説明

塩基性悪臭用消臭剤

【課題】塩基性悪臭に化学消臭効果を示す消臭剤、及びこれを用いる消臭方法の提供。
【解決手段】(a):アミルシンナミックアルデヒド、桂皮酸エチル、ヌートカトン、シス−ジャスモン、アセチルセドレン、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、2-シクロヘキシルプロパナール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、ゲラニルアセトン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、メチルヘキシルケトン、蟻酸シス-3-ヘキセニル、酪酸シス-3-ヘキセニル、乳酸シス-3-ヘキセニル等から選ばれる1種以上の香料物質、又は(b):カンラン科、ハンニチバナ科、フウロソウ科及びフタバガキ科から選ばれる1種以上の植物の溶剤抽出物からなる塩基性悪臭用消臭剤、及びこれを用いる消臭方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基性悪臭に対して消臭効果を有する消臭剤、及び当該消臭剤を用いた消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭は、感覚的方法、化学的方法、物理的方法、生物的方法に大別され、従来トイレや、生ゴミ、タバコなどから発生する悪臭を大幅に低減することに努力が重ねられてきた。
【0003】
近年、住宅、空調設備の改善や、生ゴミ収集など衛生環境の改善によってトイレ、生ごみ、タバコなどの臭気自体はかなり低減されているといえる。しかしながら、消費者のニオイに対する感覚はむしろより敏感になっており、ニオイに対する消費者の要望は依然として高い。
【0004】
塩基性悪臭には様々な悪臭がある。すなわち、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ピリジン、エチルピリジン、ビニルピリジン等のピリジン類;ピラジン等のピラジン類、スカトール、インドール等のインドール類などが挙げられ、腐敗や酸化に伴って発生するものが多い。
【0005】
アルキルアミン類は、動物、植物の腐敗物、排泄物にしばしば含まれ複合臭のキー成分となる。具体的には、生ゴミ臭、雑巾のニオイ、布巾のニオイ、魚のニオイ、排水口のニオイ、尿臭、便臭等が挙げられる。中でもトリメチルアミンの閾値は、0.000032ppmで他の悪臭と比較しても特に閾値が低く、最も重要な消臭対象である。また、ピリジン類、ピラジン類も燃焼を伴う複合臭のキー成分であり、具体的にはタバコ臭、焼肉のニオイ、調理時のニオイなどが挙げられる。
【0006】
塩基性悪臭に対しては酸性系の消臭剤を用いて中和消臭する方法があり、例えば産業面では大量の酸性の消臭液を用いる酸液洗浄がある(非特許文献1)。しかしながら家庭用としては、安全性の観点から使用には制限があった。
【0007】
最近の消費者は、無香の消臭剤を用いて悪臭がなくなるまで多大な努力をするよりも、マスキング効果と化学消臭効果の両方の機能を有する消臭成分を用いて、より迅速に消臭できる製品を要望している。この両方の機能を有する消臭成分としては、香料素材や植物抽出物が挙げられる。
【0008】
塩基性悪臭、特にアミン類に対して化学消臭効果を有する香料素材として、α,β-不飽和カルボニル構造を有する香料素材、例えばシンナミックアルデヒド、シトラール、カルボン、これら以外のカルボニル基を分子内に有する香料素材、例えばシトロネラール等が知られている(非特許文献1及び2)。またアンモニア臭に対して化学消臭効果を有する香料素材として、メチルジヒドロジャスモネート等が知られている(特許文献1)。また、消臭効果のある植物抽出物としては、シンナモン油、シトロネラ油、ペパーミント油等の精油(非特許文献1)や、ローズマリー等のシソ科植物の溶剤抽出物(特許文献2)が知られている。
【0009】
しかしながら、シンナミックアルデヒドやシンナモン油は消臭効果は高いものの、安全性の観点から使用が制限されていたり、またシトロネラールやシトロネラ油は特異なニオイが強いため汎用性が狭く、幅広い香りを作る上では問題があった。またその他の物質については消臭効果の点で満足できるものではなかった。
【0010】
従って、前述のような、塩基性悪臭、特にトリメチルアミンの消臭に対する消費者の要望に応えるためには、穏やかな香気を有しながらも化学消臭効果を有する消臭剤の開発が望まれていた。
【0011】
【非特許文献1】西田耕之助「消臭・脱臭について」香料No.168 (1990) p65-87
【非特許文献2】堀内哲嗣郎「香料化合物と消臭作用」フレグランスジャーナル No.72 (1985) p64-67
【特許文献1】特開2002-159565号公報
【特許文献2】特開昭57-204278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、塩基性悪臭を化学的ないし物理的に低減させ、穏やかな香気を有し、かつ安全性に懸念のない消臭剤及びそれを用いた塩基性悪臭の消臭方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の観点から、香料素材や香りを有する植物抽出物について、塩基性悪臭、特にトリメチルアミン及びピリジンに対する化学的ないし物理的消臭効果を、後述の試験法にて調べた結果、従来知られている化合物より顕著に消臭効果の高い香料素材や植物抽出物を見出した。
【0014】
すなわち本発明は、成分(a)又は(b)からなる塩基性悪臭用消臭剤、及び成分(a)又は(b)を用いて塩基性悪臭を消臭する方法を提供するものである。
【0015】
成分(a); アミルシンナミックアルデヒド、桂皮酸エチル、ヌートカトン、シス−ジャスモン、アセチルセドレン、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール(Givaudan社商品名;リリアール)、2-シクロヘキシルプロパナール(花王社商品名;ポレナールII)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(IFF社商品名;トリプラール,Quest社商品名;リグストラール)、ゲラニルアセトン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(慣用名;メチルヘプテノン)、メチルヘキシルケトン、蟻酸シス-3-ヘキセニル、酪酸シス-3-ヘキセニル、乳酸シス-3-ヘキセニル、ヘキサン酸シス-3-ヘキセニル、ヘプタン酸シス-3-ヘキセニル、2-メチル酪酸シス-3-ヘキセニル、イソ酪酸トランス-2-ヘキセニル、イソ酪酸ヘプチル、酢酸ベンジル、2,2-ジメチルプロピオン酸 3-メチル-3-ブテニル(花王社商品名;ロミラット)、トランス-3-ヘキセノール、ゲラニオール、バレンセン及びオレンジ回収フレーバーから選ばれる1種以上の香料物質
成分(b); カンラン科、ハンニチバナ科、フウロソウ科及びフタバガキ科から選ばれる1種以上の植物の溶剤抽出物
【発明の効果】
【0016】
本発明の消臭剤は、気相中の塩基性悪臭、特にアルキルアミン類、ピリジン類、ピラジン類の量を低減させ、優れた消臭効果を示す。したがって、これを用いることにより、塩基性悪臭、例えば尿臭、魚臭、タバコ臭等を、安全かつ効果的に消臭できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の消臭剤は、成分(a)には、α,β-不飽和カルボニル化合物が含まれているが、これらの構造を有する化合物であっても塩基性悪臭の消臭に効果のない化合物もあり、消臭効果は化学反応のみでは説明できない。
【0018】
成分(a)である香料物質を化学的に分類すると以下のとおりとなる。
(a1) α,β-不飽和カルボニル化合物:アミルシンナミックアルデヒド、桂皮酸エチル、ヌートカトン、シス−ジャスモン、アセチルセドレン。
(a2) ケトン又はアルデヒド〔(a1)を除く〕:2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、2-シクロヘキシルプロパナール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、ゲラニルアセトン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、メチルヘキシルケトン。
(a3) エステル類〔(a1)、(a2)を除く〕:蟻酸シス-3-ヘキセニル、酪酸シス-3-ヘキセニル、乳酸シス-3-ヘキセニル、ヘキサン酸シス-3-ヘキセニル、ヘプタン酸シス-3-ヘキセニル、2-メチル酪酸シス-3-ヘキセニル、イソ酪酸トランス-2-ヘキセニル、イソ酪酸ヘプチル、酢酸ベンジル、2,2-ジメチルプロピオン酸3-メチル-3-ブテニル。
(a4) アルコール類又はエーテル類:トランス-3-ヘキセノール、ゲラニオール。
(a5) 炭化水素類:バレンセン。
(a6) 回収フレーバー:オレンジ回収フレーバー。ここで回収フレーバーとは、果汁を濃縮して濃縮果汁を作る際に水分とともに蒸発する香気成分を含む留出水(柑橘類の場合には油層のオイル分)から水蒸気蒸留や溶剤抽出などによってさらに濃縮したものである。
【0019】
これらの香料物質は、天然物から単離したものを用いることもできる。例えば、ヌートカトンは主にグレープフルーツから、バレンセンは主にオレンジから単離することができる。
【0020】
これら成分(a)のうち、塩基性悪臭全般に対する消臭効果の観点からは、桂皮酸エチル、2-シクロヘキシルプロパナール、ゲラニルアセトン、イソ酪酸トランス-2-ヘキセニル、2-メチル酪酸シス-3-ヘキセニル、ヘプタン酸シス-3-ヘキセニル、蟻酸シス-3-ヘキセニル、ヘキサン酸シス-3-ヘキセニル、2,2-ジメチルプロピオン酸3-メチル-3-ブテニル、ヌートカトン、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、酪酸シス-3-ヘキセニルが好ましい。香気の穏やかさと、消臭性能の両方からの総合的な面からは、アミルシンナミックアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、ヘプタン酸シス-3-ヘキセニル、ヘキサン酸シス-3-ヘキセニル、2,2-ジメチルプロピオン酸3-メチル-3-ブテニル、ヌートカトン、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、オレンジ回収フレーバーが好ましい。
【0021】
塩基性悪臭のうち、尿臭に対する消臭効果の観点からは、2-シクロヘキシルプロパナール、イソ酪酸トランス-2-ヘキセニル、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、蟻酸シス-3-ヘキセニル、2-メチル酪酸シス-3-ヘキセニル、バレンセン、ヘプタン酸シス-3-ヘキセニル、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、ゲラニルアセトン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、トランス-3-ヘキセノール、ヌートカトンが好ましい。
【0022】
塩基性悪臭のうち、魚臭に対する消臭効果の観点からは、蟻酸シスー3−ヘキセニル、2-シクロヘキシルプロパナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、イソ酪酸トランス-2-ヘキセニル、ゲラニルアセトン、ゲラニオール、バレンセン、シス−ジャスモン、2-メチル酪酸シス-3-ヘキセニルが好ましい。
【0023】
塩基性悪臭のうち、タバコ臭に関する消臭効果の観点からは、2-シクロヘキシルプロパナール、蟻酸シス-3-ヘキセニル、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、ゲラニルアセトン、ゲラニオール、イソ酪酸トランス-2-ヘキセニル、乳酸シス-3-ヘキセニル、オレンジ回収フレーバー、2-メチル酪酸シス-3-ヘキセニル、ヘプタン酸シス-3-ヘキセニル、ヌートカトン、バレンセンが好ましい。
【0024】
成分(b)は、カンラン科、ハンニチバナ科、フウロソウ科及びフタバガキ科から選ばれる1種以上の植物の溶剤抽出物であって、香気を有するものである。カンラン科の植物としては、Canarium luzonicum(エレミ)、Commiphora abyssinica(ミル)、Boswellia carterii(オリバナム)、Commiphora erythraea var.glabrescens(オポポナックス)等が挙げられ、ハンニチバナ科の植物としては、Cistus ladaniferus L.(ラブダナム)等が挙げられ、フウロソウ科の植物としては、Pelargonium graveolens(ゼラニウム)等が挙げられ、フタバガキ科の植物としては、Dipterocarpus turbinatus(ガージュン)等が挙げられる。
【0025】
使用できる植物の部位は、花、葉、果実、茎、全草、樹幹、根、根茎、樹脂等である。
植物の抽出に使用する溶剤としては、エタノール、アセトン、ブタン、ヘキサンや、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、二酸化炭素等があり、水との混合物を使用することもできる。
【0026】
成分(b)の中でも、有機溶剤抽出物が好ましく、エタノール、アセトン、ブタン、ヘキサン等の溶剤による抽出物が好ましい。
【0027】
これらの溶剤による抽出物は、香料業界においては特に、レジノイド、オレオレジン、アブソリュート、バルサムと呼ばれている。レジノイド、オレオレジンとは、花以外の樹脂などをアセトンやエタノールなどの抽出溶媒で抽出したのち、溶剤を除去したものであり、特に可溶性樹脂分を含む。フレグランス用途で使用されるものをレジノイド、フレーバー用途で使用されるものをオレオレジンと呼ぶ。アブソリュートとは、主に花部をヘキサンなどの抽出溶媒により抽出した後に、溶媒を除去して残ったコンクリート分をエタノールで加温溶解して再抽出し、ワックスなどの不溶解物を取り除いたのちに、エタノールを取り除いたものである。バルサムとは、植物の樹脂状分泌物であり、芳香族カルボン酸が遊離酸として、又は芳香族アルコールとのエステルとして存在し、これに樹脂分が溶解して流動性があるものをいう。
【0028】
成分(b)のうち、塩基性悪臭に対する消臭効果の観点からは、ミル、オポポナックス、ラブダナム、ゼラニウム、オリバナムの溶剤抽出物が好ましい。香気の穏やかさと、消臭性能の両方からの総合的な面からは、オポポナックス、ラブダナム、ゼラニウム、オリバナムの溶剤抽出物が好ましい。
【0029】
また、尿臭、魚臭、タバコ臭に関する消臭効果の観点からは、ラブダナム、ゼラニウム及びオリバナムの溶剤抽出物が好ましい。
【0030】
本発明の消臭剤は、適当な溶剤に溶解、分散させ、他の消臭基材その他の成分を適宜加えて消臭剤組成物とすることができる。この場合、成分(a)及び成分(b)は、いずれか一方のみを使用しても、両成分を併用してもよく、また、成分(a)、成分(b)自体も、いずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。消臭剤組成物における成分(a)及び成分(b)の含有量は、塩基性悪臭に対し十分な消臭効果を発揮する観点より、合計量で0.001〜5質量%、特に0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0031】
溶剤としては、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、流動パラフィンジメチルエーテル、ジエチルエーテル、LPG(液化石油ガス)等が挙げられる。散布後に早く揮発する点から、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、LPG等が好ましく、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
併用できる他の消臭基材としては、一般的な化学消臭基材や物理消臭基材(成分(c)と呼ぶ)が挙げられる。
【0033】
化学消臭基材としては、以下のものが挙げられる。
(中和反応)酢酸、塩酸、木酢液、竹酢液、クエン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、アクリル酸、乳酸、アジピン酸、フタル酸、安息香酸、ニコチン酸及びそれらの塩、ベタイン化合物等
【0034】
(付加反応)メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、カテキン、クロロゲン酸、茶抽出物、柿抽出物など
【0035】
(酸化反応)酸化亜鉛、酸化チタン、酸化銀、オキシド化合物、アスコルビン酸鉄、フタロシアニン誘導体
【0036】
物理消臭基材としては、以下のものが挙げられる。
(サイクロデキストリン)α-、β-又はγ-サイクロデキストリン、そのメチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体等
【0037】
(有機多孔質)活性炭、ジビニルベンゼンポリマー、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、キトサンポリマー
【0038】
(無機多孔質)ゼオライト、ハイシリカゼオライト、シリカ、ケイ酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、スチレンポリマー、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、キトサンポリマー
【0039】
(相溶性溶剤/油剤)エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール
【0040】
消臭剤組成物中の成分(c)の含有量は、消臭性能の観点から、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%が更に好ましい。
【0041】
消臭剤組成物には、上記の塩基性悪臭に消臭効果を示す香料物質等以外にも、その他の合成香料、天然香料、調合香料のいずれも使用が可能であるが、本発明の消臭効果を最大に引き出すためには、ニオイの弱い香料、例えばベンジルアルコール、ジヒドロジャスモン酸メチル等が望ましい。
【0042】
消臭剤組成物は、消臭剤以外に、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤や、酸化防止剤、防腐剤、色素等を含有してもよい。
【0043】
消臭剤組成物は、水溶液、油剤、乳剤、分散液、エアゾール剤、蒸散(揮散)剤、燻蒸剤、粉剤等の剤型に製造される。容器は、トリガー式スプレー容器、ポンプスプレー容器、スクイズボトル式容器、エアゾール容器、機械式噴霧器等を使用することができる。
【0044】
エアゾール剤には、LPG(液化石油ガス)、ペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の噴射剤等を加えて使用することもできる。
【0045】
消臭剤組成物は、塩基性悪臭が問題となる場所、例えば衣類表面、室内空間、室内表面等の消臭に効果的に使用することができる。具体的には、硬質表面(木製家具、タイル等)、繊維表面(衣類、寝具、カーペット、ソファー、カーテン等)、皮革表面(皮革製衣類、皮革製家具等)等の消臭に使用される。塩基性悪臭に対する消臭効果を有するキッチン、レンジ廻り、床面、壁面用、トイレ用の洗浄剤組成物、住居用の消臭剤組成物、衣類用の洗浄剤組成物、仕上げ剤組成物、柔軟剤組成物、消臭剤組成物とすることもできる。
【0046】
消臭剤組成物を衣類表面、室内表面等に適用する際は、その量は、消臭剤として0.05〜20mg/m2が好ましい。
【0047】
また、本発明の消臭剤は、シリカ、シリカゲル、セラミックなどの無機粉体、紙、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、活性炭、木粉等の有機粉体に含浸させたり、粉状、粒状に成型させたりして使用することもできる。この場合、前記他の消臭剤を適宜併用できる。
【実施例】
【0048】
試験例1
〔トリメチルアミンに対する消臭効果の測定〕
50mL容のガラスびん内に、30質量%トリメチルアミン水溶液の0.3質量%水溶液3.2μL及び消臭剤50μLを滴下して混合し、密栓する。30分静置後、アミン用検知管にてトリメチルアミン濃度を測定する。ブランクは消臭剤なしとし、ブランクからの差分から消臭率を求め(悪臭が0ppmの場合、消臭率100%)、下記基準に従ってランク分けした。この結果を表1に示す。
【0049】
<基準>
×:50%未満の効果
△:50%以上の効果
○:70%以上の効果
◎:90%以上の効果
【0050】
なお、試験に使用した化合物は、以下の基準に従ってグループ分けした。
グループ1(α,β-不飽和カルボニル構造を有する化合物)
グループ2(その他のカルボニル基を有する化合物)
グループ3(グループ1,2以外のエステル系化合物)
グループ4(グループ1,2以外のアルコール系、エーテル系化合物)
グループ5(炭化水素)
グループ6(回収フレーバー、植物精油)
グループ7(植物の溶剤抽出物)
【0051】
【表1】

【0052】
表1からわかるように、例えば、α,β-不飽和カルボニル化合物(グループ1)であっても予測不可能なほどトリメチルアミンに対する消臭効果が異なり、本発明品は顕著に効果が高いことが見出された。
【0053】
試験例2
〔ピリジンに対する消臭効果の測定〕
50mL容のガラスびん内に、ピリジンの0.5質量%水溶液2.5μL及び消臭剤30μLを滴下して混合し、密栓する。30分静置後、ピリジン用検知管にてピリジン濃度を測定する。ブランクは消臭剤なしとし、ブランクからの差分から消臭率を求め(悪臭が0ppmの場合、消臭率100%)、試験例1と同様の基準でランク分けした。この結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
試験例3
〔スカトールに対する消臭効果の測定〕
20mL容バイアルびん内に、スカトールの50質量%アセトン溶液10μLを滴下して1時間放置後、消臭剤10μLを滴下混合し、密栓する。軽く振って攪拌した後、HS-GC分析を行った。消臭率は、ブランクの悪臭物質揮散量(GCアバンダンス)に対する、消臭剤存在下での悪臭物質揮散量から求め、試験例1と同様の基準でランク分けした。この結果を表3に示す。
【0056】
<HS-GC分析条件>
HS-オートサンプラー;PERKIN ELMER製 HS40XL
バイアル保温時間;60℃30分保温後、加圧2分、注入0.3分
GC;HEWLETT PACKARD5890
カラム液相;(5%フェニル)メチルポリシロキサン 無極性
カラム長さ;30m、内径;0.32mm、膜厚;0.25μm
昇温条件;40℃(8℃/分)−60℃(4℃/分)−200℃
消臭率(%)は下記式により求めた。
【0057】
【数1】

【0058】
【表3】

【0059】
他の物質に関しては、消臭率40%以下であった
【0060】
消臭効果の測定の結果、本発明品は塩基性悪臭のうちトリメチルアミンだけでなく、ピリジン、スカトールについても公知の消臭剤より効果が高いことが確認された。
【0061】
実施例1
〔乾燥尿に対する消臭効果の測定〕
50mL容のガラスびん内に、乾燥尿(3人分を混合し、シャーレに入れ、天日で乾燥させたもの)0.06g及び消臭剤100μLを滴下して混合し、密栓する。30分静置後、混合液に1Mの水酸化ナトリウム水溶液を30μL滴下してアルカリ性に調整した後、発生した尿臭をアミン用検知管にて測定する。ブランクは消臭剤なしとし、ブランクからの差分から消臭率を求める(悪臭が0ppmの場合、消臭率100%)。この結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
他の物質に関しては、消臭率40%以下であった。
【0064】
実施例2
〔魚臭に対する消臭効果の測定〕
50mL容のガラスびん内に、焼き魚の廃油(イオン交換水で5質量倍に希釈)100μL、5M水酸化ナトリウム水溶液30μLを入れたプラスチック製の2mL容の小カップ、及び消臭剤50μLの3つを入れ、密栓する。30分静置後、発生した魚臭をアミン用検知管にて測定する。ブランクは消臭剤なしとしブランクからの差分から消臭率を求める(悪臭が0ppmの場合、消臭率100%)。この結果を表5に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
他の物質に関しては、消臭率40%以下であった。
【0067】
実施例3
〔タバコ臭に対する消臭効果の測定〕
50mL容のガラスびん内に、消臭剤50μLと、1Lセパラフラスコの中で燃焼させたタバコ(マイルドセブンオリジナル先端1cm分)の煙15mL分を注入し、密栓する。30分静置後、タバコ臭をピリジン用検知管にて測定する。ブランクは消臭剤なしとしブランクからの差分から消臭率を求める(ピリジン濃度が0ppmの場合、消臭率100%)。この結果を表6に示す。
【0068】
【表6】

【0069】
他の物質に関しては、消臭率40%以下であった。
【0070】
実施例4 柔軟剤組成物
表7に示す組成(質量%)の本発明に係る消臭剤を配合した柔軟剤組成物(pH4)を調製した。
【0071】
【表7】

【0072】
実施例5 スプレー型消臭剤組成物
表8に示す組成(質量%)の本発明に係る消臭剤を配合した消臭剤組成物を調製し、トリガースプレー容器に入れ、スプレー型消臭剤組成物を調製した。
【0073】
【表8】

【0074】
実施例6 エアゾールスプレー型消臭剤組成物
表9に示す組成(質量%)の原液と液化石油ガス(LPG)を6:4の割合でエアゾール缶に充填し、エアゾールスプレーとした。
【0075】
【表9】

【0076】
実施例7 食器用洗浄剤組成物
表10に示す組成(質量%)の本発明に係る消臭剤を配合した食器用洗浄剤組成物を調製した。
【0077】
【表10】

【0078】
実施例8 キッチン用強力洗浄剤組成物
表11に示す組成(質量%)の本発明に係る消臭剤を配合したキッチン用洗浄剤組成物(pH10)を調製した。
【0079】
【表11】

【0080】
実施例9 トイレ用スプレー洗浄剤組成物
表12に示す組成(質量%)の本発明に係る消臭剤を配合したトイレ用洗浄剤組成物をトリガー付き容器に入れ、トイレ用スプレー洗浄剤組成物を調製した。
【0081】
【表12】

【0082】
実施例10 トイレ用ウェットシート
表13に示す組成(質量%)の本発明に係る消臭剤を配合した配合液を調製し、不織布シートに対して2.5倍量(質量)含浸させ、トイレ用のウェットシートとした。
【0083】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)又は(b)からなる塩基性悪臭用消臭剤。
成分(a):アミルシンナミックアルデヒド、桂皮酸エチル、ヌートカトン、シス−ジャスモン、アセチルセドレン、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、2-シクロヘキシルプロパナール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、ゲラニルアセトン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、メチルヘキシルケトン、蟻酸シス-3-ヘキセニル、酪酸シス-3-ヘキセニル、乳酸シス-3-ヘキセニル、ヘキサン酸シス-3-ヘキセニル、ヘプタン酸シス-3-ヘキセニル、2-メチル酪酸シス-3-ヘキセニル、イソ酪酸トランス-2-ヘキセニル、イソ酪酸ヘプチル、酢酸ベンジル、2,2-ジメチルプロピオン酸 3-メチル-3-ブテニル、トランス-3-ヘキセノール、ゲラニオール、バレンセン及びオレンジ回収フレーバーから選ばれる1種以上の香料物質
成分(b):カンラン科、ハンニチバナ科、フウロソウ科及びフタバガキ科から選ばれる1種以上の植物の溶剤抽出物
【請求項2】
請求項1記載の成分(a)又は(b)を用いて塩基性悪臭を消臭する方法。
【請求項3】
塩基性悪臭が、尿臭、魚臭又はタバコ臭である請求項2記載の方法。

【公開番号】特開2008−136841(P2008−136841A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159680(P2007−159680)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】