説明

塩基性ビスアゾ化合物

本発明は、式(I)に従う塩基性ビスアゾ化合物(式中、全ての置換基が、請求項1におけるように規定される)、それらの製造、それらの染料としての使用、並びにこれらの染料を用いて染色された材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部塩又は外部塩形態であることができる塩基性ビスアゾ化合物、その塩及びこれらの化合物の混合物に関する。それらは、染料として用いるために好適である。
【背景技術】
【0002】
英国特許第1296857号明細書又は同第2173210号明細書は、スルホン酸基を含まない、塩基性の、金属を含まない又は金属化されたジスアゾ(disazo)ピリドン染料が、染色紙、テキスタイル及び皮革に有用であることを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、改良された特性を有する染料を製造する必要性がまだある。驚くべきことに、本出願の下記に示される式(I)に従う染料が、所望の特性を有することを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従って、次の式(I)の化合物を提供する:
【化1】

(式中、
0は、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し、
1は、H、N(R7'R7'')、置換されたC1〜C4アルキル基若しくは置換されていないC1〜C4アルキル基又はCNを表し、
2又はR2'は、H、置換されたC1〜C4アルキル基若しくは置換されていないC1〜C4アルキル基、又は次の式:
−[(CR88')−(CR99')m−(CR1010')n−(CR1111')0]−NR1212'
(式中、m、n及びoは、1又は0の意味を有し、そしてR8、R8'、R9、R9'、R10、R10',R11又はR11'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し;そしてR12又はR12は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表す)
を有する基を表し、
3は、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表し、
4は、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表し、
5は、H、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基を表し、
6は、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を表し、
7'又はR7''は、独立して、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表すか、又はR7'及びR7''は、窒素原子と一緒になって、5若しくは6員の芳香環又は5若しくは6員の脂環式環(当該5若しくは6員環は、C1〜C4アルキル基により置換されているか、又は当該5若しくは6員環は、さらに置換されていない)を形成する)。
【発明を実施するための形態】
【0005】
好ましくは、R5及びR6を合わせた炭素原子の合計は、少なくとも4個の炭素原子であり、さらに好ましくは、R5及びR6は、合わせて少なくとも5個の炭素原子を有する。さらに好ましくは、R5及びR6を合わせた炭素原子の合計は、5又は6又は7又は8又は9個の炭素原子数である。置換基R6がHを表す場合には、置換基R6は、好ましくは、Hを表す。
【0006】
式(I)の好ましい化合物において、
0は、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し、
1は、N(R7'R7'')、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し、
2又はR2'は、次の式:
−[(CR88')−(CR99')m−(CR1010')n−(CR1111')O]−NR1212'
(式中、m、n及びoは、1又は0の意味を有し、そしてR8、R8'、R9、R9'、R10、R10',R11又はR11'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し;そしてR12又はR12'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表す)
を有する基を表し、
3は、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表し、
4は、H、C1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基を表し、
5は、H、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基を表し、
6は、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を表し、
7'及びR7''は、窒素原子と一緒になって、5又は6員の芳香環(当該5若しくは6員環は、C1〜C4アルキル基により置換されているか、又は当該5若しくは6員環は、さらに置換されていない)を形成する。
【0007】
好ましくは、R1は、下記:
【化2】

(式中、*は、当該分子の、残部への結合点であり、そしてR13は、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表す)を表す。
好ましい基R13は、H又はメチルを表す。好ましい基R13は、パラ位において窒素に結合されている。好ましくは、上記置換基は、パラ位において、窒素原子に結合されている。
【0008】
好ましくは、R2又はR2'は、次の式:
−[(CR88')−(CR99')m−(CR1010')n−(CR1111')]−NR1212'
(式中、R8、R8'、R9、R9'、R10又はR10'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を意味し;そしてR12又はR12'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を意味し、そしてさらに好ましいR8、R8'、R9、R9'、R10又はR10'は、独立して、Hを意味し、そしてR12又はR12'は、お互いに独立して、H、メチル又はエチルを表し、メチルがさらに好ましい)
を有する基を表す。
非常に好ましい化合物では、R2及びR2'は、同一の意味を有する。
【0009】
アリールは、フェニル又はナフチル、好ましくは、フェニルを意味し、置換されたアリールは、−COOH、−OH、C1〜4アルキル基又はC1〜4アルコキシ基により置換されたアリール基を意味する。
【0010】
概して、アルキル又はアルコキシ基は、好ましくは、C1〜4アルキル基又はC1〜4アルコキシ基;C1〜4アルキル、−COOH、−OHによりさらに置換されていてもよいC1〜4アルキル基又はC1〜4アルコキシを意味する。好ましいアルキル基は、メチル又はエチルである。アルキル基又はアルコキシ基の好ましい置換基は、OHである。R8'、R8''R9'、R9''がアルキル基で置換されている場合には、好ましい置換基は−OHである。好ましいアルコキシ基は、メトキシ又はエトキシである。上記アルキル基及びアルコキシ基は、分岐鎖又は直鎖である。
【0011】
しかし、R5及びR6に関するさらに好ましいアルキル又はアルコキシ基は、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基を表し、そして分岐鎖又は直鎖であり、そして置換基は、−COOH、−OHの基から選択されうる。最も好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル又はノニルである。
【0012】
本発明は、次の式(II):
【化3】

のジアミンのビス−ジアゾニウム塩を、1当量の次の式(III)の化合物及び1当量の次の式(III')の化合物:
【化4】

(式中、R0、R1、R2、R2'、R3、R4、R5及びR6は、上記規定の通りである)
と反応させることを含む、式(I)の化合物の調製方法を提供する。
【0013】
ジアゾ化及びカップリングを、従来法に従って実施することができる。上記カップリング反応を、0〜60℃、好ましくは0〜40℃、さらに好ましくは0〜10℃、さらに好ましくは0〜5℃の温度範囲において、そして2〜9、好ましくはpH3〜6のpH範囲において、水性反応媒体中で実施することが有利である。全ての温度は、摂氏温度で与えられる。
【0014】
そのようにして得られた式(I)の化合物を含む反応混合物を、限外ろ過により脱塩することにより、改良された長期安定性を有する安定な液体配合物に転換することができる。
そのようにして得られた式(I)の化合物を、公知の方法に従って分離することができる。
【0015】
遊離の塩基性基を含む式(I)の化合物を、任意の無機酸又は有機酸、例えば、乳酸、又は酢酸、又は蟻酸、又は塩酸、又は硫酸と反応させることにより、全体的に又は部分的に水溶性塩に転化することができる。
【0016】
さらに、種々の塩の遊離の塩基性基を含む式(I)の化合物を、無機酸又は有機酸の混合物、例えば、乳酸、酢酸、蟻酸、塩酸及び硫酸から選択される2種又は3種以上の酸の混合物を適用することにより転化させることがまた可能である。そのようにして、遊離の塩基性基を含む式(I)の化合物は、乳酸及び塩酸を用いて処理した後、クロリド及びラクテートアニオンを有する混合された塩から成ることができ、又は遊離の塩基性基を含む式(I)の化合物は、酢酸及び塩酸を用いた処理の後、クロリド及びアセテートアニオンを有する混合された塩から成ることができる。
【0017】
始動化合物、式(II)のアミン及び式(III)の化合物のアミンは、両方とも公知であり、又は入手可能な出発原料から公知の方法に従って調製することができる。好適な方法は、例えば、ドイツ国特許第399149号明細書;同第505475号明細書;同第1220863号明細書;同第1793020号明細書(英国特許第l129306号明細書)、同第3226889号明細書、同第4014847号明細書に記載されている。
【0018】
しかし、式(II)に従う新規なアミンを、ドイツ国特許第399149号明細書;同第505475号明細書;同第1220863号明細書;同第1793020号明細書(英国特許第l129306号明細書)、同第3226889号明細書、同第4014847号明細書に開示される方法に従って調製することができ、正確には、次の式:
【化5】

のアルデヒド(R5がHであり、そしてR6がHと異なる)又はケトン(R5及びR6の両方が、Hと異なる)のどちらかを、2当量の次の式:
【化6】

の芳香族アミンと、高温及び高圧において、酸性条件下で反応させ、次の式(III):
【化7】

のジアミンを生成させることによりスタートする。
【0019】
反応混合物を、120℃〜250℃、好ましくは140℃〜200℃、さらに好ましくは140℃〜150℃において閉鎖されたオートクレーブ内で加熱し、そして反応混合物を、3〜8時間、好ましくは4〜5時間、この温度において保持する。高温により、この閉鎖されたオートクレーブ内で、高圧がもたらされる。あるいは、合成を、高温200〜250℃において、アミノ化合物−塩酸塩の溶融体内で、ケト化合物を添加することにより実施し、そして圧力は大気圧である。
【0020】
酸付加塩形態又は第4級アンモニウム塩形態における本発明に従う化合物は、カチオン染色可能な材料、例えば、アクリロニトリルのホモポリマー又は混合ポリマー、酸変性ポリエステル又はポリアミド;羊毛;皮革、例えば、低親和性植物なめし皮革;綿;靱皮繊維、例えば、麻、亜麻、サイザル麻、ジュート、コイア及びわら;再生セルロース繊維、ガラス又はガラス製品、例えば、ガラス繊維;並びにセルロース、例えば、紙及び綿含有基材を染色するために用いられうる。それらはまた、公知の方法に従う任意の上記材料を含む繊維、フィラメント及びテキスタイルを印刷するために用いられうる。印刷はまた、印刷すべき材料を、本発明の1種又は2種以上を含む好適な印刷ペーストで含浸させることにより実施されうる。用いられる印刷ペーストの種類は、印刷すべき材料によって変わりうる。好適な市販の印刷ペーストの選択又は好適なペーストの製造は、当業者の慣例である。あるいは、本発明の化合物を、従来法に従って、例えば、ジェット印刷のために好適なインクを調製する際に用いることができる。
【0021】
上記染料を、紙、例えば、サイズ紙、アンサイズペーパー、上質紙若しくは中質紙又は紙系製品、例えば、厚紙を染色又は印刷するために用いることがもっとも好ましい。それらを、ストックにおける連続染色、サイズプレスにおける染色、一般的なディッピング又は表面カラープロセスにおいて用いることができる。紙の染色及び印刷は、公知の方法により実施される。
【0022】
染色物及び印刷物、並びに特に紙の上で得られるものは、良好な堅牢特性を示す。
特に、染色された若しくは印刷された紙、又は紙系製品が、媒体内で又は深いシェードで製造された場合に、排水の値が非常に良好である。
【0023】
式(I)の化合物を、染色調製物に転化させることができる。安定な液体、好ましくは水性液体又は固体(粒状化又は粉末形態)染色調製物を、一般的な公知の様式において得るができる。有利には、好適な液体染色調製を、好適な溶媒、例えば、鉱酸又は有機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸及びメタンスルホン酸、又はそれら好適な溶媒の混合物内に上記染料を溶解させることにより行うことができる。さらに、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ウレア、グリコール及びそれらのエーテル、デキストリン又はホウ酸のソルビット(sorbit)との付加生成物を、所望により助剤、例えば、安定化剤を添加して、水と共に用いることができる。上記調製物を、例えば、フランス国特許第l572030号明細書(米国特許第4023924号明細書)に記載されるように得ることができる。
【0024】
式(I)の化合物(対応する塩形態)は、特に冷水への良好な溶解性を有する。それらの高い直接性のために、本発明の化合物は、実際には定量的に消費され、そして良好な付着力を示す。乾燥粉末又は粒状物のどちらかとしてあらかじめ溶解させることなく、明度又はカラーの収量を下げることなく、式(I)の化合物(対応する塩形態)を、直接ストックに添加することができる。式(I)の化合物(対応する塩形態)をまた、収率の損失なく、軟水内で用いることができる。式(I)の化合物(対応する塩形態)は、紙に適用された場合に斑点を付けず、紙に両面染色を与えるように傾斜せず、そして実際には、充填剤又はpH変動に敏感ではない。式(I)の化合物(対応する塩形態)は、pH3〜10の範囲内における広いpH範囲にわたり作動する。サイズ紙又はアンサイズペーパーを製造する場合、排水は、本質的に無色である。環境の視点からきわめて重要であるこの特徴は、同様の公知の染料と比較して、顕著な改良を示す。サイズ紙の染色は、相当するアンサイズペーパー染色と比較して、強度を減少させない。
【0025】
本発明に従う化合物を用いて製造した紙染色物又は印刷物は、くっきり且つ鮮明であり、そして良好な耐光性を有する。長期間光に暴露すると、染色物のシェードが、トーン・イン・トーン(tone in tone)で薄れる。それらは、非常に良好な湿潤堅牢特性:水、ミルク、果汁、甘みがあるミネラルウォーター、トニックウォーター、石けん及び塩化ナトリウム溶液、小便等に対する堅牢度を有する。さらに、それらは、良好なアルコール堅牢特性を有する。湿潤堅牢特性は、同様の特性を示す公知の染料と比較して改良されている。それらは、両面性に対する傾向を示さない。
【0026】
本発明の化合物で染色された又は印刷された紙を、酸化的に又は還元的にのどちらでも漂白することができ、本特色は、古紙及び古紙製品のリサイクルに重要である。
【0027】
良好な堅牢特性を有する染色物が得られる本発明の化合物をまた、木材パルプを含む紙を染色するために用いることができる。さらに、それらを、公知の方法に従って、コート紙を製造するために用いることができる。好ましくは、コーティングの際に、ワンサイドコート紙を得るために、好適な充填剤、例えば、カオリンを用いる。
【0028】
本発明の化合物はまた、他の染料、例えば、他のカチオン性又はアニオン性染料と組み合わせて染色する場合に好適である。他の市販の染料との混合物内の染料として用いる場合に、本発明の化合物の相溶性を、従来法に従って測定することができる。そのようにして得られた染色物は、良好な堅牢特性を有する。
【0029】
本発明は、上記基材を染色又は印刷するための、本発明の化合物の使用をさらに提供する。
本発明は、本発明の化合物で染色又は印刷された基材をさらに提供する。上記基材を、上述の基材から選択することができる。好ましい基材は、セルロース含有基材、例えば、綿又は紙又は紙系製品である。
【0030】
本発明の染料調製物をまた、木材を染色又は色合いづけるために用いることができる。上記木材は、例えば、ボウル、皿、玩具、また固体スラット及びビームの形態並びにシェービング、チップ又はチップボードの形態の製品であることができる。家具であるような、建築物の一部を、同様に、本発明の染料調製物を用いて処理することができる。本発明の液体染料調製物の適用を、木材又はベニヤ内の色差を等しくするためではなく、木材又はベニヤのカラーを完全に変えるために利用することができる。本発明の液体染料調製物を、水性染色液(この場合には、水が主要な溶媒である)として、アルコール性水性染色液(すなわち、溶媒は、アルコール−水混合物である)として、又は有機溶媒含有染色液(約30〜95%の有機溶媒;上記染色液はまた、水希釈性であってもよい)として利用することができる。
【実施例】
【0031】
次の例は、本発明を具体的に説明するようにはたらく。下記例において、別途示されない限り、全ての部及び全ての%は、重量又は体積により、そして与えられる温度は、摂氏温度である。
ここで、本発明を、次の例により具体的に説明し、そこでは、全ての部は重量部であり、そして全ての温度は、摂氏温度である。
【0032】
[例1:(方法A)]
106gのベンズアルデヒド、400gのo−アニシジン、450gの塩酸(約30%)及び800mLの水を、140℃で6時間、オートクレーブ内で加熱した。
【0033】
反応混合物を、1kgの氷及び500g水酸化ナトリウム溶液(30%)上に注いだ。有機層を分離し、そして過剰量のo−アニシジンを、トルエンを用いて分離した。残差を、トルエンから再結晶化させ、そしてプレスケーキを、冷アルコールで洗浄した。式(1)の化合物を得た;収率:41%。
【0034】
【化8】

【0035】
[例2:(方法B)]
780g(6モル)のアニリン塩酸塩を、220℃において、窒素下で、1,5−1反応容器内で溶解させ、そして100g(1モル)の2−エチルブチルアルデヒドをそこにゆっくり添加し、4時間の一定時間にわたり撹拌した。
還流のために、初めに約200℃〜185℃から溶融物の温度が下がった。温度を、185℃で1時間保ち、そして熱溶融液を、1,6kgの氷及び1,05kgの水酸化ナトリウム溶液(30%)の混合物上に注いだ。
【0036】
有機層を分離し、そして脱塩水で洗浄した(無塩)。過剰量のアニリンを、水蒸気蒸留法により抽出した。
残差、約180gを、トルエンから再結晶化させ、そしてプレスケーキを冷エタノールで洗浄した。式(2)の化合物を得た;収率:48%
【0037】
【化9】

【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
[例40:(方法A)]
101gのエチル−プロピルケトン、500gのo−アニシジン、500gの塩酸(約30%)及び1000mLの水を、140℃で6時間、オートクレーブ内で加熱した。
【0044】
反応混合物を、1kgの氷及び500g水酸化ナトリウム溶液(30%)上に注いだ。有機層を分離し、そして過剰量のo−アニシジンを、トルエンを用いて分離した。残差を、トルエンから再結晶化させ、そしてプレスケーキを、冷アルコールで洗浄した。式(3)の化合物を得た;収率:33%。
【0045】
【化10】

【0046】
[例41:(方法B)]
780g(6モル)のアニリン塩酸塩を、220℃において、窒素下で、1−1反応容器内で溶解させ、そして86g(1モル)の3−ペンタノンをそこにゆっくり添加し、3〜4時間の一定時間にわたり撹拌した。
【0047】
還流のために、初めに約200℃〜185℃から溶融物の温度が下がった。温度を、185℃で1時間保ち、そして熱溶融液を、1,6kgの氷及び1,05kgの水酸化ナトリウム溶液(30%)の混合物上に注いだ。
【0048】
有機層を分離し、そして脱塩水で洗浄した(無塩)。過剰量のアニリンを、水蒸気蒸留法により抽出した。
残差、約160gを、トルエンから再結晶化させ、そしてプレスケーキを冷エタノールで洗浄した。式(4)の化合物を得た;収率:52%
【0049】
【化11】

【0050】
【表6】

【0051】
【表7】

【0052】
【表8】

【0053】
[例68]
公知の方法に従って、0〜5℃において、200部の水及び60部の塩酸(約30%)内で、26.8部(0,1モル)の1,1−ビス−(4−アミノフェニル)−2−エチル−ブタン(ブリッジ例2)を、13.8部(0.2モル)の亜硝酸ナトリウムを用いてテトラアゾ化した(tetrazotise)。
水250部に溶解した次の式:
【化12】

の化合物64.4部(0.2モル)を、氷冷したテトラアゾ化溶液に30分にわたり添加した。
30%NaOH溶液の添加により、pHが3〜4.5になり、式(5)の染料が生じ、そして当該染料は、溶液内にあった。λmax=459nm.
【0054】
【化13】

【0055】
上記染料を、減圧下で濃縮するか、又はアセトン/アルコール内で沈殿させることにより単離することができる。しかし、反応混合物を、上記生成物を単離することなく染色のために直接用いることができる。驚くべきことに、式(5)の染料は、水への非常に高い溶解性を有し、そして非常に良好な堅牢特性を有するイエローの染色を与える。
【0056】
[例69]
公知の方法に従って、0〜5℃において、200部の水及び60部の塩酸(約30%)内で、33,4部(0,1モル)のビス−(3−メトキシ−4−アミノフェニル)−フェニルメタン(ブリッジ例1)を、13.8部(0,2モル)の亜硝酸ナトリウムを用いてテトラアゾ化した。
【0057】
水250部に溶解した次の式:
【化14】

の化合物64.4部(0.2モル)を、氷冷したテトラアゾ化溶液に、30分にわたり添加した。
30%NaOH溶液の添加により、pHが3〜4.5になり、式(6)の染料が生じ、そして当該染料は、溶液内にあった。λmax=475nm.
【0058】
【化15】

【0059】
上記染料を、減圧下で濃縮するか、又はアセトン/アルコール内で沈殿させることにより単離することができる。しかし、反応混合物を、上記生成物を単離することなく染色のために直接用いることができる。式(6)の染料は、水への非常に高い溶解性を有し、そして驚くべきことに、非常に良好な堅牢特性を有するイエローの染色を与える。
【0060】
[表3:表1からのジアミンを用いた染料の合成]
表3に示される次の化合物を、次のジアミン:
【化16】

のジアゾ成分を用い、そして次のカップリング成分:
【化17】

と反応させることにより、例68又は例69に従って合成した。
λmax(ラムダマックス)をnm(ナノメートル;1%酢酸溶液内で測定)で示す。
【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
【表11】

【0064】
【表12】

【0065】
【表13】

【0066】
【表14】

【0067】
【表15】

【0068】
[表4:表1からのジアミンを用いた染料の合成]
表4に示される次の化合物を、次のジアミン:
【化18】

のジアゾ成分を用い、そして次のカップリング成分:
【化19】

と反応させることにより、例68又は例69に従って合成した。
λmax(ラムダマックス)をnm(ナノメートル;1%酢酸溶液内で測定)で示す。
【0069】
【表16】

【0070】
【表17】

【0071】
【表18】

【0072】
【表19】

【0073】
[表5:表2からのジアミンを用いた染料の合成]
表5に示される次の化合物を、次のジアミン:
【化20】

のジアゾ成分を用い、そして次のカップリング成分:
【化21】

と反応させることにより、例68又は例69に従って合成した。
λmax(ラムダマックス)をnm(ナノメートル;1%酢酸溶液内で測定)で示す。
【0074】
【表20】

【0075】
【表21】

【0076】
【表22】

【0077】
【表23】

【0078】
【表24】

【0079】
[表6:表2からのジアミンを用いた染料の合成]
表6に示される次の化合物を、次のジアミン:
【化22】

のジアゾ成分を用い、そして次のカップリング成分:
【化23】

と反応させることにより、例68又は例69に従って合成した。
λmax(ラムダマックス)をnm(ナノメートル;1%酢酸溶液内で測定)で示す。
【0080】
【表25】

【0081】
【表26】

【0082】
【表27】

【0083】
[適用例A]
松材から得られ、化学漂白されたスルファイトセルロース70部と、カンバ材から得られ、化学的に漂白されたセルロース30部とを、Hollander内の水2000部の中で叩解させた。例68の染料0.2部を、このパルプ内に振りかけた。10分間混合した後、このパルプから紙を製造した。この方式において得られた吸収紙は、イエローに染色された。排水は無色であった。
【0084】
[適用例B]
例68に従う染料粉末0.2部を、温水100部に溶解させ、そして室温に冷却させた。当該溶液を、Hollander内の水2000部の中で粉砕された化学漂白されたスルファイトセルロース100部に添加した。15分後、混合しながら、樹脂サイズ及び硫酸アルミニウムをそれらに添加した。この方式で製造された紙は、イエローの色合いを有し、そして完全な光及び湿潤堅牢度を示した。
【0085】
[適用例C]
アンサイズペーパーの吸収長さを、40〜50℃において、次の組成;
例68に従う染料0.3部;
でん粉0.5部;及び
水99.0部:
を有する染料溶液に通した。
【0086】
過剰量の染料溶液を、2つのローラーにより絞った。紙の乾燥長さは、イエローシェードに染色されていた。
例69〜159の染料はまた、適用例A〜Cの方法と類似の方法により染色するために用いられうる。得られた紙染色物は、良好な堅牢特性を示した。
【0087】
[適用例D]
酸付加塩形態における例68の染料0.2部を、40℃において、脱塩水4000部に溶解させた。事前湿潤綿テキスタイル基材100部を添加し、そして浴を30分にわたり沸点まで上昇させ、そして1時間、沸騰を保った。染色の際に蒸発した水を連続的に戻した。染色された基材を浴から取り出し、そしてすすぎ及び乾燥の後、良好な光及び湿潤堅牢特性を有するイエローの染色物を得た。上記染料は、実際には完全に繊維上に消費され、そして排水はほとんど無色であった。
【0088】
適用例Dに記載されるのと類似の様式において、例69〜例159に従う染料を、綿を染色するために用いることができる。
【0089】
[適用例E]
新たになめされ且つ中和されたクロム皮革100部を、55℃において、水250部及び酸付加塩形態における例68の染料0.5部からなる液体を有する容器内で30分間かき混ぜ、次いでスルホン化鯨油に基づくアニオン性脂肪液体2部を用いて、30分間、同一浴内で処理した。次いで、上記皮革を乾燥し、そして通常の方式で調製し、イエローシェードに均一に染色された皮革を得た。
【0090】
適用例Eに記載されるのと同様の様式において、例69〜例159に従う染料を、皮革を染色するために用いることができる。
さらに、低親和性の植物なめし皮革を、公知の方法に従って、本明細書に記載される染料を用いて染色することができる。
【0091】
[適用例F]
砕木パルプ60重量%及び未漂白のスルファイトセルロース40重量%から成る、Hollander内の乾燥パルプに、水を添加し、そしてスラリーを、2.5%をわずかに上回り且つ40°SR(°Schopper−Riegler)の叩解度を有する乾燥内容物を得るために叩解させた。次いで、上記スラリーを、水を添加して、2.5%の高密度乾燥含有率に正確に調整した。例68に従う染料の2.5%溶液5部を、得られたスラリー200部に添加した。混合物を5分間撹拌し、そして2重量%の樹脂サイズ、次いで4重量%の硫酸アルミニウム(乾燥重量に基づく)を添加した後、均一になるまで数分さらに撹拌した。得られたパルプを、約500部の水を用いて、700部の体積まで希釈し、次いで、それを用いてシートフォーマー上で吸引することによりペーパーシートを形成させた。得られたペーパーシートは、イエローであった。
【0092】
適用例Fに記載されるのと類似の方法により、例69〜例159の染料の一つを例68の染料の代わりに用いることができる。全てのケースにおいて、古紙は、実質的に低い残余の染料濃度を示した。
【0093】
[適用例G]
松材から得られ、化学漂白されたスルファイトセルロース50重量%と、カンバ材から得られた化学漂白されたスルファイトセルロース50重量%とから成る、Hollander内の乾燥パルプに水を添加し、そしてスラリーを、35°SRの粉砕度に達するまで粉砕した。次いで、上記スラリーを、水を添加することにより2.5%の高密度乾燥含有率に調整し、そしてこの懸濁液のpHを7に調整した。例68に従う染料の0.5%水性溶液10部を、得られたスラリー200部に添加し、そして混合物を5分間撹拌した。得られたパルプを、水500部で希釈し、次いで、それを用いて、シートフォーマー上で吸引してシートを形成させた。そのようにして得られたペーパーシートは、イエローシェードを有していた。
【0094】
適用例Gに記載される方法と類似の方法により、さらに、例69〜例159の染料の一つから成るさらなる染料混合物を用いることができる。全てのケースにおいて、イエローシェードを有するペーパーシートが形成された。
【0095】
[適用例H]
例68に従う染料12.6部を、ジエチレングリコール20.0部及び脱塩水67.4部の撹拌された混合物に、室温で液滴として添加した。得られたインクは、良好な光及び水堅牢特性を示した。適用例Hに記載されるのと類似の様式において、例69〜例159の染料の一つを用いることができる。
【0096】
[適用例I]
ノルウェー・スプルース(Norway spruce)から構成されるルーフ用バッテン(batten)と、ビーチウッド(beechwood)から構成されるルーフ用バッテンとを、長さ5cmのピースにのこぎりで切断し、そして1片のスプルース製屋根用バッテンと、1片のビーチウッド製ルーフ用バッテンとを、例68に従う反応溶液(30重量部の水及び1重量部の反応溶液、従って、上記染料を単離しない)の希釈溶液に浸漬した。乾燥の際、黄色がかったルーフ用バッテン片が得られた。適用例Iに記載されるのと同様の様式において、例69〜159の染料の一つを用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)の化合物:
【化1】

であって、
0は、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し、
1は、H、N(R7'R7'')、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基又はCNを表し、
2又はR2'は、H、置換されたC1〜C4アルキル基若しくは置換されていないC1〜C4アルキル基、又は次の式:
−[(CR88')−(CR99')m−(CR1010')n−(CR1111')0]−NR1212'
(式中、m、n及びoは、1又は0の意味を有し、そしてR8、R8'、R9、R9'、R10、R10',R11又はR11'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し;そしてR12又はR12'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表す)
を有する基を表し、
3は、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表し、
4は、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表し、
5は、H、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基を表し、
6は、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を表し、
7'又はR7''は、独立して、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表すか、又はR7'及びR7''は、窒素原子と一緒になって、5若しくは6員芳香環又は5若しくは6員脂環式環(当該5若しくは6員環は、C1〜C4アルキル基により置換されているか、又は当該5若しくは6員環は、さらに置換されていない)を形成する、
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
0が、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し、
1が、N(R7'R7'')、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し、
2又はR2'が、次の式:
−[(CR88')−(CR99')m−(CR1010')n−(CR1111')O]−NR1212'
(式中、m、n及びoは、1又は0の意味を有し、そしてR8、R8'、R9、R9'、R10、R10'、R11又はR11'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し;そしてR12又はR12'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表す)
を有する基を表し、
3が、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表し、
4が、H、C1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基を表し、
5が、H、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基を表し、
6が、置換されたC1〜C9アルキル基又は置換されていないC1〜C9アルキル基、置換されていないアリール基又は置換されたアリール基を表し、
7'及びR7''が、窒素原子と一緒になって、5又は6員芳香環(当該5若しくは6員環は、C1〜C4アルキル基により置換されているか、又は当該5若しくは6員環は、さらに置換されていない)を形成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
5及びR6を合わせた炭素原子の合計が、少なくとも4個の炭素原子であることを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1が、下記:
【化2】

(式中、
*は、当該分子の残部への結合点を示し、そして
13は、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルコキシ基又は置換されていないC1〜C4アルコキシ基を表す)
を表すことを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
2又はR2が、次の式:
−[(CR88')−(CR99')−(CR1010')]−NR1212'
(式中、
8、R8'、R9、R9'、R10又はR10'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表し;そして
12又はR12'は、独立して、H、置換されたC1〜C4アルキル基又は置換されていないC1〜C4アルキル基を表す)
を有する基を表すことを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
次の式:
【化3】

を有する式(II)のジアミンのビス−ジアゾニウム塩を、1当量の次の式(III)の化合物及び1当量の次の式(III')の化合物:
【化4】

(式中、R0,R1,R2,R2',R3,R4,R5及びR6は、上記規定の通りである)
と反応させることを特徴とする方法。
【請求項7】
カチオン染色可能な材料を染色若しくは印刷するために液体染色調製物を調製するため、又はインクジェット用インクを調製するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物又はその混合物の使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物又はその混合物を含む液体染色調製物又はインクジェット用インク。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物又はその混合物を用いて染色又は印刷されたカチオン染色可能な材料。

【公表番号】特表2009−544788(P2009−544788A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521254(P2009−521254)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057652
【国際公開番号】WO2008/012322
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(397054015)クラリアント ファイナンス (ビーブイアイ) リミティド (9)
【Fターム(参考)】