説明

塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は機械的強度がすぐれた塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物に関する。さらにくわしくは、機械的強度(たとえば、引張強度)がすぐれているばかりでなく、柔軟性および圧縮永久歪性も良好であり、しかも耐熱性がすぐれており、しかも耐摩耗性が良好である塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物に関する。
〔従来の技術〕
塩素化ポリエチレン、とりわけ非晶性塩素化ポリエチレンゴム状物は化学的に飽和構造であり、かつ塩素含有高分子物質であることに基いて、その架橋物(加硫物)は、耐候性、難燃性、耐薬品性、電気的特性および耐熱性のごとき物性が良好であるため、電線被覆、電気部品、ホース、建材、自動車部品、パッキン、シートなどに成形されて広範囲の産業分野において利用されいる。
しかし、この塩素化ポリエチレンは汎用ゴム(たとえば、ブタジエンを主成分とするゴム)と異なり、前記したごとく化学的に飽和構造であるために硫黄または硫黄供与体を加硫剤として加硫させることが困難である。そのため、架橋剤として一般には、有機過酸化物を使って架橋させる方法が行なわれている。しかし、ホース、シート、チューブなどを押出成形後、一般にゴム業界で使われている加硫かんを用いて架橋した場合、得られる架橋物を適正に架橋させることは難しい。そのために得られる架橋物の引張強度、耐熱性などが劣る。
そのため、硫黄または硫黄供与体を使用して加硫させることが提案されている(たとえば、特開昭55−71742号公報明細書)。また、本発明者の一部らは、硫黄および/または硫黄供与体にさらにチオウレア系化合物、ジチオカーバメートの金属塩ならびに受酸剤として酸化マグネシウムおよび/または酸化鉛を配合させることにより、加硫が可能であり、さらに種々の機械的特性(たとえば、引張強度)もすぐれている加硫性塩素化ポリエチレン系組成物を提案した(特開昭61−209244号)。
しかし、この組成物は、加硫性はかならずしも満足すべきものではなく、したがって柔軟性および圧縮永久歪性が充分でなく、しかも耐熱性についても劣るという欠点がある。
さらに、一般に用いられている個々の熱可塑性エラストマーについて、問題点を詳細に論述する。
スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)については、耐油性、耐寒性および耐屈曲性はすぐれているが、構造上二重結合を有しているために耐候性、耐オゾン性および耐熱老化性が比較的多量の老化防止剤、酸化防止剤などを添加しても長時間の保持性が劣る。また、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)については、耐寒性、耐屈曲性、耐オゾン性および耐熱老化性はすぐれている。しかし、耐油性においてすぐれた特性を有しない。さらに、クロロプレン系ゴム(CR)については、耐油性、耐寒性および耐屈曲性はすぐれた特性を発揮する。しかしながら、SBRおよびNBRと同様に二重結合を有するために老化防止剤を比較的多量添加することによって短時間の耐候性および耐オゾン性を改良することができる。しかし、長時間使用することにともない、これらの特性が低下する。また、120℃以上の激しい温度条件では、耐熱老化性が低い。さらに、クロロスルフォン化ポリエチレンについては、耐油性、耐寒性、耐屈曲性、耐オゾン性および耐候性はすぐれた特性を有する。
また、耐熱老化性においては120℃までの温度条件ではすぐれた特性を有する。しかしながら、120℃以上の厳しい条件にさらされると、耐熱老化性が低下する。
〔発明が解決しようとする課題〕
以上のことから、本発明はこれらの欠点(問題点)がなく、すなわち耐熱性、耐油性および耐候性が良好であるのみならず、引張強度、耐摩耗性およびモジュラスなどの特性がすぐれている組成物を得ることであり、しかも前記のごとき一般に利用されている熱可塑性エラストマーが有する欠点を改良した組成物を得ることである。
〔課題を解決するための手段および作用〕
本発明にしたがえば、これらの問題点は、(A)プロピレンの含有量が15〜40重量%であり、かつメルトフローインデックス(JIS K7210にしたがい、条件が14で測定、以下「MFR」と云う)が0.01〜5.0g/10分であり、差動走査熱量計で測定した融解ピークが80℃以上であり、X線で測定した結晶化度が3%以上であり、しかもゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した分子量分布の指標である重量平均分子量かか(▲■▼)/数平均分子量(▲■▼)が4以上であるエチレン−プロピレン系共重合体を塩素化させることによって得られる塩素含有率が20〜45重量%であり、かつムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10〜150である塩素化エチレン−プロピレン系共重合体100重量部、 ならびに(B)Si−O結合を有する無機物質10〜150重量部からなる塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物、によって解決することができる。以下、本発明を具体的に説明する。
(A)塩素化エチレン−プロピレン系共重合体 本発明において使われる塩素化エチレン−プロピレン系共重合体を製造するにあたり、原料であるエチレン−プロピレン系共重合体のプロピレンの含有量は15〜40重量%であり、18〜40重量%が好ましく、特に20〜38重量%が好適である。プロピレンの含有量が15重量%であるエチレン−プロピレン系共重合体を使って塩素化させると、得られる塩素化エチレン−プロピレン系共重合体はゴム的な弾性が乏しく、むしろ製品においてプラスチックライクであり、得られる組成物のゴム的特性を発揮しない。一方、40重量%を超えたエチレン−プロピレン系共重合体を用いて塩素化すると、塩素化のさいに得られる塩素化エチレン−プロピレン系共重合体の粒子が大きくなり、反応系において団塊状になるために好ましくない。
また、該エチレン−プロピレン系共重合体のMFRは0.01〜5.0g/10分であり、0.02〜5.0g/10分が望ましく、とりわけ0.05〜5.0g/10分が好適である。MFRが0.01g/10分未満のエチレン−プロピレン系共重合体を使用して塩素化するならば、得られる塩素化エチレン−プロピレン系共重合体の加工性がよくない。一方、5.0g/10分を超えたエチレン−プロピレン系共重合体を使って塩素化すると、塩素化エチレン−プロピレン系共重合体の製造時における反応効率が悪く、しかも塩素化物の団塊化が激しい。
該エチレン−プロピレン系共重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は通常10〜180であり、10〜170が好ましく、特に10〜150が好適であるムーニー粘度が10未満のエチレン−プロピレン系共重合体を塩素化すれば、塩素化中に塩素化物の団塊化が激しい。一方180を超えたエチレン−プロピレン系共重合体を用いると、得られる塩素化物の機械的特性はすぐれているが、ゴム的な弾性が乏しく、むしろプラスチックライクである。
なお、該エチレン−プロピレン系共重合体は、通常差動走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter,DSC)で測定した融解ピークが80℃以上であり、かつX線で測定した結晶化度が5%以上であり、80〜125℃が好ましく、特に85〜125℃が好適である。前記融解ピークが80℃未満では、塩素化エチレン−プロピレン系共重合体を製造するさいに塊状になり、均一な塩素化物が得られないために好ましくない。
また、該エチレンプロピレン系共重合体ははX線で測定した結晶化度が3%以上であり、3〜50%が望ましく、とりわけ3〜45%が好適である。この結晶化度が3%未満のエチレン−プロピレン系共重合体を使って塩素化すると、塩素化の段階で塊状となり、同様に均一な塩素化物が得られない。
さらに、該エチレン−プロピレン系共重合体はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布の指標である重量平均分子量(▲■▼)/数平均分子量(▲■▼)は4以上であり、4〜8が好ましい。▲■▼/▲■▼が4未満のエチレン−プロピレン系共重合体を使用するならば、得られる塩素化物の加工性がよくないために好ましくない。
本発明の塩素化エチレン−プロピレン系共重合体を製造するには、該エチレン−プロピレン系共重合体を水性媒体中に懸濁させる。この水性懸濁状態を保持するために、少量の乳化剤、懸濁剤を加えることが好ましい。このさい、必要に応じて、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルおよび過酸化水素のごときラジカル発生剤、ライトシリコン油などの消泡剤ならびにその他の添加剤を加えてもさしつかえない。
本発明の塩素化エチレン−プロピレン系共重合体を製造するにあたり、前記の水性懸濁下で下記のごとき三つの方法で塩素化させることが望ましい。
第一の方法は第一段階において用いられるエチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも少なくとも25℃低い温度であるが、50℃より高い温度において全塩素化量の20〜60%を塩素化し、第二段階において前記第一段階における塩素化温度よりも10℃以上高い温度であるが、該エチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも5〜15℃低い温度において残りの塩素化を行なう方法である。
また、第二の方法は、第一段階において使われるエチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも少なくとも25℃低い温度であるが、50℃より高い温度において全塩素化量の20〜60%を塩素化し、第二段階において該エチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも1〜7℃高い温度まで昇温させ、この温度において塩素を導入することなく10〜60分間アニールさせ、第三段階において該エチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも2〜25℃低い温度において残りの塩素化を行なう方法である。
さらに、第三の方法は第一段階において使用されるエチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも少なくとも25℃低い温度であるが、50℃より高い温度において全塩素化量の20〜60%を塩素化し、第二段階において前記第一段階における塩素化温度よりも10℃以上高い温度であるが、該エチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも5〜15℃低い温度で残りの塩素化量の少なくとも30%であり、この段階までに全塩素化量の60〜90%塩素化し、ついで第三段階において該エチレン−プロピレン系共重合体の融点よりも低い温度であるが、融点よりも2℃以下低い温度において塩素化を行なう方法である。
このようにして得られる本発明において使用される塩素化エチレン−プロピレン系共重合体の塩素含有率は20〜45重量%(好ましくは、20〜42重量%、好適には、25〜42重量%)である。この塩素化エチレン−プロピレン系共重合体の塩素含有率が20重量%未満では、得られる塩素化エチレン−プロピレン系共重合体を回収および精製するのに問題がある。その上、耐焔性が乏しい。一方、45重量%を越えると生成される塩素化エチレン−プロピレン系共重合体は、熱安定性および耐熱性において著しく低下するために好ましくない。
またムーニー粘度は100℃の温度においてラージ・ロータで10〜150ポイントであり10〜120ポイントが望ましく、とりわけ15〜100ポイントが好適である。
さらに、メルトフローインデックス(JIS K−7210にしたがい、条件が7で測定、以下「FR」と云う)は、一般には1〜100g/10分であり、3〜50g/10分が好ましく、とりわけ5〜30g/10分が好適である。
(B)Si−O結合を有する無機物質 また、本発明において用いられるSi−O結合を有する無機物質のSiO2の含有量は通常少なくとも10重量%であり、30重量%以上が好ましく、特に50重量%以上が好適である。また、H2Oの含有量は通常1.0〜20重量%であり、1.0〜15重量%が望ましく、とりわけ1.5〜15重量%が好適である。さらに、該無機物質の粒径は一般には10nmないし30μmであり、特に10nmないし25μmが好ましく、特に15nmないし25μmの粒径を有する無機物質が好適である。
Si−O結合を有する無機物質の代表例としては湿式法ホワイトカーボン、ケイ酸カルシウム、コロイダル・シリカ、若干のカルシウム、アルミニウム、ナトリウム、鉄などの酸化物を含有する合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、超微粉ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム(クレー)、タルク、霞石閃長石、雲母粉、珪石粉、ケイ藻土、ケイ砂などがあげられる。これらのSi−O結合を有する無機物質については、ラバーダイジェスト社編“便覧 ゴム・プラスチック配合薬品”)ラバーダイジェスト社、昭和49年発行)第221頁ないし第253頁などによって、それらの製造方法、物性および商品名などが記載されており、よく知られているものである。
(C)組成割合 前記塩素化エチレン−プロピレン系共重合体100重量部に対するSi−O結合を有する無機物質の組成割合は10〜150重量部であり、10〜120重量部が望ましく、とりわけ10〜100重量部が好適である。塩素化エチレン−プロピレン系共重合体100重量部にするSi−O結合を有する無機物質の組成割合が10重量部未満では、Si−O結合を有する無機物質を配合する効果が乏しく、すなわち得られる組成物の引張強度、耐熱性、耐摩耗性、モジュラスなどが充分とは云えない。一方、150重量部を超えて配合すると、組成物の柔軟性が低下する。
(D)混合方法、加硫方法、成形方法など 以上の物質を均一に配合させることによって本発明の組成物(混合物)を得ることができるけれども、さらにゴム業界において一般に使われている脱塩化水素防止剤、硫黄、硫黄供与体、加硫促進剤、加硫促進助剤、有機過酸化物、架橋助剤、可塑剤、酸素、オゾン、熱および光(紫外線)に対する安定剤、滑剤ならびに着色剤のごとき添加剤を組成物の使用目的に応じて添加してもよい。
本発明の組成物を製造するさい、その配合(混合)方法は、当該技術分野において一般に用いられているオープンロール、ドライブレンダー、バンバリーミキサーおよびニーダーのごとき混合機を使用して配合すればよい。これらの混合方法のうち、一層均一な組成物を得るためにはこれらの混合方法を二種以上適用してもよい(たとえば、あらかじめドライブレンダーで混合した後、その混合物をオープンロールを用いて混合する方法)。これらの混合方法において、溶融混練するさいに比較的高い温度で実施すると、使用される塩素化エチレン−プロピレン系共重合体の一部または全部が架橋することがある。このために通常70℃以下において実施する必要がある。
このようにして得られる組成物を使って一般のゴム業界において一般に使用されている押出成形機、射出成形機、圧縮成形機、トランスファ成形機などを利用して所望の形状に形成される。
また、加硫または架橋させる場合、加硫または架橋は通常100〜200℃の温度範囲に成形中において、あるいはスチーム缶、エアーバスなどによって加熱される。加硫または架橋時間は加硫または架橋温度によって異なるが、一般には0.5〜120分である。
〔実施例および比較例〕
以下、実施例によって本発明をさらにくわしく説明する。
なお、実施例および比較例において、硬度試験はJIS硬度計(ショアー A)を使用し、試験片をJIS K6301に準じてJIS No.3ダンベルを製造し、これらのダンベルを3枚重ね合わせて測定した。また、引張強度(以下「TB」と云う)および伸び(以下「EB」と云う)はJIS K6301に従ってショッパー型試験機を用いて測定した。さらに、耐熱性試験は120℃の温度に72時間放置させ、引張強度の残率および引張伸度の残率(伸び率)をJIS K6301に従って測定した。また、耐摩耗性試験はAKRON型摩耗試験機を用いて荷重が3kgおよび回転数が1000回の条件下で摩耗量(cc)の測定を行なった。
なお、実施例および比較例において使用した塩素化エチレン−プロピレン系共重合体、Si−O結合を有する無機物質、受酸剤、架橋剤、加硫剤、架橋助剤、加硫促進剤および可塑剤のそれぞれの種類および物性などを下記に示す。
〔(A)塩素化エチレン−プロピレン系共重合体〕
塩素化エチレン−プロピレン系共重合体として、水性懸濁状でプロピレン含有量が22重量%であり、かつムーニー粘度(ML1+4、100℃)が115であるエチレン−プロピレン系共重合体〔MFR1.0g/10分、融点120℃、以下「EPR(1)」と云う〕10Kgを仕込み、攪拌しながら50〜90℃の温度範囲において該共重合体の塩素含有量が18.2重量%になるまで塩素化した(第一段階塩素化)。ついで、反応系を121〜125℃に昇温させ、この温度範囲において塩素の導入を中止させて30分間アニール化を行なった(第二段階アニール化)。ついで、反応系を冷却し、95〜118℃の温度範囲において塩素含有量が35.4重量%になるまで塩素化し(第三段階塩素化)、得られるムーニー粘度(ML1+4、100℃)が42.0である塩素化エチレン−プロピレン系共重合体〔MFR10.0g/10分、以下「CIEPR(A)」と云う〕および前記EPR(1)10Kgを上記と同様に仕込み、攪拌しながら50〜90℃の温度範囲において該共重合体の塩素含有率が18.2重量%になるまで塩素化した(第一段階塩素化)。ついで反応系を105〜115℃に昇温させ、この温度範囲において塩素含有量が27.1重量%になるまで塩素化した(第二段階塩素化)。ついで118〜120℃の温度範囲で塩素含有量が35.2重量%になるまで塩素化し(第三段階塩素化)、ムーニー粘度(ML1+4100℃)が61である塩素化エチレン−プロピレン系共重合体〔FR11.0g/10分、以下「CIEPR(B)」と云う〕を使った。
〔(B)Si−O結合を有する無機物質〕
また、Si−O結合を有する無機物質として、超微粉ケイ酸マグネシウム(密度2.75g/cm2、比表面積20m2/g、粒径0.32〜6ミクロン、SiO2含有量 62.5重量%、MgO含有量 30.6重量%、Fe2O3含有量 1.0重量%、H2O含有量 4.99重量%、以下「MgO・SiO2」と云う),シリカ(密度1.95g/cm3、比表面積19,000cm2/g、平均粒径16ミリミクロン、SiO2含有量86.5重量%、H2O含有量13.0重量%、以下「SiO2」と云う)を用いた。
〔(C)受酸剤〕
さらに、受酸剤として、三塩基性硫酸鉛(耕正社製、商品名TS、平均粒径2.0μm、密度約7.0g/cm3、以下「トリベース」と云う)および酸化マグネシウム(協和化学社製、商品名キョーワマグ150、100メッシュパス、比表面積150m2/g、以下「MgO」と云う)を使用した。
〔(D)架橋剤、加硫剤〕
また、架橋剤としてn−ブチル−ビス(第三級−ブチルパーオキシ)バレレート(以下「V」と云う)を、さらに加硫剤としてトリチオシアヌル酸(以下「トリアジン」と云う)を使った。
〔(E)架橋助剤、加硫促進剤〕
さらに、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレート(以下「TAIC」と云う)を、また加硫促進剤として2−メルカプトベンゾチアゾールヘキシルアミン塩(以下「MDCA」と云う)およびペンタメチレン・ジチオカーバメートのナトリウム塩(以下「PMTC」と云う)を用いた。
〔(F)可塑剤〕
また、可塑剤として、トリオクチルトリメリテート(以下「TOTM」と云う)を使用した。
実施例 1〜10、比較例 1〜5 第1表にそれぞれの配合量および種類が示されている塩素化エチレン−プロピレン系共重合体(以下「Cl−EPR」と云う)、Si−O結合を有する無機物質(以下「C.B.」と云う)、受酸剤および加硫促進剤ならびに実施例1〜4、実施例8および10、比較例1では4重量部のVおよび3重量部のTAIC、実施例5〜9および比較例2〜5では2.0重量部のトリアジン(ただし、実施例8では0.2重量部)および実施例1〜10、比較例1および2では30重量部のTOTMを室温(約20℃)においてオーブンロールを使って20分間混練し、それぞれをシート状に成形した。得られた各シート状物を圧縮成形機を用いて温度が165℃および圧力が200kg/cm2の条件下で30分間加硫または架橋しながら加硫物および架橋物を製造した。得られた各加硫物および架橋物について引張強度、伸び、硬さ、耐熱性および耐摩耗性について試験または測定を行なった。それらの結果を第2表に示す。




以上の実施例および比較例の結果から、本発明の塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物は、引張強度(TB)および耐摩耗性についてすぐれているのみならず、耐熱性についてもすぐれていることは明白である。
〔発明の効果〕
本発明の塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物は下記のごとき効果(特徴)を発揮する。
(1)機械的強度(たとえば、引張強度)が良好である。
(2)成形物の寸法精度がすぐれている。
(3)二重結合を有するゴムに対し、耐薬品性および耐候性が良好である。
(4)圧縮永久歪がよい。
(5)加硫物または架橋物の加硫性または架橋性がすぐれている。
(6)耐油性が良好である。
(7)永久伸性がすぐれている。
(8)耐熱性が良好である。
本発明の塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物は以上のごとき効果を発揮するために多方面にわたって利用することができる。代表的な用途を下記に示す。
(1)自動車用各種ゴム部品(たとえば、パッキン、ホース)
(2)電線被覆(3)電気機器、電子機器などの部品(4)各種のパッキン、シート(5)ホース類(6)各種の建材部品(7)ルーフィング、ボンドライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)プロピレンの含有量が15〜40重量%であり、かつメルトフローインデックスが0.01〜5.0g/10分であり、差動走査熱量計で測定した融解ピークが80℃以上であり、X線で測定した結晶化度が3%以上であり、しかもゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した分子量分布の指標である重量平均分子量/数平均分子量が4以上であるエチレン−プロピレン系共重合体を塩素化させることによって得られる塩素含有率が20〜45重量%であり、かつムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10〜150である塩素化エチレン−プロピレン系共重合体100重量部ならびに(B)Si−O結合を有する無機物質10〜150重量部からなる塩素化エチレン−プロピレン系共重合体組成物。

【特許番号】第2604774号
【登録日】平成9年(1997)1月29日
【発行日】平成9年(1997)4月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−6276
【出願日】昭和63年(1988)1月14日
【公開番号】特開平1−182340
【公開日】平成1年(1989)7月20日
【出願人】(999999999)昭和電工株式会社