説明

塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法

【課題】 塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で、紫外線を照射して、塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂を製造するにあたり、加工時の初期着色を抑制し、塩素化反応時間を短縮した塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供するものである。
【解決手段】 水性懸濁液中の塩化ビニル樹脂粒子が、光塩素化の反応場である水銀ランプ表面への到達頻度を増加させるために、水性懸濁液の攪拌数を反応途中で増加し、塩素化反応を実施するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、初期着色を抑制し、熱安定性を低下させることなく、生産性を大幅に向上できる塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩素化によって塩化ビニル系樹脂の耐熱温度を向上させるという性能を有しており、耐熱パイプ、耐熱工業板、耐熱フィルム・シートなど巾広い分野で使用されている。
【0003】
該樹脂は、塩化ビニル系樹脂粒子を水性媒体中に懸濁させ、該懸濁液に塩素を供給しつつ、塩素化して製造される。塩素化の際、塩素ラジカルを生成させるために、水銀灯による紫外線照射(光塩素化法)、熱による励起(熱塩素化法)、触媒による励起(触媒塩素化法)あるいはこれらの方法の組合せなどが一般的に実施されている。
【0004】
従来より、光塩素化法による該樹脂の生産性を向上させて製造コストを低下させる種々の試みがなされてきている。代表的な生産性向上方法としては、1)塩素化反応中の反応温度を上げて、反応時間を短縮して生産性を向上させる方法、2)仕込樹脂濃度をアップして生産性を向上させる方法、3)塩素化反応時の圧力を上昇させる方法、4)塩素化反応中の紫外線光量を増加させて生産性を向上させる方法、などが提案されている。
【0005】
1)の塩素化反応温度を上げる方法では、原料の塩化ビニル系樹脂または反応中の塩素化塩化ビニル系樹脂の軟化温度をこえる温度まで塩素化反応温度を上げることにより、大幅に塩素化反応速度が上昇し、塩素化反応時間の大幅な短縮により生産性が向上する。しかしながら、反応温度を該樹脂の軟化温度をこえる温度にすることで樹脂の劣化がおこり、加工時の初期着色を抑制することができず、熱安定性が大幅に悪化する。
2)の仕込樹脂濃度をアップする方法では、反応時間は伸びるが、1バッチ当たりの塩素化塩化ビニル系樹脂の生産量がそれを相殺する以上に大きくなり、生産性は向上する。しかしながら、樹脂濃度が高くなるにつれて、樹脂の塩素化の度合いが不均一になり、加工時の初期着色を抑制することができず、熱安定性が徐々に低下する。さらに、仕込樹脂濃度を35重量%以上にすると、攪拌によっても樹脂が水性媒体中に均一に懸濁せず、塩素化反応を均一に行なうことができないのみならず、生産した塩素化塩化ビニル系樹脂の加工時の初期着色を抑制することができず、熱安定性が大幅に低下する。したがって、工業的には、仕込量と反応速度のバランスがとれる20〜35重量%の仕込樹脂濃度に抑制することにより、最適バランス点で生産されている。
3)の塩素化反応時の圧力を上げる方法では、塩素化反応時の圧力を上げることにより、塩素化反応時間が若干短縮され、初期着色を抑制することができ、熱安定性の向上が認められる。しかしながら、光塩素化法では、水銀灯の破損の危険性が増すにもかかわらず、塩素化反応時の圧力上昇による反応時間短縮効果はそれほど大きなものでない。
4)の紫外線光量を増加させる方法についていくつかの提案がなされている。たとえば、塩化ビニル系樹脂懸濁液を1ガロン当たり10ワット程度の紫外光照射により塩素化する方法が開示されている(特許文献1)。光塩素化法においては、前記紫外線光量は、一般的な光量であり、反応時間は8時間程度となる。しかしながら、紫外線光量を増加すると、初期着色を抑制することができず、熱安定性の悪化が著しく、生産性の向上が望まれているにもかかわらず、紫外線光量増加による反応時間短縮は実施されていない。
また、品質と生産性のバランスを向上させる目的で、塩化ビニル系樹脂1kgあたり1.6モルに達するまでは、反応速度が塩化ビニル系樹脂1kgあたり0.75〜0.25モル/時間の範囲内にあるように紫外線の照射光量を調節することが提案されている(特許文献2)。これにより、確かに熱安定性などの品質は向上するものの、反応時間が10〜12時間と長くなり、極めて生産性を落とす結果となっている。
更に、塩化ビニル系樹脂1kgあたりの紫外線光量を20〜60ワットに調節して照射することが提案されている(特許文献3)。この場合、攪拌数を一定で実施しており、紫外線光量の設定、攪拌数の設定しだいでは、反応速度が増加し、反応熱量が、除熱能力を上回り、内温が大きく上昇し、内温の制御を困難にさせ、品質低下を起こす結果となる。
【特許文献1】特公平2−41523号公報
【特許文献2】特開昭50−148495号公報
【特許文献3】特開2002−60420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、1)塩素化反応中の反応温度、2)仕込樹脂濃度をアップして生産性を向上させる方法、3)塩素化反応時の圧力を上昇させる方法、4)塩素化反応中の紫外線光量を増加させて生産性を向上させる方法の提案がされているが、初期着色を抑制することができず、熱安定性などの品質が大きく低下するため、品質を確保するためにある程度生産性を犠牲にして製造されており、このバランスを向上させることが工業的には大きな課題となっている。
【0007】
すなわち、本発明は、塩化ビニル系樹脂を水性懸濁下で、塩素化して塩素化塩化ビニル系樹脂を製造するにあたり、加工時の初期着色を抑制し、塩素化反応時間を大幅に短縮して生産性を向上する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
水性懸濁液中の塩化ビニル樹脂が、反応の場である水銀灯表面近傍に、到達する頻度を変動することによって、つまり、攪拌翼の回転数を変動することによって、反応速度をコントロールすることを見出した。すなわち、光塩素化反応の途中で、水性懸濁液の攪拌速度を増加することを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であり、塩素化度が10mol%以上の時点で、水性懸濁液の攪拌速度を変動する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法である。
【0009】
即ち、本発明は、
水性懸濁下において塩素を供給しつつ、紫外線の照射下で、塩化ビニル系樹脂を塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、反応中の樹脂温度が90℃以下であり、光塩素化反応の途中で、水性懸濁液の攪拌速度を増加させることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項1)、
塩素化度が10mol%以上の時点で、水性懸濁液の攪拌速度を増加することを特徴とする請求項1に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項2)、
攪拌機の電流値が、定格電流値の80〜95%以内にするように、攪拌速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項3)、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、初期着色を抑制し、塩素化塩化ビニル系樹脂の反応時間を短縮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、原料として使用する塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルの単独重合体、または塩化ビニルと他の共重合可能な単量体(たとえば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化アリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸エステル、ビニルエーテルなど)との共重合体を示す。
【0012】
該塩化ビニル系樹脂は、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの分散剤およびラウロイルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α,α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどの油溶性重合開始剤を使用して懸濁重合で重合される。
【0013】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂は、水性懸濁下において塩素を供給しつつ、紫外線照射の下、懸濁液中の上記塩化ビニル系樹脂を塩素化することによって得られる。ここで、水性懸濁液の濃度は、10〜40重量%とすることが好ましく、20〜35重量部とすることが更に好ましい。10〜40重量%の範囲であれば生産性、水性懸濁溶液の粘度安定性、及び撹拌時の均一混合性の観点から、好ましい。20〜35重量%の範囲であれば、生産性と撹拌の均一混合の観点から更に好ましい。
【0014】
紫外線を発生する水銀灯とはガラス管内の水銀蒸気中のアーク放電により発生する光放射を利用した光源であり、点灯中の水銀圧力が1〜10kPa程度の低圧水銀灯や点灯中の水銀圧力が100〜1000kPa程度の高圧水銀灯、あるいは点灯中の水銀圧力が1000kPaを超える超高圧水銀灯などがあるが、紫外線放射があればどの水銀灯をもちいてもかまわない。
【0015】
水性懸濁液に供給する塩素は、気体状であっても液体状であっても良いが、取扱いの容易さの観点から、気体状の塩素ガスを水性媒体中に供給する方法が好ましい。
【0016】
塩素化反応時の最高反応温度は85℃以下が好ましい。最高反応温度が、85℃以下であれば、塩化ビニル系樹脂の劣化抑制や得られる製品の着色抑制を行うことができる。
【0017】
具体的な温度制御方法としては、塩素化反応は発熱反応であり、反応途中に内温が上昇するため、内温を制御するために、公知の冷却用ジャケットを装備した反応器等を利用することができ、除熱量と発熱量のバランスをとりながら、反応温度をコントロールする。
【0018】
水性懸濁液中の塩化ビニル系樹脂を、紫外線照射下で、塩素化する方法において、光塩素化反応の途中で、水性懸濁液の攪拌速度を増加させなければならない。
【0019】
本発明において、「水性媒体中の攪拌速度を増加させる」とは、水性懸濁液中の塩化ビニル系樹脂が、反応の場である水銀灯表面近傍に、到達する頻度を増加させることであり、攪拌翼の回転数を増加させることを指している。
【0020】
本発明において、「光塩素化反応の途中で、水性媒体中の攪拌速度を増加させる」とは、光塩素化反応が進行し、反応速度が緩やかになった時点で、攪拌翼の回転数を増加させることであり、これにより、水性懸濁液中の塩化ビニル系樹脂が、反応の場である水銀灯表面近傍に、到達する頻度を増加させることででき、緩やかになった反応速度を、再び速めることが可能となる。
【0021】
光塩素化反応の反応前半、即ち、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素化度が30mol%まで、好ましくは10mol%までの間は、塩化ビニル系樹脂中の水素が、塩素と置換する速度が大きく、発生する塩素化反応熱により、内温は加速度的に上昇する。一方、反応後半、即ち、前記反応前半が終わった後になると、塩化ビニル系樹脂に反応した塩素が立体障害となり、新たに塩素が置換し難くなり、反応の進行は遅くなり、反応熱量の発生は緩和される。このような反応後半に、塩化ビニル系樹脂の水銀灯表面近傍への到達頻度を増加させること、つまり、攪拌速度を増加させることは、反応の進行を促進し、反応時間を短縮させるばかりか、内温制御をする上で有効である。増加させる攪拌速度の程度は、本発明の目的を奏するものであれば特に制約はないが、反応前半における攪拌数を3%以上増加させることが好ましく、5%以上増加させることがより好ましく、10%以上増加させることが更に好ましい。
【0022】
従来のポリマーの製造で実施されている懸濁重合、乳化重合、溶液重合等といったラジカル反応では、ラジカル発生剤(触媒)量、反応温度等が、反応速度に影響を与えているのに対し、塩素を供給しつつ紫外線照射下で製造される塩素化塩化ビニル系樹脂のラジカル反応は、水性懸濁液の攪拌速度が、反応速度に影響を与えていることは特有のことであり、攪拌速度の増加によって、反応時間を短縮することは、簡単で有効な手段といえる。
【0023】
一方、反応開始から、水性媒体の攪拌を高速で攪拌していると、塩化ビニル系樹脂の水銀灯表面近傍への到達頻度が多くなり、塩素化反応熱により、所定の反応温度に対し、大きく越えてしまい、品質に悪影響を与えてしまう。
【0024】
水性懸濁液の攪拌速度は、攪拌機の性能で限定される。攪拌速度が高速であればあるほど、反応の進行を速くすることができる。攪拌速度を増加した後の攪拌機の電流値を定格電流値の80〜95%以内にし、攪拌機の最大限の性能で、水性懸濁液を安定的に攪拌することが好ましい。
【0025】
攪拌機の回転数を変更するタイミングは、反応速度の視点からは塩素化度は30mol%以上であることが好ましく、10mol%以上であることがより好ましい。
【0026】
また、樹脂着色の視点から、反応最高温度は90℃以下とすることが好ましいため、上記攪拌機の回転数変更のタイミングは、反応速度、及び反応最高温度の視点から設定することが好ましい。
【0027】
尚、反応最高温度は、88℃以下とすることがより好ましく、86℃以下とすることが更に好ましい。
【0028】
反応最低温度は、水性懸濁液が攪拌機によって、容易に流動することが好ましく、0℃を超えることが好ましい。反応時間を短縮する上で、30℃以上が好ましく、50℃以上が更に好ましい。
【0029】
攪拌数の変更については、反応器の除熱能力、攪拌機の負荷にあわせて、攪拌数を数回に分けて、増加・減少させて、反応温度を所定の温度に調整してもかまわない。
上記で示す塩素化度とは、塩素化により塩素は塩化ビニルモノマー単位当たり1個付加するものとし、塩化ビニルモノマー単位の内に、付加した塩素原子量を表す指標であり、反応中に副生した塩酸を滴定することにより測定できる。例えば、塩素化度100%とは、塩化ビニルモノマー単位当たりに、1個の塩素原子が付加していることを示す。
【0030】
水性懸濁液の攪拌に使用する攪拌翼は、回転によって発生する吐出流方向に形成される反応器内の液のフローパターンから、プロペラ翼等に代表される軸流型とパドル翼、タービン翼等に代表される幅流型に大別され、双方の形状に限定するものではないが、塩化ビニル樹脂粒子が水銀灯表面との接触頻度を効率よくさせるには、羽根板の回転の遠心作用で翼の半径方向の流れを発生させる幅流型の攪拌翼が好ましい。
【0031】
塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法は、水銀灯による紫外線照射(光塩素化法)、熱による励起(熱塩素化法)、触媒による励起(触媒塩素化法)がある。光塩素化法とは、塩化ビニル系樹脂を、攪拌機で分散させ、その水性懸濁液中に、紫外線を照射下で、塩素を吹き込み、塩素化反応を行うものである。熱塩素化法とは、該水性懸濁液を100〜130℃にして、塩素を吹き込み、塩素化反応を行うものである。触媒塩素化法とは、該水性懸濁液に、ラジカル発生剤(触媒)を添加し、塩素を吹き込み、塩素化反応を行うのである。
【0032】
これらの塩素化反応終了後の水性懸濁液は、脱水後、塩化ビニル系樹脂のTg以下の温度の温水を用い、樹脂中の塩酸を除去する為に、洗浄される。その後、脱水、乾燥工程を経て、塩素化塩化ビニル系樹脂が製造される。
【実施例】
【0033】
以下に実施例および比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。以下の実施例および比較例において説明する。なお、実施例および比較例における初期着色の測定または評価方法は、8インチのロールにて195℃で3分間混練して得られたシートを200℃で10分間プレスして得られた厚さ3mmの板の着色を目視にて判断した。
【0034】
反応中の樹脂温度は、水性懸濁液の液深中央部に、熱伝対を挿入した保護管を設置し、その指示値を読み取った。
塩素化度の測定方法は、以下の方法を用いた。
即ち、反応器中の液深中央部から抜き取った水性懸濁液をろ紙で分別し、ろ液をビュレットにて10ml測りとる。このろ液に15%ヨウ化カリウム水溶液を1mlを加え、0.1N−チオ硫酸ソーダで滴定し,遊離ヨウ素の色が茶褐色から透明に変化した時点を終点とする。さらに、1%−フェノールフタレインアルコール溶液を1滴加え、1N−NaOHで滴定し、透明から赤色に着色した時点を終点とする。この時、滴定に使用した1N−NaOH量から、下式を用いて、塩素化度を算出する。
尚、式中の樹脂濃度とは、水性懸濁液の樹脂濃度を示しており、
(樹脂濃度)=(仕込PVC量)/((仕込PVC)+(仕込水量))である。

(塩素化度)=(1N−NaOH滴定量)×(100−(樹脂濃度))/(樹脂濃度)×0.625
【0035】
(実施例1)
幅流型の攪拌翼、冷却ジャケットを装着した反応器に、35kgの純水と15kgの重合度1000の塩化ビニル系樹脂((株)カネカ製)を投入し、真空脱気およびチッ素置換を行なった。攪拌翼の回転数は500rpmである。そののち塩素ガスを吹き込み、100ワットの高圧水銀ランプ2本(合計200ワット)を照射して反応を開始した。反応開始時の温度は50℃で、1時間後に85℃になるように反応温度を直線的に上昇させた。1時間後からは85℃の一定温度で塩素化反応をおこなった。塩素化度10mol%に到達した時点で、攪拌数を750rpmへ増加させ、塩素化度52mol%に達したとき、水銀灯の照射を停止して塩素化反応を停止した。反応時間は3.3時間であった。反応中のジャケット最低温度は15℃で、内温を制御した。チッ素にて未反応塩素を追い出した後、残存塩酸を水洗にて除去し、乾燥して塩素化塩化ビニル系樹脂17.5kgを得た。 得られた塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、MBS((株)カネカ製のB31)を10重量部、スズ系安定剤2重量部、滑剤1.7部を配合し、8インチのロールにて195℃で3分間混練した。得られたシートを200℃で10分間プレスして、物性を評価した。表1に評価結果を示す。
【0036】
(実施例2)
100ワットの高圧水銀ランプを2本照射、攪拌数500rpmに、塩素化度30mol%の時点で、攪拌数を750rpmへしたほかは、実施例1と同様の方法で塩素化反応を行ない、塩素化塩化ビニル系樹脂17.5kgを得た。反応中のジャケット最低温度は16℃で、内温を制御した。反応時間は3.7時間であった。得られた塩素化塩化ビニル系樹脂を実施例1と同様の方法で、配合、混練り、プレスし、物性を評価した。表1に、評価結果を示した。
【0037】
(実施例3)
100ワットの高圧水銀ランプを2本照射、攪拌数500rpmに、塩素化度30mol%の時点で、攪拌数を600rpmへしたほかは、実施例1と同様の方法で塩素化反応を行ない、塩素化塩化ビニル系樹脂17.5kgを得た。反応時間は4.0時間であった。反応中のジャケット最低温度は17℃で、内温を制御した。得られた塩素化塩化ビニル系樹脂を実施例1と同様の方法で、配合、混練り、プレスし、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0038】
(比較例1)
反応開始から終了まで、攪拌数を500rpmにしたほかは、実施例1と同様の方法で塩素化反応を行ない、塩素化塩化ビニル系樹脂17.5kgを得た。反応時間は4.5時間であった。反応中のジャケット最低温度は18℃で、内温を制御した。得られた塩素化塩化ビニル系樹脂を実施例1と同様の方法で、配合、混練り、プレスし、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0039】
(比較例2)
反応開始の攪拌数を500rpm、塩素化度30mol%の時点で、攪拌数を400rpmへ変更にしたほかは、実施例1と同様の方法で塩素化反応を行ない、塩素化塩化ビニル系樹脂17.5kgを得た。反応時間は4.8時間であった。反応中のジャケット最低温度は18℃で、内温を制御した。得られた塩素化塩化ビニル系樹脂を実施例1と同様の方法で、配合、混練り、プレスし、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0040】
(比較例3)
反応開始から終了まで、攪拌数を750rpmにしたほかは、実施例1と同様の方法で塩素化反応を行ない、塩素化塩化ビニル系樹脂17.5kgを得た。反応時間は2.9時間であった。反応開始から、ジャケット温度は最低の10℃となったが、30分目で、内温は85℃になり、45分目には95℃まで上昇し、内温85℃を制御することができなかった。得られた塩素化塩化ビニル系樹脂を実施例1と同様の方法で、配合、混練り、プレスし、物性を評価した。表1に評価結果を示した。
【0041】
【表1】

実施例および比較例からあきらかなように、塩素化度10mol%以上の時点で、塩素化反応中の攪拌翼の回転数を増加することによって、反応時間を短縮することかでき、これらの操作を実施しても初期着色を低下させることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性懸濁下において塩素を供給しつつ、紫外線の照射下で、塩化ビニル系樹脂を塩素化する塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、反応中の樹脂温度が90℃以下であり、光塩素化反応の途中で、水性懸濁液の攪拌速度を増加させることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
塩素化度が10mol%以上の時点で、水性懸濁液の攪拌速度を増加することを特徴とする請求項1に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
攪拌機の電流値が、定格電流値の80〜95%以内にするように、攪拌速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の塩素化塩化ビニル系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2007−246852(P2007−246852A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75843(P2006−75843)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】