRALPAK IA)に付し、THF溶出液中の分割部分(10μl)をUVで測定することに分析した。HPLCによる分析はヘキシルベンゼンを内部標準として用い、吸着前後における吸着質とヘキシルベンゼンのピーク面積比から吸着率を算出した。結果を表3に示した。
【0059】
【表3】

【0060】
表3によれば、poly(5)gel、poly(6)gel、poly(7)gelおよびpoly(8)gelとも良好な光学分割活性を示した。
【0061】
実施例12:脱フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)ポリマーゲルの製造と光学分割試験
poly(5)gel、poly(6)gel、poly(7)gelおよびpoly(8)gelからFMOC基を脱離させ、ポリマーIゲルを作成した。ポリマーゲルからのFMOCの脱離は塩基条件下において容易に行うことができるが、具体的には、5 mL THF溶液中のpoly(5)gel〜poly(8)gel 450mgにピペリジン5 mLを加えた。得られた反応溶液を室温で45分間攪拌した。得られたゲルを乾燥減圧下にろ過し、poly(5)gel〜poly(8)gelの脱FMOC体(各々、poly(5a)gel、poly(6a)gel、poly(7a)gelおよびpoly(8a)gelという)を得た。
実施例11と同様の方法により、Z-L-AlaおよびZ-D-Ala、Z-L-Ala-OMeおよびZ-D-Ala-OMe、(R)-()-および(S)-(+)-1-フェニル-1,2-エタンジオールを吸着質としてpoly(5a)gel、poly(6a)gel、poly(7a)gel、poly(8a)gelの光学分割活性を測定した。結果を表4に示した。
【0062】
【表4】

【0063】
表4によれば、各ポリマーゲルとも光学分割活性を示したものの、poly(5)gel、poly(6)gel、poly(7)gelおよびpoly(8)gelほど強い活性は示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のポリマーは、光学分割材料、不斉認識材料、pHセンサーに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、室温にてCHCl3およびTHF(c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(1)〜Poly(8)のCDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図2−1】図2−1は、CHCl3 (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(1)-Poly(2)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図2−2】図2−2は、CHCl3 (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(3)-Poly(4)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図2−3】図2−3は、CHCl3 (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(5)-Poly(6)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図2−4】図2−4は、CHCl3 (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(7)-Poly(8)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図3−1】図3−1は、THF (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(1)-Poly(2)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図3−2】図3−2は、THF (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(3)-Poly(4)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図3−3】図3−3は、THF (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(5)-Poly(6)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図3−4】図3−4は、THF (c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(7)-Poly(8)の温度−可視CDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図4−1】図4−1は、種々の組成を持つTHF/MeOH(c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(1)-Poly(2)のCDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図4−2】図4−2は、種々の組成を持つTHF/MeOH(c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(3)-Poly(4)のCDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図4−3】図4−3は、種々の組成を持つTHF/MeOH(c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(5)-Poly(6)のCDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図4−4】図4−4は、種々の組成を持つTHF/MeOH(c = 2.48×104 mol/L)中で測定したPoly(7)-Poly(8)のCDおよびUV-可視スペクトルを示す。
【図5】図5は、20℃、THF/MeOH = 1/1 (v/v, c = 2.48×104 mol/L)中で測定したm-またはo-フタル酸添加時のPoly(5a)のCDおよびUV-可視スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖が実質的に下記の繰り返し単位(I):
【化1】

(式中、RおよびRは同一または異なって、tert-ブチルオキシカルボニル (Boc)、ベンジルオキシカルボニル (CBZ)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル (Z(NO2))、p-メトキシベンジルオキシカルボニル (Z(OMe))、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル (Fmoc)、トリフェニルメチル (Trt)、ホルミル (HCO)、アセチル (Ac)、トリフルオロアセチル (TFA)、ベンゾイル (Bz)、フタロイル (Pht)または水素を表し、mは3または4を表す)からなるポリマー。
【請求項2】
およびRが同一または異なり、それぞれ独立して、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルおよび水素よりなる群から選択される請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
がtert-ブチルオキシカルボニルであって、Rが9-フルオレニルメチルオキシカルボニルである請求項2記載のポリマー。
【請求項4】
一般式(II):
【化2】

(式中、RおよびRは同一または異なって、tert-ブチルオキシカルボニル (Boc)、ベンジルオキシカルボニル (CBZ)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル (Z(NO2))、p-メトキシベンジルオキシカルボニル (Z(OMe))、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル (Fmoc)、トリフェニルメチル (Trt)、ホルミル (HCO)、アセチル (Ac)、トリフルオロアセチル (TFA)、ベンゾイル (Bz)、フタロイル (Pht)または水素を表し、mは3または4を表す)で表されるモノマーをロジウム触媒存在下で重合させ、
主鎖が実質的に下記の繰り返し単位(I):
【化3】

(式中、R、Rおよびmは前記定義に同じ)からなるポリマーを得ることを特徴とする
ポリマーの製造方法。
【請求項5】
およびRが同一または異なり、それぞれ独立して、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルおよび水素よりなる群から選択される請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
がtert-ブチルオキシカルボニルであって、Rが9-フルオレニルメチルオキシカルボニルである請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーを含む光学分割剤。
【請求項8】
ポリマーをゲル化させた請求項7記載の光学分割剤。
【請求項9】
ポリマーを担体に担持させた請求項7または8記載の光学分割剤。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の光学分割剤を用いて、光学活性体混合物を分離することを特徴とする光学活性化合物の分離方法。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれかに記載の光学分割剤を固定相成分として含む高速液体クロマトグラフィー用カラム充填剤。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−291207(P2008−291207A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322339(P2007−322339)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】