説明

塩基配列判定方法、システムおよびプログラム

【課題】3種以上の塩基配列から、検査対象の塩基配列を判定するための塩基配列判定方法、塩基配列判定システム及び塩基配列判定プログラムを提供する
【解決手段】実施形態である塩基配列判定方法は、識別可能な複数の検出用区画と、それらに対応させて各々固定され、区画間で互いに配列が異なる複数の検出用プローブと、何れの検出用プローブの塩基配列とも異なる配列のコントロールDNAが固定化されたコントロール区画を有するチップを用いる。以降の処理により得る結果も最後まで検出用区画に対応し、識別可能である。チップにサンプル核酸を添加した後、各検出用区画からの信号よりコントロール信号を差し引き且つ除算した値を全検出用区画からの各々の信号全てについて行う。得られた結果から1つを選択してX座標とし、残りの結果も認識可能な複数のY座標とする。各Y座標全てX座標と対にされ、対毎のXおよびY座標で定まる点と原点を結ぶ直線と、正のX軸とが成す角度を得る。得られた全ての角度が角度判定基準との大小関係の比較から、X座標とされた結果が対応する検出用区画の検出プローブと、対になったY軸の結果に対応する検出用区画の検出用プローブとについて陽性か陰性かを判定する。X座標については、対となったY軸の分の複数の判定結果が出る。これらについては陽性と陰性の優先順位に従い、更に陽性か陰性かを判定し、サンプル核酸について、全検出用プローブが陽性か陰性かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、核酸の塩基配列を判定する塩基配列判定方法、この塩基配列判定方法を実現する塩基配列判定システム、及びこの塩基配列判定システムを自動で制御し、測定信号を自動解析される塩基配列判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、核酸の塩基配列検出技術が、様々な目的で利用されている。(1)微生物に特異的な塩基配列を検出することにより、それらの存在自体を証明する場合、(2)同一種の微生物の中で分類された型を検出することにより、型に応じた対処を選択する場合、(3)薬剤などの投与により生じる薬剤耐性微生物を検出することにより、微生物の経時的変化を検出する場合、(4)転写されるRNAの量を把握することにより、細胞や組織の状況を把握する、(5)多様性のある塩基配列を複数組み合わせ、個体を特定する、などである。このような目的の中で、検出するものと識別するものが類似している場合には、1塩基または数塩基の僅かな違いを識別する必要がある。
【0003】
塩基配列を検出する方法は、これまで様々なものが開発されているが、1塩基または数塩基の僅かな違いを識別する場合、どちらか一方を検出する際に他方の非特異信号が見られるため、それぞれの塩基配列に応じた信号から個別に判定することは難しい場合がある。その対応のために、互いの塩基配列に応じた信号同士を相対比較し、判定する方法がある。更に、例えば、ある塩基配列領域の中の1塩基多型部位において、AとGのどちらか一方の塩基が存在する場合、なんらかの検出方法において得られるA由来の信号のみから、またはG由来の信号のみから、どちらの塩基であるかを判定することが困難な場合がある。その場合には、A由来の信号とG由来の信号の比率を算出し、その数値によって、A、Gまたは両方の存在を検出する。このように比率から塩基配列を特定する方法について報告があるが、これらは、主に、1塩基置換で且つ2種の塩基を対象としており、そのどちらか一方、またはその両方の有無を検出するものである。
【0004】
このような技術が報告されてはいるが、上記のような様々な目的における塩基配列の検出対象は、1塩基置換で且つ2種の塩基のみではなく、複数種類の塩基配列を対象とする場合がある。例えば、薬剤耐性微生物を検出する場合、薬剤耐性を示す微生物の特徴は、塩基配列ではなく、アミノ酸配列によって特定される。この薬剤耐性を示すアミノ酸は1種類ではなく、複数種であることもある。その場合には、野生型も含めて、複数の塩基配列の中から、その微生物がもつ配列を特定する必要がある。また、1塩基多型の塩基を調べることにより、個体を特定する場合には、1箇所の1塩基多型による多様性を向上させるため、3塩基、4塩基置換型の1塩基多型部位を使用することも報告されている。この場合、その多型箇所がA、G、C、またはTのいずれかであるかを検出する必要がある。
【0005】
このような状況において、複数種の塩基配列から、検査対象の塩基配列を特定は、2種の信号の比率を算出するのみでは、不可能である。従って、他の方法の開発が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−258702号公報
【特許文献2】特許第4516107号(P4516107)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、3種以上の塩基配列から、検査対象の塩基配列を判定するための塩基配列判定方法、塩基配列判定システム及び塩基配列判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の塩基配列判定方法は、識別可能な複数の検出用区画と、それらに対応させて各々固定され、区画間で互いに配列が異なる複数の検出用プローブと、何れの検出用プローブの塩基配列とも異なる配列のコントロールDNAが固定化されたコントロール区画を有するチップを用いる。以降の処理により得る結果も最後まで検出用区画に対応し、識別可能である。チップにサンプル核酸を添加した後、各検出用区画からの信号よりコントロール信号を差し引き且つ除算した値を全検出用区画からの各々の信号全てについて行う。得られた結果から1つを選択してX座標とし、残りの結果も認識可能な複数のY座標とする。各Y座標全てX座標と対にされ、対毎のXおよびY座標で定まる点と原点を結ぶ直線と、正のX軸とが成す角度を得る。得られた全ての角度が角度判定基準との大小関係の比較から、X座標とされた結果が対応する検出用区画の検出プローブと、対になったY軸の結果に対応する検出用区画の検出用プローブとについて陽性か陰性かを判定する。X座標については、対となったY軸の分の複数の判定結果が出る。これらについては陽性と陰性の優先順位に従い、更に陽性か陰性かを判定し、サンプル核酸について、全検出用プローブが陽性か陰性かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る塩基配列判定システムを構成する測定系の一例を説明する回路図。
【図2】図1の測定系の一部をなす検出チップの構造を説明する模式的な平面図。
【図3】実施形態の判定基準について示す図。
【図4】実施形態に係る塩基配列判定システムに用いられるチップカートリッジの構造の一例を説明する模式的な組み立て鳥瞰図。
【図5】図4を上下逆にして示す、実施形態に係るチップカートリッジの組み立て鳥瞰図。
【図6】実施形態に係る塩基配列判定システムを構成する送液系に備えられるバルブユニットの全体構成を示す模式図。
【図7】実施形態に係る塩基配列判定システムの一例を説明する概念的なブロック図。
【図8】実施形態に係る塩基配列判定システムを構成するコンピュータの構成の一例を説明する概念的なブロック図。
【図9】第1〜第3の検出用区画に固定化されたプローブDNAと、サンプル核酸との反応状態を示す図。
【図10】第1〜第3の検出用区画に固定化されたプローブDNAと、サンプル核酸との反応状態を示す図。
【図11】第1〜第3の検出用区画に固定化されたプローブDNAと、サンプル核酸との反応状態を示す図。
【図12】第1〜第3の検出用区画に固定化されたプローブDNAと、サンプル核酸との反応状態を示す図。
【図13】検出用電極に固定化されたプローブDNAとサンプル核酸の結合が、未結合のプローブDNAが固定化された検出用電極よりもピークの大きな電気化学的電流の電流−電圧特性となることを示すグラフ。
【図14】実施形態に係る塩基配列判定方法の全体としての流れを説明するフローチャート。
【図15】単純移動平均法による平準化(スムージング)を説明する模式図である。
【図16】実施形態に係る塩基配列判定方法において、各電極毎に測定された電気化学的電流の電流波形(電流−電圧特性)のそれぞれのベースラインの傾きにより、それぞれの電流波形(電流−電圧特性)の正常・異常を判定する方法の一例を説明するフローチャート。
【図17】チップカートリッジにおける電気化学的電流の信号の例として、データ1とデータ2の2種類の電流−電圧特性を示す。データ1の電流−電圧特性が示すベースラインの傾きに比して、データ2の電流−電圧特性が示すベースラインの傾きの方が大きい。
【図18】実施形態に係る塩基配列判定方法において、各電極毎に測定された電気化学的電流の電流波形(電流−電圧特性)から、それぞれのバックグラウンド電流を差し引いて、真の検出信号のピーク値(ピーク電流値)を求める方法の一例を説明するフローチャート。
【図19】図18に示したフローチャートの手順に引き続き、各電極毎に測定された電流波形(電流−電圧特性)から、真の検出信号のピーク値(ピーク電流値)を求める方法の手順の流れを説明するためのフローチャート。
【図20】実施形態に係る塩基配列判定方法において、各電極毎に測定された電気化学的電流の電流波形(電流−電圧特性)から、ピーク位置を決定するために、電気化学的電流の微分値(di/dv)が「ゼロクロス」する点を求める方法を説明する模式図。
【図21】実施形態に係る塩基配列判定方法において、各電極毎に測定された電気化学的電流の電流波形(電流−電圧特性)から、それぞれのバックグラウンド電流を近似するための基準点を算出する手順を説明する模式図。
【図22】図21の拡大図。
【図23】実施形態に係る塩基配列判定方法において、ゼロクロス電圧におけるピーク電流から、対応するバックグラウンド電流を差し引いて、真の検出信号(ピーク電流値)を求める方法を説明する模式図。
【図24】図23に示す方法で求めた真の検出信号(ピーク電流値)を、複数のコントロール電極毎、複数の第2検出用電極(塩基="T"検出用電極)毎、複数の第1検出用電極(塩基="G"検出用電極)毎に整理した棒グラフである。図24(a)に示したモードAは、第2検出用電極で歯抜けが発生しているモードであり、図24(b)に示したモードBは、第2検出用電極からの信号にバラつきが大きい場合を示したモードであり、図24(c)は、ネガティブ・コントロール電流値の平均値が、ネガティブ・コントロールの上限値NCULを超えてしまった場合を概念的に示す図。
【図25】実施形態に係る塩基配列判定方法において、各電極毎にそれぞれ算出された一群のピーク電流値のデータに対して、グループ正常判定を行う方法の一例を説明するフローチャート。
【図26】実施形態に係る塩基配列判定方法において、ある核酸が存在するかどうかを判定する有無判定アルゴリズムのフローに進むのか、SNPの型が、2種の内のどちらであるか、それがホモ型であるか、ヘテロ型であるかを判定するSNP型判定アルゴリズムのフローに進むのかを決定する方法の一例を説明するフローチャート。
【図27】実施形態に係る塩基配列判定方法において、ある核酸が存在するかどうかを判定する有無判定アルゴリズムの一例を説明するフローチャート。
【図28】実施形態に係る塩基配列判定方法において、検出データとX座標およびY座標との対応について説明する図。
【図29】実施形態に係る塩基配列判定方法において、検査有効性を判定するアルゴリズムの一例を説明するフローチャート。
【図30】実施形態に係る塩基配列判定方法において、検査有効性判定を行う方法の一例を示すフローチャート。
【図31】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図32】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図33】実施形態に係る塩基配列判定方法において、核酸の有無を判定する例について、種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図34】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図35】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図36】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図37】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図38】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図39】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【図40】実施形態に係る塩基配列判定方法において、判定に関する基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.塩基配列判定方法
実施形態の塩基配列判定方法は、識別可能な複数の検出用区画と、それらに対応させて各々固定され、区画間で互いに配列が異なる複数の検出用プローブと、何れの検出用プローブの塩基配列とも異なる配列のコントロールDNAが固定化されたコントロール区画を有するチップを用いる。以降の処理により得る結果も最後まで検出用区画に対応し、識別可能である。チップにサンプル核酸を添加した後、各検出用区画からの信号よりコントロール信号を差し引き且つ除算した値を全検出用区画からの各々の信号全てについて行う。得られた結果から1つを選択してX座標とし、残りの結果も認識可能な複数のY座標とする。各Y座標全てX座標と対にされ、対毎のXおよびY座標で定まる点と原点を結ぶ直線と、正のX軸とが成す角度を得る。得られた全ての角度が角度判定基準との大小関係の比較から、X座標とされた結果が対応する検出用区画の検出プローブと、対になったY軸の結果に対応する検出用区画の検出用プローブとについて陽性か陰性かを判定する。X座標については、対となったY軸の分の複数の判定結果が出る。これらについては陽性と陰性の優先順位に従い、更に陽性か陰性かを判定し、サンプル核酸について、全検出用プローブが陽性か陰性かを判定する。
【0011】
検出用区画は、1つのチップに複数配置される。複数配置された検出区画に検出用プローブが固定化される。検出用区画は、1つの検出点として1つの検出用プローブとそれにマッチする核酸とのハイブリダイズ信号を検出信号として得られるように構成される。検出信号は、ハイブリダイズ信号を反映する信号であればよく、電気的、物理的、化学的、電気化学的、電気物理的、およびそれらを組み合わせた形態での信号であればよい。従って、それらの信号を得ることが可能な区画の構成とすればよい。例えば、電気化学的な信号として検出信号を得る場合には電極が使用される。
【0012】
複数配置された検出区画は、それぞれの検出区画から得られる信号が、その後の処理において何れの検出区画からの信号であるか識別されるように対応付けられ維持される。それにより、何れの検出区画の検出用プローブが陽性であり、また何れの検出区画の検出用プローブが陰性であるかが判定される。その結果、サンプル核酸の塩基配列が判定される。
【0013】
例えば、複数の検出用区画は、例えば、それぞれ第1の検出用区画から第nの検出用区画として認識される。ここで「n」は3以上の整数である。ここにおいて、「第1〜第n検出用区画」と記載された場合、第1の検出用区画、第2の検出用区画、第3の検出用区画、第4の検出用区画………第nの検出用区画が存在することを意味する。
【0014】
コントロール区画は、コントロールDNA、言い換えるとコントロールプローブが固定化されるための区画である。従って、コントロール区画からの信号は、コントロール信号として使用される。コントロール区画の構成は、コントロールDNAが固定化されること以外は、基本的に検出用区画と同じ構成である。
【0015】
コントロール区画は、各検出用区画に対応して配置される。即ち、例えば、検出用区画が3つ、即ち、第1の検出用区画、第2の検出用区画および第3の検出用区画から構成される場合には、それに対して第1のコントロール区画、第2のコントロール区画および第3のコントロール区画が配置される。例えば、第1のコントロール区画は、第1の検出用区画に対応して使用され、第2のコントロール区画は、第2の検出用区画に対応して使用され、第3のコントロール区画は、第3の検出用区画に対応して使用されればよい。
【0016】
複数からの検出用区画からそれぞれ得られた検出信号群から1つの信号を選択し、その選択された1つの信号からX座標を得る。即ち、検出用区画が「第1〜第n検出用区画」ある場合、第1検出用区画からX座標を算出する。
【0017】
X座標の算出は、第1検出用区画から得られた検出信号を、第1検出用区画に対応付されたコントロール区画からのコントロール信号で減算し、更に当該コントロール区画からのコントロール信号で除算し得る。
【0018】
第2検出用区画の信号は、第2検出用区画に対応付されたれたコントロール区画からのコントロール信号で減算し、更に当該コントロール区画からのコントロール信号で除算し、Y座標とされる。
【0019】
同様に第n検出用区画についてY座標が算出される。第2〜第n検出用区画からそれぞれ算出されたY座標は、各区画と座標が対応付られ最終結果を得るまでその対応は維持さえる。例えば、第2〜第n検出用区画からのそれぞれのY座標は、第1Y座標から第mY座標までの複数が得られる。ここで、「m」は「n」から「1」を差し引いた整数である。
【0020】
次にX座標と各Y座標から、この2つの座標により定められる点と原点とを結ぶ直線を得て、この直線と正側のX軸とで作られる角度θを得る。例えば、図28(a)は、各検出用区画から得られた検出信号を、対応するコントロール区画からのコントロール信号で減算し、当該コントロール区画からのコントロール信号で除算して得た値を、各検出区画毎に示したグラフである。グラフの最も左側のバーは第1検出用区画から得られた値であり、これはX座標である。その右隣のバーは第2検出用区画から得られた値でありY座標である。これらの座標に基づいてグラフ上にプロットした図を図28(c)に示す。まず、この点と原点とを結ぶ直線を引く。この直線と、正のX軸とによりなされる角度がθである。このような角度を全てのY軸について、X座標を使用して求める。得られる角度は、第1〜第n検出用区画それぞれに対応する第1〜第m角度である。「m」は上述した通り、m=n−1を満たす整数である。
【0021】
得られた全ての角度、即ち、第1〜第m角度を、予め定めた第1〜第m角度判定基準とそれぞれ比較する。即ち、第1角度と第1角度判定基準を、第2角度と第2角度判定基準…第m角度と第m角度判定基準を比較する。
【0022】
この比較は、角度、即ち、θの値と、角度判定基準の値と間の大小関係を比較する。この大小関係により陽性か陰性化を判定する。ここにおける角度は、何れも第1検出用区画からの値と、他の何れかの検出用区画との関係を示すものである。即ち、この判定は、何れも第1検出用区画の第1検出用プローブと、他の何れかの検出用区画、例えば、第n検出用区画の第n検出用プローブとが1対として行われる。従って、判定は、第1〜第m判定まで行われる。
【0023】
また、第1〜第m判定の何れの判定も、第1検出用区画からの値がX座標のために常に使用されるため、X座標の基となった検出用区画、即ち、検出用プローブについての判定は、行った判定の数だけ得られてしまう。この同じ検出用プローブについて得られた複数の判定から、真の判定を得る必要がある。そのために、予め定められた陽性と陰性の優先順位に従って、更に判定を行い、問題となる検出用プローブについても陽性か陰性かの判定を行う。
【0024】
更に、各検出区画およびコントロール区画のそれぞれを複数配置してもよい。その場合、1つの検出区画内には塩基配列の互いに同じ検出用プローブが固定化される。且つ異なる検出区画間では互いに塩基配列が異なる検出用プローブが固定される。更に、コントロール区画には、何れの検出用プローブとも塩基配列が異なるコントロール核酸、例えば、コントロールDNAが固定化される。
【0025】
その場合使用されるチップは、例えば、
各々複数の電極からなる第1〜第n検出用電極と、
前記第1〜第n検出用電極に対応してそれぞれ固定され、前記第1〜第n検出用電極毎に同じ塩基配列で、且つ前記第1〜第n検出用電極間では互いに塩基配列が異なる各々の第1〜第nプローブと、
前記第1〜第n検出用電極に対応して配置され、前記第1〜第nプローブの何れとも塩基配列が異なるコントロールDNAがそれぞれ固定された複数のコントロール電極と、
を備えればよい。この場合、各検出区画毎に検出信号について平均値が算出され、この平均値が対応する検出区画の検出信号として使用される。コントロール区画についても同様に、平均値が算出され、この平均値がコントロール区画のコントロール信号として使用される。
【0026】
このような処理により、判定しようとする対象が、3種類以上の候補、即ち、3種類以上の塩基または塩基配列である可能性がある場合であっても、その対象が、その3種対以上の候補の何れのであるか、即ち、3種類以上の塩基または塩基配列の何れであるのかを判定することが可能となる。
【0027】
角度判定基準の概念を表Aに示す。
【表A】

【0028】
判定基準には4成分が含まれる。上記の実施形態においては、角度判定基準を用いて判定している。角度判定基準は2つの成分、即ち、(1)角度(X軸側)と(2)角度(Y軸側)の2つの基準が含まれる。表中左側の(1)を付したの斜めの線がX軸側の第1基準であり、(2)を付した斜めの線がX軸側の第2基準である。この基準よりも外側、即ち、第1基準よりもX軸側の領域に含まれるか、第2基準よりもY軸側に含まれるか、この何れかの場合陰性と判定される。(1)および(2)の2つの基準に挟まれた領域が陽性の領域である。これらの角度判定基準は角度として処理過程において数値として扱うことが可能である。
【0029】
これらの角度判定基準との比較に加えて、更なる判定基準、即ち、X軸に平行する直線と、Y軸に平行する直線により定められる座標判定基準との比較を、更に行ってもよい。これにより更により正確に判定が行われる。判定においては、X軸についてのX座標判定基準は「Xの値(即ち、X値)」として示され、Y軸についてのY座標判定基準は「Yの値(即ち、Y値)」として示され、処理過程においては数値として圧且つことが可能である。
【0030】
また、座標判定基準は、例えば、m個の対について判定が行われる場合には、m個の対それぞれのX座標について、ここにX座標判定基準を定める。また、Y軸座標についても判定の対象となるY座標についてそれぞれここにY座標評定基準を定める。
【0031】
従って、座標判定基準と、各座標との比較は、m個の対のそれぞれにおけるX座標及び第1Y〜第mY座標を、m個の対それぞれにおいて、X座標及び第1Y〜第mY座標それぞれに対して予め定めた第1X〜第mX座標判定基準と第1Y〜第mY座標判定基準とそれぞれ比較する。即ち、実施形態の方法において得られた各座標全てが、各々のために予め定められた座標判定基準と比較される。判定は、各対毎にX座標とY座標とについて各々得られた判定結果を総合して、対毎に行われる。
【0032】
即ち、1つの対、例えば、X座標と第1Y座標について、判定を行う場合には、X座標が第1X座標判定基準と比較され、且つ第1Y座標が第1Y座標判定基準と比較され、その何れかが座標判定基準よりも小さい場合には、この対は陰性であると判定される。
【0033】
例えば、判定は、m個の対それぞれにおいて、X座標と第1Y〜第mY座標のそれぞれが、前記判定基準よりも小さい場合には、その座標に該当する前記第1〜第nプローブが陰性であると判定すればよい。
【0034】
なお、角度判定基準および座標判定基準の両方と、比較対象との比較を行う場合は、角度判定を先に行い、座標判定を続いて行ってもよく、同時に行ってもよく、座標判定に続いて角度判定を行ってもよい。
【0035】
実施形態において使用される角度判定基準および座標半的基準は、例えば、複数の既知の塩基配列のサンプル核酸の測定データの平均値と標準偏差を用いて定めればよい。
【0036】
例えば、以下に判定基準の決定は次の工程を含む方法により行われる。
【0037】
(1)先ず表Bのように既知の判定基準値を決定するためのデータをプロットする:
【表B】

【0038】
(1−1)No.1〜No.10の各ターゲットは、各々70〜90個のデータをプロットする。例えば、判定基準決定用に使用するDNAチップは、800チップ程度であってよいが、これに限定されない;
(1−2)No.11〜No.20は10%マイナータイプを含む混合鋳型から増幅した核酸であり、この各ターゲットについて10〜20個のデータをプロットする。全て標準条件で取得したデータであることが好ましい;
上記の手続(1−2)におけるデータの取得は同じ条件で行えばよく、全て標準条件で取得したデータであることが好ましい。
【0039】
(2)次に判定基準を設定する。
【0040】
(2−1)X軸側の第1の角度判定基準を決定する;
【表C】

【0041】
(2−1−1)10%マイナータイプを含むターゲットNo.15,16,17から、最も角度の小さい領域に分布するターゲットNo.16を選択する:
(2−1−2)ターゲットNo.16のについて次式;
SA=(角度の平均値)−1.65×(標準偏差)
を算出し、この値を角度(X軸側)の判定基準値(S)とする。ここで、「1.645」は、正解率95%の場合の数値である;
(2−1−3)プローブセット1が陽性、プローブセット3が陰性となるべきターゲットNo.1,8から、最も角度の大きい領域に分布するターゲットNo.8を選択する;
(2−1−4)ターゲットNo.8のについて次式
A=(角度の平均値)+1.645×(標準偏差)
を算出し、この値が、(2−1−2)で決めた判定基準値より小さいことを確認する。これにより、ターゲットNo.8の正解率が95%を超えていることが確認される。
【0042】
(2−2)Y軸側の第2の角度判定基準を決定する;
【表D】

【0043】
(2−2−1)プローブセット1が陰性、プローブセット3が陰性ターゲットNo.5,7,9から、最も角度の小さい領域に分布するターゲットNo.7を選択する。
【0044】
(2−2−2)ターゲットNo.7について次式;
SA=(角度の平均値)−7×(標準偏差)
を算出し、この値を角度(Y軸側)の判定基準値(S)とする。ここで、「7」は、正解率95%の場合の数値である。更に、Y軸と同様に正解率についての確認を行ってもよい。
【0045】
(2−3)X座標基準値を設定する;
【表E】

【0046】
(2−3−1)プローブセット1が陽性、プローブセット3が陰性となるべきターゲットNo.1,8から、プローブセット1の値が最も小さい領域に分布するターゲットNo.1を選択する;
(2−3−2)プローブセット1、3共に陰性となるべきターゲットNo.2,3,4,6,10から、他の2次元プロットにおいてプローブセット1が陽性となる可能性があるものを選択する;
(2−3−2−1)上記の選択において、選択されるべきターゲットが存在する場合には、その中からプローブセット1の値が最も大きい領域に分布する番号のターゲット(ターゲットNo.A)を選択して次式;
SC={(No.1の値の平均値)−(No.Aの値の平均値)}/{(No.1の値の標準偏差)+(No.Aの値の標準偏差)}×(No.Aの値の標準偏差)+(No.Aの値の平均値)
からXの値の判定基準値(SC)を算出する;
(2−3−2−2)そのようなターゲットが存在しない場合には、プローブセット1の値が最も小さい領域に分布するターゲットを選択する。例えば、表Eの例では、そのようなターゲットが存在しない。従って、No.2,3,4,6,10からプローブセット1の値が最も小さい領域に分布するターゲットNo.6を選択し、次式によりXの値の判定基準値を算出する;
SC={(No.1の値の平均値)−(No.6の値の平均値)}/{(No.1の値の標準偏差)+(No.6の値の標準偏差)}×(No.6の値の標準偏差)+(No.6の値の平均値)
この値をXの値の判定基準値(SC)とする。これにより、偽陰性、偽陽性のリスクを均等に分配する。
【0047】
(2−4)Y座標基準値を設定する;
【表F】

【0048】
(2−4−1)プローブセット1が陰性、プローブセット3が陽性となるべきターゲットNo.5,7,9から、プローブセット3の値が最も小さい領域に分布するターゲットNo.5を選択する;
(2−4−2)プローブセット1、3共に陰性となるべきターゲットNo.2,3,4,6,10から、他の2次元プロットにおいてプローブセット3が陽性となる可能性があるものを選択する。
【0049】
(2−4−2−1)上記の選択において、選択されるべきターゲットが存在する場合には、その中からプローブセット3の値が最も大きい領域に分布するターゲット(ターゲットNo.B)を選択して次式からYの値の判定基準値(SC)を算出する。例Fの場合には、そのようなターゲットが存在している。即ち、No.4,10からプローブセット3の値が最も大きい領域に分布するターゲットNo.10を選択し、次式;
SC={(No.1の値の平均値)−(No.10の値の平均値)}/{(No.1の値の標準偏差)+(No.10の値の標準偏差)}×(No.10の値の標準偏差+No.10の値の平均値)
によりYの値の判定基準値(SC)を算出する;
(2−4−2−2)上記の選択において、選択されるべきターゲットが存在しない場合には、No.2,3,4,6,10からプローブセット1の値が最も小さい領域に分布するターゲットNo.Bを選択する。ターゲットNo.Bについて次式;
SC={(No.1の値の平均値)−(No.Bの値の平均値)}/{(No.1の値の標準偏差)+(No.Bの値の標準偏差)}×No.Bの値の標準偏差+No.Bの値の平均値
を算出し、この値をYの値の判定基準値とする。これにより、偽陰性、偽陽性のリスクを均等に分配する。
【0050】
2.塩基配列判定システム
もう1つの実施態様は、上記の塩基配列判定方法を行うためのシステムである。このシステムでは、上記チップにおいて得られた信号を次のように処理するための各系を有する。
【0051】
(1)第1〜第n検出用区画を介してそれぞれ第1〜第n検出信号を、コントロール電極を介してコントロール信号を、それぞれ取得する測定系;
(2)チップに、薬液を送液する送液系;
(3)前記測定系及び送液系を制御する制御機構;
(4)前記第1検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値をX座標とし、前記第2〜第n検出信号から、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号をそれぞれ減算し、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号でそれぞれ除算した値を、それぞれ第1〜第mY座標とし(ここで、mはnから1を減算した整数である)、前記第X座標と、それぞれの前記第1〜第mY座標とについて、原点から前記X座標およびそれぞれの第1Y〜第mY座標とが定めるそれぞれの点までのそれぞれの直線が正のX軸となす第1〜第m角度をそれぞれ算出し、前記第1〜第m角度それぞれを、前記第1〜第m角度それぞれに対してそれぞれ予め定められた第1〜第m角度判定基準とそれぞれ比較し、前記第1〜第m角度それぞれと、前記第1〜第m角度に対応する前記第1〜第m角度判定基準それぞれとの大小関係により、それぞれ第1〜第mの判定として、前記第2〜第nプローブそれぞれと、前記第1プローブとを1対として、第1プローブとそれぞれの第2〜第nプローブとのm個の対について陽性または陰性を判定し、前記m個の対についての第1〜第mの判定においてm個の判定結果が生じる第1プローブについて、予め定めた陽性と陰性の優先順位に従い、更に陽性または陰性を判定し、前記サンプル核酸について、第1〜第nプローブそれぞれの陽性または陰性を判定するように構成された型判定モジュールを含むコンピュータ。
【0052】
また、このシステムにおいては、第1X〜第mX座標判定基準と第1Y〜第mY座標判定基準が、それぞれ独立に設定されてもよい。
【0053】
また実施形態では、このようなシステムにおいて、コンピュータが次のモジュールを含んでもよい;
(1)第1〜第n検出信号及び前記コントロール信号をそれぞれ電流−電圧特性として取得し、当該電流−電圧特性のベースラインの傾きをそれぞれ求め、それぞれのベースラインの傾きにより、それぞれの電流−電圧特性の正常または異常を判断し、異常な検出信号を演算対象外とするように構成された電流波形判定モジュール;
(2)前記第1〜第n検出信号及び前記コントロール信号に対応するそれぞれの電流−電圧特性から、それぞれのバックグラウンド電流を差し引いて、それぞれの真の検出信号をピーク電流値として取得するように構成されたピーク電流検出モジュール;
(3)前記ピーク電流検出モジュールが算出した真のピーク電流値のデータ群中から、正常グループを抽出するように構成されたグループ正常判定モジュールと;
(3)抽出された正常データから真のピーク電流値のデータ群を用いて、対象とする核酸塩基が存在するか否かを判定する有無判定モジュールまたはサンプル核酸の一塩基多型を同定するように構成された型判定モジュール。
【0054】
3.塩基配列判定用プログラム
更なる実施形態により、上記の塩基配列判定を行うためのプログラムが提供される。実施形態の塩基配列判定用プログラムは、
(1)第1〜第n検出用電極を介してそれぞれ第1〜第n検出信号を、コントロール電極を介してコントロール信号を、それぞれ取得する手順;
(2)前記第1検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値をX座標とし、前記第2〜第n検出信号から、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号をそれぞれ減算し、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号でそれぞれ除算した値を、それぞれ第1〜第mY座標とし(ここで、mはnから1を減算した整数である)、更に、前記第X座標と、それぞれの前記第1〜第mY座標とについて、原点から前記X座標およびそれぞれの第1Y〜第mY座標とが定めるそれぞれの点までのそれぞれの直線が正のX軸となす第1〜第m角度をそれぞれ算出する手順;および
前記第1〜第m角度それぞれを、前記第1〜第m角度それぞれに対してそれぞれ予め定められた第1〜第m角度判定基準とそれぞれ比較する手順;
を含む処理をコンピュータに実行させ、
前記第1〜第m角度判定基準が、それぞれ独立に設定され、これにより前記コンピュータに、第1〜第nプローブそれぞれの陽性または陰性を判断させ、更に、m個の判定結果が生じる第1プローブについて、予め定めた陽性と陰性の優先順位に従い、第1プローブの陽性または陰性を判断させる。
【0055】
次に、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0056】
(塩基配列判定システム)
実施形態に係る塩基配列判定システムは、図7に示すように、チップカートリッジ11と、このチップカートリッジ11と電気的に接続される測定系12、チップカートリッジ11に設けられた流路とインタフェース部を介して物理的に接続される送液系13及びチップカートリッジ11の温度制御を行う温度制御機構14等を備える。図7の測定系12は、図1に示すように、対極502の入力に対して参照極561,562の電圧をフィードバック(負帰還)させることにより、セル内の電極や溶液などの各種条件の変動によらずに溶液中に所望の電圧を印加する3電極方式のポテンシオ・スタットであり、検出チップ21の端子C,R,Wに接続されている。図1の検出チップ21は、図7のチップカートリッジ11に備えられている。
【0057】
検出チップ21は、図2に示すように、第1検出用電極である作用極551,第2検出用電極である作用極552,第3検出用電極である作用極554、コントロール電極である作用極553と、これらの作用極551,552,553,554に対する参照極561,562及び対極502が検出チップ上に配列された電極ユニットを用いている。即ち、測定系12は、作用極551,552,553,554に対する参照極561,562の電圧を、ある所定の特性に設定されるように対極502の電圧を変化させ、挿入剤の電気化学的反応による電流(以下において「電気化学的電流」と言う。)を電気化学的に測定する。
【0058】
実施形態に係る塩基配列判定方法は、先ず、塩基配列判定の目的とされる標的塩基配列(サンプルDNA)581,582,584(図9〜11参照。)と相補的な塩基配列を有するプローブDNA571,572,574について、それぞれ作用極551,552,554に固定化させる。即ち、作用極551は、図9に示した塩基配列を有する標的塩基配列(サンプルDNA)581とは相補的な塩基配列を有するプローブDNA571が固定化される電極である。なお、本実施形態では、サンプルDNA,プローブDNAと記載しているが、DNA以外にPNA,RNA等、他の核酸をサンプルもしくはプローブとして用いても良い。又、作用極552は、図10に示した塩基配列を有する標的塩基配列(サンプルDNA)582とは相補的な塩基配列を有するプローブDNA572が固定化される電極である。更に、作用極554は、図11に示した塩基配列を有する標的塩基配列(サンプルDNA)584とは相補的な塩基配列を有するプローブDNA574が固定化される電極である。
【0059】
一方、作用極553は、標的塩基配列(サンプルDNA)581,582、584とは相補的関係のない塩基配列を有するプローブDNA(コントロールDNA)573が固定化されるコントロール電極である。これらの作用極551,552,553,554は、セル内の反応電流を検出する電極として機能する。なお、作用極551,552,553,554に固定化されるプローブDNA571,572,573,574の種類は 例示に過ぎないが、作用極551,552,553,554に固定化されるプローブDNAの種類は、それぞれ異なる塩基配列を有するサンプルDNAを検出するように設計されていれば良く、それぞれの作用極に固定化されるプローブの種類は単一である必要はない。
【0060】
対極502は、作用極551,552,553,554との間に所定の電圧を印加してセル内に電流を供給する電極である。参照極561,562は、参照極561,562と作用極551,552,553,554との間の電圧を所定の電圧特性に制御すべく、その電極電圧を対極502にフィードバックさせる電極であり、これにより対極502による電圧が制御され、セル内の各種検出条件に左右されない精度の高い電気化学的電流の検出が行える。
【0061】
図1に示すように、実施形態に係る塩基配列判定システムの測定系12は、電極間を流れる電流を検出するための電圧パターンを発生させる電圧パターン発生回路510を備え、この電圧パターン発生回路510は、配線512bを介して参照極561,562の参照電圧制御用の反転増幅器512(OP)の反転入力端子に接続されている。電圧パターン発生回路510は、図7に示す制御機構15から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換して電圧パターンを発生させる回路であり、DA変換器を備える。配線512bには抵抗Rが接続されている。反転増幅器512の非反転入力端子は接地され、出力端子には配線502aが接続されている。反転増幅器512の反転入力端子側の配線512bと出力端子側の配線502aは配線512aで接続されている。この配線512aには、フィードバック抵抗Rff及びスイッチSWfからなる保護回路500が設けられている。線502aは検出チップ21の端子Cに接続されている。端子Cは、検出チップ21上の対極502に接続されている。対極502が複数設けられている場合には、各々に対して並列に端子Cが接続される。これにより、1つの電圧パターンにより複数の対極502に同時に電圧を印加することができる。線502aには、端子Cへの電圧印加のオンオフ制御を行うスイッチSWが設けられている。
【0062】
反転増幅器512に設けられた保護回路500により、対極502に過剰な電圧がかからないような構成となっている。したがって、測定時に過剰な電圧が印加され、溶液が電気分解されてしまうことにより、所望の挿入剤の電気化学的電流の検出に影響を及ぼすことがなく、安定した測定が可能となる。
【0063】
検出チップ21の端子Rは、配線503aにより電圧フォロア増幅器(OPr)513の非反転入力端子に接続されている。電圧フォロア増幅器513の反転入力端子は、その出力端子に接続された配線513bと配線513aにより短絡している。配線513bには抵抗Rfが設けられており、配線512bの抵抗と、配線512aと配線512bの交点との間に接続されている。これにより、電圧パターン発生回路510により生成される電圧パターンに、参照極561,562の電圧をフィードバックさせた電圧を反転増幅器512に入力させ、そのような電圧を反転増幅した出力に基づき対極502の電圧を制御する。
【0064】
検出チップ21の端子Wは、配線501aによりトランス・インピーダンス増幅器(OPw)511の反転入力端子に接続されている。トランス・インピーダンス増幅器511の非反転入力端子は接地され、その出力端子に接続された配線511bと配線501aとは配線511aにより接続されている。配線511aには抵抗Rwが設けられている。このトランス・インピーダンス増幅器511の出力側の端子Oの電圧をVw、電流をIwとすると:
w=Iw・Rw ……(1)
となる。この端子Oから得られる電気化学信号は、図7に示す制御機構15に出力される。作用極551,552,553,554は複数あるため、端子W及び端子Oは、作用極551,552,553,554のそれぞれに対応して複数設けられる。複数の端子Oからの出力は後述する信号切替部により切り替えられ、AD変換されることにより各作用極551,552,553,554からの電気化学信号をデジタル値としてほぼ同時に取得することができる。なお、端子W及び端子Oの間のトランス・インピーダンス増幅器511などの回路は、複数の作用極551,552,553,554で共有しても良い。この場合、配線501aに複数の端子Wからの配線を切り替えるための信号切替部を備えれば良い。
図7の塩基配列判定システムを構成するチップカートリッジ11は、図4及び5に示すように、カセット上蓋711、カセット下蓋712、パッキン713(シール部材)及び基板714からなるカセットを構成している。カセット上蓋711及びカセット下蓋712の内表面同士を対向させ、かつこれらカセット上蓋711及びカセット下蓋712の間にパッキン713及び基板714を狭んだ状態で固定している。カセット上蓋711の外表面から内表面にかけて、断面が略円形のノズル差込孔722及び723が貫通して形成されている。このノズル差込孔722及び723の内径は、送入及び送出ポート752,753、及び図6のバルブユニット705のノズル707,708、の外径よりも若干大きく設定されており、例えば3.2mm程度である。図4に示すように、カセット上蓋711の外表面から内表面にかけて断面が略長方形の電気コネクタ用ポート724及び725が貫通して形成されている。この電気コネクタ用ポート724及び725の各々には、後述する電気コネクタが挿着され使用される。更に、外表面には内表面にかけてシール検出孔726が貫通して形成されている。このシール検出孔726は、シールの有無の検出に用いられる。即ち、カセット(検出チップ)21の外表面のシール検出孔726の表面から電気コネクタ用ポート724及び725の表面にかけてシールが貼付された状態で、カセット(検出チップ)21へ薬液(試料)を注入し、カセット(検出チップ)21に薬液(試料)を注入した後にシールが剥がすが、そのシールの有無の検出する。カセット(検出チップ)21に、シールが貼付された状態で、薬液(試料)を注入することにより、たとえ薬液(試料)溶液が誤って電気コネクタポート724若しくは725上に滴下しても、シールで被覆されているため、実際のポート724若しくは725内には液が侵入することがなく、電気的に短絡してしまう等の不具合を発生させる心配を生じないようにしている。
図5に示すように、カセット上蓋711の内表面側には、所定の深さでかつ基板714の断面形状とほぼ同じ断面形状を有する基板位置決め溝が設けられており、この基板位置決め溝の周囲は内表面で囲まれている。基板位置決め溝はノズル差込孔722及び723、電気コネクタ用ポート724及び725にオーバーラップして形成されている。基板位置決め溝にあわせて基板714をはめ込むことにより、基板714をカセット上蓋711に位置決め配置することができる。基板位置決め溝の深さは基板714の厚さとほぼ同じになるように形成されている。
【0065】
図5に示すように、カセット上蓋711の内表面側で基板位置決め溝にオーバーラップして、基板位置決め溝よりも更に深いパッキン位置決め溝が設けられており、このパッキン位置決め溝の周囲は基板位置決め溝で囲まれている。パッキン位置決め溝はノズル差込孔722及び723にオーバーラップして形成されている。パッキン位置決め溝にあわせてパッキン713をはめ込むことにより、パッキン713をカセット上蓋711に位置決め配置することができる。パッキン位置決め溝の基板位置決め溝に対する深さは後述するパッキン713の厚さとほぼ同じになるように形成されている。したがって、パッキン位置決め溝の内表面に対する深さは、パッキン713の厚さに基板714の厚さを加算した厚さとほぼ同じになるように形成されている。
【0066】
カセット上蓋711の内表面の周縁部には4つのねじ孔727a、727b、727c及び727dが設けられている。これらねじ孔727a〜727dにより、カセット上蓋711とカセット下蓋712をねじ止めできる。カセット上蓋711の内表面の周縁部には2つのカセット位置決め孔728a及び728bが設けられている。このカセット位置決め孔728a及び728bを、スライドステージの上に設けられた2つの位置決め用ピンにあわせてカセット(検出チップ)21を配置することにより、スライドステージに対してカセット(検出チップ)21を位置決め配置することができる。
【0067】
又、外表面にはシール検出孔746が貫通して形成されている。又、カセット下蓋712のシール検出孔746は、カセット上蓋711とカセット下蓋712が止着された状態で、カセット上蓋711のシール検出孔726と通じる位置に形成されている。これにより、カセット上蓋711とカセット下蓋712が止着された際に、カセット上蓋711からカセット下蓋712にかけて貫通したシール検出孔726が設けられ、このシール検出孔726に対して検出光を照射することにより、シールの有無を判別できる。
【0068】
カセット下蓋712の外表面の周縁部には4つのねじ孔747a、747b、747c及び747dが設けられている。これらねじ孔747a〜747dとカセット上蓋711に設けられた対応するねじ孔727a〜727dの各々をねじ止めすることにより、カセット下蓋712をカセット上蓋711に止着することができる。カセット下蓋712の外表面の周縁部には、2つのカセット位置決め孔748a及び748bが設けられている。このカセット位置決め孔748a及び748bには、カセット上蓋711のカセット位置決め孔728a及び728bがそれぞれ貫通する。スライドステージに対するカセット(検出チップ)21の位置決めは、スライドステージの上に設けられた2つの位置決め用ピンと、カセット下蓋712のカセット位置決め孔748a及び748bを貫通しているカセット上蓋711の2つの位置決め孔728a及び728bによって規定される構成になっている。カセット下蓋712には、更にカセット種類判別用孔749が設けられ、このカセット種類判別用孔749の有無により、カセット(検出チップ)21の種類を判別できる。なお、種類判別は、カセット種類判別用ピン(図示省略)の押し下げの有無により自動で行うことができる。カセット種類判別用ピン(図示省略)のピンの押し下げ状態は、制御機構15で検知される。
【0069】
なお、カセット種類判別用孔749が設けられていないカセット(検出チップ)21を用いても、判別されるカセット(検出チップ)21の種類が異なるのみで同様の測定が可能である。若しくは、カセット(検出チップ)21の種類が異なることを表示部(図示省略)に制御機構15が表示させて警告して、測定段階に進まないように設計しておくこともできる。或いは、カセット種類判別用ピン(図示省略)は固定された固定ピンを用いて、カセット種類判別用孔749が設けられていないカセット(検出チップ)21は装着できないようにすることにより、誤ったカセット(検出チップ)21をセットしないようにすることもできる。 パッキン713は、ほぼ長方形で所定の厚さを有し、その4隅が切欠いて形成された板状部分と、この板状部分の主面上であって長辺の両端近傍に位置し、かつ短辺の中央近傍に設けられた円筒形状の送入ポート752及び送出ポート753からなる。送入ポート752及び送出ポート753の先端には開口部が設けられている。この開口部から板状部分にかけて、送入ポート752及び送出ポート753の軸心には、板状部分の主面に対して垂直な方向に流路が設けられている。板状部分の裏面には、図5に示すように、送入ポート752の形成位置から送出ポート753の形成位置にかけて折れ曲がり形状の溝が形成されている。溝は、流路を構成している。溝は、複数回交互に進行するように形成され、溝の折り返し地点を所定の曲率のカーブとすることにより、折り返し地点のコーナーなどが設けられた場合に発生する薬液やエアの滞留を抑制できる。
【0070】
図4に示すように、基板714の主面には、電極ユニット761、パッド762及び763が形成されている。電極ユニット761は、図2に示すように、対極502、作用極551,552,553,554及び参照極561,562の組合せからなる3電極系のユニットである。電極ユニット761の作用極551,552,553,554にはプローブDNA571,572,573,574が固定化される。電極ユニット761とパッド762、電極ユニット761とパッド763は、図示しない配線により接続されている。図4では、基板714に対して、プローブDNAが固定されている電極ユニット761と、パッド762及び763が同一面上に形成させている場合を例示しているが、パッド762及び763が、基板714の電極ユニット761が形成された面に対して反対側の面に形成されている場合には、バルブユニット705はカセット(検出チップ)21に対して上側に、そしてプローブユニット710は下側に設置されることになる。その場合には、必然的に、バルブユニット705とプローブユニット710は一体的に形成される訳ではなくなる。
【0071】
電極ユニット761の配列は、パッキン配置位置でかつ折れ曲がり形状の流路形成位置にあわせて形成されている。これにより、パッキン713と基板714がカセット上蓋711及びカセット下蓋712に位置決めされた状態で狭着固定された際には、折れ曲がり形状の溝と基板714表面により折れ曲がり形状の流路が形成され、かつその流路表面には電極ユニット761が露出した構成となる。即ち、電極ユニット761上は、折れ曲がり形状の溝により間隙が設けられ、この間隙により折れ曲がり形状の流路が形成される。又、この状態では、パッキン713と基板714とはシールが保持される。
先ず、カセット上蓋711の内表面のパッキン位置決め溝にあわせて、かつノズル差込孔722及び723に送入ポート752及び送出ポート753が挿通するように、パッキン713をパッキン位置決め溝に嵌挿する。次に、基板714を、その主面、即ち電極ユニット761、パッド762及び763が形成された面がカセット上蓋711側に向くように、基板位置決め溝に位置決め配置する。次に、カセット下蓋712を、その内表面742がカセット上蓋711側に向くように、又ねじ孔747a〜747d及びねじ孔727a〜727dの位置が対応するようにカセット上蓋711上に載置する。そして、ねじ孔747a〜747d及びねじ孔727a〜727dにねじ770a〜770dを螺挿する。これにより、カセット上蓋711及びカセット下蓋712が螺着され、かつカセット上蓋711及びカセット下蓋712間にはパッキン713及び基板714が狭着固定され、カセット(検出チップ)21が完成する。この完成した状態では、ノズル差込孔722からノズル差込孔723にかけて、折れ曲がり形状の流路が形成される。
【0072】
図4及び5では、ねじ止めによりカセット上蓋711及びカセット下蓋712を固定する例を示したが、これに限定されない。例えば凹凸の部材を用いた係着手法を用いても良い。図6は、実施形態に係る塩基配列判定システムを構成する送液系13に備えられバルブユニット705の全体構成を示す図である。なお、図6では、プローブユニットの構成は省略して記載してあるが、バルブユニット705にはプローブユニットが一体的に形成され、バルブユニット・プローブユニット駆動機構によりこれらバルブユニット及びプローブユニットが同時に駆動される。例えばガラスエポキシ基板などからなるプローブユニットに、2つの電気コネクタが所定の間隔をおいて配置される。電気コネクタの先端には、複数の凸状電極が基板714上のパッドと同じ配列によりマトリクス状に配置されており、これら各凸状電極が図4に示した基板714上のパッド762,763と接触することにより、基板714とプローブユニットとの電気的接続が確保される。又、電気コネクタ内には配線が設けられており、各凸状電極と制御機構15がこの配線により電気的に接続される。
【0073】
バルブユニット・プローブユニット駆動機構は制御機構15からの指示により駆動する。バルブユニット・プローブユニット駆動機構は、昇降方向の駆動方向を有する。これにより、スライドステージ側のカセット(検出チップ)21の上部に対してノズル707、708及び電気コネクタ703が降下することにより、図6に示すように、ノズル707及び708がノズル差込孔722及び723に位置決めされ、かつ電気コネクタ703が電気コネクタ用ポート724及び725に位置決めされる。これにより、送液系とカセット(検出チップ)21内の流路が連通する。又、電気コネクタがカセット(検出チップ)21のパッドに位置決めされ、パッドと電気コネクタが電気的に接続される。
【0074】
バルブユニット705は、バルブボディ781が連結固定して用いられる。バルブボディ781には2方電磁弁403、3方電磁弁413、423及び433が設けられており、又バルブボディ782には3方電磁弁441及び445が設けられている。バルブボディ781は、例えばPEEK樹脂により作製される。なお、バルブボディ781が別個に作製され、その両者をつなぎ合わせる場合には、その継ぎ目部分には例えばPTFEをパッキンとして使用する。したがって、バルブボディ781の両者では、薬液に接する部分の材質はPEEK及びPTFEからなる。又、バルブボディ781にはほぼ一定の断面形状の空洞が設けられている。この空洞は、後述する各電磁弁の間やパッキン713等との間を接続する配管として機能する。又、バルブボディ782に設けられた空洞には、ノズル707及びノズル708が連通している。これらノズル707及びノズル708はPEEK樹脂からなる。
【0075】
3方電磁弁413は、エアと純水を切り換えて下流側の3方電磁弁423に供給する。3方電磁弁423は、バッファと3方電磁弁413からのエア又は純水を切り換えて下流側の3方電磁弁433に供給する。3方電磁弁433は挿入剤と3方電磁弁423からのエア、純水又はバッファを切り換えて下流側のバルブボディ782に供給する。3方電磁弁441は、バルブボディ781からのエア又は薬液のノズル707への供給又はバイパス配管を介した3方電磁弁445への供給を切り換える。3方電磁弁445は、3方電磁弁441からのエア又は薬液の供給又はカセット(検出チップ)21からのノズル708を介した薬液又はエアの送出を切り換える。
【0076】
図6に示すバルブユニット705において、カセット(検出チップ)21内にバッファを送液するためには、3方電磁弁423、441、445、及び送液ポンプ454をONにすれば良い。これにより、バッファが吸い上げられ、薬液はノズル707側に切り替わり、ノズル707からカセット(検出チップ)21へ、更にカセット(検出チップ)21からノズル708に吸い出され、3方電磁弁445を経由して廃液することができる。カセット(検出チップ)21内に純水を送液するためには、3方電磁弁423にかえて3方電磁弁413をONにすれば良い。カセット(検出チップ)21内に挿入剤を送液するためには、3方電磁弁423にかえて3方電磁弁433をONにすれば良い。カセット(検出チップ)21内にエアを供給するためには、3方電磁弁403をONにし、3方電磁弁413,423及び433のいずれもOFFにすれば良い。バルブユニット705のバルブボディ781内に設けられた空洞部分の配管の内部容量は、バルブ内容量を含めても100μL程度である。本実施形態とは異なり各3方弁をチューブで接続して同じフローを構成する場合には、500μL程度の内部容量が必要であるが、これと比較すると大幅に試薬量を節減することができる。更に、バルブユニット705とカセット(検出チップ)21間の内部容量も、本実施形態とは異なる例では100μL以上あるが、本実施形態では10μLと大幅に低減できる。この様な構造により、試薬切換え後に、更に不本意にカセット(検出チップ)21内を流れる溶液若しくは空気の量を大幅に減らすことができる。その結果、反応及び測定のバラつきを低減し、結果の再現性も大幅に向上する。
【0077】
又、図示していない、薬液揺動装置を備えており、チップカセット内の薬液揺動を行うことができる。薬液の揺動は、(1)サンプルDNAとプローブDNAとのハイブリダイゼーション工程、(2)洗浄工程、(3)挿入剤供給工程などで行うのが有効である。(1)のハイブリダイゼーション工程でサンプルDNAを揺動させることにより、ハイブリダイゼーション効率を向上させ、ハイブリダイゼーション時間を短縮させることができる。又、(2)洗浄工程でバッファ液を揺動させることにより、非特異吸着DNAを引き剥がす効率を向上させることにより、洗浄時間を短縮させることができる。又、(3)挿入剤供給工程で挿入剤を揺動させることにより、挿入剤の濃度の均一性を向上させ、又挿入剤の吸着均一性も向上させることにより、信号のバラつき、S/N比を改善することができる。これら(1)〜(3)のすべての工程に薬液揺動工程を適用しても、一部の工程に適用しても、薬液揺動の効果が得られる。
冒頭で、一部言及したが、実施形態に係る塩基配列判定システムは、図7に示すように、測定ユニット10と、測定ユニット10に接続された制御機構15と、制御機構15に接続されたコンピュータ16とを備える。測定ユニット10は、チップカートリッジ11と、このチップカートリッジ11と電気的に接続される測定系12、チップカートリッジ11に設けられた流路とインタフェース部を介して物理的に接続される送液系13及びチップカートリッジ11の温度制御を行う温度制御機構14等を備える。
【0078】
図7に示したコンピュータ16は、図8に示すように、操作者からのデータや命令などの入力を受け付ける入力装置304と、各プローブの陽性または陰性を判定する中央処理装置(CPU)300と、判定結果を出力する出力装置305及び表示装置306と、塩基配列の判定に必要な所定のデータなどを格納したデータ記憶部(図示省略)と、塩基配列判定プログラムなどを格納したプログラム記憶部(図示省略)とを備える。
CPU300は、ノイズ除去モジュール301,電流波形判定モジュール302,ピーク電流検出モジュール310,グループ正常判定モジュール320,検査有効性判定モジュール325、有無判定モジュール330及び型判定モジュール340を備える。
【0079】
ノイズ除去モジュール301は、図2に示した第1検出用電極551,第2検出用電極552,第3検出用電極554,コントロール電極553を介して測定される電流から、「単純移動平均法」を用いて平準化(スムージング)により、ノイズを除去する。スムージングは、例えば、図15に示すような、単純移動平均法を用いれば良い。「単純移動平均法」は文字通り、いくつかの実績値を単純平均するものであり、図15(a)に示すような時系列データを、その規則性に着目して平均するものである。図15では、移動平均値の区間をm=5として、それぞれのデータの後5点のデータを5で割った数値:
y[n]=(x[n]+x[n+1]+x[n+2]+x[n+3]+x[n+4])/5 ……(2)
が、図15(b)に示す移動平均値となる。移動平均により、図15(a)に示すような変動が図15(b)に示すように平準化(スムージング)され、全体的な傾向を分析するが容易になる。
電流波形判定モジュール302は、図16のフローチャートに示した手順に従って、図2に示した第1検出用電極551,第2検出用電極552,第3検出用電極554,コントロール電極553を介してそれぞれ測定された電流波形(電流−電圧特性)のベースラインの傾きをそれぞれ求め、それぞれのベースラインの傾きにより、それぞれの検出信号(電流波形)の正常・異常を判定し、異常な検出信号を演算対象外とする。
ピーク電流検出モジュール310は、電圧値算出部311,ベースライン近似部312,ピーク電流値演算部313を備え、図18及び図19のフローチャートに示した手順に従い、第1検出用電極551,第2検出用電極552,第3検出用電極554,コントロール電極553を介して測定される電流(検出信号)から、バックグラウンド電流を差し引いて、挿入剤591に起因する真の電気化学的電流(真の検出信号)のピーク値(ピーク電流値)を求める。
【0080】
電圧値算出部311は、図18のステップS221〜S223に示す手順に従い、チップカートリッジ11で測定された電気化学的電流の電流(i)−電圧(v)特性の波形を電圧値(v)に対して微分演算し、予め定めた下限値V1〜上限値V2の範囲において、微分値(di/dv)が「ゼロクロス」する点の電圧値Vpk1と電流値Ipk1を、各電極ユニット761のそれぞれの電流−電圧特性に対して算出する(図20参照。)。「ゼロクロス」する点とは、電気化学的電流の微分値(di/dv)が正値から負値に変化する点、又は負値から正値に変化する点であり、電流ピークを与える電圧値Vpk1及び電流値Ipk1に対応する。図20には、電圧値の増大に伴い、微分値(di/dv)が負値から正値に変化する点の電圧値Vpk1と電流値Ipk1が示されている。「ゼロクロス点」は、ノイズによる影響やピーク検出範囲(下限値V1〜上限値V2)設定による悪影響を受けないために、負値から正値に転じて連続3点が正値を保持している場合の最初に正値となった点の電圧値を、電圧値Vpk1として採用するのが好ましい。
【0081】
ベースライン近似部312は、図18のステップS224〜図19のS228に示す手順に従い、電気化学的電流の電流−電圧特性のベースライン(バックグラウンド)を、各電極ユニット761のそれぞれの電流−電圧特性に対して近似する(図21及び図22参照。)。ピーク電流値演算部313は、図19に示すステップS229〜S230の手順に従い、電気化学的電流の電流−電圧特性曲線における真のピーク電流値Ipk2を、電圧値算出部311が算出したゼロクロス電流値Ipk1からベースライン近似部312が算出したバックグラウンド(ベースライン)の電流値Ibgを差し引いて求める。
【0082】
グループ正常判定モジュール320は、図25のフローチャートに示す一連の手順を用いて、ピーク電流検出モジュール310が算出した真の電気化学的電流(真の検出信号)のピーク値(ピーク電流値)のデータ群中から、異常データを除外し、データ群がその後の型判定を行うに相応しいデータ群であるかどうかを判定する。即ち、グループ正常判定モジュール320は、図4に示す基板714上に複数配列される電極ユニット761にそれぞれ含まれる複数の第1検出用電極551,第2検出用電極552,第3検出用電極554,コントロール電極553からそれぞれ得られる一群の電流値Ipk2のデータから、所定の基準を満たさないデータを異常値として排除し(歯抜け異常判定S31)、又グループ単位で所定の基準を満たさない場合にはそのグループを異常として、その後の判定モジュールでの演算対象外とする(バラツキ異常判定S32)。
検査有効性判定モジュール325は、図32に示すフローチャートに示す一連の手順に従い、検査が有効であるかどうかを判定する。即ち、図4に示す基板714上に複数配列される電極ユニット761にそれぞれ含まれる複数のポジティブ・コントロール用電極(作用極)から検出されるポジティブ・コントロール電流と、ネガティブ・コントロール用電極(作用極)から検出されるネガティブ・コントロール電流とを所定の基準値と大小関係比較を行い、ネガティブ・コントロール電流が所定の基準よりも小さく、ポジティブ・コントロール電流が所定の基準よりも大きい場合に、当該検査が有効である、との判断を行い、その後の判定モジュールでの演算に移行する。
【0083】
型判定モジュール340は、作用極551、552、554から得られる信号が陽性であるか陰性であるかを判定する。詳細は、後述する。
【0084】
図8に示したように、CPU300には、バス303を介して、波形判定用電圧範囲記憶部351,傾き許容範囲記憶部352,ピーク探索電圧値範囲記憶部353,ゼロクロス値記憶部354,変曲点記憶部355,交点電圧記憶部356,オフセット電圧記憶部357,ベースライン電流値記憶部358,平均値・標準偏差記憶部360,グループ正常判定記憶部361,SLL記憶部362,ESLL記憶部363,MIR記憶部364,規格化座標記憶部365、直線長記憶部366、角度記憶部367、角度パラメータ記憶部368,及び分類結果記憶部369が接続されている。
【0085】
波形判定用電圧範囲記憶部351は、電流波形判定モジュール302が、第1検出用電極551,第2検出用電極552,第3検出用電極554,コントロール電極553を介して測定される電流(検出信号)のベースラインの傾きを計算する範囲としての「範囲下限電圧VLo」と「範囲上限電圧VHi(VLo < VHi)」を記憶する。傾き許容範囲記憶部352は、電流波形判定モジュール302が、検出信号のベースラインの傾きの許容範囲を規定するパラメータとしての「傾き下限値(Coef Lo)」と「傾き上限値(Coef Hi)」を記憶する。
【0086】
ピーク探索電圧値範囲記憶部353は、予め決定されたピーク探索電圧値範囲[V1,V2]を設定パラメータとして格納しておき、電圧値算出部311がピーク探索電圧値範囲[V1,V2]を読み出し可能にしている。電気化学的電流の電流−電圧特性が示す電流ピークは、測定条件を固定すればほぼ一定の電圧範囲に現れるので、ピーク探索電圧値範囲[V1,V2]を設定パラメータとして決めておくのである。ゼロクロス値記憶部354は、電圧値算出部311が算出した「ゼロクロス値(ゼロクロス電圧値Vpk1,ゼロクロス電流値Ipk1)」を、図4に示した基板714上の、すべての電極ユニット761毎に整理して格納する。
【0087】
変曲点記憶部355は、ベースライン近似部312の演算に必要な変曲点電圧Vifpを記憶する。「変曲点電圧Vifp」は、図21に示すように、電流ピークを与えるゼロクロス電圧値Vpk1から電圧を負の方向に遡って(電圧を減少させて)微分値が最小となる電圧である。交点電圧記憶部356は、交点電圧Vcrsを記憶する。「交点電圧Vcrs」とは、図22に示すように、電気化学的電流の電流−電圧特性曲線とこの電流−電圧特性曲線の接線との交点が与える電圧である。オフセット電圧記憶部357は、図22のように、交点電圧Vcrsを起点として、設定パラメータとして規定されるオフセット値だけ電圧を負の方向に遡った(電圧を減少させた)オフセット電圧Vofsを記憶する。
【0088】
ベースライン電流値記憶部358は、ピーク電流値演算部313の演算に必要なバックグラウンド(ベースライン)の電流値Ibgを記憶する。「バックグラウンド(ベースライン)の電流値Ibg」とは、図22に示すように、ベースライン近似部312が算出したベースラインの近似一次式に、電圧値算出部311が算出したゼロクロス電圧値Vpk1を代入して得られる電流値である。
【0089】
平均値・標準偏差記憶部360は、グループ正常判定モジュール320、検査有効性判定モジュール325、有無判定モジュール330、及び型判定モジュール340が、それぞれ算出した算出したポジティブ・コントロール電極54の電流値の平均値X、ネガティブ・コントロール電極55の電流値の平均値X、有無検出用電極550の電流値の平均値X、有無検出用電極550に対応するコントロール電極(C)553の電流の平均値X、第1検出用電極551の電流の平均値X1,第2検出用電極551に対応するコントロール電極(C1)553の電流の平均値Xc1,第2検出用電極552の電流の平均値X2,第2検出用電極552に対応するコントロール(C2)電極553の電流の平均値Xc2、第3検出用電極554の電流の平均値X3,第3検出用電極554に対応するコントロール電極(C1)553の電流の平均値Xc3,ポジティブ・コントロール電極54の電流値の標準偏差σ、ネガティブ・コントロール電極55の電流値の標準偏差σ、有無検出用電極550からのピーク電流値の標準偏差σ、対応するコントロール電極53からのピーク電流値の標準偏差σc、第1検出用電極551からのピーク電流値の標準偏差σ1、対応するコントロール電極553からのピーク電流値の標準偏差σc1、第2検出用電極552からのピーク電流値の標準偏差σ2、第3検出用電極554からのピーク電流値の標準偏差σ3、対応するコントロール電極553からのピーク電流値の標準偏差σc2、等を記憶する。これらの平均値X、X,X、X1,Xc1,X2,Xc2,3,Xc3や標準偏差σ、σp、σn、σ1,σc1,σ2,σc2等は、グループ正常判定モジュール320、検査有効性判定モジュール325、有無判定モジュール330、及び型判定モジュール340の演算の要請に応じて随時読み出される。
【0090】
グループ正常判定記憶部361は、グループ正常判定モジュール320において演算された歯抜けデータ数Nr、CV値CV及び、グループ正常判定モジュール320の演算に必要な歯抜け電流基準値MS(Minimum Signal)、歯抜け許容割合P、基準CV値CV0(%)等を記憶する。「CV(変動係数)値」とは、対象とする一群のデータの標準偏差を対応する平均値で除した値を100倍して百分率表示したものである。分散や変動は標本の単位を持っているので、複数の標本群間のバラツキの程度を比較できないので、それぞれの平均値で割って無名数としたものである。SLL記憶部362は、検査有効性判定モジュール325の演算に必要なネガティブ・コントロール基準値NCLL(Negative Control Lower Limit),NCUL(Negative Control Upper Limit),ポジティブ・コントロール基準値PCLL(Positive Control Lower Limit)、有無判定モジュール330の演算に必要な信号増加量判定基準SL(+)、SL(−)を記憶している。信号判定基準SLL(Signal Limit Level)記憶部362に記憶されている各パラメータは、信号の絶対値若しくは、コントロール電極553に対する信号増加量の判定アルゴリズムの判定基準を与える設定パラメータである。ESLL記憶部363は、検査有効性判定モジュール325の演算に必要なポジティブ・コントロール実効変動係数PESL、有無判定モジュール330の演算に必要な実効変動係数ESLLを記憶している。ポジティブ・コントロール実効変動係数PESL(Positive Control Effective Signal Lower Limit)及び実効変動係数ESLL(Effective Signal Lower Limit)は、信号増加量が標準偏差σに対して何倍あるかの判定の下限を与える設定パラメータである。即ち、信号増加の信頼性を表す指標となる。
【0091】
MIR記憶部364は、型判定モジュール340の演算に必要な電流増加割合基準値MIRを記憶している。電流増加割合基準値MIR(Minimum Increase Ratio)は型判定で必要な電流増加量のコントロール電流値に対する比の下限を与える設定パラメータである。図31に示した判定基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージにおいては、原点からの距離としてMIRが記載されている。これは、第1検出用電極551の電流の平均値X1の第1検出用電極551に対応するコントロール電極(C1)553の電流の平均値Xc1からの増加量、第2検出用電極552の電流の平均値X2の第2検出用電極552に対応するコントロール(C2)電極553の電流の平均値Xc2、及び第3検出用電極554の電流の平均値X3の第3検出用電極554に対応するコントロール(C3)電極554の電流の平均値Xc2、からの増加量が、小さい場合(Xの値、Yの値が共に基準値よりも小さい場合)には、システムとして期待される電流値が得られておらず、型判定を行うに値しない(判定不能)、ということを意味している。
【0092】
角度パラメータ記憶部368は、型判定モジュール340の演算に必要な角度判定基準および座標判定基準を記憶している。図3の判定基準となる種々の設定パラメータを示す概念イメージにおいて、網かけ部分の領域に検出用プローブ信号が含まれる場合には、陽性と判断され、それ以外の部分の領域に検出用プローブ信号が含まれる場合には、陰性と判断される。
【0093】
分類結果記憶部369は、有無判定モジュール330及び型判定モジュール340が分類した種々の分類結果を記憶している。
【0094】
図示を省略しているが、CPU300には、バス303を介してとインタフェースが接続され、このインタフェースを介してローカルバス(図示省略)を通じて図7に示す制御機構15との間でデータの送受信を行うことができる。
【0095】
図8において、入力装置304はキーボード、マウス、ライトペン又はフレキシブルディスク装置などで構成される。入力装置304より塩基配列判定実行者は、入出力データを指定したり、設定パラメータや許容誤差の値及び誤差の程度を設定できる。更に、入力装置304より出力データの形態等を設定することも可能で、又、演算の実行や中止等の指示の入力も可能である。又、出力装置305及び表示装置306は、例えば、それぞれプリンタ装置及びディスプレイ装置等により構成されることが可能である。表示装置306は入出力データや判定結果や判定パラメータ等を表示する。データ記憶部(図示省略)は入出力データや判定パラメータ及びその履歴や演算途中のデータ等を記憶する。
【0096】
以上説明したように、実施形態に係る塩基配列システムによれば、核酸の存在の有無判定、塩基配列の判定および塩基配列の判定結果と対応するコドンとに基づいくアミノ酸判定を、高い精度で、実態に即してできる。
【0097】
(塩基配列判定方法)
図14に示すフローチャートを用いて、実施形態に係る塩基配列判定方法を説明する。なお、以下に述べる塩基配列判定方法は、一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の塩基配列判定方法により、実現可能であることは勿論であるが、いずれにせよ、図3に示すようなプローブDNA571,572,573,574が固定化されたチップカートリッジ11にサンプルDNA581,582,583,584を含む薬液(試料)を注入してハイブリダイゼーション反応などを生じさせ、バッファによる洗浄、挿入剤の導入による電気化学反応を経て測定系12を用いて図13に示すような電気化学的電流の電流−電圧特性を求めることが基礎となる。電気化学的電流の電流−電圧特性から、各プローブDNA571,572,573,574のハイブリダイゼーション反応に定量的に対応するピーク電流値を算出する。そして算出されたピーク電流値を統計的にデータ処理し、これにより核酸の存在の有無を判定し、或いは塩基配列の判定および塩基配列の判定結果と対応するコドンとに基づいくアミノ酸判定をする。
【0098】
図9〜図11を用いて、プローブDNAとサンプルDNAとのハイブリダイゼーションについて説明する。ハイブリダイゼーション工程は、図4及び図5に示したチップカートリッジ11を用いれば良い。
【0099】
図9では、サンプルDNA581が標的塩基配列である場合を示す。図9(a)に示すように、プローブDNA571が固定化された作用極(第1検出用電極)551は、標的塩基配列581と配列が完全にマッチングしているので2本鎖を形成する。しかし、1塩基でも配列が異なると2本鎖を形成しないので、図9(b)に示すように、プローブDNA572が固定化された作用極(第2検出用電極)552は、標的塩基配列581とは、2本鎖を形成できない。更に、図9(d)に示すように、プローブ574が固定化された作用極(第3検出用電極)554は、標的塩基配列581と2本鎖を形成できない。又、完全に配列が異なれば、当然に2本鎖を形成できないので、図9(c)に示すように、プローブDNA(コントロールDNA)573が固定化された作用極(コントロール電極)553は、標的塩基配列581とは、2本鎖を形成できない。
【0100】
図10では、サンプルDNA582が標的塩基配列である場合を示す。同様に、チップカートリッジ11によるハイブリダイゼーション工程により、図10(b)に示すように、プローブDNA572が固定化された作用極(第2検出用電極)552は、標的塩基配列582と配列が完全にマッチングしているので2本鎖を形成する。しかし、1塩基でも配列が異なると2本鎖を形成しないので、図10(a)に示すように、プローブDNA571が固定化された作用極(第1検出用電極)551は、標的塩基配列582とは、2本鎖を形成できない。更に、図10(d)に示すように、プローブ574が固定化された作用極(第3検出用電極)554は、標的塩基配列581と2本鎖を形成できない。又、完全に配列が異なれば、当然に2本鎖を形成できないので、図10(c)に示すように、塩基配列CAGTG……を有するプローブDNA(コントロールDNA)573が固定化された作用極(コントロール電極)553は、標的塩基配列582とは、2本鎖を形成できない。
【0101】
図11では、第1の検出用核酸と第2の検出用核酸に対して、サンプルDNA583がハイブリダイズする場合を示す。
【0102】
図4及び図5に示した構成とは異なる場合、即ち基板(チップ)上に平面状のパッキンを搭載し、カセット(チップカートリッジ)内に流路を形成する構成をとる場合には、カセット(検出チップ)21内の流路が長くなり、不必要な試薬量が多くなる。又、カセット(検出チップ)21に薬液(試料)を注入する場合には、流路が基板上のみならずカセット(検出チップ)21内にも長く存在するため、基板以外の不要な部分に薬液(試料)が流れ込み、無駄となってしまう。又、パッキンに対するカセット(検出チップ)21の密着性が難しく、パッキンとカセット(検出チップ)21との間でリークが生じてしまい、送液の不具合が発生することが多い。本実施形態のような構成により、不必要な試薬量が少なくなり、又パッキン、基板及びカセット(検出チップ)21の密着性が高くなり、送液の安定性が増す。
【0103】
図12は、前述の図9と同様に、標的塩基配列(サンプルDNA)581を用いて、ハイブリダイゼーションした各作用極551,552,553、554に、挿入剤591を導入した状態を示す。図12(a)に示すように、プローブDNA571が固定化された作用極(第1検出用電極)551は、標的塩基配列(サンプルDNA)581と配列が完全にマッチングし、2本鎖を形成しているので、2本鎖DNAに挿入剤591が結合する。しかし、図12(b)および(d)に示すように、プローブDNA572が固定化された作用極(第2検出用電極)552およびは、プローブDNA574が固定化された作用極(第3検出用電極)554は、標的塩基配列(サンプルDNA)581と2本鎖を形成できないので、挿入剤591が結合できない。又、図12(c)に示すように、プローブDNA(コントロールDNA)573が固定化された作用極(コントロール電極)553には、標的塩基配列(サンプルDNA)581とは、2本鎖を形成できないので、挿入剤591が結合できない。
【0104】
図13は、各作用極551,552,553上に固定化されたプローブDNA571,572,573,574にハイブリダイゼーションした2本鎖DNAに結合した挿入剤591からの電気化学的電流、又は2本鎖DNAに挿入剤591が結合できなかった場合の電流と電圧との関係を示す図である。図13の曲線(a)は、図12(a)に対応する。即ち、曲線(a)は、プローブDNA571と標的塩基配列(サンプルDNA)581と配列が完全にマッチングし、2本鎖を形成し、この2本鎖DNAに挿入剤591が結合した場合の電気化学的電流の電流−電圧特性であり、大きな電流値のピークを示す。しかし、図12の曲線(b)は、図12(b)に対応し、プローブDNA572と標的塩基配列(サンプルDNA)581とが2本鎖を形成できず、挿入剤591が結合できない場合の電流−電圧特性であり、曲線(a)に比して小さな電流値のピークを示す。又、図13の曲線(c)は、図12(c)に対応し、コントロールDNA573と標的塩基配列(サンプルDNA)581とが2本鎖を形成できず、挿入剤591が結合できない場合の電流−電圧特性であり、曲線(b)に比して、更に小さな電流値のピークを示す。図13(b)、(c)で見られる小さな電流値ピークは、図12(b)、(c)で示したように、電極552、553表面にわずかに吸着した挿入剤591起因の電流である。電極554も電極552、553表面にわずかに吸着した挿入剤591起因の電流を生じる。
【0105】
前置きが長くなったが、図14に示すフローチャートを用いて、実施形態に係る塩基配列判定方法を説明する:
(イ)先ず、チップカートリッジ11にサンプルDNAを含む薬液(試料)を注入してハイブリダイゼーション反応などを生じさせ、挿入剤の導入による電気化学反応による電流−電圧特性を測定系12を用いて、各電極毎に測定する。図4に基板714上に多数の電極ユニット761を模式的に示したが、この多数の電極ユニット761に対応して、プローブDNA571,572,573がそれぞれ固定化される第1検出用電極551,第2検出用電極552,コントロール電極553は、等価な電極として多数存在し、それに対応して多数のデータが取得される。ステップS101において、ノイズ除去モジュール301が、プローブDNA571,572,573が固定化された各電極毎に、測定された一群のデータのそれぞれを、平準化(スムージング)により、ノイズを除去する。スムージングは、既に説明したように、図15に示すような、単純移動平均法を用いれば良い。 以降の処理は、すべて平準化処理後のデータに対して演算を行う。
【0106】
(ロ)次に、ステップS102において、電流波形判定モジュール302が、各電極毎に測定された電流波形(電流−電圧特性)のベースラインの傾きをそれぞれ求め、それぞれのベースラインの傾きにより、それぞれの検出信号(電流波形)の正常・異常を判定し、異常な検出信号を演算対象外とする。ステップS102における電流波形判定モジュール302の処理の詳細は、図16のフローチャートを用いて後述する。
【0107】
(ハ)次に、ステップS103において、ピーク電流検出モジュール310が、各電極毎に測定された検出信号のピーク値(ピーク電流値)をそれぞれ検出する。ステップS103におけるピーク電流検出モジュール310の処理の詳細は、図18及び図19のフローチャートを用いて後述するが、ステップS103における処理で、図12に示したような挿入剤591からの電気化学的電流から、これ以外のバックグラウンド電流を差し引いて、真の検出信号のピーク値(ピーク電流値)が、等価な各電極毎に、それぞれ一群のデータとして求められる。
【0108】
(ニ)ステップS103でのバックグラウンド電流成分の除去後、一群のデータのそれぞれに、ステップS104における信号処理がなされる。即ち、ステップS104において、グループ正常判定モジュール320が、一群のデータが正常であるか否かを判定する。ステップS104におけるグループ正常判定モジュール320の処理の詳細は、図25のフローチャートを用いて後述する。
【0109】
(ホ)その後、ステップS105において、検査有効性判定モジュール325が、検査が有効であるか無効であるかを判定する。検査有効性判定モジュール325の処理の詳細は、図32のフローチャートを用いて後述する。
【0110】
(ヘ)次に、ステップS106において、有無判定モジュール330が、核酸の存在の有無を判定、又は型判定モジュール340が、核酸の一塩基多型(SNP)の型判定を行う。ステップS106における有無判定モジュール330及び型判定モジュール340のそれぞれ処理の詳細は、図26〜図28のフローチャートを用いて後述する。
【0111】
図14に示すフローチャートに示す実施形態に係る塩基配列判定方法によれば、チップカートリッジ11や測定系12に異常があった場合や、データにバラつきがあった場合等でも、それらの異常なデータを除外して、正確にある核酸が存在するかどうか、SNPの型が、どの型であるか、又、それがホモ型であるか、ヘテロ型であるか、を判断できる。以下具体的に、図14に示すフローチャートの各ステップを説明する。
【0112】
[ステップS102:電流波形の正常・異常の判定]
図1の測定系12が測定したチップカートリッジ11における電気化学的電流の信号(電流波形)は、特徴的に、図17に示したような電流−電圧特性の波形をとる。電気信を発生する物質(挿入剤)に特有の電圧において、図17に示したようなピーク形状を有する電流−電圧特性の波形を持っている。図17では、データ1とデータ2の2種類の電流−電圧特性を示しているが、データ1の電流−電圧特性が示すベースラインの傾きに比して、データ2の電流−電圧特性が示すベースラインの傾きの方が大きく、データ2の電流−電圧特性では、ピーク形状が不明確で肩(ショルダー)的な変化を示している。
【0113】
理想的には、電気化学的電流の電流−電圧特性は、ピーク電流を発生する電圧以下ではほぼ「零」の電流値となる。ところが、基板714に何らかの不具合が生じた場合には、しばしば、データ2のように、ベースラインが傾いた電流−電圧特性となる。データ2のような場合には、ピーク電流値を正しく検出することができないため、図14のステップS102において、「異常」として排除する必要がある。
【0114】
ステップS102における電流波形判定モジュール302の処理の詳細は、図16のフローチャートに示す通りであり:
(a)先ず、ステップS201において、各電極毎に測定された電流波形(電流−電圧特性)のベースラインの傾きを計算する範囲を抽出し、設定する。この範囲の抽出では、設定パラメータとして、範囲下限電圧VLoと範囲上限電圧VHi(VLo < VHi)を入力装置304を用いて設定し、波形判定用電圧範囲記憶部351に格納する。更に、ベースラインの傾きの許容範囲を規定するパラメータとして「傾き下限値(Coef Lo)」と「傾き上限値(Coef Hi)」を設定し、傾き許容範囲記憶部352に格納する。
【0115】
(b)次に、ステップS202において、電流波形判定モジュール302は、波形判定用電圧範囲記憶部351に格納された範囲下限電圧VLo及び範囲上限電圧VHiとを読み出し、この設定範囲で、ベースラインの傾きの近似式を導出する。範囲下限電圧VLo及び範囲上限電圧VHiは、ベースラインの傾きを算出するための領域を規定するパラメータであり、範囲下限電圧VLoと範囲上限電圧VHiとの間の電圧値で、各電極毎に測定された電流−電圧特性の波形に対して最小二乗近似によって、直線(ベースライン)を近似する。
【0116】
(c)次に、ステップS203において、電流波形判定モジュール302は、各電極毎に測定された電流波形(電流−電圧特性)のそれぞれについて、範囲下限電圧VLo及び範囲上限電圧VHiを読み出し、それぞれ開始点及び終了点とし、これらの開始点及び終了点を、ステップS202において導出した近似式に代入し、各電極毎に測定された電流波形(電流−電圧特性)のベースラインの傾き(b)を算出する。
【0117】
(d)次に、ステップS204において、電流波形判定モジュール302は、傾き許容範囲記憶部352から、「傾き下限値(Coef Lo)」と「傾き上限値(Coef Hi)」を読み出し、ステップS203において、各電極毎に算出したベースラインの傾き(b)が、「傾き下限値(Coef Lo)」と「傾き上限値(Coef Hi)」の間に存在するか、それぞれ判定する。
【0118】
(e)ステップS204において、特定の電極で測定された電流波形(電流−電圧特性)のベースラインの傾き(b)が、「傾き下限値(Coef Lo)」と「傾き上限値(Coef Hi)」の間に存在すれば、「正常波形」と判断して、図14のステップS103に進む。ステップS204において、特定の電極で測定された電流波形(電流−電圧特性)が、「傾き下限値(Coef Lo)」と「傾き上限値(Coef Hi)」の範囲外であると判断された場合には、その電極で測定された電流波形(電流−電圧特性)は、「異常波形」であると判断して、ステップS205において、電流波形判定モジュール302は、その電極で測定された電流波形(電流−電圧特性)に対し「エラー判定」を下し、適宜、表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0119】
図14に示したステップS103の手順は、図4に示した基板714上の、すべての電極ユニット761について実施される。
【0120】
[ステップS103:ピーク電流値の検出]
ステップS103におけるピーク電流検出モジュール310の処理の詳細を、図18及び図19のフローチャートを用いて説明する。ステップS103において、測定系12が測定したそれぞれの電極ユニット761による電流−電圧特性の波形から、それぞれの正味のピーク電流値を検出する段階(ステップ)は、ステップS221〜S223における電流ピークを与える電圧値を算出する段階(図20参照。);ステップS224〜S228におけるベースラインを近似する段階(図21及び図22参照。);及びステップS229〜S230におけるピーク電流値を算出する段階(図23参照。)を、各電極ユニット761のそれぞれの電流−電圧特性に対して実行する手順からなる:
(a)チップカートリッジ11で測定された電気化学的電流の電流−電圧特性が示す電流ピークは、ほぼ一定の電圧範囲に現れる。このため、ステップS221においては、図8に示した入力装置304を用い、予め、ピーク探索電圧値範囲[V1,V2]を設定パラメータとしてピーク探索電圧値範囲記憶部353に格納しておく。即ち、図20に示すように、電気化学的電流のピーク電流探索は、下限値V1〜上限値V2の範囲で行う。先ず、ステップS222において、ピーク電流検出モジュール310の電圧値算出部311は、電気化学的電流の電流(i)−電圧(v)特性の波形を電圧値(v)に対して微分演算する。そして、ステップS223において、電圧値算出部311は、下限値V1〜上限値V2の範囲において、電気化学的電流の微分値(di/dv)が「ゼロクロス」する点の電圧値Vpk1と電流値Ipk1を算出する(図20参照。)。「ゼロクロス」する点とは、電気化学的電流の微分値(di/dv)が正値から負値に変化する点、又は負値から正値に変化する点であり、電流ピークを与える電圧値Vpk1及び電流値Ipk1に対応する。図20には、電圧値の増大に伴い、微分値(di/dv)が負値から正値に変化する点の電圧値Vpk1と電流値Ipk1が示されている。「ゼロクロス値」は、ノイズによる影響やピーク検出範囲(下限値V1〜上限値V2)設定による悪影響を受けないために、負値から正値に転じて連続3点が正値を保持している場合の最初に正値となった点の電圧値を、電圧値Vpk1として採用する。ステップS223において算出された「ゼロクロス値(ゼロクロス電圧値Vpk1,ゼロクロス電流値Ipk1)」は、ゼロクロス値記憶部354に、図4に示した基板714上の、すべての電極ユニット761毎に整理して、格納する。
【0121】
(b)ステップS224において、ピーク電流検出モジュール310のベースライン近似部312は、電流ピークを与えるゼロクロス電圧値Vpk1から電圧を負の方向に遡って(電圧を減少させて)、図21に示すように、微分値が最小となる電圧を変曲点電圧Vifpとする。変曲点電圧Vifpは、変曲点記憶部355に格納する。そして、ベースライン近似部312は、ゼロクロス電圧値Vpk1と変曲点電圧Vifpをゼロクロス値記憶部354及び変曲点記憶部355からそれぞれ読み出し、ステップS225において、電流−電圧特性曲線への接線の起点を求めるための一次式:
y = ax+b ……(3)
を、ゼロクロス電圧値Vpk1と変曲点電圧Vifpの間で求める。例えば、ゼロクロス電圧値Vpk1と変曲点電圧Vifpの間における電流−電圧特性の波形データを、最小二乗法により式(3)のように直線近似する。図21に示す例では、一次式の係数a=-1.397×10-10、定数b=3.396×10-8と求められ、図22に示す例では、一次式の係数a=-2.899×10-11、定数b=4.504×10-9と求められる。更に、ベースライン近似部312はステップS226において、電流−電圧特性の波形と式(3)の近似直線との交点を与える交点電圧Vcrsを図22に示すように求め、この交点電圧Vcrsを交点電圧記憶部356に格納する。そして、ベースライン近似部312はステップS227において、交点電圧Vcrsを起点として、設定パラメータとして規定しているオフセット値だけ電圧を負の方向に遡った(電圧を減少させた)オフセット電圧Vofsを、図22のように求める。求められたオフセット電圧Vofsは、オフセット電圧記憶部357に格納する。更に、ベースライン近似部312は、オフセット電圧Vofsをオフセット電圧記憶部357から、交点電圧Vcrsを交点電圧記憶部356からそれぞれ読み出し、ステップS228において、オフセット電圧Vofsと交点電圧Vcrsの間の電流−電圧特性の波形データのバックグラウンドの接線(ベースライン)となる近似一次式を最小二乗法により、図23に示すように求める。この近似一次式は、式(3)と同様な形式で表現可能で、図23に示す直線近似では、一次式の係数a=-6.072×10-12、定数b=-5.902×10-9と求められる。
【0122】
(c)この後、ピーク電流検出モジュール310のピーク電流値演算部313は、ゼロクロス電圧値Vpk1をゼロクロス値記憶部354から読み出す。そして、ステップS229において、ピーク電流値演算部313は、ステップS228で求めたベースラインの近似一次式に、ゼロクロス電圧値Vpk1を代入し、バックグラウンド(ベースライン)の電流値Ibgを求める。バックグラウンド(ベースライン)の電流値Ibgは、ベースライン電流値記憶部358に格納する。更に、ピーク電流値演算部313は、電流−電圧特性の波形のピークを示すゼロクロス電流値Ipk1を、ゼロクロス値記憶部354から読み出し、ステップS230において、ゼロクロス電流値Ipk1から、バックグラウンド(ベースライン)の電流値Ibgを、式(4)に示すように差し引く:
pk2 =abs(Ipk1−Ibg) ……(4)
式(4)を各電極ユニット761のそれぞれの第1検出用電極(SNP="G"検出用電極)551,第2検出用電極(SNP="T"検出用電極)552,コントロール電極553のそれぞれの電流−電圧特性に対して適用することにより、各電極ユニット761のそれぞれの電極551,552,553から、それぞれ真の電流値Ipk2が算出される。
【0123】
[ステップS104:グループ正常判定]
以上説明したように、図14のステップS103では、ピーク電流検出モジュール310が、測定系12が測定した各電極ユニット761によるそれぞれの電流−電圧特性のピークを示すゼロクロス電流値Ipk1から、バックグラウンド(ベースライン)の電流値Ibgを差し引いて、各電極ユニット761のそれぞれの第1検出用電極(SNP="G"検出用電極)551,第2検出用電極(SNP="T"検出用電極)552,コントロール電極553毎に、それぞれの正味の電流値Ipk2が、種々の判定モードで算出され、分類される。
【0124】
しかし、例えば、複数の同等の検出用電極551の内1電極だけ、異常に大きい値、若しくは小さい値の場合、複数の同等の第2検出用電極552の内1電極だけ、異常に大きい値、若しくは小さい値を示す場合は、それら異常値を除外しないと、判定アルゴリズムに混乱を生じさせる。即ち、図4に示すように、基板714上に複数配列した同等の電極ユニット761から得られるピーク電流値Ipk2をそのまま、すべて用いて、図14のステップS106の処理、つまり、塩基配列判定する場合に、問題が生じてしまう場合がある。
【0125】
そこで、図14のステップS104では、ステップS105に進む前に、グループ正常判定モジュール320が、図4に示す基板714上に複数配列される電極ユニット761によって定義されるすべての電極から得られる電流値Ipk2に対し、図25に示すフローチャートの手順をグループ単位で実施する。図25に示すフローチャートでは、ステップS31において、図24(a)に示すような歯抜け異常を判定し、その後ステップS32において、図24(b)に示すようなバラツキ異常を判定する。ステップS31における歯抜け異常の判定、及びステップS32におけるバラツキ異常の判定は、以下に示すような所定の基準で、グループ単位でその後の判定処理に値するかどうかの有効性を判断する:
(a)ステップS301では、グループ正常判定モジュール320において、ステップS31における歯抜け判定を行うかどうかの選択を行う。歯抜け判定を行う場合には、ステップS31のステップS302に進む。歯抜け判定を行わない場合には、バラツキ異常を判定するステップS32のステップS305に進む。
【0126】
(b)ステップS302において、歯抜けデータ数をカウントするため、歯抜けデータ数Nrの初期値として「0」をセットして、次のステップS303に進む。
【0127】
(c)ステップS303において、グループ正常判定記憶部361に格納されている歯抜け電流基準値MSを読み出し、各電流値Ipk2に対して、歯抜け電流基準値MSとの大小関係を比較する。歯抜け電流基準値MS以上であれば、歯抜けではないと判断して、次のステップS304に進む。歯抜け電流基準値MSよりも小さい場合には、当該データは歯抜けデータと判断し、ステップS311において、「判定対象外」とするエラーセットとする。更に、ステップS312において、歯抜けデータ数Nrをカウントアップし、ステップS303に戻る。グループ内のすべてのデータに対して、このルーチンを繰り返し、最終的なグループ内の歯抜けデータ数をカウントする。ステップS303において、歯抜けでないと判断されたデータは判定対象データとする。
【0128】
(d)ステップS304では、グループ正常判定記憶部361に格納されている歯抜け許容割合Pを読み出し、積算された歯抜けデータ数Nrと、グループに割り当てられている電極数N0をPで除算して値との大小関係を比較する。歯抜けデータ数Nrが、N0/Pよりも小さければ、バラツキ異常を判定するステップS32のステップS305に進む。歯抜けデータ数Nrが、N0/P以上である場合には、当該グループは、「歯抜け多数」につき、型判定には値しないと判断し、「グループ異常」と判定する。
【0129】
(e)ステップS305において、判定対象データグループの電流値Ipk2の平均値が「零」でないか否かの判定を行い、「零」の場合には、ステップS314において、「グループ異常」と判定する。ここで、歯抜け判定を行っている場合には、平均値が「零」になることはないはずであるが、ステップS301において、歯抜け判定を行わない場合には、ステップS305において、「グループ異常」と判定される場合が生じる。「零」でない場合には、次のステップS306に進む。
【0130】
(f)ステップS306では、判定対象データの電流値Ipk2の平均値及び標準偏差を算出し、標準偏差を平均値で除算して、CV値を求め、次のステップS307に進む。
【0131】
(g)ステップS307で、グループ正常判定記憶部361から設定パラメータとして規定した基準CV値CV0と比較し、基準CV値CV0よりも小さい場合には、次のステップS308で当該グループは正常であると判定し、更に、図14のフローチャートのステップS105の検査有効性判定へと進む。基準CV値CV0以上の場合には、図25のフローチャートのステップS315において、当該グループは、「グループ異常」と判定する。
【0132】
以上のルーチンをすべてのグループについて繰り返すことにより、グループが正常かどうかの判定を行う。
【0133】
グループ正常判定モジュール320は、電極から得られる電流値Ipk2に対し演算対象外の際に「グループ異常判定」を下し、適宜、表示装置306及び出力装置305に出力させる。これ以降のステップにおいては、すべて、真の電流値Ipk2に対する演算であるため、特に断らない限り、「真の電流値Ipk2」を単に「電流値」として記述することにする。又、基本的には、判定対象データのみを、今後の演算対象とする(歯抜けデータは除いて処理する)。
【0134】
[ステップS105:検査有効性判定]
ステップS105における検査有効性判定モジュール325の処理の詳細を、図32のフローチャートを用いて説明する。ここでは、図4に示す基板714上に複数配列される電極ユニット761にそれぞれ含まれる複数のポジティブ・コントロール用電極54,ネガティブ・コントロール用電極55からそれぞれ得られる一群の電流値Ipk2のデータについて判定を行う。
【0135】
(a)ステップS401では、先ず、検査有効性判定において、ネガティブ・コントロールでの判定を行うかどうかの選択を行う。ネガティブ・コントロールでの判定を行わない場合には、ステップS435において、検査有効性判定は「有効」として、本処理を終了する。ネガティブ・コントロールでの判定を行う場合には、次のステップS402に進む。
【0136】
(b)ステップS402では、ネガティブ・コントロール用電極55からそれぞれ得られる一群の電流値Ipk2のデータが、図14のフローチャートのステップS104におけるグループ正常判定において、「正常」と判定されていた場合には、次のステップS443に進む。図14のフローチャートのステップS104におけるグループ正常判定において、「グループ異常」と判定された場合には、ステップS441において、「判定不能(N.D.52)」を、表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0137】
(c)ステップS443では、ネガティブ・コントロール用電極55からそれぞれ得られる一群の電流値Ipk2の平均値X、及び標準偏差σをそれぞれ計算し、平均値・標準偏差記憶部360に格納する。
【0138】
(d)ステップS403では、SLL記憶部362から格納されている設定パラメータネガティブ・コントロール判定上限値NCUL、ネガティブ・コントロール判定下限値NCLLを、平均値・標準偏差記憶部360からは、ステップS443で算出したネガティブ・コントロール電流の平均値Xを読み出し、設定パラメータネガティブ・コントロール判定上限値NCUL、ネガティブ・コントロール判定下限値NCLLとネガティブ・コントロール電流値の平均値Xとの大小関係を比較する。ネガティブ・コントロール電流値の平均値Xが、判定下限値NCLL以上、判定上限値NCUL以下である場合には、ステップS404において、ネガティブ・コントロールは妥当とみなして、次のステップS405に進む。ネガティブ・コントロール電流値の平均値Xが、判定下限値NCLLと判定上限値NCULの範囲から逸脱している場合には、ステップS421において、ネガティブ・コントロール異常として、ステップS422に進む(図24(c)は、ネガティブ・コントロール電流値の平均値が、上限値NCULを超えてしまった場合を概念的に示している。)。
【0139】
(e)ステップS405では、ポジティブ・コントロール判定を行うかどうか選択を行う。ポジティブ・コントロールでの判定を行わない場合には、ステップS412において、検査有効性判定は「検査有効」として、本処理を終了する。ポジティブ・コントロールでの判定を行う場合には、次のステップS406に進む。
【0140】
(f)ステップS406では、ネガティブ・コントロールに対して、ステップS402において行ったと同様に、ポジティブ・コントロールに対して行う。図14のフローチャートのステップS104におけるグループ正常判定において、「正常」と判定されていた場合には、次のステップS444に進む。図14のフローチャートのステップS104におけるグループ正常判定において、「グループ異常」と判定された場合には、ステップS442において「判定不能(N.D.51)」とし、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0141】
(g)ステップS444では、ポジティブ・コントロール用電極54からそれぞれ得られる一群の電流値Ipk2の平均値X、及び標準偏差σをそれぞれ計算し、平均値・標準偏差記憶部360に格納する。
【0142】
(h)ステップS407では、SLL記憶部362から格納されている設定パラメータポジティブ・コントロール判定下限値PCLL及びポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを、平均値・標準偏差記憶部360からは、ステップS443で算出したネガティブ・コントロール電流の平均値X及び標準偏差σ、ステップS444で算出したポジティブ・コントロール電流の平均値X及び標準偏差σを読み出す。ポジティブ・コントロール電流値の平均値Xからネガティブ・コントロール電流値の平均値Xを減算した値とポジティブ・コントロール判定下限値PCLLと大小関係を比較する。更に、ポジティブ・コントロール電流値平均値Xから、ポジティブ・コントロール電流の標準偏差σにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を減算した値と、ネガティブ・コントロール電流値平均値Xに、ネガティブ・コントロール電流の標準偏差σにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を加算した値を比較する。ポジティブ・コントロール電流値の平均値Xからネガティブ・コントロール電流値の平均値Xを減算した値が、ポジティブ・コントロール判定下限値PCLL以上でかつ、ポジティブ・コントロール電流値平均値Xから、ポジティブ・コントロール電流の標準偏差σにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を減算した値がネガティブ・コントロール電流値平均値Xに、ネガティブ・コントロール電流の標準偏差σにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を加算した値以上である場合(ステップS408)には、ステップS409において、「検査有効」と判定し、処理を終了する。いずれか一方でも満たさない場合(ステップS410)には、ステップS411において、「検査無効」と判断する。
【0143】
(i)ステップS403で、ネガティブ・コントロール電流値の平均値が、図24(c)に示すように、判定下限値NCLLと判定上限値NCULの範囲から逸脱している場合には、ステップS421でネガティブ・コントロール異常として、ステップS422に進む。ステップS422では、ステップS406と同様にポジティブ・コントロール判定を行うかどうか選択を行う。ポジティブ・コントロールでの判定を行わない場合には、ステップS434において検査有効性判定は「検査無効」として、本処理を終了する。ポジティブ・コントロールでの判定を行う場合には、次のステップS423に進む。
【0144】
(j)ステップS423では、ステップS406において行ったと同様に、ポジティブ・コントロールに対して、図14のフローチャートのステップS104におけるグループ正常判定において、「正常」と判定されていた場合には、次のステップS445に進む。図14のフローチャートのステップS104におけるグループ正常判定において、「グループ異常」と判定された場合には、ステップS431において「検査有効性判定」は「検査無効」として、本処理を終了する。
【0145】
(k)ステップS445では、ステップS444と同様の処理を行う。即ち、ポジティブ・コントロール用電極54からそれぞれ得られる一群の電流値Ipk2の平均値X、及び標準偏差σをそれぞれ計算し、平均値・標準偏差記憶部360に格納する。
【0146】
(l)ステップS424では、SLL記憶部362から格納されている設定パラメータポジティブ・コントロール判定下限値PCLL及びポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを、平均値・標準偏差記憶部360からは、ステップS443で算出したネガティブ・コントロール電流の平均値X及び標準偏差σ、ステップS445で算出したポジティブ・コントロール電流の平均値X及び標準偏差σを読み出す。ポジティブ・コントロール電流値の平均値Xからネガティブ・コントロール電流値の平均値Xを減算した値とポジティブ・コントロール判定下限値PCLLと大小関係を比較する。更に、ポジティブ・コントロール電流値平均値Xから、ポジティブ・コントロール電流の標準偏差σにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を減算した値と、ネガティブ・コントロール電流値平均値Xに、ネガティブ・コントロール電流の標準偏差σnにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を加算した値を比較する。ポジティブ・コントロール電流値の平均値Xからネガティブ・コントロール電流値の平均値Xを減算した値が、ポジティブ・コントロール判定下限値PCLL以上でかつ、ポジティブ・コントロール電流値平均値Xから、ポジティブ・コントロール電流の標準偏差σにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を減算した値がネガティブ・コントロール電流値平均値Xに、ネガティブ・コントロール電流の標準偏差σにポジティブ・コントロール実効変動係数PESLを乗算した値を加算した値以上である場合(ステップS425)は、ステップS426において「検査無効」と判断し、本処理を終了する。ステップS424で、上記条件のいずれか一方でも満たさない場合(ステップS432)も、ステップS433において「検査無効」と判断し、本処理を終了する。
【0147】
[2種類のアルゴリズムから選択]
図14のステップS106は、図26に示すようにステップS332における検査有効性の判定において検査が有効であると判定された場合は、ステップS333に進み、2種類のアルゴリズムの選択を行う。ステップS332における検査有効性の判定において検査が有効でないと判定された場合は、ステップS334において「検査無効」として、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、表示装置306及び出力装置305に出力させ、信号処理を終了する。ステップS333においては、ある核酸が存在するかどうかを判定する有無判定アルゴリズムのフローに進むのか、SNP型判定や変異型判定など塩基配列の判定アルゴリズムのフローに進むのかを決定する。S106にはSNP型判定に進む例を示したが、S106は塩基配列判定であってもよい。
【0148】
[ステップS106その1:核酸の存在の有無判定]
図26のステップS333において、ある核酸が存在するかどうかを判定するアルゴリズムのフローに進むと決定された場合は、図27に示すフローチャートの手順で有無判定モジュール330が処理を行う。
【0149】
図2において、第1検出用電極551,第2検出用電極552,第3検出用電極554,コントロール電極553、参照極561,562及び対極502が検出チップ上に配列された電極ユニットを示したが、ある核酸が存在するかどうかを判定するアルゴリズムの場合は、第1検出用電極551,第2検出用電極552および第3検出用電極554のいずれか1であっても良い。即ち、図4に示す基板714上には、第1検出用電極551,第2検出用電極552および第3検出用電極のいずれか1を検出用電極(作用極)として備える電極ユニット761が複数配列されている。ここでは、図2に示した第1検出用電極551を、対象核酸を検出する有無検出用電極(作用極)550であると仮定して説明する。
【0150】
(a)図27に示すフローチャートのステップS341では、有無判定モジュール330は、コントロール電極553からの電流値がグループ正常判定モジュール320での処理の結果が「グループ正常」であるか否かを判定する。ステップS341で、「グループ正常」であると判定された場合には、次のステップS342に進む。グループ正常判定モジュール320での処理の結果、「グループ異常」であると判定された場合には、「判定不能(N.D.21)」として、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS348において「判定不能(N.D.21)」を表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0151】
(b)更に、ステップS342において、有無判定モジュール330は、判定対象となる複数の有無検出用電極(作用極)550からの電流値がグループ正常判定モジュール320での処理の結果、「グループ正常」であるか否かを判定する。ステップS342において、「グループ正常」であると判定された場合には、次のステップS343に進む。グループ正常判定モジュール320での処理の結果、「グループ異常」であると判定された場合には、「判定不能(N.D.22)」として、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS349において「判定不能(N.D.22)を表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0152】
(c)次に、ステップS343において判定対象となる複数の有無検出用電極(作用極)550からの電流値の平均値(X)、標準偏差(σ)、対応するコントロール電極553からの電流値の平均値(Xc)及び標準偏差(σc)を算出し、平均値・標準偏差記憶部360に格納する。
【0153】
(d)ステップS344において、有無判定モジュール330は、有無検出用電極(作用極)550からの電流値の平均値(X)と対応するコントロール電極553からの電流値の平均値(Xc)を平均値・標準偏差記憶部360から読み出し、平均値の差(X−X)を演算する。更に、「−」判定信号増加量上限基準SL(−)をSLL記憶部362から読み出す。そして、ステップS344において、平均値の差(X−Xc)と、「−」判定信号増加量上限基準SL(−)との大小関係を比較する。ステップS344で「−」判定信号増加量上限基準SL(−)以下と判断された場合には、有無検出用電極(作用極)550からは対象とする核酸の電気化学的電流の電流値が観測されなかったと判断し、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS350において、表示装置306に「−(検出感度以下)」の判定を表示させる。一方、ステップS344において、「−」判定信号増加量上限基準SL(−)よりも大きい場合には、ステップS345に進む。
【0154】
(e)ステップS345では、有無判定モジュール330は、有無検出用電極(作用極)550からの電流値の平均値(X)と対応するコントロール電極553からの電流値の平均値(Xc)を平均値・標準偏差記憶部360から読み出し、平均値の差(X−X)を演算する。更に、「+」判定信号増加量下限基準SL(+)をSLL記憶部362から読み出す。そして、平均値の差(X−Xc)と、「+」判定信号増加量下限基準SL(+)との大小関係を比較する。ステップS345で「+」判定信号増加量下限基準SL(+)より小さいと判断された場合には、「判定不能(N.D.01)」として、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS351において、「判定不能(N.D.01)」を表示装置306及び出力装置305に出力させる。これは、有無検出用電極(作用極)550からの電気化学的信号の増加量(コントロール電極からの電気化学的信号との差分)が、「+」判定とするには充分でなく、又、「−」判定とするには小さくない、という中途半端な値を示しており、+/−判定を決することができない状態を表している。一方、ステップS345において、「+」判定信号増加量下限基準SL(+)以上の場合には、ステップS346に進む。
【0155】
(f)ステップS346では、有無判定モジュール330は、有無検出用電極(作用極)550からの電流値の平均値(X)、標準偏差(σ)、対応するコントロール電極553からの電流値の平均値(Xc)及び標準偏差(σ)を平均値・標準偏差記憶部360から、更には実効変動係数ESLLをSLL記憶部362から読み出す。有無検出用電極550からの電流の平均値Xに対して、標準偏差σの実効変動係数倍小さい値(X−ESLL*σ)と、コントロール電極からの電流平均値Xに対して、標準偏差σの実効変動係数倍大きい値(X+ESLL*σ)との大小関係を比較する。有無検出用電極550からの電流平均値Xに対して、標準偏差σの実効変動係数倍小さい値(X−ESLL*σ)が、コントロール電極からの電流平均値Xに対して、標準偏差σの実効変動係数倍大きい値(X+ESLL*σ)以上の場合、即ち、X−ESLL*σ≧X+ESLL*σの不等式が成立する場合には、充分な信号増加量が得られているとして、「+」の判定を行い、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS347において、「+」を表示装置306及び出力装置305に出力させる。一方、X−ESLL*σ≧X+ESLL*σの不等式を満足しない場合には、信号バラつきに対して、信号増加量が充分でないと判断し、「判定不能(N.D.02)」として、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS352において、「判定不能(N.D.02)」を表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0156】
即ち、ステップS345において、平均値の差(X−Xc)が「+」判定信号増加量下限基準SL(+)以上の場合でも、直ちに「+」と表示せず、ステップS346において、電流増加量がバラツキに比べて充分であるか否かを判断する訳である。ここで、「+」判定信号増加量下限基準SL(+)及び「−」判定信号増加量上限基準SL(−)については、複数のサンプルに関して測定を行い、上述の手順で、信号増加量を算出し、「+」のサンプル及び「−」のサンプルに対して、それぞれ統計的な値から算出して決定するのが好ましい。より好ましくは、「+」サンプル、「−」サンプルそれぞれの信号増加量の平均値と標準偏差から、定めるのが好ましい。更により好ましくは、「+」判定信号増加量下限基準SL(+)は、「+」サンプルの「平均値−3×標準偏差」とし、「−」判定信号増加量上限基準SL(−)は「−」サンプルの「平均値+3×標準偏差」と定めるのが良い。なお、基準値を決定するのに用いるサンプル数は、それぞれ30サンプル以上であることが望ましい。
【0157】
電流増加割合下限基準値MIRについても、同様に複数のサンプルに関するデータから、統計的に算出して決めるのが好ましい。MIRについても、角度判定基準値と同様に、複数のサンプルに関する測定から求めた直線長の平均値と標準偏差を用いて決定するのが好ましい。MIRは、「平均値−3×標準偏差」と定めるのがより好ましい。なお、基準値を決定するのに用いるサンプル数は、30サンプル以上であることが望ましい。
【0158】
[ステップS106その2:塩基配列判定]
塩基配列判定方法の手順を末尾に記す表Iにおいて示す。
【0159】
図26のステップS333において、ある核酸が存在するかどうかを判定するアルゴリズムのフローに進むと決定された場合は、表Iに示すフローチャートの手順で塩基配列判定モジュール900が処理を行う。
【0160】
(a)まず、塩基配列判定モジュール900は、ステップS362では、型判定モジュール340は、第1検出用電極551に対応するコントロール電極(C1)553、第2検出用電極552に対応するコントロール電極(C2)556及び第3検出用電極554に対応するコントロール電極(C1)553からの電流値がグループ正常判定モジュール320での処理の結果、いずれも「グループ正常」であると判定された場合には、次のステップS363に進む。グループ正常判定モジュール320での処理の結果、いずれかが「グループ異常」であると判定された場合には、「判定不能(N.D.31)」として、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS382において、「判定不能(N.D.31)」を表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0161】
(b)更に、ステップS363において、塩基配列判定モジュール900は、判定対象となる第1検出用電極551、第2検出用電極552及び第3検出用電極554からの電流値がグループ正常判定モジュール320での処理の結果、いずれも「グループ正常」であると判定された場合には、次のステップS364に進む。グループ正常判定モジュール320での処理の結果、いずれかが「グループ異常」であると判定された場合には、「判定不能(N.D.32)」として、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、ステップS383において、「判定不能(N.D.32)」を表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0162】
(c)次に、ステップS364では、塩基配列判定モジュール900は、第1検出用電極551の電流値の平均値X1,第1検出用電極551に対応するコントロール電極(C1)553の電流値の平均値Xc1,第2検出用電極(SNP="T"検出用電極)552の電流値の平均値X2,第2検出用電極552に対応するコントロール(C2)電極556の電流値の平均値Xc2および第3検出用電極554の電流値の平均値X,第3検出用電極554に対応するコントロール電極(C1)557の電流値の平均値Xc3を算出する。図2では、第1検出用電極551と第2検出用電極に対応する共通のコントロール電極553を示したが、第1検出用電極551に対応するコントロール電極(C1)と第2検出用電極552に対応するコントロール(C2)とを別個に設けても構わず、且つ第3検出用電極554についても同様である。算出した第1検出用電極551の電流値の平均値X1,第1検出用電極551に対応するコントロール電極(C1)553の電流値の平均値Xc1,第2検出用電極552の電流値の平均値X2,第2検出用電極552に対応するコントロール(C2)電極556の電流値の平均値Xc2及び第3検出用電極554の電流値の平均値X,第3検出用電極554に対応するコントロール電極(C1)557の電流値の平均値Xc3は、平均値・標準偏差記憶部360に格納する。
【0163】
(d)次に、ステップS365では、塩基配列判定モジュール900は、第1検出用電極551の電流値の平均値X1と対応するコントロール電極(C1)553の電流値の平均値Xc1を平均値・標準偏差記憶部360から読み出し、第1検出用電極551の電流値の平均値X1とコントロール電極(C1)553の電流値の平均値Xc1との差(X1−Xc1)をコントロール電極(C1)553の電流値の平均値Xc1で除算した値Zを算出する:
=(X−Xc1)/Xc1 ……(5)
同様に、第2検出用電極552の電流値の平均値Xと対応するコントロール電極(C2)554の電流値の平均値Xc2を平均値・標準偏差記憶部360から読み出し、第2検出用電極552の電流値の平均値Xとコントロール電極(C2)556の電流値の平均値Xc2との差(X−Xc2)をコントロール電極(C2)556の電流値の平均値Xc2で除算した値Zを算出する:
=(X−Xc2)/Xc2 ……(6)
同様に、第3検出用電極554の電流値の平均値Xと対応するコントロール電極(C3)553の電流値の平均値Xc2を平均値・標準偏差記憶部360から読み出し、第3検出用電極554の電流値の平均値Xとコントロール電極(C3)556の電流値の平均値Xc3との差(X−Xc3)をコントロール電極(C3)556の電流値の平均値Xc2で除算した値Zを算出する:
=(X−Xc2)/Xc2 ……(7)
そして、算出したZ、ZおよびZを、規格化座標記憶部365に格納し、ステップS366に進む。
【0164】
(e)ステップS366において、塩基配列判定モジュール900は、規格化座標記憶部365から、規格化された第1電流増加量Z及び規格化された第2電流増加量Zを読み出す。塩基配列判定モジュール900は、規格化座標記憶部365から、規格化された第1電流増加量Z及び規格化された第2電流増加量Zを読み出す。ステップS367では、更に、規格化された第1電流増加量ZをX座標とし、規格化された第2電流増加量ZをY座標として定まる点の座標(Z,Z)を、極座標(R,A)に変換する。即ち、表Aに示すように、X座標ZがY座標Zで定まる点Pに対して、Rは、原点から、点P(Z,Z)までの直線を示し、Aは、正のX軸と、原点から点P(Z,Z)への直線のなす角度を示す。ここで、ステップS366においてX軸について角度の比較が行われる。
【0165】
(g)ステップS367においては、塩基配列判定モジュール900は、規格化座標記憶部365から、規格化された第1電流増加量Z及び規格化された第3電流増加量Zを読み出す。塩基配列判定モジュール900は、規格化座標記憶部365から、規格化された第1電流増加量Z及び規格化された第3電流増加量Zを読み出す。ステップS367では、更に、規格化された第1電流増加量ZをX座標とし、規格化された第3電流増加量ZをY座標として定まる点の座標(Z,Z)を、極座標(R,A)に変換する。即ち、表Aに示すように、X座標ZがY座標Zで定まる点Pに対して、Rは、原点から、点P(Z,Z)までの直線を示し、Aは、正のX軸と、原点から点P(Z,Z)への直線のなす角度を示す。ここで、ステップS367においてX軸について角度の比較が行われる。
【0166】
(h)S366、367およびS384からの比較結果を受け取り、分類結果記憶部369に判定結果を分類して格納し、S385では「プローブ1(+)およびプロープ2(−)」、S3386では「プローブ1(+)およびプロープ2(−)」、S387では「プローブ1(−)およびプロープ2(+)」、S88では「プローブ1(−)およびプロープ2(−)」とのを表示装置306及び出力装置305に出力させる。
【0167】
以上の説明で理解できるように、実施形態に係る塩基配列方法によれば、チップカートリッジ11や測定系12に異常があった場合や、データにバラつきがあった場合等でも、それらの異常なデータを除外して、正確にある核酸が存在するかどうかを高い精度で判定できる。又、実施形態に係る塩基配列方法によれば、初期設定にエラーがあれば「設定エラー」と判定し,チップ若しくは試料(バイオサンプル)に異常があれば「判定不能(サンプル・エラー)」と判定し、装置(ハードウェア)に不具合があれば「判定不能(ハードウェア・エラー)」と判定する等の処理をして、それらの異常なデータを除外できる。更に、信号のバラつきにより判定できない場合や信号強度が弱い場合等についてもその状況に応じた判定が可能である。このため、実施形態に係る塩基配列方法によれば、種々の測定環境や状況(実状)に適格に応じながら、塩基配列を高い精度で判断できる。ここで、塩基配列については、具体的に塩基名を用いて”A”、”T”、”G”、”C”等の表示を行ってもよいし、更にアミノ酸配列までを判断するためには、決定された塩基配列と対応するコドンに基づいてアミノ酸配列を判断すればよい。従って、判断の結果は、アミノ酸の名称の表示、1文字表記、3文字表記、「耐性型」若しくは「非耐性型」または「薬剤耐性型」若しくは「薬剤非耐性型」などの表示を行ってよい。このようにアミノ酸配列に対応させる場合や、薬剤耐性などのアミノ酸配列に由来する特徴を表示する場合には、それらを対応させるテーブルを記憶モジュールに記憶し、塩基配列判定モジュールがその対応を読み出して、検出結果、算出値および判定などの判定結果とそれらのテーブルを対応付け、その結果を表示部に表示させるように構成すればよい。
【0168】
(塩基配列判定プログラム)
図14,図16,図18−19,図25−27および表I示した一連の判定操作は、図14,図16,図18−19,図25−27および表Iと等価なアルゴリズムのプログラムにより、図8に示した塩基配列判定システムを制御して実行できる。このプログラムは、塩基配列判定システムを構成するコンピュータシステムのプログラム記憶装置(図示省略)に記憶させれば良い。又、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存し、この記録媒体を塩基配列判定システムのプログラム記憶装置に読み込ませることにより、一連の判定操作を実行することができる。ここで、「コンピュータ読取り可能な記録媒体」とは、例えばコンピュータの外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのプログラムを記録することができるような媒体などを意味する。具体的には、フレキシブルディスク、CD−ROM,MOディスク、カセットテープ、オープンリールテープ、メモリカード、ハードディスク、リムーバブルディスクなどが「コンピュータ読取り可能な記録媒体」に含まれる。
【0169】
例えば、塩基配列判定システムの本体は、フレキシブルディスク装置(フレキシブルディスクドライブ)及び光ディスク装置(光ディスクドライブ)を内蔵若しくは外部接続するように構成できる。フレキシブルディスクドライブに対してはフレキシブルディスクを、又光ディスクドライブに対してはCD−ROMをその挿入口から挿入し、所定の読み出し操作を行うことにより、これらの記録媒体に格納されたプログラムを、塩基配列判定システムを構成するプログラム記憶装置にインストールすることができる。又、所定のドライブ装置を接続することにより、例えばゲームパック等に利用されているメモリ装置としてのROMや、磁気テープ装置としてのカセットテープを用いることもできる。更に、インターネット等の情報処理ネットワークを介して、このプログラムをプログラム記憶装置に格納することが可能である。
【実施例1】
【0170】
実施例1 アミノ酸配列の判定
Hepatitis B virus (HBV)のポリメラーゼを構成するアミノ酸のうち、204番目のアミノ酸(aa204)であるメチオニン(Met), 薬剤投与後、その薬剤に対して耐性を示すアミノ酸イソロイシン(Ile), 及びバリン(Val)の3種のアミノ酸を判定するためのアルゴリズムを以下に示した。
【0171】
・HBVaa204アミノ酸判定用センサーの作製
表1に示すように、MetをコードするコドンはATG、IleをコードするコドンはATC、ATT、ATA、Valをコードするコドン4種のうち野生型のMetをコードするコドンATGの最初の塩基のみがGに置換したGTG、以上の5種類のコドンを検出・判定することにより、そのウイルスのaa204のアミノ酸を検出・判定し、そのウイルスがある薬剤に対して耐性を持つかどうかを判定することができる。また、このコドンより上流4塩基目には、高頻度な塩基多型 (T or C)が存在するため、上記5種類のコドンそれぞれに対し、上流4塩基目の塩基がTの場合、Cの場合、計10種類の塩基配列を検出判定する必要がある。これら10種類の塩基配列を含むプローブDNA、及びバックグラウンドを測定するためのプローブDNA、計11種類を準備し、表1に示すように、2種または3種のプローブDNAを組み合わせ、5種のプローブセットを準備した。これら5種のプローブセットを別々の電極に固定し、これをHBVaa204アミノ酸判定用センサーとした。
【表1】

【0172】
・核酸増幅(LAMP)反応溶液の調製
核酸増幅は、Loop-mediated isothermal amplification (LAMP法)で行った。LAMP反応用プライマーを表2に示した。これらのプライマーを用いてLAMP反応を行うことにより、aa204のコドンとその上流4塩基目を含むLAMP産物が得られる。表3に示した組成にてLAMP反応溶液を調製した。
【表2】

【0173】
【表3】

【0174】
・人工合成遺伝子(鋳型)の調製
以下の1000塩基がベクターpUC57に組み込まれた人工合成遺伝子を作製した。aa204をコードする3塩基、及びそれより上流4塩基目の塩基(以下の塩基配列の四角の枠)については、表GのプローブNo.1〜10の10種類の組み合わせと同じ塩基となるように塩基置換を行い、計10種類の人工合成遺伝子(T1〜T10)を作製した。それぞれの人工合成遺伝子を1E+03copies/5uLとなるように段階希釈し、鋳型溶液とした。
【表G】

【0175】
・核酸増幅(LAMP)反応
各鋳型溶液5uLをLAMP反応液に添加し、混合後、予め63℃に加温した恒温装置にセットし、60分間反応させ、その後、80℃で2分反応させた。
【0176】
・HBVaa204アミノ酸判定用センサーによる核酸増幅(LAMP)産物の検出
核酸増幅(LAMP)産物を15uL, 0.1% Tween20 を45uL, 20×SSCを6uLを混合し、検出用ターゲットDNA溶液(計66uL)とした。検出用ターゲット溶液50uLをHBVaa204アミノ酸判定用センサー上に添加し、55℃で5分間反応させ、核酸増幅(LAMP)産物とHBVaa204アミノ酸判定用センサー上に固定されたプローブDNAとをハイブリダイズさせた。その後、検出用ターゲット溶液を2×SSC溶液で置換し、36℃で5分間反応させ洗浄を行った。次に、75uMのヘキスト33258溶液で置換し、25℃で1分間反応させた後、センサー(電極)に電位を挿引し、ヘキスト33258の酸化反応と伴に流れる電流のピーク電流値を検出した。これらの検査は、東芝のDNAチップ、及びGenelyzerを用いて行った(SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration, Vol. 1, No. 3, pp. 265-270, May 2008)。
【0177】
・センサーにより得られた数値とアミノ酸aa204のアミノ酸判定
プローブセットNo.1より得られた信号(I-1)からコントロール用プローブ(I-5)を差し引き、これを(I-5)で割った値をC1、プローブセットNo.2より得られた信号(I-2)からコントロール用プローブ(I-5)を差し引き、これを(I-5)で割った値をC2、同様にして、C3, C4の値を算出した。C1をX、C2をYとし、2次元のXY平面にプロットし、(C1, C2), (C1, C3), (C1, C4)の3つの2次元プロットを作製した。各2次元プロットにおいてプロットと原点を結んだ線とX軸とが形成する角度をA(1-2)とし、同様にA(1-3)、A(1-4)を求めた。
【0178】
表4に示すように、3種の2次元プロットそれぞれについて、Xの値、Yの値、角度(大小2種)にそれぞれ判定基準を設け、各判定基準値とプロットを比較することにより、各2次元プロットにおける、X軸側プローブセット、Y軸側プローブセットが陽性または陰性となるかを判定した。2次元プロット(C1, C2)における判定基準、X、Y、角度(大小2種)をそれぞれ、X(1-2). Y(1-2), A1(1-2), A2(1-2)とし、同様に、2次元プロット(C1, C3), (C1, C4)についても、X(1-3). Y(1-3), A1(1-3), A2(1-3), X(1-4). Y(1-4), A1(1-4), A2(1-4)を設定した。判定方法を以下に示す。各2次元プロットにおいて、C1の値が予め決めた基準値(X)よりも大きく、且つ角度Aが予め決めた基準値A2よりも小さい場合、プローブセット1は「陽性」と判定し(図3の上段向かって左側の斜線で示した領域青)、それ以外は「陰性」と判定した。一方、各2次元プロットにおいて、C2, C3, C4の値が予め決めた基準値(Y)よりも大きく、且つ角度A)が予め決めた基準値(A1)よりも大きい場合、プローブセット2, 3, 4は、「陽性」と判定し(図3の上段向かって左側の車線で示した領域)、それ以外は「陰性」と判定した。
【表4】

【0179】
これらの判定は表5に示した計算式にて実行される。この段階で、各2次元プロットの2つのプローブセットそれぞれについて、「陽性」 または 「陰性」の判定がなされる。
【表5】

【0180】
判定結果は、表5に従いR12-1, R12-2, R13-1, R13-3, R14-1, R14-4と表記した。次に、3つの2次元プロットそれぞれから結果が得られるプローブセット1について、総合判定を行った。これら3つの結果の中で、少なくとも1つが「陰性」と判定された場合、プローブセット1は、「陰性」と判定した。これは、プローブセット1以外のプローブセットが陽性であった場合、プローブ1において非特異的な弱信号が検出される性質を考慮したものであり、例えば、プローブセット3が陽性、且つプローブセット1が陰性であった場合、プローブセット1に生じる非特異的な弱信号とプローブセット2とを比較する2次元プロット(C1, C2)において、プローブセット1が陽性であった場合でも、これはプローブセット3陽性に伴って生じた非特異信号とみなし、プローブセット1は陰性と判定した(図30)。この総合判定は、以下の計算式にて実行した。
【0181】
IF(OR(R12-1="-",R13-1="-",R14-1="-"),"-",IF(AND(R12-1="+", R13-1="+", R14-1="+"),"+"))
この段階で、プローブセットそれぞれについて、「陽性」or「陰性」が決定した。次に、各プローブセットから、アミノ酸の判定を行った。Metに対応するプローブセットは1のみであるので、プローブセット1が陽性であった場合は、「Met陽性」、プローブセット2が陰性であった場合は、「Met陰性」と判定した。Ileに対応するプローブセットは、プローブセット2と3の2種類あり、これらの結果から、Ileの有無についての総合判定を行した。プローブセット2と3の少なくとも一方が陽性であった場合、「Ile陽性」と判定し、それ以外の場合は、「Ile陰性」と判定する。この総合判定は以下の計算式により実行した。
【0182】
IF(OR(R12-2="+",R12-3="+"),"Ile陽性",IF(AND(R12-2="-",R12-3="-")," Ile陰性"))
Valに対応するプローブセットは、4のみであるので、プローブセット4が陽性であった場合は、「Val陽性」、プローブセット4が陰性であった場合は、「Val陰性」と判定した。
【0183】
・人工合成遺伝子(鋳型)の検出結果
T1〜T10の人工合成遺伝子(鋳型)を検出し、(C1, C2), (C1, C3), (C1, C4)の2次元プロットを作製した(図30〜図40)。上記判定アルゴリズムに従い、各2次元プロットにおける各プローブセットの判定結果、プローブセット1の総合判定結果、アミノ酸の総合判定結果を表6Aおよび6Bに示した。
【表6A】

【0184】
【表6B】

【実施例2】
【0185】
3塩基置換の遺伝子多型の検出
3塩基置換の遺伝子多型を検出・判定するための方法を以下に示した。
【0186】
・3塩基置換の遺伝子多型判定用センサーの作製
表7に示す3種類のプローブDNAを準備した。これらのプローブDNAは、構成する塩基配列の中の1箇所において互いに異なる塩基(G, C, または T)を持っている。これら3種のプローブを別々の電極に固定し、これを3塩基置換の遺伝子多型判定用センサーとした。
【0187】
・核酸増幅(LAMP)反応溶液の調製
【表7】

【0188】
核酸増幅は、Loop-mediated isothermal amplification (LAMP法)で行った。LAMP反応用プライマーを表2に示した。これらのプライマーを用いてLAMP反応を行うことにより、表1に示したプローブDNA領域を含むLAMP産物が得られる。表3に示した組成にてLAMP反応溶液を調製した。
【0189】
・人工合成遺伝子(鋳型)の調製
以下の1000塩基がベクターpUC57に組み込まれた人工合成遺伝子を作製した。3塩基置換部位(以下の塩基配列の四角の枠)については、G, C, またはTをもつ3種類の人口合成遺伝子 (T21〜T23)を作製した。それぞれの人工合成遺伝子を1E+03copies/5uLとなるように段階希釈し、鋳型溶液とした。使用した鋳型を、本例末尾に表Hとして記載する。
【0190】
・核酸増幅(LAMP)反応
各鋳型溶液5uLをLAMP反応液に添加し、混合後、予め63℃に加温した恒温装置にセットし、60分間反応させ、その後、80℃で2分反応させた。
【0191】
・3塩基置換の遺伝子多型判定用センサーによる核酸増幅(LAMP)産物の検出
核酸増幅(LAMP)産物を15uL, 0.1% Tween20 を45uL, 20×SSC6uLを混合し、検出用ターゲットDNA溶液(計66uL)とした。検出用ターゲット溶液50uLを3塩基置換の遺伝子多型判定用センサー上に添加し、55℃で5分間反応させ、核酸増幅(LAMP)産物と3塩基置換の遺伝子多型判定用センサー上に固定された3種のプローブDNAとをハイブリダイズさせた。その後、検出用ターゲット溶液を2×SSC溶液で置換し、36℃で5分間反応させ洗浄を行った。次に、75uMのヘキスト33258溶液で置換し、25℃で1分間反応させた後、センサー(電極)に電位を挿引し、ヘキスト33258の酸化反応と伴に流れる電流のピーク電流値を検出した。これらの検査は、東芝のDNAチップ、及びGenelyzerを用いて行った(SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration, Vol. 1, No. 3, pp. 265-270, May 2008)。
【0192】
・センサーにより得られた数値と塩基の判定
プローブNo.21より得られた信号(I-21)からコントロール用プローブ(I-24)を差し引き、これを(I-24)で割った値をC21、プローブNo.22より得られた信号(I-22)からコントロール用プローブ(I-24)を差し引き、これを(I-24)で割った値をC22、同様にして、C23の値を算出した。C21をX、C22をYとし、2次元のXY平面にプロットし、(C21, C22), (C21, C23)の2つの2次元プロットを作成した。各2次元プロットにおいてプロットと原点を結んだ線とX軸とが形成する角度をA(21-22)とし、同様にA(21-23)を求めた。
【0193】
表8に示すように、2種の2次元プロットそれぞれについて、Xの値、Yの値、角度(大小2種)にそれぞれ判定基準を設け、各判定基準値とプロットを比較することにより、各2次元プロットにおける、X軸側プローブセット、Y軸側プローブセットが陽性または陰性となるかを判定した。
【表8】

【0194】
2次元プロット(C21, C22)における判定基準、X、Y、角度(大小2種)をそれぞれ、X(21-22). Y(21-22), A1(21-22), A2(21-22)とし、同様に、2次元プロット(C21, C23))についても、X(21-23). Y(21-23), A1(21-23), A2(21-23)を設定した。判定方法を以下に示す。各2次元プロットにおいて、C21の値が予め決めた基準値(X)よりも大きく、且つ角度Aが予め決めた基準値A2よりも小さい場合、プローブ21は「陽性」と判定し、それ以外は「陰性」と判定した。一方、各2次元プロットにおいて、C22, C23の値が予め決めた基準値(Y)よりも大きく、且つ角度Aが予め決めた基準値(A1)よりも大きい場合、プローブセット22, 23は、「陽性」と判定し、それ以外は「陰性」と判定した。これらの判定は表9に示した計算式にて実行される。
【表9】

【0195】
この段階で、各2次元プロットの2つのプローブセットそれぞれについて、「陽性」 または 「陰性」の判定がなされる。判定結果は、表9に従いR2122-21, R2122-22, R2123-21, R2123-23と表記した。次に、2つの2次元プロットそれぞれから結果が得られるプローブ21について、総合判定を行った。これら2つの結果の中で、少なくとも1つが「陰性」と判定された場合、プローブ21は、「陰性」と判定した。これは、プローブ21以外のプローブセットが陽性であった場合、プローブ21において非特異的な弱信号が検出される性質を考慮したものであり、例えば、プローブ23が陽性、且つプローブ21が陰性であった場合、プローブセット21に生じる非特異的な弱信号とプローブ22とを比較する2次元プロット(C21, C22)において、プローブセット21が陽性と判定された場合でも、これはプローブ23陽性に伴って生じた非特異信号とみなし、プローブ21は陰性と判定した。この総合判定は、以下の計算式にて実行した。
【0196】
IF(OR(R2122-21="-",R2123-21="-"),"-",IF(AND(R2122-21="+", R2123-21="+"),"+"))
この計算式により、各プローブの陽性、陰性、つまり、3塩基置換部位の塩基を判定した。
【0197】
・人工合成遺伝子(鋳型)の検出結果
T21〜T23の人工合成遺伝子(鋳型)を検出し、(C21, C22), (C21, C23)の 2次元プロットを作成し、上記アルゴリズムにより塩基の判定を行った。その結果、T21はG、T22はC、T23はTと判定された。
【表H】

【0198】
これらの結果により、実施形態の塩基配列判定方法に複数の選択される候補を有する対象であっても、塩基配列の判定を行うことが可能であり、また、より正確に塩基配列の判定を行うことが可能である。従って、この方法を実行するための塩基配列判定システムおよび塩基配列判定用プログラムも同様に塩基配列の判定を行うことが可能であり、また、より正確に塩基配列の判定を行うことが可能である。
【0199】
例えば、塩基配列決定方法は、以下の表Iのフローチャートにより行うことが可能である。
【表I】

【0200】
本実施形態により、3種以上の塩基配列から、検査対象の塩基配列を判定するための塩基配列判定方法、塩基配列判定システム及び塩基配列判定プログラムを提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第n検出用区画と、
前記第1〜第n検出用区画に対応してそれぞれ固定され、前記第1〜第n検出用区間で互いに塩基配列が異なる第1〜第nプローブと、
前記第1〜第n検出用区画に対応して配置され、前記第1〜第nプローブの何れとも塩基配列が異なるコントロールDNAが固定されたコントロール区画と、
を備えるチップに、サンプル核酸を含む薬液を供給する段階と(ここで、前記nは3以上の整数である)、
前記第1〜第n検出用電極を介してそれぞれ第1〜第n検出信号を、前記コントロール電極を介してコントロール信号を、それぞれ取得する段階と、
前記第1検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値をX座標とする段階と、
前記第2〜第n検出信号から、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号をそれぞれ減算し、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号でそれぞれ除算した値を、それぞれ第1〜第mY座標とする段階と(ここで、mはnから1を減算した整数である)、
前記第X座標と、それぞれの前記第1〜第mY座標とについて、原点から前記X座標およびそれぞれの第1Y〜第mY座標とが定めるそれぞれの点までのそれぞれの直線が正のX軸となす第1〜第m角度をそれぞれ算出する段階と、
前記第1〜第m角度それぞれを、前記第1〜第m角度それぞれに対してそれぞれ予め定められた第1〜第m角度判定基準とそれぞれ比較する段階と、
を含み、
前記第1〜第m角度それぞれと、前記第1〜第m角度に対応する前記第1〜第m角度判定基準それぞれとの大小関係により、それぞれ第1〜第mの判定として、前記第2〜第nプローブそれぞれと、前記第1プローブとを1対として、第1プローブと、それぞれの第2〜第nプローブとのm個の対について陽性または陰性を判定することと、
前記m個の対についての第1〜第mの判定においてm個の判定結果が生じる第1プローブについて、予め定めた陽性と陰性の優先順位に従い、更に陽性または陰性を判定することと、
前記サンプル核酸について、第1〜第nプローブそれぞれの陽性または陰性を判定することと、
を特徴とする塩基配列判定方法。
【請求項2】
前記m個の対それぞれにおける、前記X座標及び前記第1Y〜第mY座標を、前記m個の対それぞれにおける、前記X座標及び前記第1Y〜第mY座標それぞれに対して予め定めた第1X〜第mX座標判定基準及び第1Y〜第mY座標判定基準とそれぞれ比較する段階と、
前記m個の対それぞれにおける、前記X座標及び前記第1Y〜第mY座標のそれぞれが、前記判定基準よりも小さい場合には、その座標に該当する前記第1〜第nプローブ陰性であると判定することと、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1〜m角度判定基準、第1X〜第mX座標判定基準及び第1Y〜第mY座標判定基準が、複数の既知の塩基配列のサンプル核酸の測定データの平均値と標準偏差を用いて定められることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1〜第m角度判定基準それぞれについて、X座標に該当するプローブの陽性または陰性を判定するための判定基準と、Y座標に該当するプローブの陽性または陰性を判定するための判定基準とが、それぞれ独立に設定されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1X〜第mX座標判定基準と前記第1Y〜第mY座標判定基準が、それぞれ独立に設定されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1〜第n検出用区画と;
前記第1〜第n検出用区画に対応してそれぞれ固定され、前記第1〜第n検出用区画間で互いに塩基配列が異なる第1〜第nプローブと;
前記第1〜第n検出用区画に対応して配置され、前記第1〜第nプローブの何れとも塩基配列が異なるコントロールDNAが固定されたコントロール区画と;
を備えるチップを装着して使用され、
前記第1〜第n検出用区画を介してそれぞれ第1〜第n検出信号を、前記コントロール電極を介してコントロール信号を、それぞれ取得する測定系と;
前記チップに、薬液を送液する送液系と;
前記測定系及び送液系を制御する制御機構と;
前記第1検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値をX座標とし、
前記第2〜第n検出信号から、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号をそれぞれ減算し、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号でそれぞれ除算した値を、それぞれ第1〜第mY座標とし(ここで、mはnから1を減算した整数である)、
前記第X座標と、それぞれの前記第1〜第mY座標とについて、原点から前記X座標およびそれぞれの第1Y〜第mY座標とが定めるそれぞれの点までのそれぞれの直線が正のX軸となす第1〜第m角度をそれぞれ算出し、前記第1〜第m角度それぞれを、前記第1〜第m角度それぞれに対してそれぞれ予め定められた第1〜第m角度判定基準とそれぞれ比較し、前記第1〜第m角度それぞれと、前記第1〜第m角度に対応する前記第1〜第m角度判定基準それぞれとの大小関係により、それぞれ第1〜第mの判定として、前記第2〜第nプローブそれぞれと、前記第1プローブとを1対として、第1プローブとそれぞれの第2〜第nプローブとのm個の対について陽性または陰性を判定し、
前記m個の対についての第1〜第mの判定においてm個の判定結果が生じる第1プローブについて、予め定めた陽性と陰性の優先順位に従い、更に陽性または陰性を判定し、
前記サンプル核酸について、第1〜第nプローブそれぞれの陽性または陰性を判定するように構成された型判定モジュールを含むコンピュータと;
を備え、前記第1X〜第mX座標判定基準と前記第1Y〜第mY座標判定基準が、それぞれ独立に設定されることを特徴とする塩基配列判定システム。
【請求項7】
前記コンピュータが、
前記第1〜第n検出信号及び前記コントロール信号をそれぞれ電流-電圧特性として取得し、当該電流-電圧特性のベースラインの傾きをそれぞれ求め、それぞれのベースラインの傾きにより、それぞれの電流-電圧特性の正常または異常を判断し、異常な検出信号を演算対象外とするように構成された電流波形判定モジュールと、
前記第1〜第n検出信号及び前記コントロール信号に対応するそれぞれの電流-電圧特性から、それぞれのバックグラウンド電流を差し引いて、それぞれの真の検出信号をピーク電流値として取得するように構成されたピーク電流検出モジュールと、
前記ピーク電流検出モジュールが算出した真のピーク電流値のデータ群中から、正常グループを抽出するように構成されたグループ正常判定モジュールと、
抽出された正常データから真のピーク電流値のデータ群を用いて、対象とする核酸塩基が存在するか否かを判定する有無判定モジュールまたはサンプル核酸の一塩基多型を同定するように構成された型判定モジュールと、
を更に備えることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
第1〜第n検出用電極と、
前記第1〜第n検出用電極に対応してそれぞれ固定され、前記第1〜第n検出用電極間で互いに塩基配列が異なる各々複数の第1〜第nプローブと、
前記第1〜第n検出用電極に対応して配置され、前記第1〜第nプローブの何れとも塩基配列が異なるコントロールDNAが固定された複数のコントロール電極と、
を備えるチップに、サンプル核酸を含む薬液が供給された後に(ここで、前記nは3以上の整数である)、
前記第1〜第n検出用電極を介してそれぞれ第1〜第n検出信号を、前記コントロール電極を介してコントロール信号を、それぞれ取得する手順と、
前記第1検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値をX座標とし、前記第2〜第n検出信号から、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号をそれぞれ減算し、前記第2〜第n検出信号それぞれに対応する前記コントロール信号でそれぞれ除算した値を、それぞれ第1〜第mY座標とし(ここで、mはnから1を減算した整数である)、更に、前記第X座標と、それぞれの前記第1〜第mY座標とについて、原点から前記X座標およびそれぞれの第1Y〜第mY座標とが定めるそれぞれの点までのそれぞれの直線が正のX軸となす第1〜第m角度をそれぞれ算出する手順と、
前記第1〜第m角度それぞれを、前記第1〜第m角度それぞれに対してそれぞれ予め定められた第1〜第m角度判定基準とそれぞれ比較する手順と、
を含む処理をコンピュータに実行させ、
前記第1〜第m角度判定基準が、それぞれ独立に設定され、これにより前記コンピュータに、第1〜第nプローブそれぞれの陽性または陰性を判断させ、更に、m個の判定結果が生じる第1プローブについて、予め定めた陽性と陰性の優先順位に従い、第1プローブの陽性または陰性を判断させるための塩基配列判定用プログラム。
【請求項9】
第1プローブが固定された第1検出用電極と、
前記第1プローブとは塩基配列が異なる第2プローブが固定された第2検出用電極と、
前記第1プローブ及び第2プローブとは塩基配列が異なる第3プローブが固定された第3検出用電極と、
前記複数の第1検出用電極及び第2検出用電極及び第3検出用電極に対応して配置され、前記第1プローブ及び前記第2プローブ及び前記第3プローブの何れとも塩基配列が異なるコントロールDNAがそれぞれ固定されたコントロール電極と
を備えるチップに、サンプル核酸を含む薬液を供給する段階と、
前記複数の第1検出用電極を介して第1検出信号を、前記複数の第2検出用電極を介して第2検出信号を、前記複数の第3検出用電極を介して第3検出信号を、前記コントロール電極を介してコントロール信号を、それぞれ取得する段階と、
前記第1検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値をX座標とする段階と、
前記第2検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値を第1Y座標とする段階と、
前記第3検出信号から前記コントロール信号を減算し、前記コントロール信号で除算した値を第2Y座標とする段階と、
前記第1検出信号と前記第2検出信号について、原点から前記X座標および前記第1Y座標とが定める点までの直線が正のX軸となす第1角度を算出する段階と、
前記第1検出信号と前記第3検出信号について、原点から前記X座標および前記第2Y座標とが定める点までの直線が正のX軸となす第2角度を算出する段階と、
前記第1角度及び前記第2角度を、前記第1角度及び前記第2角度それぞれに対して予め定めた第1角度判定基準及び第2角度判定基準と比較する段階と、
を含み、第1の判定として、前記第1角度と前記第1角度判定基準との大小関係により、第1プローブ及び第2プローブそれぞれについて陽性または陰性を、第2判定として、前記第2角度と前記第2角度判定基準との大小関係により、第1プローブ及び第3プローブそれぞれについて陽性または陰性を判定する段階と、
前記第1判定および第2判定において2パターンの判定結果が生じる第1プローブについて、予め定めた陽性と陰性の優先順位に従い、更に陽性または陰性を判定する段階と、
を含み、前記サンプル核酸について、第1プローブ、第2プローブ及び第3プローブそれぞれの陽性または陰性を判定する段階と、
を特徴とする塩基配列判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2012−202899(P2012−202899A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69384(P2011−69384)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】