説明

塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法

【課題】プロピレン含有重合体を塩素系溶剤と水との混合液中で塩素化する工程を有する塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法であって、従来よりも効率的に目的物を得ることができる改善された製造方法を提供する。
【解決手段】塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法であって、
(1)ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種のプロピレン含有重合体をクロロホルム及び水を含む混合液に分散させて分散液を得る工程1、
(2)密閉下において、前記分散液を130℃以下の温度で加温しながら、前記分散液に塩素ガスを導入することにより前記プロピレン含有重合体を塩素化する工程2、
(3)工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加・静置した後、クロロホルム含有相を分取する工程3、並びに
(4)前記クロロホルム含有相からクロロホルムを留去することにより、塩素化されたプロピレン含有重合体を得る工程4、
を有することを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法に関する。塩素化されたプロピレン含有重合体としては、塩素化ポリプロピレン及び塩素化プロピレン−α−オレフィン共重合体が代表的であり、これらはポリプロピレン基材に対する接着付与成分(バインダー成分)として塗料、インキ、接着剤等の用途で幅広く利用されている。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレン含有重合体(例えば、ポリプロピレン)の塩素化方法としては、1)ポリプロピレンを固相で塩素化する方法、2)ポリプロピレンを水中に懸濁させて塩素化する方法、3)ポリプロピレンを塩素系溶剤(例えば、クロロホルム)のみに溶解して塩素化する方法、及び4)ポリプロピレンを塩素系溶剤(例えば、クロロホルム)と水との混合液に分散・溶解させて塩素化する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、上記従来技術の塩素化方法には、次のような問題がある。
【0004】
上記1)、2)に挙げた固相又は水中懸濁における塩素化方法は、ポリプロピレンの表層のみが塩素化されるため塩素含有量を多く確保することができない。また、塩素化部位に偏りが生じ易く、ポリプロピレン表面に結晶性の高い部分が残存すると、塩素化の後においても溶剤への溶解性が不十分となり易い。
【0005】
上記3)に挙げた塩素系溶剤のみを用いた塩素化方法は、塩素含有量は多く確保し易いが、塩素化時にラジカル発生剤(例えば、紫外線、有機過酸化物、アゾ系化合物等)を用いる必要があるため、これに伴う装置、温度管理、圧力管理等が不可欠となる。具体的には、紫外線照射には専用装置が必要となる。また、有機過酸化物やアゾ系化合物を用いる場合には半減期温度を考慮した温度管理が必要であり、塩素ガスが熱分解するまで連続的又は間欠的に添加することが必要である。更に、副生する塩化水素ガスを系外に放出する必要がある点で圧力管理が必要である上、塩素が塩素水素ガスとして系外に放出される点で塩素利用率が低くならざるを得ない。
【0006】
上記4)に挙げた塩素系溶剤と水との混合液を用いた塩素化は、塩素含有量を多く確保し易いが、塩素化反応の後に塩酸相と塩素系溶剤相に相分離する際、塩素系溶剤中の樹脂の極性が高く、相分離に多くの時間を要するという問題がある。この塩素系溶剤と水との混合液を用いた塩素化の例は、例えば、特許文献1及び2に記載されている。
【0007】
上記1)〜4)の塩素化方法のうち、塩素化部位に偏りが生じ難く、且つ塩素含有量を多く確保し易い点では上記4)の塩素化方法が好ましい。よって、上記4)の塩素化方法において、塩素化反応の後に塩酸相と塩素系溶剤相とを短時間で相分離し、塩素化されたプロピレン含有重合体を効率的に製造する方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭37−15934号公報
【特許文献2】特開平6−9718号公報(特に[0015]段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、プロピレン含有重合体を塩素系溶剤と水との混合液中で塩素化する工程を有する塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法であって、従来よりも効率的に目的物を得ることができる改善された製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の工程を有する製造方法を採用する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法に関する。
1.塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法であって、
(1)ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種のプロピレン含有重合体をクロロホルム及び水を含む混合液に分散させて分散液を得る工程1、
(2)密閉下において、前記分散液を130℃以下の温度で加温しながら、前記分散液に塩素ガスを導入することにより前記プロピレン含有重合体を塩素化する工程2、
(3)工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加・静置した後、クロロホルム含有相を分取する工程3、並びに
(4)前記クロロホルム含有相からクロロホルムを留去することにより、塩素化されたプロピレン含有重合体を得る工程4、
を有することを特徴とする製造方法。
2.工程1で用いる前記プロピレン含有重合体は、アイソタクチック重合体である、上記項1に記載の製造方法。
3.工程1で用いる前記プロピレン含有重合体は、メタロセン系触媒を用いて合成される、上記項1又は2に記載の製造方法。
4.前記塩素化されたプロピレン含有重合体の塩素含有率は、20〜40重量%である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法
5.工程2における塩素化は、ラジカル発生剤を用いずに行う、上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6.前記分散液中の前記プロピレン含有重合体とクロロホルムと水との重量比は、1:8〜20:0.8〜2である、上記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7.工程2において、塩素ガスの導入に先立って酸素ガスを導入する、上記項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0012】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
本発明の塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法は、
(1)ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種のプロピレン含有重合体をクロロホルム及び水を含む混合液に分散させて分散液を得る工程1、
(2)密閉下において、前記分散液を130℃以下の温度で加温しながら、前記分散液に塩素ガスを導入することにより前記プロピレン含有重合体を塩素化する工程2、
(3)工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加・静置した後、クロロホルム含有相を分取する工程3、並びに
(4)前記クロロホルム含有相からクロロホルムを留去することにより、塩素化されたプロピレン含有重合体を得る工程4を有することを特徴とする。
【0014】
上記特徴を有する本発明の製造方法は、特に工程3において、工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加することにより、反応液を塩酸含有相とクロロホルム含有相とに短時間で相分離でき、その結果、目的物である塩素化されたプロピレン含有重合体を効率的に製造することができる。
【0015】
以下、本発明の製造方法を工程毎に分けて説明する。
≪工程1≫
工程1は、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種のプロピレン含有重合体をクロロホルム及び水を含む混合液に分散させて分散液を得る。
【0016】
本発明では、原料のプロピレン含有重合体としては、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種を用いる。
【0017】
プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンを共重合したものである。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種又は数種用いることができる。これらのα−オレフィンの中では、エチレン、1−ブテンが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン成分とα−オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0018】
ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体は、いずれもアイソタクチック重合体であることが好ましい。アイソタクチック重合体は比較的高い結晶化度を示し、塩素化することにより結晶性をコントロールすることができる。例えば、プロピレン含有重合体に様々な有機溶剤への溶解性を付与する場合には、塩素含有量を高めることにより低結晶化することができる。他方、プロピレン含有重合体の塗膜に凝集力を付与する場合には、有機溶剤への溶解性は低下するが、塩素含有率を低く設定することにより高結晶性を維持することができる。また、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体は、メタロセン系触媒を用いて合成されたものが、均一な結晶性を有しており、溶剤に対する溶解性も優れている点で好ましい。なお、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体は、市販品を使用することもできる。
【0019】
本発明では、上記プロピレン含有重合体をクロロホルム及び水を含む混合液に分散して分散液を得る。水の主な使用目的は、工程2の塩素化の際に副生する塩化水素を吸収すること及び目的物の製造工程を簡略化することであり、水の使用量は副生する塩化水素の量に応じて設定すれば良いが、望ましくは反応終了後の塩酸相の塩酸濃度が10〜30%となるように設定する。これらを考慮し、分散液中のプロピレン含有重合体とクロロホルムと水との重量比は限定的ではないが、1:8〜20:0.8〜2が好ましく、1:9〜15:0.9〜1.8がより好ましい。
≪工程2≫
工程2は、密閉下において、前記分散液を130℃以下の温度で加温しながら、前記分散液に塩素ガスを導入することにより前記プロピレン含有重合体を塩素化する。
【0020】
塩素化の際は、密閉下において分散液を130℃以下の温度で加温する。温度は前記の範囲内であれば限定されないが、プロピレン含有重合体が溶解する温度を確保する点で、塩素化中における最高到達温度は110〜130℃が好ましく、115〜125℃がより好ましい。
【0021】
本発明では、分散液が水を含有しているため、塩素を導入することにより、下記の反応により反応系で連続的に酸素ラジカル(O・)が生成するため、安定的且つ効率的にプロピレン含有重合体を塩素化することができる。具体的には、先ず水又は水酸化物イオンと塩素が反応することにより次亜塩素酸が生成し、次いで次亜塩素酸が分解することで酸素ラジカルが生じる。
【0022】
O+Cl→HClO+HCl
OH+Cl→HClO+Cl
HClO→HCl+O・
従って、本発明の反応系では酸素ラジカルが連続的に生成されるため、公知のラジカル発生剤(例えば、紫外線、有機過酸化物、アゾ系化合物等)を用いる必要がなく、ラジカル発生剤を用いることによる従来の課題(専用装置、温度管理、圧力管理等)を回避して目的物を製造することができる。
【0023】
反応系に塩素ガスを導入する際は、密閉状態を確保しつつ塩素ガスを吹き込めばよい。塩素ガスの導入量は限定されないが、塩素化されたプロピレン含有重合体の塩素含有率が好ましくは20〜40重量%となる量とすればよい。塩素含有量はかかる範囲に限定されないが、本発明では20〜40重量%が好ましく、25〜35重量%がより好ましい。塩素ガスの導入により塩化水素が副生するが、塩化水素はその殆どが水に溶存するため、過度な圧力管理等は本発明の製造方法では不要である。また、密閉下において塩素化を行うため、従来の非水系での塩素化と比べて塩素利用率を多く確保できる点で好ましい。
【0024】
本発明の製造方法で得られる塩素化されたプロピレン含有重合体の重量平均分子量は、限定的ではないが5000〜200000が好ましい。5000未満の場合には凝集力が弱くなりポリプロピレン基材に対する密着性が劣る場合がある。他方、200000を超えると、溶剤への溶解状態が悪くなる場合がある。より好ましい重量平均分子量は30000〜180000である。本発明では、塩素化されたプロピレン含有重合体の重量平均分子量をより小さくするために、塩素ガスの導入に先立って酸素ガスを導入してもよい。酸素ガスを導入することにより、酸素ラジカルが生じてプロピレン含有重合体の分子切断が起こることにより、重量平均分子量をより小さく調整することができる。
≪工程3≫
工程3は、工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加・静置した後、クロロホルム含有相を分取する。なお、水不溶性とは、20℃の水に対する溶解性が1重量%未満であることを示す。
【0025】
本発明では、工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加・静置することにより、反応液を塩酸含有相とクロロホルム含有相とに短時間で相分離できる。水不溶性のエポキシ基含有化合物は、反応液中の微細な水粒子を凝集させる作用(エマルションブレーカーとしての作用)を有するものが好ましく、例えば、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−クロロフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、2−ビフェニルグリシジルエーテル、1−ナフチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物が例示される。その他、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとを各種の割合で重縮合反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとを各種の割合で重縮合反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ化合物、不飽和基を有する植物油を過酢酸などの過酸と反応させて得られるエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などが例示される。また、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジクリシジルo−フタレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物も例示される。この中でも、特にp−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ化合物等が好ましい。水不溶性のエポキシ基含有化合物の添加量は限定的ではないが、反応液中の塩素化されたプロピレン含有重合体100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜2重量部がより好ましい。
【0026】
エポキシ基含有化合物を添加後の静置時間は相分離が十分に行える限り限定されないが、本発明では2時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましい。このように、本発明では従来の製造方法と比べて有意に短時間で相分離することができるため、効率的に目的物を製造することができる。
【0027】
相分離後は、クロロホルム含有層を分取する。本発明ではクロロホルム含有相に塩素化されたプロピレン含有重合体が含まれており、分取方法は公知の分取方法が利用できる。
≪工程4≫
工程4は、前記クロロホルム含有相からクロロホルムを留去することにより、塩素化されたプロピレン含有重合体を得る。
【0028】
クロロホルム含有相からクロロホルムを留去する際の温度条件及び圧力条件は限定的ではないが、クロロホルムの沸点(61℃)以上の状態から徐々に減圧状態にするのが効率上好ましく、温度は15〜70℃が好ましく、25〜65℃がより好ましい。また、圧力条件は−0.09〜0.08MPaが好ましく、−0.08〜0.05MPaがより好ましい。また、本発明では、減圧留去により大部分のクロロホルムを留去した後、塩素化されたプロピレン含有重合体の高濃度溶液を押出し機にフィードし、残留したクロロホルムを留去しつつ塩素化されたプロピレン含有重合体を造粒して取り出すことが好ましい。押出し時の温度条件及び圧力条件も限定的ではないが、高温低真空状態から徐々に低温高真空状態にフィードするのが製造方法の効率上好ましく、押出機温度は50〜150℃が好ましく、60〜140℃がより好ましい。また、押出機圧力条件は−0.099〜−0.080MPaが好ましく、−0.099〜−0.090MPaがより好ましい。
【0029】
上記工程を経ることにより得られる塩素化されたプロピレン含有重合体は、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の各種溶媒に溶解し易く、ポリプロピレン基材に対する接着付与成分として塗料、インキ、接着剤等の用途で幅広く利用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の製造方法は、特に工程3において、工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加することにより、反応液を塩酸含有相とクロロホルム含有相とに短時間で相分離でき、その結果、目的物である塩素化されたプロピレン含有重合体を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0032】
実施例1
5000Lのグラスライニング製反応缶中に、チーグラーナッター触媒を用いて合成されたアイソタクチックポリプロピレン(230℃でのMFR14g/分、融点165℃)300kg、クロロホルム3100kg及び脱イオン水420kgを入れて密閉した。
【0033】
反応缶中の液を攪拌して分散しながら反応缶内を加温し始め、加温と同時に塩素ガスを80kg/時間の速度で導入した。缶内温度が115℃に到達した時点で反応缶の加温を止めて塩素ガスの導入を続けたが、反応熱により缶内温度は95〜120℃で保持した。反応缶内の圧力は最大0.6MPaになった。塩素導入開始から3時間30分経過時の塩素ガス276kg導入した段階において塩素ガスの導入を止めた。10分間液の攪拌を続けた後に、水不溶性エポキシ基含有化合物であるビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量189g/eq)を1.8kg添加した。
【0034】
攪拌を止め、缶内温度を80〜95℃で保持して1時間静置したところ、上層の塩酸相と下層のクロロホルム含有相に明確に相分離した。下層のクロロホルム含有相を3000Lのグラスライニング製反応缶に移送し、缶内温度35〜75℃、缶内圧力−0.08〜0.08MPaの条件下でクロロホルム2000kgを部分留去した。
【0035】
続いてクロロホルムを留去し高濃度になった塩素化ポリプロピレン溶液を30〜50℃において二軸押出機にフィードし、加熱温度60〜140℃、真空度−0.099〜−0.093MPaの条件下でクロロホルムを留去し造粒した。
【0036】
得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は30.2%、重量平均分子量は180000であった。
【0037】
実施例2
実施例1において、塩素導入前に酸素ガスを0.2kg導入した以外は実施例1と同じ操作を行った。得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は30.1%、重量平均分子量は140000であった。
【0038】
実施例3
実施例1において、メタロセン系触媒により重合したアイソタクチックプロピレンエチレン共重合体(プロピレン:エチレン=97:3 モル比、MFR2g/分、融点125℃)を使用し、塩素ガス導入前に酸素ガスを3kg導入した以外は実施例1と同じ操作を行った。得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は30.0%、重量平均分子量は95000であった。
【0039】
実施例4
実施例3において、脱イオン水の使用量を540kgとし、塩素ガスを5時間30分かけて440kg導入したした以外は実施例3と同じ操作を行った。得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は39.7%、重量平均分子量は106000であった。
【0040】
実施例5
実施例3において、脱イオン水の使用量を270kgとし、塩素ガスを2時間かけて 157kg導入したした以外は実施例3と同じ操作を行った。得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は20.4%、重量平均分子量は92000であった。
【0041】
実施例6
実施例1において、塩素導入前に酸素ガスを3kg導入した以外は実施例1と同じ操作を行った。得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は30.3%、重量平均分子量は70000であった。
【0042】
実施例7
実施例1において、ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量189g/eq)を1.8kg添加する代わりにp−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量225g/eq)を1.8kg添加した以外は実施例1と同じ操作を行った。1時間の静置で実施例1と同様、上層の塩酸相と下層のクロロホルム含有相に明確に相分離した。得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は30.1%、重量平均分子量は176000であった。
【0043】
実施例8
実施例1において、ビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量189g/eq)を1.8kg添加する代わりにトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(エポキシ当量150g/eq)を1.8kg添加した以外は実施例1と同じ操作を行った。1時間の静置で実施例1と同様、上層の塩酸相と下層のクロロホルム含有相に明確に相分離した。得られた塩素化ポリプロピレンの塩素含有率は30.3%、重量平均分子量は178000であった。
【0044】
比較例1
実施例1において、塩素ガス導入後にビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量189g/eq)を添加しなかった。その結果、実施例1と同様に静置し塩酸層とクロロホルム層との分離を試みて5時間経過しても乳化状態のままであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化されたプロピレン含有重合体の製造方法であって、
(1)ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体の少なくとも1種のプロピレン含有重合体をクロロホルム及び水を含む混合液に分散させて分散液を得る工程1、
(2)密閉下において、前記分散液を130℃以下の温度で加温しながら、前記分散液に塩素ガスを導入することにより前記プロピレン含有重合体を塩素化する工程2、
(3)工程2で得られた反応液に水不溶性のエポキシ基含有化合物を添加・静置した後、クロロホルム含有相を分取する工程3、並びに
(4)前記クロロホルム含有相からクロロホルムを留去することにより、塩素化されたプロピレン含有重合体を得る工程4、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
工程1で用いる前記プロピレン含有重合体は、アイソタクチック重合体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程1で用いる前記プロピレン含有重合体は、メタロセン系触媒を用いて合成される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記塩素化されたプロピレン含有重合体の塩素含有率は、20〜40重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法
【請求項5】
工程2における塩素化は、ラジカル発生剤を用いずに行う、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散液中の前記プロピレン含有重合体とクロロホルムと水との重量比は、1:8〜20:0.8〜2である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
工程2において、塩素ガスの導入に先立って酸素ガスを導入する、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−76014(P2013−76014A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217415(P2011−217415)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】