説明

塩基性セラミックス含有スラリー組成物

【課題】帯電防止性、剥離性及び靭性に優れるセラミックシートを製造可能な塩基性セラミックス含有スラリー組成物を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物、高分子分散剤、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料及びポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性セラミックス含有スラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス微粉末を含有するスラリー組成物は、シート成形により、電子機器分野におけるセラミック電子部品に使用される。とりわけ高度な電子機器分野におけるエレクトロセラミック部品の製造において、塩基性セラミックス含有スラリー組成物から製造される焼成前のセラミックス成形品(セラミックシート)が好適に用いられるが、成形時の異物付着防止の観点からセラミックシートの帯電防止性が要求される。
【0003】
特許文献1は、帯電防止性を備えた分散剤としてアミジニウムカチオンの有機塩酸を含む、セラミックス製造用スラリー組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−321981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層セラミック電子部品においては、電子機器の小型化、高性能化が進められており、それに伴ってセラミック材料の小粒径化、セラミックシートの薄膜化が進んでいる。しかしながら、セラミック材料の小粒径化、セラミックシートの薄膜化によって、従来よりもセラミックシートの強度不足や剥離性の悪化といったハンドリング性の問題が大きくなっている。特許文献1はセラミックシートの帯電防止性向上について開示するが、強度や剥離性等のハンドリング性に関して性能が不十分であり、また、厚み15μm以下のセラミックシートを製造することやそれに伴う問題点についての認識も示されていない。
【0006】
本発明は、ハンドリング性に優れるセラミックシートを製造可能な塩基性セラミックス含有スラリー組成物を提供する。好ましくは、本発明は、剥離帯電量及び剥離力が小さく、かつ、シート強度すなわち靭性に優れるセラミックシートを製造可能な塩基性セラミックス含有スラリー組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物、高分子分散剤、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料及びポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セラミックシートにおいて帯電防止性、剥離性及び靭性に優れる塩基性セラミックス含有スラリー組成物の提供が可能となる。したがって、本発明の塩基性セラミックス含有スラリー組成物によれば、好ましくは、セラミックシートのハンドリング特性が向上することにより、品質が向上した積層型セラミック電子部品を効率よく製造できる。また、セラミックシートの薄膜化が進行すれば、従来よりもさらに高い強度や剥離性が要求されるが、本発明によれば、例えば、厚み15μm以下の薄いセラミックシートにおいても、ハンドリング特性を向上させることができ、高品質の積層型セラミック電子部品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料及びポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物に、帯電防止剤として含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物を含有させ、さらに高分子分散剤とを含有させることにより、帯電防止性、剥離性及び靭性に優れる薄層化セラミックシートを製造できるという知見に基づく。
【0010】
本発明の効果発現のメカニズムの詳細は不明であるが、以下の様に推定している。まず、帯電防止剤として含有させる含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物は、その芳香族性により、π電子及びカチオンが非局在化するため、スラリー組成物中の塩基性セラミックス材料及び高分子分散剤との相互作用が小さくなり、それゆえセラミックシート表面へのブリードアウトが容易に起こり、優れた帯電防止能と良好な剥離性を発現する。また、高分子分散剤がセラミックス材料の表面に吸着することにより前記カチオン化合物がセラミックス材料表面に吸着することが抑制され、セラミックシートに均一に分散して可塑性を付与することによって、セラミックシートの靭性が向上する。但し、これらは推定であって、本発明は、これらメカニズムに限定されない。
【0011】
すなわち、本発明は、一つの態様においてスラリー組成物であって、含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物、高分子分散剤、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料及びポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物(以下「本発明のスラリー組成物」ともいう。)に関する。本発明のスラリー組成物によれば、得られるセラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性が優れるという効果が奏され得る。つまり、本発明のスラリー組成物は、第一に、塩基性セラミックス含有スラリー組成物から得られるセラミックシートの帯電を良好に防止し、剥離力を低減できる。また、本発明のスラリー組成物は、第二に、塩基性セラミックス含有スラリー組成物から得られるセラミックシートの靭性を向上できる。具体的には、伸びやすく、破断応力が大きいセラミックシートを製造できる。
【0012】
本明細書において「帯電防止性」とは、スラリー組成物を用いてセラミックス材料をシート状に成形して得られる焼成前のセラミックシートの剥離帯電量の程度が低いことをいい、セラミックシートの剥離帯電量の絶対値が小さいほどセラミックス材料の「帯電防止性」に優れることになる。また、本明細書において「剥離性」とは基材フィルムに塗工、乾燥させて成形したセラミックシートを基材フィルムから剥離する際に必要な力(剥離力)が小さいことをいい、剥離力が小さいほどセラミックシートの「剥離性」に優れることになる。また、本明細書においてセラミックシートの「靭性」とはセラミックシートの強度の指標の1つであって、引張試験において破断応力が大きく、破断歪み(伸び)が大きいことをいい、破断応力が大きく伸びが大きいほど、セラミックシートの「靭性」に優れることになる。
【0013】
[カチオン化合物]
本発明のスラリー組成物は、帯電防止剤として、含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物を含有する。前記含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基としては、帯電防止性、剥離性及び靭性に優れるセラミックシートを製造する観点から、芳香環中に第4級アンモニウムを有するカチオン基であって、含窒素五員環又は六員環複素芳香族化合物の第4級アンモニウムカチオン基が好ましい。前記含窒素五員環又は六員環複素芳香族化合物の第4級アンモニウムカチオン基としては、ピリジニウム、ピラゾリウム、イミダゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム及びピロリウム等の構造を有する第4級アンモニウムカチオン基が挙げられ、その中でも好ましくは、ピリジニウム、ピラゾリウム又はイミダゾリウム構造を有する第4級アンモニウムカチオン基であり、さらに好ましくは下記一般式(1)、(2)及び(3)で表されるカチオン基からなる群より選ばれるカチオン基である。本発明のスラリー組成物は、2種以上のカチオン化合物を含有してもよい。
【化1】

[式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2、R3及びR4は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(2)中、R5及びR6は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R7及びR8は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(3)中、R9及びR10は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0014】
前記一般式(1)で表されるカチオン基としては、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、R1は、炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル基又はエチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。また、同様の観点から、R2、R3、及びR4は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基がより好ましい。前記一般式(1)で表されるカチオン基としては、例えば1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム等のカチオン基が挙げられる。これらの中でも、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、1−エチル−3−メチルピリジニウム及び1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウムが好ましい。
【0015】
前記一般式(2)で表されるカチオン基としては、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、R5及びR6は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基であり、R5及びR6の少なくともいずれか一方が、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。また、同様の観点からR5及びR6の炭素数の合計は2〜5が好ましく、2〜3がより好ましく、2がさらに好ましい。また、同様の観点から、R7及びR8は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましく、R7及びR8の炭素数の合計が1であることがさらにより好ましい。前記一般式(2)で表されるカチオン基としては、例えば1,2−ジメチルピラゾリウム、1−メチル−2−エチルピラゾリウム、1−メチル−2−プロピルピラゾリウム、1−メチル−2−ブチルピラゾリウム、1,2−ジエチルピラゾリウム、1,2−ジプロピルピラゾリウム、1,2−ジブチルピラゾリウム、1,2,4−トリメチルピラゾリウム、1,2,3,5−テトラメチルピラゾリウム、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−エチル−3−メトキシ−2,5−ジメチルピラゾリウム、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム等のカチオン基が挙げられる。これらの中でも、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、1,2,4−トリメチルピラゾリウムが好ましい。
【0016】
一般式(3)で表されるカチオン基としては、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、R9及びR10は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基であり、R9及びR10の少なくともいずれか一方が、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。また、同様の観点からR9及びR10の炭素数の合計は2〜5が好ましく、3〜5がより好ましい。また、同様の観点から、R11は、水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、水素原子、又は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基がより好ましく、水素原子がさらに好ましい。前記一般式(3)で表されるカチオン基としては、例えば1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム等のカチオン基が挙げられる。これらの中でも、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムが好ましく、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムがさらに好ましい。
【0017】
本発明におけるカチオン基としては、セラミックシートの帯電防止性向上の観点から、一般式(1)及び(3)で表されるカチオン基が好ましく、一般式(3)で表されるカチオン基がより好ましい。また、セラミックシートの剥離性向上の観点から、一般式(3)で表されるカチオン基が好ましい。また、セラミックシートの靭性向上の観点から、一般式(2)及び(3)で表されるカチオン基が好ましく、一般式(3)で表されるカチオン基がより好ましい。これらの観点を総合すると、本発明におけるカチオン基としては、一般式(3)で表されるカチオン基がさらにより好ましい。
【0018】
前記カチオン基の分子量は、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、300以下が好ましく、200以下がより好ましく、150以下がさらに好ましく、120以下がさらにより好ましい。同様の観点から、前記カチオン基の分子量は、90以上が好ましく、95以上がより好ましく、100以上がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、前記カチオン基の分子量は90〜300が好ましく、95〜300がより好ましく、95〜200がさらに好ましく、100〜150がさらにより好ましく、100〜120がさらによりより好ましい。
【0019】
前記カチオン化合物は、前述のカチオン基とアニオン基との塩であってもよく、非水系溶媒の溶液であっても良い。前記アニオン基としては、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点、並びに電気特性の低下やさびの発生原因となりうるハロゲン化合物を含まないことから、有機アニオン基が好ましい。
【0020】
前記有機アニオン基としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、イソカプロン酸、エチル酪酸、メチル吉草酸、イソカプリル酸、プロピル吉草酸、エチルカプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、イソクロトン酸、3−ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプチン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、オレイン酸、3−メチルクロトン酸などの飽和及び不飽和の脂肪族カルボン酸;トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、sec−ブチル安息香酸、tert−ブチル安息香酸、レゾルシン安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸などの芳香族カルボン酸;メチルシュウ酸、エチルシュウ酸などのアルキルシュウ酸;メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、アルキル(炭素数8〜24)ベンゼンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸並びにメチル硫酸、エチル硫酸、ヒドロキシエチル硫酸などのアルキル硫酸及びヒドロキシアルキル硫酸等のアニオン基が挙げられる。これらの中でもセラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、アルキルシュウ酸、アルキル硫酸及び脂肪族カルボン酸のアニオン基が好ましく、アルキル硫酸及び脂肪族カルボン酸のアニオン基がより好ましく、メチル硫酸、エチル硫酸及び酢酸のアニオン基がさらに好ましく、帯電防止性及び靭性向上の観点から、エチル硫酸のアニオン基がさらにより好ましい。
【0021】
本発明のスラリー組成物中の前記カチオン化合物の含有量は、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、塩基性セラミックス材料100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましく、0.2重量部以上がさらに好ましく、0.3重量部以上がさらにより好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の可塑性の増加を抑制してセラミックス成形品の強度を維持する観点から、スラリー組成物中の前記カチオン化合物の含有量は、塩基性セラミックス材料100重量部に対して2.0重量部以下が好ましく、1.8重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらに好ましく、1.2重量部以下がさらにより好ましい。これらの観点を総合すると、スラリー組成物中の前記カチオン化合物の含有量は、塩基性セラミックス材料100重量部に対して0.05〜2.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜1.8重量部、さらに好ましくは0.2〜1.5重量部、さらにより好ましくは0.3〜1.2重量部である。
【0022】
さらに、本発明のスラリー組成物中の前記カチオン化合物の含有量は、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、ポリビニルアセタール樹脂1.0重量部に対し0.01重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.015重量部以上、さらに好ましくは0.02重量部以上、さらにより好ましくは0.03重量部以上である。また、ポリビニルアセタール樹脂の可塑性の増加を抑制してセラミックス成形品の強度を維持する観点から、スラリー組成物中の前記カチオン化合物の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂1.0重量部に対し0.2重量部以下が好ましく、より好ましくは0.18重量部以下、さらに好ましくは0.15重量部以下、さらにより好ましくは0.12重量部以下である。これらの観点を総合すると、スラリー組成物中の前記カチオン化合物の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂1.0重量部に対し0.01〜0.2重量部が好ましく、より好ましくは0.015〜0.18重量部、さらに好ましくは0.02〜0.15重量部、さらにより好ましくは0.03〜0.12重量部である。
【0023】
本発明のスラリー組成物中に、帯電防止剤として前記カチオン化合物以外の帯電防止剤を含有してもよい。帯電防止剤中の前記カチオン化合物の含有量は、帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、帯電防止剤に対し80重量%以上が好ましく90重量%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらにより好ましい。
【0024】
[高分子分散剤]
本発明のスラリー組成物は、高分子分散剤を含有する。前記高分子分散剤としては、例えばカチオン性高分子、ノニオン性高分子、アニオン性高分子が挙げられる。
【0025】
前記高分子分散剤の1つの態様としては、非水系溶媒に可溶なビニル共重合体であり、かかるビニル共重合体としては、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステル、アリルエーテル、オレフィン等を主成分とするラジカル性不飽和単量体のビニル共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;及び、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートが挙げられる。また、アリルエーテルとしては、(メトキシ−)ポリエチレングリコール−アリルエーテル、(ブトキシ−)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−アリルエーテル等の(アルコキシ−)ポリオキシアルキレン−アリルエーテルが挙げられる。オレフィンとしては、ヘキサデセン、エイコセン等のα−オレフィンが挙げられる。
【0026】
前記1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステル、アリルエーテル又はオレフィンと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸等の酸性モノマーとを共重合させることで、アニオン性高分子分散剤が得られる。市販品として、日油社製の「マリアリム AKM−0531」、「マリアリム AWS−0851」、「マリアリム AAB−0851」、「マリアリム AFB−1521」がある。
【0027】
また、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、2−エチル−5−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、2−メチル−N−ビニルイミダゾール等の塩基性モノマーを共重合させることで、カチオン性高分子分散剤が得られる。市販品として、BASF社製の「Efca 4310」、「Efca 4320」などがある。また、(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の中性官能基を有するモノマーを共重合させることで、ノニオン性高分子分散剤が得られる。市販品として、アイエスピー・ジャパン社製の「アンタロン V−216(ビニルピロリドン/ヘキサデセンコポリマー)」、「アンタロン V−220(ビニルピロリドン/エイコセンコポリマー)」などがある。
【0028】
前記高分子分散剤は、前記ビニル共重合体に限定されず、変性ポリアミド系、変性ポリウレタン系、変性ポリエステル系、ポリビニルピロリドン系などの高分子分散剤も使用することができる。例えば、ポリエチレンイミンのようなポリアルキレンイミン又はポリアリルアミンと、ヒドロキシステアリン酸の重合体又は環状エステルの重合体のような遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとを反応させることにより形成されたアミド又は塩よりなり、その中でそれぞれのポリアルキレンイミン主鎖又はポリアリルアミン主鎖に2つ以上のポリエステル鎖が結合されている分散剤が挙げられる。市販品として、ルブリゾール社製の「ソルスパース 26000」、「ソルスパース 28000」、「ソルスパース 32000」、「ソルスパース 33000」、「ソルスパース 36000」、「ソルスパース 39000」、味の素ファインテクノ社製の「アジスパー PB−711」、「アジスパー PB−821」、「アジスパー PB−822」、「アジスパー PB−814」、「アジスパー PB−824」などがある。また、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対し、遊離のカルボン酸を有するポリエステル、又は水酸基、アミノ基、トリアゾル基、ピリミジン基、イミダゾール基、ピリジン基、モルホリン基、ピロリジン基、ピペラジン基、ベンゾイミダゾリン基、ベンゾチアゾール基及びトリアジル基の中から選ばれる官能基を有する化合物を各々付加反応させて得られる分散剤が挙げられる。市販品として、ビックケミー・ジャパン社製の「DISPERBYK−161」、「DISPERBYK−162」、「DISPERBYK−167」、ルブリゾール社製の「ソルスパース 76500」などがある。さらには、スチレン若しくはその誘導体、(メタ)アクリル酸若しくはそのエステル又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの共重合体に、ポリイソシアネートを付加反応させて得られる生成物に、さらにアミノ基又はイミダゾール基を有する化合物を付加反応させて得られる分散剤などが挙げられる。市販品として、BASF社製の「Efca 4046」、「Efca 4047」などがある。またさらには、ポリビニルピロリドン系の分散剤が挙げられ、市販品として、アイエスピー・ジャパン社製の「PVP K−15」、「PVP K−30」、「PVP K−60」、「PVP K−90」などがある。
【0029】
本発明のスラリー組成物に使用する高分子分散剤としては、帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点並びに塩基性セラミックス材料の分散性向上の観点から、共重合体であることが好ましく、塩基性セラミックス材料に対する親和性の高い構成単位(吸着ユニット)と非水系溶媒に対する親和性の高い構成単位(分散ユニット)とを有する共重合体がより好ましい。吸着ユニットを有する共重合体は、セラミックス材料表面に効率よく吸着し、スラリー組成物中においてセラミックス材料を被覆しやすくなると考えられる。また、分散ユニットは非水系溶媒中において立体的に拡がり、スラリー組成物中の塩基性セラミックス材料と本発明のカチオン化合物との相互作用がより小さくなり、結果として、より優れた帯電防止能と良好な剥離性を発現し、セラミックシートの靭性がさらに向上すると考えられる。
【0030】
共重合体の吸着ユニットとしては、カチオン性、ノニオン性及びアニオン性の構成単位が挙げられる。前記カチオン性の構成単位としては、帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、アルキレンイミン及びアリルアミン由来の構成単位が好ましい。また、前記ノニオン性の構成単位としては、同様の観点から、(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドン由来の構成単位が好ましい。また、前記アニオン性の構成単位としては、同様の観点から、(メタ)アクリル酸及び(無水)マレイン酸由来の構成単位が好ましく、帯電防止性向上の観点から、(メタ)アクリル酸由来の構成単位がより好ましい。
【0031】
共重合体の分散ユニットとしては、ポリオキシアルキレン基、ポリエステル基、ポリ(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリレート基、アルキル基、アルキレン基を有する構成単位等が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点からポリオキシアルキレン基、ポリエステル基、ポリヒドロキシエチルメタクリレート基、ポリメチルメタクリレート基、アルキル基及びアルキレン基から選ばれる基を有する構成単位が好ましく、ポリオキシアルキレン基、ポリカプロラクトン基及びアルキル基から選ばれる基を有する構成単位がより好ましく、ポリオキシアルキレン基を有する構成単位がさらに好ましく、ポリオキシエチレン基を有する構成単位がさらにより好ましい。また、同様の観点から(アルコキシ−)ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、(アルコキシ−)ポリオキシアルキレン−アリルエーテル、カルボキシ基を有するポリエステル及びα−オレフィン由来の構成単位が好ましく、(アルコキシ−)ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート由来の構成単位がより好ましい。
【0032】
本発明のスラリー組成物に使用する高分子分散剤としては、帯電防止性向上の観点からは、カチオン性及びアニオン性であることが好ましく、剥離性向上の観点からは、ノニオン性及びアニオン性であることが好ましい。これらの観点を総合すると、高分子分散剤としては、アニオン性の高分子分散剤がより好ましい。前記カチオン性高分子分散剤としては、帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点から、ポリエチレンイミンとヒドロキシステアリン酸のポリエステルとの反応により形成されたアミド又は塩よりなり、その中でそれぞれのポリエチレンイミン主鎖に2つ以上のポリエステル鎖が結合されている共重合体が好ましい。また、前記ノニオン性高分子分散剤としては、帯電防止性、剥離性及び靭性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル、(アルコキシ)ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる単量体の共重合体、並びにビニルピロリドンとα−オレフィンとの共重合体が好ましく、帯電防止性及び靭性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル、(アルコキシ)ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる単量体の共重合体がさらに好ましい。さらに、前記アニオン性高分子分散剤としては、帯電防止性、剥離性及び靭性の観点から、単量体として、(メタ)アクリル酸又は(無水)マレイン酸と、(アルコキシ)ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート又は(アルコキシ)ポリオキシアルキレンアリルエーテルとを有してなる共重合体が好ましく、帯電防止性の観点から、単量体として、(メタ)アクリル酸と(アルコキシ)ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートとを有してなる共重合体がさらに好ましい。
【0033】
前記高分子分散剤の重量平均分子量は、セラミックシートの帯電防止性及び塩基性セラミック材料の分散性の観点から、2000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、6000以上がさらに好ましく、8000以上がさらにより好ましい。また、セラミックシートの剥離性及び塩基性セラミック材料の分散性の観点から、200000以下が好ましく、120000以下がより好ましく、60000以下がさらに好ましく、36000以下がさらにより好ましい。これらの観点を総合すると、前記高分子分散剤の重量平均分子量は、2000〜200000が好ましく、4000〜120000がより好ましく、6000〜60000がさらに好ましく、8000〜36000がさらにより好ましい。
【0034】
本発明のスラリー組成物中の前記高分子分散剤の含有量は、一般的に、塩基性セラミックス材料の比表面積によって調整され、標準的な含有量として、塩基性セラミックス材料100重量部に対する重量部として、BET比表面積[単位m2/g]を5で割った値を目安にできる。例えば、塩基性セラミックス材料として、チタン酸バリウムを用いる場合は、チタン酸バリウム100重量部に対する高分子分散剤の含有量は、粒径200nm(比表面積5m2/g)であれば1重量部、粒径100nm(比表面積10m2/g)であれば2重量部、粒径50nm(比表面積20m2/g)であれば4重量部を目安にできる。
【0035】
高分子分散剤の含有量は、塩基性セラミックス材料100重量部に対する重量部として、塩基性セラミックス材料の分散性の観点から、塩基性セラミックス材料のBET比表面積[単位m2/g]を5で割った値の、0.3倍以上が好ましく、0.4倍以上がより好ましい。また、セラミックシートの剥離性の観点から、塩基性セラミックス材料のBET比表面積[単位m2/g]を5で割った値の、1.5倍以下が好ましく、1.2倍以下がより好ましい。これらの観点を総合すると、前記高分子分散剤の含有量は、塩基性セラミックス材料100重量部に対する重量部として、塩基性セラミックス材料のBET比表面積[単位m2/g]を5で割った値の、0.3〜1.5倍が好ましく、0.4〜1.2倍がより好ましい。
【0036】
塩基性セラミックス材料のBET比表面積が5m2/gであれば、高分子分散剤の含有量は、塩基性セラミックス材料の分散性の観点から、塩基性セラミックス材料100重量部に対して0.3重量部以上が好ましく、より好ましくは0.4重量部以上である。また、セラミックシートの剥離性の観点から、塩基性セラミックス材料100重量部に対して1.5重量部以下が好ましく、より好ましくは1.2重量部以下である。
【0037】
塩基性セラミックス材料のBET比表面積が10m2/gであれば、高分子分散剤の含有量は、塩基性セラミックス材料の分散性の観点から、塩基性セラミックス材料100重量部に対して0.6重量部以上が好ましく、より好ましくは0.8重量部以上である。また、セラミックシートの剥離性の観点から塩基性セラミックス材料100重量部に対して3.0重量部以下が好ましく、より好ましくは2.4重量部以下である。
【0038】
塩基性セラミックス材料のBET比表面積が20m2/gであれば、高分子分散剤の含有量は、塩基性セラミックス材料の分散性の観点から、塩基性セラミックス材料100重量部に対して1.2重量部以上が好ましく、より好ましくは1.6重量部以上である。また、セラミックシートの剥離性の観点から塩基性セラミックス材料100重量部に対して6.0重量部以下が好ましく、より好ましくは4.8重量部以下である。塩基性セラミックス材料のBET比表面積がその他の値の場合には同様に計算して高分子分散剤の好ましい含有量を決定できる。
【0039】
[非水系溶媒]
本発明のスラリー組成物は、非水系溶媒を含有する。前記非水系溶媒としては非水系(有機溶剤)であれば特に限定されない。前記非水系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール(IPA)、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−オクタノール、ジアセトンアルコール、ターピネオール、ブチルカルビトール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)等のケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル等のエステル類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ナフサ、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族類が挙げられる。
【0040】
前記非水系溶媒としては本発明のスラリー組成物に含有されるポリビニルアセタール樹脂の溶解性の観点から、アルコール類及びセロソルブ類が好ましく、アルコール類がより好ましく、メタノール、エタノール及びiso−プロパノールがさらに好ましく、エタノールがさらにより好ましい。さらに、スラリー組成物から非水系溶媒を穏やかに除去して均一なセラミックシートを成形する観点から、沸点の異なる2種以上の有機溶剤の混合物が好ましく、アルコール類及びセロソルブ類と共沸しにくい他の有機溶剤と、アルコール類及びセロソルブ類との混合物がより好ましい。前記アルコール類及びセロソルブ類と共沸しにくい他の有機溶剤としては、炭化水素類及び芳香族類が好ましく、芳香族類がより好ましく、トルエンがさらに好ましい。これらの観点を総合すると、非水系溶媒としては芳香族類とアルコール類の混合物が好ましく、トルエンとエタノールとの混合物がより好ましい。非水系溶媒におけるトルエンとエタノールの容積比(トルエン/エタノール)は、同様の観点から、10/90〜75/25が好ましく、25/75〜65/35がより好ましく、40/60〜55/45がさらに好ましい。
【0041】
[塩基性セラミックス材料]
本発明のスラリー組成物は、塩基性セラミックス材料を含有する。本明細書において「塩基性セラミックス材料」とは、塩基量が酸量よりも大きな値をもつ無機化合物であり、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、複合酸化物などが含まれる。具体的には、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩、及び、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどの複合酸化物等が挙げられる。それらの中でも積層セラミック電子部品性能向上の観点から、ジルコン酸の複合酸化物及びチタン酸の複合酸化物が好ましく、チタン酸の複合酸化物がより好ましく、チタン酸バリウムがさらに好ましい。
【0042】
一般に、セラミックス材料の表面は酸点、塩基点の両方をもっている。前記酸点の量(酸量)及び前記塩基点の量(塩基量)はそれぞれ逆滴定法で求めることが可能であり、それによりセラミックス材料が酸性であるか塩基性であるか同定することができる。逆滴定法とは、あらかじめ濃度が既知である塩基性試薬(又は酸性試薬)を一定の割合でセラミックス材料と混合し、十分に中和させた後、遠心分離機などで、固液分離させ、その上澄み液を滴定し、減少した塩基性試薬の量(又は酸性試薬の量)から酸量(又は塩基量)を求める方法である。本明細書において、塩基量及び酸量は下記により求められる。
【0043】
1)塩基量の求め方
セラミックス材料2gを精秤(サンプル量)し、1/100N 酢酸−トルエン/エタノール(容量比48/52)溶液30mLに入れ、超音波洗浄器(Branson社製、型式1510J−MT)で1時間分散処理する。24時間静置後、セラミックス材料分散液の一部を、遠心分離機(日立社製型式CP−56G)を用いて、25,000rpm、60分の条件で固液分離する。分離した液体部10mLを、フェノールフタレイン指示薬が添加されているトルエン/エタノール(容量比2/1)溶液20mLに加えた後、1/100N 水酸化カリウム−エタノール溶液にて中和滴定する。この時の滴定量をXmL、1/100N 酢酸−トルエン/エタノール(容量比48/52)溶液10mLを中和するのに必要な滴定量をBmL、サンプル量をSgとすると、以下の式で、塩基量が求められる。
塩基量(μmol/g)=30×(B−X)/S
【0044】
2)酸量の求め方
セラミックス材料2gを精秤(サンプル量)し、1/100N n−ブチルアミン−トルエン/エタノール(容量比48/52)溶液30mLに入れ、超音波洗浄器(Branson社製、型式1510J−MT)で1時間分散処理する。24時間静置後、セラミックス材料分散液の一部を、遠心分離機(日立社製型式CP−56G)を用いて、25,000rpm、60分の条件で固液分離する。分離した液体部10mLを、ブロムクレゾールグリーン指示薬が添加されているトルエン/エタノール(容量比2/1)溶液20mLに加えた後、1/100N 塩酸−エタノール溶液にて中和滴定する。この時の滴定量をXmL、1/100N n−ブチルアミン−トルエン/エタノール(容量比48/52)溶液10mLを中和するのに必要な滴定量をBmL、サンプル量をSgとすると、以下の式で、酸量が求められる。
酸量(μmol/g)=30×(B−X)/S
【0045】
本発明のスラリー組成物中の塩基性セラミックス材料の含有量(固形分の含有量)は、シート成形に適するという観点から、スラリー組成物に対して10〜50重量%が好ましく、より好ましくは15〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。
【0046】
本発明における塩基性セラミックス材料のBET比表面積に基づく平均粒径は、セラミックシートの薄膜化の観点から500nm以下が好ましく、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。また、スラリー組成物の取扱い及び塩基性セラミックス材料の微分散性とセラミックシートの帯電防止性の両立の観点から、5nm以上が好ましく、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。これらの観点を総合すると、塩基性セラミックス材料の平均粒径としては、5〜500nmが好ましく、より好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは20〜120nmである。
【0047】
なお、本明細書において、塩基性セラミックス材料の平均粒径(BET比表面積に基づく平均粒径)は、好ましくは粉末状の塩基性セラミックス材料の平均粒径をいい、粒子径R(m)の球と仮定して、窒素吸着法により測定されたBET比表面積S(m2/g)及び塩基性セラミックス材料の比重ρ(g/cm3)を用いて、求めることができる。すなわち、BET比表面積は単位重量当たりの表面積であるので、表面積をA(m2)、粒子の重量をW(g)とすると、
S(m2/g)=A(m2)/W(g)
=[4×π×(R/2)2]/[4/3×π×(R/2)3×ρ×106
=6/(R×ρ×106
の関係式が求められる。粒子径の単位を変換すると、
R(nm)=6000/(S×ρ)
の式となり、平均粒径(BET比表面積に基づく平均粒径)求めることができる。例えば、チタン酸バリウム(比重6.0)のBET比表面積が5.0(m2/g)であれば、その平均粒径(BET比表面積に基づく平均粒径)は、200nmとなる。
【0048】
[ポリビニルアセタール樹脂]
本発明のスラリー組成物はポリビニルアセタール樹脂を含有する。前記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアセタール化して得られる。アセタール化の方法は特に限定されるものではなく、例えば、ポリビニルアルコールを温水に溶解し、このポリビニルアルコール水溶液を所定温度に保持し、アルデヒド及び酸触媒を加え、撹拌しながらアセタール化反応を進行させ、次いで、反応温度を上げて熟成し、反応を完結させた後、中和、洗浄、乾燥を行う方法等が挙げられる。
【0049】
前記アセタール化反応に用いられるアルデヒドは、特に限定されるものではなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクテルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、アミルアルデヒド、等の脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等の芳香族アルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルデヒドとしては、なかでも、アセタール化反応に優れ、かつセラミックシート積層時の圧着性等の優れた諸特性を付与し得るブチルアルデヒド及びアセトアルデヒドが好ましく、セラミックシートの柔軟性の観点から、ブチルアルデヒドがより好ましい。
【0050】
前記ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度が55〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは65〜75モル%である。アセタール化度が55モル%以上であると、非極性溶剤への溶解性が向上し、セラミックシートの可撓性が向上する。一方、アセタール化度が80モル%以下であると、得られるセラミックシートの塗膜強度が向上する。ここで、アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基のうちアセタール化された水酸基の割合をいい、例えば、ポリビニルブチラール樹脂の場合、JIS K 6728に準拠して測定することができる。
【0051】
また、前記ポリビニルアセタール樹脂は、残存水酸基量が10〜45モル%であることが好ましく、15〜40モル%であることがより好ましい。残存水酸基量が10モル%以上では、ポリビニルアセタール樹脂の靭性が向上し、塩基性セラミック材料の分散性が向上する。一方、残存水酸基量が45モル%以下であると、有機溶剤に溶けやすくなる。ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂の場合、JIS K 6728に準拠して測定することができる。
【0052】
前記ポリビニルアセタール樹脂は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。ポリビニルアセタール樹脂としては、セラミックシートの柔軟性及びセラミックシート積層時の圧着性の観点から、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の市販品としては、積水化学工業社製エスレックBシリーズの「BL−1」、「BL−2」、「BL−5」、「BM−1」、「BM−2」、「BM−5」、「BH−3」、「BX−1」、「BX−3」及び「BX−5」、電気化学工業社製デンカブチラールシリーズの「#3000−1」、「#3000−2」、「#3000−4」及び「#3000−K」並びにクラレ社製モビタールシリーズの「B30T」、「B30H」、「B45M」、「B45H」、「B60T」及び「B60H」などが挙げられる。
【0053】
本発明のスラリー組成物中におけるポリビニルアセタール樹脂の含有量は、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点並びにバインダー機能発揮の観点から、塩基性セラミックス材料100重量部に対して2重量部以上が好ましく、より好ましくは4重量部以上、さらに好ましくは6重量部以上である。また、セラミックシートの帯電防止性、剥離性及び靭性向上の観点並びにスラリー組成物の粘度を低下させてシートを形成しやすくする観点から、塩基性セラミックス材料100重量部に対して20重量部以下が好ましく、より好ましくは18重量部以下、さらに好ましくは16重量部以下である。これらの観点を総合すると、本発明のスラリー組成物中におけるポリビニルアセタール樹脂の含有量は、塩基性セラミックス材料100重量部に対して2〜20重量部が好ましく、より好ましくは4〜18重量部、さらに好ましくは6〜16重量部である。
【0054】
[その他の成分]
本発明のスラリー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等のバインダー樹脂、可塑剤、潤滑剤、分散助剤等の低分子化合物等の従来公知の添加剤を含有してもよい。上記可塑剤としては特に限定されないが、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸ジエステル、トリエチレングリコール2−エチルヘキシル等のアルキレングリコールジエステル等が挙げられる。なかでも、揮発性が低く、シートの柔軟性を保ちやすいことから、DOPが好適である。本発明のスラリー組成物における前記可塑剤の含有量は、セラミックシートの柔軟性の観点から、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、15重量部以上がさらに好ましい。また、セラミックシートの剥離性の観点から、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して40重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、25重量部以下がさらに好ましい。これらの観点を総合すると、スラリー組成物における前記可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して5〜40重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましく、15〜25重量部がさらに好ましい。
【0055】
[スラリー組成物]
本発明のスラリー組成物は、例えば、前記高分子分散剤、前記塩基性セラミックス材料及び前記非水系溶媒を混合する工程を含む製造方法によって製造できる。前記の混合工程は、例えば、前記高分子分散剤、前記塩基性セラミックス材料及び前記非水系溶媒を、ジルコニアビーズ等と共に混合することを含む。その後、前記カチオン化合物及び前記ポリビニルアセタール樹脂を含む残りの成分を含有させて本発明のスラリー組成物を得ることができる。各成分の含有量は上述を参照して決定できる。
【0056】
本発明のスラリー組成物は、電子機器分野に用いられるセラミックス成形品に用いることができる。例えば、塩基性セラミックス含有スラリー組成物を用いてシート、鋳込み、プレス、押出し、射出などの成形法により薄いセラミックシートを成形した場合、本発明のスラリー組成物であれば、またその成形品の帯電防止性と剥離性を向上でき、さらにシートの靭性(破断応力及び伸び)を向上することができる。なお、本明細書において「薄層化セラミックシート」又は「薄いセラミックシート」とは、厚みが好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下であるセラミックシートをいう。厚みの下限は特に制限されないが0μmを超え、例えば0.02μm以上である。
【0057】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0058】
<1> 含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物、高分子分散剤、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料及びポリビニルアセタール樹脂を含有する、スラリー組成物。
【0059】
<2> 前記カチオン基が、芳香環中に第4級アンモニウムを有するカチオン基である、<1>記載のスラリー組成物。
<3> 前記カチオン基が、ピリジニウム、ピラゾリウム、イミダゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム及びピロリウム構造からなる群より選ばれる1種以上の構造を有するカチオン基である、<1>又は<2>記載のスラリー組成物。
<4> 前記カチオン基が、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表されるカチオン基からなる群より選ばれるカチオン基である、<1>から<3>のいずれかに記載のスラリー組成物。
【化2】

[式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2、R3及びR4は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(2)中、R5及びR6は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R7及びR8は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(3)中、R9及びR10は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
<5> 前記カチオン基が、前記一般式(3)で表されるカチオン基である、<1>から<4>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<6> 前記カチオン基が、前記一般式(3)で表されるカチオン基であり、前記一般式(3)におけるR9及びR10の炭素数の合計が、2〜5である、<1>から<5>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<7> 前記カチオン基の分子量が、300以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下であり、又は、90以上、好ましくは95以上、より好ましくは100以上であり、又は、90〜300、好ましくは95〜300、より好ましくは95〜200、さらに好ましくは100〜150、さらにより好ましくは100〜120である、<1>から<6>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<8> 前記カチオン化合物が、前記カチオン基と、アニオン基との塩であり、前記アニオン基が、有機アニオン基である、<1>から<7>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<9> 前記アニオン基が、アルキル硫酸及び脂肪族カルボン酸からなる群から選ばれる1種以上の酸のアニオン基である、<1>から<8>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<10> 前記カチオン化合物の含有量が、前記塩基性セラミックス材料100重量部に対して0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.3重量部以上であり、又は、塩基性セラミックス材料100重量部に対して2.0重量部以下、好ましくは1.8重量部以下、より好ましくは1.5重量部以下、さらに好ましくは1.2重量部以下であり、又は、塩基性セラミックス材料100重量部に対して0.05〜2.0重量部好ましくは0.1〜1.8重量部、さらに好ましくは0.2〜1.5重量部、よりさらに好ましくは0.3〜1.2重量部である、<1>から<9>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<11> スラリー組成物中の前記カチオン化合物の含有量が、ポリビニルアセタール樹脂1.0重量部に対し0.01重量部以上、好ましくは0.015重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上、さらに好ましくは0.03重量部以上であり、又は、ポリビニルアセタール樹脂1.0重量部に対し0.2重量部以下、好ましくは0.18重量部以下、より好ましくは0.15重量部以下、さらに好ましくは0.12重量部以下であり、又は、ポリビニルアセタール樹脂1.0重量部に対し0.01〜0.2重量部、好ましくは0.015〜0.18重量部、より好ましくは0.02〜0.15重量部、さらに好ましくは0.03〜0.12重量部である、<1>から<10>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<12> 前記高分子分散剤の重量平均分子量が、2000以上、好ましくは4000以上、より好ましくは6000以上、さらに好ましくは8000以上であり、又は、200000以下、好ましくは120000以下、より好ましくは60000以下、さらに好ましくは36000以下であり、又は、2000〜200000、好ましくは4000〜120000、より好ましくは6000〜60000であり、さらに好ましくは8000〜36000である、<1>から<11>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<13> スラリー組成物中の前記高分子分散剤の含有量が、塩基性セラミックス材料100重量部に対する重量部として、塩基性セラミックス材料のBET比表面積[単位m2/g]を5で割った値の0.3倍以上、好ましくは0.4倍以上であり、又は、塩基性セラミックス材料のBET比表面積[単位m2/g]を5で割った値の1.5倍以下、好ましくは1.2倍以下であり、又は塩基性セラミックス材料のBET比表面積[単位m2/g]を5で割った値の0.3〜1.5倍、好ましくは0.4〜1.2倍である、<1>から<12>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<14> 前記高分子分散剤が、アニオン性高分子分散剤である、<1>から<13>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<15> 前記スラリー組成物がさらに、フタル酸ジエステル、アジピン酸ジエステル、及びアルキレングリコールジエステルからなる群から選択される可塑剤を含み、好ましくはフタル酸ジエステルを含み、より好ましくはジオクチルフタレートを含む、<1>から<14>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<16> 前記可塑剤の含有量が、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して5重量部以上、好ましくは10重量部以上、より好ましく15重量部以上であり、又は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して40重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下であり、又は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部、より好ましくは15〜25重量部である、<15>記載のスラリー組成物。
<17> 前記塩基性セラミックス材料が、ジルコン酸の複合酸化物及びチタン酸の複合酸化物からなる群から選択される1種以上であり、好ましくはチタン酸の複合酸化物であり、より好ましくはチタン酸バリウムである、<1>から<16>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<18> 前記塩基性セラミックス材料のBET比表面積に基づく平均粒径が、500nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下であり、又は、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上であり、又は、5〜500nm、好ましくは10〜200nm、より好ましくは20〜120nmである、<1>から<17>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<19> 前記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である、<1>から<18>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<20> 前記高分子分散剤が、共重合体、好ましくは塩基性セラミックス材料に対する親和性の高い構成単位と非水系溶媒に対する親和性の高い構成単位とを有する共重合体、より好ましくは(メタ)アクリル酸由来の構成単位とポリオキシエチレン基を有する構成単位とを有する項重合体である、<1>から<19>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<21> 前記非水系溶媒が、アルコール類及びセロソルブ類から選ばれる非水系溶媒を有し、好ましくはアルコール類を有し、より好ましくはエタノールを有する、<1>から<20>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<22> 前記非水系溶媒が、炭化水素類及び芳香族類から選ばれる非水系溶媒を有し、好ましくは芳香族類を有し、より好ましくはトルエンを有する、<1>から<21>のいずれかに記載のスラリー組成物。
<23> <1>から<22>のいずれかに記載のスラリー組成物を用いてセラミックシートを形成することを含む、セラミックシートの製造方法。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0061】
1.スラリー組成物(実施例1〜17、比較例1〜9)の調製
下記表1に示すカチオン化合物A1〜A13、下記表2に示す高分子分散剤B1〜B7、塩基性セラミックス材料及びポリビニルアセタール樹脂を用い、実施例1〜17及び比較例1〜9のスラリー組成物を調製した。
【0062】
[カチオン化合物]
実施例1〜17及び比較例7のスラリー組成物では下記A1〜A8のカチオン化合物を使用した。一方、比較例2〜6及び比較例9ではA1〜A8のカチオン化合物に換えて下記A9〜A13のカチオン化合物を使用した。使用したカチオン化合物A1〜A13を、カチオン部の分子量とともに、下記表1にまとめる。
【0063】
A1:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム エチルサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A2:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート(シグマアルドリッチ社製)
A3:1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム エチルサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A4:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム エチルサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A5:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート(シグマアルドリッチ社製)
A6:1,2,4−トリメチルピラゾリウム メチルサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A7:1−エチル−3−メチルピリジニウム エチルサルフェート(東京化成社製)
A8:1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウム エチルサルフェート(東京化成社製)
A9:1−メチルイミダゾリウム ハイドロジェンサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A10:トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム メチルサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A11:トリブチルメチルアンモニウム メチルサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A12:オクチル−2−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム エチルサルフェート(シグマアルドリッチ社製)
A13:ラウリルエチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム エチルサルフェート(ラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加物を硫酸ジエチルと反応させることで合成した4級アンモニウム塩)
【0064】
【表1】

【0065】
[高分子分散剤]
実施例1〜17、比較例1〜6、8及び9のスラリー組成物では下記表2の高分子分散剤B1〜B7を使用した。なお、高分子分散剤B3、B5及びB6は、下記の条件で合成した。また、各高分子分散剤の不揮発分の測定及び重量平均分子量の測定は、下記条件で行った。
【0066】
【表2】

【0067】
〔高分子分散剤の製造例1〕
還流管、攪拌装置、温度計、窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコにメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製) 1.5g、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート(PEGMA23:新中村化学社製 NK−エステル M−230G、エチレンオキサイドの平均付加モル数 23) 5.5g、メタクリルアミド(和光純薬工業社製) 3.0g、エタノール(和光純薬工業製) 12.25gを仕込み、窒素置換し、65℃に加熱した。槽内温度が65℃に到達後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製 V−65) 0.3g、エタノール 2.5gの混合物を添加した。その後、メタクリル酸メチル 13.5g、PEGMA23 49.5g、メタクリルアミド 27.0g、エタノール 110.25g、V−65 2.7gの混合液を3時間かけて滴下した。65℃で3時間熟成した後、室温まで冷却した。濃度調整のためにエタノールを添加し、高分子分散剤B3のエタノール溶液を得た。高分子分散剤B3溶液の不揮発分は33.6重量%で、高分子分散剤B3の重量平均分子量は32900であった。
【0068】
〔高分子分散剤の製造例2〕
還流管、攪拌装置、温度計、窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコにメトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート(PEGMA23:新中村化学社製 NK−エステル M−230G、エチレンオキサイドの平均付加モル数 23) 8.5g、メタクリル酸(和光純薬工業社製) 1.5g、エタノール(和光純薬工業製) 10g、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(和光純薬工業社製) 0.1gを仕込み、窒素置換し、65℃に加熱した。槽内温度が65℃に到達後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製 V−65) 0.3g、エタノール 2.5gの混合物を添加した。その後、PEGMA23 76.5g、メタクリル酸 13.5g、エタノール 90g、V−65 2.7g、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 0.9gの混合液を3時間かけて滴下した。65℃で3時間熟成した後、室温まで冷却した。濃度調整のためにエタノールを添加し、高分子分散剤B5のエタノール溶液を得た。高分子分散剤B5溶液の不揮発分は53.2重量%で、高分子分散剤B5の重量平均分子量は17400であった。
【0069】
〔高分子分散剤の製造例3〕
還流管、攪拌装置、温度計、窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコにメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製) 1.5g、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート(PEGMA23:新中村化学社製 NK−エステル M−230G、エチレンオキサイドの平均付加モル数 23) 7.0g、メタクリル酸(和光純薬工業社製) 1.5g、エタノール(和光純薬工業製) 15g、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(和光純薬工業社製) 0.3gを仕込み、窒素置換し、65℃に加熱した。槽内温度が65℃に到達後、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65:和光純薬工業社製) 0.3g、エタノール 2.5gの混合物を添加した。その後、メタクリル酸メチル 13.5g、PEGMA23 63.0g、メタクリル酸 13.5g、エタノール 135g、V−65 2.7g、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 2.7gの混合液を3時間かけて滴下した。65℃で3時間熟成した後、室温まで冷却した。濃度調整のためにエタノールを添加し、高分子分散剤B6のエタノール溶液を得た。高分子分散剤B6溶液の不揮発分は52.0重量%で、高分子分散剤B6の重量平均分子量は8300であった。
【0070】
〔不揮発分の測定〕
高分子分散剤溶液の不揮発分は、以下のようにして測定した。すなわち、シャーレにガラス棒と乾燥無水硫酸ナトリウム10gを量り取り、そこにポリマー溶液2gを入れ、ガラス棒で混合し、105℃の減圧乾燥機(圧力8kPa)で2時間乾燥する。乾燥後の重さを量り、次式より得られた値を不揮発分とした。
不揮発分={[サンプル量−(乾燥後の重さ−(シャーレの重さ+ガラス棒の重さ+無水硫酸ナトリウムの重さ))]/サンプル量}×100
【0071】
〔重量平均分子量の測定〕
高分子分散剤の重量平均分子量は、以下のようにして測定した。すなわち、溶離液を毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、予め作成した検量線に基づき算出した。検量線の作成には、以下の単分散ポリスチレンを標準試料として用いた。
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
測定条件
試料溶液:0.5wt% N,N−ジメチルホルムアミド溶液
溶離液:H3PO4:60mmol/L 及び LiBr:50mmol/L を加えたN,N−ジメチルホルムアミド溶液
カラム:α−M + α−M(東ソー社製)
検出器:示差屈折率
検量線:東ソー社製ポリスチレン 5.26×102、1.02×105、8.42×106;西尾工業社製ポリスチレン 4.0×103、3.0×104、9.0×105(数字はそれぞれ分子量)
【0072】
[スラリー組成物の調製]
〔実施例1のスラリー組成物の調製〕
実施例1のスラリー組成物は、次のようにして調製した。チタン酸バリウム(BET比表面積20m2/g、BET比表面積より計算した平均粒径50nm、塩基量90μmol/g、酸量10μmol/g) 20g、及び高分子分散剤B6 0.8g(有効分(不揮発分))を、直径1mmのジルコニアビーズ 50gと一緒に100mLの容器に入れ、トルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加え、チタン酸バリウムの固形分濃度が50重量%になるように調整し、卓上型ボールミルにて分散処理を96時間おこなった。次いで、ポリビニルブチラール樹脂(アセタール化度68モル%、残存水酸基量31モル%) 2.8g、ジオクチルフタレート 0.56g、カチオン化合物A1 0.2g、及びトルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加えて、チタン酸バリウムの固形分濃度がスラリー組成物に対して35重量%になるように調整し、卓上型ボールミルにて2時間混合した後、ジルコニアビーズを濾過で取り除き、実施例1のスラリー組成物を得た(下記表3)。
【0073】
〔実施例2〜8、比較例1〜6のスラリー組成物の調製〕
カチオン化合物A1に換えて下記表3のカチオン化合物を用いること以外は実施例1と同様の方法で実施例2〜8、比較例2〜6のスラリー組成物を調製した。なお、比較例1として、カチオン化合物A1を使用しないこと以外は実施例1と同様にスラリー組成物を調製した。
【0074】
〔実施例9のスラリー組成物の調製〕
実施例9のスラリー組成物は、次のようにして調製した。チタン酸バリウム(BET比表面積20m2/g、BET比表面積より計算した平均粒径50nm、塩基量90μmol/g、酸量10μmol/g) 20g、及び高分子分散剤B1 0.8g(有効分(不揮発分))を、直径1mmのジルコニアビーズ 50gと一緒に100mLの容器に入れ、トルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加え、チタン酸バリウムの固形分濃度が50重量%になるように調整し、卓上型ボールミルにて分散処理を96時間おこなった。次いで、ポリビニルブチラール樹脂(アセタール化度68モル%、残存水酸基量31モル%) 1.6g、ジオクチルフタレート 0.32g、カチオン化合物A1 0.16g、及びトルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加えて、チタン酸バリウムの固形分濃度がスラリー組成物に対して35重量%になるように調整し、卓上型ボールミルにて2時間混合した後、ジルコニアビーズを濾過で取り除き、実施例9のスラリー組成物を得た(下記表3)。
【0075】
〔実施例10〜15、比較例7のスラリー組成物の調製〕
高分子分散剤B1に換えて下記表3の高分子分散剤を用いること以外は実施例9と同様の方法で実施例10〜15のスラリー組成物を調製した。なお、比較例7として、高分子分散剤B1を使用しないこと以外は実施例9と同様にスラリー組成物を調製した。
【0076】
〔実施例16のスラリー組成物の調製〕
実施例16のスラリー組成物は、次のようにして調製した。チタン酸バリウム(BET比表面積10m2/g、BET比表面積より計算した平均粒径100nm、塩基量90μmol/g、酸量10μmol/g) 20g、及び高分子分散剤B5 0.32g(有効分(不揮発分))を、直径1mmのジルコニアビーズ 50gと一緒に100mLの容器に入れ、トルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加え、チタン酸バリウムの固形分濃度が50重量%になるように調整し、卓上型ボールミルにて分散処理を96時間おこなった。次いで、ポリビニルブチラール樹脂(アセタール化度68モル%、残存水酸基量31モル%) 2.8g、ジオクチルフタレート 0.56g、カチオン化合物A1 0.1g、及びトルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加えて、チタン酸バリウムの固形分濃度がスラリー組成物に対して35重量%になるように調整し、卓上型ボールミルにて2時間混合した後、ジルコニアビーズを濾過で取り除き、実施例16のスラリー組成物を得た(下記表3)。
【0077】
〔実施例17、比較例8〜9のスラリー組成物の調製〕
カチオン化合物A1に換えて下記表3のカチオン化合物を用いること以外は実施例16と同様の方法で実施例17、比較例9のスラリー組成物を調製した。なお、比較例8として、カチオン化合物A1を使用しないこと以外は実施例16と同様にスラリー組成物を調製した。
【0078】
2.セラミックスシートの成形と評価
実施例1〜17及び比較例1〜9のスラリー組成物を用いてセラミックスシートを成形し、該セラミックスシートの剥離帯電量、剥離力、破断強度及び伸びの測定を行った。
【0079】
[セラミックスシートの成形]
実施例1〜17及び比較例1〜9のスラリー組成物をフィルムアプリケーター(ギャップ50μm)を用いて、シリコーン処理された離型フィルム(帝人デュポン社製ピューレックス)に塗工し、60℃にて16時間乾燥し、セラミックスシートを成形した。なお、乾燥後のセラミックシートの厚みは5〜8μmであった。
【0080】
[剥離帯電量の測定]
成形したセラミックシートを用い、下記の方法で剥離帯電量を測定した。すなわち、離型フィルムとともに、セラミックシートを短辺4cm、長辺10cmの寸法の試験片に裁断し、塗工面と反対側(フィルム側)を下にして、90度剥離試験用治具を装着した卓上型精密試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−X)の台座に両面テープを用いて固定した。次に、セラミックシート試験片の短辺側の片端を離型フィルムから1cm剥離した後、クリップで挟み、クリップをロードセルに固定した。その後ロードセルを1cm/秒の速度で上昇させて90度剥離を行い、セラミックシートの剥離面側の帯電量(剥離帯電量)の最大値を、前記剥離面から3cmの距離に設置した静電気センサー(キーエンス社製SK−200)にて測定した。この結果を下記表3に示す。この剥離帯電量の絶対値が小さいほど、帯電防止性が良好である。
【0081】
[剥離力の測定]
前記剥離帯電量の測定において、セラミックシートを1cm/秒の速度にて90度剥離する際にロードセルにかかる荷重を測定した。具体的には、ロードセルが3cm上昇してから6cm上昇するまでの間にロードセルにかかる荷重の平均値を剥離力とした。この結果を下記表3に示す。この剥離力が小さいほど、剥離性が良好である。
【0082】
[破断応力及び伸びの測定]
セラミックスシートをJIS K6251に規定されたダンベル状1号形に裁断する。セラミックシートを離型フィルムから剥離する前に、厚みを計測し、離型フィルム自身の厚みとの差分より、セラミックシートの厚みを求める。次に、剥離したセラミックシートを卓上型精密試験機(島津製作所社製オートグラフEZ−TEST)に装着されたロードセルに取り付け、6cm/分の試験速度で引っ張り、試験片の破断時の応力、及び、破断歪(伸び)を測定する。この結果を下記表3に示す。破断応力が大きく伸びが大きいほど、靭性が良好である。
【0083】
【表3】

【0084】
前記表3に示すとおり、実施例1〜8のスラリー組成物から形成したセラミックシートでは、比較例1〜6のセラミックシートと比較して、剥離帯電量が低減して帯電防止性が向上し、剥離力が小さく剥離性に優れ、かつ、破断応力と伸びの測定値が大きく靭性も向上した。また、実施例16〜17のスラリー組成物から成形したセラミックシートでも同様に、比較例8〜9のセラミックシートと比較して、帯電防止性、剥離力及び靭性が向上した。帯電防止性向上の観点からは、前記一般式(1)及び(3)で表されるカチオン基を有するカチオン化合物を含有するスラリー組成物が好ましく、剥離性向上の観点からは、前記一般式(3)で表わされるカチオン基を有するカチオン化合物を含有するスラリー組成物が好ましく、靭性の観点からは、前記一般式(2)及び(3)で表されるカチオン基を有するカチオン化合物を含有するスラリー組成物が好ましいことが示された。これらの観点を総合すると、本発明におけるカチオン基としては、一般式(3)で表されるカチオン基がさらにより好ましいことが示された。
【0085】
また、前記表3に示す通り、実施例9〜15において、カチオン性、ノニオン性及びアニオン性のすべての高分子分散剤が、高分子分散剤を用いない場合(比較例7)と比べて、剥離帯電量及び剥離力が低減するとともに破断応力及び伸びが向上し、帯電防止性、剥離性及び靭性に優れることが示された。また、本発明のスラリー組成物に使用する高分子分散剤としては、帯電防止性向上の観点からは、カチオン性及びアニオン性であることが好ましいことが示され、剥離性向上の観点からは、ノニオン性及びアニオン性であることが好ましいことが示された。そして、帯電防止性向上と剥離性向上の両立の観点からは、アニオン性の高分子分散剤がより好ましいことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、セラミックス成形を行う分野、例えば、セラミックス製電子部品の製造に関する分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含窒素複素芳香族第4級アンモニウムカチオン基を含むカチオン化合物、高分子分散剤、非水系溶媒、塩基性セラミックス材料及びポリビニルアセタール樹脂を含有する、スラリー組成物。
【請求項2】
前記カチオン基が、芳香環中に第4級アンモニウムを有するカチオン基である、請求項1記載のスラリー組成物。
【請求項3】
前記カチオン基が、ピリジニウム、ピラゾリウム、イミダゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム及びピロリウム構造からなる群より選ばれる1種以上の構造を有するカチオン基である、請求項1又は2記載のスラリー組成物。
【請求項4】
前記カチオン基が、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表されるカチオン基からなる群より選ばれるカチオン基である、請求項1から3のいずれかに記載のスラリー組成物。
【化1】

[式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2、R3及びR4は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(2)中、R5及びR6は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R7及びR8は、同一又は異なり、水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(3)中、R9及びR10は、同一又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は水素原子、又は水酸基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【請求項5】
前記カチオン基が、前記一般式(3)で表されるカチオン基である、請求項1から4のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項6】
前記カチオン基が、前記一般式(3)で表されるカチオン基であり、前記一般式(3)におけるR9及びR10の炭素数の合計が、2〜5である、請求項1から5のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項7】
前記カチオン基の分子量が、90〜300である、請求項1から6のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項8】
前記カチオン化合物が、前記カチオン基と、アニオン基との塩であり、前記アニオン基が、有機アニオン基である、請求項1から7のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項9】
前記アニオン基が、アルキル硫酸及び脂肪族カルボン酸からなる群から選ばれる1種以上の酸のアニオン基である、請求項1から8のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項10】
前記カチオン化合物の含有量が、前記塩基性セラミックス材料100重量部に対し、0.05重量部以上2.0重量部以下である、請求項1から9のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項11】
前記高分子分散剤が、アニオン性高分子分散剤である、請求項1から10のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項12】
前記塩基性セラミックス材料が、チタン酸バリウムである、請求項1から11のいずれかに記載のスラリー組成物。
【請求項13】
前記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である、請求項1から12のいずれかに記載のスラリー組成物。

【公開番号】特開2013−67552(P2013−67552A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185618(P2012−185618)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】