説明

塩素イオンを含有する溶液中でヒスチジン銀錯体の殺菌活性を発揮させる方法、液状添加剤組成物および液状抗菌性組成物

【課題】塩素イオンを含有する液中でもヒスチジン銀錯体の殺菌活性を維持する。
【解決手段】ε−ポリリジン、またはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマーを添加することを特徴とする、塩素イオン含有液中でのヒスチジン銀錯体の殺菌活性の維持方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素イオンの存在下においてさえも広範な微生物に対して優れた抗菌性を有するヒスチジン銀錯体を含有する液状抗菌性組成物およびその調製方法に関し、食品・化粧品・医薬品の製造工程、サニテーション、工業用製品など多くの分野で有用な液状抗菌性組成物およびその調製方法に関する。また、本発明は、塩素イオン含有液中でのヒスチジン銀錯体の殺菌活性の維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
日本は高温多湿であるので微生物が増殖し易く、各種工業製品や工業用水には微生物による被害を防止するため、ベンゾイミダゾール系、ニトリル系、イソチアゾリン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパルギル系、べンゾアゾール系、フェノール系、ピリジン系、ジフェニルエーテル系、クロルヘキシジン系等の抗菌剤が使用されている。しかし、一般に抗菌剤の効力と安全性は相反し、効力が強い抗菌剤は人体に対して有害であることが多い。このため、抗菌剤の使用に際しては、人体への影響を考慮する必要がある。
【0003】
銀は効力が強く、また安全であることが知られている。しかし、銀イオンはカルボン酸や塩素イオンと不溶性の塩を形成することから、銀を液状の殺菌剤として使用することは困難である。この問題を解決する方法として、銀をイミダゾールおよびその誘導体、ヒスチジン、アスパラギン酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、5−オキソ−2−テトラフランカルボン酸との錯体とすることが提案されている(特許文献1〜5)。特に、ヒスチジン又は2−ピロリドン−5−カルボン酸が銀イオンと配位してなる銀錯体は、水溶性で安定であることが報告された。しかし、ヒスチジン銀錯体は、水に溶かした状態では、長期間安定に存在できず、激しい変色を起こすという問題があった。この問題を解決する方法として、ヒスチジン/銀を3以上にすること、ヒドロキシカルボン酸類および多価カルボン酸類を添加する方法が提案されている(特許文献6および7)。しかし、前者の場合には高価なヒスチジンを大量に使用する必要がある。また、後者の場合には水道水等の塩素イオンを含有する液に添加すると、塩素イオンと不溶性の塩を形成して効力を失うことが問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO95/7913号報
【特許文献2】特開2000−256365号報
【特許文献3】特開2001−335405号報
【特許文献4】特開2003−521472号報
【特許文献5】特開2005−145923号報
【特許文献6】特開2007−176985号報
【特許文献7】国際公開2009/000337号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塩素イオンを含有する液中でもヒスチジン銀錯体の殺菌活性を維持する方法、および、液状添加剤組成物、液状抗菌剤組成物およびその調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、水溶性含窒素ポリマーを添加することによってヒスチジン銀錯体は安定化し、塩素イオンとの反応を防止できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものであり、以下の態様のヒスチジン銀錯体の殺菌活性の維持方法、液状添加剤組成物、液状抗菌剤組成物およびその調製方法を提供するものである。
項1. ε−ポリリジン、またはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマーを添加することを特徴とする、塩素イオン含有液中でのヒスチジン銀錯体の殺菌活性の維持方法。
項2. ε−ポリリジン、またはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマーと溶媒を含有することを特徴とする、塩素イオン含有液中でヒスチジン銀錯体の活性を維持するための液状添加剤組成物。
項3. ヒスチジン銀錯体とε−ポリリジンまたはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマーとを含有する液状抗菌剤組成物。
項4. (a)酸化銀、(b)ヒスチジン、(c)ε−ポリリジン、またはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマー、(d)溶媒を混合することを特徴とする、液状抗菌性組成物の調製方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明において、ヒスチジン銀錯体は、3%塩化ナトリウム溶液中においてさえも塩素イオンと不溶性塩を形成せず、殺菌効果を発揮する。本発明の好ましい実施形態においては、工業製品等に適宜添加して、または本組成物を直接対象物に接触させて、使用する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ヒスチジン銀錯体及びε―ポリリジンの相乗作用による最少発育阻止濃度(MIC)の低下。実施例7(●):ヒスチジン銀錯体及びε−ポリリジン、比較例2(▲):ヒスチジン銀錯体、比較例3(■):ε−ポリリジン
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において用いられる水溶性含窒素ポリマーは、ε−ポリリジンを含み、ε−ポリリジンに加えてさらにポリエチレンイミンを含んでいてもよい。これら以外にさらに、ペプチド(例えば、ポリアルギニン、ポリグルタミン酸、ポリオルニチン、プロタミン、ペプトンやポリペプトン等)、ポリビニルピロリドン、四級化ポリビニルピロリドン、ポレビニルアミン、ポリアリルアミン等を含んでいてもよい。
【0010】
塩素イオンを含有する液体中でヒスチジン銀錯体の殺菌活性を維持するためには、これらの水溶性含窒素ポリマーを、好ましくは適当な溶媒に溶解した液状添加剤組成物としてヒスチジン銀錯体に個別に添加しても良いし、これらを混合した液状抗菌剤組成物を添加しても良い。
【0011】
本発明において用いられる水溶性含窒素ポリマーのヒスチジン銀錯体に対する比は、ε−ポリリジンを用いる場合には、ヒスチジン銀錯体1重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.25〜10重量部、更に好ましくは1〜5重量部である。ε−ポリリジン濃度をこれ以下の比にした場合には、ヒスチジン銀錯体と塩素イオンの反応を防止することが出来ず、ε―ポリリジンの濃度を高くするとε−ポリリジンの抗菌効果のみが現れるようになる。ポリエチレンイミンをさらに加える場合には、ヒスチジン銀錯体1重量部に対し1〜500重量部、好ましくは5〜500重量部、好ましくは20〜200重量部、さらに好ましくは50〜100重量部である。
【0012】
本発明における液状添加剤組成物は、ε−ポリリジン単独あるいはε−ポリリジンとともにポリエチレンイミン等の他の水溶性含窒素ポリマーを含有することを特徴とする。対象が水道水等の比較的塩素濃度が低い水溶液の場合には、ε―ポリリジンの粉末を添加すれば良く、本発明の液状添加剤組成物は生理食塩液及び海水等の塩素イオンを高濃度に含有する液体に適用する。液状添加剤組成物中のε−ポリリジンに対する水溶性含窒素ポリマーの比は、水溶性含窒素ポリマーの種類によって異なるので限定できないが、代表例であるポリエチレンイミンの場合には、ε−ポリリジン1重量部に対し0.25〜5000重量部、好ましくは2〜800重量部、更に好ましくは10〜100重量部である。また、液状添加剤組成物のε−ポリリジンおよびポリエチレンイミンの濃度は、ε−ポリリジンの場合には0.025〜5重量%、好ましくは0.06〜2.5重量%、更に好ましくは0.25〜1.2重量%、ポリエチレンイミンの場合には、1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。液状添加剤組成物には、水溶性含窒素ポリマーの他に溶媒を添加することができる。溶媒としては、水、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、グリセンモノエチルエーテル、グリセリンモノプロピルエーテル、グリセンモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジグリセリンモノメチルエーテル、ジグリセリンモノエチルエーテル、ジグリセリンモノプロピルエーテル、ジグリセリンモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられ、水が好ましい。
【0013】
本発明における液状抗菌剤組成物には、上記の比でヒスチジン銀錯体及びε−ポリリジン、またはヒスチジン銀錯体、ε―ポリリジン及びポリエチレンイミンが配合され、前者は水道水等の比較的塩素濃度が低い液体に、後者は生理食液及び海水等の塩素を高濃度に含有する液体に適用される。何れの場合にも、ε−ポリリジンのヒスチジン銀錯体に対する比は重量で、0.1〜20、好ましくは0.25〜10、更に好ましくは1〜5である。また、添加量は、0.1〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%、更に好ましくは0.5〜2重量%である。液状抗菌剤組成物には、ヒスチジン銀錯体、水溶性含窒素ポリマーとともに溶媒が含まれる。液状抗菌剤組成物に含まれる溶媒としては、水、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、グリセンモノエチルエーテル、グリセリンモノプロピルエーテル、グリセンモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジグリセリンモノメチルエーテル、ジグリセリンモノエチルエーテル、ジグリセリンモノプロピルエーテル、ジグリセリンモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられ、水が好ましい。
【0014】
塩素濃度が高い液体を対象にした液状抗菌剤組成物に添加するポリエチレンイミンのヒスチジン銀錯体に対する比は重量で、0.25〜5000、好ましくは2〜800、更に好ましくは10〜100である。また、液状添加剤組成物のポリエチレンイミンの添加量は、1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、更に好ましくは10〜20重量%である。
【0015】
本発明の液状添加剤組成物及び液状抗菌性組成物のpHは特に限定されないが、6〜8の中性であることが好ましい。特に、ポリエチレンイミン等のポリカチオンを用いる場合pH調整剤としては、カルボン酸が好ましく、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、シュウ酸、マロン酸、イタコン酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸等が挙げられる。
【0016】
本発明の液状抗菌剤組成物は、ヒスチジン銀錯体溶液及びε−ポリリジン、またはヒスチジン銀錯体、ε−ポリリジンおよび水溶性含窒素ポリマー(特にポリエチレンイミンのカルボン酸)水溶液を混合することによって、またはヒスチジン銀錯体を調製する際にε−ポリリジン、またはε−ポリリジン及び水溶性含窒素ポリマー(例えばポリエチレンイミンのカルボン酸塩)を添加することによって調製することが出来る。
【0017】
本発明の液状抗菌性組成物の使用用途及び態様は、微生物に対する抗菌作用を目的とするものであれば特に限定されないが、例えば、塗料、インキ、水溶性切削油剤等の工業製品、食品・化粧品・医薬品の製造工程用洗浄料、食器用殺菌洗浄用、口腔用洗浄料、手指用洗浄料、抗菌紙および抗菌繊維、温泉施設や発電所冷却水のスライムコントロール、製紙工程のスライムコントロール剤等に配合して使用することが挙げられる。
【0018】
本発明の液状抗菌性組成物には、適宜、界面活性剤、保湿剤、増粘剤等を添加することができる。本発明に用いられる界面活性剤は特に限定されないが、陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸(例えば、ラウリル酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等)、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム等)、リン酸エステル塩(例えば、POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等)、スルホコハク酸塩(例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等)、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等)、N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等)、硫酸化油(例えば、ロート油等)、POE−アルキルエーテルカルボン酸、POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸、α―オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0019】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等)、グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノスレアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ひまし油誘導体、グリセリンアルキレート、POE−ソルビタンエステル類(例えば、POE−ソルビットラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート等)、POE−脂肪酸エステル類、POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル等)、プルロニック類、POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−モノセチルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−グリセリンエーテル等)、テトロニック類、POE-ひまし油誘導体(例えば、POE−ひまし油、POE−硬化ひまし油、POE−硬化ひまし油モノイソステアレート等)、アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等)、POE−プロピレングリコールエステル、POE−アルキルアミン、POE−脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0020】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等)、アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等)、塩化ジステアリルジメチルジアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルモルホニウム塩、POE−アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミノアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンサルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0021】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等)、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0022】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸四ナトリウム塩、エテト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、アスコルビン酸、グルコン酸、クエン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、等を挙げることができる。
【0023】
増粘剤としては、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、ポリアクリル酸ナトリウム、グアーガム、タマリントガム、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ラポナイト等が挙げられる。
【0024】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール等が挙げられる。
【0025】
本発明の液状抗菌性組成物は、以上に列挙した添加剤の1種以上と適宜併用することで、各目的により適した殺菌剤とすることが出来る。
【実施例】
【0026】
<ヒスチジン銀錯水溶液の調製>
酸化銀1.07g、L−ヒスチジン2.88g、サンキーパーNo.381(三栄源株式会社製、ε―ポリリジン50重量%含有)10g、水86.05gを適切な容器に入れ、室温で30分以上撹拌し、ヒスチジン銀錯体2.44重量%を含有する水溶液を得た。
【0027】
<ε―ポリリジンを含有するヒスチジン銀錯体の調製>
酸化銀1.07g、L−ヒスチジン2.88g、サンキーパーNo.381(三栄源株式会社製、ε―ポリリジン50重量%含有)10g、水86.05gを適切な容器に入れ、室温で30分以上撹拌し、本発明のヒスチジン銀錯体2.44重量%及びε―ポリリジン5重量%を含有する水溶液を得た。
【0028】
<ε―ポリリジンとポリエチレンイミンを含有するヒスチジン銀錯体溶液の調製>
50重量%ポリエチレンイミン溶液のルガルバンG35(BASFジャパン株式会社)40g、クエン酸18g、酸化銀0.107g、L−ヒスチジン0.288g、サンキーパーNo.381(50重量%ε−ポリリジン品:三栄源株式会社)0.5g及び水41.105gを適切な容器に入れ、室温で30分以上撹拌し、ヒスチジン銀錯体0.244重量%、ポリエチレンイミン20重量%、ε−ポリリジン0.5重量%を含有する水溶液を得た。
【0029】
<ポリエチレンイミンを含有するヒスチジン銀錯体水溶液の調製>
50重量%ポリエチレンイミン溶液のルガルバンG35(BASFジャパン株式会社)40g、クエン酸18g、酸化銀0.107g、L−ヒスチジン0.288g、及び水41.605gを適切な容器に入れ、室温で30分以上撹拌し、ヒスチジン銀錯体0.244重量%、ポリエチレンイミン20重量%、ε−ポリリジン0.5重量%を含有する水溶液を得た。
【0030】
実施例1〜6、比較例1
表1に示すように、水道水、生理食塩液、または3%塩化ナトリウム溶液に、ヒスチジン銀錯体、ポリエチレンイミン、30%ポリビニルピロリドン溶液(ピッツコール K−17L:第一工業製薬株式会社)、50%ε−ポリリジン(サンキーパーNo.381:三栄源株式会社製)またはペプトン(BASCO)を添加した。
【0031】
表1に示すように、ε−ポリリジン、ポリエチレンイミン等の水溶性含窒素ポリマーを添加したことによって、ヒスチジン銀錯体の塩素イオンとの反応は抑制された。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例7、比較例2及び3
ε−ポリリジン含有ヒスチジン銀錯体水溶液(実施例7)、ヒスチジン銀錯体水溶液(比較例2)またはサンキーパーNo.381(50重量%ε−ポリリジン品:三栄源株式会社製;比較例3)を普通ブイヨン培地に添加し、ε−ポリリジン50ppmとヒスチジン銀錯体24ppmを含有する培地、ヒスチジン銀錯体120ppmを含有する培地、およびε−ポリリジン500ppmを含有する培地を調製した。これらの培地を、同量の薬剤無添加の培地を混合することにより、2倍希釈列の培地を調整した。
【0034】
Esherishia coli IFO 3301、Staphylococcus aureus JCM 20624、またはCandida albicans JCM 1542を普通ブイヨン培地で一夜培養し、その培養液を滅菌生理食塩液で希釈し、菌数が10〜10/mlとなるように、培地に接種した。また、Aspergillus nger JCM 16264の胞子を0.01%ツイーン80含有の滅菌生理食塩液に懸濁し、600nmの吸光度を0.1に調整した。胞子懸濁液20μLを薬剤添加培地1mlに接種した。
【0035】
これらの培地を30℃にて5日間静置培養し、目視により菌の増殖を観察し、増殖が認められなかった最低濃度を最少発育阻止濃度(MIC)とした。
【0036】

図1に示すように、ヒスチジン銀錯体とε−ポリリジンを添加ことによる相乗効果が認められ、大腸菌(E. coli IFO 3301)、黄色ぶどう球菌(S. aureus JCM 20624)、カンジダ菌(C. albicans JCM 1542)及び黒こうじ黴(A. niger JCM16264)に対するMICは、ヒスチジン銀錯体またはε―ポリリジンを単独で添加した場合よりも大幅に低下した。
【0037】
実施例8及び9、比較例4〜6
水道水にε―ポリリジン含有ヒスチジン銀錯体水溶液を銀錯体濃度が24ppm(ε−ポリリジン濃度:50ppm)となるように、ヒスチジン銀錯体水溶液を24ppmまたは48ppmとなるように、サンキーパーNo.381をε―ポリリジンが50ppmとなるように添加した。これらの溶液を同量の水道水と順次混合することにより、2倍希釈系列の水溶液を調整した。
【0038】
また、生理食塩液に、ε―ポリリジン及びポリエチレンイミン含有ヒスチジン銀錯体水溶液、またはポリエチレンイミン含有ヒスチジン銀錯体水溶液を、ヒスチジン銀錯体の濃度が24ppmとなるように添加した。これらの液を同量の生理食塩と順次混合することにより、2倍希釈列の水溶液を調整した。
【0039】
これらの溶液に、前培養したEsherishia coli IFO 3301を、菌数が10〜10/mlとなるように接種した。1時間後、液1mlを採取し、同量の2倍濃度SCDLPブイヨン培地と混合した。混合液をトリプトソイ寒天培地に接種して30℃にて24時間培養し、コロニーが認められなかった最低濃度を、最少殺菌濃度とした。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ε−ポリリジン、またはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマーを添加することを特徴とする、塩素イオン含有液中でのヒスチジン銀錯体の殺菌活性の維持方法。
【請求項2】
ε−ポリリジン、またはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマーと溶媒を含有することを特徴とする、塩素イオン含有液中でヒスチジン銀錯体の活性を維持するための液状添加剤組成物。
【請求項3】
ヒスチジン銀錯体とε−ポリリジンまたはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマーとを含有する液状抗菌剤組成物。
【請求項4】
(a)酸化銀、(b)ヒスチジン、(c)ε−ポリリジン、またはポリエチレンイミンとε−ポリリジンの混合物のいずれかである水溶性含窒素ポリマー、(d)溶媒を混合することを特徴とする、液状抗菌性組成物の調製方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−224571(P2012−224571A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92669(P2011−92669)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】