説明

塩素化ポリエーテル及びそれよりなるポリウレタン

【課題】溶媒に対する溶解性や熱安定性に優れ、塗料やインキ、接着剤のポリオレフィンへの密着性改良効果に優れ、難燃剤として期待できるものであるとともに、新規なポリウレタン原材料としても有用な塩素化ポリエーテルを提供する。
【解決手段】下記式(1)等で示される塩素化エーテル残基を繰り返し単位として含む新規な塩素化ポリエーテル及びそれより得られる新規なポリウレタン。式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンやポリエステル等の樹脂原料、界面活性剤、潤滑剤等に用いられる新規な塩素化ポリエーテル及びそれより得られる新規なポリウレタンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオール化合物は、ポリウレタンやポリエステル等の樹脂原料、界面活性剤、潤滑剤等の用途に広く用いられている。
【0003】
近年、ポリウレタンフォームは断熱性やクッション性が良好であることから、建材、電気機器、家具、自動車等の広い分野で断熱材やクッション材として使用されている。該ポリウレタンフォームは、従来フロンガスによる発泡が行われていたが、近年の環境問題よりフロン系発泡剤から炭酸ガス等によるノンフロン系発泡材料への転換が進められている。そして、該ノンフロン系発泡材料として水とイソシアネートとを反応させることにより生成する炭酸ガスを発泡剤として用いる炭酸ガス発泡ポリウレタンフォームが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、有機化合物でできているポリウレタンは、燃えやすいという課題もあり、高い難燃性の付与が求められており、多くの難燃剤の使用が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
さらに、ポリウレタンをウレタン塗料やインキ等の分野の原材料として用いる場合、ポリオレフィンへの塗装性の向上が求められ、バインダーとして塩素化ポリプロピレンを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、該方法に用いられている塩素化ポリプロピレンは、芳香族系溶媒には可溶であるが他の溶媒への溶解性がなく芳香族系溶媒の使用が許容される用途にしか用いることができないものであった。この課題を解決する方法として、プロピレングリコールを塩素化して用いる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に提案された方法においては、炭酸ガスはフロンに比べ分子が小さいため、発泡ポリウレタンフォームからフロンが抜けやすく、経時的に断熱性能や寸法精度が低下するという課題があり、特に扱いが簡易な炭酸ガス発泡のポリウレタンフォーム(ブロック)から切り出したスラブ品においては、その表面にスキン層がないため、フォーム内部の炭酸ガスが抜け易すく断熱用途での使用は難しいものであった。
【0007】
また、非特許文献1に提案されているように難燃性を付与するために難燃剤を添加する方法においては、該難燃剤は一般的には低分子化合物であるため、経時的にポリウレタンの表面に移動し、べたつき等を引き起こす、という課題があった。
【0008】
さらに特許文献3に提案されている塩素化されたポリプロピレングリコールは、溶媒に対する溶解性が改良され、また、ポリオレフィンへの密着性も良好である点で優れているが、熱安定性や保存安定性が悪く経時的に脱塩酸を起こすという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−230066号公報
【特許文献2】特開昭58−176207号公報
【特許文献3】特開昭59−196361号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】最新ポリウレタンの設計・改質と高機能化技術全集 305頁 技術情報協会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、炭酸ガス等の発泡剤を用いた発泡ポリウレタンフォームからの炭酸ガスの抜けを抑制し、また、難燃剤としても使用でき、更に、溶媒に対する溶解性や熱安定性に優れ、ポリウレタンとした際の塗料やインキ、接着剤のポリオレフィンへの密着性が向上する有用な材料として、新規な塩素化ポリエーテル及びそれより得られる新規なポリウレタンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、溶媒に対する溶解性や熱安定性に優れ、ポリウレタンとした際にはガスバリア性、接着性、難燃性にも優れる新規な塩素化ポリエーテルを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下に示すとおりの塩素化ポリエーテル及びそれより得られるポリウレタンに関するものである。
【0014】
[1]下記式(1)で示される塩素化エーテル残基及び/又は下記式(2)で示される塩素化エーテル残基を繰り返し単位として含む塩素化ポリエーテル。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
[2]水酸基価1〜1000(mgKOH/g)を有することを特徴とする上記[1]に記載の塩素化ポリエーテル。
【0018】
[3]数平均分子量200〜10000を有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の塩素化ポリエーテル。
【0019】
[4]含活性水素化合物を重合開始剤として用い、酸触媒の存在下、下記式(3)で表される塩素化エポキシ化合物の開環重合を行うことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の塩素化ポリエーテルの製造方法。
【0020】
【化3】

【0021】
[5]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の塩素化ポリエーテル及びポリイソシアネート化合物からなることを特徴とするポリウレタン。
【0022】
[6]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の塩素化ポリエーテルとポリイソシアネート化合物を反応させることを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の塩素化ポリエーテルは、溶媒に対する溶解性や熱安定性に優れ、塗料やインキ
、接着剤のポリオレフィンへの密着性改良効果に優れ、難燃剤として期待できるものであ
るとともに、新規なポリウレタン原材料としても有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の塩素化ポリエーテルは、上記式(1)で示される塩素化エーテル残基及び/又は上記式(2)で示される塩素化エーテル残基を繰り返し単位として含む新規な塩素化ポリエーテルである。
【0026】
例えば、上記式(1)で示される塩素化エーテル残基を繰り返し単位として含む重合体、上記式(2)で示される塩素化エーテル残基を繰り返し単位として含む重合体、上記式(1)で示される塩素化エーテル残基と上記式(2)で示される塩素化エーテル残基とを繰り返し単位として含む重合体を挙げることができる。上記式(1)で示される塩素化エーテル残基と上記式(2)で示される塩素化エーテル残基の比率(モル比)は、NMR測定により算出できる末端水酸基の2級と1級の比率より見積もることができ、その好ましい範囲は1/99〜99/1、さらに好ましくは20/80〜80/20である。
【0027】
また、本発明の塩素化ポリエーテルは、通常一般的に知られているポリエーテル(ポリエーテルポリオールと称されることもある。)と同様に、ポリマー末端、分子鎖末端等に水酸基を有していてもよい。本発明の塩素化ポリエーテルの水酸基の量は水酸基価(mgKOH/g)として算出できる。塩素化ポリエーテルの水酸基価に特に制限はなく、目的とする用途に応じて設定でき、ポリウレタン原料としては水酸基価1〜1000(mgKOH/g)を有する塩素化ポリエーテルが好ましい。なお、水酸基価はJIS K1557の方法に従って算出できる。
【0028】
本発明の塩素化ポリエーテルの分子量としては、特に制限はなく、如何なる分子量を有しているものでもよい。本発明の塩素化ポリエーテルをポリウレタン用原材料として用いる際には、取り扱い性、ポリウレタン生産効率に優れたものとなることから、数平均分子量200〜10000を有するものであることが好ましい。なお、ここでいう数平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーによりテトラヒドロフランを溶媒として用い標準ポリスチレン換算値として測定することが可能である。
【0029】
本発明の塩素化ポリエーテルの製造方法としては、上記式(1)で示される塩素化エーテル残基及び/又は上記式(2)で示される塩素化エーテル残基からなる繰り返し単位よりなる重合体を製造することが可能であれば、如何なる方法を用いることも可能である。例えば、含活性水素化合物を重合開始剤として用い、酸触媒の存在下、下記式(3)で表される塩素化エポキシ化合物の開環重合を行う方法を挙げることが出来る。
【0030】
【化4】

【0031】
なお、上記製造方法により得られる塩素化ポリエーテルは、通常一般的に知られているポリエーテルと同様に水酸基を有している場合がある。また、上記式(1)で示される塩素化エーテル残基及び上記式(2)で示される塩素化エーテル残基は、上記式(3)で示される塩素化エポキシ化合物のエポキシ基を開環する際の反応位の違いに由来するものである。
【0032】
この際の重合開始剤としては、一般的にヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、燐酸やチオール化合物等の含活性水素化合物を挙げることができる。より具体的には、水、エチレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、へキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン等のアミン化合物;安息香酸、アジピン酸等のカルボン酸化合物;ビスフェノールA等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等を挙げることができる。上記した重合開始剤は、単独で又は数種類を混合して用いても良い。
【0033】
ここで、重合開始剤の使用量としては、特に制限はなく、目的とする塩素化ポリエーテルの分子量に合わせて上記式(3)で示される塩素化エポキシ化合物と重合開始剤の比により調製すればよい。その中でも、ポリウレタン用原材料として適した塩素化ポリエーテルが得られることから、上記式(3)で示される塩素化エポキシ化合物1モルに対して重合開始剤中の活性水素が0.02〜2モルの範囲となるような量で用いることが好ましい。
【0034】
また、酸触媒としては、通常の酸触媒として知られているものを用いることが可能である。例えば、硫酸、燐酸、塩酸等の鉱酸;三フッ化硼素、三塩化硼素等のハロゲン化硼素化合物;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム化合物;四フッ化錫、四塩化錫等の錫化合物;フッ化アンチモン、塩化アンチモン等のアンチモン化合物;塩化第二鉄等の鉄化合物;五フッ化燐等の燐化合物;塩化亜鉛等のハロゲン化亜鉛化合物;四塩化チタン等のチタン化合物;塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;塩化ベリリウム等のベリリリウム化合物;トリフェニル硼素、トリ(t−ブチル)硼素、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチル硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化硼素、ジ(t−ブチル)フッ化硼素、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化硼素等の有機硼素化合物;トリエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジフェニル−t−ブチルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルアルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化アルミニウム、ジ(t−ブチル)フッ化アルミニウム、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化アルミニウム、(t−ブチル)2フッ化アルミニウム等の有機アルミニウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物等を挙げることができる。
【0035】
また、酸触媒としてルイス酸を用いる場合、単独で使用しても良いし、種々の有機化合物との錯体として使用しても良い。ルイス酸と有機化合物の錯体としては、例えば、ジメチルエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体、THF(テトラヒドロフラン)錯体等のエーテル錯体;酢酸錯体等のカルボン酸錯体;アルコール錯体;アミン錯体;フェノール錯体等が挙げられる。また、酸触媒は2種以上を併用してもよい。
【0036】
酸触媒の使用量としては、特に制限はなく、その中でも効率よく塩素化ポリエーテルを製造することが可能となることから、上記式(3)で示される塩素化エポキシ化合物1モルに対して、1×10−5〜0.1モルの範囲で用いることが好ましい。
【0037】
上記式(3)で示される塩素化エポキシ化合物は、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンである。
【0038】
また、本発明の塩素化ポリエーテルを製造する際には、溶媒中又は無溶媒下のどちらで製造を行ってもよく、粘性の高い高分子量塩素化ポリエーテルを製造する際には、溶媒を用いたほうが好ましい。また、無溶媒で重合を行った後に溶媒を添加することも出来る。
【0039】
ここで、溶媒としては、重合に影響しないものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、へキサン、ヘプタン等の炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロベンゼン等の塩素化物;エチルエーテル等のエーテル類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;二硫化炭素等の硫化物;プロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル等が例示できる。上記した溶媒は単独で又は2種類以上を混合して用いても良い。
【0040】
溶媒の使用量としては、特に制限はなく、特に塩素化ポリエーテルの重合系からの回収効率に優れることから、上記式(3)で示される塩素化エポキシ化合物の重量に対して10倍以下の重量であることが好ましい。
【0041】
また、製造条件としては、上記式(3)で示される塩素化エポキシ化合物の開環重合が可能であれば如何なる条件であってもよい。例えば、重合温度−78〜150℃の範囲、重合時間10分〜48時間の範囲を挙げることができ、特に品質に優れた塩素化ポリエーテルが得られることから、重合温度−50〜120℃の範囲、重合時間30分〜24時間の範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明の塩素化ポリエーテルは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料等に有用であり、特に水酸基を有する塩素化ポリエーテルは、ポリウレタンフォーム用ポリオール、ウレタン系シーリング剤用ポリオール、ウレタン接着剤用のポリオール成分、ウレタンエラストマー用ポリオール成分、ウレタン塗料用のバインダー成分、プライマー成分やシーラー成分、インキのワニス成分、ポリウレタン用難燃剤等として有用である。
【0043】
そして、本発明の塩素化ポリエーテルは、各種ポリイソシアネート化合物と必要に応じて鎖延長剤とを反応させることにより新規なポリウレタンとすることができる。
【0044】
上記したポリイソシアネート化合物としては、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であれば如何なるものを用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びこれらの2種以上の混合物等を挙げることができる。さらに、これらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基含有変性物)も包含される。
【0045】
また、上記した該鎖延長剤としては、ポリウレタンの鎖延長剤の概念に当たるものであれば如何なるものを用いることも可能である。鎖延長剤は2個以上の活性水素基を有する低分子化合物であることが好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ヒドロキノンジエチロールエーテル等のジオール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ピペラジン、トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、キシリレンジアミン、水添4,4’−ジアミノジフェニルメタン、水添キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等のジアミン類、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0046】
また、本発明の塩素化ポリエーテルは、他のポリオールと混合してウレタン原料に用いることができる。この際のポリオールとしては、ポリウレタンに通常用いられるものが使用できる。例えば、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオール類、ポリエーテルポリオール中でビニルモノマーをラジカル重合して得られるポリマーポリオール類、多価アルコール類と多価カルボン酸類との共縮合により得られるポリエステルポリオール類、多価アルコール類と多価カルボン酸類とアミノアルコール類との共縮合により得られるポリエステルアミドポリオール類、ラクトン類の開環重合により得られるポリラクトンポリオール類、多価アルコール類とカーボネート類の共縮合により得られるポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール及びその水素添加物類、ポリイソプレンポリオール及びその水素添加物類、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、大豆油やひまし油等の天然油系ポリオール類等を挙げることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0048】
<分析機器>
〜分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)[東ソー社製、(商品名)HLC8020GPC]を用い、カラムに(商品名)TSKgelGMHHR−L(東ソー社製)を用い、溶媒にテトラヒドロフランを用い、40℃で測定した溶出曲線より標準ポリスチレン換算値として、分子量を測定した。
【0049】
〜NMRスペクトルの測定〜
核磁気共鳴スペクトル測定装置[日本電子社製、(商品名)GSX270WB]を用い、重溶媒に重クロロホルムを用い測定した。
【0050】
〜熱分解温度の測定(TG/DTA)〜
示差熱熱重量同時測定装置[エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、(商品名)TG/DTA6200]を用い、昇温速度を10℃/分として、空気中で測定した。
【0051】
製造例(3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの製造).
撹拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた5リットル4つ口フラスコに、70% m−クロロ過安息香酸1000g(4.06mol)とクロロホルム1360mlを仕込み、撹拌してm−クロロ過安息香酸を溶解した。次いで、3,4−ジクロロ−2−ブテン426g(3.44mol)を加え、40℃で24時間反応を行った後、スラリー溶液をろ過し、濾液のクロロホルムをエバポレーターで除去し、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン粗生成物を得た。3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン粗生成物を減圧蒸留し、335gの精製3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンを得た。
【0052】
実施例1.
撹拌子、温度計、窒素導入管を取り付けた200ml4つ口フラスコを減圧下で加熱乾燥し、窒素置換を行った後、重合開始剤としてプロピレングリコール2.7g(36mmol)、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体0.52g、重合溶媒として塩化メチレン30g、製造例により得られた3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン30g(214mmol)を仕込み、氷水浴下で撹拌を行いながら1時間重合反応を行った。
【0053】
次に、1%水酸化ナトリウム水溶液25mlを加え30分撹拌した。油水分離を行った後、有機層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥し、無水硫酸ナトリウム、塩化メチレンを除去することにより粘性液体31gを得た。該粘性液体はH−NMR測定から、1.2ppmにプロピレングリコールのメチル基、3.4〜4.4ppmにプロピレングリコールのメチレン及びメチンと3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環したメチレンとメチンのプロトンが観測されたことから、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環重合した塩素化ポリエーテルであることを確認した。
【0054】
得られた塩素化ポリエーテルは、13C−NMRの分析から上記式(1)で示される塩素化エーテル残基/上記式(2)で示される塩素化エーテル残基=50/50(モル比)よりなり、水酸基価120、数平均分子量800、空気中での1%重量減少温度174℃を有するものであった。また、メタノール、アセトンに可溶であった。
【0055】
実施例2.
撹拌子、温度計、窒素導入管を取り付けた200ml4つ口フラスコを減圧下で加熱乾燥後、窒素置換を行い、重合開始剤としてグリセリン3.2g(36mmol)、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体0.52g、製造例で得られた3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン15g(107mmol)を仕込み、氷水浴下で撹拌しながら2時間重合反応を行い、更に塩化メチレン30g、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン15g(107mmol)を追加し、撹拌しながら1時間重合反応を行った。
【0056】
次に、1%水酸化ナトリウム水溶液25mlを加え30分撹拌した。油水分離を行った後、有機層を無水硫酸ナトリウムより乾燥し、無水硫酸ナトリウム、塩化メチレンを除去することにより粘性液体32gを得た。該粘性液体は1H−NMR測定から、3.6〜4.4ppmにグリセリンと3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環したメチレン及びメチンのプロトンが観測されたことから、3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環重合した塩素化ポリエーテルであることを確認した。
【0057】
得られた塩素化ポリエーテルは、13C−NMRの分析から上記式(1)で示される塩素化エーテル残基/上記式(2)で示される塩素化エーテル残基=50/50(モル比)よりなり、水酸基価150、数平均分子量400、空気中での1%重量減少温度は189℃を有するものであった。また、メタノール、アセトンに可溶であった。
【0058】
実施例3〜実施例12.
実施例3〜実施例8では、実施例1の方法において、プロピレングリコールの量のみを変化させて重合を行った。同様に、実施例9〜実施例12では、実施例2の方法においてグリセリンの量のみを変化させて重合を行った。結果を表1に併せて示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなとおり、実施例3〜実施例12で得られた塩素化ポリエーテルは、空気中での1%重量減少温度がいずれも150℃以上を示し、メタノール、アセトンに可溶であった。
【0061】
比較例1.
撹拌子、温度計、冷却管、塩素ガス導入管を取り付けた1000ml4つ口フラスコに、数平均分子量400のポリプロピレングリコール20gと四塩化炭素500mlを仕込んだ後、四塩化炭素が緩やかに還流する温度まで昇温し、紫外線を照射しながら塩素ガスを吹き込み塩素化反応を行った。反応液を適宜取り出し、塩素化率が50%となったところで反応を終了した。
【0062】
減圧下で四塩化炭素を除去して塩素化ポリプロピレングリコール60gを得た。TG/DTA分析により測定した空気中での1%重量減少温度は85℃であり、熱安定性に劣るものであった。
【0063】
比較例2
撹拌子、温度計、冷却管、塩素ガス導入管を取り付けた1000ml4つ口フラスコに、数平均分子量400のポリプロピレントリオール20gと四塩化炭素500mlを仕込んだ後、四塩化炭素が緩やかに還流する温度まで昇温し、紫外線を照射しながら塩素ガスを吹き込んで塩素化反応を行った。反応液を適宜取り、塩素化率が50%となったところで反応を終了した。
【0064】
減圧下で四塩化炭素を除去して塩素化ポリプロピレントリオール61gを得た。TG/DTA分析により測定した空気中での1%重量減少温度は98℃であり、熱安定性に劣るものであった。
【0065】
実施例13.
100mlセパラブルフラスコに、実施例1により得られた塩素化ポリエーテル20g、ブタンジオール1g、トリエチレンジアミン2.8mgを仕込み、撹拌加熱を行いながら90℃に昇温した。そして、80℃に加熱した4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート10.9gを加え、撹拌の後、系内を減圧にして気泡を取り除いた。該混合物をテフロン(登録商標)シートを敷いたシャーレに流し込み105℃で6時間加熱を行いウレタン反応を進行させることによりポリウレタンシートを得た。
【0066】
得られたポリウレタンシートの一部を切り出し、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した結果、数平均分子量16000を有するポリウレタンであった。
【0067】
実施例14.
500mlのポリプロピレン製ビーカーに、実施例2で得られた塩素化ポリエーテル20g、水0.8g、トリエチレンジアミン0.02gを仕込み、更に、ポリジメチルシロキサン0.3ml、塩化メチレン1mlを混合した溶液を加え撹拌した。次に、ジラウリン酸ジブチルスズ(II)0.1mlを塩化メチレン1mlと混合した溶液を加え撹拌を継続した。更に、トリレンジイソシアネート13gを加え10秒間すばやく撹拌した。該混合物からは細かい発泡が認められ、約1分ほどで発泡は止まり、ポリウレタン発泡体が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される塩素化エーテル残基及び/又は下記式(2)で示される塩素化エーテル残基を繰り返し単位として含む塩素化ポリエーテル。
【化1】

【化2】

【請求項2】
水酸基価1〜1000(mgKOH/g)を有することを特徴とする請求項1に記載の塩素化ポリエーテル。
【請求項3】
数平均分子量200〜10000を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塩素化ポリエーテル。
【請求項4】
含活性水素化合物を重合開始剤として用い、酸触媒の存在下、下記式(3)で表される塩素化エポキシ化合物の開環重合を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の塩素化ポリエーテルの製造方法。
【化3】

【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塩素化ポリエーテル及びポリイソシアネート化合物からなることを特徴とするポリウレタン。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の塩素化ポリエーテルとポリイソシアネート化合物を反応させることを特徴とするポリウレタンの製造方法。

【公開番号】特開2010−18793(P2010−18793A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137294(P2009−137294)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】