説明

塩素含有樹脂用安定剤及び塩素含有樹脂用安定剤組成物

【課題】塩素含有樹脂中での分散性が良好で、充分な安定化効果を有する塩素含有樹脂用安定剤を提供すること。
【解決手段】ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であって、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とする塩素含有樹脂用安定剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタエリスリトール及びペンタエリスリトールの縮合物の混合物からなり、塩素含有樹脂中への分散性、耐熱性、耐衝撃性、耐プレートアウト性、及び成形品の外観に優れる塩素含有樹脂用安定剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素含有樹脂、特に塩化ビニル樹脂は、光や熱に対する安定性に難があり、加熱成形時や製品の使用時に、主として脱ハロゲン化水素に起因する分解を起こしやすいことが知られている。このため、有機酸の金属塩、有機錫化合物、有機ホスファイト化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の種々の安定剤を配合して塩化ビニル樹脂の安定性を改善する試みがなされている。
【0003】
近年は環境保護の立場から毒性のある鉛、カドミウム等の有害重金属の使用が敬遠され、規制されるに至っている。そのため、無毒または低毒性のバリウム−亜鉛系、マグネシウム−亜鉛系、カルシウム−亜鉛系、又はカルシウム−マグネシウム−亜鉛系の複合系の安定剤への置き換えが望まれている。
【0004】
ところが、亜鉛を含む複合系の安定剤を配合した塩化ビニル樹脂組成物は、熱分解が始まると塩化亜鉛が生成し、この塩化亜鉛が触媒として作用して塩化ビニル樹脂の劣化を進行させる。これを防ぐ方法として、ポリオール化合物を併用し、塩化亜鉛をキレートして不活性化する方法が知られている。このようなポリオール化合物としては、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のペンタエリスリトールの縮合物が挙げられる。
しかし、ペンタエリスリトールは昇華性があり、加工機器を汚染したり塩化ビニル樹脂組成物製品に肌荒れが発生したりする等の現象が懸念されるため、ペンタエリスリトールの含有量は、上記ポリオール化合物の混合物の総量に対して、少なくとも10質量%以下に抑える必要があり、塩化ビニル樹脂組成物に対しては、ペンタエリスリトールの含有量を1質量%以下とすることが好ましい。
【0005】
ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のペンタエリスリトールの縮合物は、塩化ビニル樹脂組成物の熱安定化効果が高い化合物ではあるものの、塩化ビニル樹脂組成物の成形加工温度よりも融点が高く、塩化ビニル樹脂との相溶性も悪いため、樹脂中で分散不良となって、結果として熱安定化効果が不足したり、成形品の透明性が低下したりするという問題があった。この分散不良に起因する問題を改善するために、従来から種々検討がなされてきた。
【0006】
前記の分散不良を改善する方法として、例えば、特許文献1には、ペンタエリスリトールを微粉砕する方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献2には、ジトリメチロールプロパンとジペンタエリスリトールとの混合物を溶融処理することによって、ジペンタエリスリトールの分散性を向上させる方法が開示されている。
【0008】
さらに、また、特許文献3には、モノカルボン酸、ポリカルボン酸及びそれらのエステル酸ハライド並びに酸無水物から成る群より選ばれる少なくとも一種とペンタエリスリトールとを反応させた部分エステル化合物が開示され、特許文献4には、ペンタエリスリトールと直鎖状飽和脂肪酸とのエステル化反応で得られる部分エステル化合物といったエステル化合物が開示されている。
【0009】
さらに、また、特許文献5には、ペンタエリスリトール類のエステル化合物とジペンタエリスリトールとを溶融混合する方法が提案されている。
【0010】
さらに、また、特許文献6には、ペンタエリスリトールと2塩基酸(又はその酸無水物)とをエーテル化による脱水縮合反応によって、塩化ビニル樹脂用安定剤を得る方法が提案されている。
【特許文献1】特開平10−7859号公報
【特許文献2】特開平9−268286号公報
【特許文献3】特開昭56−57844号公報
【特許文献4】特開平7−97495号公報
【特許文献5】特開2003−336064号公報
【特許文献6】特開平8−143704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、今日の塩化ビニル樹脂に求められる性能はより高度なものとなり、更なる熱安定化効果とその他の特性を付与することができる安定化剤が求められてきており、これまで提案されてきたものでは十分とは言えなくなってきているのが現状である。
【0012】
例えば、特許文献1の方法では、ペンタエリスリトール化合物を35μm以下の粒子径になるまで粉砕することによって前記の分散不良の問題は改善され得るが、かかる粉砕に要する粉砕エネルギーが大きくコスト高となるという問題がある。
【0013】
特許文献2に記載のジトリメチロールプロパンとジペンタエリスリトールとの混合物において、ジトリメチロールプロパンは安定化剤としての効果を有していないため、ジトリメチロールプロパンとジペンタエリスリトールとの混合物は、本来の有効成分であるヒドロキシ基が低減されており、所望の性能を出すためには多量に使用する必要がある。しかし、多量の使用は成形品の物性の低下や、成形品の表面にプレートアウトが発生するという問題がある。
【0014】
特許文献3に記載のモノカルボン酸、ポリカルボン酸及びそれらのエステル酸ハライド並びに酸無水物から成る群より選ばれる少なくとも一種とペンタエリスリトールとを反応させた部分エステル化合物、及び特許文献4に記載のペンタエリスリトールと直鎖状飽和脂肪酸とのエステル化反応で得られる部分エステル化合物等のエステル化合物は、元のペンタエリスリトールに比べて耐熱性が低いうえに、本来の有効成分であるヒドロキシ基が低減されているため、安定化剤として満足できるものではない。
【0015】
特許文献5に記載のペンタエリスリトール類のエステル化合物とジペンタエリスリトールとを溶融混合したものは、安定化剤としての有効成分であるヒドロキシ基が低減されているうえに、溶融混合して取り出したものは大きな固まりになるため、使用可能な形状になるまで粉砕処理を要するという問題がある。
【0016】
特許文献6記載のペンタエリスリトールと2塩基酸(又はその酸無水物)とのエステル化反応で得られる縮合物には、ペンタエリスリトールのエーテル化物が含まれており、安定化剤としての有効成分であるヒドロキシ基が低減されているので、満足できるものではなかった。
【0017】
上述のように、これまでに種々検討はなされているものの、満足できる塩素含有樹脂用安定剤は得られていなかった。
【0018】
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題を解決し、塩素含有樹脂中での分散性が良好で、充分な安定化効果を有する塩素含有樹脂用安定剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなる混合物において、ペンタエリスリトール及びその縮合物を特定の割合で配合することにより前記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
即ち、本発明は、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であって、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とする塩素含有樹脂用安定剤を提供することによって、上記目的を達成したものである。
【0021】
また、本発明は、塩素含有樹脂100質量部に対して、上記塩素含有樹脂用安定剤を0.01〜10質量部配合してなることを特徴とする塩素含有樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、塩素含有樹脂に安定化剤として、ペンタエリスリトール及びその縮合物が特定の割合で配合されたポリオール混合物を添加することにより、耐熱性、透明性及び外観に優れた塩素含有樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の塩素含有樹脂用安定剤及び塩素含有樹脂組成物について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の塩素含有樹脂用安定剤は、ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であって、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対し、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とするものであり(但し、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物とn≧4のペンタエリスリトールの縮合物との含有量の和は100質量%である。)、より好ましくは、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜5質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が10〜30質量%である。また、n=1のペンタエリスリトールを全く含有しないことが最も好ましい。
n=1のペンタエリスリトールの含有量は10質量%より多いと、プレートアウトが発生する場合があるため好ましくない。
また、n=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量は30質量%より多いとプレートアウトが発生する場合があるため好ましくなく、5質量%より少ないと、塩素含有樹脂に対する熱安定化効果が不足する場合があるため好ましくない。
【0024】
前記ペンタエリスリトールの縮合物としては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0025】
【化1】

(式中、nは0又は1以上の整数である。)
【0026】
前記ポリオール混合物中には、前記一般式(1)で示されるペンタエリスリトールの縮合物が分子内でエーテル結合したもの、中間メチロール基が他の分子とエーテル結合したもの、さらには網目状に連なったもの、分子がさらに連なり、大きくなって各所で大環状エーテル構造になったもの等も含まれていてよい。
【0027】
前記ペンタエリスリトールの縮合物は、特に制限がなく公知の方法で製造することができる。例えば、ペンタエリスリトール及び/又はペンタエリスリトールの縮合物を、そのまま、あるいは適当な触媒と溶媒の存在下、加熱脱水縮合反応させることによって、ペンタエリスリトールの縮合物を製造することができる。
【0028】
前記触媒の例としては、アルコールの脱水縮合反応に通常使用される無機酸、有機酸等が挙げられる。無機酸としては、リン酸、硫酸等の鉱酸;これらの鉱酸の酸性塩;粘土鉱物(例えば、モンモリロナイト等)、シリカ・アルミナ、ゼオライト等の固体酸触媒等が挙げられる。有機酸としては、蟻酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
触媒の使用量は特に制限はないが、水溶性の酸触媒を用いる場合には、反応中の反応系内のpHが7未満、好ましくは5以下に維持できる量であればよい。また固体酸触媒を用いる場合には、通常、ペンタエリスリトールに対して0.1〜100質量%の使用量でよい。
【0029】
前記溶媒の例としては、ベンゼン、キシレン、デカリン、テトラリン等の炭化水素類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、アニソール、フェニルエーテル、ジグライム、テトラグライム、18−クラウン−6等のエーテル類、酢酸メチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、γ−ブチロラクトン等のケトン類、N−メチルピロリジン−オン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピペリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等のN−置換アミド類、N,N−ジエチルアニリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、キノリン等の三級アミン類、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の尿素誘導体、トリブチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、及びシリコンオイル等が挙げられる。これらは脱水処理したものでも含水品でもよい。
【0030】
前記加熱脱水縮合の反応温度は、通常約100〜280℃程度であり、より好ましくは、150〜240℃である。100℃より低いと反応が遅くなり、280℃より高いと縮合反応の制御が困難になるので好ましくない。
【0031】
本発明の塩素含有樹脂組成物は、塩素含有樹脂100質量部に対して、本発明の塩素含有樹脂用安定剤を0.01質量部〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは、0.1〜3質量部配合してなることを特徴とする。0.01質量部より少ないと、添加効果が不十分であり、10質量部より多いと、塩素含有樹脂組成物を成形加工して得られる成形品の表面にプレートアウトが発生するおそれがある。
【0032】
本発明の塩素含有樹脂組成物において、使用される塩素含有樹脂としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩素含有樹脂、及びこれら相互のブレンド品あるいは前記塩素含有樹脂と、他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート等の合成樹脂とのブレンド品、又はアロイであってもよく、その重合度や粒径の大小は問わない。
【0033】
本発明の塩素含有樹脂組成物には、さらにβ−ジケトン化合物の少なくとも一種を添加することが、成形加工による製品の着色を抑制することができるため好ましい。
【0034】
前記β−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、トリアセチルメタン、2,4,6−ヘプタトリオン、ブタノイルアセチルメタン、ラウロイルアセチルメタン、パルミトイルアセチルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、ステアロイルアセチルメタン、フェニルアセチルアセチルメタン、ジシクロヘキシルカルボニルメタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4−オクチルベンゾイル)メタン、ベンゾイルジアセチルメタン、4−メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4−カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2−カルボキシメチルベンゾイルアセチルオクチルメタン、デヒドロ酢酸、アセト酢酸エチル、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,6−ジメチル−2,4−ジオキシシクロヘキサン−1カルボン酸メチル、2−アセチルシクロヘキサノン、ジメドン、2−ベンゾイルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの化合物は金属塩であってもよい。また、前記β−ジケトン化合物の金属塩を提供し得る金属種としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等の第Ia族金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等の第IIa族金属;亜鉛、アルミニウム、錫、アルキル錫等が挙げられる。
これらのβ−ジケトン化合物の中でも、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、アセチルアセトン金属塩、又は、カルシウムアセチルアセトネートを使用すると着色の抑制された製品が得られるため好ましい。
【0035】
前記β−ジケトン化合物の使用量は、前記塩素含有樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0036】
また、本発明の塩素含有樹脂組成物には、ハイドロタルサイト化合物の少なくとも一種を添加することが、耐熱性の向上を図ることができるため好ましい。
【0037】
前記ハイドロタルサイト化合物としては、例えば、マグネシウムとアルミニウム、又は亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムからなる複塩化合物が好ましく用いられる。また、前記ハイドロタルサイト化合物は結晶水を脱水したものであってもよい。前記ハイドロタルサイトは天然物であってもよく、また合成品であってもよく、ハイドロタルサイトの結晶構造、結晶粒子径等に制限されることがなく使用することが可能である。また、前記ハイドロタルサイト化合物は、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆したものでもよい。
【0038】
前記ハイドロタルサイトは、市販のものであってもよく、例えば、アルカマイザー1、アルカマイザー2、アルカマイザーP93、アルカマイザー5、アルカマイザー7、DHT−4A(協和化学社製)等が挙げられる。これらの中でも、アルカマイザー1、DHT−4Aを好適に用いることが出来る。
【0039】
前記ハイドロタルサイト化合物は、前記塩素含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、さらに好ましくは0.01〜5質量部使用される。前記ハイドロタルサイト化合物が0.001質量部未満では、その添加効果が殆どみられず、10質量部を超えると効果は上がらず、成形後の変色や、加工時に発泡したりする場合がある。
【0040】
本発明の塩素含有樹脂組成物には、さらに有機酸亜鉛塩の少なくとも一種以上を配合することが、耐着色性に優れた製品が得られるため好ましい。
【0041】
前記有機酸亜鉛塩としては、例えば、カルボン酸、有機リン酸類又はフェノール類の亜鉛塩が挙げられる。ここで、前記カルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、クロロステアリン酸、12−ケトステアリン酸、フェニルステアリン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ブラシジン酸及び類似酸並びに獣脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、桐油脂肪酸、大豆油脂肪酸及び綿実油脂肪酸等の天然に産出する前記の酸の混合物、安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、エチル安息香酸、イソプロピル安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、サリチル酸、5−第三オクチルサリチル酸、ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。また、前記有機リン酸類としては、モノ又はジオクチルリン酸、モノ又はジドデシルリン酸、モノ又はジオクタデシルリン酸、モノ又はジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステル等が挙げられる。また、前記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等が挙げられる。前記有機酸亜鉛塩は、正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性等のいずれであってもよい。
【0042】
前記有機酸亜鉛塩の使用量は、前記塩素含有樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0043】
また、本発明の塩素含有樹脂組成物には、有機酸亜鉛塩以外の有機酸金属塩を使用することができる。該有機酸金属塩としては、例えば、カルボン酸、有機リン酸類又はフェノール類の金属(Li,Na,K,Ca,Mg,Ba,Sr,Cd,Al)塩等が挙げられる。ここで、前記カルボン酸、有機リン酸類及びフェノール類としては、前記有機酸亜鉛塩に用いられるものとして例示したものが挙げられる。これらの有機酸金属塩は、正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性等のいずれであってもよい。これらの有機酸金属塩の中でも、非重金属(Li,Na,K,Ca,Mg,Al)の有機酸塩を使用することが、低毒性の組成物が得られるため好ましく、特に、有機酸カルシウム塩及び前記有機酸亜鉛塩を併用することが、低毒性にもかかわらず、耐熱性、耐着色性等に一層優れた組成物が得られるため好ましい。
前記有機酸金属塩の使用量は、前記塩素含有樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0044】
また、本発明の塩素含有樹脂組成物には、さらに必要に応じて通常に使用される添加剤、例えば、有機ホスファイト化合物、フェノール系又は硫黄系抗酸化剤、可塑剤、エポキシ化合物、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、発泡剤、充填剤、ポリオール化合物等を配合することもできる。
【0045】
前記有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)−1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C1215混合アルキル)−4,4−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)−ビス〔4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)〕−1,6−ヘキサンジオール−ジホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン−トリホスファイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0046】
前記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン−ビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−ブチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0047】
前記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。
【0048】
前記可塑剤としては、例えば、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタレート系可塑剤、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤、トリクレジルホスフェート等のホスフェート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、トリメリテート系可塑剤、ピロメリテート系可塑剤、ビフェニルテトラカルボキシレート系可塑剤等が挙げられる。
【0049】
前記エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油等のエポキシ化動植物油、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、エポキシ化トール油脂肪酸エステル、エポキシ化アマニ油脂肪酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロヘキセンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。尚、エポキシ化大豆油の如く可塑剤としても使用されるエポキシ化合物を使用する場合、剛性の低下を防止するためには、塩素含有樹脂100質量部に対して、可塑剤と併せて25質量部を超えて使用しないようにする。
【0050】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類等が挙げられる。
【0051】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラエチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0052】
前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、アゾビス(ヘキサヒドロベンゾニトリル)等のアゾ系発泡剤、N,N’−ジ
’ニトロペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロテレフタルアミン等のニトロソ系発泡剤、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、3,3’−ジスルホンヒドラジドフェニルスルホン、トルエンジスルホニルヒドラゾン、チオビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンエスルホニルアジド、トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル等のヒドラジド系発泡剤、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、4,4’−オキシビズ(スルホニルセミカルバジド)等のカルバジド系発泡剤、トリヒドラジノトリアジン、1,3−ビス(o−ビフェニルトリアジン)等のトリアジン系発泡剤等が挙げられる。
【0053】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナケイ酸ナトリウム、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモン等が挙げられる。
【0054】
前記ポリオール化合物としては、前記のペンタエリスリトール化合物の縮合物の他、その他のポリオール化合物も使用することができる。その他のポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジグリセリン、デキストロース、ソルビトール、シュークロース等の低分子量ポリオール化合物;前記低分子量ポリオール化合物にアルキレンオキシドを付加させたポリオール化合物等が挙げられる。
【0055】
また、本発明の塩素含有樹脂組成物には、他の安定化剤を添加することができる。かかる安定化剤としては、例えば、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p−第三ブチル安息香酸、ゼオライト、過塩素酸塩が挙げられる。
【0056】
その他、本発明の塩素含有樹脂組成物には、必要に応じて、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、防曇剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤等を配合することができる。
前記の各種添加剤の使用量は、本発明の塩素含有樹脂組成物の用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは前記塩素含有樹脂100質量部に対して合計で100質量部以下とする。
【0057】
また、本発明の塩素含有樹脂組成物は、加工方法に制限されることなく使用することが可能であり、例えば、カレンダー加工、ロール加工、押出成形加工、射出成形加工法、溶融流延法、加圧成型加工、粉体成型に好適に使用することができる。
【0058】
本発明の塩素含有樹脂組成物は、壁材、床材、窓枠、壁紙等の建材;自動車用内装材;電線用被覆材;農業用資材;食品包装材;塗料;ホース、パイプ、シート、玩具等の材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0060】
下記表1に記載のポリオール混合物について、下記に示す評価を行った。なお、ポリオール混合物の組成分析は、下記の手順に従って、ガスクロマトグラフィーの面積比により定量した。
【0061】
(組成分析)
各試料2mgを、0.5mlのシリル化剤(ジーエルサイエンス社製;TMSI−H)に加えた溶液を80℃に昇温して15分間保持した。溶液が透明になったのを確認してから室温まで放冷し、下記の条件で、ガスクロマトグラフィーを用いて面積比による定量を行った。これらの結果を表1に示す。
【0062】
前記ポリオール混合物の各成分の保持時間は、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、それぞれ、n=1(0.9min)、n=2(4.5min)、n=3(7.3min)、n=4(9.4min)であった。尚、n=5以上のペンタエリスリトールの縮合物は、チャートのピークの識別が困難で定量することはできなかった。
【0063】
(カラム条件)
キャピラリーカラム:ULBON HR−1701(信和加工(株)製;φ:0.25mm×5m、液相:7%シアノプロピル、7%フェニルメチルシリコン)
カラム温度:100℃から15℃/minの昇温条件で360℃まで昇温し、360℃で20 min保持。
試料注入温度及び検出器温度:360℃
【0064】
(融点の測定)
表1に記載の各ポリオール混合物の融点の測定は、融点測定装置((株)柳本製作所製;MP−J3型)に試料をセットし、昇温しながら目視で試料の融解挙動を観察することにより行なった。尚、融点は、融解挙動が始まった温度から完全に融解するまでの温度をその範囲とした。これらの結果を下記の表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
〔実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−5〕
塩化ビニル樹脂(重合度700)100質量部に対し、ステアリン酸亜鉛1.0質量部、ステアリン酸カルシウム0.5質量部、ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製;マグセラー1)0.5質量部、ジベンゾイルメタン0.2質量部、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン0.2質量部、アクリル系高分子加工助剤(三菱レイヨン(株)製;P−551A)1.5質量部、滑剤(フタル酸ジステアレート)0.5質量部、酸化チタン0.4質量部、及び表1に記載のポリオール混合物0.5質量部を、ロッキングミルで混合して、塩素含有樹脂組成物を得た。
尚、表1に記載のポリオール混合物は、60メッシュの篩(目開き:250μm)をパスしたものを使用した。これらの塩素含有樹脂組成物について、下記の評価を実施した。
【0067】
(静的熱安定性)
前記の得られた塩素含有樹脂組成物を、それぞれ190℃に加熱したロール加工機に投入し、3分間のロール混練を実施して、厚み0.6mmのシートを作成し、室温で冷却後、シートを裁断して幅10mm、長さ20mmの短冊状試験片を製作した。
そして、各短冊状試験片を190℃のギヤオーブンに入れ、15分ごとに取り出し、熱脆化して黒色化するまでの時間を求めた。これらの結果を下記の表2に示す。
【0068】
(シャルピー衝撃値)
前記の得られた塩素含有樹脂組成物を、それぞれ二軸押出機に投入し、押出温度180℃、スクリュー回転速度20rpmにて混練した樹脂をただちにロール加工機でシート状に成形し、幅4mm、厚み10mm、長さ80mmに型抜きして試験片を作成し、シャルピー衝撃値を評価した。これらの結果を下記の表2に示す。
【0069】
(表面光沢)
前記の得られた塩素含有樹脂組成物を、それぞれ二軸押出機に投入し、押出温度180℃、スクリュー回転速度15rpmにて混練した樹脂をただちにロール加工機で、幅20mm、厚み4mmのシート状に成形し、該シート状の成形品の表面のGloss(60°)値を評価した。これらの結果を下記の表2に示す。
【0070】
(プレートアウト)
前記の得られた塩素含有樹脂組成物を、それぞれ二軸押出機に投入し、押出温度190℃、スクリュー回転速度15rpmにて混練した樹脂をただちにロール加工機で、幅50mm、厚み2mmのシート状に成形し、該シートを20cmの長さで切り取り、シート表面(片面)に発生したクレーター状のプレートアウトの個数をカウントした。これらの結果を下記の表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
〔実施例3−1、比較例3−1及び3−2〕
塩化ビニル樹脂(重合度1000)100質量部に対し、ステアリン酸亜鉛1.0質量部、ステアリン酸カルシウム0.5質量部、ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製;アルカマイザー1)0.5質量部、ジベンゾイルメタン0.2質量部、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン0.2質量部、ジオクチルフタレート50質量部、エポキシ化大豆油2質量部及び表3に記載のポリオール混合物0.5質量部をロッキングミルで混合したものを、170℃に加熱したロール加工機に投入し、5分間のロール混練を実施して、厚み0.7mmのシートを作成し、室温で冷却後シートを適当に裁断して、該シートを二枚重ねて、180℃、30kg/cm2の荷重で5分間プレスした。プレス後のシートは1mm厚であった。このシートについて、下記の評価を実施した。
【0073】
(Haze)
ヘイズ・ガードII〔(株)東洋精機製作所製〕にて、上記シートのHaze値を求めた。これらの結果を下記の表3に示す。
【0074】
(引張試験)
上記シートから引張試験の試験片を作成し、引張試験機((株)東洋精機製作所製;ストログラフAPII)にて、引張強度、引張破断強度及び伸び率を求めた。これらの結果を下記の表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
前記表1より、本発明の塩素含有樹脂用安定剤は、融点が低く、塩素含有樹脂組成物の成形加工温度(180〜190℃)よりも低いことが確認できた(実施例1−1〜1−3)。
【0077】
前記表2より、本発明における塩素含有樹脂用安定剤とは異なる組成のポリオール混合物を安定剤として使用した塩素含有樹脂組成物は、耐熱性、シャルピー衝撃値及び成形品の外観が悪く(比較例2−1〜2−3)、また、前記表3より、成形品の透明性も満足できるものではなかった(比較例3−1及び3−2)。
これに対して、前記表2より、ペンタエリスリトール及びその縮合物が特定の割合で配合されたポリオール混合物を使用した本発明の塩素含有樹脂組成物は、耐熱性、物性及び成形品の外観に優れることが確認できた(実施例2−1〜2−3)。
【0078】
さらに、前記表3より、本発明の塩素含有樹脂組成物(実施例3−1)は、60メッシュパス(目開き:250μm)のポリオール混合物を用いているにもかかわらず、300メッシュパス(目開き:45μm)のジペンタエリスリトールを使用した塩素含有樹脂組成物(比較例3−2)と同等以上の物性で、さらに優れた透明性が得られることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタエリスリトール及びその縮合物からなるポリオール混合物であって、ペンタエリスリトールの縮合度をnで表すと、ポリオール混合物の総量に対して、n=1のペンタエリスリトールの含有量が0〜10質量%であり、且つn=1〜3のペンタエリスリトール及びその縮合物の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とする塩素含有樹脂用安定剤。
【請求項2】
塩素含有樹脂100質量部に対して、請求項1記載の塩素含有樹脂用安定剤を0.01〜10質量部配合してなることを特徴とする塩素含有樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−132757(P2009−132757A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307921(P2007−307921)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】