説明

塩基性炭酸鉛の製造方法

本発明は塩基性炭酸鉛の製造方法であり、この方法は(1)水酸化ナトリウム溶液を得るため中和スラグを浸漬し、(2)塩化ナトリウムと塩酸とを有する水溶液で塩化鉛スラグを溶脱し、硫化ナトリウムを加えて濾過し、(3)濾過物を水酸化ナトリウム溶液で中和し、沈殿物を濾過し洗浄し、(4)沈殿物を重炭酸アンモニウムで塩基性炭酸塩に変換し、結晶化し、洗浄する。上記中和スラグと塩化鉛スラグはビスマスの火力精錬で生じた“余分なスラグ”である。本発明方法は、ビスマスの火力精錬で生じた余分なスラグの良好な使用方法であり、資源を節約し、環境汚染を減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非鉄金属の回収方法、特に塩基性炭酸鉛の製造方法に関するものである。
【0002】
ここで云う“イエロー鉛(Yello lead)”とは、式PbOの酸化鉛を示し、“低不純物塩基性炭酸鉛”とは、不純物として、質量フラクション(mass fraction)でBi:<0.3%、Cu:<0.05%、Ag:<0.008%、Zn:<0.5%、及びCl:<1%である塩基性炭酸鉛を示し、“経済的重炭酸塩”とは、本発明において塩基性塩化鉛を塩基性炭酸塩に変換する間普通に用いられる炭酸アンモニウムの代りに用いられる比較的安い重炭酸アンモニウムを意味し、“中和スラグ”とは、塩素と化合された天然ビスマスの中和の間に作られた水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム及び金属ビスマス等より成る精錬スラグを示し、“塩化鉛スラグ”とは、塩素によって天然ビスマスを塩化することによって鉛を除去する間に作られた、塩化鉛や金属ビスマス等より成る精錬スラグを示し、“精錬されたビスマス”とは、GB/T 915−1984によるN.Bi9999のビスマス生成物を示し、“天然ビスマス”とは、銀溶錬炉内の鉛アノードスライムの処理で得た後スラグ(later slag)の還元によって作られた天然金属を示し、“リーン鉛(lean lead)”とは、鉛イオンが、電解鉛−ビスマス合金の循環システム内で正常な電気分解を維持するために望まれる50g/lの最小値以下であるものを示し、“余分なスラグ(redundant slag)”とは、天然ビスマスの精錬の間に多量に作られた、廉価で扱いにくい塩化鉛スラグと中和スラグを示し、“上澄液(supernatant liquor)”とは、中和スラグの浸漬と浄化の後の水酸化ナトリウム溶液の上澄液を示す。
【背景技術】
【0003】
現在、多くのミネラル資源の開発と生産の間に作られる廃物鉛スラグは、適当に利用されない限り廃棄物であり経済的なロスであると共に、重大な環境汚染のもととなっている。
【0004】
ビスマス精錬工程においては、多量の鉛含有廃棄スラグが溶脱(leached out)される。このスラグには鉛、銅、銀及びビスマス等の価値ある金属が含まれており、鉛の含有量は一般に質量フラクションで60%〜70%である。従って、塩基性炭酸鉛、三塩基硫酸鉛、及び硫酸鉛等の鉛−塩スリーズの化学的生成物を作るための廃棄鉛スラグの使用が大きく注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、不純物含有量の少ない塩基性炭酸鉛の製造方法を得るにある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の方法においては、不純物含有量の少ない塩基性炭酸鉛を作るためビスマスの火力精錬(fire refining)で生ずる“余分なスラグ”を用いる。この方法は以下の工程よりなる。
【0008】
(1)水酸化ナトリウム溶液を得るため中和スラグを浸漬し、(2)塩化鉛スラグを溶脱し、濾過し、(3)アルカリで中和し、濾過し、洗浄し、(4)挟酸塩で変換し、結晶化し、濾過し、洗浄する。
【0009】
水酸化ナトリウム溶液を得るための中和スラグ浸漬工程では、砕いた中和スラグを浸漬プール内で撹拌し、1〜2時間浸漬し、浄化する。水酸化ナトリウム溶液の上澄液を直接用いることができる。好ましくは砕いた中立スラグをきれいな水を加えた浸漬プール内で1.5時間浸漬する。
【0010】
塩化鉛スラグの溶脱及び濾過工程においては、砕いた塩化鉛のスラグを濃度300〜400Kg/m3 の塩化ナトリウムの水溶液を有する反応タンクに入れ、1〜1.5時間撹拌し、85〜95℃に加熱し、塩酸によってpHを1〜4に調整し、次いで硫化塩、例えば Na2 S,K2 S及び(NH42 S を加えて1〜1.5時間反応せしめる。濾過と浄化等の測定を行なう。
【0011】
上記工程で加える硫化塩の量は、溶液内の沈澱銅イオンのために望まれる硫化ナトリウムの理論値の1〜2倍とする。銅を0.5時間硫化せしめることによって除去する。
【0012】
塩化鉛の溶脱のため最終pH値を3.5〜5.5に制御し、溶液の濾過を70〜95℃で行なう。好ましくは、砕いた塩化鉛のスラグを濃度380Kg/m3 の塩化ナトリウム水溶液に加え、塩酸によってpH値を2に調整し、90℃に加熱し、1.5時間撹拌する。好ましくは、加える硫化塩の量は、溶液内の沈澱銅イオンのために望まれる硫化ナトリウムの理論値の1.2倍とする。好ましくは、塩化鉛の溶脱のための最終pH値を4とし、温度を90℃とする。この主反応は以下のとおりである。
【0013】



【0014】
アルカリで中和し、濾過し、洗浄する工程においては、上記工程(2)で得た濾過物を撹拌しながら70〜95℃に加熱し、沈澱結晶を溶解し、工程(1)で得た水酸化ナトリウムを溶液のpH値が6〜8になる迄ゆっくり加え、中和と浄化を完了せしめ、次いで複数層の濾過布を通して濾過し、3〜6回洗浄する。好ましくは、得られた濾過物を撹拌しながら85℃に加熱する。好ましくは、工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液をpH値が7になる迄ゆっくり加える。好ましくは、中和が完了した後、浄化し、複数層の濾過布を通して濾過し、4回洗浄する。この主反応は以下のとおりである。
【0015】



【0016】
炭酸塩で変換し、結晶化し、濾過し、洗浄する工程においては、上記工程(3)で得た濾過スラグ(濾過残渣)をきれいな水を有する反応タンク内に入れ、撹拌する。加える重炭酸アンモニウムの量を、濾過スラグに望まれる重炭酸アンモニウムの理論値の2〜3倍とする。同時に、上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液の少量を用い、pHを8〜11に調節し、1〜2時間撹拌し、結晶化し、沈澱せしめ、濾過し、3〜6回洗浄する。好ましくは、経済的な炭酸塩、即ち、重炭酸アンモニウムをこの工程における炭酸塩変換のために用いる。好ましくは、加える重炭酸アンモニウムの量を濾過スラグに望まれる重炭酸ナトリウムの理論値の2.7倍とする。好ましくは上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液の少量を用い、pH値を9に調節し、1.5時間撹拌し、結晶化し、沈澱せしめ、濾過し、5回洗浄する。この主反応は以下のとおりである。
【0017】



【0018】
イエロー鉛の代りに塩基性炭酸鉛生成物を乾燥することなく電解鉛−ビスマス合金のための循環電解液に直接加えることができ、この結果“リーン鉛”の問題を解決でき、工程を最適にできる。イエロー鉛を作るため、含有不純物が少ない塩基性炭酸鉛を高温で焼成でき、得られたイエロー鉛は第1国際標準クラスに合致せしめ得る。
【0019】
本発明方法では、原料としてのビスマスの精錬で得た“余分なスラグ”を用い、塩化鉛スラグの溶脱と銅やビスマス等の不純物の増加は同時になされる。銅やビスマス等の不純物を含む溶脱スラグは直接火力溶錬に戻し、アルカリ中和物の母液は、主として塩化鉛スラグの溶脱工程に戻される飽和物に近い塩化ナトリウム溶液である。“高炉により溶錬し、鉛−ビスマス合金を電気分解し、次いで精錬する”本発明の溶錬工程は最適であり、ビスマス溶錬スラグがより良好に処理され、利用され、その結果資源の節約となる。本発明方法によれば、鉛の循環をクローズドシステムでなし得、環境汚染を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】塩基性炭酸鉛を製造するための本発明方法のフロー線図である。
【図2】塩基性炭酸鉛を製造するための本発明方法により水酸化ナトリウム溶液を得るための中和スラグ浸漬方法のフロー線図である。
【図3】塩基性炭酸鉛を製造するための本発明方法における塩化鉛スラグの溶脱方法のフロー線図である。
【図4】塩基性炭酸鉛を製造するための本発明方法におけるアルカリの中和、濾過及び洗浄方法のフロー線図である。
【図5】塩基性炭酸鉛を製造するための本発明方法における炭酸塩変換、結晶化、濾過及び洗浄方法のフロー線図である。
【実施例1】
【0021】
図1に示すように、不純物含有量の少ない塩基性炭酸鉛を作るため、ビスマスの火力精錬における“余分なスラグ”、即ち塩化鉛スラグ(PbCl2)と中和スラグ(NaOH)を原料として用いる。この主工程以下のとおりである。
【0022】
(1)水酸化ナトリウム溶液を得るため中和スラグを浸漬する。
【0023】
図2に示すように中和スラグ10を砕き、きれいな水11を有する浸漬プールに加え、撹拌し、1〜2時間浸漬して浄化せしめる。上澄液(水酸化ナトリウム溶液)13を使用のため貯える。凝結物(setting)12を乾燥し、精錬のため精錬ポットに直接戻す。
【0024】
(2)塩化鉛スラグを溶脱し、濾過する。
【0025】
図3に示すように約200メッシュに砕いた濾過物30と塩化鉛スラグを反応タンクに入れる。この反応タンクに含まれる溶液内の塩化ナトリウムの濃度を塩化ナトリウムで300〜400Kg/m3 に調節する。この溶液を塩酸によって初期pH値を1〜4に調節し、85〜95℃に加熱し、1〜1.5時間撹拌する。この工程で加える硫化塩(例えば Na2S、K2S、(NH42S 等)の量を、原料内の銅等の不純物の含有量によって定め、沈澱のため望まれる硫化ナトリウムの理論値の1〜2倍とする。0.5時間の硫化によって銅を除去する。溶脱のための最終pH値を4に制御し、濾過を90℃で行なう。濾過スラグ21をビスマス濃縮物として材料混合に戻すことができ、濾過物22は次の工程に進める。
【0026】
(3)アルカリで中和し、濾過し、洗浄する。
【0027】
図4に示すように濾過物22を撹拌しながら85℃に加熱し、沈澱結晶を溶解し、上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液13を、溶液のpH値が7になる迄ゆっくり加え、中和を完了し、洗浄を4回繰り返す。濾過スラグ31を次の工程に進める。
【0028】
(4)炭酸塩で変換し、結晶化し、濾過し、洗浄する。
【0029】
図5に示すように濾過スラグ31をきれいな水を有する反応タンク内に入れ撹拌する。加える重炭酸アンモニウム40の量を、濾過スラグ31によって望まれる重炭酸アンモニウムの理論値の2.7倍とする。同時に上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液13の少量を用いて、溶液のpH値が9になるようにし、1.5時間撹拌し、結晶化し、沈澱せしめ、濾過し、5回洗浄する。
【0030】
イエロー鉛の代りに塩基性炭酸鉛生成物を乾燥することなく電解鉛−ビスマス合金の循環電解液に直接加え、“リーン鉛”の問題を解決せしめ、この方法を最適ならしめる。
【実施例2】
【0031】
図1のフロー線図に示すようにビスマスの火力精錬における“余分なスラグ”即ち、塩化鉛スラグ(PbCl2)と中和スラグ(NaOH)を原料として用い不純物の少ない塩基性炭酸鉛を作る。この主工程は以下の通りである。
【0032】
(1)水酸化ナトリウム溶液を得るため中和スラグを浸漬する。
【0033】
図2に示すように中和スラグ10を砕き、きれいな水11を有する浸漬プールに加え、撹拌し、1.5時間浸漬して浄化せしめる。上澄液(水酸化ナトリウム溶液)13を使用のため貯える。凝結物12を乾燥し、精錬のため精錬ポットに直接戻す。
【0034】
(2)塩化鉛スラグを溶脱し、濾過する。
【0035】
図3に示すように約200メッシュに砕いた濾過物30と塩化鉛スラグを反応タンクに入れる。この反応タンクに含まれる溶液内の塩化ナトリウムの濃度を塩化ナトリウムで380Kg/m3 に調節する。初期溶液のpH値を塩酸によって2.0に調節し、90℃に加熱し、1.5時間撹拌する。この工程で加える硫化塩の量を、この溶液内の沈殿銅のイオンのため望まれる硫化ナトリウムの理論値の1.2倍とする。0.5時間の硫化によって銅を除去する。溶脱のための最終pH値を4に制御し、濾過を90℃で行なう。濾過スラグ21をビスマス濃縮物として材料混合に戻すことができ、濾過物22は次の工程に進める。
【0036】
(3)アルカリで中和し、濾過し、洗浄する。
【0037】
図4に示すように濾過物22を撹拌しながら85℃に加熱し、沈澱結晶を溶解し、上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液13を、溶液のpH値が7になる迄ゆっくり加え、中和を完了し洗浄を4回繰り返す。濾過スラグ31を次の工程に進める。
【0038】
(4)炭酸塩で変換し。結晶化し、濾過し、洗浄する。
【0039】
図5に示すように、濾過スラグ31をきれいな水を有する反応タンク内に入れ撹拌する。加える重炭酸アンモニウム40の量を、濾過スラグ31によって望まれる重炭酸アンモニウムの理論値の2.7倍とする。同時に上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液13の少量を用いて、溶液のpH値が9になるようにし、1.5時間撹拌し、結晶化し、沈澱せしめ、濾過し、5回洗浄する。
【0040】
イエロー鉛の代りに塩基性炭酸鉛生成物を乾燥することなく電解鉛−ビスマス合金の循環電解液直接加え、“リーン鉛”の問題を解決せしめ、この方法を最適ならしめる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水酸化ナトリウム溶液を得るため中和スラグを浸漬し、
(2)塩化鉛スラグを溶脱し、濾過し、
(3)アルカリで中和し、濾過し、洗浄し、
(4)炭酸塩で変換し、結晶化し、濾過し、洗浄する
工程を有することを特徴とする、原料としてのビスマスを火力精錬して生じた“余分なスラグ”を用いる、塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項2】
上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液の上澄液を次の工程のため直接用いることを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項3】
上記工程(2)で塩化鉛スラグを濃度300〜400Kg/m3 の塩化ナトリウム水溶液に加え、塩酸によって塩化ナトリウム水溶液のpH値を1〜4に調整し、85〜95℃に加熱撹拌し、1〜1.5時間反応せしめ、次いで硫化塩を加えることを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項4】
上記工程(2)で加える硫化塩の量を、溶液内の沈殿銅イオンのために望まれる硫化ナトリウムの理論値に応じて定めることを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項5】
上記工程(2)における塩化鉛の溶脱のための最終pH値を3.5〜5.5に制御することを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項6】
上記工程(2)における塩化鉛溶液の濾過のための温度が70〜95℃であることを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項7】
上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液の上澄液を上記工程(3)において濾過物に加えて反応せしめ、浄化し、次いで濾過し、3〜6回洗浄することを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項8】
上記工程(4)における重炭酸アンモニウムが経済的な炭酸塩であり、濾過スラグが炭酸塩変換され、エージングされ、結晶化され、きれいな水で3〜6回洗浄されることを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項9】
上記工程(4)において溶液が、上記工程(1)で得た水酸化ナトリウム溶液でpH値8〜11に調整されることを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。
【請求項10】
イエロー鉛の代りに塩基性炭酸鉛生成物を乾燥することなく電解鉛−ビスマス合金のための循環電解液に直接加えることを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸鉛の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513030(P2013−513030A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542336(P2012−542336)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/CN2009/076289
【国際公開番号】WO2011/069311
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512114707)チャンシー レア アース アンド レア メタルズ タングステン グループ コーポレーション (3)
【住所又は居所原語表記】No.118,Beijing West Road,Nanchang,Jiangxi 330046, P.R.of China
【Fターム(参考)】